JP4459300B2 - 流体用容器の漏洩孔の有無を検査するための方法 - Google Patents

流体用容器の漏洩孔の有無を検査するための方法 Download PDF

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Description

本発明は、流体用容器の漏洩孔の有無を検査するための方法に関する。更に詳細には、本発明は、流体用容器の漏洩孔の有無を検査するための方法であって、(1)流体を収容している容器の開閉口を閉じ、(2)該容器の内部圧力を外部圧力に対して減圧にし、容器中の流体に所定の位相を有する基準超音波信号を加えて、収容流体超音波信号を得、(3)基準超音波信号と収容流体超音波信号とを比較して、収容流体超音波信号が基準超音波信号に対して位相の差を有し、且つ、該位相の差が経時的に拡大し続ける場合は、該容器が漏洩孔を有すると判断する、ことを特徴とする方法に関する。本発明の方法は、流体用容器の漏洩孔の有無を極めて正確且つ迅速に検査することができるのみならず、流体用容器が置かれた環境(例えば、地上設置型か、又は地下埋設型か、容器の周囲に存在する液体及び/又は気体の種類や、周囲の騒音や振動など)にはほとんど又は全く影響を受けずに、流体用容器の漏洩孔の有無を確実に判定することができる。従って、本発明の方法は、信頼性と効率が非常に高い。本発明の方法により、手のひらに乗るサイズの小型容器(例えば、容量1L程度)から、一般に「タンク」と称されるような巨大容器(例えば、容量15,000KL程度)に至るまで、様々な業界で用いられる、様々な容量・寸法・形状を有する多種多様の容器の漏洩孔の有無を、正確且つ効率的に検査することができる。本発明はまた、本発明の方法を実施するのに用いることのできるシステムにも関する。
危険物を収容する容器の漏洩検査が法定で定められる代表的なものに、固定式収容所と移動式収容所などがある。固定式収容所の具体例としては、「ガスのみを収容する地上タンク」のほか、最も複雑な要素が存在し、漏洩検査に高度な技術が要求される事から問題が多く残される、「ガソリンスタンドの地下に埋設される地下貯蔵タンク」がある。移動式収容所の具体例としては、「タンクローリー車に搭載されるタンク」がある。これらのうち、「ガソリンスタンドの地下に埋設される地下貯蔵タンク」と「タンクローリー車に搭載されるタンク」が、一般に最も代表的なタンクである。(なお、本発明においては、「容器」と「タンク」とは同義の用語である。)
上記の代表的な2例のタンクに共通するのは、容器内に気相部と液相部が存在するということである。容器内に収容される油種などによる液相部の最大の量は、通常タンク内容積の80〜95%程度で、この液相部の上部に、空気や油種が気化したガスが気相部として残留する。タンクを完全充填しなければ、タンクの内部に気相部が必然的に存在することになるわけであるが、タンクを完全充填しないのは保安上の理由が大きい。
容器から漏洩が起る原因となる容器の壁部を貫通する漏洩孔(接続部の間隙、亀裂などを含む)が発生する可能性のある場所は、容器の外壁や注入口、排気パイプなどのいたるところに及ぶ。したがって、容器外部に存在する気体や水、油種などの液体を含めた流体が漏洩孔から容器内部に侵入する場合、容器内の液相部と気相部のいずれに流入する場合もあり得る。また、漏洩孔が複数ある場合や、漏洩孔が亀裂である場合などは、漏洩孔の内部開口部が容器内の液相部と気相部の両方に流入する場合もあり得る。
ガスのみを収容する地上タンクや、収容液体が存在せず空である状態の地上タンクなどでは、容器外部に存在する流体は空気などの気体であるから、漏洩孔から外部の流体が容器内部に侵入する場合は、空気などの気体が容器内の気相部に流入するということになる。
最も代表的なタンクとして、「ガソリンスタンドの地下に埋設される地下貯蔵タンク」と「タンクローリー車に搭載されるタンク」を上で挙げたが、これらも前者の「ガソリンスタンドの地下に埋設される地下貯蔵タンク」で代表させることができる。従って、以下の説明は、主に、最も代表的なタンクである「ガソリンスタンドの地下に埋設される地下貯蔵タンク」に参照して行なう。
日本国特開2005−265469号公報(特許文献1)は、ガソリンスタンド等の地下タンクの漏洩孔の検出方法として、タンク内部を減圧することによりタンク外部の周辺に存在する空気などがタンク内部の液体中に侵入して空気が気泡となって破裂する振動を加速度センサーで捉える方法を開示している。しかし、地下に埋設されたタンクの漏洩孔の外部開口部の周辺に雨水や地下水、油種などの液体が滞留する場合には液体が容器内に浸入する事になり、気泡による破裂が発生せず、この場合は漏洩孔の検出が困難である問題がある。
日本国特開2006−29835号公報(特許文献2)は、ガソリンスタンド等の地下タンクの漏洩孔の検出方法として、タンク内部を減圧することによりタンク外部の周辺に存在する空気などがタンク内部の液体中に侵入する時の流入音を、高感度センサーとノイズ処理演算ソフト処理により検出する方法を開示している。しかしこの方法では、液体の浸入する時の流入音を検出する事は不可能である。
上記特許文献1の方法と特許文献2の方法のいずれにおいても、漏洩孔から液体が侵入する場合には検出できないという問題があるが、その理由は、検出が必要とされる直径が0.3mmの微小な漏洩孔から侵入する液体の量は、表面張力などにより極めて微量であり、侵入速度も非常に遅く、また、その微量な液体がタンクの内壁面を伝ってゆっくりと落ちてゆき、下の液相中にゆっくりと沈んでいくからである。このように微量の液体がゆっくりとタンク内に侵入する場合、タンク内の液相部や気相部のいずれに侵入しても検出可能な音は発生せず、従って、漏洩孔は検出できない。
そのようなわけで、上記特許文献1の方法と特許文献2の方法のいずれの場合も、別途に水の侵入を検出する最新の水位検出法(日本国特開2006−30109号公報(特許文献3)を参照)を併用することにより、地下タンクの漏洩検査の最新技術の方法として認定、運用されている方法である。
しかし、いずれにしても、これらの方法は、タンク内の気相部に接する漏洩孔を通じて、タンク外部の気体が容器内の上部に存在する気相部(液体燃料が気化したガスや空気)に侵入した場合も、音声振動は殆ど発生せず検出が不能である。いうまでもなく、タンク内の気相部に接する漏洩孔の検出も必要であることから、別途に、容器の外部から気体が容器内の気相部に侵入するのを検出できる検査を行なうこと必要があることが法令で定められている。具体的には、タンクローリー車搭載のタンクや一般容器などの漏洩孔検出方法として一般に採用されている、容器内部の圧力変化を検出する微減圧法や微加圧法などによる検査(例えば日本国特開平5−10845号公報(特許文献4)を参照)が別途必要であることが法令で規定されている。
また、上記特許文献1の方法や特許文献2の方法と併用される上記特許文献3に記載される最新の水位検出法によっても、油種には応答できない水位センサーが採用されているため、漏洩孔の外部開口部周辺に油種が存在して、それが漏洩孔からタンク内に侵入した場合には水位センサーは反応せず、漏洩孔の検出が不能である。
ガソリンスタンドのタンクに漏洩孔が存在する場合は、タンクに長時間収容され続けるガソリンなどの油種が漏洩孔から外部へ既に漏洩しており、検出すべき、直径が0.3mmなど数mm以下の漏洩孔の周辺は水より粘性の高い油種で満たされ、水や空気が存在する余地は無く、この様な状態はとても多いと考えられる。この時、最新技術として認可されている従来技術の何れの方法を用いても、漏洩孔の検出のためにタンク内部を減圧すると、タンク内に収容される油種と同じ油種が漏洩孔から侵入する。同じ油種同士は識別が困難であり、また容易に混合し易いことなどから、このような同じ油種の侵入を検出できる方法は従来の技術には存在しない。従って、地下タンクにおける漏洩孔の検出率はとても低いと考えられている。
