JP4496362B2 - 抗癌剤の効果を判定するミトコンドリアdnaの体細胞変異の検出 - Google Patents

抗癌剤の効果を判定するミトコンドリアdnaの体細胞変異の検出 Download PDF

Info

Publication number
JP4496362B2
JP4496362B2 JP2003392778A JP2003392778A JP4496362B2 JP 4496362 B2 JP4496362 B2 JP 4496362B2 JP 2003392778 A JP2003392778 A JP 2003392778A JP 2003392778 A JP2003392778 A JP 2003392778A JP 4496362 B2 JP4496362 B2 JP 4496362B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
mitochondrial dna
cells
mutation
cybrid
mtdna
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP2003392778A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2005151843A (ja
Inventor
成男 太田
聡 水谷
雄二郎 設楽
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Nippon Medical School Foundation
Original Assignee
Nippon Medical School Foundation
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Nippon Medical School Foundation filed Critical Nippon Medical School Foundation
Priority to JP2003392778A priority Critical patent/JP4496362B2/ja
Publication of JP2005151843A publication Critical patent/JP2005151843A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP4496362B2 publication Critical patent/JP4496362B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Images

Landscapes

  • Investigating Or Analysing Biological Materials (AREA)
  • Measuring Or Testing Involving Enzymes Or Micro-Organisms (AREA)
  • Micro-Organisms Or Cultivation Processes Thereof (AREA)

