JP4432411B2 - レーザー脱離イオン化質量分析法 - Google Patents

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Description

本発明は、質量分析技術、特にレーザー脱離イオン化質量分析法とそのサンプルの作成方法に関する。
二次元電気泳動などのクロマトグラフィーにより分離された生体分子等の解析方法として、レーザー脱離イオン化質量分析法(LDI-MS)の有用性が認められている。そして、対象サンプルの保存性、あるいはピエゾ素子等インクジェット技術を用いた微量分注・解析システムへの応用という観点から、対象物質をメンブレン上に固相化(ブロット)し、直接メンブレン上で解析する系が提唱されている(特表2001−521623号公報またはMolecular & Cellular Proteomics (2002) vol. 1, pp. 490-499)。メンブレンとしては、ニトロセルロースやPVDF (ポリビニリデンジフルオリド)が主に用いられるが、量的及び質的なタンパク質保持性能の優位性からPVDFが好まれている。またPVDFメンブレンは、強い疎水性を示す特性を持つ点でも好まれている。
上記メンブレン上における質量分析系においては、サンプルの大部分はメンブレンの内部に分布している。しかしながら、LDI-MSではレーザー照射されるのがメンブレン表面に限られるため、通常のMSプレート、すなわち金属プレート上での解析に比して検出感度は大きく減じていた。これと同様の問題がマトリックスを添加する場合(MALDI)にも生じていた。例えば、従来、MSプレートにサンプルを添加する際に用いられているマトリックス溶液は、通常50体積%以上のアセトニトリル等の有機溶媒を含む組成を有する。この組成は、マトリクス溶液の乾燥が速くなることや、マトリックスやその他の溶質の溶解を助けることの利点を有する。しかしながら、メンブレンに添加したマトリックス溶液はメンブレン内部に浸透・拡散してしまうため、メンブレン表面に十分な結晶を形成させることが困難であった。
近年、MALDIに四重極イオントラップが組み合わされた装置が開発された。しかしこの場合、生成イオンの引き出しにかかる電位差が小さく、本来の測定位置である金属MSプレート面から空間的に距離を隔て、電気的に絶縁であるメンブレン表面からのイオン検出はさらに困難であった。このため、レーザー強度を大幅に上げて解析する方法が用いられてきたが、この方法はノイズの増大を招く問題がある。また、メンブレン内のサンプルをいったん抽出した上で金属プレートに移し変える方法も用いられてきたが、この方法は工程が煩雑になる問題がある。
特表2001−521623号公報 モレキュラー・アンド・セルラー・プロテオミクス(Molecular & Cellular Proteomics)第1巻、2002年、p.490−499
そこで本発明の目的は、サンプル液をメンブレンに滴下して直接メンブレン上で質量分析を行う場合に、滴下されたサンプル液のメンブレン内への過度な浸透・拡散を抑え、メンブレン表面上及び/又は表層の限局した領域に効率よくサンプルの結晶を形成させ、質量分析を行う方法を提供することにある。また本発明の目的は、上記ブロットサンプルのようにサンプルがメンブレン内に保持されている場合にも、保持されたサンプルをメンブレン表面上及び/又は表層にその局在を移動させることでその結晶を効率よく形成させ、質量分析を行う方法を提供することにある。
本発明には、以下の発明が含まれる。
(1)疎水的性質を有するメンブレン上に、解析すべきサンプルを含み且つ前記メンブレンに対して非浸透性であるサンプル液を滴下し、前記メンブレンの表面上に前記サンプル液の液滴を存在させ、前記メンブレンの表面上において前記サンプル液を乾燥させることにより、前記メンブレン表面上及び/又は表層に前記解析すべきサンプルの結晶を形成させ、レーザー脱離イオン化質量分析によって前記サンプルの解析を行うレーザー脱離イオン化質量分析法であって、
前記サンプル液が、有機溶媒を全く含まないか、又は25体積%以下の有機溶媒を含むものである、レーザー脱離イオン化質量分析法
(2)前記サンプル液の液滴が、前記メンブレンの表面上に隆起して存在している、前記(1)に記載のレーザー脱離イオン化質量分析法。
)前記サンプル液がさらにマトリックスを含み、前記メンブレン表面上及び/又は表層に前記解析すべきサンプルの結晶を前記マトリックスの結晶と共に形成させ、レーザー脱離イオン化質量分析によって前記サンプルの解析を行う、前記(1)又は(2)に記載のレーザー脱離イオン化質量分析法。
)前記サンプル液がさらに内部標準物質を含み、前記メンブレン表面上及び/又は表層に前記解析すべきサンプルの結晶を前記内部標準物質の結晶と共に形成させ、レーザー脱離イオン化質量分析によって前記サンプルの解析を行う、前記(1)又は(2)に記載のレーザー脱離イオン化質量分析法。
)前記サンプル液がさらにマトリックス及び内部標準物質を含み、前記メンブレン表面上及び/又は表層に前記解析すべきサンプルの結晶を前記マトリックス及び前記内部標準物質の結晶と共に形成させ、レーザー脱離イオン化質量分析によって前記サンプルの解析を行う、前記(1)又は(2)に記載のレーザー脱離イオン化質量分析法。
)前記サンプル液を滴下する前に、界面活性剤及び/又は有機溶媒を含む溶液によって前記メンブレンを処理しておく、前記(1)〜()のいずれかに記載のレーザー脱離イオン化質量分析法。
)疎水的性質を有し、解析すべきサンプルが保持されたメンブレンの上に、前記メンブレンに対して非浸透性である液体を滴下し、前記メンブレンの表面上に前記液体の液滴を存在させ、前記メンブレンの表面上において、前記メンブレンに保持された前記解析すべきサンプルを前記液体中に抽出しながら前記液体を乾燥させることにより、前記メンブレン表面上及び/又は表層に前記解析すべきサンプルの結晶を形成させ、レーザー脱離イオン化質量分析によって前記サンプルの解析を行うレーザー脱離イオン化質量分析法であって、前記液体が、有機溶媒を全く含まないか、又は25体積%以下の有機溶媒を含むものである、レーザー脱離イオン化質量分析法
(8)前記液体の液滴が、前記メンブレンの表面上に隆起して存在している、前記(7)に記載のレーザー脱離イオン化質量分析法。
(9)前記液体がマトリックスを含み、前記メンブレン表面上及び/又は表層に前記解析すべきサンプルの結晶を前記マトリックスの結晶とともに形成させ、レーザー脱離イオン化質量分析によって前記サンプルの解析を行う、前記(7)又は(8)に記載のレーザー脱離イオン化質量分析法。
(10)前記液体が内部標準物質を含み、前記メンブレン表面上及び/又は表層に前記解析すべきサンプルの結晶を前記内部標準物質の結晶と共に形成させ、レーザー脱離イオン化質量分析によって前記サンプルの解析を行う、前記(7)又は(8)に記載のレーザー脱離イオン化質量分析法。
(11)前記液体がマトリックス及び内部標準物質を含み、前記メンブレン表面上及び/又は表層に前記解析すべきサンプルの結晶を前記マトリックス及び前記内部標準物質の結晶と共に形成させ、レーザー脱離イオン化質量分析によって前記サンプルの解析を行う、前記(7)又は(8)に記載のレーザー脱離イオン化質量分析法。
(12)前記液体を滴下する前に、界面活性剤及び/又は有機溶媒を含む溶液によって前記メンブレンを処理しておく、前記(7)(11)のいずれかに記載のレーザー脱離イオン化質量分析法。
本発明によると、サンプル液をメンブレンに滴下して直接メンブレン上で質量分析を行う場合に、滴下されたサンプル液のメンブレン内への過度な浸透・拡散を抑え、メンブレン表面上及び/又は表層の限局した領域に効率よくサンプルの結晶を形成させ、質量分析を行う方法を提供することができる。また本発明によると、サンプルがメンブレン内に保持されている場合にも、保持されたサンプルをメンブレン表面上及び/又は表層にその局在を移動させることでその結晶を効率よく形成させ、質量分析を行う方法を提供することができる。
