以下、本発明について図を用いて説明する。図1は、本発明の第1実施例である光学モジュール(1)、及びこれとレーザ装置を組み合わせた光学システムを示す斜視図である。この光学モジュール(1)は、CD用の光ピックアップに使用されるものであり、基板(2)に形成された光検出器(3)と、光学素子(5)とを含んでいる。光学素子(5)は、光学モジュール(1)に並置されたレーザチップ(4)が発したレーザ光を、光学モジュール(1)の上方に配置されたディスク(図示せず)に送る光路を与えると共に、このディスクで反射されたレーザ光を光検出器(3)に送る光路を与える(図1及び図4にて、レーザ光の光束を一点鎖線で模式的に示す)。光検出器(3)は、基板(2)の中央部からレーザチップ(4)側にずれた位置にて、基板(2)の上部に形成されており、光学素子(5)は、光検出器(3)を覆うように、基板(2)と一体的に形成されている。光学素子(5)は、略矩形に形成されており、レーザチップ(4)側に位置する側面、及び該側面と繋がる2つの側面は、夫々、その直下にある基板(2)の側面と、略同一平面上に配置されている。
光学素子(5)は、略矩形のハーフミラー(6)、該ハーフミラー(6)の上部に形成された対物レンズ(7)、及び該ハーフミラー(6)の一側部に形成された回折格子(8)で構成されている。後述するように、光学素子(5)は、これら光学素子が一体的に成形されて作製されている。回折格子(8)は、レーザチップ(4)側に位置したハーフミラー(6)の一側面に形成されており、該レーザチップ(4)から出射されたレーザ光を回折する。
ハーフミラー(6)は、樹脂で形成された略三角柱状の第1半体(6a)及び第2半体(6b)と、これら半体(6a)(6b)間に設けられた反射層(6c)とで構成されている。本実施例では、第1半体(6a)、第2半体(6b)、対物レンズ(7)及び回折格子(8)は、後述する有機・無機ハイブリッド材料を用いて形成されている。なお、有機・無機ハイブリッド材料以外に、光学用エポキシ材料、シリコーン樹脂、ポリスチレン、フッ素化ポリイミド等の樹脂材料が用いられてもよい。反射層(6c)は、第1半体(6a)の傾斜面に形成されており、基板(2)の上面に対して略45度の角度で傾いて配置されている。反射層(6c)は、反射率が約50%になるように形成されており、回折格子(8)から送られた回折光の一部は、反射層(6c)にて上向きに反射され、該反射層(6c)の上方に配置された対物レンズ(7)で集光された後、ディスクに向けて出射される。本実施例では、反射層(6c)にCr薄膜を用いている。光学素子(5)の外面には、必要に応じて、ARコーディングが施されてもよい。
回折格子(8)で生じる回折光は、少なくとも0次回折光と、該0次回折光の左側にある1次回折光と、及び0次回折光の右側にある1次回折光とを含んでいる。ディスクで反射された0次回折光及びこれら1次回折光は、対物レンズ(7)を通って反射層(6c)に入射する。入射した0次回折光及び1次回折光の一部は、反射層(6c)を通って光検出器(3)に照射される。光検出器(3)は、第1検出部(3a)と、その両側に配置された第2検出部(3b)及び第3検出部(3c)とで構成されており、第1検出部(3a)には0次回折光が、第2検出部(3b)には一方の1次回折光が、第3検出部(3c)には他方の1次回折光が照射される。
第1検出部(3a)は、アレイ状に配列された4つのPINフォトダイオード部で構成されており、第2検出部(3b)及び第3検出部(3c)は、1つのPINフォトダイオード部で夫々構成されている。第1検出部(3a)の出力を用いて、フォーカシング信号及び情報信号が得られ、第2検出部(3b)乃至第3検出部(3c)の出力を用いて、トラッキング信号が得られる。なお、第1検出部(3a)においてフォーカシング信号を得るため、対物レンズ(7)は非球面レンズとされており、非点隔差が調整されている。基板(2)上には、これらPINフォトダイオード部の各アノードと接続された配線パターン(9)が夫々形成されており、これら配線パターン(9)の端部には、電極端子たる6個のパッド(10)が一列に並べて形成されている。配線パターン(9)及びパッド(10)は、例えばAlを用いて形成される。また、各PINフォトダイオード部のカソードは、基板(2)の下面に設けられた電極(11)と接続されている。電極(11)には、Au−Si合金等で形成された導電性金属層が用いられる。