Description

本発明は、被験体の抗癌剤感受性、すなわち被験体に対する抗癌剤の効果を判定する抗癌剤感受性試験に関し、具体的には、被験体が有するミトコンドリアDNA(mtDNA)の体細胞変異を指標に抗癌剤の効果を判定する方法および被験体のミトコンドリアDNAを有するサイブリッド細胞を含む癌細胞の効果を判定する抗癌剤感受性試験キットに関する。
癌の治療法として、抗癌剤の投与が広く行われている。しかし、抗癌剤によって癌の縮小を認められる場合(人)と認められない場合(人)があり、抗癌剤としての効果が認められず副作用のみがあらわれる場合があった。また癌患者によりある抗癌剤は効果があるが、他の抗癌剤は効果がないというように、癌患者によって適切な抗癌剤は異なっていた。この原因は不明であり、現在、核遺伝子をターゲットに抗癌剤の効果と遺伝子多型の関連が研究されているが、未だ十分な成果は認められていない。
抗癌剤がその患者に適用できるかどうかを検査する方法として、従来より癌感受性試験が行なわれていた(特許文献1から3参照)。具体的に抗癌剤感受性を判定する方法としては、各種抗癌剤と共に患者の癌細胞を混合培養し、培養終了後にミトコンドリアのコハク酸デヒドロゲナーゼを測定することにより抗癌剤の癌細胞に対する効果をみる方法(SDI法またはMTTアッセイ法)や組織培養法であるHDRA法と呼ばれている方法である。しかし、これらの方法は、高度先進医療として特定機能病院でのみ検査が可能であり、一般的に行なうことは難しい。
細胞の中には、核とミトコンドリアに遺伝子が存在し、癌の原因は核遺伝子の異常が原因であることが知られていた。一方で、ほとんどの癌細胞においてミトコンドリア遺伝子に変異が蓄積していることも知られている(非特許文献1から5参照)。ミトコンドリア遺伝子の変異を癌マーカーとして用い得ることも報告されている(特許文献4参照)。しかし、ミトコンドリアのDNA(mtDNA)の変異が癌の進行に貢献しているのか、あるいは癌の二次的な結果として生じるのか不明であり、その意義は明らかでなかった(非特許文献6参照)。
上述のように、抗癌剤の効果は、もっぱら核遺伝子との関連について検討されているが、癌細胞の抗癌剤に対する耐性とミトコンドリア遺伝子との関連性については不明であった。
特公平06-090205号公報 特開2003-61678号公報 特開2003-199585号公報 特表2002-523061号公報 Polyak, K. et al.、Nat. Genet. 20, 291-293 (1998) Fliss, M.S. et al., Science 287, 2017-2019 (2000) Carew, J.S. et al., Mol. Cancer 1, 9 (2002) Parrella, P. et al., Cancer Res. 61, 7623-7626 (2001) Liu, V.W. et al., Cancer Res. 61, 5998-6001 (2001) Coller, H.A. et al., Nat. Genet., 28, 147-150 (2001)
本発明は、被験体のミトコンドリア遺伝子の変異を指標に、被験体の抗癌剤感受性を判定することを目的とし、さらに被験体の抗癌剤感受性を判定するキットの提供を目的とする。
癌細胞の抗癌剤に対する耐性の獲得に関しては、様々な要因が示されてきた。
本発明者らは、ほとんどの癌細胞においてミトコンドリアDNA(mtDNA)に体細胞変異が蓄積していることに着目し、変異mtDNAの意義を明らかにするために、癌細胞においてmtDNAの変異が抗癌剤耐性に関与するかを検討した。本発明者らは、共通の核をもち、癌細胞由来の体細胞変異をもつミトコンドリアDNAを持つ細胞(サイブリッド)とミトコンドリア脳筋症患者由来の変異mtDNAをもつサイブリッドを数種類人工的に作製した。本発明者等は、これらのサイブリッドを用いた検討により、ミトコンドリアに変異がある場合に、よりアポトーシスを起こしにくいことを見出した。さらに、サイブリッドに抗癌剤を加え、その効果を評価するとミトコンドリアDNAに変異を含む細胞ではアポトーシス(細胞死)がおきにくいことが判明した。核は共通であるので、抗癌剤の効果の差異は、ミトコンドリアDNAに依存することが明らかとなった。そこで、抗癌剤の効果をミトコンドリアDNAの配列を決定することによって明らかにする本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は以下の態様:
[1] 癌細胞中のミトコンドリアtDNAの変異を指標に、該癌細胞に対する抗癌剤の効果を予測する方法、
[2] あらかじめ、種々のミトコンドリアDNAを有するサイブリッドに対する種々の抗癌剤の効果を測定し、ミトコンドリアDNA変異と抗癌剤の効果を関連付けしておき、該関連付けに基づいて、抗癌剤の効果を予測する、[1]の方法、
[3] 指標となるミトコンドリアDNAの変異が、以下の(1)から(63)の変異からなる群から選択される[1]または[2]の方法、
(1)8993 ATP6 T→G
(2)9176 ATP6 T→C
(3)687 12S rRNA G→A
(4)1243 12S rRNA T→C
(5)1406 12S rRNA T→C
(6)1676 16S rRNA A→G
(7)2015 16S rRNA G→A
(8)2222 16S rRNA T→C
(9)2905 16S rRNA A→G
(10)3421 ND1 G→A
(11)3505 ND1 A→G
(12)3654 ND1 C→T
(13)4580 ND2 G→A
(14)4811 ND2 A→G
(15)5918 CO1 T→C
(16)5973 CO1 G→A
(17)5999 CO1 T→C
(18)6047 CO1 A→G
(19)6146 CO1 A→G
(20)6267 CO1 G→A
(21)6869 CO1 C→T
(22)7151 CO1 C→T
(23)7986 CO2 G→T
(24)8696 ATP6 T→C
(25)9070 ATP6 T→G
(26)9078 ATP6 T→C
(27)9254 CO3 A→G
(28)9368 CO3 A→G
(29)9804 CO3 G→A
(30)10176 ND3 G→A
(31)10715 ND4L C→T
(32)10970 ND4 T→C
(33)11009 ND4 T→C
(34)11152 ND4 T→C
(35)11674 ND4 C→T
(36)11703 ND4 T→C
(37)11781 ND4 T→C
(38)11974 ND4 A→G
(39)12414 ND5 T→C
(40)12561 ND5 G→A
(41)12717 ND5 C→T
(42)12954 ND5 T→C
(43)13500 ND5 T→C
(44)14552 ND6 A→G
(45)14650 ND6 C→T
(46)14866 CytB C→T
(47)15646 CytB C→T
(48)15784 CytB T→C
(49)15884 CytB G→C
(50)16527 D-Loop C→T
(51)16537 D-Loop C→T
(52)710 12S rRNA T→C
(53)1738 16S rRNA T→C
(54)3308 ND1 T→C
(55)8009 COXII G→A
(56)14985 CYTb G→A
(57)15572 CYTb T→C
(58)9949 COXIII G→A
(59)10563 ND4L T→C
(60)6264 COXI G→A
(61)1967 16S rRNA T→C
(62)2299 16S rRNA T→A
(63)12418 ND5 Aの挿入
[ここで、(1)から(63)において、ミトコンドリアDNA上の塩基の位置、遺伝子の名称および変異を表し、→は→の左の塩基が→の右の塩基に置換していることを示す]
[4] 変異型ミトコンドリアDNAを有する脱核した細胞をミトコンドリアDNA欠失細胞と融合させて得られるサイブリッドを抗癌剤存在下で培養し、アポトーシスを起こしたサイブリッドを計測することを含む、上記変異型ミトコンドリアDNAを有する細胞の抗癌剤に対する感受性を試験する方法、
[5] 変異型ミトコンドリアDNAを有する脱核した細胞をミトコンドリアDNA欠失細胞と融合させて得られるサイブリッドのアポトーシスの頻度と野生型ミトコンドリアDNAを有する脱核した細胞をミトコンドリアDNA欠失細胞と融合させて得られるサイブリッドのアポトーシスの頻度を比較し、変異型ミトコンドリアDNAを有するサイブリッドの抗癌剤により誘導されるアポトーシスの頻度が野生型ミトコンドリアDNAを有するサイブリッドのアポトーシスの頻度と差がないとき、前記ミトコンドリアの変異を有する癌細胞は用いた抗癌剤に対して感受性であると判定する、[4]の方法、
[6] 変異型ミトコンドリアDNAの変異が、[3]に記載の(1)から(63)の変異からなる群から選択される[4]または[5]の方法、
[7] [1]から[6]のいずれかの方法により、特定のミトコンドリアDNA変異を有する癌細胞に効果のある抗癌剤を選択する方法、
[8] 癌患者由来の細胞を脱核し、ミトコンドリアDNA欠失細胞と融合し癌患者由来ミトコンドリアDNAを有するサイブリッドを作製し、該サイブリッドを抗癌剤存在下で培養し、アポトーシスを起こしたサイブリッドを計測することを含む、前記癌患者の抗癌剤に対する感受性を試験する方法、
[9] 脱核した癌患者由来の細胞とミトコンドリアDNA欠失細胞とを融合して得られる癌患者由来ミトコンドリアDNAを有するサイブリッドのアポトーシスの頻度と野生型ミトコンドリアDNAを有する脱核した細胞をミトコンドリアDNA欠失細胞と融合させて得られるサイブリッドのアポトーシスの頻度を比較し、変異型ミトコンドリアDNAを有するサイブリッドのアポトーシスの頻度が野生型ミトコンドリアDNAを有するサイブリッドのアポトーシスの頻度と差がないとき、前記癌患者は用いた抗癌剤に対して感受性であると判定する[8]の方法、
[10] [8]または[9]の方法により、特定の癌患者に対する効果のある抗癌剤を選択する方法、
[11] 変異型ミトコンドリアDNAを有する脱核した細胞をミトコンドリアDNA欠失細胞と融合させて得られる抗癌剤感受性試験用サイブリッド、
[12] 変異型ミトコンドリアDNAの変異が、[3]に記載の(1)から(63)の変異からなる群から選択される[11]の抗癌剤感受性試験用サイブリッド、
[13] 変異型ミトコンドリアDNAを有する脱核した細胞をミトコンドリアDNA欠失細胞と融合させて得られるサイブリッドを含む抗癌剤感受性試験キット、
[14] 異なる変異型ミトコンドリアDNAを有する脱核した細胞をミトコンドリアDNA欠失細胞と融合させて得られる複数のサイブリッドを含む、[13]の抗癌剤感受性試験キット、ならびに
[15] ミトコンドリアDNAの変異が、[3]に記載の(1)から(63)の変異からなる群から選択される[13]または[14]の抗癌剤感受性試験キット、
に関する。
実施例に示したように、mtDNAに変異があると細胞はアポトーシスを起こしにくくなり、抗癌剤の効果も低下し、抗癌剤耐性となる。このため、細胞または患者である被験体の有するmtDNAの変異を指標に被験体の抗癌剤感受性、すなわち抗癌剤の被験体に対する効果を判定することができる。さらに、特定のまたは未知の変異を有するmtDNAを有する細胞であって脱核した細胞と正常核を有する細胞を融合して得られるサイブリッドに種々の抗癌剤を適用することにより、特定の抗癌剤の効果を低下させる変異を調べることができ、抗癌剤の適用範囲を明確にすることができる。また、抗癌剤の適用範囲を明確にすることで、有効な抗癌剤の開発を促進できる。
本発明において、被験体のミトコンドリアDNA(mtDNA)の変異を指標にして該被験体に対する抗癌剤の効果、すなわち被験体の抗癌剤感受性を判定する。ここで、被験体とは、癌細胞または癌患者をいう。本発明においては、最終的には癌患者へ抗癌剤を投与する場合に該抗癌剤が癌患者の癌にたいして治療効果を有するか否かを判定するが、その過程において、癌患者の癌細胞の抗癌剤感受性を調べるので、癌細胞および癌患者の両方が被験体として用いられる。また、判定とは予測、評価、決定を含む意味で用いられる。本発明において、抗癌剤の効果とは、癌細胞に対する殺細胞効果と癌患者に対する癌治療効果の両方の意味を持ち、癌細胞に対して抗癌剤が効果を有するとは、該癌細胞が抗癌剤感受性であることを意味し、癌患者に対して抗癌剤が効果を有するとは、該癌患者が抗癌剤感受性であることを意味する。抗癌剤は癌細胞にアポトーシス(細胞死)を引き起こし、癌細胞を殺滅し得る。癌細胞においてmtDNAの変異によりアポトーシスが起きにくくなり、抗癌剤の効果が減少するので、mtDNAの変異を指標にすることにより抗癌剤の効果を評価できる。
本発明において抗癌剤の効果判定の指標となるミトコンドリアDNAの変異は限定されず、細胞のアポトーシスが起こりにくくなり、細胞に抗癌剤耐性を付与するような変異ならば、既に報告されている癌細胞に認められるmtDNAの変異のみならず今後見出されるであろうmtDNAの変異をすべてを含む(Jennifer S Carew et al., Mitochondrial defects in cancer, Molecular Cancer 2002 1:9、特表2002-523061号公報等)。このような変異として、例えば、以下の変異が挙げられる。以下の変異部位のヌクレオチド位置は、mtDNA全体における位置を示す以下の文献に従った。ミトコンドリアDNAの塩基配列を配列番号1に示す。
文献
Anderson, S.; Bankier, A.T.; Barrell, B.G.; de Bruijn, M.H.; Coulson, A.R.; Drouin, J.; Eperon, I.C.; Nierlich, D.P.; Roe, B.A.; Sanger, F.; Schreier, P.H.; Smith, A.J.; Staden, R.; Young, I.G. Sequence and organization of the human mitochondrial genome. Nature, 290, 457-465 (1981).
Andrews RM, Kubacka I, Chinnery PF, Lightowlers RN, Turnbull DM, Howell N. Reanalysis and revision of the Cambridge reference sequence for human mitochondrial DNA. Nat Genet. 23, 147 (1999).
ミトコンドリアATPシンターゼ遺伝子のサブユニット6(ATP6)の第8993位のTのGへの置換(以下、ATP6 8993 T→Gのように示す。本明細書においてT8993Gのように表すことがある。)
ATP6 9176 T→C
12S rRNA 710 T→C
16S rRNA 1738 T→C
ND1 3308 T→C
COXII 8009 G→A
CYTb 14985 G→A
CYTb 15572 T→C
COXIII 9949 G→A
ND4L 10563 T→C
COXI 6264 G→A
ND5 12418 Aの挿入
16S rRNA 1967 T→C
16S rRNA 2299 T→A
以下、膵臓癌由来株化細胞に認められる変異を表1に示す。表1中、株化細胞名、塩基の位置、遺伝子名、変異、塩基の変異によるアミノ酸置換を示す。変異は、例えばTのCへの変異はT→Cで表す。
Figure 0004496362
Figure 0004496362
