JP4444584B2 - 画像出力装置、画像出力プログラム及び画像出力システム - Google Patents

画像出力装置、画像出力プログラム及び画像出力システム Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、画像出力装置に関し、特にインクジェットヘッドを搭載したキャリッジの移動速度を制御する画像出力装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、プリンタなどの画像形成装置には、インクジェットヘッドを搭載したキャリッジをDCモータなどで駆動して、インクを吐出し、印刷を行うものがあった。
【0003】
このようなプリンタにおけるキャリッジの駆動モータの速度を制御する従来技術の1つに特許文献1が開示するところの記録装置があった。
特許文献1では、キャリッジ走行の立ち上がりから制御開始速度になるまでフィードバック制御によらず大きな制御電流を駆動モータに流すことにより駆動モータの速度を迅速に高めていた。
【0004】
また、特許文献2が開示するところのスキャナの制御装置では、スキャナを摺動させるサーボモータの速度変動量を検出し、その検出した速度変動量を表示していた。特許文献2では、ユーザは、その速度変動量の表示内容から手動または自動でサーボモータのゲイン調整を行っていた。
【0005】
【特許文献1】
特開2000−071541号公報
【特許文献2】
特開平9−138467号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
従来、インクジェットプリンタ等の画像形成装置では、印字ヘッドが、主走査方向に摺動して、搬送装置により副走査方向に間欠搬送される記録紙上に、ある一定幅を持った画像を出力して、記録紙に連続的に画像を記録していた。
このようなインクジェットプリンタでは、印字ヘッドからインクを吐出している時の主走査方向の移動速度がある程度一定速度を維持しないと、印字ヘッドからの記録紙面へのインク吐出が均一にならず、正確な印字が行えない。
【0007】
しかしながら、装置間の組み付けバラツキや、印字ヘッドの摺動軸が紙紛や埃等で経時的な汚れによって、印字ヘッドと摺動軸間の負荷(摩擦等)の変動が増大してしまうといった問題があった。
【0008】
この負荷変動を吸収して、印字ヘッドの駆動モータ(DCモータ等)を制御する方法として、サーボモータ制御(PI制御等)があった。サーボモータ制御では、目標速度と現在速度との差分から次の制御量を決定して、印字ヘッドの移動速度を目標速度に近づけることを行っているため、制御上必ず応答の遅れが存在していた。この遅れを少なくする為には、制御ゲインを上げることが一般的で有るが、低価格の装置では製造コストを下げる為にメカ部材を高性能、構成を頑丈にすることが困難で装置自体の剛性が無い場合が有る。装置の剛性が無い状態で制御ゲインを上げると、装置に対する振動の影響が増大し、安定した駆動モータの制御が出来ない場合があった。
【0009】
また、特許文献1および特許文献2においても、上記の問題点を解決するための構成および動作が開示されていなかった。
【0010】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、キャリッジの駆動モータの移動速度の変動による振動の発生を抑制し、安定した駆動モータ制御を実現する画像出力装置を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
かかる目的を達成するため、本発明は、複数のノズルを副走査方向に配置したインクジェットヘッドをキャリッジに搭載し、キャリッジを主走査方向に移動させて記録を行う画像出力装置であって、記録データに応じて、キャリッジを駆動する駆動手段と、キャリッジの移動速度を検出する速度検出手段と、速度検出手段により検出されたキャリッジの移動速度に基づいて算出した制御値で駆動手段のPI制御を行う駆動制御手段と、キャリッジの移動速度が、加速区間、等速区間、減速区間の順で繰り返される場合、加速区間、等速区間、および減速区間それぞれにおける速度状態と定常負荷とに対するオフセットを含む固定のオフセット値を格納するオフセット値格納手段と、を有し、前記駆動制御手段は、前記オフセット値格納手段により格納された固定のオフセット値を読み出し、該読み出した固定のオフセット値と、前記駆動手段に対するPI制御による制御値とを合計し、該合計値を制御値として前記駆動手段を制御し、さらに、前記駆動制御手段は、前記キャリッジの移動速度の等速区間が所定距離以上継続した場合、前記キャリッジの移動速度の等速区間の終了時における前記PI制御による制御値の積分成分を、次回の前記加速区間から前記等速区間へ移行する際の前記積分成分の初期値として、前記駆動手段を制御することを特徴とする。
