JP4496362B2 - 抗癌剤の効果を判定するミトコンドリアdnaの体細胞変異の検出 - Google Patents
抗癌剤の効果を判定するミトコンドリアdnaの体細胞変異の検出 Download PDFInfo
- Publication number
- JP4496362B2 JP4496362B2 JP2003392778A JP2003392778A JP4496362B2 JP 4496362 B2 JP4496362 B2 JP 4496362B2 JP 2003392778 A JP2003392778 A JP 2003392778A JP 2003392778 A JP2003392778 A JP 2003392778A JP 4496362 B2 JP4496362 B2 JP 4496362B2
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- mitochondrial dna
- cells
- mutation
- cybrid
- mtdna
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Expired - Fee Related
Links
Images
Landscapes
- Investigating Or Analysing Biological Materials (AREA)
- Measuring Or Testing Involving Enzymes Or Micro-Organisms (AREA)
- Micro-Organisms Or Cultivation Processes Thereof (AREA)
Description
本発明者らは、ほとんどの癌細胞においてミトコンドリアDNA(mtDNA)に体細胞変異が蓄積していることに着目し、変異mtDNAの意義を明らかにするために、癌細胞においてmtDNAの変異が抗癌剤耐性に関与するかを検討した。本発明者らは、共通の核をもち、癌細胞由来の体細胞変異をもつミトコンドリアDNAを持つ細胞(サイブリッド)とミトコンドリア脳筋症患者由来の変異mtDNAをもつサイブリッドを数種類人工的に作製した。本発明者等は、これらのサイブリッドを用いた検討により、ミトコンドリアに変異がある場合に、よりアポトーシスを起こしにくいことを見出した。さらに、サイブリッドに抗癌剤を加え、その効果を評価するとミトコンドリアDNAに変異を含む細胞ではアポトーシス(細胞死)がおきにくいことが判明した。核は共通であるので、抗癌剤の効果の差異は、ミトコンドリアDNAに依存することが明らかとなった。そこで、抗癌剤の効果をミトコンドリアDNAの配列を決定することによって明らかにする本発明を完成させるに至った。
[1] 癌細胞中のミトコンドリアtDNAの変異を指標に、該癌細胞に対する抗癌剤の効果を予測する方法、
[2] あらかじめ、種々のミトコンドリアDNAを有するサイブリッドに対する種々の抗癌剤の効果を測定し、ミトコンドリアDNA変異と抗癌剤の効果を関連付けしておき、該関連付けに基づいて、抗癌剤の効果を予測する、[1]の方法、
(1)8993 ATP6 T→G
(2)9176 ATP6 T→C
(3)687 12S rRNA G→A
(4)1243 12S rRNA T→C
(5)1406 12S rRNA T→C
(6)1676 16S rRNA A→G
(7)2015 16S rRNA G→A
(8)2222 16S rRNA T→C
(9)2905 16S rRNA A→G
(10)3421 ND1 G→A
(11)3505 ND1 A→G
(12)3654 ND1 C→T
(13)4580 ND2 G→A
(14)4811 ND2 A→G
(15)5918 CO1 T→C
(16)5973 CO1 G→A
(17)5999 CO1 T→C
(18)6047 CO1 A→G
(19)6146 CO1 A→G
(20)6267 CO1 G→A
(21)6869 CO1 C→T
(22)7151 CO1 C→T
(23)7986 CO2 G→T
(24)8696 ATP6 T→C
(25)9070 ATP6 T→G
(26)9078 ATP6 T→C
(27)9254 CO3 A→G
(28)9368 CO3 A→G
(29)9804 CO3 G→A
(30)10176 ND3 G→A
(31)10715 ND4L C→T
(32)10970 ND4 T→C
(33)11009 ND4 T→C
(34)11152 ND4 T→C
(35)11674 ND4 C→T
(36)11703 ND4 T→C
(37)11781 ND4 T→C
(38)11974 ND4 A→G
(39)12414 ND5 T→C
(40)12561 ND5 G→A
(41)12717 ND5 C→T
(42)12954 ND5 T→C
(43)13500 ND5 T→C
(44)14552 ND6 A→G
(45)14650 ND6 C→T
(46)14866 CytB C→T
(47)15646 CytB C→T
(48)15784 CytB T→C
(49)15884 CytB G→C
(50)16527 D-Loop C→T
(51)16537 D-Loop C→T
(52)710 12S rRNA T→C
(53)1738 16S rRNA T→C