また、表2に癌の部位ごとに認められるmtDNA変異を有する遺伝子または領域、その変異がヘテロプラズミー(Heteroplasmic)かホモプラズミー(Homoplasmic)か、呼吸鎖の酵素複合体の機能に影響を与えるか(与える場合は複合体名を示す)および該変異が報告されている文献(Reference)を番号で示す。各番号の文献は表2の後に示す(Jennifer S Carew et al., Mitochondrial defects in cancer, Molecular Cancer 2002 1:9(http://www.molecular-cancer.com/content/1/1/9))。本発明のmtDNAの変異はこれらの変異をも含む。
Figure 0004496362
文献リスト
33 Tan DJ et al., Cancer Res 2002, 62:972-976
34 Parrella P. et al., Cancer Res 2001, 61:7623-7626
37 Liu VW et al., Cancer Res 2001, 61:5998-6001
38 Polyak K et al., Nat Genet 1998, 20:291-293
44 Habano W et al., Oncogene 1998, 17:1931-1937
45 Habano W et al., Int J Cancer 1999, 83:625-629
46 Maximo V et al., Genes Chromosomes Cancer 2001, 32:136-143
47 Tamura G et al., Eur J Cancer 1999, 35:316-319
48 Burgart LJ et al., Am J Pathol 1995, 147:1105-1111
49 Nomoto S et al., Clin Cancer Res 2002, 8:481-487
52 Miyazono F. et al., Oncogene 2002, 21:3780-3783
53 Hibi K et al., Int J Cancer 2001, 92:319-321
54 Jones JB et al., Cancer Res 2001, 61:1299-1304
60 Jeronimo C et al., Oncogene 2001, 20:5195-5198
66 Yeh JJ et al., Oncogene 2000, 19:2060-2066
67 Maximo V et al., Am J Pathol 2002, 160:1857-1865
69 Sanchez-Cespedes M et al., Cancer Res 2001, 61:7015-7019
73 Ivanova R et al., Int J Cancer 1998, 76:495-498
75 Gattermann N et al., Blood 1997, 90:4961-4972
76 Reddy PL et al., Br J Haematol 2002, 116:564-575
本発明において、mtDNAの変異を指標に抗癌剤の効果を評価するには、あらかじめ特定のmtDNAの変異に対する種々の抗癌剤の効果を調べておき、mtDNAの変異と抗癌剤を関連付けしておく必要がある場合がある。mtDNAの変異は以下のようにして決定することができる。
被験体である癌患者から細胞を採取し、該細胞からmtDNAを抽出し、上述の変異が存在するか否かを決定すればよい。細胞は癌化に伴うmtDNAの体細胞変異を伴うので、腫瘍部の細胞を用いる。上述の変異が存在するか否かは、定法により容易に決定することができる。例えば、mtDNAの目的の部位を含む断片をPCR等の核酸増幅法により増幅し、増幅断片の塩基配列を決定することにより行うことができる。あるいは、増幅断片について周知のPCR-SSPC法を行うことができる。あるいは、正常遺伝子および変異遺伝子における塩基が公知の場合は、増幅断片についてミスマッチプローブ又はミスマッチプライマーを用いた周知の点突然変異検出法を適用することにより調べることができる。あるいは、増幅断片について、上記部位の塩基の変異に基づいて制限酵素部位が生じたり消失したりする制限酵素を用いて定法であるPCR-RFLP法により行うこともできる。
かかる塩基を調べる方法は、最も直接的な方法である標的領域の塩基配列決定法(シークエンス法)や、特定位置の塩基置換だけを検出する目的の場合に有効な、20塩基程度の合成オリゴヌクレオチドと標的塩基配列とのハイブリッド形成の有無を利用したアレル特異的オリゴヌクレオチドハイブリダイゼーション法(MASA法)、標準RNAプローブと標準DNA断片とのハイブリッドをリボヌクレアーゼAで処理しミスマッチ位置でのプローブRNAの切断で塩基置換の存在とおよその位置を知るリボヌクレアーゼAミスマッチ切断法(RNaseプロテクション法)や、DNA配列をPCRで増幅する際に、その一端にGCに富んだ塩基配列(GCクランプ)をつけて変性剤濃度勾配ゲル電気泳動(denaturing gradient gel electrophoresis: DGGE)を行い一塩基置換を検出する方法(PCR-DGGE法)を用いることができる。
また、2本鎖DNA断片を1本鎖に解離し、その塩基配列に依存した独自の高次構造をポリアクリルアミドゲル電気泳動することにより、一塩基置換を移動度の差として検出する方法(PCR-SSCP法)や、塩基配列特異的プローブ(SSOP)を用いたハイブリダイゼーション法(PCR-SSOP法)や、その変法(PCR-RD法やPCR-MPH法)や、ある領域をPCR法などで増幅した後、点突然変異が生じた部位を切断部位と認識する制限酵素で処理して点突然変異を生じなかったDNAとはサイズの違ったアリルとして検出するPCR-RFLP法(特開平5-308999号公報)や、標的DNAの3’末端のヌクレオチド部位に隣接する核酸配列に対して検出プライマーをアニールすることと、DNAポリメラーゼを用いて、検出するヌクレオチドに対して相補性の、シングルラベルのヌクレオチド三リン酸でかかるプライマーを伸長する方法(ミニシークエンシング法)等も用いることができる。
また、TaqManPCR法、インベーダー法等種々の公知のSNPタイピング法によっても検出することができる。これらの具体的方法は、種々の文献に開示されている。
抗癌剤は、ガン細胞の分裂を抑え、癌細胞にアポトーシスを誘導する薬剤である。本発明において効果を判定する抗癌剤の種類は限定されず、核酸合成の阻害剤であるアルキル化剤、代謝拮抗剤、抗生物質抗癌剤、トポイソメラーゼ阻害剤、ホルモン製剤、白金製剤、分子標的治療薬、非特異的抗悪性腫瘍剤等の公知の抗癌剤、新規に開発される抗癌剤すべてを含む。また、公知の抗癌剤に修飾を加えた抗癌剤も含まれる。抗癌剤として、例えば、シクロフォスファミド、イフォスファミド、メルファラン、チオテバ、ブスルファン、カルボコン、ダカルバジン、塩酸ニムスチン、ラニムスチン(以上、アルキル化剤)、メトトレキサート、メルカプトプリン、6-メルカプトプリンリボシド、フルオロウラシル(5-FU)、テガフール、テガフールウラシル、カルモフール、ドキシフルリジン、シタラビンオクホスファート、ヒドロキシカルバミド、シタラビン、塩酸ゲムシタビン、リン酸フルダラビン、エノシタビン、ロイコボリン(以上、代謝拮抗剤)、硫酸ビンクリスチン、硫酸ビンブラスチン、硫酸ビンデシン、ドセタキセル水和物、パクリタキセル、酒石酸ビノレルビン(以上、アルカロイド系抗癌剤)、塩酸ドキソルビシン、塩酸エピルビシン、塩酸ピラルビシン、塩酸ダウノルビシン、塩酸アクラルビシン、マイトマイシンC、アクチノマイシンD、ブレオマイシン、硫酸ペプロマイシン、ネオカルチノスタチン、ジノスタチンスチマラマー(以上、抗生物質抗癌剤)、エトポシド、塩酸イリノテカン、塩酸ノギテカン(以上、トポイソメラーゼ阻害薬)、リン酸エストラムスチンタトリウム、フルタミド、ビカルタミド、酢酸ゴセレリン、酢酸ニュープロレリン、クエン酸タモキシフェン、塩酸フォドロゾール水和物、アナストロゾール、メピチオスタン、エピチオスタノール、酢酸メドロキシプロゲステロン(以上、ホルモン製剤)、シスプラチン、カルボプラチン、ネダプラチン(以上、白金製剤)、クレスチン、レンアチン、シゾフィラン、ウベニメクス(以上、非特異的抗悪性腫瘍剤)、トラスツズマブ、リツキシマブ、メシル酸イマチニブ、ゲフィチニブ(以上、分子標的治療薬)、塩酸ミトキサントロン、塩酸プロカルバジン、ペントスタチン、ソブゾキサン、トレチノイン、L-アスパラギナーゼ、アセグラトン、ミトタン、ポルフィマーナトリウム等が挙げられる。
mtDNAの変異と該変異に基づく特定の抗癌剤に対する感受性との関係は以下のようにして調べることができる。
変異の部位がわかっているmtDNAと正常の核を持つサイブリッド(細胞質融合細胞)を作製する。サイブリッドの作製方法は公知であり、例えば、安川武宏および太田成男、新ミトコンドリア学、共立出版、2001年11月10日初版発行、内海耕造、井上正康監修、pp392-394 サイブリッドの作製法と大量培養法やHayashi,J-Iら、J.Biol.Chem, 269, 19060-19066(1994)の記載にしたがって行えばよいが、例えば、以下のようにして行う。まず、変異を有するmtDNAを有する細胞を、脱核処理する。脱核はサイトカラシンB処理等により行えばよい。この際、mtDNAに変異を有する細胞は、癌患者由来の癌細胞を用いてもよく、またmtDNAの変異部位が特定されている株化癌細胞を用いてもよい。また、癌細胞でなくてもミトコンドリア病患者でmtDNAに変異がある場合もすべてを含む。これらの細胞のmtDNAの変異は上記方法により決定することができる。また、表2に記載されている株化細胞を用いてもよい。また、細胞によっては既にmtDNAの変異が決定されているものもあるので、この場合はその変異に関する情報を利用すればよい。株化癌細胞は、細胞バンクから入手することもできるし、市販のものを用いてもよい。次いで、mtDNAに変異を有する細胞をmtDNAを欠失させた細胞と融合する。mtDNAは細胞を臭化イチジウム等で処理することにより欠失させることができる。この際、用いる細胞は限定されないが、HeLa細胞等の株化細胞を用いればよい。細胞融合後にサイブリッドを選択するために、細胞は特定の栄養欠損株であることが望ましい。例えば、解糖系しか持たず糖としてガラクトースしか存在しない条件下では生育できない細胞を用いればよい。解糖系しか持たないHeLa細胞としてρ0HeLa細胞が挙げられる。また、細胞融合後にサイブリッドを選択するために細胞は8-アザグアニン耐性等の特定の薬剤に耐性のものを用いるのが望ましい。このようにして得られた脱核してあるがmtDNAを有する細胞と、mtDNAを欠失しているが核を有する細胞を融合する。細胞の融合は、公知の方法で行うことができ、例えばポリエチレングリコールを用いた方法やエレクトロポレーションにより行えばよい。なお、mtDNAを有する細胞のmtDNAはヘテロプラズミーであるので、融合直後の融合細胞の変異mtDNAの割合が細胞ごとにばらつきがある。従って、サブクローニングを行い、変異mtDNAの割合が一定であるサイブリッドを選択する。この際、サイブリッドのみを選別するために、親細胞である株化細胞が耐性である薬剤および用いた栄養欠損株の必須栄養分を欠いた培地で培養する。また、薬剤耐性、栄養耐性も適宜選択することができる。サブクローニング後に、サイブリッドからDNAを抽出しサイブリッド中のmtDNAの変異率を調べる。この際、変異率が100%のサイブリッド、すなわちホモプラズミーなサイブリッドを用いるのが望ましい。mtDNAの変異率は例えば、抽出したDNAの特定の部位の変異をPCRと制限酵素処理を組合せた方法で測定することができる。
このようにして得られたmtDNAに変異を有するサイブリッドの培養に、効果を調べようとする抗癌剤を添加し、培養を続ける。培養は数時間から数日行えばよい。培養に用いる培地、培地に添加するサプリメント、培養条件は公知の動物細胞の培養方法に基づいて適宜決定することができる。この際の抗癌剤の濃度は限定されず、抗癌剤毎に適宜決定することができるが、培地中に通常数pg/mL〜数mg/mLになるように添加すればよい。抗癌剤の濃度を複数設定しておくことにより、ある抗癌剤の至適濃度を予測することもできる。抗癌剤の存在下での培養後、サイブリッド集団中のアポトーシスを起こした細胞の割合(アポトーシスの出現頻度)を調べる。アポトーシスを起こした細胞は、PI、Hoechst33342、MitoTag(商標)等の公知の染色剤を用いて染色すればよく、またTUNEL法で染色してもよい。染色された細胞を測定することによりアポトーシスを起こした細胞の割合を決定することができる。染色細胞の測定は、顕微鏡観察かあるいはフローサイトメーターを用いて行うことができる。この際、mtDNAに変異を有しない野生型mtDNAを有するサイブリッドをも作製しておき、該サイブリッドをコントロールとし、アポトーシスを起こした細胞の割合を比較する。mtDNAに変異を有しない細胞の親株としては、例えば正常人の線維芽細胞を用いればよい。アポトーシスを起こした細胞の割合が、コントロールよりも有意に低い場合に、該サイブリッドが有するmtDNAの変異は、用いた抗癌剤への耐性を付与する変異であると判定できる。すなわち、mtDNAが癌患者由来の場合は、その癌患者は用いた抗癌剤に対して耐性であると判定できる。一方、アポトーシスを起こした細胞の割合が、コントロールと同等のときすなわち有意の差がない場合には、該サイブリッドが有するmtDNAの変異は、用いた抗癌剤への耐性を付与せず、該変異を有する細胞は抗癌剤に感受性であると判定できる。ここで、有意の差が存在するかどうかは、Student test 等の公知の有意差検定法により検定すればよい。また、変異型mtDNAを有するサイブリッドのアポトーシスを起こした細胞の割合が、コントロールのアポトーシスを起こした細胞の割合に比べて、5%、好ましくは10%、さらに好ましくは25%、特に好ましくは50%以上低い場合、有意差があると判断する。すなわち、mtDNAが癌患者由来の場合は、その癌患者は用いた抗癌剤に対して感受性であると判断できる。この際、多種類のmtDNAの変異をそれぞれ有する多数のサイブリッドと多種類の抗癌剤を組合せることにより、mtDNAの変異とその変異により効果が減じられる抗癌剤の組合わせを決定することができる。このような方法により、特定のmtDNAの変異を有する癌患者への投与に適した抗癌剤を決定することができる。
あらかじめmtDNA変異と抗癌剤の関係を調べておけば、癌患者由来の癌細胞のmtDNAの変異を決定することにより、該患者に適用すべき抗癌剤を選択することができる。
また、本発明は特定のmtDNAの変異を有する患者への投与に適した、新規な抗癌剤のスクリーニングを行う方法をも包含する。上述の方法で、種々のmtDNA変異を有するサイブリッドを作製し、これに候補薬剤を添加して培養することにより、候補薬剤が特定のmtDNAを有する癌患者に対して抗癌剤として効果があるかどうか判定することが可能である。さらに、同様に本発明は既知の抗癌剤に修飾を加えてより効果の高い抗癌剤を開発するためのツールとしても用いることができる。既知の抗癌剤の一部の基の置換等により修飾した抗癌剤の存在下で特定のmtDNAの変異を有するサイブリッドを培養し、サイブリッドがアポトーシスを起こす割合を測定することにより、前記修飾による抗癌剤の効果の変化を知ることができ、より効果の高い抗癌剤を開発することができる。
さらにまた、本発明は、抗癌剤の効果を判定するためのmtDNAの特定の部位に変異を有するサイブリッドをも包含する。該サイブリッドを候補抗癌剤の存在下で培養しアポトーシスを起こすサイブリッドの割合を測定することにより用いた抗癌剤の効果を判定することができる。また、該サイブリッドはある化合物が抗癌剤としての効果を有するかどうかを判定し、新規な抗癌剤を選択する抗癌剤のスクリーニングにも用いることができる。この際、サイブリッドは特定のmtDNAの変異を有する1種類のサイブリッドでもよいし、種々のmtDNAの変異をそれぞれ有する2以上のサイブリッドのセットであってもよい。また、1種類のサイブリッドが複数のmtDNAの変異を有していてもよい。さらに本発明は、これらのサイブリッドまたはサイブリッドのセットを含む、抗癌剤の効果を判定する、すなわち抗癌剤感受性を試験するためのキットまたは新規な抗癌剤をスクリーニングするためのキットをも包含する。
