JP4452788B2 - 構造体 - Google Patents

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Description

本発明は、構造体に関する。
従来より、下地基板の上に金属膜又は金属窒化物膜(以下、金属膜等とする)を介してIII族窒化物半導体の結晶を成長させる方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に示す技術では、III族窒化物層を成膜した下地基板の上に金属膜等を形成し、その金属膜等を加熱処理することにより、金属膜等に複数の貫通孔が上面視において網目状に分布する網目構造を形成している。この金属膜等の網目構造をマスクとして、金属膜等の貫通孔で露呈したIII族窒化物が成長初期の核生成サイトとなるようにしてIII族窒化物半導体の結晶を成長させている。
特開2005−119921号公報
しかし、特許文献1に示される技術では、核生成サイトの間隔がランダムになりやすく、結晶核の結晶方位もランダムになりやすい。これにより、III族窒化物半導体の結晶に欠陥が発生しやすいので、転位密度が高くなるおそれがある。
本発明の目的は、III族窒化物半導体の結晶層の転位密度を低減できる構造体を提供することにある。
なお、III族窒化物半導体としては、Ga、In系のものが挙げられる。III族窒化物半導体は、例えば、GaN系,AlGaN系,AlInGaN系等であるが、これらに限らない。
本発明の第1側面に係る構造体は、下地基板と、前記下地基板の上に形成され、三角錐形状の複数の微結晶部を有するクロム窒化物膜とを備えたことを特徴とする。
本発明の第2側面に係る構造体は、本発明の第1側面に係る構造体の特徴に加えて、前記クロム窒化物膜の上にIII族窒化物半導体で形成された結晶層をさらに備えたことを特徴とする。
本発明の第3側面に係る構造体は、本発明の第1側面又は第2側面に係る構造体の特徴に加えて、前記クロム窒化物膜は、2つの結晶方位を有するマルチツインの集合体であることを特徴とする。
本発明の第4側面に係る構造体は、本発明の第1側面から第3側面のいずれかに係る構造体の特徴に加えて、前記クロム窒化物膜の三角錐形状の微結晶部は、1辺の長さが10nm以上300nm以下であることを特徴とする。
本発明の第5側面に係る構造体は、本発明の第1側面から第4側面のいずれかに係る構造体の特徴に加えて、前記クロム窒化物膜の各前記微結晶部は、(111)面を底面とすることを特徴とする。
本発明の第6側面に係る構造体は、本発明の第5側面に係る構造体の特徴に加えて、前記クロム窒化物膜の各前記微結晶部は、{100}面群を他のファセット面とすることを特徴とする。
本発明の第7側面に係る構造体は、本発明の第6側面に係る構造体の特徴に加えて、前記クロム窒化物膜の上にIII族窒化物半導体で形成された結晶層をさらに備え、前記結晶層は、前記クロム窒化物膜の各前記微結晶部を成長核に、前記{100}面群のそれぞれからIII族窒化物半導体が横方向成長して形成されることを特徴とする。
本発明の第8側面に係る構造体は、本発明の第1側面から第7側面のいずれかに係る構造体の特徴に加えて、前記下地基板は、六方晶系及び擬似六方晶系のいずれかの結晶構造を有することを特徴とする。
本発明の第9側面に係る構造体は、本発明の第8側面に係る構造体の特徴に加えて、前記クロム窒化物膜は、前記下地基板の(0001)面上に積層されていることを特徴とする。
本発明の第10側面に係る構造体は、本発明の第8側面又は第9側面に係る構造体の特徴に加えて、前記クロム窒化物膜の各前記微結晶部は、底面の各辺が前記下地基板の(0001)面上で、〔10−10〕方向、〔01−10〕方向及び〔−1100〕方向のいずれかに沿って延びることを特徴とする。
本発明の第11側面に係る構造体は、本発明の第1側面から第7側面のいずれかに係る構造体の特徴に加えて、前記下地基板は、立方晶系の結晶構造を有することを特徴とする。
本発明の第12側面に係る構造体は、本発明の第11側面に係る構造体の特徴に加えて、前記クロム窒化物膜は、前記下地基板の(111)面上に積層されていることを特徴とする。
本発明の13側面に係る構造体は、本発明の第11側面又は第12側面に係る構造体の特徴に加えて、前記クロム窒化物膜の各前記微結晶部は、底辺の各辺が、〔10−1〕方向、〔1−10〕方向及び〔01−1〕方向のいずれかに沿って延びることを特徴とする。
本発明によれば、III族窒化物半導体の結晶層の転位密度を低減できる。
本明細書において、「膜」は、連続した膜でもよいし、不連続な膜でもよいものとする。「膜」は、厚さを持って形成されている状態を表す。
本発明の実施形態に係る半導体基板の製造方法を、図1〜図8を用いて説明する。以下では、結晶層としてIII族窒化物半導体のGaNを例として説明するが、他の半導体に関しても同様である。なお、後述のように結晶層を自立基板として用いてダイオード等に応用することを考えると、結晶層の材質となるIII族窒化物半導体は、GaNであることが好ましい。
図1及び図2は、本発明の実施形態に係る半導体基板の製造方法を示す工程断面図である。図3及び図4は、XRD(X−Ray Diffraction)チャ−トである。図5は、試料表面を撮影したSEM写真である。図8は、試料表面を撮影した顕微鏡写真である。図6は、クロム窒化物膜の表面モフォロジ−の模式図である。図7は、クロム窒化物膜の凸部の結晶方位を示す図である。
図1(a)に示す工程では、下地基板10を準備する。下地基板10は、サファイアの単結晶で形成されている。下地基板10の上面10aは、サファイアの単結晶の(0001)面になっている。サファイアの単結晶は、擬似六方晶系の結晶構造を有する。
なお、下地基板は、六方晶系、擬似六方晶系及び立方晶系のいずれかの結晶構造を有する材料であれば、サファイア以外の材料で形成されていてもよい。なお、下地基板が立方晶系の場合には、以下の記載において上面として(111)面を用いる。
図1(b)に示す工程では、下地基板10の上面10aに、Cr(クロム)層20を成膜する。すなわち、サファイアの結晶の(0001)面の上にCr層20を成膜する。具体的には、まず、下地基板10は、通常の半導体基板の洗浄方法(有機洗浄による脱脂、酸・アルカリ・純水洗浄による、汚染物・パ−ティクル除去)で洗浄し表面10aの清浄度を確保する。次に、清浄度が確保された表面10aの上に、不活性ガス雰囲気中、たとえばArガス雰囲気中でスパッタリング法により金属Cr膜を成膜してCr層20を形成する。
ここで、Cr層20の平均層厚は、7nm以上45nm以下の範囲内の値であることが好ましく、10nm以上40nm以下の範囲内の値であることがさらに好ましい。Cr層の平均層厚を7nm以上45nm未満とすることで、良好な結晶性の結晶層を成長させることが可能となり、さらに10nm以上40nm以下とすることで、結晶層のピット密度も低減させることが可能となる。
なお、Cr層20は、金属を含むアルキル化合物や塩化物を用いて化学気相法(CVD)により成膜してもよいし、有機金属気相法(MOCVD)により成膜してもよいし、真空(熱)蒸着法により成膜してもよい。
この工程で得られた試料のXRD解析を行うと、例えば、図3に示す結果が得られる。図3では、縦軸がピ−ク強度(任意単位)を示し、横軸が回折角2θを示す。これにより、下地基板10(サファイア)の(0001)面とCr層20の(110)面とが平行になるように配向していることが分かる。Cr層20は、体心立方構造の金属である。
図1(c)に示す工程では、Cr層20が形成された下地基板10を、GaNの結晶を成長させるための装置へ移送する。そして、Cr層20が形成された下地基板10を、窒素を含有した還元性ガス雰囲気で加熱窒化処理を行う。この窒素を含有した還元性ガスは、好ましくはアンモニアもしくはヒドラジンなどである。その際、加熱温度は、1000℃以上(1273K以上)であることが好ましく、1040℃以上であることがさらに好ましく、1060℃以上であることがさらに好ましい。加熱温度1000℃以上で窒化することにより、Cr層20がほぼ全部窒化して、三角錐形状の複数の凸部31を表面に有するクロム窒化物膜30が形成される。
ここで、クロム窒化物膜30の組成は、CrNであることが好ましい。
また、三角錐形状の凸部の1辺の長さは、窒化処理前のCr膜の層厚や加熱温度条件により変化するが、10nmから300nmの範囲である。加熱温度1040℃以上で窒化することにより、その上に成長させる後述のGaNの結晶層50の表面50aのピット密度が10〜10/cmレベルまで低減する。加熱温度1060℃以上で窒化することにより、後述のGaNの結晶層50の表面50aのピット密度が数/cmレベルまで低減する。加熱温度が高いほど、三角錐形状の不定形性が解消されるためと考えられる。
だだし、過度に高温とするのは、熱負荷増大による装置の部材劣化の問題が生じるとともに、形成されたクロム窒化物膜と下地基板との相互熱拡散などの問題が生じるので、加熱温度は1300℃以下が好ましい。
この工程で得られた試料のXRD解析を行うと、例えば、図4に示す結果が得られる。図4は、図1(c)に示す試料についてのXRDチャ−トである。図4では、縦軸がピ−ク強度(任意単位)を示し、横軸が回折角2θを示す。図4のXRDチャ−トでは、サファイアのピ−ク及びCrNのピ−クが観察されるが、Crのピ−クは観察されない。これにより、Cr層20がほぼ全て窒化してクロム窒化物膜30が形成したことが分かる。
また、クロム窒化物膜に関して、(111)面及び(222)面のピ−クのみが観察され、その半値幅が狭くなっている。これにより、クロム窒化物膜30は、サファイア基板の(0001)面に平行に、(111)面の方位が揃った状態となっていることが分かる。
この工程で得られた試料の表面をSEM観察すると、例えば、図5に示す結果が得られる。図5は、試料表面のSEM写真である。
図5のSEM写真によれば、クロム窒化物膜30が、三角錐形状の複数の凸部31を表面に有していることが分かる。また、クロム窒化物膜30の各凸部31は、ほぼ一様な大きさを有しており、概略一様な間隔で分布していることが分かる。このようなクロム窒化物膜30の各凸部31は、下地基板10の表面10aの略全面に分布している。
クロム窒化物膜30の各凸部31は、図6に示すように、底辺の各辺が、下地基板10の〔10−10〕方向、〔01−10〕方向及び〔−1100〕方向のいずれかに沿って延びている。
また、図1(c)に示す工程で得られた試料の断面をTEM観察した。その結果、各凸部31の3つの側面(底面以外のファセット面)は、{100}面群で形成されていることが分かった。
このように、クロム窒化物膜30の各凸部31は、個々には単結晶で、二つの結晶方位を有する微結晶(マルチツイン)集合体である。図5及び図6に示すように、三角錐の底辺の向きが180°面内回転した二種類の結晶方位(マルチツイン)を有する状態であるが、この上に成長する六方晶系の結晶対称性から、成長したIII族窒化物半導体結晶は単結晶となるので、何ら支障はない。すなわち、図7に示すように、クロム窒化物膜30の各凸部31の格子間隔(図7に示す正三角形部の黒丸の間隔)は、下地基板10(サファイア)の格子間隔(図7に示す白丸の間隔)と異なる。これにより、各凸部31を構成する原子(図7に示す黒丸)がサファイアの格子(図7に示す白丸)の間の位置で安定的に存在する。これにより、各凸部31は、黒丸で示す結晶格子のパタ−ンが繰り返し配列された微結晶(マルチツイン)となり、三角錐形状の複数の凸部を表面に有するようになる。そして、各凸部31は、底辺が〔10−10〕方向、〔01−10〕方向及び〔−1100〕方向のいずれかに沿って延び、側面が{100}面群になる。これにより、微結晶どうしの面内回転による結晶方位ズレは極めて少ない状態となる。また、各凸部31の底面の重心から上端へ向かう方向は、下地基板の(0001)面に対して垂直、すなわちサファイアの結晶のC軸と平行な方位となっている。
ここで、クロム窒化物膜30の平均膜厚は、10nm以上68nm以下の範囲内の値であることが好ましく、15nm以上60nm以下の範囲内の値であることがさらに好ましい。ここで、CrN膜の平均膜厚は、断面TEMで凹凸を測定して求めることができ、窒化を行う以前のCr層の平均層厚の1.5倍に相当することが確認された。
クロム窒化物膜30の平均膜厚が10nm未満の場合、すなわちクロム層の層厚が7nm未満の場合、下地基板10の表面10aが部分的に露出することがあるため、後述の図2(a)の工程で下地基板10とクロム窒化物膜30との両者からGaNのバッファ層が成長し始めることになる。これにより、下地基板10から成長したGaNのバッファ層とクロム窒化物膜30から成長したGaNのバッファ層とで結晶方位が異なるので、後述の図2(b)の工程で結晶品質の向上が期待できないおそれがあり、又は、後述の図2(b)の工程で結晶成長後のGaNの表面においてピットが多くなるおそれがある。また、クロム窒化物膜30の平均膜厚が68nmを越えた場合、上述の加熱窒化処理において、下地基板10上にクロム窒化物膜30の固相エピタキシャル成長が均一に進行せずにクロム窒化物膜30が多結晶となる傾向にある。これにより、後述の図2(a)の工程でクロム窒化物膜30の上に成長するGaNがモザイク状乃至多結晶になり、後述の図2(b)の工程で結晶品質の向上が期待できないおそれがある。
なお、図1(b)に示す工程と図1(c)に示す工程とは、同一装置で行っても別の装置で行っても良い。図1(b)に示す工程と図2(a)に示す工程との間では、大気開放しないで行うことが好ましい。
次に、図2(a)に示す工程では、下地基板温度を900℃まで下げ、HVPE法でIII族窒化物(例えば、GaN)のバッファ層40を成膜する。バッファ層40の層厚は、例えば、約10μmとする。
ここで、バッファ層40は、クロム窒化物膜30の三角錐形状の微結晶(凸部31)を成長核に(核生成サイトとして)、{100}ファセット面群のそれぞれから横方向成長する。これにより、クロム窒化物膜30とバッファ層40との界面(成長界面)で発生する転位(貫通転位)が上方向に伝播することを抑制できる。三角錘形状は、鋭角を有するものや、一辺が直線であるようなもののみに限定するものではなく、概ね三角錐形状のことを称している。形状を擬似的に加工し、または、成長過程で多面体にする物も含む。
また、クロム窒化物膜30の微結晶(凸部31)の結晶方位が揃っているので、III族窒化物の横方向成長において異なる方向から成長した結晶どうしが合体する際に、面内回転による方位ズレや成長厚み方向の結晶軸ズレ(C軸のズレ)を小さくできる。これにより、結晶方位が揃った状態で合体させることができるので、異なる方向から成長した結晶どうしが合体する部分において、III族窒化物の転位の発生を抑制することができる。
さらに、核生成サイトとなる凸部31が、下地基板10の上において、ほぼ一様な大きさを有しており、概略一様な間隔で分布している。これにより、クロム窒化物膜30の上においてバッファ層40が一様な方向に成長するので、この点からも転位の発生を抑制することができる。
図2(b)に示す工程では、下地基板温度を1040℃まで昇温し、GaNの結晶層50を成長する。成長時の結晶層50の層厚は、例えば、約10μmとする。これにより、下地基板10、クロム窒化物膜30、バッファ層40及び結晶層50を備えた構造体1が形成される。
上述のように転位が低減したバッファ層40の上に結晶層50を成長するので、結晶層50の転位密度は10〜10/cmにまで低減する。すなわち、いわゆる低温バッファ層技術よりも1〜2桁だけ転位密度が低減する。
この工程で得られた試料の表面を顕微鏡で観察すると、例えば、図8に示す結果が得られる。図8は、試料表面の顕微鏡写真である。
図8の顕微鏡写真によれば、結晶層50の表面50aには、ほとんどピットがないことが分かる。すなわち、表面ピット密度は、0〜10/cmにまで低減する。すなわち、金属バッファ層を用いる方法(例えば、特開2002−284600に示されるAl,Au,Ag,Ni,Ti,Cuを用いた方法を用いた場合、表面ピット密度は10〜10/cm)に比べ、エピシャル成長膜の表面ピット密度を3〜4桁以上低減することができる。これにより、ピットに起因した歩留まりの低下が生じない。また、結晶層50における転位密度を低減できていることが推定される。
図2(c)に示す工程では、化学溶液を用いてクロム窒化物膜30を選択的にエッチングする。GaNの基板SBを下地基板10から分離できる。すなわち、GaNの基板SBを自立基板として得ることができる。ここで、基板SBは、バッファ層40と結晶層50とを含んでいる。
副次的な効果として、バッファ層40の裏面には、クロム窒化物膜30の凸部31に対応した凹部41が形成されている。この凹部41は、数十nmから数百オ−ダ−の逆三角錐形状であるため、デバイスに用いた際に発光ダイオ−ドの光取り出し効率を向上できる。また、結晶欠陥密度の低減により、発光ダイオードの内部量子効率も向上するので、発光ダイオードの全体発光効率も大幅に改善される効果が得られる。
なお、上記バッファ層40の上にさらにIII族系窒化物の半導体層を積層し、素子構造とすれば、優れた半導体素子が得られる。
比較例
次に、比較例に係る半導体基板の製造方法を、図9〜図12を用いて説明する。以下では、本発明の実施形態に係る半導体基板の製造方法と異なる部分を中心に説明し、同様の部分については、説明を省略する。
図9(a)に示す工程では、Cr層20が形成された下地基板10を、GaNの結晶を成長させるための装置へ移送する。そして、Cr層20が形成された下地基板10を、窒素を含有した還元性ガス雰囲気で加熱窒化処理を行う。この窒素を含有した還元性ガスは、好ましくはアンモニアもしくはヒドラジンなどである。その際、加熱温度は900℃とする。これにより、Cr層20の表面近傍が窒化して、概略平坦な表面130aに有するクロム窒化物膜130が成長する。
この工程で得られた試料のXRD解析を行うと、例えば、図10に示す結果が得られる。図10は、図9(a)に示す試料についてのXRDチャ−トである。図10では、縦軸がピ−ク強度(任意単位)を示し、横軸が回折角2θを示す。図10のXRDチャ−トでは、サファイアのピ−ク及びCrNのピ−クが観察されるだけでなく、Crのピ−クも観察される。これにより、Cr層20が一部窒化してクロム窒化物膜130が成長したことが分かる。
また、CrNに関して、(111)面及び(222)面のピ−クのみが観察され、その半値幅が広くなっている。これにより、クロム窒化物膜130は、サファイア基板の(0001)面に対して、(111)面の方位がばらついた状態となっていることが分かる。
ここで、クロム窒化物膜130の平均膜厚は、例えば、5nmである。
この工程で得られた試料の表面をSEM観察すると、例えば、図11に示す結果が得られる。図11は、試料表面のSEM写真である。
図11のSEM写真によれば、クロム窒化物膜130が、平坦な表面130aに有していることが分かる。すなわち、クロム窒化物膜130の表面130aには、三角錐形状の微結晶(凸部)は形成されない。
次に、図9(b)に示す工程では、基板温度を900℃にしたまま、HVPE法でGaNのバッファ層140を成膜する。バッファ層140の層厚は、例えば、約10μmとする。
ここで、バッファ層140は、クロム窒化物膜130の平坦な表面130aの上に成長する。これにより、クロム窒化物膜130とバッファ層140との界面(成長界面)で発生する転位が上方向に伝播しやすい。
また、クロム窒化物膜130の結晶方位がばらついているので、その上に成長したバッファ層140の結晶どうしが合体する際に、面内回転による方位ズレや成長厚み方向の結晶軸ズレ(C軸のズレ)が発生しやすい。これにより、結晶方位がばらついた状態で合体することがあるので、異なる方向から成長した結晶どうしが合体する部分において、転位が発生しやすい。
仮に、クロム窒化物膜130の表面130aに対して原子レベルの平坦性を確保したとしても、GaNとCrNとの格子不整があるため、成長界面で高密度の転位が発生する傾向にある。また、成長が横方向成長を伴わないため、転位密度を低減できないおそれがある。
図9(c)に示す工程では、基板温度を1040℃まで昇温し、GaNの結晶層150を成長する。成長時の結晶層150の層厚は、例えば、約10μmとする。これにより、下地基板10、Cr層20、クロム窒化物膜130、バッファ層140及び結晶層150を備えた構造体100が形成される。
上述のように転位が発生しやすいバッファ層140の上に結晶層150を成長するので、結晶層150の転位密度は高くなる傾向にある。
この工程で得られた試料の表面を顕微鏡で観察すると、例えば、図12に示す結果が得られる。図12は、試料表面の顕微鏡写真である。
図12の顕微鏡写真によれば、結晶層150の表面150aには、多くのピットが発生していることが分かる。これにより、ピットに起因した歩留まりの低下が生じることがある。また、結晶層150における転位密度が高くなっていることが推定される。