このように、上記特許文献1の方法や特許文献2の方法には何れも上記で説明したような問題があるうえ、又、上記のように、地下タンクについては特許文献1の方法や特許文献2の方法による検査の他に、従来通りに微加圧法や微減圧法による、気相部に接する漏洩孔の有無の検査を別途に実施することが必要であるという問題も残されている。また、地下タンクの底辺部に磨耗・損傷などが発生し易いという理由から、地下タンクの底辺部に漏洩孔の発生率が最も高いとされている。にもかかわらず、上記のように、地下タンクにおける漏洩孔の検出率はとても低いと考えられており、これは非常に大きな問題であり、この問題の解決が切望されている。
微加圧法や微減圧法による気相部に接する漏洩孔の有無のみの検査でよいタンクローリー車搭載タンクや一般容器でも、地下タンクに対する上記検査方法でも、検査に所要する時間はさほど変わる事なく、タンク容器一個当りの検査に所要する時間は、80分以上から180分程度が必要である。
特に複数のタンクを所有するガソリンスタンドに於いては、全タンクの検査が終了するまでの長時間にわたってガソリンスタンドの営業を停止する必要があり、併せて、水位検出方法と微加圧法や微減圧法を併用する場合、更に倍の検査時間が必要となることは、ガソリンスタンド操業上の大きな障害となる。
ガソリンスタンド等の地下タンクの漏洩孔検出のための従来技術には、このように多くの問題が残されており、これらの問題を解決できる漏洩孔検出方法が望まれている。また、地下タンクの漏洩孔検出のための従来技術のこれら問題を解決できる、迅速で信頼性の高い漏洩孔検出方法が開発されれば、地上にある多くのタンクの漏洩孔も容易に検出できることになる。
特開2005−265469号公報 特開2006−29835号公報 特開2006−30109号公報 特開平5−10845号公報
以上のように、タンク内への油種の侵入を検出できる方法は従来技術には存在しないという問題を解決し、タンクの周囲に存在する流体が気体か液体か水か油種かなどに全く影響されることのない漏洩孔検出方法やシステムであって、また、タンク内部の減圧によりタンク周囲のいかなる流体が漏洩孔からタンク内部のいかなる流体に侵入する場合であっても、全く問題なく漏洩孔を確実に検出することができ、また、タンク構造体の全ての部位に於けるあらゆる漏洩孔が検出でき、更に検査時間の大幅短縮が可能である、優れた漏洩孔検出方法やシステムなどが求められている。
このような状況下、本発明者が上記課題を解決するために鋭意研究を行なった結果、流体用容器の漏洩孔の有無を検査するための方法であって、(1)流体を収容している容器の開閉口を閉じ、(2)該容器の内部圧力を外部圧力に対して減圧にし、容器中の流体に所定の位相を有する基準超音波信号を加えて、収容流体超音波信号を得、(3)基準超音波信号と収容流体超音波信号とを比較して、収容流体超音波信号が基準超音波信号に対して位相の差を有し、且つ、該位相の差が経時的に拡大し続ける場合は、該容器が漏洩孔を有すると判断する、ことを特徴とする方法により上記課題を解決できることを見出した。この知見に基づき、本発明を完成した。
本発明の上記及びその他の諸目的、諸特徴並びに諸利益は、添付の図面を参照しながら述べる以下の詳細な説明及び請求の範囲の記載から明らかになる。
地下タンクにおいて漏洩孔の発生率が最も高いとされる底辺部における漏洩孔の検出率が従来技術ではとても低かったが、本発明の方法により、タンク内への油種の侵入をも確実に検出できるようになったので、地下タンクの底辺部における漏洩孔を確実に検出することができる。従って、法令が定める漏洩検査の目的を初めて完全に達成することができ、危険物取り扱いにおける社会と公共の安全に大きく貢献する。
本発明の検査方法は、流体用容器の漏洩孔の有無を極めて正確且つ迅速に検査することができるのみならず、流体用容器が置かれた環境(例えば、地上設置型か、又は地下埋設型か、容器の周囲に存在する液体及び/又は気体の種類や、周囲の騒音や振動など)にはほとんど又は全く影響を受けずに、流体用容器の漏洩孔の有無を確実に判定することができる。従って、本発明の方法は、信頼性と効率が非常に高い。本発明の方法により、手のひらに乗るサイズの小型容器(例えば、容量1L程度)から、一般に「タンク」と称されるような巨大容器(例えば、容量15,000KL程度)に至るまで、様々な業界で用いられる、様々な容量・寸法・形状を有する多種多様の容器の漏洩孔の有無を、正確且つ効率的に検査することができる。
本発明の方法とシステムをガソリンスタンド地下タンクに対して実施した1例を示す。 本発明の検査方法において利用する位相遅延(位相の差)の発生する様子を示す写真である。 漏洩孔の検出精度が最高になるように、検出すべき漏洩孔の直径に合わせて基準超音波信号の波長を調整することにより、漏洩孔から侵入する流体の持つ超音波信号の振幅値を調節する様子を示す。 本発明の検査方法において得られる測定結果の1例を示すオシロスコープの画面の連続写真である(漏洩孔直径1.0mm)。 本発明の検査方法において得られる測定結果の他の1例を示すオシロスコープの画面の連続写真である(漏洩孔直径0.3mm)。 本発明の検査方法において得られる測定結果の更に他の1例(位相反転が起きる)を示すオシロスコープの画面の連続写真である(漏洩孔直径1.0mm)。 本発明の方法とシステムをガソリンスタンド地下タンクに対して実施した他の1例を示す。 本発明の方法とシステムをガソリンスタンド地下タンクに対して実施した更に他の1例を示し、また、マイクロコンピュターで信号波形を観察しながら、波長(周波数)及び波形の組合せを自動的に調整できることを示す。 漏洩孔(直径0.3mm)から空気が侵入した場合の収容流体超音波信号(図9(A))と、漏洩孔のない小型容器に人為的に強力な衝撃を与えた場合の収容流体超音波信号(図9(B))との間の、位相や波形の違いを比較する写真を示す。 漏洩検査用のシステムの調整と評価のために従来から実績ある方法として用いられているものを、本発明に関する実験や測定にも用いた様子を示す。図10(A)は、検出すべき漏洩孔の直径に対する基準超音波信号の波長の調整などに用いる方法の例である。図10(B)は、容器周囲の滞留液体が少量で漏洩孔の外部開口部の周辺のみに存在する場合の評価方法に相当する例である。図10(C)は、沿岸地域、河川地域など、地下タンクの多くの部分が滞留流体に接触する場合の評価方法に相当する例である。図10(D)は漏洩検査方法の評価用の擬似漏洩孔を示す。
符号の説明
1 基準超音波信号
2 超音波信号発生素子
3 収容流体超音波信号
3a 液相部の収容流体超音波信号
3b 気相部の収容流体超音波信号
4 超音波信号検出素子
5 圧力値調整手段
6 容器(タンク)周囲の滞留流体
7 漏洩孔から侵入する流体(の超音波信号)
8 容器(タンク)
9 漏洩孔
10 電気信号の発生と処理のための電子的処理手段
11 地下マンホール
12 地下配管
本発明の1つの態様によれば、流体用容器の漏洩孔の有無を検査するための方法であって、
(1)液体と気体からなる群より選ばれる少なくとも1種の流体を収容している容器の開閉口を閉じ、
(2)該容器の内部圧力を外部圧力に対して減圧にし、容器中の流体に所定の位相を有する基準超音波信号を加えて、収容流体超音波信号を得、
(3)基準超音波信号と収容流体超音波信号とを比較して、収容流体超音波信号が基準超音波信号に対して位相の差を有し、且つ、該位相の差が経時的に拡大し続ける場合は、該容器が漏洩孔を有すると判断する、
ことを特徴とする方法が提供される。
本発明の他の1つの態様によれば、流体用容器の漏洩孔の有無を検査するために用いるシステムであって、
容器の内部圧力を外部圧力に対して減圧にするための圧力値調整手段、