上記の方法では、サイブリッドが有するmtDNAの変異が既知である必要があるが、本発明は、mtDNAの変異の有無およびmtDNAの変異の部位を問わず、被験体である癌患者に対するmtDNAの変異に起因する抗癌剤の効果を判定する方法または該患者に適した抗癌剤を選択する方法をも包含する。
この場合、被験体である癌患者から癌細胞を採取し上述の方法でサイブリッドを作製する。該サイブリッドの培養に、効果を測定しようとする候補抗癌剤を添加し、さらに培養を続ける。被験体由来のmtDNAが変異を有し、該変異により候補抗癌剤の効果が減じられている場合、抗癌剤によってサイブリッドのアポトーシスは誘発されないので、サイブリッドはアポトーシスを起こすことなく生存を続ける。被験体由来のmtDNAが変異を有していないか、あるいは変異を有していたとしても候補抗癌剤の効果を減じるような変異ではない場合には、サイブリッドは抗癌剤によりアポトーシスを起こす。mtDNAに変異を有しないサイブリッドをコントロールとして用い、アポトーシスの割合をコントロールと比較することで、抗癌剤の効果、すなわち癌患者の抗癌剤感受性を判定することができる。この際、サブクローニングにより得られた多数のクローンを用いることが望ましい。クローンにより、変異mtDNAの含有率が異なるので、多数のクローンを得ることにより、変異mtDNA含有率が高いクローンを用いる確率が高くなり、より確実に抗癌剤の効果を判定することができる。さらに、このようにして特定の抗癌剤でアポトーシスを起こしにくいクローンが有するmtDNAの変異を決定することにより、用いた抗癌剤の効果を減じるmtDNAの変異を決定することができる。本発明は、このような方法で、特定の抗癌剤の効果を減じるmtDNAの変異を決定する方法をも包含する。
本発明を以下の実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
〔実施例1〕
〔実施例1において用いた材料と方法〕
サイブリッド細胞株の単離と培養
一次皮膚線維芽細胞は、Leigh症候群の臨床的特徴を有する9ヶ月の男児より得た。該患者のmtDNAはATPシンターゼサブユニット6遺伝子(MTATP6)の第8993位のヌクレオチドがTからGへ置換している変異を含んでいた(Holt, I.J. et al., Am. J. Hum. Genet. 46, 428-433 (1990)、Nakano, K. et al., Mitochondrion, 3, 21-27 (2003))。線維芽細胞を融合に用い、脱核の後サイブリッドを構築した。サイブリッドの構築は、安川武宏および太田成男、新ミトコンドリア学、共立出版、2001年11月10日初版発行、内海耕造、井上正康監修、pp392-394 サイブリッドの作製法と大量培養法の記載に従い行った。血小板をLeigh症候群の臨床的特徴、ただし緩やかな特徴を有する17歳の女性から得た。該患者は、同じサブユニット遺伝子の第9176位のヌクレオチドがTからCへ置換している変異を含んでいた(Nakano, K. et al., Mitochondrion, 3, 21-27 (2003))。脱核した線維芽細胞または血小板を8チオグアニンに耐性のHeLa細胞株であり完全にmtDNAを欠いているEB8(Holt, I.J. et al., Am. J. Hum. Genet. 46, 428-433 (1990))と融合した。サイブリッドは、8チオグアニンを用いて選択肢グルコースを多量に含む培地(Holt, I.J. et al., Am. J. Hum. Genet. 46, 428-433 (1990))、グルコース(3.2mg/mL)、ピルビン酸(0.6mg/mL)、50μg/mLウリジンおよび10%ウシ胎児血清を含むDMEM/F-12(Invitrogen社)中で維持した。マイコプラズマ濃度を定期的にチェックした。
変異型mtDNAの検出
サイブリッドまたは腫瘍からの総DNAをDNeasy Tissue Kit(QIAGEN社)を用いて単離した。T8993GまたはT9176C点突然変異を検出するために、139または178bpのmtDNA断片を、プライマーセットを用いて増幅した。プライマーセットは、それぞれフォワードプライマーがヌクレオチド位8917-8935または9025-9046でリバースプライマーが9043-9055または9203-9177であった。PCR増幅産物は、T8993GまたはT9176CがAvaIまたはScrfI制限部位を形成するので、制限酵素、AvaIまたはScrfIで消化することにより検出した。その結果、T8993GまたはT9176C突然変異が、それぞれ139bp断片と63bp断片または151bp断片と27bp断片としてアガロース電気泳動により検出された。ヌードマウスのmtDNA由来の断片で上記条件で増幅されたものは認められなかった。
ヌードマウスにおいて腫瘍を形成させるためのサイブリッドの移植
Martigelに懸濁させたサイブリッド細胞(5×106/0.2mL)をメスの胸腺欠損マウス(4週齢のBALB/c nu/nu)に皮下注射した。移植3から9日後に、動物を犠牲にし腫瘍を取り出した。腫瘍体積を式V=(A×B2)/2(式中、Vは体積(mm3)、Aは長径(mm)、Bは短径(mm)を示す)で計算した。
組織像
腫瘍を移植3から9日後に取り出し、10%ホルマリン中4℃オーバーナイトで固定した。固定化組織をパラフィンに包埋し、5μmの切片とし、H&E(ヘマトキシン エオジン)を用いて染色した。
プラスミドの構築およびトランスフェクション
MTATP6遺伝子(NuATP6)の核バージョン(a nuclear version)のプラスミドおよびその変異型バージョン(a mutant version)(muATP6)はコロンビア大学の神経学部のEric A Schon教授およびコーネル大学のGiovanni Manfredi博士より入手した(Biswas, G. et al, EMBO J. 18, 522-533 (1999)、 Manfredi, G. et al. Rescue of a deficiency in ATP synthesis by transfer of MTATP6, a mitochondrial DNA-encoded gene, to the nucleus. Nat. Genet. 30, 394-399 (2002))。
簡単に説明すると、ミトコンドリア由来のコドンを普遍コドンに転換し、シトクロームcオキシダーゼサブユニットVIII遺伝子由来のミトコンドリア標的配列の下流に挿入することにより構築した。該遺伝子は、さらにFLAG配列を3’末端にマーカーとして含んでいた。T8993G点突然変異を含む変異型バージョン(muATP6)を同様にして構築した。遺伝子を発現ベクターであるEF-BOSに挿入した。NuATP6またはmuATP6を含むプラスミドをPolyfect Transfection Reagent (QIAGEN)を用いて製造者のプロトコールに従い、neo resistant遺伝子で同時トランスフェクトした。構成的に発現する安定なトランスフェクタントをジェネティシンG418の存在下に選択しNuATP6またはmuATP6の発現を抗FLAG染色により確認した。
免疫学的手法
免疫組織化学のために、細胞を4ウェルのプラスティックディッシュ(SonicSeal Slide, Nalge Nunc)で増殖させ、Mito Tracker Red を用いて処理し(10nMで30分間)、固定しマウス抗FLAG M2モノクローナル抗体(Sigma Immunochemicals)を用いて免疫染色し、免疫学的検出のために二次抗マウスCy5(Jackson Immunochemicals)とインキュベートした。MitotrackerまたはFLAGの異なる調合色(pseudocolor)を有する適切なデジタルイメージを選択し可視化した。そして、色を併合させ、Zeiss Conforcal 顕微鏡を用いて同時局在化の評価を行った。必要ならば、DAPIを含むH-1206 VECTASHIELDマウントメディウムを対比染色に用いた。
腫瘍を4℃で10%ホルマリンを用いてオーバーナイト固定し、パラフィンに包埋し、5μmで切片化し、マウス抗FLAG M2モノクローナル抗体で免疫染色し、LSAB2システムのための、二次ビオチン化リンク抗マウスIg、HRP(DAKO社)および3次ストレプトアビジンペルオキシダーゼコンジュゲート(DAKO社)とともにインキュベートした。ヘマトキシリンを対比染色に用いた。
アポトーシスの検出
アポトーシス性細胞をApoTaq(商標) Peroxidase In Situ Oligo Ligation Kit(#S7200 INTERGEN社)を用いたTUNEL法により検出した。HRPの基質である3-アミノ-9-エチルカルバゾールは陽性核で赤色を呈した(Didenko, V.V. et al, Biotechniques 27,1130-1132 (1998))。ヘマトキシリンおよびメチルグリーンを、対比染色に用いた。陽性に染色した細胞の割合を、腫瘍および細胞クローン各々について少なくとも6箇所で測定した。各々の腫瘍または細胞培養において、陽性染色された細胞の割合を独立に計算し、その数を平均し、平均±S.D.を得た。
フローサイトメトリーによりアポトーシス性細胞を検出するために、サイブリッド細胞を0.2%チャコール処理ウシ胎児血清(FBS)含有フェノールレッド不含D-MEM/F-12を用いて、分析前に24時間インキュベートした。トリプシン処理細胞を0.1%クエン酸ナトリウムおよび0.1% TritonX-100含有低張ヨウ化プロピジウム溶液(50μg/mL)に30分間懸濁させ、FACScan フローサイトメーター(Becton Dickinson)(ベックマン・コールター)を用いたサイトメトリック分析を行った(Terford, W.G., J. Immunol. Meth., 172, 1-16 (1994))。DNAラダーを検出するために、Apoptotic DNA Ladder KIT(Roche)を用いて製造者のガイドに従い、2×106サイブリッド細胞(直径100mmのペトリ皿中でセミコンフルエント)からDNAを単離した。サンプルをエチジウムブロマイドを用いたアガロースゲル電気泳動に供した(Gong, J. et al, Anal. Biochem., 218, 314-319 (1994))。
統計的分析
2群の差は、unpaired Student’s test を用いて比較した。p<0.05を有意差とした。
〔サイブリッドの酸素消費および膜電位〕
mtDNAを欠失したHela細胞と目的の細胞質に存在するミトコンドリアを融合し、Helaの核および目的の細胞質由来のmtDNAを有する「サイブリッド」クローンを得た(Holt, I.J. et al, Am. J. Hum. Genet. 46, 428-433 (1990))。Leigh症候群の患者由来のミトコンドリアATPシンターゼサブユニット6遺伝子(MTATP6)に存在するホモプラズミーな病原性(homoplasmic pathogenic)T8993GまたはT9176C点突然変異を有するサイブリッド細胞株および有しないサイブリッド株を選択した(Nakano, K. et al, Mitochondrion, 3, 21-27 (2003); Manfredi, G. et al.Giovanni, M. et al, Nat. Genet. 30, 394-399 (2002))。
サイブリッド株の酸素消費および、膜電位およびROS生成を測定した。
酸素消費
それぞれのサイブリッドクローンのセミコンフルエントな細胞をトリプシン処理し、0.7〜1.5×107細胞/mLをクラーク型酸素電極(Strathkelvin Instruments, Glasgow)を備えたチャンバー(50μl)に入れ、酸素消費を測定した。結果を図1に示す。図1左は、酸素の減少を示す代表的な追跡結果を示し、図1右は、細胞当りの酸素消費の平均速度(3つの実験の酸素減少のスロープから得られた)を示す。図中の、8W1、8W2または8W3ならびに8M7、8M8または8M9はそれぞれLeigh症候群患者由来の野生型および8993位に一塩基の点突然変異を有するホモプラズミーな変異型mtDNAを有するサイブリッドクローンである。9W4、9W5または9W6ならびに9M10または9M11は、それぞれ別のLeigh症候群患者由来の野生型および9176位に一塩基の点突然変異を有するホモプラズミーな変異を有するサイブリッドクローンである。図1右の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10および11はそれぞれ、クローン8W1、8W2、8W3、9W4、9W5、9W6、8M7、8M8、8M9、9M10および9M11を示す(以下の図においても同様である)。3と7および4と10の差は有意である(p<0.05)。8993W群と8993M群はP<0.01であり、9176Wと9176MはP<0.01であった。
膜電位
セミコンフルエントなサイブリッドをトリプシン処理し、250nMの蛍光インジケーター、3,6-ビス(ジメチルアミノ)-9-(2-(メトキシカルボニル)フェニル)−過塩素酸テトラメチルローダミンメチルエステル(TERME)(3,6-bis(dimethylamino)-9-(2-(methoxycarbonyl)phenyl)-perchlorate tetramethylrhodamine methyl ester, perchlorate (TERME))で処理し、次いでフローサイトメーター(Elite Coulters)にかけ、ミトコンドリア膜電位を測定した。結果を図2に示す。
図2左は、ミトコンドリアの内膜の膜電位を示すフローサイトメトリーの代表的なプロファイルを示す。図2右は、20000個の細胞を各々の実験で測定し、平均値を得て、3つの実験の平均値からミトコンドリア膜電位の平均値を得た結果を示す。有意差は以下の通りであった。8993W群と8993M群(P<0.05)、9176W群と9176M群(P<0.05)。
ROS生成
コンフルエントなサイブリッドを蛍光インジケーターで処理し、活性酸素種(ROS)を、5(および-6)-クロロメチル-2’,7’-ジクロロジヒドロフルオレセインジアセテートアセチルエステル(CM-H2DCFDA, Molecular Probes)(5μM)と1時間反応させ、フローサイトメトリーに供した。図3に結果を示す。図3左は、ROSの生成を示すフローサイトメトリーの代表的プロファイルを示し、図3右は、20000個の細胞を各々の実験で測定し、平均値を得た結果を示す。ROS産生の平均値は3つの実験の平均値から求めた。有意差は以下の通りであった。8993W群と8993M群(P<0.01)、9176W群と9176M群(P<0.01)。
図1から3が示すように、変異体細胞株は酸素消費、内膜間を通っての膜貫通電位に欠陥があり、より活性酸素の生成は少なかった。
〔サイブリッドの腫瘍形成能〕
腫瘍形成能について変異型および野生型サイブリッドを比較するために、ヌードマウスに5×106のサイブリッドを皮下注射した。注射は4箇所に行った。移植から10日後、固形腫瘍の形成効率を調べた。効率(試行回数当りの腫瘍形成)を12から24の実験で得た。図4に結果を示す。レーン1、2、3、4、5、6、7、8、9、10および11は、図1と同様である。図4に示すように、変異型サイブリッドを移植した場合の定着頻度は野生型の場合よりも高かった。図5には、クローン8W1(上図)および8M7(下図)を移植した腫瘍の写真(H&E染色)の例を示す。図5中、スケールバーは1mmである。さらに、サイブリッドの移植により産生する腫瘍の経時的体積増加を測定した。腫瘍のサイズは実施例に記載の方法により測定した。結果を図6に示す。有意差は以下の通りであった。8W1と8M7(4、5および6日でP<0.01、7日でP<0.01、3、8および9日でP<0.05)。9W4と9M10(4、5および6日でP<0.001、7日でP<0.01、3、8および9日でP<0.05)。