レーザチップ(4)は端面出射型であって、その出射面が回折格子(8)と対向するように配置されている。レーザチップ(4)は略矩形の形状をしており、レーザチップ(4)の上面には、レーザチップ(4)が具える半導体レーザ素子のアノードと電気的に接続する第1電極(12)が形成されている。レーザチップ(4)の下面には、半導体レーザ素子のカソードと電気的に接続する第2電極(13)が形成されている。第1電極(12)にはZn/Au(下地側がZn、表面側がAuで形成されている。以下、同様な記載において、材料を下地側から表面側に向けて左から右に記載する)で、第2電極(13)にはAu・Ge/Ni/Au(Au・GeはAuとGeの合金)で形成された導電性金属層が用いられる。レーザチップ(4)は、ヒートシンク(14)に固定されている。本実施例では、ヒートシンク(14)にn型Si製の矩形のブロックを用いており、ヒートシンク(14)の上面及び下面には、Ti/Pt/Auで形成された第1及び第2導電性金属層(15)(16)が夫々設けられている。レーザチップ(4)の第2電極(13)は、Au−Sn合金等のハンダ材を用いて第1導電性金属層(15)と接合されている。
図2は、光ピックアップに含まれる樹脂製のベース部材(20)に、光学モジュール(1)及びレーザチップ(4)が取り付けられた状態を示す斜視図である。板状のベース部材(20)には凹部(21)が形成されており、その凹部(21)の底面には、Cu等の導電性金属で形成された複数のリードフレーム(31-39)が配設されている。第1リードフレーム(31)は、凹部(21)の底面の大半を覆うと共に、両端部がベース部材(20)の対向する壁部を貫通して外方に延びる薄板状の装着部(31a)と、該装着部(31a)の一側部の略中央から延出し、ベース部材(20)の壁部を貫通して、装着部(31a)に対して垂直に延びる帯状の引出部(31b)とで構成されている。引出部(31b)の両側には、帯状の第2乃至第5リードフレーム(32-35)と、同じく帯状の第6乃至第9リードフレーム(36-39)とが該引出部(31b)と平行に配設されている。第2乃至第9リードフレーム(32-39)の一端部は、凹部(21)の底面に配置されており、ベース部材(20)の壁部を貫通して外方に延びている。
ベース部材(20)から突出する装着部(31a)の両端部は、光ピックアップに含まれる支持部材(図示せず)に夫々取り付けられる。各支持部材は、光ピックアップに含まれる1又は複数のアクチュエータと夫々接続されており、これらアクチュエータが駆動することによって、ベース部材(20)、結果として対物レンズ(7)がフォーカス方向又はトラッキング方向に移動する。また、装着部(31a)の両端部は、レーザチップ(4)で発生して、ヒートシンク(14)、さらには装着部(31a)を介して伝わる熱を放出する放熱板としても機能する。
光学モジュール(1)は、ベース部材(20)の凹部(21)内にて、第1リードフレーム(31)の装着部(31a)に固定される。光学モジュール(1)の電極(11)は、Agペーストを用いて装着部(31a)に接合されて、光検出器(3)のPINフォトダイオードのカソードと第1リードフレーム(31)が電気的に接続される。また、光学モジュール(1)の基板(2)の上面に設けられた6個のパッド(10)の各々は、ベース部材(20)の凹部(21)内にて、第2乃至第7リードフレーム(32-37)の何れか一つの端部と、図中に黒線で示す導電性金属製のワイヤ(40)で接続される。なお、光検出器(3)の第1検出部(3a)と電気的に接続された4個のバッド(10)は、第2乃至第5リードフレーム(32-35)に、第2検出部(3b)と電気的に接続されたバッド(10)は、第6リードフレーム(36)に、第3検出部(3c)と電気的に接続されたバッド(10)は、第7リードフレーム(37)にワイヤ(40)で接続されている。本実施例では、ワイヤ(40)にAuワイヤが用いられている。
さらに、レーザチップ(4)が固定されたヒートシンク(14)も、Agペースト又はハンダ材等を用いて装着部(31a)に固定される。レーザチップ(4)の第1電極(12)は、第9リードフレーム(39)の端部と、ワイヤ(40)で接続される。ヒートシンク(14)を装着部(31a)に最終的に固定する前に、レーザチップ(4)は、ディスクで反射された0次及び1次の回折光が、光検出器(3)に適切に照射されるように位置決めされる。即ち、レーザチップ(4)の位置を調整して、レーザチップ(4)、光学素子(5)及び検出器(3)の光軸合わせが行われる。
レーザチップ(4)の位置決め及び固定は、例えば、以下の記載のように行われる。Agペーストを用いて光学モジュール(1)が装着部(31a)に固定された後、ワイヤボンディングが行われて、6個のパッド(10)と第2乃至第7リードフレーム(32-37)とがワイヤ(40)で接続される。次に、第1リードフレーム(31)の装着部(31a)に、ヒートシンク(14)を接合するためのAgペーストが塗布される。Agペーストは、光学モジュール(1)の回折格子(8)側に塗布される。そして、塗布されたAgペーストを覆うようにヒートシンク(14)が配置される。
次に、検査用プローバ(図示せず)をレーザチップ(4)の第1電極(12)に当接させ、検査用コネクタ(図示せず)を第1乃至第7リードフレーム(31-37)に接続する。また、光学モジュール(1)の対物レンズ(7)の上方に、検査用のダミーディスク(図示せず)を配置する。検査用プローバ及び第1リードフレーム(31)に通電すると、レーザチップ(4)はレーザ光を発生し、該レーザ光は、光学素子(5)を通ってディスクで反射される。反射光は、光学素子(5)を通って、光検出部(3)に照射される。そして、ヒートシンク(14)を移動させつつ、第2乃至7リードフレーム(32-27)に接続された検査用コネクタを介して得られるPINフォトダイオード部の出力を検出することによって、適切なレーザチップ(4)の位置が求められる。
レーザチップ(4)の位置が確定すると、Agペーストを加熱して固化させることによって、ヒートシンク(14)の第2導電性金属層(16)と、装着部(31a)の上面とを接合し、ヒートシンク(14)を装着部(31a)に固定する。その後、ワイヤボンディングが行われて、レーザチップ(4)の第1電極(12)と、第9リードフレーム(39)とがワイヤ(40)で接続される。なお、ヒートシンク(14)は、Agペーストではなくハンダ材を用いて装着部(31a)に固定すると、放熱性が向上する。この場合、溶融させたハンダ材を覆うようにヒートシンク(14)が配置されて、レーザチップ(4)の位置調整後にハンダ材が冷却される。
図2示した構成では、光学モジュール(1)の6個のパッド(10)は、水平面内に並べて配置されており、第2乃至7リードフレーム(32-27)の端部は、パッド(10)の列の近傍に、この列に略平行に並べて配置されている。従って、図2に示すようなリードフレーム(31-39)を具えたベース部材(20)に、第1実施例の光学モジュール(1)を装着すると、例えば金属製のステムに光学モジュール(1)を装着する場合と比較して、ワイヤボンディングを容易に行えるという利点が得られる。また、図2に示した構成は、第1実施例の光学モジュール(1)が用いられていることに加えて、リードフレーム(31-39)が水平に配置されているので、光ピックアップを非常に薄型化できる利点も有している。