(54)3308 ND1 T→C
(55)8009 COXII G→A
(56)14985 CYTb G→A
(57)15572 CYTb T→C
(58)9949 COXIII G→A
(59)10563 ND4L T→C
(60)6264 COXI G→A
(61)1967 16S rRNA T→C
(62)2299 16S rRNA T→A
(63)12418 ND5 Aの挿入
[ここで、(1)から(63)において、ミトコンドリアDNA上の塩基の位置、遺伝子の名称および変異を表し、→は→の左の塩基が→の右の塩基に置換していることを示す]
[7] [1]から[6]のいずれかの方法により、特定のミトコンドリアDNA変異を有する癌細胞に効果のある抗癌剤を選択する方法、
[9] 脱核した癌患者由来の細胞とミトコンドリアDNA欠失細胞とを融合して得られる癌患者由来ミトコンドリアDNAを有するサイブリッドのアポトーシスの頻度と野生型ミトコンドリアDNAを有する脱核した細胞をミトコンドリアDNA欠失細胞と融合させて得られるサイブリッドのアポトーシスの頻度を比較し、変異型ミトコンドリアDNAを有するサイブリッドのアポトーシスの頻度が野生型ミトコンドリアDNAを有するサイブリッドのアポトーシスの頻度と差がないとき、前記癌患者は用いた抗癌剤に対して感受性であると判定する[8]の方法、
[10] [8]または[9]の方法により、特定の癌患者に対する効果のある抗癌剤を選択する方法、
[12] 変異型ミトコンドリアDNAの変異が、[3]に記載の(1)から(63)の変異からなる群から選択される[11]の抗癌剤感受性試験用サイブリッド、
[14] 異なる変異型ミトコンドリアDNAを有する脱核した細胞をミトコンドリアDNA欠失細胞と融合させて得られる複数のサイブリッドを含む、[13]の抗癌剤感受性試験キット、ならびに
[15] ミトコンドリアDNAの変異が、[3]に記載の(1)から(63)の変異からなる群から選択される[13]または[14]の抗癌剤感受性試験キット、
に関する。
Anderson, S.; Bankier, A.T.; Barrell, B.G.; de Bruijn, M.H.; Coulson, A.R.; Drouin, J.; Eperon, I.C.; Nierlich, D.P.; Roe, B.A.; Sanger, F.; Schreier, P.H.; Smith, A.J.; Staden, R.; Young, I.G. Sequence and organization of the human mitochondrial genome. Nature, 290, 457-465 (1981).
Andrews RM, Kubacka I, Chinnery PF, Lightowlers RN, Turnbull DM, Howell N. Reanalysis and revision of the Cambridge reference sequence for human mitochondrial DNA. Nat Genet. 23, 147 (1999).
ATP6 9176 T→C
12S rRNA 710 T→C
16S rRNA 1738 T→C
ND1 3308 T→C
COXII 8009 G→A
CYTb 14985 G→A
CYTb 15572 T→C
COXIII 9949 G→A
ND4L 10563 T→C
COXI 6264 G→A
ND5 12418 Aの挿入
16S rRNA 1967 T→C
16S rRNA 2299 T→A
33 Tan DJ et al., Cancer Res 2002, 62:972-976
34 Parrella P. et al., Cancer Res 2001, 61:7623-7626
37 Liu VW et al., Cancer Res 2001, 61:5998-6001
38 Polyak K et al., Nat Genet 1998, 20:291-293
44 Habano W et al., Oncogene 1998, 17:1931-1937
45 Habano W et al., Int J Cancer 1999, 83:625-629
46 Maximo V et al., Genes Chromosomes Cancer 2001, 32:136-143
47 Tamura G et al., Eur J Cancer 1999, 35:316-319
48 Burgart LJ et al., Am J Pathol 1995, 147:1105-1111
49 Nomoto S et al., Clin Cancer Res 2002, 8:481-487
52 Miyazono F. et al., Oncogene 2002, 21:3780-3783
53 Hibi K et al., Int J Cancer 2001, 92:319-321
54 Jones JB et al., Cancer Res 2001, 61:1299-1304
60 Jeronimo C et al., Oncogene 2001, 20:5195-5198
66 Yeh JJ et al., Oncogene 2000, 19:2060-2066
67 Maximo V et al., Am J Pathol 2002, 160:1857-1865