図7に、移植6日後の腫瘍体積の平均を示す。8W1と8M7および9W4と9M11の差は有意である(P<0.05)。8993W群と8993M群(P<0.01)。9176W群と9176M群(P<0.01)。図5から7が示すように、変異型サイブリッド由来の腫瘍は明らかに野生型サイブリッドからのものより早く増殖した。
さらに、変異型サイブリッドによる早い腫瘍増殖を確かめるために、変異型と野生型ハイブリッドの1:1混合物をヌードマウスに移植した。8W1と8M7または9W4と9M10を1:1で混合し、ヌードマウスに移植した。総DNAを腫瘍から単離し、変異型/野生型mtDNA比を、PCRを行いそれぞれT8993GおよびT9176C変異型に対して制限エンドヌクレアーゼAva IおよびScrf Iにより消化する制限酵素断片長多型により評価した。図8および図9に、変異型および野生型mtDNAの相対量の経時的変化を示す。図8は、移植後示された時間における消化および非消化mtDNA断片を示す写真を示し、図9は、変異型に対する野生型の比を示された時間においてアガロース電気泳動により評価した結果を示す。平均値は独立した実験より求めた。8W1と8M7および9W4と9M10の差は各々の比において有意であった(p<0.001)。図8および図9が示すように、変異型mtDNAは増殖し、最終的に腫瘍中の野生型mtDNAを排除した。以上の結果より、変異型サイブリッドは明らかに腫瘍を形成しやすく、野生型mtDNAを排除すると結論付けられた。このことは、ミトコンドリアの異常による多くの癌において認められるホモプラズミーな体細胞変異を説明する。
〔培養における増殖〕
次いで、培養における増殖速度について変異型および野生型サイブリッドを比較した。図10に維持され顕微鏡下で数えられたサイブリッドの増殖曲線を示す。図10に示すように、変異型が野生型よりも早く増殖した。有意差は以下の通りであった。8W1と8M7および9W4と9M10(3、4、6および8日においてp<0.001)。
さらに、変異型サイブリッドの増殖の優位性を確かめるために、再度変異型および野生型サイブリッドを1:1で混合し培養を継続した。8W1と8M1または9W4と9M10を1:1で混合し、培養を続けた。図11および12に、長期培養における変異型mtDNAの相対量の経時的変化を示す。図中に示された時間において、総DNAを混合物より単離し、変異型mtDNAに対する野生型の比を図8に示す実験と同様に評価した。図11は、PCRを用いた制限酵素断片長多型分析におけるアガロース電気泳動の写真を示し、図12は、変異型DNAの野生型に対する比の経時的変化を、示された時間におけるアガロース電気泳動により評価した結果を示す。値は3つの独立した実験により得られた。有意差は以下の通りであった。8W1と8M7および9W4と9M10(各々の日において、P<0.001)。この実験により、変異型mtDNAがより早く増殖し、野生型mtDNAを排除することが示された。このin vitro 実験によっても変異型サイブリッドの増殖の明らかな優位性が確かめられた。
〔変異の誘導の検討〕
変異型サイブリッドが、どのようにして増殖における明らかな優位性を獲得するかを見出すために、変異型mtDNAが核遺伝子における増殖を促進させる二次的変異を引き起こすことの可能性を調べた。mtDNAを哺乳動物細胞にトランスフェクトする方法はいまだ確立されていないので、mtDNAのコドンを核遺伝子の普遍型に変換した遺伝子(核バージョン)をサイブリッドの核に導入した(Manfredi, G. et al.Giovanni, M. et al, Nat. Genet. 30, 394-399 (2002))。すなわち、本来ミトコンドリアに遺伝子が存在し、ミトコンドリア内で合成されるべき蛋白質ATP合成酵素サブユニット6の遺伝子を核に導入し、サイトゾール(細胞質ゾル)で合成させ、ミトコンドリア移行シグナルによってミトコンドリアへ移行させるものである。そのために、ATP合成酵素(あるいは、シンターゼ)サブユニット6の遺伝子コドンをミトコンドリア型から普遍型へ変換し、ミトコンドリア移行シグナル遺伝子を5'側に付加したものである。さらにFLAG配列でタグを付したATPシンターゼサブユニット6遺伝子(NuATP6)の核バージョンを導入して構成的に発現させた安定したトランスフェクタントを単離し、抗FLAG抗体を用いた免疫染色によりトランスフェクションを確認した。トランスフェクタントをミトコンドリアに特異的な蛍光色素、MitoTracker Redで染色し、固定し、その後抗FLAGで免疫染色した。結果を図13に示す。図13中、スケールバーは10μmである。図13左は、Mitoracker Redで染色したトランスフェクタントを示し、図13右は、重ねた写真である。
さらに、同時に、T8993G変異(muATP6)を有する核バージョンを野生型サイブリッド8W1にトランスフェクトした。NuATP6の変異型サイブリッドへの、およびmuATP6の野生型サイブリッドへの安定なトランスフェクタントは、それぞれ酸素消費速度が増加および減少した。図14に酸素消費速度を示す。図14中、レーン7、1、10および5はクローン8M7、8W1、9M10および9W5の空プラスミドによる対照トランスフェクタントを示す。一方、7+NuATP6、10+NuATP6および1+muATP6は、それぞれ8M7の野生型ATP6遺伝子の核バージョンによるトランスフェクタント、8W1の変異型ATP6遺伝子の核バージョンによるトランスフェクタントを示す。対照とNuATP6トランスフェクタントの差および対照とmuATP6の差は有意であった(P<0.01)。
各々のトランスフェクタントの増殖曲線を、細胞数を数えることにより得た。図15に結果を示す。変異型サイブリッド8M7へのNuATP6のトランスフェクタント(8M7+NuATP6)は空プラスミドを用いた対照トランスフェクタントよりも増殖が遅かった。逆に、muATP6のトランスフェクタント(8W1+muATP6)は8W1での対照トランスフェクタントよりも早く増殖した。ここで、8W1および8M7は8W1および8M7の空ベクターによるトランスフェクタントを示す。一方、8M7+NuATP6および8W1+muATP6は、それぞれ野生型および変異型ATP6遺伝子の核バージョンによるトランスフェクタントを示す。対照とNuATP6トランスフェクタントの差および対照とmuATP6の差は有意であった(各々の日において、P<0.001)。
さらに、トランスフェクタントの増殖に対するNuATP6の効果を確認するために、NuATP6のトランスフェクタント(FLAGを有する)と8M7のトランスフェクタント、すなわち野生型(+NuATP6)および変異型(+muATP6)ATP6遺伝子の核バージョンを1:1で混合し培養を継続した。同様に対照サイブリッドとそのATP6トランスフェクタント(FLAGを有する)を1:1で混合したものを培養した。混合物を6日間培養し、抗FLAG抗体で免疫染色した。FLAG陽性(緑色)および陰性細胞の数を蛍光顕微鏡下で数えた。図16に結果を示す。6日後、混合物中でのFLAG陽性細胞(緑色)は、NuATP6トランスフェクタントでは多く、muATP6トランスフェクタントでは少なかった。図17には、混合トランスフェクタントの6日後の代表的な写真を示す。図17中、スケールバーは20μmである。
次いで、トランスフェクタントをヌードマウスに移植し、腫瘍の増殖を追跡した。トランスフェクタントはヌードマウスに移植し、図18に腫瘍の経時的増加の結果を示す。腫瘍の増殖は、図中に示された時間に測定した。空ベクターによるトランスフェクタント、8M7とNuATP6および8W1とmuATP6の差は有意であった(P<0.001)。この結果、機能を有するMTATP6は腫瘍増殖を遅くすることがわかった。
再度、NuATP6トランスフェクタントとその対照、または反対にmuATP6とその対照を1:1で混合し、該混合物をヌードマウスに移植した。空ベクターとNuATP6またはmuATP6の1:1でのトランスフェクタントの混合物をヌードマウスに移植した。6日後、腫瘍を固定し抗FLAG抗体を用いて免疫染色した。FLAG陽性(茶色)および陰性細胞をカウントした。図19に結果を示す。図19に示すように、NuATP6でトランスフェクトした細胞では、FLAG陰性細胞が、muATPでトランスフェクトした細胞では、FLAG陽性細胞が多かった。これらの結果は、腫瘍の増殖および培養速度における優位性はMTATP6の機能の低下によるものであって、核遺伝子の変異のような2次的な効果でないことを示している。図20に、抗FLAG抗体で免疫染色した切片の代表的な写真を示す。図20中、スケールバーは1mmである。
また、もう一つの可能性として、変異型mtDNAはアポトーシスから逃れ、変異型サイブリッドの生存が増殖を促進することもありうる。この可能性を検証するために、アポトーシスの症状を詳細に調べた。サイブリッドを培養し、培養後の示された時間において、培養サイブリッドのアポトーシス性細胞を固定しTUNEL法により染色した。陽性細胞を顕微鏡下でカウントした。図21に、サイブリッドクローンのTUNEL染色の代表的な写真を示す。図21中、TUNEL陽性細胞は矢印により示され、またスケールバーは10μmである。図22にカウントの結果を示す。8W1と8M7および9W4と9M10の差は各々の日で有意であった(P<0.001)。図21および図22に示すように、TUNEL陽性細胞は、それほど多くなかったが、野生型サイブリッドは、延長された培養期間を通して変異型サイブリッドよりもアポトーシス性であった。
さらに、フローサイトメトリー分析を行った。サイブリッドをトリプシン処理し、実施例に記載のようにPIで染色し、フローサイトメーターに供し、アポトーシス性細胞を検出した。本法はフローサイトメトリーによりシングルピークでアポトーシス性細胞を検出するような条件で行った。図23にフローサイトメトリーの代表的なプロファイルを示す。図23中、矢印はアポトーシス性細胞を示す。図24にアポトーシス頻度を示す。フローサイトメトリーで検出したアポトーシスの頻度は各々のサイブリッドクローンについて3回の独立した実験で求めた。レーン番号は図1と同じである。1-6群と7-11群の差は有意であった(P<0.001)。フローサイトメトリー分析により亜G1期のDNAよりも少ないDNAをもつアポトーシス性細胞の含量が野生型サイブリッドよりも多いことがわかった。図25に各々のクローンのDNA断片のパターンを示す。DNAは核除去後抽出し、アガロースゲル電気泳動に供した。Mrは、100bpのDNAマーカーを示す。インタクトの核を除去したため、本法においてはインタクトのDANはコンタミンしていない。図25に示すように、DNA断片は、変異型サイブリッドより野生型サイブリッドで多かった。従って、野生型サイブリッドは変異型よりもよりアポトーシス感受性であることが示された。
最後に、サイブリッドを移植した腫瘍におけるアポトーシスの頻度を比較した。図26にサイブリッド由来腫瘍の代表的なTUNEL染色の結果を示す。図26中、矢印は、TUNEL陽性細胞を示し、スケールバーは、10μmである。また、図27に、TUNEL陽性細胞の経時的増加を示す。各々のサイブリッドを移植した後の腫瘍を切片化し、TUNEL染色に供した。TUNEL陽性細胞を図26に結果を示す実験と同様にカウントした。8W1と8M7および9W4と9M10の差は有意であった(各々の日において、p<0.001)。図27に示すように、TUNEL陽性細胞は、変異型サイブリッドよりも野生型サイブリッド由来の腫瘍で有意に多かった。従って、変異型mtDNAは培養サイブリッドと同様に腫瘍におけるアポトーシスを抑制する。
アポトーシスの頻度の相違が、腫瘍の増殖と培養における増殖速度の相違を完全に説明できるか否かは、明確ではない。しかし、アポトーシス性の細胞は比較的短時間で消失してしまうため、実際のアポトーシスは、サイトメトリー分析やTUNEL方法により検出した頻度よりも大きい頻度で出現するはずである。さらに、これは変異型mtDNAがミトコンドリアからの調節Caイオンを通してある種の遺伝子の発現に一過性に影響を与えている可能性(Biswas, G. et al, EMBO J. 18, 522-533 (1999))を除外するものではない。発癌の促進の相違は少なくともある程度はアポトーシスが原因になっているはずである。実際、mtDNAの部分的除去は腫瘍の進行と転移に貢献している(Amuthan, G. et al, EMBO J. 20, 1910-1920 (2001))。さらに、コハク酸デヒドロゲナーゼ(Baysal, B.E. et al, Science, 287, 848-851 (2000); Bourgeron, T. et al, Nat. Genet. 11, 144-149 (1995))やフマラーゼ(Tomlinson, I.P. et al., Nat. Genet. 30, 406-410 (2002))等のミトコンドリアタンパク質をコードする核遺伝子におけるいくつかの変異は発癌に関与している(Eng, C. et al, Nat. Rev. Cancer 3, 193-202 (2003))。この知見は、核遺伝子またはミトコンドリア遺伝子のいずれかにかかわらず、ミトコンドリアの異常と発癌の関連をうかがわせる。
本実施例においては、ミトコンドリア脳菌筋症患者由来の変異型mtDNAを用いた(DiMauro, S. et al, Am. J. Me.d Genet. 106, 18-26 (2001))。この系は、変異型mtDNAと野生型mtDNAのいずれも一人の患者から入手できるので、単一の病原性変異以外の配列は同一であると予測できるという利点がある(Kobayashi, Y. et al, Am. J. Hum. Genet., 49, 590-599 (1991))。実際、癌細胞はしばしばMTATP6遺伝子に変異を有している(Tan, D.J. et al., Cancer Res. 62, 972-976 (2002); Yeh, J.J. et al., Oncogene 19, 2060-2066 (2000); Maximo, V. et al., Am. J. Pathol., 160, 1857-1865 (2002))。さらに、ほとんどの腎臓癌は、ATPシンターゼ活性を失っている(Simmonet, H. et al, Carcinogenesis 23, 759-768 (2002))。従って、ミトコンドリア脳菌筋症患者由来の変異型mtDNAは癌の研究にとっての適切なモデルであるといえる。変異型サイブリッドは、腫瘍の進行および延長された培養の間、明らかに野生型を排除する。融合実験において示されたように、変異型mtDNAはすぐに細胞中で優位になるので(Polyak, K. et al, Nat. Genet. 20, 291-293 (1998))、発癌の間ホモプラズミーになる。この現象を確かめるために、ミトコンドリア脳菌筋症患者由来のmtDNAの代わりに実際の癌組織由来の変異型mtDNAを用いる必要がある。本発明者らは、すでに癌細胞由来のmtDNAを有するサイブリッド株をいくつか確立した。癌のmtDNAを有する変異型サイブリッドもまたアポトーシス耐性であることを見出したので、アポトーシスに対する感受性は一般的にかつ直接にミトコンドリアの機能に依存していると思われる。これらの知見に基づくと、mtDNAにおける変異の分析は、癌における予防的および治療的ターゲットとして有望である。
70年以上前、Warburgは発癌における重要な事象は呼吸機構の障害の発展、とそれによる解糖におけるATP産生の補償的増加に関与していると予測した(Warburg, O., Science 123, 309-314 (1956))。本発明はこの予測を遺伝子レベルで裏付けている。