図3は、本発明の第2実施例の光学モジュール(1)、及びこれとレーザチップ(4)を組み合わせた光学システムの斜視図である。第2実施例の光学モジュール(1)の基板(2)は、第1実施例と比較して回折格子(8)側に延長されている。回折格子(8)側において、基板(2)の上面には、レーザチップ(4)の第2電極(13)と接合される導電性金属層(17)が、Au−Si合金、Au−Sn等のハンダ材を順に積層して形成されている。第2実施例の光学モジュール(1)は、レーザチップ(4)が図3のように固定されていない状態で、例えば、図2に示すベース部材(20)に設けられた第1リードフレーム(31)の装着部(31a)に固定される。そして、パッド(10)と第2乃至第7リードフレーム(32-37)にワイヤボンディングが施された後、導電性金属層(17)上に、レーザチップ(4)が配置される。その後、先の説明とほぼ同様にして、レーザチップ(4)の位置調整が行われ、レーザチップ(4)は基板(2)に融着される。
第1実施例及び第2実施例の光学モジュール(1)は、端面出射型のレーザチップ(4)と組み合わせて使用されているが、以下に述べる実施例のように、VCSEL(面発光型半導体レーザ)チップと組み合わされて使用されてもよい。
本発明の光学モジュールは、光通信に用いられる光送受信器にも使用可能である。図4は、本発明の第3実施例である光学モジュール(1)、及びこれとレーザ装置を組み合わせた光学システムの斜視図である。第3実施例の光学モジュール(1)では、光検出器(3)が1つのPINフォトダイオード部で構成されており、1個の配線パターン(9)及びパッド(10)が基板(2)の上面に形成されている。
光送受信器では、図4に示すように、光学モジュール(1)は、VCSELチップ(41)と組み合わされて使用されるのが好ましい。VCSELチップ(41)は、レーザ光の出射面を光学素子(5)の一側面に向けて配置される。なお、該側面に、先の実施例のような回折格子は形成されていない。VCSELチップ(41)は、出射面が垂直に配置されるように、矩形のヒートシンク(42)に固定され、該ヒートシンク(42)は、矩形のブロック(43)に固定される。
VCSELチップ(41)の出射面の一部領域には、Zn/Auで形成された第1電極(44)が設けられている。VCSELチップ(41)の第1電極(44)の一端には、レーザ光が通る開口(図示せず)が形成され、出射面の端部に配置された第1電極(44)の他端には、後述するようにワイヤ(40)の一端がボンディング(熱圧着)される。出射面と反対側の面には、Au・Ge/Ni/Auで形成された第2電極(45)が設けられている。本実施例では、ヒートシンク(42)は、n型Siで形成されており、VCSELチップ(41)の第2電極(45)が接合される面には、第1導電性金属層(46)が、ブロック(43)と接合される面には第2導電性金属層(47)が形成されている。第1及び第2導電性金属層(46)(47)は、Au−Si合金等の導電性金属を用いて形成されている。ブロック(43)は、本実施例では銅で形成されているが、熱伝導性及び電気伝導性の良好な金属であれば銅以外の材料を用いてもよい。ブロック(43)は、VCSELチップ(41)及びヒートシンク(42)を支持する支持部材として、さらには、VCSELチップ(41)で発生した熱を逃がす放熱体として機能すると共に、電極としても機能する。VCSELチップ(41)の第2電極(45)とヒートシンク(42)の第1導電性金属層(46)とは、また、ヒートシンク(42)の第2導電性金属層(47)とブロック(43)とは、Agペースト又はハンダ材等を用いて接合される。
図5は、光送受信器で使用される樹脂製のベース部材(20)に、第3実施例の光学モジュール(1)及びVCSELチップ(41)が取り付けられた状態を示す斜視図である。第1リードフレーム(31)の延出部(31b)の両側にリードフレーム(32')(33')が1個ずつ配置されている点を除いて、ベース部材(20)は、図2と同様に構成されている。リードフレーム(32')の一端はパッド(10)と、リードフレーム(33')の一端は、VCSELチップ(41)の第1電極(44)の一端とワイヤ(40)で接続される。第1リードフレーム(31)の装着部(31a)の両端部は、光送受信器に含まれる支持部材(図示せず)に夫々取り付けられる。図5に示す構成を用いることによって、薄型の光送受信器を作製することが可能となる。
光学モジュール(1)は、図2と同様にして装着部(31a)に固定される。VCSELチップ(41)の装着部(31a)への固定は、VCSELチップ(41)及びヒートシンク(42)が固定されたブロック(43)の下面と、装着部(31a)の上面とを、例えばAgペースト又はハンダ材を用いて接合することによって行われる。その際、先の説明とほぼ同様にして、VCSELチップ(41)の位置調整が行われる。なお、VCSELチップ(41)の代わりに、端面出射型のレーザチップが用いられてもよく、光学素子(5)の外面に、必要に応じてARコーディングが施されてもよい。
次に、本発明の光学モジュールの製造方法について、第1実施例の光学モジュールを例にして説明する。図6(a)乃至(d)及び図7(a)乃至(d)は、該光学モジュールの製造方法を説明する一部断面図である。まず、図6(a)に示すように、光検出器(3)等が形成されたSiウェハ(51)が準備される。Siウェハ(51)の上部には、フォトエッチングやイオン注入等のプロセスを施すことによって形成された複数の光検出器(3)がアレイ状又格子状に配列されており、各光検出器(3)について配線パターン(9)及びパッド(10)がプリントされている。さらに、Siウェハ(51)の下面には、例えばスパッタ法を用いて導電性金属層(52)が形成されている。そして、このようなSiウェハ(51)の上面に適当な量の樹脂溶液が垂らされて、第1樹脂層(53)が設けられる。
樹脂溶液は、例えば、以下のように作製される。まず、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン5.5ml、フェニルトリメトキシシラン5.75ml、塩酸(2N)1.65m及びエタノール20.5mlを混合した後、この混合液を24時間放置することによって、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン及びフェニルトリエトキシシランを加水分解して重縮合させる。このようにして得られた重縮合物4mlに、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン10mgを重合開始剤として加えて、100度で加熱する。加熱によりエタノールが蒸発除去されて粘性液体が得られる。この粘性液体1gに、トリメチルエトキシシラン3ml及び無水トリフルオロ酢酸0.8mlを混合して、24時間放置した後、100度で加熱乾燥することによって、過剰のトリエチルエトキシシラン及び無水トリフルオロ酢酸を蒸発させて除去する。これによって、樹脂溶液が得られる。フェニルトリメトキシシランの代わりにジフェニルジメトキシシランを用いても良い。なお、以上に示した体積及び質量の具体的数値は、あくまで説明目的であり、作製する樹脂溶液の量に応じて適宜変更される。
Siウェハ(51)の上面が、上記のような樹脂溶液で形成された第1樹脂層(53)で覆われた後、図6(b)に示すように、金属製又樹脂製の第1スタンパ(54)を用いて、光学素子(5)の第1半体(6a)の成形が行われる。第1スタンパ(54)の下部には、第1半体(6a)の形状を象った複数の第1凹部(55)が、アレイ状又は格子状に配列されており、第1スタンパ(54)が第1樹脂層(53)に押し付けられると、第1スタンパ(54)の下面は、Siウェハ(51)の上面と当接し、各光検出器(3)の上側に第1凹部(55)が配置される。これによって、各第1凹部(55)は、第1樹脂層(53)を形成していた樹脂溶液で充填される。この後、約4時間120℃で加熱して、樹脂溶液を硬化させると、各光検出器(3)上にて、光学素子(5)の第1半体(6a)が、Siウェハ(51)と一体的に作製される。
その後、図6(c)に示すように、第1スタンパ(54)が除去されて、図6(d)に示すように、各第1半体(6a)の傾斜面に、Cr薄膜の反射層(6c)が一体的に作製される。例えば、反射層(6c)は、蒸着法により形成される。Crは、傾斜面以外の領域に付着しないように、傾斜面の法線方向に沿って飛ばされる。
次に、図7(a)に示すように、上述の樹脂溶液をSiウェハ(51)上に垂らすことによって、第1半体(6a)を覆うように第2樹脂層(56)が設けられる。その後、図7(b)に示すように、第2スタンパ(57)を用いて、光学素子(5)の第2半体(6b)、対物レンズ(7)及び回折格子(8)が成形される。第2スタンパ(57)の下部には、光学素子(5)の外形を象った複数の第2凹部(58)が、アレイ状又は格子状に配列されている。第2凹部(58)の底面は、対物レンズ(7)を成形するために椀状に形成されており、また、回折格子(8)を転写するための凹凸パターン(59)が、第2凹部(58)の内面に形成されている。第2スタンパ(57)は、各凹部(58)内に第1半体(6a)が収まるように第2樹脂層(56)に押し付けられる。第2スタンパ(57)の下面は、Siウェハ(51)の上面と当接し、第2凹部(58)における第1半体(6a)上の空間は、第2樹脂層(56)を形成していた樹脂溶液で充填される。この後、約4時間120℃で加熱して、樹脂溶液を硬化させる。これにより、光学素子(5)を構成するハーブミラー(6)、対物レンズ(7)及び回折格子(8)が一体的に成形されると共に、光学素子(5)は、Siウェハ(51)と一体的に形成される。
この後、図7(c)に示すように、第2スタンパ(57)が除去された後、Siウェハ(51)をダイシングすることにより、図7(d)に示すようにチップ化された光学モジュール(1)が完成する。なお、上記の製造工程では、パッド(10)が樹脂で覆われないように光学素子(5)が作製されるが、配線パターン(9)やパッド(10)も樹脂で覆われるように光学素子(5)を成形して、最後に、ドライエッチング等を施すことによって各パッド(10)周辺の樹脂を除去して、これらパッド(10)を露出させてもよい。
図2において、ハンダ材を用いて光学モジュール(1)のヒートシンク(14)を第1リードフレーム(31)に固定すると、Agペーストを用いる場合よりも放熱性が向上する。しかしながら、ハンダ材を用いると比較的高い熱が光学モジュール(1)に加わる可能性がある。本実施例では、光学素子(5)の大半は、上記の条件で合成した樹脂溶液を固化させた有機・無機ハイブリッド材料を用いて形成されている。この有機・無機ハイブリッド材料のガラス転移点は約350℃であって非常に高い。故に、本実施例の有機・無機ハイブリッド材料を用いると、光学モジュール(1)をベース部材(20)の第1リードフレーム(31)に固定する際にハンダ材を熱で溶融させても、光学素子(5)が変形することはない。
本発明の光学モジュールは、光学素子(5)に、光ファイバーが挿入されるスリーブも一体的に成形されるのが好ましい。図8は、本発明の第4実施例の光学モジュール(1)を用いたスリーブ付送受信器の断面図である。スリーブ付送受信器は、略円筒状の外形を有する本体部(61)を具えており、該本体部(61)は、Fe又はコバール等の導電性金属で形成された円盤状のステム(62)と、該ステム(62)に固定された絶縁性樹脂製のキャップ(63)とを具えている。ステム(62)には、3つの棒状のリード部材(64a-c)が固定されている。第1及び第2リード部材(64a)(64b)の一端は、ステム(62)の上面より上方へ突出している。図9(a)は、ステム(62)の上面図、図9(b)は、ステム(62)の下面図である。第1及び第2リード部材(64a)(64b)は、ステム(62)を貫通する孔に挿入されており、ハーメチックシール(65)を用いてステム(62)に固定されると共に、ステム(62)と絶縁されている。第3リード部材(64c)の一端は、抵抗溶接等によって、ステム(62)の下面に接合されている。
光学モジュール(1)は、光検出器(3)が形成された基板(2)と、該基板(2)と一体的に形成された光学素子(5)とを具えており、光学素子(5)が、一体的に形成されたハーフミラー(6)、対物レンズ(7)及びスリーブ(71)で構成されている点を除いて、第3実施例の光学モジュールと同様な構成を具える。スリーブ(71)は、対物レンズ(7)を囲うように、ハーフミラー(6)の第2半体(6b)の上部に一体的に形成されている。Agペースト又はハンダ材等を用いて、基板(2)の下面に形成された電極(11)とステム(62)の上面とが接合されて、光学モジュール(1)は、ステム(62)に固定されている。基板(2)のパッド(10)は、第2リード部材(64b)の上端と、ワイヤ(40)で接続されている。
光学モジュール(1)の横には、VCSELチップ(41)、ヒートシンク(42)及びブロック(43)が配置されている。VCSELチップ(41)の出射面に形成された第1電極(44)の一端は、第1リード部材(64a)の上端とワイヤ(40)により接続されている。第3実施例と同様に、VCSELチップ(41)は、n型Si製のヒートシンク(42)に固定されており、ヒートシンク(42)は、Cu製のブロック(43)に固定されている。ブロック(43)の下面は、Agペースト又はハンダ材等を用いてステム(62)の上面と接合される。
有底筒状のキャップ(63)は、基板(2)及びVCSELチップ(41)等を囲うようにステム(62)の上側に配置される。キャップ(63)の端部は、ステム(62)の端部と接着剤(66)を用いて接着される。接着剤(66)には、例えば、エポキシ系の接着剤が用いられる。キャップ(63)の底部中央には、端部にフランジが形成された円筒部(67)が形成されており、その中にスリーブ(71)が挿入される。スリーブ(71)の先端部は、円筒部(67)から上方へ突出しており、スリーブ(71)と円筒部(67)の間は、シール剤(68)で封止される。シール剤(68)には、例えば、エポキシ系の接着剤が用いられる。
図10(a)乃至(c)は、第4実施例の光学モジュール(1)の製造方法を説明する一部断面図である。Siウェハ(51)の上面に、ハーフミラー(6)の第1半体(6a)を作製するまでは、図6(a)乃至(d)に関して先に行った説明と同様に行われる。その後、図7(a)と同様に、Siウェハ(51)上に第2樹脂層(56)が設けられる。第2樹脂層(56)は、第1実施例の光学モジュールを製造する場合と比較してかなり厚く設けられる。
次に、図10(a)に示すように、第2スタンパ(57)を用いて、光学素子(5)の第2半体(6b)、対物レンズ(7)及びスリーブ(71)が成形される。第2スタンパ(57)には、光学素子(5)を象った複数の第2凹部(58)がアレイ状又は格子状に形成されている。第2凹部(58)の底面は、対物レンズ(7)を成形するために腕状に形成されると共に、その周囲には、スリーブ(71)を成形するために深い環状の溝が形成されている。なお、第2凹部(58)には、図7(b)に示したような回折格子(8)を転写する凹凸パターン(59)は設けられない。
第2スタンパ(57)は、各第2凹部(58)内に第1半体(6a)が収まるように第2樹脂層(56)に押し付けられる。第2スタンパ(57)の下面は、Siウェハ(51)の上面と当接し、第2凹部(58)における第1半体(6a)上の空間は、第2樹脂層(56)を形成していた樹脂溶液で充填される。その後、樹脂溶液が硬化されて、スリーブ(71)を含んだ光学素子(5)が一体的に成形されると共に、該光学素子(5)は、Siウェハ(51)と一体的に形成される。
この後、図10(b)に示すように、第2スタンパ(57)が除去された後、Siウェハ(51)をダイシングすることにより、図10(c)に示すようにチップ化された光学モジュール(1)が完成する。なお、上記の製造工程では、第1実施例の光学モジュールと同様に、パッド(10)が樹脂で覆われないように光学素子(5)が作製されるが、配線パターン(9)やパッド(10)も樹脂で覆われるように光学素子(5)を成形して、最後に、ドライエッチング等を施すことによって周辺の樹脂を除去して、パッド(10)を露出させてもよい。