69 Sanchez-Cespedes M et al., Cancer Res 2001, 61:7015-7019
73 Ivanova R et al., Int J Cancer 1998, 76:495-498
75 Gattermann N et al., Blood 1997, 90:4961-4972
76 Reddy PL et al., Br J Haematol 2002, 116:564-575
〔実施例1〕
〔実施例1において用いた材料と方法〕
サイブリッド細胞株の単離と培養
一次皮膚線維芽細胞は、Leigh症候群の臨床的特徴を有する9ヶ月の男児より得た。該患者のmtDNAはATPシンターゼサブユニット6遺伝子(MTATP6)の第8993位のヌクレオチドがTからGへ置換している変異を含んでいた(Holt, I.J. et al., Am. J. Hum. Genet. 46, 428-433 (1990)、Nakano, K. et al., Mitochondrion, 3, 21-27 (2003))。線維芽細胞を融合に用い、脱核の後サイブリッドを構築した。サイブリッドの構築は、安川武宏および太田成男、新ミトコンドリア学、共立出版、2001年11月10日初版発行、内海耕造、井上正康監修、pp392-394 サイブリッドの作製法と大量培養法の記載に従い行った。血小板をLeigh症候群の臨床的特徴、ただし緩やかな特徴を有する17歳の女性から得た。該患者は、同じサブユニット遺伝子の第9176位のヌクレオチドがTからCへ置換している変異を含んでいた(Nakano, K. et al., Mitochondrion, 3, 21-27 (2003))。脱核した線維芽細胞または血小板を8チオグアニンに耐性のHeLa細胞株であり完全にmtDNAを欠いているEB8(Holt, I.J. et al., Am. J. Hum. Genet. 46, 428-433 (1990))と融合した。サイブリッドは、8チオグアニンを用いて選択肢グルコースを多量に含む培地(Holt, I.J. et al., Am. J. Hum. Genet. 46, 428-433 (1990))、グルコース(3.2mg/mL)、ピルビン酸(0.6mg/mL)、50μg/mLウリジンおよび10%ウシ胎児血清を含むDMEM/F-12(Invitrogen社)中で維持した。マイコプラズマ濃度を定期的にチェックした。
サイブリッドまたは腫瘍からの総DNAをDNeasy Tissue Kit(QIAGEN社)を用いて単離した。T8993GまたはT9176C点突然変異を検出するために、139または178bpのmtDNA断片を、プライマーセットを用いて増幅した。プライマーセットは、それぞれフォワードプライマーがヌクレオチド位8917-8935または9025-9046でリバースプライマーが9043-9055または9203-9177であった。PCR増幅産物は、T8993GまたはT9176CがAvaIまたはScrfI制限部位を形成するので、制限酵素、AvaIまたはScrfIで消化することにより検出した。その結果、T8993GまたはT9176C突然変異が、それぞれ139bp断片と63bp断片または151bp断片と27bp断片としてアガロース電気泳動により検出された。ヌードマウスのmtDNA由来の断片で上記条件で増幅されたものは認められなかった。
Martigelに懸濁させたサイブリッド細胞(5×106/0.2mL)をメスの胸腺欠損マウス(4週齢のBALB/c nu/nu)に皮下注射した。移植3から9日後に、動物を犠牲にし腫瘍を取り出した。腫瘍体積を式V=(A×B2)/2(式中、Vは体積(mm3)、Aは長径(mm)、Bは短径(mm)を示す)で計算した。
腫瘍を移植3から9日後に取り出し、10%ホルマリン中4℃オーバーナイトで固定した。固定化組織をパラフィンに包埋し、5μmの切片とし、H&E(ヘマトキシン エオジン)を用いて染色した。
MTATP6遺伝子(NuATP6)の核バージョン(a nuclear version)のプラスミドおよびその変異型バージョン(a mutant version)(muATP6)はコロンビア大学の神経学部のEric A Schon教授およびコーネル大学のGiovanni Manfredi博士より入手した(Biswas, G. et al, EMBO J. 18, 522-533 (1999)、 Manfredi, G. et al. Rescue of a deficiency in ATP synthesis by transfer of MTATP6, a mitochondrial DNA-encoded gene, to the nucleus. Nat. Genet. 30, 394-399 (2002))。
免疫組織化学のために、細胞を4ウェルのプラスティックディッシュ(SonicSeal Slide, Nalge Nunc)で増殖させ、Mito Tracker Red を用いて処理し(10nMで30分間)、固定しマウス抗FLAG M2モノクローナル抗体(Sigma Immunochemicals)を用いて免疫染色し、免疫学的検出のために二次抗マウスCy5(Jackson Immunochemicals)とインキュベートした。MitotrackerまたはFLAGの異なる調合色(pseudocolor)を有する適切なデジタルイメージを選択し可視化した。そして、色を併合させ、Zeiss Conforcal 顕微鏡を用いて同時局在化の評価を行った。必要ならば、DAPIを含むH-1206 VECTASHIELDマウントメディウムを対比染色に用いた。