以上のように、Cr層20を窒化する際の温度(窒化温度)により、得られるクロム窒化物膜の形状が変化する。それにより、その上に成長させるバッファ層及び結晶層の結晶性が変化する。そこで、上述の図1〜図2と同様の工程により試料を作成した。ここで、窒化温度(図1(c)に示す工程における加熱温度)を変えた場合において、結晶層のXRD解析結果からGaNのピ−ク半値幅を評価し、結晶層表面のSEM写真又は顕微鏡写真から結晶層の表面のピット密度を評価した。その結果を図13に示す。図13では、白丸のプロットがピ−ク半値幅の変化を表し、黒四角のプロットが表面ピット密度を表す。ピ−ク半値幅は、小さいほど結晶性が良好であることを示す。
図13に示す結果より、窒素を含有した還元性ガス雰囲気での加熱処理において、加熱温度は、1000℃以上であることが好ましく、1040℃以上であることがさらに好ましく、1060℃以上であることがさらに好ましいことが分かる。
すなわち、加熱温度1000℃以上で窒化することにより、Cr層20がほぼ全部窒化して、クロム窒化物膜の表面に三角錐形状の微結晶(凸部)が形成されて、結晶層の結晶性が向上するとともに、加熱温度900℃の場合に比べて結晶層の表面のピット密度が1桁近く減少することが分かる。
加熱温度1040℃以上で窒化することにより、結晶層50の表面50aのピット密度が10〜10/cmレベルまで低減する。これにより、加熱温度1000℃以上で窒化する場合よりも結晶層の転位密度が低減していることを推定できる。
加熱温度1060℃以上で窒化することにより、結晶層50の表面50aのピット密度が数/cmレベルまで低減する。これにより、加熱温度1040℃以上で窒化する場合よりも結晶層の転位密度がさらに低減していることを推定できる。
以上のように、加熱温度が高いほど、三角錐形状の不定形性が解消されるため、結晶層の転位密度が低減すると考えられる。だだし、過度に高温とするのは、熱負荷増大による装置の部材劣化の問題が生じるとともに、形成されたクロム窒化物膜と下地基板との相互熱拡散などの問題が生じるので、加熱温度は1300℃以下が好ましい。
本発明の実施形態に係る半導体基板の製造方法を示す工程断面図。 本発明の実施形態に係る半導体基板の製造方法を示す工程断面図。 試料のXRDチャ−ト。 試料のXRDチャ−ト。 試料表面を撮影したSEM写真。 表面モフォロジ−の模式図。 クロム窒化物膜の凸部の結晶方位を示す図。 試料表面を撮影した顕微鏡写真。 本発明の比較例に係る半導体基板の製造方法を示す工程断面図。 試料のXRDチャ−ト。 試料表面を撮影したSEM写真。 試料表面を撮影した顕微鏡写真。 窒化温度と結晶性との関係を示す図。
符号の説明
10 下地基板
20 Cr層
30,130 クロム窒化物膜
40,140 バッファ層
50,150 結晶層

Claims (5)

  1. 下地基板と、
    前記下地基板の上に形成され、三角錐形状の複数の微結晶部を有するクロム窒化物膜と、
    を備え、
    前記クロム窒化物膜2つの結晶方位を有するマルチツインの集合体であり、
    前記クロム窒化物膜の平均膜厚は、10nm以上68nm以下である
    ことを特徴とする構造体。
  2. 前記クロム窒化物膜の平均膜厚は、15nm以上60nm以下である
    ことを特徴とする請求項1に記載の構造体。
  3. 前記クロム窒化物膜の各前記微結晶部は、すべての斜面が{100}面群で構成されている
    ことを特徴とする請求項1又は2に記載の構造体。
  4. 前記クロム窒化物膜の各前記微結晶部は、(111)面を底面とする
    ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の構造体。
  5. 前記クロム窒化物膜の上にIII族窒化物半導体で形成された結晶層をさらに備えた
    ことを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の構造体。
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