図11(a)乃至(d)は、スリーブ付送受信器の組立て工程を示す側面図である。まず、図11(a)に示すように、第1乃至第3リード部材(64a-c)が装着されたステム(62)の上面に、光学モジュール(1)が固定される。そして、基板(2)のパッド(10)(図11(a)乃至(d)では図示せず)と、第2リード部材(64b)の上端と、ワイヤ(40)で接続するワイヤボンディングが行われる。
次に、ステム(62)の上面にて、光学モジュール(1)の横側にAgペーストが塗布され、図10(b)に示すように、VCSELチップ(41)及びヒートシンク(42)が固定されたブロック(43)が、Agペーストを覆うようにステム(62)の上面に配置される。そして、VCSELチップ(41)の位置調整の後、Agペーストを加熱してヒートシンク(14)をステム(62)に固定される。
VCSELチップ(41)の位置調整は、先の実施例と基本的に同様に行われる。VCSELチップ(41)の第1電極(44)(図11(a)乃至(d)では図示せず)に検査用プローバを接触させる。また、光ファイバー(図示せず)を準備し、光ファイバーの一端をスリーブ(71)に、他端を光パワーメータに接続する。そして、第3リード部材(64c)に接続した検査用コネクタと検査用プローバに通電し、VCSELチップ(41)でレーザ光を発生させる。VCSELチップ(41)より出射されたレーザ光は、光ファイバーを通って光パワーメータでその強度が測定される。測定された光の強度が最大となるように、ブロック(43)、即ちVCSELチップ(41)を移動させて、VCSELチップ(41)の位置を確定する。なお、ブロック(43)は、ハンダ材を用いてステム(62)に固定されてもよい。
ブロック(43)がステム(62)に固定された後、図11(c)に示すように、VCSELチップ(41)の第1電極(44)と第1リード部材(64a)の上端をワイヤ(40)で接続するワイヤボンディングが行われる。その後、ステム(62)の端部に、接着剤(66)が塗布される。そして、図11(d)に示すように、ステム(62)に、キャップ(63)が装着され、スリーブ(71)とキャップ(63)の円筒部(67)との間に、シール剤(68)を流し込んで封止が行われる。これにより、図8に示すスリーブ付送受信器が完成する。
なお、第4実施例の光学モジュール(1)でも、第1半体(6a)を形成する樹脂と、第2半体(6b)、対物レンズ(7)及びスリーブ(71)を形成する樹脂とに屈折率が互いに異なる樹脂を用いることによって、反射層(6c)が省略されてもよい。また、光学素子(5)の外面に、必要に応じてARコーディングが施されてもよい。
対物レンズ(7)の表面のみにARコーディングが施されてもよく、該表面のみに、反射率が10〜40%の誘電体膜(例えば、TiO2を924Åの厚さでEB蒸着法等で積層させることにより約30%の反射率が得られる)を形成すると、レーザチップ(4)又はVCSELチップ(41)から出射した光は、ハーブミラー(6)の反射層(6c)で反射されて、その反射光の一部が対物レンズ(7)の表面で反射し、反射層(6c)を通って光検出器(3)に入射する。これにて、光検出器(3)を、レーザチップ(4)又はVCSELチップ(41)から出射した光の出力モニタとして使用することが可能となる。従って、対物レンズ(7)の表面にARコーディングを施して、その反射率を高めることで、本発明を用いてTOSA(Transmitter Optical Assembly)を作製することができる。
上記実施例の説明は、本発明を説明するためのものであって、特許請求の範囲に記載の発明を限定し、或は範囲を減縮する様に解すべきではない。本発明の各部構成は上記実施例に限らず、特許請求の範囲に記載の技術的範囲内で種々の変形が可能であることは勿論である。