アポトーシス性細胞をApoTaq(商標) Peroxidase In Situ Oligo Ligation Kit(#S7200 INTERGEN社)を用いたTUNEL法により検出した。HRPの基質である3-アミノ-9-エチルカルバゾールは陽性核で赤色を呈した(Didenko, V.V. et al, Biotechniques 27,1130-1132 (1998))。ヘマトキシリンおよびメチルグリーンを、対比染色に用いた。陽性に染色した細胞の割合を、腫瘍および細胞クローン各々について少なくとも6箇所で測定した。各々の腫瘍または細胞培養において、陽性染色された細胞の割合を独立に計算し、その数を平均し、平均±S.D.を得た。
2群の差は、unpaired Student’s test を用いて比較した。p<0.05を有意差とした。
〔サイブリッドの酸素消費および膜電位〕
mtDNAを欠失したHela細胞と目的の細胞質に存在するミトコンドリアを融合し、Helaの核および目的の細胞質由来のmtDNAを有する「サイブリッド」クローンを得た(Holt, I.J. et al, Am. J. Hum. Genet. 46, 428-433 (1990))。Leigh症候群の患者由来のミトコンドリアATPシンターゼサブユニット6遺伝子(MTATP6)に存在するホモプラズミーな病原性(homoplasmic pathogenic)T8993GまたはT9176C点突然変異を有するサイブリッド細胞株および有しないサイブリッド株を選択した(Nakano, K. et al, Mitochondrion, 3, 21-27 (2003); Manfredi, G. et al.Giovanni, M. et al, Nat. Genet. 30, 394-399 (2002))。
サイブリッド株の酸素消費および、膜電位およびROS生成を測定した。
それぞれのサイブリッドクローンのセミコンフルエントな細胞をトリプシン処理し、0.7〜1.5×107細胞/mLをクラーク型酸素電極(Strathkelvin Instruments, Glasgow)を備えたチャンバー(50μl)に入れ、酸素消費を測定した。結果を図1に示す。図1左は、酸素の減少を示す代表的な追跡結果を示し、図1右は、細胞当りの酸素消費の平均速度(3つの実験の酸素減少のスロープから得られた)を示す。図中の、8W1、8W2または8W3ならびに8M7、8M8または8M9はそれぞれLeigh症候群患者由来の野生型および8993位に一塩基の点突然変異を有するホモプラズミーな変異型mtDNAを有するサイブリッドクローンである。9W4、9W5または9W6ならびに9M10または9M11は、それぞれ別のLeigh症候群患者由来の野生型および9176位に一塩基の点突然変異を有するホモプラズミーな変異を有するサイブリッドクローンである。図1右の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10および11はそれぞれ、クローン8W1、8W2、8W3、9W4、9W5、9W6、8M7、8M8、8M9、9M10および9M11を示す(以下の図においても同様である)。3と7および4と10の差は有意である(p<0.05)。8993W群と8993M群はP<0.01であり、9176Wと9176MはP<0.01であった。
セミコンフルエントなサイブリッドをトリプシン処理し、250nMの蛍光インジケーター、3,6-ビス(ジメチルアミノ)-9-(2-(メトキシカルボニル)フェニル)−過塩素酸テトラメチルローダミンメチルエステル(TERME)(3,6-bis(dimethylamino)-9-(2-(methoxycarbonyl)phenyl)-perchlorate tetramethylrhodamine methyl ester, perchlorate (TERME))で処理し、次いでフローサイトメーター(Elite Coulters)にかけ、ミトコンドリア膜電位を測定した。結果を図2に示す。
コンフルエントなサイブリッドを蛍光インジケーターで処理し、活性酸素種(ROS)を、5(および-6)-クロロメチル-2’,7’-ジクロロジヒドロフルオレセインジアセテートアセチルエステル(CM-H2DCFDA, Molecular Probes)(5μM)と1時間反応させ、フローサイトメトリーに供した。図3に結果を示す。図3左は、ROSの生成を示すフローサイトメトリーの代表的プロファイルを示し、図3右は、20000個の細胞を各々の実験で測定し、平均値を得た結果を示す。ROS産生の平均値は3つの実験の平均値から求めた。有意差は以下の通りであった。8993W群と8993M群(P<0.01)、9176W群と9176M群(P<0.01)。