容器の外部と容器の内部からなる群より選ばれる少なくとも1種の位置に設けられた少なくとも1つの超音波信号発生素子、
容器の外部と容器の内部からなる群より選ばれる少なくとも1種の位置に設けられた少なくとも1つの超音波信号検出素子、及び
超音波信号発生素子と超音波信号検出素子に接続された、電気信号の発生と処理のための電子的処理手段とを包含する、
ことを特徴とするシステムが提供される。
次に、本発明の理解を容易にするために、本発明の基本的特徴及び好ましい諸態様を列挙する。
1.流体用容器の漏洩孔の有無を検査するための方法であって、
(1)液体と気体からなる群より選ばれる少なくとも1種の流体を収容している容器の開閉口を閉じ、
(2)該容器の内部圧力を外部圧力に対して減圧にし、容器中の流体に所定の位相を有する基準超音波信号を加えて、収容流体超音波信号を得、
(3)基準超音波信号と収容流体超音波信号とを比較して、収容流体超音波信号が基準超音波信号に対して位相の差を有し、且つ、該位相の差が経時的に拡大し続ける場合は、該容器が漏洩孔を有すると判断する、
ことを特徴とする方法。
2.基準超音波信号の発生を、容器の外部と容器の内部からなる群より選ばれる少なくとも1種の位置に設けられた少なくとも1つの超音波信号発生素子を用いて行ない、且つ、収容流体超音波信号の検出を、容器の外部と容器の内部からなる群より選ばれる少なくとも1種の位置に設けられた少なくとも1つの超音波信号検出素子を用いて行なうことを特徴とする前項1に記載の方法。
3.下記の3つの測定条件(i)〜(iii):
(i)基準超音波信号の波形が正弦波であること;
(ii)基準超音波信号の波長が、検出すべき最小漏洩孔の直径以上であること;及び
(iii)減圧において容器の内部圧力を外部圧力よりも1kPa以上低くすること、
からなる群より選ばれる少なくとも1種の測定条件を用いることを特徴とする、前項1又は2に記載の方法。
4.該容器が地下タンクであり、容器に収容されている流体が液体と気体の両方であり、液体が液体燃料であり、気体が空気と気化燃料との混合気体であることを特徴とする前項1〜3のいずれかに記載の方法。
5.該容器が地上タンク又は地下タンクであり、容器に収容されている流体が気体燃料であることを特徴とする前項1〜3のいずれかに記載の方法。
6.流体用容器の漏洩孔の有無を検査するために用いるシステムであって、
容器の内部圧力を外部圧力に対して減圧にするための圧力値調整手段、
容器の外部と容器の内部からなる群より選ばれる少なくとも1種の位置に設けられた少なくとも1つの超音波信号発生素子、
容器の外部と容器の内部からなる群より選ばれる少なくとも1種の位置に設けられた少なくとも1つの超音波信号検出素子、及び
超音波信号発生素子と超音波信号検出素子に接続された、電気信号の発生と処理のための電子的処理手段とを包含する、
ことを特徴とするシステム。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明者は、漏洩孔を有する容器に流体を収容して開閉口を閉じ、該容器の内部圧力を外部圧力に対して減圧にし、容器中の流体に所定の位相を有する基準超音波信号を加えて、収容流体超音波信号を得、基準超音波信号と収容流体超音波信号とを比較すると、収容流体超音波信号が基準超音波信号に対して位相の差を有し、且つ、該位相の差が経時的に拡大し続けることを見出した。また、漏洩孔を有しない容器について上記と同様の操作を行なうと、基準超音波信号と収容流体超音波信号との間に位相の差は生じるが、その位相の差は一定であり、位相の差が時間の経過とともに拡大することは決してないことを見出した。従って、収容流体超音波信号が「基準超音波信号に対して位相の差を有し、且つ、該位相の差が経時的に拡大し続ける」という特徴を有するか否かを決定するだけで、容器が漏洩孔を有するか否かを判断することができる。この全く意外な事実の発見は、本発明者によって初めてなされたものであり、本発明の根幹をなすものである。(以下、屡々、「収容流体超音波信号が基準超音波信号に対して位相の差を有し、且つ、該位相の差が経時的に拡大し続ける」という上記特徴を「位相差特徴」と称する。)
流体用容器の漏洩孔の有無を検査するための本発明の方法の工程(1)においては、液体と気体からなる群より選ばれる少なくとも1種の流体を収容している容器の開閉口を閉じる。
本発明において「流体用容器」とは、流体を収容するための専用容器のみならず、流体密に密閉することを意図した全ての容器を含むものである。従って、本発明の検査方法は、例えば、固体を流体密に密閉した状態で収容するための容器にも適用することができる。本発明において「漏洩孔」とは、開閉口を閉じた容器の内部と外部を相互に連通する、意図しない貫通孔や亀裂などを意味する。漏洩孔のサイズは特に限定されないが、一般に、漏洩孔の直径は約0.1ミリ以上である。
本発明の方法の工程(1)における「液体と気体からなる群より選ばれる少なくとも1種の流体」には、特に限定はない。液体の例としては、水、液体燃料、アルコール、これらの混合液体などがなどが挙げられるが、これらに限定されない。気体の例としては、空気、不活性ガス、気体燃料、液体燃料の気化したガス、これらの混合気体などが挙げられるが、これらに限定されない。
本発明の方法の工程(2)においては、該容器の内部圧力を外部圧力に対して減圧にし、容器中の流体に所定の位相を有する基準超音波信号を加えて、収容流体超音波信号を得る。(以下、屡々、容器の内部圧力を外部圧力に対して減圧にする操作を「減圧操作」と称する。)
本発明の方法の工程(2)における「減圧操作」としては、容器の内部圧力を外部圧力に対して減圧にできる限り特に限定はなく、容器の内部圧力を低下させてもよいし、容器の外部圧力を上昇させてもよいし、容器の内部圧力の低下と外部圧力の上昇を同時に行なってもよい。なお、この工程(2)における「減圧操作」は、容器に漏洩孔が存在する場合に、容器の外部に存在する流体(例えば、空気や液体燃料)を漏洩孔から容器に侵入させるための操作である。なおこの減圧操作は、特許文献1や特許文献2などの従来の漏洩孔検出方法における容器内部の減圧操作と同様に周知の操作で行なうことができる。
本発明の方法の工程(3)においては、基準超音波信号と収容流体超音波信号とを比較して、収容流体超音波信号が基準超音波信号に対して位相の差を有し、且つ、該位相の差が経時的に拡大し続ける場合(即ち、収容流体超音波信号が上記「位相差特徴」を有する場合)は、該容器が漏洩孔を有すると判断する。
上記「位相差特徴」においては「位相の差を有す」ると表現されているが、同じ現象を、「収容流体超音波信号の位相が基準超音波信号の位相に対して遅延する」と表現することもできるので、本願明細書においては、屡々「位相の遅延」などの表現も用いる。
本発明の方法の工程(2)における、「容器中の流体に所定の位相を有する基準超音波信号を加える」操作と、「収容流体超音波信号を得る」操作、及び本発明の方法の工程(3)における、「基準超音波信号と収容流体超音波信号とを比較して、収容流体超音波信号が上記『位相差特徴』を有するか否かを決定する」という操作は、いずれも、電子・電気工学の通常の知識のある当業者が容易に行なうことができるものである。これらの操作については詳しく後述する。