〔実施例2〕 mtDNAの変異と抗癌剤耐性
癌細胞の抗癌剤に対する耐性の獲得に関しては、様々な要因が示されてきた。また、ほとんどの癌細胞では、ミトコンドリアDNA (mtDNA)に体細胞変異が蓄積していることが知られている。我々は、変異mtDNAの意義を明らかにするために、異なったmtDNAを持つ同一の核を有する癌細胞(サイブリッド細胞)においてmtDNAの変異が抗癌剤耐性に関与するかを検討した。
A. サイブリッド細胞の作製
1.由来細胞の決定
比較検討する2群のmtDNAに対して1)野生型mtDNAを持つ群として、(1)正常胎児の線維芽細胞 (2)成人男性の血小板 (3)正常老人の線維芽細胞を使用した。また、2)変異型mtDNAを持つ群として、(1)膵臓癌細胞(CFPAC-1)(2)膵臓癌細胞(CAPAN-2)を使用した。膵臓癌細胞は各々下記の変異がシークエンスにて判明している。
(i) CFPAC-1:ATP6 8696 T→C(Met→Thr) 9070 T→G(Ser→Ala)
ND4 10970 T→C (Phe→Leu)
(ii) CAPAN-2: CO I 6267 G→A(Thr→Ala)
(Jessa B. Jones, Jason J. Song, Paula M. Hempen, Giovanni Parmigiani, Ralph H. Hruban and Scott E. Kern、Detection of Mitochondrial DNA Mutations in Pancreatic Cancer Offers a "Mass"-ive Advantage over Detection of Nuclear DNA Mutations Cancer Research 61, 1299-1304, 2001 参照)
2.サイブリッド細胞の作製の実際
サイブリッド細胞の作製には、以下の材料と試薬を用いた。
材料:
(i) ρ0HeLa細胞(8アザグアニン耐性株)
この細胞は、臭化エチジウムによりmtDNAを欠失させた。
(ii) 前述の各々の膵臓癌細胞と野生型mtDNA細胞
試薬:
(i) Dulbeco’s modified Eagle’s medium: Nutrient Mixture F-12+牛胎仔血清(FBS)を最終10%濃度+ペニシリン100unit/ml&ストレプトマイシン100μg/ml加える。
(ii) RPMI1640 medium
(iii) サイトカラシンB(1mg/ml)を1mlDMSOで溶解
(iv) ポリエチレングリコール液(HYBRIMAX SIGMA)
以下の方法でサイブリッド細胞の作製を行った。
前述の各々の膵臓癌細胞と野生型mtDNA細胞を5x105個ずつ6cmディッシュで培養する。サイトカラシンBを用いて脱核し、5x105個のρ0HeLa細胞(8アザグアニン耐性株)と融合させた。8アザグアニンと培地からのグルコースの除去による細胞選択によりサイブリッド細胞を作製し、クローン化した。
3.サイブリッド細胞の完成
野生型mtDNA由来のmtDNAを持つ3種類のサイブリッド細胞:FT(正常胎児の線維芽細胞由来)、9W(成人男性の血小板由来)、A2(正常老人の線維芽細胞由来)と、膵臓癌細胞由来のmtDNAを持つ2種類のサイブリッド細胞を2クローン計4種類(c3、c8(CFPAC-1由来)、c4、c7(CAPAN2由来))を作成した。
B. サイブリッド培養細胞のスタウロスポリンおよび抗癌剤耐性
作製したサイブリッド細胞に典型的なアポトーシスを誘導するスタウロスポリン(staurosporine)(蛋白質キナーゼの阻害剤でアポトーシスを誘導する代表的試薬)と、腺癌に対する化学療法の1st lineとして使用されている5-フルオロウラシル(5-fluorouracil(5FU))(抗癌剤のひとつでアポトーシスを誘導する)およびシスプラチン(cisplatin(CDDP))(抗癌剤のひとつで、アポトーシスを誘導する)を各々作用させ、薬剤に対する耐性を比較検討した。
各々1x106個の細胞となるように6cmディッシュで培養して使用した。薬剤投与時にインキュベートしていた培地は除去した。この際、
(i) スタウロスポリンはfinalで1μMになるようにDMEM/F12(FBS入り)で希釈し、6cmディッシュにfinalで2ml投与した。
(ii) CDDPはfinalで2μg/mlになるようにDMEM/F12(FBSなし)で希釈し、6cmディッシュにfinalで2ml投与した。
(iii) 5-FUはfinalで10μMになるようにDMEM/F12(FBSなし)で希釈し、6cmディッシュにfinalで2ml投与した。
スタウロスポリンは0時間、1時間、3時間、5時間CO2インキュベーターで培養後に、PI(final 1μM)Hoechst(final 1μM)で染色し、蛍光顕微鏡にて観察した。さらに、PI(プロピジウム イオダイド)および/またはHoechst(ヘキスト社)陽性,陰性をカウントした。PIは、死細胞の核を赤く染色する蛍光試薬である。Hoechstは、生死にかかわらず、核を青く染色する蛍光試薬である。
CDDPは0時間、6時間、12時間、18時間、24時間CO2インキュベーターで培養後に、PI(final 1μM)Hoechst(final 1μM)で染色し、蛍光顕微鏡にて観察した。さらに、PIおよび/またはHoechst陽性、陰性をカウントした。
5-FUは0時間、24時間、36時間、48時間CO2インキュベーターで培養後に、PI(final 1μM)Hoechst(final 1μM)で染色し、蛍光顕微鏡にて観察した。さらに、PIおよび/またはHoechst陽性、陰性をカウントした。
各々のディッシュを2セットずつ作製した。各々のディッシュあたり4視野でPIおよび/またはHoechst陰性率(生存率)を出した。
スタウロスポリン1マイクロM処理後5時間後のPI、Hoechst33342で染色した培養細胞の蛍光顕微鏡写真の例を図28に示す。死細胞は赤と青に染まるので、白い蛍光となる(図において、白く見える)。図に示すように、FT(正常mtDNA)をもつ細胞に白く染まる核が多く、アポトーシスの特徴である核の断片化が認められた。
C4細胞と9W細胞を5-FUで処理した例を図29に示す。9W細胞に白く染まる細胞(図中、白く見える)、あるいは赤く染まる細胞(図中、灰色に見える)が多くなった。
C4細胞と9W細胞のシスピラチンで24時間処理した後、PI、Hoechstで染色した例を図30に示す。
各々の生存率の平均、標準偏差を算出し、グラフにした。
スタウロスポリン処理後の生存率の時間経過を図31に示した。図31に示すように、Ft、9W、A2の正常mtDNAを持つ細胞が早期に死滅する。c3、c8、c4、c7の変異mtDNAをもつサイブリッドはスタウロスポリンに耐性である。
5-FU処理後の生存率の時間経過を図32に示す。図32に示すように、Ft、9W,A2の正常mtDNAを持つ細胞は早期に死滅した。
シスプラチン処理後の生存率の時間経過を図33に示す。図33に示すように、Ft、9W,A2の正常mtDNAを持つ細胞は早期に死滅した。
C. サイブリッド移植により作製した腫瘍に対する抗癌剤の感受性
ヌードマウスの皮下に移植した各々の癌細胞に対する抗癌剤耐性を形態学的、病理組織学的に検討した。使用した動物は、ヌードマウスBULB/c-nu/nu Slc ♀ 生後8Wであった。
癌細胞の移植は、以下のようにして行った。
wild(FT, A2)とmutant(C3, C4)細胞を各々5x10個ずつ注射用生理食塩水約250μlに浮遊させ26Gの注射針でマウスの肩甲骨付近の皮下に注入した。
腫瘍の評価は、以下のようにして行った。
腫瘍移植後7日後に腫瘍の生着を観察した。腫瘍径(最長径Ax最短径B)を計測した。デジタルノギスにより経皮的に腫瘍を計測した。また、体重をも計測した。腫瘍体積は式AxB2/2 mm3で近似した。
抗癌剤として、5フルオロウラシル(5FU)(協和発酵「5-FU注250協和」)およびシスプラチン(CDDP)(ブリストルマイヤーズ「シスプラチン注射液」)を用い、これらの抗癌剤を下記の濃度になるように注射用生理食塩水で希釈し、腫瘍移植後7日後に各抗癌剤を腹腔内に投与した。
投与レジュメ
(i) シスプラチン(CDDP)は、2種類の濃度(3mg/kg, 9mg/kg)でDay1のみ投与した。
(ii) 5-フルオロウラシル(5FU)は、2種類の濃度(15mg/kg, 45mg/kg)でDay1、7の2回投与した。
抗癌剤の効果の評価は、以下のようにして行った。
初回投与から14日後に再び腫瘍径と体重を計測した。この際、マウスの苦痛が最小限となるよう努力し、エーテルによる致死を待った。死亡確認後に腫瘍を摘出し各種病理組織学的検索を行った。10%PFAで12時間固定後、パラフィン包埋し3μで薄切した。HE染色、TUNEL染色を施行し、自動細胞算出器を用いてH.E.(ヘマトキシン エオジン)染色では死細胞(necrosis)の面積比をTUNEL染色ではapoptosis細胞の割合(100細胞中)を算出した。
サイブリッドの移植により形成させた腫瘍のヘマトキシン エオジン染色の結果を図34に示した。5-FUをkgあたり15mg投与したときの結果である。写真の倍率は、x400である。図中、左はFTサイブリッド、右はc3サイブリッドを示す。図に示すように、FTでは、アポトーシスが生じた細胞を示す核が赤く染色されている細胞が、高頻度であった。
サイブリッドの移植により形成させた腫瘍のヘマトキシン エオジン染色の結果を図35に示した。シスプラチンをkgあたり3mg投与したときの結果である。写真の倍率は、x400である。図中、左は、FTサイブリッド、右はc3サイブリッドを示す。図に示すように、FTでは、アポトーシスが生じた細胞を示す核が赤く染色されている細胞が、高頻度であった。
5-FUを投与したヌードマウスと投与しないヌードマウスにおける腫瘍の体積比を図36に示す。FTサイブリッドを移植した腫瘍では、何も投与しない腫瘍の体積を100とすると5-FUを投与したヌードマウスでは個体によって腫瘍体積が30程度であった。しかし、c4サイブリッドでは、5-FUを投与した場合でも、しない場合でも腫瘍体積がほぼ同じで、抗癌剤がほとんど効果を示していないことがわかった。すなわち、c3,c4サイブリッドにより形成された腫瘍は5-FUに対し耐性であることがわかった。
シスプラチンを投与したヌードマウスと投与しないヌードマウスにおける腫瘍の体積比を図37に示す。シスプラチンを体重kgあたり9mg投与した場合は、A2サイブリッドでは、ほとんど腫瘍を形成しないが、c3およびc4サイブリッドでは、抗癌剤を何も投与しない時に比べシスプラチンを投与しても40%程度の体積をもつ腫瘍が形成された。すなわち、c3,c4サイブリッドはシスプラチンに対し耐性であることがわかった。
5-FUシスプラチンで処理をした腫瘍のTUNEL染色を図38および39に示す。左がc3サイブリッドの移植によって形成された腫瘍ではTUNEL染色された細胞がほとんど見られないことから、アポトーシスがほとんど生じていないことがわかる。一方右のA2サイブリッド由来の腫瘍ではTUNEL染色で染色された茶色の細胞が高頻度に存在し、アポトーシスが生じていないことを示している。すなわち、mtDNAに変異がある細胞では、アポトーシスが生じにくいことがわかった。
共通HeLa細胞核とLeigh症候群の患者由来ミトコンドリアDNAで構築された、変異を有するサイブリッド細胞および有しないサイブリッド細胞の酸素消費を示す図である。 共通HeLa細胞核とLeigh症候群の患者由来ミトコンドリアDNAで構築された、変異を有するサイブリッド細胞および有しないサイブリッド細胞の膜電位を示す図である。 共通HeLa細胞核とLeigh症候群の患者由来ミトコンドリアDNAで構築された、変異を有するサイブリッド細胞および有しないサイブリッド細胞のROS生成を示す図である。 ヌードマウスへのサイブリッドの移植した場合の、固形腫瘍の形成効率を示す図である。 クローン8W1(上図)および8M7(下図)を移植した腫瘍を示す写真(H&E染色)である。 サイブリッドの移植により産生する腫瘍の経時的体積増加を示す図である。 サイブリッド移植6日後の腫瘍体積の平均を示す図である。 変異型サイブリッドと野生型サイブリッドを1:1に混合し、サイブリッド移植後の変異型および野生型mtDNAの相対量の経時的変化を示す電気泳動の写真である。 変異型サイブリッドと野生型サイブリッドを1:1に混合し、サイブリッド移植後の変異型および野生型mtDNAの相対量の経時的変化(比)を示す図である。 培養におけるサイブリッドの増殖曲線を示す図である。 変異型サイブリッドと野生型サイブリッドを1:1に混合し、長期培養における変異型mtDNAの相対量の経時的変化を示す電気泳動の写真である。 変異型サイブリッドと野生型サイブリッドを1:1に混合し、長期培養における、変異型DNAの野生型に対する比の経時的変化を示す図である。 ATPシンターゼサブユニット6遺伝子の核バージョンでのトランスフェクタントを免疫染色した写真である。 ATPシンターゼサブユニット6遺伝子の核バージョンでのトランスフェクタントの酸素消費速度を示す図である。 サイブリッドのMTATP6遺伝子の核バージョンによるトランスフェクタントの増殖曲線を示す図である。 野生型(+NuATP6)および変異型(+muATP6)ATP6遺伝子の核バージョンを1:1で混合し、該混合物を6日間培養した後に、抗FLAG抗体で免疫染色した場合のFLAG陽性細胞の割合を示す図である。 混合トランスフェクタントの6日培養後の抗FLAG抗体で免疫染色写真である。 トランスフェクタントヌードマウスに移植した後の腫瘍の経時的増殖を示す図である。 空ベクターとNuATP6またはmuATP6の1:1でのトランスフェクタントの混合物をヌードマウスに移植した後に、腫瘍を固定し抗FLAG抗体を用いて免疫染色した場合のFLAG陽性細胞の割合を示す図である。 抗FLAG抗体で免疫染色した腫瘍切片の写真である。 培養サイブリッドのアポトーシス性細胞をTUNEL法により染色した写真である。 サイブリッドを培養し、一定期間培養後に固定しTUNEL法により染色した場合の、陽性細胞の割合を示す図である。 サイブリッドのアポトーシス性細胞を示すフローサイトメトリー分析の結果を示す図である。 フローサイトメトリーで検出したアポトーシスの頻度を示す図である。 サイブリッドクローンのDNA断片の代表的パターンを示す写真である。 サイブリッド由来腫瘍のTUNEL染色を示す写真である。 TUNEL陽性細胞の経時的増加を示す図である。 スタウロスポリン1マイクロM処理後1時間後のPI、Hoechst33342で染色した培養細胞の蛍光顕微鏡写真である。 C4細胞と9W細胞を5-FUで処理した細胞のPI、Hoechst33342で染色した培養細胞の蛍光顕微鏡写真である。 C4細胞と9W細胞をシスプラチンで24時間処理した後、PI、Hoechst33342で染色した写真である。 スタウロスポリン処理後の生存率の時間経過を示す図である。 5-FU処理後の生存率の時間経過を示す図である。 シスプラチン処理後の生存率の時間経過を示す図である。 サイブリッドの移植により形成させた腫瘍に5-FUを15mg/kgを投与した後のヘマトキシン エオジン染色の写真である。左図は、FTサイブリッドを移植して形成させた腫瘍、右はc3サイブリッドを移植して形成させた腫瘍の組織標本である。 サイブリッドの移植により形成させた腫瘍にシスプラチン3mg/kgを投与した後のヘマトキシン エオジン染色の写真である。左図は,FTサイブリッド由来腫瘍。右はc3サイブリッド由来。 5-FUを投与したヌードマウスとしないヌードマウスにおける腫瘍の体積比を示す図である。 5-FUを投与したヌードマウスとしないヌードマウスにおける腫瘍の体積比を示す図である。 5-FUで処理をした腫瘍のTUNEL染色の写真である。 5-FUで処理をした腫瘍のTUNEL染色の拡大図写真である。