腫瘍形成能について変異型および野生型サイブリッドを比較するために、ヌードマウスに5×106のサイブリッドを皮下注射した。注射は4箇所に行った。移植から10日後、固形腫瘍の形成効率を調べた。効率(試行回数当りの腫瘍形成)を12から24の実験で得た。図4に結果を示す。レーン1、2、3、4、5、6、7、8、9、10および11は、図1と同様である。図4に示すように、変異型サイブリッドを移植した場合の定着頻度は野生型の場合よりも高かった。図5には、クローン8W1(上図)および8M7(下図)を移植した腫瘍の写真(H&E染色)の例を示す。図5中、スケールバーは1mmである。さらに、サイブリッドの移植により産生する腫瘍の経時的体積増加を測定した。腫瘍のサイズは実施例に記載の方法により測定した。結果を図6に示す。有意差は以下の通りであった。8W1と8M7(4、5および6日でP<0.01、7日でP<0.01、3、8および9日でP<0.05)。9W4と9M10(4、5および6日でP<0.001、7日でP<0.01、3、8および9日でP<0.05)。
次いで、培養における増殖速度について変異型および野生型サイブリッドを比較した。図10に維持され顕微鏡下で数えられたサイブリッドの増殖曲線を示す。図10に示すように、変異型が野生型よりも早く増殖した。有意差は以下の通りであった。8W1と8M7および9W4と9M10(3、4、6および8日においてp<0.001)。
変異型サイブリッドが、どのようにして増殖における明らかな優位性を獲得するかを見出すために、変異型mtDNAが核遺伝子における増殖を促進させる二次的変異を引き起こすことの可能性を調べた。mtDNAを哺乳動物細胞にトランスフェクトする方法はいまだ確立されていないので、mtDNAのコドンを核遺伝子の普遍型に変換した遺伝子(核バージョン)をサイブリッドの核に導入した(Manfredi, G. et al.Giovanni, M. et al, Nat. Genet. 30, 394-399 (2002))。すなわち、本来ミトコンドリアに遺伝子が存在し、ミトコンドリア内で合成されるべき蛋白質ATP合成酵素サブユニット6の遺伝子を核に導入し、サイトゾール(細胞質ゾル)で合成させ、ミトコンドリア移行シグナルによってミトコンドリアへ移行させるものである。そのために、ATP合成酵素(あるいは、シンターゼ)サブユニット6の遺伝子コドンをミトコンドリア型から普遍型へ変換し、ミトコンドリア移行シグナル遺伝子を5'側に付加したものである。さらにFLAG配列でタグを付したATPシンターゼサブユニット6遺伝子(NuATP6)の核バージョンを導入して構成的に発現させた安定したトランスフェクタントを単離し、抗FLAG抗体を用いた免疫染色によりトランスフェクションを確認した。トランスフェクタントをミトコンドリアに特異的な蛍光色素、MitoTracker Redで染色し、固定し、その後抗FLAGで免疫染色した。結果を図13に示す。図13中、スケールバーは10μmである。図13左は、Mitoracker Redで染色したトランスフェクタントを示し、図13右は、重ねた写真である。
癌細胞の抗癌剤に対する耐性の獲得に関しては、様々な要因が示されてきた。また、ほとんどの癌細胞では、ミトコンドリアDNA (mtDNA)に体細胞変異が蓄積していることが知られている。我々は、変異mtDNAの意義を明らかにするために、異なったmtDNAを持つ同一の核を有する癌細胞(サイブリッド細胞)においてmtDNAの変異が抗癌剤耐性に関与するかを検討した。
1.由来細胞の決定
比較検討する2群のmtDNAに対して1)野生型mtDNAを持つ群として、(1)正常胎児の線維芽細胞 (2)成人男性の血小板 (3)正常老人の線維芽細胞を使用した。また、2)変異型mtDNAを持つ群として、(1)膵臓癌細胞(CFPAC-1)(2)膵臓癌細胞(CAPAN-2)を使用した。膵臓癌細胞は各々下記の変異がシークエンスにて判明している。
(i) CFPAC-1:ATP6 8696 T→C(Met→Thr) 9070 T→G(Ser→Ala)
ND4 10970 T→C (Phe→Leu)
(ii) CAPAN-2: CO I 6267 G→A(Thr→Ala)
(Jessa B. Jones, Jason J. Song, Paula M. Hempen, Giovanni Parmigiani, Ralph H. Hruban and Scott E. Kern、Detection of Mitochondrial DNA Mutations in Pancreatic Cancer Offers a "Mass"-ive Advantage over Detection of Nuclear DNA Mutations Cancer Research 61, 1299-1304, 2001 参照)
サイブリッド細胞の作製には、以下の材料と試薬を用いた。
材料:
(i) ρ0HeLa細胞(8アザグアニン耐性株)
この細胞は、臭化エチジウムによりmtDNAを欠失させた。
(ii) 前述の各々の膵臓癌細胞と野生型mtDNA細胞
試薬:
(i) Dulbeco’s modified Eagle’s medium: Nutrient Mixture F-12+牛胎仔血清(FBS)を最終10%濃度+ペニシリン100unit/ml&ストレプトマイシン100μg/ml加える。
(ii) RPMI1640 medium
(iii) サイトカラシンB(1mg/ml)を1mlDMSOで溶解
(iv) ポリエチレングリコール液(HYBRIMAX SIGMA)
以下の方法でサイブリッド細胞の作製を行った。
野生型mtDNA由来のmtDNAを持つ3種類のサイブリッド細胞:FT(正常胎児の線維芽細胞由来)、9W(成人男性の血小板由来)、A2(正常老人の線維芽細胞由来)と、膵臓癌細胞由来のmtDNAを持つ2種類のサイブリッド細胞を2クローン計4種類(c3、c8(CFPAC-1由来)、c4、c7(CAPAN2由来))を作成した。
作製したサイブリッド細胞に典型的なアポトーシスを誘導するスタウロスポリン(staurosporine)(蛋白質キナーゼの阻害剤でアポトーシスを誘導する代表的試薬)と、腺癌に対する化学療法の1st lineとして使用されている5-フルオロウラシル(5-fluorouracil(5FU))(抗癌剤のひとつでアポトーシスを誘導する)およびシスプラチン(cisplatin(CDDP))(抗癌剤のひとつで、アポトーシスを誘導する)を各々作用させ、薬剤に対する耐性を比較検討した。
(i) スタウロスポリンはfinalで1μMになるようにDMEM/F12(FBS入り)で希釈し、6cmディッシュにfinalで2ml投与した。
(ii) CDDPはfinalで2μg/mlになるようにDMEM/F12(FBSなし)で希釈し、6cmディッシュにfinalで2ml投与した。
(iii) 5-FUはfinalで10μMになるようにDMEM/F12(FBSなし)で希釈し、6cmディッシュにfinalで2ml投与した。
C4細胞と9W細胞のシスピラチンで24時間処理した後、PI、Hoechstで染色した例を図30に示す。
スタウロスポリン処理後の生存率の時間経過を図31に示した。図31に示すように、Ft、9W、A2の正常mtDNAを持つ細胞が早期に死滅する。c3、c8、c4、c7の変異mtDNAをもつサイブリッドはスタウロスポリンに耐性である。
シスプラチン処理後の生存率の時間経過を図33に示す。図33に示すように、Ft、9W,A2の正常mtDNAを持つ細胞は早期に死滅した。
ヌードマウスの皮下に移植した各々の癌細胞に対する抗癌剤耐性を形態学的、病理組織学的に検討した。使用した動物は、ヌードマウスBULB/c-nu/nu Slc ♀ 生後8Wであった。
wild(FT, A2)とmutant(C3, C4)細胞を各々5x106個ずつ注射用生理食塩水約250μlに浮遊させ26Gの注射針でマウスの肩甲骨付近の皮下に注入した。
腫瘍移植後7日後に腫瘍の生着を観察した。腫瘍径(最長径Ax最短径B)を計測した。デジタルノギスにより経皮的に腫瘍を計測した。また、体重をも計測した。腫瘍体積は式AxB2/2 mm3で近似した。
投与レジュメ
(i) シスプラチン(CDDP)は、2種類の濃度(3mg/kg, 9mg/kg)でDay1のみ投与した。
(ii) 5-フルオロウラシル(5FU)は、2種類の濃度(15mg/kg, 45mg/kg)でDay1、7の2回投与した。
初回投与から14日後に再び腫瘍径と体重を計測した。この際、マウスの苦痛が最小限となるよう努力し、エーテルによる致死を待った。死亡確認後に腫瘍を摘出し各種病理組織学的検索を行った。10%PFAで12時間固定後、パラフィン包埋し3μで薄切した。HE染色、TUNEL染色を施行し、自動細胞算出器を用いてH.E.(ヘマトキシン エオジン)染色では死細胞(necrosis)の面積比をTUNEL染色ではapoptosis細胞の割合(100細胞中)を算出した。
Claims (8)
- 点突然変異を有する変異型ミトコンドリアDNAを有する脱核した癌細胞をミトコンドリアDNA欠失細胞と融合させて得られるサイブリッドを抗癌剤存在下で培養し、アポトーシスを起こしたサイブリッドを計測することを含む、抗癌剤の効果を判定し得るミトコンドリアDNAの点突然変異を検出する方法。
- 点突然変異を有する変異型ミトコンドリアDNAを有する脱核した癌細胞をミトコンドリアDNA欠失細胞と融合させて得られるサイブリッドを抗癌剤存在下で培養し、アポトーシスを起こしたサイブリッドを計測することにより、癌細胞に抗癌剤に対する耐性を付与するミトコンドリアDNAの点突然変異を検出する、請求項1記載の方法。
- 変異型ミトコンドリアDNAの点突然変異が、(a) 8696 ATP6 T→C、9070 ATP6 T→Gおよび10970 ND4 T→C、または(b) 6267 CO1 G→A[ここで、前記変異は、配列番号1に表されるミトコンドリアDNA上の塩基の位置、遺伝子の名称および変異を表し、→は→の左の塩基が→の右の塩基に置換していることを示す]である請求項1または2に記載の方法。
- 癌細胞が癌患者由来である、請求項1から3のいずれか1項に記載の方法。
- 請求項1から4のいずれか1項に記載の方法により癌細胞のミトコンドリアDNAの点突然変異を検出し、種々の変異型ミトコンドリアDNAを有するサイブリッドに対する種々の抗癌剤の効果を測定し、ミトコンドリアDNAの点突然変異と抗癌剤の効果を関連付けし、癌細胞中のミトコンドリアDNAの点突然変異を指標に、該癌細胞に対する抗癌剤の効果を予測する方法。
- 点突然変異を有する変異型ミトコンドリアDNAを有する脱核した癌細胞をミトコンドリアDNA欠失細胞と融合させて得られるサイブリッドを抗癌剤存在下で培養し、アポトーシスを起こしたサイブリッドを計測することを含む、請求項5記載の癌細胞に対する抗癌剤の効果を予測する方法。