本発明の方法においては、基準超音波信号の発生を、容器の外部と容器の内部からなる群より選ばれる少なくとも1種の位置に設けられた少なくとも1つの超音波信号発生素子を用いて行なうことができる。また、収容流体超音波信号の検出を、容器の外部と容器の内部からなる群より選ばれる少なくとも1種の位置に設けられた少なくとも1つの超音波信号検出素子を用いて行なうことができる。即ち、本発明の方法においては、基準超音波信号の発生のための超音波信号発生素子と収容流体超音波信号の検出のための超音波信号検出素子について、それらを設ける位置の選択の自由度が高い。なお、超音波信号発生素子や超音波信号検出素子を容器の外部に設ける場合は、容器の外表面か容器の外表面の近傍(具体的には容器の外表面から約10m以内、より好ましくは約5m以内、更に好ましくは約2m以内)に設けることが好ましい。地下タンクの場合、注入口、排気口、保守用パイプなどの金属製パイプ類が強固に容器に固定されており、金属などの固体材料は超音波の伝播損出が非常に少ない。地上タンクの場合は、容器の外表面からの上記素子類の距離は約1m以内であることが好ましい。また、超音波信号発生素子や超音波信号検出素子を容器の内部に設ける場合は、容器の内表面でもよく、容器の内表面の近傍でもよく、容器内の中央部でもよい。収容流体超音波信号の検出のための超音波信号検出素子は、容器の内部に設けることが好ましく。また、容器の内部に液相と気相の両方が存在する場合は、収容流体超音波信号の検出のための超音波信号検出素子を2個以上用いて、容器内部の液相と気相の両方に超音波信号検出素子が接触するように設けることが好ましい。
上記のように、工程(3)において収容流体超音波信号が上記「位相差特徴」を有するか否かの決定を行なうのは、電子・電気工学の通常の知識のある当業者には容易である。しかし、本発明の方法の好ましい態様においては、下記の3つの測定条件(i)〜(iii):
(i)基準超音波信号の波形が正弦波であること;
(ii)基準超音波信号の波長が、検出すべき最小漏洩孔の直径以上であること;及び
(iii)減圧において容器の内部圧力を外部圧力よりも1kPa以上低くすること、
からなる群より選ばれる少なくとも1種の測定条件を用いることができ、これにより、工程(3)において、収容流体超音波信号が上記「位相差特徴」を有するか否かの決定をより容易にすることできる。
本発明の検査方法の適用対象としての流体用容器の種類やそれに収容されている流体は特に限定されないが、それらの組み合わせの代表的具体例としては、「該容器が地下タンクであり、容器に収容されている流体が液体と気体の両方であり、液体が液体燃料であり、気体が空気と気化燃料との混合気体である」場合や、「該容器が地上タンク又は地下タンクであり、容器に収容されている流体が気体燃料である」場合を挙げることができる。液体燃料の例としては、石油類、植物油類、アルコール類などが挙げられる。気体燃料の例としては、天然ガス、石油ガス、水素ガスなどが挙げられる。液体や気体の更なる例としては、食品、医薬品、化粧品、洗剤などを挙げることができる。
流体用容器の漏洩孔の有無を検査するための本発明の方法を実施するためには、例えば、以下のシステムを用いることができる。
流体用容器の漏洩孔の有無を検査するために用いるシステムであって、
容器の内部圧力を外部圧力に対して減圧にするための圧力値調整手段、
容器の外部と容器の内部からなる群より選ばれる少なくとも1種の位置に設けられた少なくとも1つの超音波信号発生素子、
容器の外部と容器の内部からなる群より選ばれる少なくとも1種の位置に設けられた少なくとも1つの超音波信号検出素子、及び
超音波信号発生素子と超音波信号検出素子に接続された、電気信号の発生と処理のための電子的処理手段とを包含する、
ことを特徴とするシステム。
このようなシステムの一例が図1、図7、図8に示されている。
以下、添付の図面に参照して本発明を更に詳細に説明する。
図2は、本発明の検査方法において利用する位相遅延(位相の差)の発生する様子を示す写真である。試験用のタンク(非密閉型で、漏洩孔無し)水(液相)を入れて収容流体として、それに基準超音波信号1を加えた直後の収容流体から検出した収容流体超音波信号3をオシロスコープで観測して撮った写真である。収容流体に向けて発信した基準超音波信号1が収容流体に伝播し、その後に収容流体超音波信号3の波形が立上り、その位相は、基準超音波信号1に対して遅れ続ける(即ち、位相の差が拡大し続ける)。この実験については詳しく後述する。
図10(B)、図10(C)は、評価・実験用のタンクと図10(D)の漏洩検査方法評価用の擬似漏洩孔とを用いて、実際の漏洩孔9の検査方法と同じように本発明の方法を実施している様子であり、それを観測するオシロスコープの画面をビデオカメラで連続して撮影し、上記「位相差特徴」の様子を静止画とした画像を観測時間の経過に沿って並べたのが図4、図5、図6である。図4、図5、図6には、容器内の流体から検出される収容流体超音波信号3の位相は安定・停止することなく、基準超音波信号1に対して経時的に位相差が拡大し続け(即ち、上記「位相差特徴」が現れ)、位相差が90〜180度付近で位相反転し、位相差が180度を越えて次の90度に達する様子が明確に示されている。この実験は非常に再現性が高く、容器8に漏洩孔9がある場合は、上記「位相差特徴」が必ず明確に現れ、また、容器8に漏洩孔9がない場合は、上記「位相差特徴」は決して現れない。
本発明の方法において、基準超音波信号1に対する収容流体超音波信号3の位相の差は、観測する時間に比例して増大する傾向がある。このように位相差が拡大し続けるという現象は、通常では容易に起こりえない特徴である。漏洩孔9の直径と、位相の差が拡大して一定の位相差値まで到達する時間との間に相関関係があることも見出した。従って、漏洩孔9の直径の大きさなども推定可能である。例えば、図4と図5に示すように、漏洩孔の直径が0.3mmの場合は、位相差が90度に達するまでの時間は約50〜100秒であり、漏洩孔の直径が1.0mmの場合は、位相差が90度に達するまでの時間は約4〜8秒である。このように、漏洩孔の直径が約3倍になると、位相差が90度に達するまでの時間は10倍以上になる。このような相関関係に基づき、位相差が90度に達するまでの時間から漏洩孔の直径を測定することができ、0.1mm単位での測定も可能である。
容器8に漏洩孔9が存在する場合、本発明の方法の工程(3)において収容流体超音波信号3が上記「位相差特徴」を有することは、収容流体に基準超音波信号1を加え始めてから10分から15分程度で確認できる。一方、容器に漏洩孔が存在しない場合は、収容流体に基準超音波信号1を加えた始めた後に最長でも1秒以内で、収容流体超音波信号3は基準超音波信号1に対して位相の差を一定値に保って静止し、振幅も安定して変動する事なく、その状態を安定に維持し、72時間以上を経過しても上記「位相差特徴」は微塵も発生しない。収容流体超音波信号3に上記「位相差特徴」が生じるかどうかには、外部からの震動や気温変化などはほとんど又は全く影響しないので、上記「位相差特徴」の有無に関する誤認発生の可能性は極めて少ない。
図2に参照して更に詳しく説明する。試験用タンク(非密閉型で、漏洩孔無し)に水を入れて、水に基準超音波信号1を加えた直後の収容液体から検出した収容流体超音波信号3をストレージメモリー機能付きのオシロスコープで観測して撮った写真であるが、収容流体に基準超音波信号1を加えた直後に検出した収容流体超音波信号3は、ノイズと同等の微小振幅から波形が立上がり始め、振幅と位相が不安定な状態から所定の最大振幅まで成長した後、位相が一定に定まって安定する迄の様子を測定し記録したものが図2(A)である。図2(A)において、P1は、波形立上り部分から始まる「位相遅延の利用開始領域」を示し、P2は、「波形が安定し、P3まで位相遅延が続く領域」を示し、P3は「ほぼ同位相の領域」を示し、T1は「基準超音波信号発信開始から、収容流体における波形立上りまでの領域」を示し、そして、T2とT3は「位相遅延の領域」(即ち本発明に利用できる領域)を示す。該図2(A)中にT2と表記した部分(位相遅延の領域)の表示時間軸をオシロスコープのストレージメモリー機能で拡大したのが図2(B)である。同じ図2(A)にP1と表記した破線丸印で示した部分(波形立上り部分)の表示時間軸を大幅に拡大したのが図2(C)であり、図2(D)は、同じく図2(A)に示すT3と表記した部分(P2とP3の間の領域)の表示時間軸を大幅に拡大したものである。