Claims (8)

  1. 点突然変異を有する変異型ミトコンドリアDNAを有する脱核した癌細胞をミトコンドリアDNA欠失細胞と融合させて得られるサイブリッドを抗癌剤存在下で培養し、アポトーシスを起こしたサイブリッドを計測することを含む、抗癌剤の効果を判定し得るミトコンドリアDNAの点突然変異を検出する方法。
  2. 点突然変異を有する変異型ミトコンドリアDNAを有する脱核した癌細胞をミトコンドリアDNA欠失細胞と融合させて得られるサイブリッドを抗癌剤存在下で培養し、アポトーシスを起こしたサイブリッドを計測することにより、癌細胞に抗癌剤に対する耐性を付与するミトコンドリアDNAの点突然変異を検出する、請求項1記載の方法。
  3. 変異型ミトコンドリアDNAの点突然変異が、(a) 8696 ATP6 T→C、9070 ATP6 T→Gおよび10970 ND4 T→C、または(b) 6267 CO1 G→A[ここで、前記変異は、配列番号1に表されるミトコンドリアDNA上の塩基の位置、遺伝子の名称および変異を表し、→は→の左の塩基が→の右の塩基に置換していることを示す]である請求項1または2に記載の方法。
  4. 癌細胞が癌患者由来である、請求項1から3のいずれか1項に記載の方法。
  5. 請求項1から4のいずれか1項に記載の方法により癌細胞のミトコンドリアDNAの点突然変異を検出し、種々の変異型ミトコンドリアDNAを有するサイブリッドに対する種々の抗癌剤の効果を測定し、ミトコンドリアDNAの点突然変異と抗癌剤の効果を関連付けし、癌細胞中のミトコンドリアDNAの点突然変異を指標に、該癌細胞に対する抗癌剤の効果を予測する方法。
  6. 点突然変異を有する変異型ミトコンドリアDNAを有する脱核した癌細胞をミトコンドリアDNA欠失細胞と融合させて得られるサイブリッドを抗癌剤存在下で培養し、アポトーシスを起こしたサイブリッドを計測することを含む、請求項5記載の癌細胞に対する抗癌剤の効果を予測する方法。
  7. 点突然変異を有する変異型ミトコンドリアDNAを有する脱核した癌細胞をミトコンドリアDNA欠失細胞と融合させて得られるサイブリッドのアポトーシスの頻度と野生型ミトコンドリアDNAを有する脱核した細胞をミトコンドリアDNA欠失細胞と融合させて得られるサイブリッドの抗癌剤によって誘導されるアポトーシスの頻度を比較し、点突然変異を有する変異型ミトコンドリアDNAを有するサイブリッドのアポトーシスの頻度が野生型ミトコンドリアDNAを有するサイブリッドのアポトーシスの頻度と差がないとき、前記ミトコンドリアの変異を有する癌細胞に対して用いた抗癌剤が効果があると判定する、請求項5または6に記載の方法。
  8. 請求項5から7のいずれか1項に記載の方法により、特定のミトコンドリアDNAの点突然変異を有する癌細胞に効果のある抗癌剤を選択する方法。
JP2003392778A 2003-11-21 2003-11-21 抗癌剤の効果を判定するミトコンドリアdnaの体細胞変異の検出 Expired - Fee Related JP4496362B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2003392778A JP4496362B2 (ja) 2003-11-21 2003-11-21 抗癌剤の効果を判定するミトコンドリアdnaの体細胞変異の検出