- 点突然変異を有する変異型ミトコンドリアDNAを有する脱核した癌細胞をミトコンドリアDNA欠失細胞と融合させて得られるサイブリッドのアポトーシスの頻度と野生型ミトコンドリアDNAを有する脱核した細胞をミトコンドリアDNA欠失細胞と融合させて得られるサイブリッドの抗癌剤によって誘導されるアポトーシスの頻度を比較し、点突然変異を有する変異型ミトコンドリアDNAを有するサイブリッドのアポトーシスの頻度が野生型ミトコンドリアDNAを有するサイブリッドのアポトーシスの頻度と差がないとき、前記ミトコンドリアの変異を有する癌細胞に対して用いた抗癌剤が効果があると判定する、請求項5または6に記載の方法。
- 請求項5から7のいずれか1項に記載の方法により、特定のミトコンドリアDNAの点突然変異を有する癌細胞に効果のある抗癌剤を選択する方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003392778A JP4496362B2 (ja) | 2003-11-21 | 2003-11-21 | 抗癌剤の効果を判定するミトコンドリアdnaの体細胞変異の検出 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003392778A JP4496362B2 (ja) | 2003-11-21 | 2003-11-21 | 抗癌剤の効果を判定するミトコンドリアdnaの体細胞変異の検出 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2005151843A JP2005151843A (ja) | 2005-06-16 |
JP4496362B2 true JP4496362B2 (ja) | 2010-07-07 |
Family
ID=34719366
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2003392778A Expired - Fee Related JP4496362B2 (ja) | 2003-11-21 | 2003-11-21 | 抗癌剤の効果を判定するミトコンドリアdnaの体細胞変異の検出 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP4496362B2 (ja) |
Families Citing this family (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
US8904851B2 (en) * | 2011-12-19 | 2014-12-09 | Empire Technology Development Llc | Methods and compositions for sensors |
CN106574927A (zh) * | 2014-01-14 | 2017-04-19 | 崔元哲 | 使用luterial的形态学特征筛选癌症预防剂或抗癌剂的方法 |
-
2003
- 2003-11-21 JP JP2003392778A patent/JP4496362B2/ja not_active Expired - Fee Related
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JP2005151843A (ja) | 2005-06-16 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
CN104797936B (zh) | 融合蛋白及其方法 | |
JP5922913B2 (ja) | 遺伝子発現の阻害に関する方法および組成物 | |
Gambaro et al. | VGLL3 expression is associated with a tumor suppressor phenotype in epithelial ovarian cancer | |
JP5931897B2 (ja) | マイクロrna−21、ミスマッチ修復および結腸直腸癌に関連する物質および方法 | |
Suarez et al. | Stable expression of a GFP-BSD fusion protein in Babesia bovis merozoites | |
US20200354794A1 (en) | Method for determining sensitivity to simultaneous inhibitor against parp and tankyrase | |
CN106701900A (zh) | 长链非编码rna herc2p3基因及其在胃癌中的用途 | |
AU725186B2 (en) | Method for identifying metastatic sequences | |
CN105396144A (zh) | 在肿瘤中差异表达的基因产物及其用途 | |
WO2016149618A1 (en) | Method for regulation of telomere-length | |
US7569221B2 (en) | Compositions and methods for identifying agents that alter expression of survivin | |
CN105189786B (zh) | 用作治疗癌症的疗法的靶标的falz | |
ES2684548T3 (es) | Proteína de fusión que comprende AXL y composición para tratar el cáncer que comprende la misma | |
JP4496362B2 (ja) | 抗癌剤の効果を判定するミトコンドリアdnaの体細胞変異の検出 | |
EP3851528A1 (en) | Composition for inducing death of cells having mutated gene, and method for inducing death of cells having modified gene by using composition | |
ES2376509T3 (es) | Reordenamientos de genes mipol 1-etv1. | |
WO2010050268A1 (ja) | がん幹細胞分子マーカー | |
CN112029866A (zh) | Wwp1在胰腺癌中的应用 | |
KR102120659B1 (ko) | 난소과립막세포암 또는 자궁내막암의 진단 및 치료를 위한 마이크로rna-1236의 용도 | |
McCormick et al. | Functional characterisation of a novel ovarian cancer cell line, NUOC-1 | |
WO2022052909A1 (zh) | 编辑造血干/祖细胞中bcl11a基因的方法 | |
Bangming et al. | MEN1-mediated CD44 alternative splicing depression is required for ferroptosis during lung cancer suppression | |
Hua | Bifunctional Glycosylase NEIL2 Plays an Important Role in Maintaining Cellular Genomic Integrity | |
WO2023186733A1 (en) | Method for the manufacture of a viral system, a vector system or any transport system for cancer-specific crispr complexes | |
Xu et al. | A germline heterozygous POLQ nonsense mutation causes hereditary colorectal cancer |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20061013 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20090915 |
|
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20091116 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20091215 |
|
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20100215 |
|
TRDD | Decision of grant or rejection written | ||
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 Effective date: 20100309 |
|
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 |
|
A61 | First payment of annual fees (during grant procedure) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61 Effective date: 20100318 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130423 Year of fee payment: 3 |
|
R150 | Certificate of patent or registration of utility model |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150 |
|
S111 | Request for change of ownership or part of ownership |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313113 |
|
R350 | Written notification of registration of transfer |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350 |
|
R250 | Receipt of annual fees |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250 |
|
LAPS | Cancellation because of no payment of annual fees |