本発明は、メンブレンの表面上及び/又は表層に解析すべきサンプルの結晶を形成させ、形成した結晶をメンブレン上で直接質量分析することによって、効率よくサンプルを質量分析する方法である。本発明においては、サンプル及び場合によりマトリックスなどを含む、メンブレンに対して非浸透性のサンプル液をメンブレン上に滴下してサンプルの結晶を形成させる方法と、サンプルを保持したメンブレン上に、場合によりマトリックスなどを含む、メンブレンに対して非浸透性の液体を滴下してサンプルの結晶を形成させる方法とを含む。
本発明においては、前記サンプル及び前記液体が非浸透性であるため、それらは滴下後、メンブレンの表面上で液滴として存在している。すなわち、液滴はメンブレン表面上において、液滴の液相と気相との界面が表面張力により曲面を形成する状態で存在している。例えば、液滴はメンブレン表面上で隆起して存在している。そして、液滴として存在する状態を保持しながら液滴が乾燥することにより、メンブレンの表面上及び/又は表層にサンプルの結晶が形成する。ここでメンブレンの表層とは、メンブレンの表面近傍の層をいう。
サンプル固相担体としてのメンブレンは、疎水的性質を有するものを用いる。強疎水性(撥水性)を示すメンブレンであればより好ましい。このようなメンブレンとしては、例えば、PVDF(ポリビニリデンジフルオリド)、ポリプロピレンなどが挙げられる。このようなメンブレンを用いることによって、メンブレン上に滴下された液滴がメンブレン内に過度に浸透することを抑制することができる。
まず、サンプル液をメンブレン上に滴下しサンプルの結晶を形成させる方法について説明する。サンプル液には、解析すべきサンプル、及び場合によりマトリックス及び/又は内部標準物質が含まれる。解析すべきサンプルの量は、例えばサンプル液全体に対して2×10-6〜1重量%の濃度で使用することができる。
マトリックスとしては、通常のマトリックス支援レーザー脱離イオン化法に用いられるイオン化剤を、特に限定することなく用いることができる。例えば、ニコチン酸、2,5−ジヒドロキシ安息香酸、α−シアノ−4−ヒドロキシケイ皮酸などが挙げられる。マトリックスの量としては、例えば重量基準でサンプルの1〜100万倍程度使用することができる。これらの量は、当業者が適宜決定することができる。
内部標準物質としては、質量分析においてキャリブレーションとして用いられるものが特に限定することなく用いられる。内部標準物質の量としては、例えばサンプル液全体に対して10〜100pmol/mlの濃度で使用することができる。
このようなサンプル液は、非浸透性、すなわち、メンブレンに対する浸透性をほぼ抑制することができるような組成に調製する必要がある。より具体的には、有機溶媒を全く含まないか、又はサンプル液全体に対して25体積%以下、好ましくは10〜20体積%の有機溶媒含量となるように調製する必要がある。有機溶媒としては、アセトニトリル、メタノール、イソプロパノール、ブタノールなどが挙げられる。
上記範囲の量の有機溶媒を含むことは、メンブレン表面上の液滴の表面張力を適度に減じ、メンブレン表面と液滴との接面積すなわち湿潤領域を適度に確保する効果、液滴中の溶媒成分の除去を助ける効果、或いはマトリックスの溶解を助ける効果などを有する点で好ましい。また、有機溶媒を全く含まなくとも、上記範囲の有機溶媒を含んでいても、メンブレン表面上及び/又は表層に十分な結晶を形成することができる点では同様の効果を有する。一方、有機溶媒の量が25体積%を超えると、メンブレンに対する親和性が大きくなりすぎ、液滴がメンブレン内に容易に浸透・拡散するため、メンブレン表面上及び/又は表層に十分な結晶を形成することができない。なお、本発明においてはサンプル液中の上記以外の成分は水である。
また、上記サンプル液が瞬時にメンブレン内に浸透・乾燥しないよう、一時的にメンブレン表面上に液滴が存在する状態を保つことができる程度の液量を滴下することも必要である。このような液量としては、2nl〜2μlが好ましく、100nl〜1μlがより好ましい。また、液滴とメンブレン表面との接面積は、直径100μm〜2mmが好ましく、200μm〜1mmがより好ましい。
また本発明においては、上記サンプル液の滴下の前に、あらかじめ有機溶媒及び/又は界面活性剤を含む溶液によってメンブレンを処理しておくことができる。この処理によって、メンブレンを湿潤状態にし、後に滴下するサンプル液がメンブレン内に過度に浸透することを防ぐことができる。処理の形態としては、例えば、メンブレン表面の滴下位置に前記有機溶媒及び/又は界面活性剤を含む溶液を滴下してメンブレン上の微小領域を湿潤状態にすることができる。このことによって、後に滴下するサンプル液の湿潤領域を限定することができる。このときの有機溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどが挙げられる。また、界面活性剤としては、ポリビニルピロリドン、n−オクチル−β−D−グルコピラノシドなどが挙げられる。また、このときの有機溶媒の量は、前記溶液全体に対して50〜100体積%程度が好ましく、界面活性剤の量は、0.25〜1体積%程度が好ましい。また、湿潤させるメンブレン上の領域の面積としては200μm〜1mmが好ましく、滴下する量としては、1nl〜0.2μlが好ましい。
本発明においては、上記サンプル液の液滴がメンブレン表面上に液滴として存在する状態で保持され、時間経過と共に主には液滴表面のみにおける溶媒成分の揮発、或いはメンブレンへの微小な浸透を伴って徐々に液滴体積を減じ、最後に乾燥する。この過程で液滴中のサンプル及びマトリックスの濃度は上昇し、一方では液滴の大部分はメンブレン内に浸透せず表面に保持され続けることから、効率よくメンブレン表面上及び/又は表層にサンプルとマトリックスとの結晶を形成することができる。なお、本明細書においては、サンプルを含む2種以上の物質について結晶を形成させる場合、形成した結晶は、2種以上の共結晶状態又は2種以上の結晶の混合状態となっている。
次に、サンプルを保持したメンブレン上に液体を滴下してサンプルの結晶を形成させる方法について説明する。
サンプルを保持したメンブレンとしては、タンパク質などのサンプルが転写・固定されたブロッティング膜などが挙げられる。このようなメンブレン内には、高密度でサンプル分子が局在している。この場合は、サンプルの局在部分のメンブレン上の位置に適当な液体を滴下する。この液体には、例えば、マトリックスや内部標準物質などを含むことができる。これらは、単独で用いても良いし、組み合わせて用いても良い。
マトリックスを用いる場合は、前述と同様、通常のマトリックス支援レーザー脱離イオン化法に用いられるイオン化剤を、特に限定することなく用いることができる。例えば、ニコチン酸、2,5−ジヒドロキシ安息香酸、α−シアノ−4−ヒドロキシケイ皮酸などが挙げられる。マトリックスの量としては、メンブレン中に局在するサンプルの量にもよるが、例えば、前記液体全体に対して0.5〜2重量%程度用いることができる。また、内部標準物質を用いる場合は、例えば前記液体全体に対して10〜100pmol/ml程度用いることができる。
このような液体は、非浸透性、すなわち、メンブレンに対する浸透性をほぼ抑制することができるような組成に調製する必要がある。より具体的には、有機溶媒を全く含まないか、又は前記液体全体に対して25体積%以下、好ましくは10〜20体積%の有機溶媒含量となるように調製する必要がある。有機溶媒としては、アセトニトリル、メタノール、イソプロパノール、ブタノールなどが挙げられる。上記範囲の量の有機溶媒を含むことは、メンブレン表面上の液滴の表面張力を適度に減じ、メンブレン表面と液滴との接面積を適度に確保する効果、液滴中の溶媒成分の除去を助ける効果、或いはマトリックスなどを使用する場合はその溶解を助ける効果などを有する点で好ましい。また、有機溶媒を全く含まなくとも、上記範囲の有機溶媒を含んでいても、メンブレン表面上及び/又は表層に十分な結晶を形成することができる点では同様の効果を有する。一方、有機溶媒の量が25体積%を超えると、メンブレンに対する親和性が大きくなりすぎ、液滴がメンブレン内に容易に浸透・拡散するため、メンブレン表面上及び/又は表層に十分な結晶を形成することができない。なお、本発明においては液体中の上記以外の成分は水である。
また、上記液体が瞬時にメンブレンに浸透・乾燥しないよう、一時的にメンブレン表面上に液滴が存在する状態を保つことができる程度の液量を滴下することも必要である。このような液量としては、2nl〜2μlが好ましく、100nl〜1μlがより好ましい。また、液滴とメンブレン表面との接面積は、直径100μm〜2mmが好ましく、200μm〜1mmがより好ましい。
また、本発明においては、上記液体の滴下の前に、あらかじめ有機溶媒及び/又は界面活性剤を含む溶液によってメンブレンを処理しておくことができる。この処理によって、メンブレンを湿潤状態にし、後に滴下する液体がメンブレン内に過度に浸透することを防ぐことができる。処理の形態としては、例えば、メンブレン表面の滴下位置に前記有機溶媒及び/又は界面活性剤を含む溶液を滴下してメンブレン上の微小領域を湿潤状態にすることができる。このことによって、後に滴下するサンプル液の湿潤領域を限定することができる。このときの有機溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどが挙げられる。また、界面活性剤としては、ポリビニルピロリドン、n−オクチル−β−D−グルコピラノシドなどが挙げられる。また、このときの有機溶媒の量は、前記溶液全体に対して50〜100体積%程度が好ましく、界面活性剤の量は、0.25〜1体積%程度が好ましい。また、湿潤させるメンブレン上の領域の面積としては直径200μm〜1mmが好ましく、滴下する量としては、1nl〜0.2μlが好ましい。
本発明においては、上記液体の液滴がメンブレン表面上に液滴として存在する状態で保持され、時間経過と共に、液体のメンブレンへの微小な浸透によってメンブレン中に高密度で局在していたサンプル分子がメンブレン内を拡散現象により液滴中へと移動する。そして、液滴体積の減少と共にメンブレン表面上及び/又は表層での濃度が増加し、効率よくサンプルの結晶を形成することができる。このとき、マトリックスを含む液体を使用した場合は、サンプルとマトリックスとの結晶を形成することができる。また、内部標準物質を含む液体を使用した場合は、サンプルと内部標準物質との結晶を形成することができる。なお内部標準試料は、例えば、メンブレン上におけるPMF解析の際のマスキャリブレーションに用いられる。さらに、マトリックス及び内部標準物質を含む液体を使用した場合は、サンプル、マトリックス及び内部標準物質の結晶を形成することができる。
上述のよう本発明においては、メンブレンの表面上及び/又は表層に効率的にサンプルの結晶を形成させることができるため、従来の方法よりも容易にサンプルの位置を観察することができ、サンプルの結晶のどの部分にレーザーを照射しても、容易にシグナルを得ることができる。また、得られる解析結果においては、従来の方法よりもノイズが少なく、目的ピークが感度よく検出される。すなわち、従来解析に困難を伴った、メンブレン上のサンプルに対する質量分析の効率及び解析感度を上げることが可能となる。従って、特に微量のサンプルを解析する場合に有効であり、その観点から、例えばメンブレンに固定化したサンプルにインクジェット法により試薬を微量分注する系に応用が可能である。また、本発明ではマトリックス溶液をメンブレン上に一度に滴下することが可能であるため、従来法のように、液の拡散を抑えるために微量ずつ滴下していく必要がなく、実験者が操作に拘束される時間を低減できる。
[実施例1]
マトリックスと測定サンプルとの混合溶液として、以下の2種類を用意した。
(A:比較用)1 pmol/ml ACTH(測定サンプル)、5 mg/ml DHB(マトリックス)、50体積%アセトニトリル、0.05体積%トリフルオロ酢酸