【0012】
また、本発明によれば、駆動制御手段は、検出されたキャリッジの移動速度をVn、キャリッジの目標速度をVt、比例ゲインをP、積分ゲインをI、オフセット値をoffsetとした場合、駆動手段の制御値を、
P×(Vt−Vn)+I×Σ(Vt−Vn)+offset
として、駆動手段を制御することを特徴とする。
【0013】
また、本発明によれば、駆動制御手段は、キャリッジの移動速度の等速区間の終了時におけるPI制御による制御値の積分成分を、次回の加速区間から等速区間へ移行する際の積分成分の初期値として、駆動手段を制御することを特徴とする。
【0014】
また、本発明によれば、駆動制御手段は、キャリッジの移動速度の等速区間が所定距離以上継続した場合、キャリッジの移動速度の等速区間の終了時におけるPI制御による制御値の積分成分を、次回の加速区間から等速区間へ移行する際の積分成分の初期値として、駆動手段を制御することを特徴とする。
【0015】
また、本発明によれば、等速区間の終了時における積分成分の値を2以上格納する積分成分値格納手段と、等速区間の終了時における積分成分の値を、積分成分格納手段に書き込む積分成分書込手段とを有し、駆動制御手段は、積分成分格納手段により格納された2以上の積分成分の値の平均値を、次回の加速区間から等速区間へ移行する際の積分成分の初期値として、駆動手段を制御することを特徴とする。
【0016】
また、本発明によれば、積分成分書込手段は、等速区間の終了時における積分成分の値と、上限および下限が定められている閾値とを比較し、等速区間の終了時における積分成分の値が閾値の範囲内である場合、等速区間の終了時における積分成分の値を積分成分格納手段に書き込み、閾値の範囲外である場合、等速区間の終了時における積分成分の値を積分成分格納手段に書き込まないことを特徴とする。
また、本発明は、上記いずれかの画像出力装置と、ホストコンピュータとが、ネットワークを介して接続され、前記ホストコンピュータは、記録データを、前記画像出力装置へ送信することを特徴とする画像出力システムである。
また、本発明は、複数のノズルを副走査方向に配置したインクジェットヘッドをキャリッジに搭載し、該キャリッジを主走査方向に移動させて記録を行う画像出力プログラムであって、記録データに応じて、前記キャリッジを駆動する処理と、前記キャリッジの移動速度を検出する処理と、前記検出されたキャリッジの移動速度に基づいて算出した制御値で前記キャリッジの駆動においてPI制御を行う処理と、をコンピュータに実行させ、前記PI制御を行う処理は、前記キャリッジの移動速度が、加速区間、等速区間、減速区間の順で繰り返される場合、前記加速区間、前記等速区間、および前記減速区間それぞれにおける速度状態と定常負荷とに対するオフセットを含む固定のオフセット値を格納するオフセット値格納部から、前記固定のオフセット値を読み出し、該読み出した固定のオフセット値と、前記キャリッジの駆動に対するPI制御による制御値とを合計し、該合計値を制御値として前記キャリッジの駆動を制御し、さらに、前記PI制御を行う処理は、前記キャリッジの移動速度の等速区間が所定距離以上継続した場合、前記キャリッジの移動速度の等速区間の終了時における前記PI制御による制御値の積分成分を、次回の前記加速区間から前記等速区間へ移行する際の前記積分成分の初期値として、前記駆動手段を制御することを特徴とする画像出力プログラムである。
【0017】
【発明の実施の形態】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態における画像出力システムの構成を示す図である。図1に示されるように、画像出力システムは、画像出力装置10と、ホストコンピュータ20とを有する。画像出力装置10とホストコンピュータ20とは、ネットワークを介して接続されている。
【0018】
画像出力装置10は、印刷用紙を所定方向(副走査方向)へ搬送させるとともに、インクジェットヘッドを搭載したキャリッジ16を、その用紙搬送方向と直交する方向(主走査方向)に往復移動させながら、インクを吐出し、印刷を行うインクジェットプリンタである。
なお、本実施形態では、画像出力装置10をインクジェットプリンタとしたが、インクジェットプリンタ以外の複写機、ファクシミリ等の、画像印字ヘッドとヘッドから出力された画像を記録する記録紙を搬送する装置を備えた他の装置であってもよい。
【0019】
また、画像出力装置10は、制御部11と、送受信部12と、情報格納部13と、情報記憶部14と、駆動モータ15と、キャリッジ16と、エンコーダ17とを有する。
【0020】
制御部11は、例えばCPU(Central Processing Unit)であって、送受信部12および駆動モータ15を含む画像出力装置10全体の制御を行う。また、制御部11は、情報記憶部14に対してデータの書き込みおよび読み出し処理を行うとともに、情報格納部13に対してデータの読み出し処理を行う。