これら図2(A)、図2(B)、図2(C)、図2(D)には、収容流体超音波信号3の振幅が所定値まで成長する迄の期間であるT2とT3は収容流体超音波信号3の位相が基準超音波信号1に対し遅れ続けることを示す。図2(C)のデータを注意深く見ると、基準超音波信号1に対して90度以上の位相差が発生すると収容流体超音波信号3の振幅は急激に縮小し、位相差180度付近では収容流体超音波信号3波形がほぼ消失し、位相差が180度を越えて次の90度付近に達すると新たな収容流体超音波信号3波形が立上がる様子が伺える。これは、ビデオカメラで撮影した記録を用いてより詳細に観察すると、より明らかになる。
図2(A)に示すように、収容流体超音波信号3が上記「位相差特徴」を示さない無駄な領域であるT1領域が生じる場合があり得る。このようなT1領域を生じさせないことが望ましく、そのためには、漏洩孔から容器内部に侵入する流体がP1(図2(A)参照)と同等の超音波信号を含んでおり、それによって、位相遅延が無限に続く(即ち、位相の差が無限に拡大する)ようにすればよい。そのために、上記のように、本発明の方法の好ましい態様においては、3つの測定条件(i)〜(iii):
(i)基準超音波信号の波形が正弦波であること;
(ii)基準超音波信号の波長が、検出すべき最小漏洩孔の直径以上であること;及び
(iii)減圧において容器の内部圧力を外部圧力よりも1kPa以上低くすること、
からなる群より選ばれる少なくとも1種、より好ましくは少なくとも2種、最も好ましくは3種の測定条件を用いることができ、これにより、工程(3)において、収容流体超音波信号3が上記「位相差特徴」を有するか否かの決定をより容易にすることできる。また、この目的からは、図1と図7に示すように、基準超音波信号1の発生を、容器8の外部(具体的には容器8の外表面と容器8の外表面近傍からなる群より選ばれた少なくとも1種の位置)に設けられた少なくとも1つの超音波信号発生素子2を用いて行なうことも好ましい。
基準超音波信号1の発生を、容器8の外部に設けられた超音波信号発生素子2を用いて行なうことができる理由としては、超音波信号は、気体中でも、液体中でも、金属などの固体中でもとても良い伝播特性であることが知られている。
上記のように、本発明の方法においては、基準超音波信号1の発生のための超音波信号発生素子2と収容流体超音波信号3の検出のための超音波信号検出素子4について、それらを設ける位置の選択の自由度が高い。
超音波信号発生素子2と超音波信号検出素子4の両方を容器8の内部に設けた場合、「超音波信号検出素子は超音波信号発生素子から発生した基準超音波信号をそのまま検出するだけで、収容流体超音波信号の検出はできず、漏洩孔の有無を示す情報は得られないのではないか」という疑問が生じるかも知れない。しかし、それは誤解である。本発明者は、上記の問題が生じないことを実験により十分に確認しており、また、理論的裏付けがある。本発明者の実験データを基に理論的考察を重ねた結果、本発明者は、本発明の方法のメカニズムを以下のように推定している。漏洩孔9を有する容器8中の流体に基準超音波信号1を加えると、基準超音波信号1は、容器8の周囲の流体6にも伝播して、容器8の周囲の流体6にも基準超音波信号1が与えられる。容器8の周囲の流体6が漏洩孔9を通過して容器8の内部に侵入する際に、漏洩孔9の直径の影響で侵入流体の超音波信号の位相が変わり、基準超音波信号1とは異なる別の超音波信号7をもつ流体として容器8の内部に侵入する。そして、容器8の内部で、基準超音波信号1と、漏洩孔9から侵入する流体がもつ超音波信号7とが波形合成されて、本発明の方法の工程(3)に記載される上記「位相差特徴」を有する合成波形が発生して容器内の流体全体に伝播し、それが本発明の方法の工程(3)に記載される収容流体超音波信号3として検出されるものと推定される。このようなメカニズム(特に、「位相の差が拡大し続ける」という「位相差特徴」)は、従来の知見からは極めて意外であるが、本発明者の実験データと理論的考察により十分に裏付けられている。
本発明の方法は、従来の漏洩孔検出方法と比較して、流体用容器の漏洩孔の有無を極めて正確且つ迅速に検査することができる。更に、本発明の方法は、測定対象の容器が置かれた環境(例えば、地上設置型か、又は地下埋設型か、容器の周囲に存在する液体及び/又は気体の種類や、周囲の騒音や振動など)にはほとんど又は全く影響を受けずに、流体用容器の漏洩孔の有無を確実に判定することができる。即ち、本発明の方法は、実施する環境についての自由度が極めて高い。これも、従来の漏洩孔検出方法にはない、非常に優れた特徴である。
流体用容器8の漏洩孔9の有無を検査するための本発明の方法は、本発明の上記システムを用いて簡単に実施することができる。本発明のシステムをガソリンスタンド地下タンクに実施した例を図1、図7、図8に示す。図1と図7に示されるように、ガソリンスタンド地下タンク8の漏洩孔9の外部開口部周辺にはタンク8から漏れ出した油種6が存在し、タンク8内部を減圧すると、この油種6を含む流体がタンク8内部に侵入する。このような場合、油種6の侵入を検出できない欠点がある従来技術の漏洩孔検査方法では、漏洩孔9をほとんど又は全く検出できない。これに比べて、本発明の方法によると、容器8の周囲に存在する流体6の種類にはほとんど又は全く影響されることなく、漏洩孔9を確実に検出できる。また、本発明の方法は、容器8の周囲の騒音や振動などにもほとんど又は全く影響されることがない。更に、本発明の方法は、タンクが地上タンクか地下タンクかにも全く影響されず、いずれの場合も同様に漏洩孔9を確実に検出できる。従って、本発明の方法は、実質的に全ての種類のタンク(容器)の漏洩孔検出に用いることができる。
容器8に漏洩孔9が存在する場合、本発明の方法の工程(3)において収容流体超音波信号3が上記「位相差特徴」を有することは、収容流体に基準超音波信号1を加え始めてから10から15分程度で充分確認できる。収容流体超音波信号3が上記「位相差特徴」を有するか否かについての誤認の可能性については、外部から通常起こり得る震動などに対しても安定であり、誤認は起こらない。また、例えば、漏洩孔のない小型の容器8に対して本発明の方法を実施する場合、人為的に強力な衝撃を容器に与えた時に、容器8内に収容される流体の震動に伴い収容流体超音波信号3の位相や波形が若干変動することもあるが、流体の震動が減少してするに従って最初に静止していたのとほぼ同じ位置に再び位相が戻り静止する。なお、漏洩孔のない小型容器に人為的に強力な衝撃を与えた場合の収容流体超音波信号3の位相や波形の変動の様子は、収容流体が液体の場合、図9(B)に示す様に基準超音波信号1の波長に比較してわずか1/1000以下程度の非常に遅い波長の震動のみが発生するだけであり、収容流体超音波信号3が上記「位相差特徴」を有する場合と誤認することは考えられない。一方、漏洩孔9(直径0.3mm)から空気が侵入した場合の収容流体超音波信号3は、図9(A)に示す通りであり、図9(B)とは全く異なる、早い波長の振動が生じる。
上記「位相差特徴」の誤認を引き起こす可能性のある要素をあえて挙げるなら、温度の変化であるが、地下のタンクに於いては温度変化は起こり難い環境にあり、無視できる範囲にあることが確認されているから考慮しなくてよい。
地上のタンクに於いては、通常の測定機器の取扱い環境に於いて起こり得る温度変化は問題ない範囲であるが、影響を与える可能性のある温度変化としては、外部から上昇か下降かの一方向に滑らかに変化し続ける温度の変化が加え続けられた場合がある。従って、強い太陽光が容器に直射する様な検査環境や、ストーブやエアーコンデショナーの温風をタンクに直接当てることなどを避け、また、作業員が機器の操作や判定結果の処理作業などを正しく処理できる通常の作業環境で本発明の方法を実施する限りは全く問題が無い。
いずれにしても、燃料などの危険物を取り扱う業界で合法的に使用する測定機器やシステムの場合は、結果を保証できる性能を有するものであることが法令で厳格に規定されている。従って、本発明の方法をそのような業界で用いる場合、関係法令を遵守している限りは、当業者である実施者が通常の注意をはらってシステムや関連機器を操作すれば、十分正しい検査結果を得ることができる。
ここで、重要な注意事項について述べる。
本発明の最も重要な目的の1つは、危険物を収容するタンクの漏洩検査を安全・確実に行なうことである。従って、本願明細書に記載される事項を参考にして機器を製造や改造したり、種々実験操作などを行なおうとする者は、まず、以下の説明を参考に、関係当局や機関に問い合わせをして、使用する機器の認可と危険物取扱者としての認可との両方をを受けてから行動する必要があるので、充分に注意願いたい。
本願明細書の記載を参考にすれば、危険物容器を取り扱う現場で充分に運用可能な機器の設計と製造が可能である。ただし、設計者、製造者、使用者などが別であっても、使用者、設計者、製造者の全てが、危険物を取り扱う分野の当業者としての重大な責任を必然的に負うことを自覚するべきである。このことは、危険物を取り扱う分野の当業者自身が本発明を実施する場合のみならず、当業者が、当業者以外の者に直接又は間接に指示を与えて本発明を実施する場合にも当てはまる。危険物を取り扱う分野において本発明を実施するに際しては、その全ての関係者は、全ての関係法令などを厳格に遵守し、安全の確保を最優先しなければならない。このようなことは当業者には極めて当然のことであるが、万が一の不注意により重大な事故が起きないようにするため、念のために申し添える。
例えば、下記にシステムの構成の例を示すが、オシロスコープなどを用いて機器の動作チェック作業が行える技術レベルを有する技術者であれば、充分に設計・製造・評価が可能であるように説明してあるので、以下の説明に基づいて試作・製造した機器は、実験や実用にも充分な性能が得られるはずである。しかし、安全確保の観点からは、実験に用いる流体としては水及び/又は空気だけを用いるべきであり、いかなる危険物(例えば、発火する可能性のある油種やアルコールなどの液体、気体燃料などの気体、液体窒素、化学薬品の液体や気体など)も流体として用いてはならない。また、いうまでもなく、通常の水は電気伝導性を有するので、水の近くで回路の調整を行なう際などには、感電事故を起こさないように注意する必要がある。
また、購入する機器などは、全て防爆仕様の物であることが必要になる。下記に示す機器の例は一般用途であり、空気の使用は可能であるが、水を使用する場合は、防水仕様であることが必要となる。防水仕様と防爆仕様は、何れの機器も特殊仕様として扱われるのが常である。下記に示した機器の例は、一般用途であり、空気中のみで用いるものであるので注意を要する。
容器内の流体の一部を排出して容器を減圧するため圧力調整器を用いる。従って、容器を減圧すると、容器内の流体(液体及び/又は気体)の一部が減圧器内に吸入され、外部へ排出されるので、周囲に何らかの悪影響をあたえることのないように注意を要する。例えば、実用機器に於いて、実際の危険物用容器での作業を行う時などに、周囲に容器内の危険物(例えば液体燃料及び/又は気体燃料)が排出されることに充分に注意しなければならない。
本発明の最も重要な目的の1つは、危険物取り扱いにおける社会と公共の安全を守ることである。その目的を果たすために用いられるシステムや機器が、運用に当たって自ら事故を起こしてはならない。また、本発明を正しく実施しないために漏洩孔の有無の判定の結果を誤れば、大きな事故の原因を見逃すことや、地下土壌汚染や地下水汚染などの環境汚染を防止できないことを認識しなければならない。本発明を実施するためにシステムや機器を製造・入手する際には、経済性・設計容易性・製作容易性よりも、信頼性と安全性を最優先に考慮するべきである。「危険物取り扱いにおける社会と公共の安全を守る」という本発明の重要目的を達成するために、本発明を実施するために用いる機器は、いうまでもなく、通常の測定機器よりもレベルの高い検査機器・判定機器としての高い信頼性と安全性(例えば防爆性能や防水性)を満たす必要がある。「危険物取り扱いにおける社会と公共の安全を守る」という本発明の重要目的に鑑みて、以上のような安全性の問題を回避するために、本発明を実施するためのシステムや機器の研究・実験・実用化を行なう意思のある誠実な当業者に対しては、本発明者は責任を以って技術的アドバイスや指導などの協力をする用意がある。
上記「位相差特徴」をより容易に観測できるようにするための基準超音波信号1について、オシロスコープで観測した波形の写真である図2と図3を用いて説明する。上記のように、収容流体超音波信号3の位相遅延が無限に続く(即ち、位相の差が無限に拡大する)ような測定条件を用いることが望ましい。そのためには、上記のように、上記測定条件(i)〜(iii)が有効であるが、特に「(ii) 基準超音波信号の波長が、検出すべき最小漏洩孔の直径以上である条件」という測定条件が有効である。上記測定条件(ii)を用いると、容器8の外部の流体6(基準超音波信号1を与えられた)が漏洩孔9を通過して容器8の内部に侵入する際に、流体の超音波信号の位相が漏洩孔9の直径の影響を必然的に受けて変わるので、侵入流体の超音波信号7が基準超音波信号1と同じ又は近い位相を持つことがない。例えば、理論上では漏洩孔9の直径が基準超音波信号1の波長の1/4の時、漏洩孔9を通過して容器8に侵入する流体の超音波信号7の位相は90度で最大の遅延となる。(このような最適な侵入流体超音波信号7を、「波形が発生できることが可能な最小の振幅値で、位相が最大に遅延した超音波信号7」と表現することができる。)これにより、基準超音波信号1に対する収容流体超音波信号3の位相の差が大きくなる。容器8の内部を減圧し続けることにより、上記のような最適な超音波信号7をもつ流体が漏洩孔9から侵入し続け、それにより、基準超音波信号1に対する収容流体超音波信号3の位相の差が拡大し続ける。
現在、検出すべき漏洩孔9の直径は、法令で0.3mm以上と規定されている。図3(A)は漏洩孔の直径が0.3mmの時に最も効果を発揮するように、基準超音波信号1の波長を調整することにより、漏洩孔を通過する流体の信号7の位相を調節したものである。漏洩孔9の直径0.5mmの時に漏洩孔を通過する流体の超音波信号7様子が図3(B)であり、漏洩孔9の直径0.8mmの時に漏洩孔を通過する流体の超音波信号7の様子が図3(C)である。なお、図3(A)〜(C)に示す「漏洩孔を通過する流体の信号7」は、図10(A)に示される、「漏洩検査用システムの調整と評価のための方法」を用いて、漏洩孔9を通じて容器8の内部から外部へ抜き出した流体の超音波信号を容器8の外部にある超音波信号検出素子4で検出することにより得た信号である。
また、図3(D)は、参考として、漏洩孔9が無い場合の収容流体超音波信号3を示すものであり、収容流体超音波信号3と基準超音波信号1とはほとんど同じである。
漏洩孔9の直径が小さ過ぎるために容器8の外部からの流体の侵入が継続しない場合や、断続的に浸入する場合には、位相の差がある位置で一時停止して、その後再び位相の差が拡大を開始する状態が観測できる。そのような場合は、減圧操作における減圧度を上げることにより、容器8内に外部の流体を浸入させる力を上げる方法が有効である。
容器8内の減圧度の値を上げるには限界がある。容器8の機械的強度など考慮すると、一般に−25kpa程度より小さいことが好ましく、より好ましくは−20〜−15kpaであり、より好ましくは−5kpa程度である。漏洩孔9の直径が0.3mmの時に使用可能な最小の減圧度の値は−1〜−2kpa程度である。
基準超音波信号1の波形について説明する。正弦波は、物理理論上での動作も最も安定しており、本発明における上記「位相差特徴」も、一般的には、基準超音波信号1の波形が正弦波の場合が最も安定するので、一般的には、基準超音波信号1の波形は正弦波が好ましい。しかし、通常の測定などに於いては、図8(B)のように矩形波やパルス波であれば位相の観測や測定はより容易であり、また、信号処理回路はシンプルで小型、低価格など多くのメリットがある。図8(C)のような波長の異なる信号の複合波は、検出すべき漏洩孔9の直径と、基準超音波信号1の好ましい波長との関係から、幅広い領域の漏洩孔9直径に対応できるものである。正弦波の特徴と図8(B)の矩形波やパルス波の特徴を変形しても良い。更に、図8(B)のようなパルス波は、同じ周波数でも、波長を更に短く出来る事から、更に微小な漏洩孔9に対応するのに適している。図8に示されるように、マイクロコンピュターで信号波形を観察しながら、波長(周波数)及び波形の組合せを自動的に調整できる。
図10(B)、図10(C)は、評価・実験用のタンクと図10(D)の漏洩検査方法評価用の擬似漏洩孔とを用いて、実際の漏洩孔9の検査方法と同じように本発明の方法を実施している様子であり、それを観測するオシロスコープの画面をビデオカメラで連続して撮影し、上記「位相差特徴」の様子を静止画とした画像を観測時間の経過に沿って並べたのが図4、図5、図6である。
漏洩孔9の直径が1.0mmの場合の上記「位相差特徴」の様子をビデオカメラで撮影したのが図4である。上記「位相差特徴」の位相の差が拡大する様子と、位相の差が拡大し続ける事から必然的に発生する振幅が変化する特徴的な様子も観測できる。
漏洩孔9の直径が0.3mmの場合の上記「位相差特徴」の様子をビデオカメラで撮影したのが図5である。上記「位相差特徴」の位相の差が拡大する様子と、位相の差が拡大し続ける事から必然的に発生する振幅が変化する特徴的な様子が、同じように観測できる。位相の差が拡大する時間値のみが、漏洩孔9の直径が1.0mmの場合(図4)と異なる。
漏洩孔9の直径が1.0mmの場合の位相の差が180度付近で、位相が反転する特徴的な様子をビデオカメラで撮影したものが図6である。 漏洩孔9の直径が0.3mmの場合(図5)でも180度付近での特徴的な位相反転の様子がうかがえる。
このように上記「位相差特徴」と、上記「位相差特徴」から必然的に発生するその他の特徴的な現象は、漏洩孔9の直径が1.0mmと0.3mmの場合の例を用いて説明したが、その他に、漏洩孔9の直径を0.8mm、1.5mm、2.0mmとして実験した場合においても同様の結果が観測されており、漏洩孔9が存在する場合は、漏洩孔9の直径にかかわらず、上記「位相差特徴」や、位相差180度付近での位相反転という特徴が、本発明の方法においては必然的に発生する事が確認できた。
図10に示される実験方法は、漏洩検査用のシステムの調整と評価のために従来から実績ある方法として用いられているものを本発明に関する実験や測定にも用いたものである。図10(A)は、検出すべき漏洩孔9の直径に対する基準超音波信号1の波長の調整などに用いる方法の例である。図10(B)は、容器8の周囲の滞留液体6が少量で漏洩孔9の外部開口部の周辺のみに存在する場合の評価方法に相当する例である。図10(C)は、沿岸地域、河川地域など、地下タンク8の外表面の多くの部分が滞留流体6に接触する場合の評価方法に相当する例である。図10(D)は評価用の擬似漏洩孔9を示す。
図7に示されるように、本発明の方法を実施する現場の状況によって、例えば、超音波信号発生素子2を検査対象タンク8に隣接する別の地下タンク(図示しない)や地下マンホール11、または地下配管12に設置してもよい。尚、超音波信号発生素子2と超音波信号検出素子4は、いずれについても、容器8の外部と容器8の内部からなる群より選ばれる少なくとも1種の位置に設けることができる。超音波信号発生素子2と超音波信号検出素子4のいずれについても、容器8の外部に設ける場合、容器8の外表面に接触していてもよく、接触していなくてもよく、また、容器8の内部に設ける場合、容器8の内表面に接触していてもよく、接触していなくてもよい。
本発明のシステムの構成方法と、使用する超音波信号発生素子2、超音波信号検出素子4、圧力値の調整機器5と、電気信号の発生と処理のための電子的処理手段10や、上記「位相差特徴」の評価手順、評価方法の例を以下に説明する。
超音波信号発生素子2と超音波信号検出素子4は、液体に接触した状態で使用する場合であっても、多数ある市販品から選択することができる。
超音波信号発生素子2は、複数のメーカーから各種販売されている超音波信号送信センサー等が最適である。市販の超音波信号発生素子2の例としては、日本国村田製作所(株)製 UT200LF8とUT200BA8(いずれも送受兼用)が挙げられる。
超音波信号検出素子4は、複数のメーカーから多数販売されている超音波信号受信センサー、AE震動センサー、加速度センサーなどが最適である。市販の超音波信号検出素子4の例としては、日本国東陽テクニカ(株)製 393C(接地絶縁)が挙げられる。
減圧と加圧に用いる圧力値調整手段5は、一般用途の物でよく、複数のメーカーから市販されているものが使用できる。市販の圧力値調整手段の例としては、日本国(株)アルバック機工製(ULVAC,inc) DA−40S が挙げられる。
超音波信号発生素子2に接続される基準超音波信号発信用の電気信号発生器は、各測定器メーカーから販売ているものが使用できる。市販の電気信号発生器の例としては、日本国岩崎通信機(株)製 SG−4105 が挙げられる。
超音波信号検出素子4に接続される測定信号の処理回路や、上記「位相差特徴」の評価方法は、以下の通りである。
測定信号の処理回路は、採用する超音波信号検出素子4のメーカーが推奨・提示する受信回路の例などに基づいて受信回路を製作し、それを測定信号の処理回路として用いることができる。収容流体超音波信号3と比較するための基準超音波信号1は、電気信号発生器から出力される基準超音波信号1を超音波信号発生素子2に供給しながら、同じ信号を抵抗分割回路などで分岐して、収容流体超音波信号3と比較するための基準超音波信号1として用いることができる。
本発明において超音波信号検出素子4から得られる測定信号(収容流体超音波信号3)は、上記のように、ノイズ信号、気温の影響、外部震動の影響が非常に少ない特徴があるので、測定信号の処理回路の回路構成は幅広く自由に選択可能で、必要な増幅度や充分なS/N比は容易に得られ。測定信号の受信回路や処理回路の設計、製作は容易であり、以下に例を述べる。
超音波信号検出素子4の受信回路は、メーカーが提示する推奨回路や仕様書などから容易に製作できる。次に、受信回路からの出力信号と、基準超音波信号1の発生器から得られる出力信号とを位相測定回路の入力に接続する。基準超音波信号1に対する受信信号(収容流体超音波信号3)との位相の差は、その位相測定回路から出力される値であるから、これをマイクロコンピュターなど演算処理回路に入力して、位相の差の評価を行ない、上記「位相差特徴」の有無の評価を行って、漏洩孔9の有無を判定する。
位相測定回路と演算処理回路を用いる位相の差の評価方法の具体的例としては、位相を測定する双方の信号を2個のA/Dコンバーターに入力して、出力をマイクロコンピュターで読み取り、双方の信号の位相の推移を監視する事により、上記「位相差特徴」の有無の判断を、シンプルな電子回路と簡易な演算プログラムなどで容易に行なうことができる。
位相の差の評価方法の他の具体的例としては、位相を測定する双方の信号を、市販のアナログコンパレーターICに入力すると、出力されるデジタル信号波形の時間幅は、双方の信号の位相の差の値であるから、市販のデジタルIC等で簡単に構成できるパルス幅カウンターなどに入力すれば、位相の差は精度の良いデジタル時間値に変換して出力される。これを、市販の7セグメント表示素子などの表示器などに入力して、表示される時間が一定の値に定まり変化しなければ、位相は一定であるから、漏洩孔が存在しないと判断し、また、表示される時間の値が変化し続ければ、その変化した量だけ位相の差が拡大した事になる。従って、そのまま時間値の変化から上記「位相差特徴」の有無を評価することができる。この時、表示される時間の最小値は零であり、最大値は、基準超音波信号1の波長の1/2に対応する時間値を表示し、その時の位相の差は180度であり、位相の差は時間値と直線的な関係があるから、以下のように、表示される時間を容易に位相の差に変換して角度で評価しても良い。位相の差が零の時に表示される時間値が零とすれば、表示される時間値が最大の時は位相の差は180度となる。又はその逆で、位相の差が零の時に表示される時間値が最大とすれば、表示される時間値が零の時は位相の差は180度となる。これは、受信回路などに接続する極性でも変わるが、アナログコンパレーターICの正と負の入力端子を入れ替えることで選択できる。
上記「位相差特徴」の有無の評価方法は、上記に紹介した市販品などの電気信号発生器から出力される基準超音波信号1を超音波信号発生素子4に供給しながら、同じ信号を抵抗分割回路などで分岐して、収容流体超音波信号3と比較するための基準超音波信号1として用いる事ができる。この基準超音波信号1と超音波信号検出素子4から得られる測定信号(収容流体超音波信号3)の2つの信号の位相の差を、測定開始から15分程度の測定時間(この程度を参考に任意に設定してよい)にわたって測定し、その測定時間中に変化した値を評価すればよい。
より具体的には、測定機器をセットして測定準備を整えた後、容器の開閉口を閉じてから容器内を減圧しながら、容器中の流体に所定の位相を有する基準超音波信号1を加えて、収容流体超音波信号3を得る操作を開始する。所定の減圧度に達した後、減圧器を停止し、減圧による容器内の流体の振動が安定する時間である1〜3分程度を待った後に、基準超音波信号1と測定信号(収容流体超音波信号3)との振幅と位相の差は、ある値に到達する。
この時、もし、容器8に漏洩孔9がなければ、以降、振幅や位相の差になんら変化は起こらない。一方、容器8に漏洩孔9が存在する場合は、位相の差が徐々に拡大し始める。位相の差の評価の仕方の例としては、漏洩孔9の直径が1.0mmの場合は、図4に示されるように10秒程度で位相の差が約90度になる変化量であり、漏洩孔9の直径が0.3mmの場合は図5のように1分30秒で位相の差が約90度になる変化量であるという実験結果の値が示されているので、これらを参考に評価する。このように位相の差が拡大し続ければ、収容流体超音波信号3が上記「位相差特徴」を有すると判断する。通常は位相の差が15度以上になるまで拡大する変化が観測できれば誤認の可能性は極めて少ないが、タンク8の検査現場の環境状況などが、測定に予想を越える影響を与える場合などを考慮して、位相の差が45度以上になるまで観察することが好ましい。位相の差が90度以上になるまで観察した場合に誤認が発生する可能性は、測定機器や検査システムの何れかに重大な欠陥がない限りは皆無である。
本発明の方法の測定対象である容器8の大きさは特に限定されず、手のひらに乗るサイズの小型容器(例えば、容量約1L)から、一般に「タンク」と称されるような巨大容器(例えば、容量約15,000KL)に至るまで、様々な業界で用いられる、様々な容量・寸法・形状を有する多種多様の容器の漏洩孔の有無の検査を行うことができる。本発明の方法の測定対象である容器8の最も一般的な容量は、約500KL〜約3000KLである。
漏洩孔9の有無の検査が法令で定められている容器8のうち身近なものの例としては、タンクローリー車に搭載されるタンク等が挙げられる。タンクローリー車に搭載されるタンクの直径は約2m程度であり、容量により、長さは3m〜20m以上など様々で、円筒形状のものが代表的である。地下タンクの寸法や形状も同様である。タンクの容量・寸法・形状は、それが設置されている工場や施設などの種類や、タンクに貯蔵される流体の種類や貯蔵量によっても、様々に異なる。どのような容器(タンク)であっても、本発明の方法で漏洩孔の有無を正確に検査することができる。
本発明の検査方法は、流体用容器の漏洩孔の有無を極めて正確且つ迅速に検査することができるのみならず、流体用容器が置かれた環境(例えば、地上設置型か、又は地下埋設型か、容器の周囲に存在する液体及び/又は気体の種類や、周囲の騒音や振動など)にはほとんど又は全く影響を受けずに、流体用容器の漏洩孔の有無を確実に判定することができる。従って、本発明の方法は、信頼性と効率が非常に高い。本発明の方法により、手のひらに乗るサイズの小型容器(例えば、容量1L程度)から、一般に「タンク」と称されるような巨大容器(例えば、容量15,000KL程度)に至るまで、様々な業界で用いられる、様々な容量・寸法・形状を有する多種多様の容器の漏洩孔の有無を、正確且つ効率的に検査することができる。地下タンクにおいて漏洩孔の発生率が最も高いとされる底辺部における漏洩孔の検出率が従来技術ではとても低かったが、本発明の方法により、タンク内への油種の侵入をも確実に検出できるようになったので、地下タンクの底辺部における漏洩孔を確実に検出することができる。従って、法令が定める漏洩検査の目的を初めて完全に達成することができ、危険物取り扱いにおける社会と公共の安全に大きく貢献する。

Claims (4)

  1. 流体用容器の漏洩孔の有無を検査するための方法であって、
    (1)液体と気体からなる群より選ばれる少なくとも1種の流体を収容している容器の開閉口を閉じ、
    (2)該容器の内部圧力を外部圧力に対して減圧にし、容器中の流体に所定の位相を有する基準超音波信号を加えて、収容流体超音波信号を得、
    (3)基準超音波信号と収容流体超音波信号とを比較して、収容流体超音波信号が基準超音波信号に対して位相の差を有し、且つ、該位相の差が経時的に拡大し続ける場合は、該容器が漏洩孔を有すると判断する、
    ことを特徴とする方法。
  2. 流体用容器の漏洩孔の有無を検査するための方法であって、
    (1)液体と気体からなる群より選ばれる少なくとも1種の流体を収容している容器の開閉口を閉じ、
    (2)圧力値調整手段を用いて該容器の内部圧力と外部圧力のいずれか一方を他方に対して減圧にし、容器の外部と容器の内部からなる群より選ばれる少なくとも1種の位置に設けられた少なくとも1つの超音波信号発生手段を用いて容器中の流体に所定の位相を有する基準超音波信号を加えて、容器の外部と容器の内部からなる群より選ばれる少なくとも1種の位置に設けられた少なくとも1つの超音波信号検出手段を用いて収容流体超音波信号を得、
    (3)基準超音波信号と収容流体超音波信号とを比較して、下記の3つの条件(α)〜(γ):
    (α)収容流体超音波信号が基準超音波信号に対して位相の差を有し、且つ、該位相の差が経時的に拡大し続けること;
    (β)収容流体超音波信号の位相が反転すること;及び
    (γ)収容流体超音波信号の振幅が経時的に変化すること、
    からなる群より選ばれる少なくとも1種の条件が満足される場合は、該容器が漏洩孔を有すると判断する、
    ことを特徴とする方法。
  3. 基準超音波信号の波長を、検出すべき最小漏洩孔の直径以上に調整することを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
  4. 該容器が地上タンク、地下タンク、固定式タンク及び移動式タンクからなる群より選ばれるタンクであり、該容器が注入口パイプ、排気口パイプ、保守用パイプ、連結パイプ、及び該容器にパイプで連結される別の容器からなる群より選ばれる少なくとも1種を有していることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
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