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2003392778A JP4496362B2 (ja) 2003-11-21 2003-11-21 抗癌剤の効果を判定するミトコンドリアdnaの体細胞変異の検出

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2005151843A JP2005151843A (ja) 2005-06-16
JP4496362B2 true JP4496362B2 (ja) 2010-07-07

Family

ID=34719366

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2003392778A Expired - Fee Related JP4496362B2 (ja) 2003-11-21 2003-11-21 抗癌剤の効果を判定するミトコンドリアdnaの体細胞変異の検出

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP4496362B2 (ja)

Families Citing this family (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US8904851B2 (en) * 2011-12-19 2014-12-09 Empire Technology Development Llc Methods and compositions for sensors
CN106574927A (zh) * 2014-01-14 2017-04-19 崔元哲 使用luterial的形态学特征筛选癌症预防剂或抗癌剂的方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP2005151843A (ja) 2005-06-16

Similar Documents

Publication Publication Date Title
CN104797936B (zh) 融合蛋白及其方法
JP5922913B2 (ja) 遺伝子発現の阻害に関する方法および組成物
Gambaro et al. VGLL3 expression is associated with a tumor suppressor phenotype in epithelial ovarian cancer
JP5931897B2 (ja) マイクロrna−21、ミスマッチ修復および結腸直腸癌に関連する物質および方法
Suarez et al. Stable expression of a GFP-BSD fusion protein in Babesia bovis merozoites
US20200354794A1 (en) Method for determining sensitivity to simultaneous inhibitor against parp and tankyrase
CN106701900A (zh) 长链非编码rna herc2p3基因及其在胃癌中的用途
AU725186B2 (en) Method for identifying metastatic sequences
CN105396144A (zh) 在肿瘤中差异表达的基因产物及其用途
WO2016149618A1 (en) Method for regulation of telomere-length
US7569221B2 (en) Compositions and methods for identifying agents that alter expression of survivin
CN105189786B (zh) 用作治疗癌症的疗法的靶标的falz
ES2684548T3 (es) Proteína de fusión que comprende AXL y composición para tratar el cáncer que comprende la misma
JP4496362B2 (ja) 抗癌剤の効果を判定するミトコンドリアdnaの体細胞変異の検出
EP3851528A1 (en) Composition for inducing death of cells having mutated gene, and method for inducing death of cells having modified gene by using composition
ES2376509T3 (es) Reordenamientos de genes mipol 1-etv1.
WO2010050268A1 (ja) がん幹細胞分子マーカー
CN112029866A (zh) Wwp1在胰腺癌中的应用
KR102120659B1 (ko) 난소과립막세포암 또는 자궁내막암의 진단 및 치료를 위한 마이크로rna-1236의 용도
McCormick et al. Functional characterisation of a novel ovarian cancer cell line, NUOC-1
WO2022052909A1 (zh) 编辑造血干/祖细胞中bcl11a基因的方法
Bangming et al. MEN1-mediated CD44 alternative splicing depression is required for ferroptosis during lung cancer suppression
Hua Bifunctional Glycosylase NEIL2 Plays an Important Role in Maintaining Cellular Genomic Integrity
WO2023186733A1 (en) Method for the manufacture of a viral system, a vector system or any transport system for cancer-specific crispr complexes
Xu et al. A germline heterozygous POLQ nonsense mutation causes hereditary colorectal cancer

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20061013

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20090915

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20091116

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20091215

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20100215

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20100309

A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20100318

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130423

Year of fee payment: 3

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

S111 Request for change of ownership or part of ownership

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313113

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees