以下、本発明の好適実施例について図面を参照して説明する。
図1は、本発明に基づくデジタル回路の概略構成を示すブロック図である。図示されているように、本発明に基づくデジタル回路1は、入力端INと出力端OUTの間に接続され入力端に印加される入力信号の値に応じて出力端に異なる信号(例えばハイレベル電源電位VDDまたはローレベル電源電位VSS)を出力する、MOSFETなどのトランジスタを有するスイッチ回路2と、入力端INとスイッチ回路2との間に接続された補正回路3とを有する。
図2は、本発明に基づくデジタル回路の一実施例を示す回路図である。このデジタル回路10は、スイッチ回路として、1つのP型MOSFET11と抵抗R1とにより構成されたインバータ回路12を有する。P型MOSFET11はしきい値電圧VTHPを有し、そのソースはハイレベル電源電位VDDに接続され、ドレインは抵抗R1を介してローレベル電源電位VSS(例えばグランド電位VGND)に接続されている。P型MOSFET11の制御端子として働くゲートはハイレベル入力電位VINHとローレベル入力電位VINLの間で振幅する入力信号が印加される入力端INに接続され、ドレインと抵抗R1との間のノードN1が出力端OUTに接続されている。
P型MOSFET11のゲートと入力端INとの間には補正回路13が接続されている。この補正回路13は、P型MOSFET11のゲートと入力端INとの間に接続された容量C1と、P型MOSFET11と同じくP型で且つ概ね同じしきい値電圧VTHPを有する設定動作用のP型MOSFET14と、スイッチSW1とを有している。P型MOSFET14のドレインは容量C1とP型MOSFET11のゲートとの間のノードN2に接続され、ソースはハイレベル電源電位VDDにスイッチSW1を介して接続されている。スイッチSW1はP型MOSFET14のドレインとノードN2との間に設けてもよく、P型MOSFET14に直列に接続されていればよい。更に、P型MOSFET14はゲートとドレインが接続され、いわゆる”ダイオード接続”となっている。それにより、P型MOSFET14のゲート・ソース間電圧VGSはソース・ドレイン間電圧VDSと等しくなる。
このように構成されたデジタル回路10の動作について以下に説明する。尚、説明のためこの実施例では、入力端INに印加される入力信号のハイレベル入力電位VINHはハイレベル電源電位VDDからしきい値電圧の絶対値|VTHP|を引いた値より低く(即ち、従来回路では入力信号がハイレベル入力電位VINHのときP型MOSFET11がオフしないような値)、ローレベル入力電位VINLはグランド電位VGNDに等しい(即ち、P型MOSFET11をオンするのに十分低い値)ものとする。
まず、設定動作において、図3aに示すように、スイッチSW1をオンし、その状態で入力端INにハイレベル入力電位VINHを印加する。これにより、P型MOSFET14を通って図で矢印で示すように電流が流れ、容量C1が充電される。十分な時間がたつと容量C1の両端の電圧が上昇し、それによってP型MOSFET14のゲート・ソース間電圧VGSの絶対値が小さくなり、最終的にはP型MOSFET14がオフし、電流が止まる。このとき容量C1の両端の電圧はVDD−VINH−|VTHP|となる。
こうして設定動作において適切に容量C1を充電した後、通常動作では、図3bに示すように、スイッチSW1をオフし、入力端INにハイレベル入力電位VINHとローレベル入力電位VINLの間で振幅する入力信号を印加する。このときスイッチSW1がオフとなっていることから、容量C1に蓄積された電荷は保存され、容量C1の両端の電圧は一定に保たれる。従って、入力端INにハイレベル入力電位VINHが印加された場合、それに容量C1の両端の電圧VDD−VINH−|VTHP|が加わって、P型MOSFET11のゲートの電位はVDD−|VTHP|となり、ゲート・ソース間電圧VGS=−|VTHP|となることから、P型MOSFET11を漏れ電流なく確実にオフさせることができる。これにより、出力端OUTにはグランド電位VGNDが出力される。尚、設定動作は、P型MOSFET14が完全にオフになるまで(即ち、P型MOSFET14を流れる電流が完全にゼロになるまで)行なう必要はない。P型MOSFET14に電流が僅かに流れていても、容量C1が通常動作において入力信号を適切に補正できる程度に十分充電されれば(即ち、P型MOSFET14が実質的にオフすれば)、その時点で設定動作を終了しても実動作上は問題ない。
一方、入力端INにローレベル入力電位VINLが印加された場合、P型MOSFET11のゲートの電位は、入力端INにハイレベル入力電位VINHが印加されたときより下がり、VGS=−|VTHP|−(VINH−VINL)となり、従って、VGS<−|VTHP|となって、P型MOSFET11はオン状態となり、出力端OUTの電位は概ねハイレベル電源電位VDDとなる。尚、容量C1がP型MOSFET11のゲート容量に対し十分大きくない場合、入力電圧(VINH、VINL)が容量C1とゲート容量とによって分圧され、P型MOSFET11のゲートに十分な電圧がかからなくなってしまう。よって、容量C1の大きさは、容量C1が接続されるP型MOSFET11等のトランジスタのゲート容量を考慮して定めることが望ましい。例えば、容量C1をP型MOSFET11のゲート容量の5倍以上の大きさとすることが望ましい。
このように、上記した実施例では、ハイレベル入力電位VINHが第1の電源電位としてのハイレベル電源電位VDDより低い場合でも、インバータ回路12を構成するP型MOSFET11のゲートと入力端INとの間に接続した容量C1を、設定動作において、P型MOSFET11と概ね同じしきい値電圧を有し且つダイオード接続された設定動作用P型MOSFET14を通じて適切な電圧に充電しておくことにより、P型MOSFET11を確実にオフさせることができる。本発明によれば別途昇圧装置を設ける必要がないため、コスト削減や装置の小型化に貢献する。また、ガラス基板上に形成したデジタル回路にICからの信号を入力する場合においても、昇圧回路を用いることがなく、直接デジタル回路に信号を入力することができる。尚、上記実施例において、ハイレベル入力電位VINHがハイレベル電源電位VDDに等しいかそれより大きい場合は、設定動作において容量C1は充電されないだけで、通常動作は正常に可能である。
このようなデジタル回路10を複数個、例えば液晶ディスプレイや有機ELディスプレイの駆動装置に用いた場合、各インバータ回路12を構成する複数のP型MOSFET11を含むこととなり、例えば不純物濃度やチャネル部分の結晶状態などが異なること等によりそれらのしきい値電圧にばらつきが生じる場合がある。しかしながら、本発明によれば、各P型MOSFET11に対応する補正回路13に含まれるダイオード接続されたP型MOSFET14のしきい値電圧をインバータ回路12を構成するP型MOSFET11と概ね同じとすることにより、補正回路13に含まれるDCレベル変換用容量C1を対応するP型MOSFET11のしきい値電圧に合った適切な電圧を供給するように充電することができる。このようにインバータ回路12を構成するP型MOSFET11と設定動作用P型MOSFET14のしきい値電圧を概ね同じ値とすることは、実際の半導体回路において、これらP型MOSFET11、14を互いに近接して設け、不純物濃度の差等が生じないようにすることにより実現することができる。また、レーザ照射によりチャネル部分を結晶化させる製造工程を含む場合、P型MOSFET11とP型MOSFET14のチャネル部分が同じパルスのレーザビームスポットにより結晶化されると、しきい値電圧をより近い値にすることが可能であるので望ましい。尚、概ね等しいしきい値電圧を容易に実現するためには、P型MOSFET11、14のチャネル長Lやチャネル幅W等のサイズを概ね同じとすることが好ましいが、しきい値電圧が概ね同じであるならば、P型MOSFET11とP型MOSFET14のサイズを異なるものとしてもよい。例えばレイアウト面積を抑制するべく、P型MOSFET14のチャネル長及び/またはチャネル幅Wを小さくすることが可能である。或いは、P型MOSFET14のチャネル幅Wを大きくして、より短時間に設定動作ができるようにしてもよい。
また、上記実施例では通常動作においてダイオード接続されたP型MOSFET14に直列に接続されたスイッチSW1がオフ状態となるため、設定動作において補正回路13の容量C1に蓄積された電荷は保存され、通常動作において容量C1がデジタル回路10の動特性に悪影響を及ぼす(即ち、動作速度を低下させる)心配がない。むしろ、容量C1はP型MOSFET11のゲートとドレインまたはソースとの間に形成される寄生容量に対して直列に接続されトータルの容量を低下させることから、動特性の向上に寄与し得る。設定動作は、容量C1に蓄積した電荷が漏れ、正常な動作が確保されなくなる前に行えばよく、従って、設定動作を頻繁に行う必要もないため設定動作に伴う電力消費も僅かですむ。本デジタル回路10の入力側に接続される回路では、動作電圧(電源電圧や信号電圧)を低くできるため、その点からも電力消費抑制に寄与する。