【0021】
送受信部12は、ホストコンピュータ20との間のデータの送受信を行う。
【0022】
情報格納部13は、例えばROM(Read Only Memory)であって、制御部11による画像出力装置10全体制御のためのプログラムの他、駆動モータ15制御のための各種データが格納されている。
【0023】
情報記憶部14は、例えばRAM(Random Access Memory)であって、送受信部12により受信されたデータ、ならびにエンコーダ17から出力されたキャリッジ16の位置情報および速度情報を一時記憶する。
【0024】
駆動モータ15は、キャリッジ16を用紙搬送方向と直交する方向に往復移動させるための駆動装置である(例えばDCモータ)。
【0025】
キャリッジ16は、インクジェットヘッドを搭載し、用紙搬送方向と直交する方向に往復移動してインクを吐出して印刷を行う。
【0026】
エンコーダ17は、キャリッジ16の位置および移動速度を測定し、その測定情報(位置情報、速度情報)を制御部11へ出力する。
【0027】
ホストコンピュータ20は、画像出力装置10にて印刷出力するための記録データ(文字・画像データ)を主走査方向(キャリッジ16移動方向)に1ラインごとに記録密度単位でシリアルに生成する。ホストコンピュータ20は、生成した記録データを画像出力装置10へ送信する。
【0028】
図2は、本発明の第1の実施形態における駆動モータ15制御を説明するための図である。図2において、横軸は時間、縦軸は印字ヘッド駆動速度を示す。
【0029】
PI制御は、下記の式(1)から計算されたPWM設定値を用いて駆動モータを制御する方法である。
制御値(PWM設定値)
=P×(Vt−Vn)+I×Σ(Vt−Vn) ・・・式(1)
ここで、P:比例ゲイン、I:積分ゲイン、Vt:目標速度、Vn:現在速度とする。
【0030】
本実施形態では、制御部11は、上記式(1)にオフセット(制御値の定常状態における偏差)の成分(オフセット値offset)を考慮した下記の式(2)により制御値を算出し、その算出した制御値に基づいて駆動モータ15の駆動制御を行う。
制御値(PWM設定値)=P×(Vt−Vn)+I×Σ(Vt−Vn)+offset・・・式(2)
ここで、P:比例ゲイン、I:積分ゲイン、Vt:目標速度、Vn:現在速度、offset:印字ヘッドの速度状態と摺動軸との定常負荷に対応した設定値とする。
【0031】
なお、図2に示されるように、オフセット値offsetは、キャリッジ16の速度状態に依存する負荷成分を補正するためのオフセットと、キャリッジ16の速度状態に依存しない負荷成分を補正するためのベースオフセットとを加えた値である。
【0032】
本実施形態では、キャリッジ16の速度状態は、「加速区間→等速区間→減速区間」のサイクルが繰り返されるものとする。
【0033】
図2示すように、本実施形態では、印字ヘッドの加速、等速、減速の各区間でそれぞれの速度状態に対応したオフセット値を設定する。制御部11は、このオフセット値offsetを情報記録部13から読み出し、加速から等速へ切り替るポイント、等速から減速へ切り替るポイントでそれぞれ設定し直す。
【0034】
図2に示されているように、制御部11は、PI制御の制御値(P、I、Vt、Vn)とともにオフセットとして予め負荷に応じた出力(オフセット値offset)を用いて、算出したオフセット値とPI制御の比例成分の出力値とPI制御の積分成分の出力値とを合計し、トータルのPWM(Pulse Width Modulation:パルス幅変調)設定値を算出する。
【0035】
制御部11は、PWM設定値に対してオフセット値によって一定の固定出力を与えることで、PI制御による遅れを吸収して目標の速度プロファイルへの追従性を向上させる。印字ヘッドの速度状態(キャリッジ16の速度状態)と摺動軸との定常負荷に対応したオフセット値は、モータの特性および使用する電源の容量等、装置により異なるので、実際にエンコーダ17などの装置を用いて、キャリッジ16の移動速度(現在速度Vn)を測定し、制御部11は、その測定された現在速度Vnを用いて、目標速度Vtとの差が最小となる最適なオフセット値を決定する。
【0036】
図3は、本発明の第1の実施形態における画像出力装置10による動作の流れを示すフローチャートである。以下、図1を用い、図3に沿って、本実施形態における画像出力装置10による動作について説明する。
【0037】
まず、送受信部12がホストコンピュータ20から記録データを受信すると(ステップS101/Yes)、制御部11は、駆動モータ15を駆動する(ステップS102)。
キャリッジ16は、駆動モータ15の駆動により移動を開始する。
エンコーダ17は、キャリッジ16の移動速度を計測し、その計測結果をキャリッジ16の現在速度Vnとして制御部11へ出力する。
【0038】
制御部11は、エンコーダ17からキャリッジ16の現在速度Vnと移動量を示すデータを入力すると(ステップS103/Yes)、エンコーダ17から読み取った現在位置から、ここでは図示しないテーブルや計算式から求められる目標速度と、エンコーダ17から読み取った現在速度Vnを使って、キャリッジ16の移動速度が現在、加速、定速、減速の各区間のうちいずれであるかを判断する(ステップS104)。
ここで、停止状態から、印字速度(等速)に到達するまでの区間を加速区間と判断し、印字区間を移動した後から停止するまでの間を減速区間であると判断し、加速終了から印字速度(等速)で印字を行っている区間を等速区間と判断する。
【0039】
制御部11は、情報記録部13から各パラメータ(目標速度Vt、比例ゲインP、積分ゲインI)とともに、ステップS104で判断した速度区間(加速、定速、減速の各区間のうちいずれか)に応じたオフセット値offsetを読み出し、式(2)に沿ってPWM設定値を算出する(ステップS105)。
制御部11は、算出したPWM設定値で駆動モータ15の動作を制御する(ステップS106)。
【0040】
ここで、制御部11は、ホストコンピュータ20からの記録データの印刷動作が完了したか否かを判断し(ステップS107)、完了していない場合(ステップS107/No)、ステップS101の処理を実行し、完了した場合(ステップS107/Yes)、動作を終了する。
【0041】
なお、本実施形態における画像出力装置10は、PWM出力のデューティを127等分して、「127」の設定でモータへの電圧出力100%、「0」の設定で電圧出力0%としている。
【0042】
以上説明したように、本実施形態によれば、サーボ制御(PI制御)だけで制御を行う場合に比べて、オフセット値で加減速の制御値(PWM設定値)を補正することで、目標速度のプロファイルに対しての追従性が向上し、目標の移動時間に対しての遅れが防げるため、印刷速度および利用者(ユーザ)の利便性の向上を実現することが可能となる。
【0043】
(第2の実施形態)
以下、本発明の第2の実施形態の構成および動作について説明するが、特記しない限り、第1の実施形態と同様であるとする。
【0044】
図4は、本発明の第2の実施形態において、画像出力装置が実際にPWM出力で行っているキャリッジ16の速度制御を示すグラフである。
【0045】
図4のグラフに示されるように、加速区間から等速区間に移行する際に、制御部11はオフセット値の切換えを行うとともに、PWM設定値の積分成分(I×Σ(Vt−Vn))の値をリセット値(初期値)(本実施形態ではリセット値「8」)にリセットする。
【0046】
ここで、キャリッジ16が等速区間を移動している間に、キャリッジ16に搭載されている印字ヘッドと摺動軸との定常負荷の状態が、等速区間へ移行するときに設定したPWM設定値より重い場合は積分成分の値がリセット値より大きくなり、定常負荷が軽い場合は積分成分の値がリセット値より小さくなる。
制御部11は、減速区間開始直前の積分成分の値を読み取ることで、等速を維持する為に必要な積分成分の値を算出することができる。
制御部11は、この算出した積分成分の値を、次回動作の加速区間から等速区間へ移行する際の積分成分の値のリセット値とするPWM設定値を決定する。このように、読み取った減速区間開始直前の積分成分の値を次回動作の加速区間から等速区間へ移行する際の積分成分の値として、PWM設定値を決定する処理を速度プロファイルという。
以上のように速度プロファイルを行うことにより、加速区間から等速区間への切換え時点で、定常負荷に対して設定値が小さかった場合に起こるアンダーシュート、逆に大きかった場合に起こるオーバーシュートを低減することが可能になる。
【0047】
図5は、本発明の第2の実施形態において、画像出力装置が速度プロファイルを行った後におけるキャリッジ16の速度制御を示すグラフである。
【0048】
図4に示されている例では、定常負荷が重く、制御部11は、積分成分の値をリセット値「8」から減速区間開始直前で「15」に変化している。
図5に示されているように、制御部11は、次回動作において、加速区間から等速区間への切換え時点で積分成分のリセット値を「8」から「15」に置きかえる。この制御によって、等速区間移行後の等速性を向上させることが可能となる。
【0049】
また、制御部11は、前回動作で等速区間が所定距離(または所定時間)以上(例えば100mm以上)保たれた減速直前の積分成分の値を採用して、次回動作の等速区間へ移行するときの積分成分のリセット値として決定する。なお、上記の所定距離を示す閾値データは、情報記憶部14に格納されているものとしてもよい。
このように、定常負荷の状態が一定の移動距離を移動した時の結果を採用することで、等速区間が短く積分成分の値が安定していない(定常負荷の状態を正確に反映していない)時の積分成分の値を採用することを防ぎ、安定したキャリッジ16の動作制御を行うことが可能となる。
【0050】
なお、このデータ(減速区間直前の等速区間の積分成分の値)を取得するために必要な移動距離は、駆動モータ15の特性、使用する電源の容量等、装置によって異なるので、実際にエンコーダ17などの速度測定装置を用いて測定を行って最適な値を決定するものとする。
【0051】
図6は、本発明の第2の実施形態における画像出力装置による等速区間へ移行するときの積分成分のリセット値の設定動作の流れを示すフローチャートである。以下、図6に沿って、本実施形態における画像出力装置による等速区間へ移行するときの積分成分のリセット値の設定動作について説明する。
【0052】
まず、制御部11は、次回の等速区間へ移行するとき積分成分の値を情報記憶部14から読み出した予め設定されたリセット値とし、PWM設定値を算出し、その算出したPWM設定値で駆動モータ15を制御する(ステップS201)。
【0053】
ここで、制御部11は、ホストコンピュータ20からの記録データの印刷動作が完了したか否かを判断し(ステップS202)、完了した場合(ステップS202/Yes)、動作を終了する。
【0054】
完了していない場合(ステップS202/No)、制御部11は、エンコーダ17から現在速度Vnが入力されるごとに、PWM設定値を算出し、その算出したPWM設定値で駆動モータ15を制御する(ステップS203)。
【0055】
制御部11は、PWM設定値算出時の積分成分の値を情報記憶部14に書き込む(ステップS204)。
【0056】
また、制御部11は、エンコーダ17からの入力信号により、動作開始時点からの移動量を情報記憶部14に書き込む(ステップS205)。
【0057】
ここで、制御部11は、情報記憶部14に書き込んだ移動量を読み出して、キャリッジ16の移動速度の等速区間が所定距離(所定時間)以上継続したか否かを判断する(ステップS206)。
【0058】
キャリッジ16の移動速度の等速区間が所定距離(所定時間)以上継続しなかったと判断された場合(ステップS206/No)、制御部11は、予め設定されたリセット値を等速区間へ移行するときの積分成分のリセット値にして、PWM設定値を算出し、その算出したPWM設定値で駆動モータ15を制御する(ステップS201)。
【0059】
キャリッジ16の移動速度の等速区間が所定距離(所定時間)以上継続したと判断された場合(ステップS206/Yes)、制御部11は、減速区間直前の等速区間の積分成分の値を情報記憶部14から読み出す(ステップS207)。制御部11は、その読み出した減速区間直前の等速区間の積分成分の値を、次回の等速区間へ移行するとき積分成分のリセット値としてPWM設定値を算出し、その算出したPWM設定値で駆動モータ15を制御する(ステップS208)。その後、制御部11は、ステップS202の動作へ移行する。
【0060】
また、固定のオフセット値しか持たない場合、装置間の負荷のバラツキが大きくオフセットの設定から外れている装置に対しては、制御値が大きすぎたり、少なすぎたりして、安定した等速性を維持できない可能性が有る。
以上説明したように、本実施形態によれば、駆動モータ15の駆動制御において、動作中の負荷状態を検出して次回制御にフィードバックすることで、定常負荷の装置間のバラツキや経時的な変動に合った制御値が設定可能となり、インク吐出時の印字ヘッドの等速性を向上させることが可能となる。
このように印字ヘッドの移動速度の等速性を確保することで、印字画質の向上が図れ、利用者(ユーザ)の生産性、利便性を向上させることが可能となる。
【0061】
(第3の実施形態)
以下、本発明の第3の実施形態の構成および動作について説明するが、特記しない限り、第2の実施形態と同様であるとする。
【0062】
図7は、本発明の第3の実施形態における画像出力システムの構成を示す図である。図7に示されているように、本実施形態では、図1に示される本発明の第1の実施形態における画像出力装置の構成に、積分成分値記憶部18が追加されている。
【0063】
図8は、本発明の第3の実施形態における積分成分値記憶部18を示す図である。図8に示されているように、本実施形態では、積分成分値記憶部18は、複数(ここでは一例として20個)のバッファ(メモリ)を有する。
【0064】
本実施形態において、制御部11は、第2の実施形態におけるキャリッジ16の駆動制御に加えて、減速区間直前の積分成分の値を、図8に示すような複数のバッファを有する積分成分値記憶部18に保存する処理を行う。
制御部11は、次回動作の加速区間から等速区間へ移行する際の積分成分のリセット値として、この複数のバッファに蓄積された積分成分の値の平均値を算出する。
【0065】
図7では、積分成分値記憶部18は、20個のバッファ(不揮発性のメモリ)Bf1〜Bf20を有し、工場で画像出力形成装置が組上げられた時は、全てのバッファの値が「8」で初期化されている。
【0066】
本実施形態では、第2の実施形態における減速区間直前の等速区間の積分成分の値の取得処理を行うたびに、制御部11は、バッファBf1からBf2、Bf3と順次積分成分の結果を更新する。制御部11は、バッファBf20を更新すると、次はバッファBf1の値を更新するようにトグルにデータを保存して、常に最新20回分の結果が積分成分値記憶部18に保存されているようにする。
このバッファBf1〜Bf20のデータは、画像出力装置本体の電源がOFFされても保持される。図示しないが、画像出力装置本体またはホストコンピュータ20に備えられたキー・スイッチを用いたオペレーション操作から、積分成分リセット値(ここでは「8」)を再度初期化することも可能である。
【0067】
また、情報格納部13は、バッファBf1〜Bf20に保存する積分成分の上限の閾値および下限の閾値を格納するとしてもよい。
この場合、制御部11は、情報格納部13に格納されている閾値を読み出して、取得した減速区間直前の等速区間の積分成分の値と閾値とを比較し、その取得した積分成分の値がその閾値の範囲内に含まれているか否かを判断する。
【0068】
制御部11は、上記の取得した積分成分の値が上記の閾値の範囲内であると判断した場合、積分成分値記憶部18のバッファBf1〜Bf20のうちの最も過去に書き換えられたバッファに、その取得した積分成分の値を書き込む。
また、上記の取得した積分成分の値が上記の閾値の範囲内を超えていると判断した場合、ジャムなどの発生して異常な動作結果での値と判断して、バッファへの保存は行わない。
例えば、上限の閾値を「8+15」、下限の閾値を「8−15」とする場合、制御部11は、上記の取得した積分成分の値が「8±15」の範囲を超える値になった場合、バッファへの保存は行わない。
【0069】
ここで決められる閾値は、モータの特性、使用する電源の容量等、装置によって異なるので、実際にエンコーダ17などの速度測定装置を用いてキャリッジ16の移動速度の測定を行って最適な値を決定する。
【0070】
このような制御を行うことで、経時的な定常負荷の変動以外の要因(例えば、ジャムが発生して、印字ヘッドと記録紙が擦れている事が原因で負荷が異常に上がった場合など)の影響を排除することが可能となる。
【0071】
図9は、本発明の第3の実施形態における画像出力装置による等速区間へ移行するときの積分成分のリセット値の設定動作の流れを示すフローチャートである。以下、図9に沿って、本実施形態における画像出力装置による等速区間へ移行するときの積分成分のリセット値の設定動作について説明する。
【0072】
まず、制御部11は、積分成分値記憶部18に格納されている積分成分の値の平均値を次回等速区間へ移行するときの積分成分のリセット値にして、PWM設定値を算出し、その算出したPWM設定値で駆動モータ15を制御する(ステップS301)。
【0073】
ここで、制御部11は、ホストコンピュータ20からの記録データの印刷動作が完了したか否かを判断し(ステップS302)、完了した場合(ステップS302/Yes)、動作を終了する。
【0074】
完了していない場合(ステップS302/No)、制御部11は、エンコーダ17から現在速度Vnが入力されるごとに、PWM設定値を算出し、その算出したPWM設定値で駆動モータ15を制御する(ステップS303)。
【0075】
制御部11は、PWM設定値算出時の積分成分の値を情報記憶部14に書き込む(ステップS304)。
【0076】
また、制御部11は、エンコーダからの入力信号より、動作開始時点からの移動量を情報記憶部14に書き込む(ステップS305)。
【0077】
ここで、制御部11は、情報記憶部14に書き込んだ移動量を読み出して、キャリッジ16の移動速度の等速区間が所定距離(所定時間)以上継続したか否かを判断する(ステップS306)。
【0078】
キャリッジ16の移動速度の等速区間が所定距離(所定時間)以上継続しなかったと判断された場合(ステップS306/No)、制御部11は、積分成分値記憶部18に格納されている積分成分の値の平均値を次回等速区間へ移行するときの積分成分のリセット値にして、PWM設定値を算出し、その算出したPWM設定値で駆動モータ15を制御する(ステップS301)。
【0079】
キャリッジ16の移動速度の等速区間が所定距離(所定時間)以上継続したと判断された場合(ステップS306/Yes)、制御部11は、減速区間直前の等速区間の積分成分の値を情報記憶部14から読み出す(ステップS307)。
【0080】
次に、制御部11は、読み出した減速区間直前の等速区間の積分成分の値と、情報記憶部14に格納されている閾値データとを比較し、その読み出した積分成分の値が閾値データの範囲内に含まれるか否かを判断する(ステップS308)。
【0081】
制御部11は、読み出した積分成分の値が閾値データの範囲内に含まれないと判断した場合(ステップS308/No)、その読み出した積分成分の値を積分成分値記憶部18に書き込まずに、積分成分値記憶部18に格納されている積分成分の値の平均値を次回等速区間へ移行するときの積分成分のリセット値にして、PWM設定値を算出し、その算出したPWM設定値で駆動モータ15を制御する(ステップS301)。
【0082】
制御部11は、読み出した積分成分の値が閾値データの範囲内に含まれると判断した場合(ステップS308/Yes)、その読み出した積分成分の値を、積分成分値記憶部18のバッファに書き込む(ステップS309)。
次に、制御部11は、積分成分値記憶部18に格納されている積分成分の値の平均値を次回等速区間へ移行するときの積分成分のリセット値にして、PWM設定値を算出し、その算出したPWM設定値で駆動モータ15を制御する(ステップS301)。
【0083】
以上説明したように、本実施形態によれば、等速区間の積分成分の変化量から負荷の変動を確認して、次回動作での加速から等速へ移行するときのリセット値に補正をかける場合、何らかの異常で印字ヘッドと記録紙等が接触して正常時の負荷から異なると、補正をかける制御値もおかしな値になってしまい、逆に等速性を損なう可能性が有る。
本実施形態によれば、画像出力装置は、駆動モータの出力制御において、等速区間における積分成分の値が閾値範囲を超えた場合、その等速区間における積分成分の値を次回制御にフィードバックしない。
従って、異常値の影響を極端に受けることが回避され、インク吐出時の印字ヘッドの等速性向上する。等速性を確保することで、印字画質の向上が図れ、利用者(ユーザ)の生産性、利便性が向上する。
【0084】
(実施形態のまとめ)
なお、上記第1乃至第3の実施形態では、式(2)で示されるPWM設定値の計算は、制御部11のCPUにより行われていたが、一般的な加算器および積分器などにより構成される電子回路により演算されるとしてもよい。
【0085】
また、上記の処理は、画像出力装置10またはホストコンピュータ20が有するコンピュータプログラムにより実行されるが、上記のプログラムは、光記録媒体、磁気記録媒体、光磁気記録媒体、または半導体等の記録媒体に記録され、上記の記録媒体からロードされるようにしてもよいし、所定のネットワークを介して接続されている外部機器からロードされるようにしてもよい。
【0086】
なお、上記の実施形態は本発明の好適な実施の一例であり、本発明の実施形態は、これに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形して実施することが可能となる。
【0087】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、キャリッジの駆動モータの移動速度の変動による振動の発生を抑制し、安定した駆動モータ制御を実現する画像出力装置を実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態における画像出力システムの構成を示す図である。
【図2】本発明の第1の実施形態における駆動モータ制御を説明するための図である。
【図3】本発明の第1の実施形態における画像出力装置による動作の流れを示すフローチャートである。
【図4】本発明の第2の実施形態において、画像出力装置が実際にPWM出力で行っているキャリッジの速度制御を示すグラフである。
【図5】本発明の第2の実施形態において、画像出力装置が速度プロファイルを行った後におけるキャリッジの速度制御を示すグラフである。
【図6】本発明の第2の実施形態における画像出力装置による等速区間へ移行するときの積分成分のリセット値の設定動作の流れを示すフローチャートである。
【図7】本発明の第3の実施形態における画像出力システムの構成を示す図である。
【図8】本発明の第3の実施形態における積分成分値記憶部を示す図である。
【図9】本発明の第3の実施形態における画像出力装置による等速区間へ移行するときの積分成分のリセット値の設定動作の流れを示すフローチャートである。
【符号の説明】
10 画像出力装置
11 制御部
12 送受信部
13 情報格納部
14 情報記憶部
15 駆動モータ
16 キャリッジ
17 エンコーダ
18 積分成分値記憶部
20 ホストコンピュータ
Bf1〜Bf20 バッファ

Claims (7)

  1. 複数のノズルを副走査方向に配置したインクジェットヘッドをキャリッジに搭載し、該キャリッジを主走査方向に移動させて記録を行う画像出力装置であって、
    記録データに応じて、前記キャリッジを駆動する駆動手段と、
    前記キャリッジの移動速度を検出する速度検出手段と、
    前記速度検出手段により検出されたキャリッジの移動速度に基づいて算出した制御値で前記駆動手段のPI制御を行う駆動制御手段と、
    前記キャリッジの移動速度が、加速区間、等速区間、減速区間の順で繰り返される場合、前記加速区間、前記等速区間、および前記減速区間それぞれにおける速度状態と定常負荷とに対するオフセットを含む固定のオフセット値を格納するオフセット値格納手段と、を有し、
    前記駆動制御手段は、
    前記オフセット値格納手段により格納された固定のオフセット値を読み出し、該読み出した固定のオフセット値と、前記駆動手段に対するPI制御による制御値とを合計し、該合計値を制御値として前記駆動手段を制御し、
    さらに、前記駆動制御手段は、
    前記キャリッジの移動速度の等速区間が所定距離以上継続した場合、前記キャリッジの移動速度の等速区間の終了時における前記PI制御による制御値の積分成分を、次回の前記加速区間から前記等速区間へ移行する際の前記積分成分の初期値として、前記駆動手段を制御することを特徴とする画像出力装置。
  2. 前記駆動制御手段は、
    前記検出されたキャリッジの移動速度をVn、前記キャリッジの目標速度をVt、比例ゲインをP、積分ゲインをI、前記オフセット値をoffsetとした場合、前記駆動手段の制御値を、
    P×(Vt−Vn)+I×Σ(Vt−Vn)+offset
    として、前記駆動手段を制御することを特徴とする請求項1記載の画像出力装置。
  3. 前記駆動制御手段は、
    前記キャリッジの移動速度の等速区間の終了時における前記PI制御による制御値の積分成分を、次回の前記加速区間から前記等速区間へ移行する際の前記積分成分の初期値として、前記駆動手段を制御することを特徴とする請求項1または2記載の画像出力装置。
  4. 前記等速区間の終了時における積分成分の値を2以上格納する積分成分値格納手段と、
    前記等速区間の終了時における積分成分の値を、前記積分成分格納手段に書き込む積分成分書込手段と、を有し、
    前記駆動制御手段は、
    前記積分成分格納手段により格納された2以上の積分成分の値の平均値を、次回の前記加速区間から前記等速区間へ移行する際の前記積分成分の初期値として、前記駆動手段を制御することを特徴とする請求項3記載の画像出力装置。
  5. 前記積分成分書込手段は、
    前記等速区間の終了時における積分成分の値と、上限および下限が定められている閾値とを比較し、前記等速区間の終了時における積分成分の値が前記閾値の範囲内である場合、前記等速区間の終了時における積分成分の値を前記積分成分格納手段に書き込み、前記閾値の範囲外である場合、前記等速区間の終了時における積分成分の値を前記積分成分格納手段に書き込まないことを特徴とする請求項4記載の画像出力装置。
  6. 請求項1から5のいずれか1項記載の画像出力装置と、ホストコンピュータとが、ネットワークを介して接続され、
    前記ホストコンピュータは、記録データを、前記画像出力装置へ送信することを特徴とする画像出力システム。
  7. 複数のノズルを副走査方向に配置したインクジェットヘッドをキャリッジに搭載し、該キャリッジを主走査方向に移動させて記録を行う画像出力プログラムであって、
    記録データに応じて、前記キャリッジを駆動する処理と、
    前記キャリッジの移動速度を検出する処理と、
    前記検出されたキャリッジの移動速度に基づいて算出した制御値で前記キャリッジの駆動においてPI制御を行う処理と、をコンピュータに実行させ、
    前記PI制御を行う処理は、
    前記キャリッジの移動速度が、加速区間、等速区間、減速区間の順で繰り返される場合、前記加速区間、前記等速区間、および前記減速区間それぞれにおける速度状態と定常負荷とに対するオフセットを含む固定のオフセット値を格納するオフセット値格納部から、前記固定のオフセット値を読み出し、該読み出した固定のオフセット値と、前記キャリッジの駆動に対するPI制御による制御値とを合計し、該合計値を制御値として前記キャリッジの駆動を制御し、
    さらに、前記PI制御を行う処理は、
    前記キャリッジの移動速度の等速区間が所定距離以上継続した場合、前記キャリッジの移動速度の等速区間の終了時における前記PI制御による制御値の積分成分を、次回の前記加速区間から前記等速区間へ移行する際の前記積分成分の初期値として、前記駆動手段を制御することを特徴とする画像出力プログラム。
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