図4は、スイッチ回路としてP型MOSFETを1つ使用したレベルシフト回路を含む、本発明に基づくデジタル回路の別の実施例を示す回路図である。本図において、図2と同様の部分には同じ符号を付して詳しい説明を省略する。図3のデジタル回路20は、図2に示したデジタル回路10と概ね同じ構成を有するが、P型MOSFET11のドレインがローレベル電源電位VSSとしてのグランド電位VGNDに接続され、ソースが抵抗R1を介してハイレベル電源電位VDDに接続され、出力端OUTがP型MOSFET11のソースと抵抗R1の間のノードN3に接続され、それによりスイッチ回路としてレベルシフト回路21を形成している点が異なる。説明は省略するが、この実施例でも、上記実施例と同様の設定動作を行い容量C1を適切に充電しておくことで、通常動作においてP型MOSFET11を誤動作なく確実にオン/オフさせることが可能である。この例では、入力端INにハイレベル入力電位VINHが印加されるとP型MOSFET11がオフして出力端OUTにはハイレベル電源電位VDDが出力され、ローレベル入力電位VINLが印加されるとP型MOSFET11がオンして出力端OUTにはローレベル電源電位VSSが出力される。このようにトランジスタのオン/オフ状態に応じて出力端OUTに異なる信号が供給されるようにする様々な態様のスイッチ回路が考えられるが、スイッチ回路に含まれるトランジスタのオン/オフを確実に行うべくそれらに本発明を適用することが可能であることを理解されたい。
図5は、本発明に基づくデジタル回路の更に別の実施例として、本発明をCMOSインバータ回路に適用した例を示す回路図である。このデジタル回路30は、スイッチ回路としてCMOSインバータ回路31を有している。CMOSインバータ回路31は、従来と同様に、電源電位としてのハイレベル電源電位VDDとローレベル電源電位VSSとの間に直列に接続された、しきい値電圧VTHPを有するP型MOSFET32としきい値電圧VTHNを有するN型MOSFET33とを有する。P型MOSFET32のソースはハイレベル電源電位VDDに接続され、N型MOSFET33のソースはローレベル電源電位VSS(この例ではグランド電位VGND)に接続されている。両MOSFET32、33のドレインは互いに接続され、その接続点(ノード)N4は出力端OUTに接続されている。また、これらMOSFET32、33のゲートは共に、ハイレベル入力電位VINHとローレベル入力電位VINLとの間で振幅する入力信号が印加される入力端INに接続されている。
本発明に基づき、補正回路34がP型MOSFET32のゲートと入力端INとの間に接続されている。この補正回路34は、図2に示した実施例の補正回路13と同様に、P型MOSFET32のゲートと入力端INとの間に接続された容量C2と、P型MOSFET32と同じ導電型で且つ概ね同じしきい値電圧VTHPを有する設定動作用のP型MOSFET35と、スイッチSW2とを有している。P型MOSFET35のドレインは容量C2とP型MOSFET32のゲートとの間のノードN5に接続され、ソースはハイレベル電源電位VDDにスイッチSW2を介して接続されている。更に、P型MOSFET35はゲートとドレインが接続され、ダイオード接続となっている。尚、スイッチSW2は図2の場合と同様にP型MOSFET35と直列に接続されていれば良い。
また、補正回路36がN型MOSFET33のゲートと入力端INとの間に接続されている。補正回路36は、N型MOSFET33のゲートと入力端INとの間に接続された容量C3と、N型MOSFET33と同じ導電型で且つ概ね同じしきい値電圧VTHNを有する設定動作用のN型MOSFET37と、スイッチSW3とを有している。N型MOSFET37のドレインは容量C3とN型MOSFET33のゲートとの間のノードN6に接続され、ソースはローレベル電源電位VSSにスイッチSW3を介して接続されている。更に、N型MOSFET37はゲートとドレインが接続され、ダイオード接続となっている。尚、スイッチSW3は、N型MOSFET37とノードN6との間に設けられていても良い。
このように構成されたデジタル回路30の動作について図6を参照しつつ以下に説明する。尚、説明のため、入力端INに印加される入力信号のハイレベル入力電位VINHはVDDからP型MOSFET32のしきい値電圧の絶対値|VTHP|を引いた値より低く、ローレベル入力電位VINLはローレベル電源電位VSS(VGND)にN型MOSFET33のしきい値電圧の絶対値|VTHL|を加えた値より高いものとする。
図6aに示すように、スイッチSW2をオンし、スイッチSW3をオフとした状態で、入力端INにハイレベル入力電位VINHを加えると、ダイオード接続されたP型MOSFET35を通じて矢印で示す向きに電流が流れて、P型MOSFET32のゲートに接続された容量C2が充電され、容量C2の両端の電圧がVDD−VINH−|VTHP|となったところでP型MOSFET35がオフし電流が止まる(Pチャネル設定動作)。続いて、図6bに示すように、スイッチSW2をオフし、スイッチSW3をオンした状態で、入力端INにローレベル入力電位VINLを加えると、ダイオード接続されたN型MOSFET37を通じて矢印で示す向きに電流が流れてN型MOSFET33のゲートに接続された容量C3が充電され、容量C3の両端の電圧がVSS−VINL+|VTHN|となったところでN型MOSFET37がオフし電流が止まる(Nチャネル設定動作)。
こうして設定動作において適切に容量C2、C3を充電した後、通常動作では、スイッチSW2、SW3を共にオフし、入力端INにハイレベル入力電位VINHとローレベル入力電位VINLとの間で振幅するパルス入力信号を印加する。このときスイッチSW2、SW3がオフとなっていることから、容量C2、C3に蓄積された電荷は保存され、容量C2、C3の両端の電圧は一定に保たれる。入力端INにハイレベル入力電位VINHが印加された場合、P型MOSFET32のゲート電位はVDD−|VTHP|となり、ゲート・ソース間電圧VGS=−|VTHP|となって、P型MOSFET32をオフさせることができる。このときN型MOSFET33はオン状態となるため、出力端OUTにはローレベル電源電位VSS(グランド電位VGND)が出力される。一方、入力端INにローレベル入力電位VINLが印加された場合、N型MOSFET33のゲート電位はVSS+|VTHN|となり、ゲート・ソース間電圧VGS=|VTHN|となって、N型MOSFET33をオフさせることができる。このときP型MOSFET32はオン状態となるため、出力端OUTにはハイレベル電源電位VDDが出力される。尚、設定動作はP型MOSFET35、N型MOSFET37が完全にオフになるまで行わなくても、これらMOSFET35、37を通じて流れる電流が十分小さくなった時点で(即ち、MOSFET35、37が実質的にオフした時点で)終了してもよい。また上記実施例では、P型MOSFET35の設定動作の後にN型MOSFET37の設定動作を行ったが、この順序に限定されず、N型MOSFET37の設定動作を先に行ってもよいことは勿論である。
このように、CMOSインバータ回路31を構成する一対のP型MOSFET32とN型MOSFET33に本発明を適用した場合、ハイレベル入力電位VINHがハイレベル電源電位VDDより低く、ローレベル入力電位VINLがローレベル電源電位VSSより高い場合でも、P型MOSFET32及びN型MOSFET33のゲートと入力端INとの間に接続した容量C2、C3を設定動作においてMOSFET32、33のしきい値電圧及び入力電位VINH、VINLと電源電位VDD、VSSの差に合った適切な電圧に充電して、P型及びN型MOSFET32、33を確実にオン/オフさせ、正確な回路動作を実現することができる。
図7は、図5に示したスイッチSW2、SW3をそれぞれP型MOSFET38、N型MOSFET39で具現したデジタル回路30の回路図である。尚、本図において図5と同様の部分には同じ符号を付した。P型MOSFET38のゲート及びN型MOSFET39のゲートはそれぞれPチャネル制御信号ライン40、Nチャネル制御信号ライン41に接続されている。Pチャネル設定動作では、これら制御信号ライン40、41の電位を例えばローレベル電源電位VSSと等しくしてP型MOSFET38及びN型MOSFET39のゲートにローレベル電源電位VSSを加えることで、P型MOSFET38をオン状態にするとともにN型MOSFET39をオフ状態とし、さらに入力端INにハイレベル入力電位VINHを加える。Nチャネル設定動作では、制御信号ライン40、41の電位を例えばハイレベル電源電位VDDに等しくしてP型MOSFET38及びN型MOSFET39のゲートにハイレベル電源電位を加え、P型MOSFET38をオフ状態にするとともにN型MOSFET39をオン状態とし、入力端INにローレベル入力電位VINHを加える。これらの設定動作により、図6a、図6bを参照して説明したように、容量C2、C3への電荷の蓄積が適切になされる。通常動作では、Pチャネル制御信号ライン40の電位はハイレベル電源電位VDDに等しく、Nチャネル制御信号ライン41の電位はローレベル電源電位VSSに等しくし、P型MOSFET38及びN型MOSFET39の両方をオフ状態とする。
尚、容量C2、C3は、図7中に拡大図として示すように、1または複数のMOSFETのゲートとソース及び/またはドレインとの間に形成される容量を用いて形成することができる。尚、容量として用いるMOSFETを接続する際には、充電されたときそのMOSFETがオンするような(即ちチャネルが形成されるような)向きに接続するとよい。例えば図7の容量C2を1つのP型MOSFETで接続する際には、ゲート側端子を入力端INに、ソース/ドレイン側端子をP型MOSFET32のゲートに接続するとよい。また、容量として用いるMOSFETの導電型はN型でもP型でもどちらでもよいが、しきい値電圧は0に近い方が望ましい。
上記したデジタル回路30では、設定動作前においては容量C2、C3には電荷が蓄積されていないものとして説明をしたが、例えばノイズなどにより容量C2、C3に電荷が蓄積されることがある。そのような電荷により、設定動作に先立って例えば容量C2、C3に図6bに示す極性で過大に充電されていた場合、設定動作でスイッチSW2、SW3をオンしてもダイオード接続されたMOSFET35、37がオンせず、容量C2、C3に蓄積された電荷(従って、容量C2、C3の両端の電圧)がそのまま維持され、容量C2、C3の両端の電圧(またはMOSFET32、33のゲートの電位)を適切な値に収束させることができないことがある。そこで、そのような不所望な電荷が容量C2、C3に蓄積されている場合にも、容量C2、C3の両端の電圧を適切な値に設定するための対策を施すことが望ましい。
図8は、図5に示したデジタル回路30の変形実施例を示す回路図であり、本図において図5と同様の部分には同じ符号を付して詳しい説明を省略する。このデジタル回路30aでは、ダイオード接続されたP型MOSFET35と並列に且つその順方向がP型MOSFET35の順方向と逆向きになるように、ダイオード接続された別のP型MOSFET42が接続されている。同様に、ダイオード接続されたN型MOSFET37と並列に且つ逆向きにダイオード接続された別のN型MOSFET43が接続されている。これにより、例えば設定動作前にノイズ等の影響により、ダイオード接続されたP型及びN型MOSFET35、37を逆バイアスし得るような電荷が容量C2、C3に蓄積されていた場合に、設定動作においてスイッチSW2、SW3をオンしたとき図8において矢印で示すように電流が流れることを可能にして、容量C2、C3の両端の電圧を概ね適切な値に収束させることができる。ダイオード接続されたMOSFET42、43のしきい値電圧がそれぞれMOSFET32、33のしきい値電圧VTHP、VTHNに等しい場合、P型MOSFET32のゲートの電位(即ちノードN5の電位)はVDD+|VTHP|に、N型MOSFET33のゲートの電位(即ちノードN6の電位)はVSS−|VTHN|に収束する。ダイオード接続されたMOSFET42、43の代わりにダイオードなどの別の整流素子を用いることも可能である。尚、P型MOSFET35と並列に接続されるダイオード接続されたMOSFET42は、N型であっても良い。また、N型MOSFET37と並列に接続されるダイオード接続されたMOSFET43は、P型であっても良い。
図9は、図5に示したデジタル回路30の別の変形実施例を示す回路図であり、本図において図5と同様の部分には同じ符号を付して詳しい説明を省略する。このデジタル回路30bでは、容量C2、C3に並列にスイッチSW4、SW5がそれぞれ設けられている。これにより、例えばノイズ等の影響によって、不所望な電荷が容量C2、C3に蓄積されていても、設定動作前にスイッチSW4、SW5をオンして容量C2、C3を放電することができる。従って、設定動作においてスイッチSW2、SW3をオンしたときダイオード接続されたMOSFET35、37が確実にオンし、容量C2、C3が適切に充電される。
図10は、図5に示したデジタル回路30の更に別の変形実施例を示す回路図であり、本図において図5と同様の部分には同じ符号を付して詳しい説明を省略する。このデジタル回路30cでは、P型MOSFET32のゲートと容量C2との間のノードN5がスイッチSW6を介してローレベル電源電位VSSに接続され、N型MOSFET33のゲートと容量C3との間のノードN6がスイッチSW7を介してハイレベル電源電位VDDに接続されている。
図11aに示すように、P型MOSFET32のゲートに接続された容量C2の設定動作(Pチャネル設定動作)の前の初期化動作において、スイッチSW6をオンすると、例えばノイズなどにより容量C2に不要な電荷が溜まってP型MOSFET32のゲートと容量C2との間のノードN5の電位が不所望に高くなっていたとしても、ノードN5の電位を概ねローレベル電源電位VSSまで下げることができる。このとき入力端INの電位はハイレベル入力電位とすることが好ましいが、ローレベル入力電位であってもよい。また、スイッチSW2はオン状態でもオフ状態でもよいが、オン状態の場合、図に点線の矢印で示すように電流が流れ、ノードN5の電位を十分低い電位に下げにくくなるため、オフ状態とする方がより望ましい。
同様に、図11bに示すように、N型MOSFET33のゲートに接続された容量C3の設定動作(Nチャネル設定動作)の前の初期化動作においてスイッチSW7をオンすると、例えばノイズなどにより容量C3に不要な電荷が溜まってN型MOSFET33のゲートと容量C3との間のノードN6の電位が不所望に低くなっていたとしても、ノードN6の電位を概ねハイレベル電源電位VDDまで上げることができる。このとき入力端INの電位はローレベル入力電位とすることが好ましいが、ハイレベル入力電位であってもよい。また、スイッチSW3はオン状態でもオフ状態でもよいが、オン状態の場合、図に点線の矢印で示すように電流が流れ、ノードN6の電位を十分高い電位に上げにくくなるため、オフ状態とする方がより望ましい。
設定動作では、スイッチSW6、SW7をオフし、図6a及び図6bを参照して説明したように、スイッチSW2またはSW3をオンする。上記したような初期化動作によって設定動作に先立ってノードN5、N6の電位を適切な値にしておくことにより、設定動作においてスイッチSW2、SW3をオンしたとき、ダイオード接続されたMOSFET35、37を順方向にバイアスして確実にオンさせ、これらMOSFET35、37を通じて電流を流し、容量C2、C3を適切に充電することができる。尚、図10及び11の実施例では、初期化動作においてノードN5をローレベル電源電位VSSに、ノードN6をハイレベル電源電位VDDに接続したが、初期化動作の後の設定動作においてダイオード接続されたMOSFET35、37が順方向バイアスされオンする限り、電源電位以外の別の電位に接続してもよい。ただし、電源電位を用いると、そのような電位を容易に確保することができるため好ましい。また、上記実施例ではPチャネル初期化動作とNチャネル初期化動作を別々に行っているが、スイッチSW6、SW7を同時にオンすることで一度に行うことも可能である。
図12は、図10に示したスイッチSW2、SW3、SW6、SW7をMOSFET44、45、46、47として具現したデジタル回路30cを示す回路図である。MOSFET44はP型MOSFETであり、そのゲートはPチャネル制御信号ライン48に接続されている。MOSFET45はN型MOSFETであり、そのゲートはNチャネル制御信号ライン49に接続されている。MOSFET46はN型MOSFETであり、そのゲートはPチャネル初期化信号ライン50に接続されている。そして、MOSFET47はP型MOSFETであり、そのゲートはNチャネル初期化信号ライン51に接続されている。制御信号ライン48、49及び初期化信号ライン50、51の電位を適切に制御することで、MOSFET44〜47を適切にオンオフして、上記したような初期化、設定、通常動作を行わせることが可能である。このように、各スイッチを適切な半導体素子で実現することができる。
図13は、図5に示したデジタル回路30の更に別の変形実施例を示す回路図である。本図において図5に示したのと同様の部分には同じ符号を付して詳しい説明を省略する。このデジタル回路30dでは、容量C2のP型MOSFET32のゲートに接続されたのとは反対側の端子が、スイッチSW8を介して入力端INに接続されるとともに、スイッチSW9を介して通常動作において入力端INに加えられる入力信号のハイレベル入力電位VINHと概ね同じ電位VHに接続されている。同様に、容量C3のN型MOSFET33のゲートに接続されたのと反対側の端子が、スイッチSW10を介して入力端INに接続されるとともに、スイッチSW11を介して通常動作において入力端INに加えられる入力信号のローレベル入力電位VINLに概ね同じ電位VLに接続されている。
この実施例では、スイッチSW2、SW3、SW9、SW11をオン、スイッチSW8、SW10をオフとすることにより、容量C2、C3の設定動作を同時に、かつ、入力端INの電位に依存せずに行うことができる。通常動作では、スイッチSW2、SW3、SW9、SW11をオフ、スイッチSW8、SW10をオンとし、入力端INにハイレベル/ローレベル入力電位VINH、VINLの間で振幅する入力信号が印加される。
ところで、CMOSインバータにおいて、インバータを構成するP型及びN型MOSFETに直列にMOSFETを接続し、これらMOSFETをクロック信号(またはそれと逆位相のクロックバー信号などの同期信号)によりオン/オフすることで、インバータの出力をクロック信号などの同期信号に同期させることが知られている。そのようなインバータを、クロックトインバータという。本発明は、クロックトインバータにおいて、CMOSインバータを構成するP型及びN型MOSFETに直列に接続されたクロック信号同期用MOSFETにも適用することが可能であり、そのような実施例を図14に示す。
図14に示したクロックトインバータ回路(デジタル回路)60は、CMOSインバータを構成するP型及びN型MOSFET61、62を有しており、これらMOSFET61、62のゲートは入力端INに接続され、共通のドレインに出力端OUTが接続されている。また、P型MOSFET61のソースはクロック同期用のP型MOSFET63を介してハイレベル電源電位VDDに接続され、N型MOSFET62のソースはクロック同期用のN型MOSFET64を介してローレベル電源電位VSS(この例ではグランド電位VGND)に接続されている。P型MOSFET63のゲートはクロックバー信号を供給するクロックバー信号ライン65に、N型MOSFET64のゲートはクロック信号を供給するクロック信号ライン66に接続されている。クロック信号及びクロックバー信号は、ハイレベル電源電位VDDより低いハイレベル電位VCHと、ローレベル電源電位VSSより高いローレベル電位VCLとの間で振幅するものとする。尚、本実施例では、入力端INに印加される入力信号はハイレベル電源電位VDDとローレベル電源電位VSSの間で振幅するものとするが、入力信号の振幅が小さい場合、上記した実施例と同様に、インバータを構成するMOSFET61、62に対して補正回路を設けることが可能である。尚、P型MOSFET61はP型MOSFET63と電源電位VDDとの間に接続されていても良いし、N型MOSFET62はN型MOSFET64と電源電位VSSとの間に接続されていても良い。
P型MOSFET63のゲートとクロックバー信号ライン65との間には、本発明に基づき、補正回路67が接続されている。この補正回路67は、P型MOSFET63のゲートとクロックバー信号ライン65との間に接続された容量C4と、P型MOSFET63と概ね同じしきい値電圧を有するダイオード接続されたP型MOSFET68と、スイッチSW12とを有しており、P型MOSFET68のドレインは容量C4とP型MOSFET63のゲートとの間のノードN7に接続され、ソースはハイレベル電源電位VDDにスイッチSW12を介して接続されている。
同様に、N型MOSFET64のゲートとクロック信号ライン66との間には、補正回路69が接続されている。この補正回路69は、N型MOSFET64のゲートとクロック信号ライン66との間に接続された容量C5と、N型MOSFET64と概ね同じしきい値電圧を有するダイオード接続されたN型MOSFET70と、スイッチSW13とを有しており、N型MOSFET70のドレインは容量C5とN型MOSFET64のゲートとの間のノードN8に接続され、ソースはローレベル電源電位VSSにスイッチSW13を介して接続されている。
尚、この実施例において、クロック信号、クロックバー信号は、対象となっているMOSFET63、64から見た場合、本発明における入力信号と言うことができる。また、P型MOSFET63と補正回路67とによって或いはN型MOSFET64と補正回路69とによって本発明のデジタル回路が形成されているということができ、その場合、P型MOSFET63及びN型MOSFET64のドレインを出力端とみなすことができる。
設定動作においては、まずスイッチSW12及びスイッチSW13を共にオンした状態で、クロックバー信号としてハイレベル電位VCHを印加する(このときクロック信号はローレベル電位VCLとなる)。ハイレベル電位VCHはハイレベル電源電位VDDより低いため、ダイオード接続されたP型MOSFET68が順方向バイアスされてオン状態となり、電流が流れて容量C4が充電される。電流は容量C4の両端の電圧がP型MOSFET68をオフさせるのに十分な大きさとなるまで流れる。またこのとき、クロック信号としてローレベル電源電位VSSより高いローレベル電位VCLを印加しているので、ダイオード接続されたN型MOSFET70が順方向バイアスされてオンし、電流が流れて容量C5が充電される。容量C5の両端の電圧が十分な大きさになると、N型MOSFET70はオフし、電流は停止する。このように、この実施例では2つの補正回路67、69内の容量C4、C5の設定動作を同時に行うことができる。
通常動作では、スイッチSW12、SW13を両方ともオフし、クロック信号、クロックバー信号及び入力信号を印加する。この場合も、容量C4、C5がP型MOSFET63、N型MOSFET64のしきい値電圧に合った適度な電圧に充電されクロック信号、クロックバー信号が適切にバイアスされてP型MOSFET63及びN型MOSFET64のゲートに加えられるため、P型MOSFET63及びM型MOSFET64を確実にオン・オフして、出力信号のクロック信号への同期を行うことができる。
図15は、図14に示したクロックトインバータ回路60の変形実施例を示す回路図である。本図において図14と同様の部分には同じ符号を付して詳しい説明を省略する。図15のクロックトインバータ回路60aは、図10の実施例と同様に、容量C4、C5と対応するMOSFET63、64のゲートとの間のノードN7、N8をローレベル電源電位VSS及びハイレベル電源電位VDDに選択的に接続するためのスイッチSW14、SW15を有している。これにより、設定動作に先立ってスイッチSW14、SW15をオンすることで補正用容量C4、C5を初期化することができ、ノイズ等によって容量C4、C5に不所望な電荷が蓄積されていたとしても、それによりMOSFET68、70が悪影響を受けることがない。
図16は、図14に示した本発明に基づくクロックトインバータ回路60の別の変形実施例を示す回路図である。本図において図14と同様の部分には同じ符号を付して詳しい説明を省略する。図16のクロックトインバータ回路60bでは、図13の実施例と同様に、容量C4のP型MOSFET63のゲートに接続されたのと反対側の端子が、スイッチSW16を介してクロックバー信号ライン65に接続されるとともに、スイッチSW17を介してクロックバー信号のハイレベル電位VCHと概ね同じ電位VH′に接続されている。同様に、容量C5のN型MOSFET64のゲートに接続されたのと反対側の端子が、スイッチSW18を介してクロック信号ライン66に接続されるとともに、スイッチSW19を介してクロック信号のローレベル電位VCLに概ね同じ電位VL′に接続されている。
この実施例では、スイッチSW12、SW13、SW17、SW19をオンし、スイッチSW16、SW18をオフした状態とすることにより、容量C4、C5の設定動作を同時に、かつ、クロック信号やクロックバー信号の電位に依存せずに行うことができる。通常動作では、スイッチSW12、SW13、SW17、SW19をオフし、スイッチSW16、SW18をオンした状態で、クロック信号及びクロックバー信号が容量C4、C5を通じてP型MOSFET63、N型MOSFET64のゲートに加えられるとともに、入力端INにハイレベル入力電位VINHとローレベル入力電位VINLの間で振幅する入力信号が印加される。
図17は、例えば液晶ディスプレイや有機ELディスプレイなどで用いられるアクティブマトリックス装置のドライバ回路の要部を模式的に示すとともに、ドライバ回路のシフトレジスタにおける典型的な単位回路を示している。ドライバ回路80はクロック信号とクロックバー信号に同期して選択信号を順次出力するためのシフトレジスタ81と、シフトレジスタ81からの選択信号に基づきビデオ信号をラッチする第1ラッチ回路82と、第1ラッチ回路82から転送されたデータをラッチする第2ラッチ回路83とを有する。シフトレジスタ81は複数の単位回路84を有し、各単位回路84は2つのクロックトインバータ85、86と1つのインバータ87とを有し、例えばクロック信号がハイレベル電位VCHとなったとき入力信号を取り込み(このとき出力信号が変化し得る)、クロック信号がローレベルとなったときは、出力信号を保持するように動作する。1つの単位回路84と隣接する単位回路84とではクロック信号とクロックバー信号が逆になっているため、ある単位回路84で入力信号を取り込んでいるときは隣接する単位回路84は出力信号を保持し、ある単位回路84で出力信号を保持しているときは隣接する単位回路84で入力信号の取り込みがなされる。このようなシフトレジスタ81の構成及び動作については本分野ではよく知られている。シフトレジスタ81のクロックトインバータ85、86に印加されるクロック信号(またはクロックバー信号)の振幅は、電源電圧(ハイレベル電源電位VDD−ローレベル電源電位VSS)に比べて小さいとする。その場合、これらクロックトインバータ85、86を誤動作なく確実にオフさせるための対策を講じることが好ましい。本発明をこれらクロックトインバータ85、86に適用することにより、そのような目的を動作速度を低下させることなく好適に達成することができる。
図18は、図17に示したシフトレジスタ81の単位回路84における左側のクロックトインバータ85に本発明を適用した実施例を示す回路図である。本図において他のクロックトインバータ86及びインバータ87は図示を省略した。
図18の左側のクロックトインバータ85a(図17における左側の単位回路84内のクロックトインバータ85に対応する)は、CMOSインバータを構成するべくドレイン同士が接続されて直列接続されたP型MOSFET91及びN型MOSFET92を有し、P型MOSFET91はクロック同期用P型MOSFET93を介してハイレベル電源電位VDDに接続され、N型MOSFET92はクロック同期用N型MOSFET94を介してローレベル電源電位VSS(例えばVGND)に接続されている。
P型MOSFET93のゲートは補正回路97を介してクロックバー信号ライン95に接続され、N型MOSFET94のゲートは補正回路98を介してクロック信号ライン96に接続されている。補正回路97は、P型MOSFET93のゲートとクロックバー信号ライン95との間に接続された容量C6と、P型MOSFET93と概ね同じしきい値電圧を有するダイオード接続されたP型MOSFET99と、選択的に設定動作を行うためのスイッチとして働くP型MOSFET100とを有し、P型MOSFET99とP型MOSFET100は、容量C6とP型MOSFET93のゲートとの間のノードN9とハイレベル電源電位VDDとの間に直列に接続されている。同様に、補正回路98は、N型MOSFET94のゲートとクロック信号ライン96との間に接続された容量C7と、N型MOSFET94と概ね同じしきい値電圧を有するダイオード接続されたN型MOSFET101と、選択的に設定動作を行うためのスイッチとして働くN型MOSFET102とを有し、N型MOSFET101とN型MOSFET102は、容量C7とN型MOSFET94のゲートとの間のノードN10とローレベル電源電位VSSとの間に直列に接続されている。P型MOSFET100のゲートはインバータ103を介して第1制御信号ライン104に接続され、N型MOSFET102のゲートは直接第1制御信号ライン104に接続されている。
更に、容量C6とP型MOSFET93のゲートとの間のノードN9は、N型MOSFET106を介してローレベル電源電位VSSに接続され、容量C7とN型MOSFET94のゲートとの間のノードN10は、P型MOSFET107を介してハイレベル電源電位VDDに接続されており、N型MOSFET106及びP型MOSFET107を選択的にオンオフすることで、容量C6、C7を初期化することができるようになっている。N型MOSFET106のゲートは直接初期化信号ライン108に接続され、P型MOSFET107のゲートはインバータ109を介して初期化信号ライン108に接続され、これらMOSFET106、107のゲートには極性が逆の信号が入力されるようになっている。
図18の右側のクロックトインバータ85b(図17における右側の単位回路84内のクロックトインバータ85に対応する)は、左側のクロックトインバータ85aと同じ構造を有するが、P型MOSFET93のゲートが容量C6を介してクロック信号ライン96に接続され、N型MOSFET94のゲートが容量C7を介してクロックバー信号ライン95に接続され、P型MOSFET100及びN型MOSFET102のゲートが第2制御信号ライン105に接続されている点が異なる。尚、図18には、2つのクロックトインバータ85a、85bしか示していないが、実際の回路では、これらが交互に複数個配置されていることを理解されたい。
このように構成したシフトレジスタ81のクロックトインバータ85a、85bの初期化、設定動作及び通常動作における各部の好適な信号(電位)変化を図19のタイミングチャートに示す。
初期化動作では、クロック信号ライン96の電位はハイレベル、クロックバー信号ライン95の電位はローレベル、そして第1制御信号ライン104及び第2制御信号ライン105の電位はローレベルの状態で、初期化信号ライン108の電位がハイレベルとなる。これにより、各クロックトインバータ85a、85bのN型MOSFET106及びP型MOSFET107がオン状態となり、補正回路97、98内の容量C6、C7の初期化がなされる。初期化信号ライン108の電位がローレベルとなると、初期化動作は終了する。尚、この実施例では、初期化動作が左側及び右側クロックトインバータ85a、85bに対して同時になされるため、初期化動作において、一方の(この例では右側)クロックトインバータ85bでは、P型MOSFET93のゲートに接続された容量C6にハイレベル電位VCHを印加するとともにN型MOSFET94のゲートに接続された容量C7にローレベル電位VCLを印加することができるが、他方の(この例では左側)クロックトインバータ85aでは、P型MOSFET93のゲートに接続された容量C6にローレベル電位VCLが印加され、N型MOSFET94のゲートに接続された容量C7にハイレベル電位VCHが印加される。
設定動作は、図18の左側のクロックトインバータ85aの容量C6、C7への電荷蓄積を行う第1設定動作と、図18の右側のクロックトインバータ85bの容量C6、C7への電荷蓄積を行う第2設定動作からなる。第1設定動作では、フェーズIにおいて、第1制御信号ライン104及びクロックバー信号ライン95の電位がハイレベルとなり、第2制御信号ライン105及びクロック信号ライン96の電位がローレベルとなる。これにより、左側のクロックトインバータ85aではP型MOSFET100及びN型MOSFET102がオンとなり、容量C6、C7の設定動作がなされ、容量C6、C7が適切に充電される。右側のクロックトインバータ85bではP型MOSFET100及びN型MOSFET102がオフ状態であるため、設定動作はなされない。フェーズIIでは、第1制御信号ライン104の電位がローレベルとなり、MOSFET100及び102がオフとなるため、左側のクロックトインバータ85aにおける設定動作は終了する。
続いて第2設定動作では、フェーズIにおいて、第2制御信号ライン105及びクロック信号ライン96の電位がハイレベルとなるとともに、クロックバー信号ライン95の電位がローレベルとなる。これにより、右側のクロックトインバータ85bのP型MOSFET100及びN型MOSFET102がオンとなり、容量C6、C7の設定動作がなされる。フェーズIIでは第2制御信号ライン105の電位がローレベルとなり右側のクロックトインバータ85bにおける設定動作が終了する。そうして通常動作では、第1及び第2制御信号ライン104、105の電位をローレベルに保って各クロックトインバータ85a、85bの容量C6、C7に蓄積された電荷を保存した状態で、クロック信号及びクロックバー信号ライン96、95にクロック信号が供給される。
図20は、図18に示したクロックトインバータ85a、85bを含むシフトレジスタ81の変形実施例を示す回路図である。本図において図18と同様の箇所には同じ符号を付した。図20の実施例では、初期化信号ライン108(第1初期化信号ラインという)に加えて第2初期化信号ライン108aが設けられ、右側のクロックトインバータ85bの初期化用MOSFET106、107のゲートが第2初期化信号ライン108aに接続され、左側のクロックトインバータ85aと右側のクロックトインバータ85bにおける初期化動作を別個に行えるようになっている点が図18の実施例と異なる。
図21は、図20の実施例における初期化、設定動作及び通常動作における各部の好適な信号(電位)変化を示すタイミングチャートである。図示されているように、この実施例では、図20の左側のクロックトインバータ85aの容量C6、C7への電荷の蓄積を行う第1設定動作の前に第1初期化動作がなされ、右側のクロックトインバータ85bの容量C6、C7への電荷の蓄積を行う第2設定動作の前に第2初期化動作がなされる。
第1初期化動作では、クロック信号ライン96の電位はローレベル、クロックバー信号ライン95の電位はハイレベル、そして第1制御信号ライン104及び第2制御信号ライン105の電位はローレベルの状態で、第1初期化信号ライン108の電位がハイレベルとなる。これにより、クロックトインバータ85aのN型MOSFET106及びP型MOSFET107がオン状態となり、補正回路97、98内の容量C6、C7の初期化がなされる。第1設定動作については図19を参照して説明したので、ここでは説明を省略する。
第2初期化動作では、クロック信号ライン96の電位はハイレベル、クロックバー信号ライン95の電位はローレベル、そして第1制御信号ライン104及び第2制御信号ライン105の電位はローレベルの状態で、第2初期化信号ライン108aの電位がハイレベルとなる。これにより、クロックトインバータ85bのN型MOSFET106及びP型MOSFET107がオン状態となり、補正回路97、98内の容量C6、C7の初期化がなされる。第2設定動作については図19を参照して説明したので、ここでは説明を省略する。
上記実施例では、初期化動作が第1初期化動作と第2初期化動作の2つに分かれているため、各初期化動作において、クロック信号ライン96及びクロックバー信号ライン95の電位を適切に制御して、P型MOSFET93のゲートに接続された容量C6にはハイレベル電位VCHを、N型MOSFET94のゲートに接続された容量C7にはローレベル電位VCLを印加することができる。
図22は、図18に示したクロックトインバータ85a(85b)の別の実施例を示す回路図である。本図において図18と同様の部分には同じ符号を付して詳しい説明を省略する。このクロックトインバータ85cでは、容量C6のP型MOSFET93のゲートに接続されたのと反対側の端子がP型MOSFET110を介してクロックバー信号ライン95に接続されるとともに、P型MOSFET111を介してクロックバー信号のハイレベル電位VCHと概ね同じ電位VH′に接続されている。同様に、容量C7のN型MOSFET94のゲートに接続されたのと反対側の端子がN型MOSFET112を介してクロック信号ライン96に接続されるとともに、N型MOSFET113を介してクロック信号のローレベル電位VCLと概ね同じ電位VL′に接続されている。MOSFET100、111及び112のゲートはインバータ114を介して制御信号ライン115に接続され、MOSFET102、110及び113のゲートは制御信号ライン115に直接接続されている。これにより、制御信号ライン115の電位がハイレベルになると、MOSFET100、111、102及び113がオン状態となり、MOSFET110、112がオフ状態となって、容量C6及びC7への電荷の蓄積(設定動作)がなされる。一方、制御信号ライン115の電位がローレベルの場合、MOSFET100、111、102及び113がオフ状態となり、MOSFET110、112がオン状態となって、クロックバー信号及びクロック信号が充電された容量C6、C7を介してP型MOSFET93及びN型MOSFET94のゲートに供給される。このような図22の実施例は、図16に示したクロックトインバータ回路60bのスイッチSW12、SW13、SW16〜SW19をMOSFET100、102、110〜113によって具現したものということができる。尚、この実施例は、図18に示したような容量C6、C7初期化用のMOSFET106、107を有していないが、必要ならば設けてもよいことは勿論である。
図23は、図17に示した第1ラッチ回路82における典型的な単位回路を示す回路図である。この単位回路120は、2つのインバータ121、122と2つのクロックトインバータ123、124を有し、シフトレジスタ81からの選択信号に応答して、デジタル化されたビデオ信号をラッチする働きをする。ビデオ信号のハイレベル電位がハイレベル電源電位VDDより低い場合及び/またはビデオ信号のローレベル電位がローレベル電源電位VSSより高い場合、ビデオ信号が入力信号として供給されるクロックトインバータ123に本発明を適用するとよい。
図24は、図23に示した第1ラッチ回路32のクロックトインバータ123に本発明を適用した実施例を示す回路図である。図22では、クロック信号同期用MOSFETに補正回路を用いたクロックトインバータ85cを示したが、図24では、入力信号が入力されるMOSFETに補正回路を用いたクロックトインバータを示す。このクロックトインバータ123は、CMOSインバータを構成するべくドレインが共に出力端OUTに接続されて直列接続されたP型MOSFET131及びN型MOSFET132を有し、これらMOSFET131、132のゲートはともに入力信号としてビデオ信号が入力される入力端INに接続されている。P型MOSFET131のソースはP型MOSFET133を介してハイレベル電源電位VDDに接続され、N型MOSFET132のソースはN型MOSFET134を介してローレベル電源電位VSS(この例ではVGND)に接続されている。P型MOSFET133及びN型MOSFET134のゲートにはシフトレジスタからの選択信号が入力されるが、P型MOSFET133のゲートにはインバータ135が設けられているため、これらMOSFET133、134に入力される信号は極性が逆となる。
P型MOSFET131及びN型MOSFET132のゲートと入力端INの間には補正回路136、137がそれぞれ接続されている。補正回路136は、P型MOSFET131のゲートと入力端INとの間に接続された容量C8と、P型MOSFET131と概ね同じしきい値電圧を有するダイオード接続されたP型MOSFET138と、選択的に設定動作を行うためのスイッチとして働くP型MOSFET139とを有し、P型MOSFET138とP型MOSFET139は、容量C8とP型MOSFET131のゲートとの間のノードN11とハイレベル電源電位VDDとの間に直列に接続されている。同様に、補正回路137は、N型MOSFET132のゲートと入力端INとの間に接続された容量C9と、N型MOSFET132と概ね同じしきい値電圧を有するダイオード接続されたN型MOSFET140と、選択的に設定動作を行うためのスイッチとして働くN型MOSFET141とを有し、N型MOSFET140とN型MOSFET141は、容量C9とN型MOSFET132のゲートとの間のノードN12とローレベル電源電位VSSとの間に直列に接続されている。この実施例では、P型MOSFET139のゲートはPチャネル制御信号ライン142に、N型MOSFET141のゲートはNチャネル制御信号ライン143に接続されているが、図16、図22のようにP型MOSFETとN型MOSFETとで設定動作を平行して行える場合は、図18に示した実施例と同様に、P型MOSFET139のゲートまたはN型MOSFET141のゲートのいずれかにインバータを設けることで、共通の1つの制御信号ラインのみを用いることも可能である。
更に、容量C8とP型MOSFET131のゲートとの間のノードN11は、N型MOSFET144を介してローレベル電源電位VSSに接続され、容量C9とN型MOSFET132のゲートとの間のノードN12は、P型MOSFET145を介してハイレベル電源電位VDDに接続されている。N型MOSFET144は直接初期化信号ライン146に接続され、P型MOSFET145のゲートはインバータ147を介して初期化信号ライン146に接続され、これらMOSFET144、145のゲートには位相が逆の信号が入力されるようになっている。尚、図12のように、初期化信号ラインを別々に配置しても良い。
このように構成したラッチ回路のクロックトインバータ123の初期化、設定動作及び通常動作における各部の好適な信号(電位)変化を図25のタイミングチャートに示す。図示されているように、初期化動作、Nチャネル設定動作(容量C9の設定動作)、Pチャネル設定動作(容量C8の設定動作)、通常動作の順に実行され、Nチャネル設定動作及びPチャネル設定動作はそれぞれ2つのフェーズからなる。Nチャネル設定動作とPチャネル設定動作の順番を入れ替えても良いことは勿論である。
初期化動作では、入力信号(ビデオ信号)、選択信号、Nチャネル制御信号(143)はローレベル、Pチャネル制御信号(142)はハイレベルの状態で、初期化信号(146)がハイレベルとなる。Pチャネル制御信号がハイレベル、Nチャネル制御信号がローレベルであることから、P型MOSFET139及びN型MOSFET141はオフ状態である。初期化信号がハイレベルとなると、MOSFET144、145がオンして、容量C8、C9の初期化がなされる(即ち、ノードN11の電位はローレベル電源電位VSSに下げられ、ノードN12の電位はハイレベル電源電位VDDへと上げられる)。初期化信号がローレベルとなると、初期化動作は終了する。
NチャネルMOSFET132のゲートに接続された容量C9への電荷の蓄積を行うNチャネル設定動作では、フェーズIにおいてビデオ信号(IN)はローレベルのままNチャネル制御信号(143)がハイレベルとなる。それにより、N型MOSFET141がオンして、入力端INからローレベル電源電位VSSへと電流が流れ容量C9の充電がなされる。Nチャネル制御信号は容量C9の両端の電圧が適切な値となりN型MOSFET141がオフ状態となるのに十分な時間ハイレベルを保つ。フェーズIIではNチャネル制御信号がローレベルとなり、Nチャネル設定動作は終了する。
PチャネルMOSFET131のゲートに接続された容量C8への電荷の蓄積を行うPチャネル設定動作では、フェーズIにおいてビデオ信号(IN)がハイレベルになるとともにPチャネル制御信号(142)がローレベルとなる。これにより、P型MOSFET139がオンして、ハイレベル電源電位VDDから入力端INへと電流が流れ、容量C8の充電がなされる。Pチャネル制御信号は容量C8の両端の電圧が適切な値となりP型MOSFET139がオフ状態となるのに十分な時間ローレベルを保った後、フェーズIIにおいてハイレベルに戻る。そうして、ビデオ信号がローレベルとなると、通常動作が開始可能となる。図示されているように、通常動作ではPチャネル制御信号はハイレベル、Nチャネル制御信号はローレベルの状態で、ビデオ信号及び選択信号が印加される。このように、図5、図7のように容量が入力端INに直接つながっているタイプと、図13、図16のようにスイッチを介してつながっているタイプとがある。これらの2つのタイプを組み合わせることで、様々な回路を構成することが可能である。そして各回路の構成に合わせて、設定動作のタイミングを適宜変更することができる。
上記した本発明に基づく様々な実施例において、補正回路に含まれる容量の設定動作を行った後は容量と電源電位(VDDまたはVSS)との間に接続されたスイッチがオフ状態となるため原理的には容量に蓄積された電荷は保存されるが、実際には多少の漏れ電流があるため、適切な間隔で設定動作を行うことが好ましい。例えば液晶ディスプレイのアクティブマトリクス回路のシフトレジスタにおけるトランジスタに本発明を適用した場合、入力されるビデオ信号の帰線期間ではシフトレジスタは動作していないため、その期間に設定動作を行うとよい(図26a参照)。
また、1フレーム期間内において複数の異なる発光期間E1、E2、E3...を選択的に組み合わせることで各画素の1フレームにおける発光状態にあるトータルの期間を変化させて階調を得る時間階調方式のディスプレイが知られている(例えば、4ビットの場合、最小の発光期間をE1としたとき、E2=2×E1、E3=4×E1、E4=8×E1とすることで、E1〜E4を組み合わせて16階調を得ることができる)。このような時間階調方式のディスプレイでは、例えば発光期間E3に対し発光を行うか否かを示す情報のメモリへの書き込みを各画素について行った後、発光期間E4に対する同様の書き込みを開始するまでの期間や、発光期間E4に対し発光を行うか否かを示す情報のメモリへの書き込みを終了した後のように、ドライバ回路が動作していない期間がある(図26b参照)。このようなドライバ回路の停止期間に、上記した補正回路の設定動作を行うことも可能である。尚、設定動作は全ての補正回路について同時に行う必要はなく、補正回路毎に異なるタイミングで行ってもよい。また、図17や図18に示すようなシフトレジスタでは、信号が順次シフトして転送されてくる。従って、数段前の信号を用いて自段の補正回路の設定動作を行っても良い。
本発明は、NAND回路、NOR回路やトランスファーゲートなどのような論理回路にも用いることができる。図27は、例として、本発明をNAND回路を構成するトランジスタに適用した実施例を示す回路図であり、図28は本発明をNOR回路を構成するトランジスタに適用した実施例を示す回路図である。
図27に示したデジタル回路150は、2つの並列接続されたP型MOSFET151、152と2つの直列接続されたN型MOSFET153、154とを有し、これら4つのMOSFET151〜154によってNAND回路が形成されている。詳述すると、P型MOSFET151及びN型MOSFET153のゲートは第1入力端IN1に接続され、P型MOSFET152及びN型MOSFET154のゲートは第2入力端IN2に接続されている。また、P型MOSFET151、152のソースは共にハイレベル電源電位VDDに接続され、ドレインは共にN型MOSFET154のドレインに接続されるとともに出力端OUTに接続されている。N型MOSFET154のソースはN型MOSFET153のドレインに接続され、N型MOSFET153のソースはローレベル電源電位VSS(この例では、グランド電位VGND)に接続されている。このようなNAND回路は本分野ではよく知られている。
本発明に基づき、MOSFET151〜154に対し補正回路155〜158がそれぞれ設けられている。上記した実施例と同様に、各補正回路155〜158は対応するMOSFETのゲートに接続された容量と、対応するMOSFETと同じ極性で且つ概ね同じしきい値電圧を有するダイオード接続されたMOSFETと、ダイオード接続されたMOSFETに直列に接続されたスイッチとを有している。このような補正回路155〜158の動作及び作用効果は上記した実施例について説明したのと同様であるので、説明を省略する。
図28に示すデジタル回路は、2つの直列接続されたP型MOSFET161、162と2つの並列接続されたN型MOSFET163、164とを有し、これら4つのMOSFET161〜164によってNOR回路が形成されている。詳述すると、P型MOSFET161及びN型MOSFET163のゲートは第1入力端IN1に接続され、P型MOSFET162及びN型MOSFET164のゲートは第2入力端IN2に接続されている。また、P型MOSFET161のソースはハイレベル電源電位VDDに接続され、ドレインはP型MOSFET162のソースに接続されている。P型MOSFET162のドレインは、N型MOSFET163、164のドレインに接続されるとともに、出力端OUTに接続されている。そして、N型MOSFET163、164のソースは共にローレベル電源電位VSS(この例では、グランド電位VGND)に接続されている。このようなNOR回路は本分野ではよく知られている。
本発明に基づき、MOSFET161〜164に対し補正回路165〜168がそれぞれ設けられている。上記した実施例と同様に、各補正回路165〜168は対応するMOSFETのゲートに接続された容量と、対応するMOSFETと同じ極性で且つ概ね同じしきい値電圧を有するダイオード接続されたMOSFETと、ダイオード接続されたMOSFETに直列に接続されたスイッチとを有している。このような補正回路165〜168の動作及び作用効果は上記した実施例について説明したのと同様であるので、説明を省略する。
上記において、入力信号の振幅が電源電圧(ハイレベル電源電位とローレベル電源電位の差)より小さい場合でも、確実にトランジスタをオンオフさせることが可能な、トランジスタを用いたスイッチ回路を有するデジタル回路の好適実施例について説明してきたが、上記実施例は、設定動作を適切に変更することで、電源電圧がトランジスタのしきい値電圧の絶対値に対して十分大きくない場合にトランジスタの動作速度を向上させることが望まれる場合にも対応することができる。図29に、そのような設定動作が可能なデジタル回路の別の変形実施例を示す。尚、この実施例で図5の実施例と同様の箇所には同じ符号を付して詳しい説明を省略する。
図29のデジタル回路(インバータ回路)30eでは、P型MOSFET32のゲートと容量C2との間のノードN5がスイッチSW20を介してローレベル電位VL″に接続され、N型MOSFET33のゲートと容量C3との間のノードN6がスイッチSW21を介してハイレベル電位VH″に接続されている。ローレベル電位VL″はローレベル電源電位VSSに等しくすることができ、また、ハイレベル電位VH″は例えばハイレベル電源電位VDDに等しくすることができるが、その場合デジタル回路30eは、図10に示したデジタル回路30cと同じになる。
このように構成されたデジタル回路30eの設定及び通常動作について以下に説明する。ここで、ローレベル入力電位VINLはローレベル電源電位VSS(この例ではVGND)に等しく、ハイレベル入力電位VINHはハイレベル電源電位VDDに等しいものとする。
図30aに示すように、容量C2に対する第1の設定動作において、スイッチSW2、SW3及びSW21はオフの状態で、SW20をオンし入力端INにハイレベル入力電位VINHを印加すると、図の矢印の向きに電流が流れて、容量C2は入力端IN側がハイ、P型MOSFET32のゲート側がローとなる向きに充電される。続いて図30bに示すように、第2の設定動作において、入力端INにハイレベル入力電位VINHを印加したままでスイッチSW20をオフし、スイッチSW2をオンすると、容量C2が放電して図において矢印で示すように電流が流れ、容量C2の両端の電圧がP型MOSFET35のしきい値電圧VTHPに等しくなったところで電流が停止する。尚、第1の設定動作においてスイッチSW2をオンしておいてもよい。またローレベル電位VL″は、第1の設定動作において容量C2がP型MOSFET35の(即ちP型MOSFET32の)しきい値電圧VTHPより大きな電圧で充電できるような値であればよく、必ずしもVSSに等しくなくてもよい。第1の設定動作を初期化動作と言うこともできる。
同様に、図31aに示すように、容量C3に対する第1の設定動作において、スイッチSW2、SW3及びSW20はオフの状態で、SW21をオンし入力端INにローレベル入力電位VINLを印加すると、図の矢印の向きに電流が流れて、容量C3は入力端IN側がロー、N型MOSFET33のゲート側がハイとなる向きに充電される。続いて第2の設定動作において、入力端INにローレベル入力電位VINLを印加したままでスイッチSW21をオフし、スイッチSW3をオンすると、容量C3が放電して図31bにおいて矢印で示すように電流が流れ、容量C3の両端の電圧がP型MOSFET37のしきい値電圧VTHNに等しくなったところで電流が停止する。尚、第1の設定動作においてスイッチSW3をオンしておいてもよい。またハイレベル電位VL″は、第1の設定動作において容量C3がN型MOSFET37の(即ちN型MOSFET33の)しきい値電圧VTHNより大きな電圧で充電できるような値であればよく、必ずしもVDDに等しくなくてもよい。
このように容量C2、C3を充電した後、通常動作では、スイッチSW2、SW3、SW20及びSW21をオフし、入力端INにハイレベル入力電位VINHとローレベル入力電位VINLとの間で振幅する入力信号が加えられる。ハイレベル入力電位VINHが印加されたときには、図32aに示すように、P型MOSFET32のゲート電位はVINH−|VTHP|=VDD−|VTHP|となり、従って、P型MOSFET32のゲート・ソース間電圧VGS=−|VTHP|となって、P型MOSFET32はオフする。一方、N型MOSFET33のゲート電位はVINH+|VTHN|=VDD+|VTHN|となり、従ってN型MOSFET33のゲート・ソース間電圧VGSからVTHNを差し引いた電圧はVDDに等しく、N型MOSFET33に大きな電流を流して高速にオンさせるのに十分な電圧を確保できる。
同様に、入力端INにローレベル入力電位VINLが印加されたときには、図32bに示すように、N型MOSFET33のゲート電位はVINL+|VTHN|=VGND+|VTHN|となり、従って、N型MOSFET33のゲート・ソース間電圧VGS=|VTHN|となって、N型MOSFET33はオフする。一方、P型MOSFET32のゲート電位はVINL−|VTHP|=VGND−|VTHP|となり、従ってP型MOSFET32のゲート・ソース間電圧VGSからVTHPを差し引いた電圧は−VDDに等しく、P型MOSFET32に大きな電流を流して高速にオンさせるのに十分な電圧(絶対値)を確保できる。
このように、図29〜図32を参照して説明した実施例では、設定動作において、補正回路の容量C2、C3を、対応するMOSFET32、33のオン動作速度を高めるべく入力信号のDCレベルを補正するように充電することが可能である。従って、回路の動作速度を落とすことなく、電源電圧を小さくして消費電力の低減を図ることができる。尚、上記説明ではローレベル入力電位VINLはローレベル電源電位VSS(この例ではVGND)に等しく、ハイレベル入力電位VINHはハイレベル電源電位VDDに等しいものとしたが、本発明はそれに限定されるものではない。上記回路では、一般に、設定動作後の容量C2の電圧の絶対値は|VTHP|−(VDD−VINH)、設定動作後の容量C3の電圧の絶対値は|VTHN|−(VINL−VSS)となり、オフ状態ではP型MOSFET32、N型MOSFET33のいずれでもVGS=しきい値電圧となりぎりぎりでオフするが、オン状態では|VGS|=|しきい値電圧|+VINH−VINLとなることが理解されるだろう。
図29のデジタル回路30eでは、P型MOSFET32のゲートに接続された容量C2とN型MOSFET33のゲートに接続された容量C3の設定動作を入力端INに印加される入力信号の電位を変えて別々に行ったが、これらを同時できると好ましい。そのようなデジタル回路を図33に示す。尚、この実施例は、図13に示したデジタル回路30dを応用したものであり、本図において図13及び図29に示したのと同様の箇所には同じ符号を付して詳しい説明を省略する。
図33のデジタル回路30fでは、容量C2のP型MOSFET32のゲートに接続されたのとは反対側の端子が、スイッチSW8を介して入力端INに接続されるとともに、スイッチSW9を介してハイレベル電源電位VDDに接続されている。同様に、容量C3のN型MOSFET33のゲートに接続されたのと反対側の端子が、スイッチSW10を介して入力端INに接続されるとともに、スイッチSW11を介してローレベル電源電位VSSに接続されている。
このように構成されたデジタル回路30fの設定及び通常動作について以下に説明する。ここでもデジタル回路30eの動作についての説明と同様に、ローレベル入力電位VINLはローレベル電源電位VSS(この例ではVGND)に等しく、ハイレベル入力電位VINHはハイレベル電源電位VDDに等しいものとする。
図34aに示すように、第1の設定動作では、スイッチSW2、SW3、SW8及びSW10をオフ、スイッチSW9、SW11、SW20及びSW21をオンとする。すると電流が図の矢印の向きに流れ、容量C2は入力端IN側がハイ、P型MOSFET32のゲート側がローとなる向きに、容量C3は入力端IN側がロー、N型MOSFET33のゲート側がハイとなる向きに充電される。第1の設定動作を初期化動作と言うこともできる。
図34bに示すように、第2の設定動作では、スイッチSW2、SW3、SW9及びSW11をオン、スイッチSW8、SW10、SW20及び21をオフとする。これにより、容量C2、C3が放電し、図において矢印で示す向きに電流が流れ、容量C2の両端の電圧がP型MOSFET35のしきい値電圧に等しくなり、容量C3の両端の電圧がN型MOSFET37のしきい値電圧に等しくなったところでそれぞれの電流が停止する。
容量C2、C3の設定が終了した後、通常動作では、図35に示すように、スイッチSW2、SW3、SW9、SW11、SW20及びSW21をオフ、スイッチSW8及びSW10をオンし、入力端INに入力信号を加える。この場合のMOSFET32、33における動作は図32a、図32bにおいて説明したのと同じなので、ここでは説明を省略する。尚、この実施例では、ローレベル入力電位VINLはローレベル電源電位VSSに等しく、ハイレベル入力電位VINHはハイレベル電源電位VDDに等しいものとしたため、容量C2、C3はそれぞれスイッチSW9、SW11を介してハイレベル電源電位VDD、ローレベル電源電位VSSに接続されるものとしたが、そうでない場合には、容量C2、C3はそれぞれスイッチSW9、SW11を介してハイレベル入力電位VINHに概ね等しい電位、ローレベル入力電位VINLに概ね等しい電位に接続することができる。
以上、本発明を実施例に基づいて詳細に説明したが、これらの実施例はあくまでも例示であって本発明は実施例によって限定されるものではない。当業者であれば特許請求の範囲によって定められる本発明の技術的思想を逸脱することなく様々な変形若しくは変更が可能であることは言うまでもない。
例えば、上記実施例ではローレベル電源電位VSSをグランド電位VGNDとし、ハイレベル電源電位VDDをVGNDより高い電位としたが、例えばハイレベル電源電位VDDをグランド電位VGNDとし、ローレベル電源電位VSSをグランド電位VGNDより低い電位とするように、他の電位とすることもできる。また、上記実施例ではトランジスタとしてMOSFETについて説明したが、バイポーラトランジスタや他のタイプのFETなど、別のトランジスタを用いることも可能である。トランジスタはどのような構造、材料、製造方法によるものであってもよい。通常の単結晶基板を用いたものでも良いし、SOI(silicon on insulator)基板を用いたものでも良い。また、アモルファスシリコンやポリシリコンなどを用いた薄膜トランジスタ(TFT)であっても良いし、有機半導体を用いたトランジスタであっても、カーボンナノチューブを用いたトランジスタであっても良い。またトランジスタは、ガラス基板、石英基板、プラスチック基板またはその他の基板上に形成されていても良い。