(B)1 pmol/ml ACTH、5 mg/ml DHB、25体積%アセトニトリル、0.05体積%トリフルオロ酢酸
ここでACTHはAdrenocorticotropic hormone fragment 18-39(モノアイソトピック質量: 2465.1989)であり、DHBは2,5−ジヒドロキシ安息香酸である。
PVDFメンブレン(Immobilon-PSQ、ミリポア社製)をMSプレートに導電性両面テープを介して貼り付けた。貼り付けられたメンブレン上に、それぞれの溶液各1μlを滴下した。このとき、(A)の場合はメンブレンにおける液の拡散を極力抑えるべく、液の乾燥を待ちながら少しずつ多数回に分け滴下した。一方、(B)の場合は溶液の全量を一度に滴下してメンブレン上に液滴が存在する状態にし、その状態を保ったまま乾燥を待った。
それぞれのMSプレートを直接MALDI-MS解析に供した。この解析にはMALDI四重極イオントラップ飛行時間型質量分析計AXIMA-QIT(島津製作所製)を使用した。(A)の場合、質量分析計のモニター画面において結晶形成位置が判然とせず、また滴下領域内においてシグナルを与えるポイントを見出すのに困難を要したが、(B)では容易に結晶の位置を観察することができ、その結晶の任意のどの部分にレーザー照射しても、直ちに特異的シグナルを得ることが可能であった。
図1Aに、上記(A)の溶液を用いた場合の解析結果を示し、図1Bに溶液(B)を用いた場合の解析結果を示す。図1の両図において、横軸は質量/電荷(Mass/Charge)を表し、縦軸は分子イオンピークの相対強度を表す。両図を比較すると明らかに、B図のほうがノイズが低く、目的ピークを感度よく検出できていた。
[実施例2]
二次元分離タンパク質ブロットを、メンブレン上で酵素消化を行い、PMF (Peptide Mass Fingerprinting)解析を行った。
ヒト血漿タンパク質を二次元電気泳動により分離し、Immobilon-PSQメンブレンに転写後Direct Blue 71(アルドリッチ社製)によってタンパク質スポットを染色した。このようにして得られたメンブレンを実施例1と同様にしてMSプレートに貼り付けた。貼り付けられたメンブレンのSerum Albuminスポットを解析目的とした。目的スポット上に、親水性を与える目的で0.25体積%ポリビニルピロリドン(界面活性剤)を含む50体積%メタノール溶液0.14μlを滴下し、さらに、200μg/mlのトリプシンを含む25mM炭酸水素アンモニウム溶液1μlを重ねて滴下した。これを湿潤環境下にて30℃で終夜インキュベートし、タンパク質のトリプシン酵素消化反応を行った。
目的スポット上に、以下の組成の液体をそれぞれ2μl滴下した。
(A:比較用)、5 mg/ml DHB(マトリックス)、50体積%アセトニトリル、0.05体積%トリフルオロ酢酸
(B)5 mg/ml DHB、25体積%アセトニトリル、0.05体積%トリフルオロ酢酸
このとき、(A)の場合は液の拡散を極力抑えるべく、液の乾燥を待ちながら少しずつ多数回に分けて滴下した。一方、(B)の場合は溶液の全量を一度に滴下してメンブレン上に液滴が存在する状態にし、その状態を保ったまま乾燥を待った。(A)の溶液は容易に拡散する傾向にあり直径2 mm程度の領域に浸潤したが、(B)の溶液の場合はあらかじめポリビニルピロリドンを滴下した約直径1 mmの領域のみに浸潤し、それ以外の領域に液が広がることはなかった。
それぞれのMSプレートをAXIMA-QIT(島津製作所製)を用いて直接MALDI-MS解析に供した。(A)の場合は滴下領域内においてシグナルを与えるポイントを見出すのが困難であったが、(B)の場合は容易に結晶を観察しシグナルを得ることが可能であった。
図2Aに、上記(A)の溶液を用いた場合の解析結果を示し、図2Bに溶液(B)を用いた場合の解析結果を示す。図2の両図において、横軸は質量/電荷(Mass/Charge)を表し、縦軸は分子イオンピークの相対強度を表す。A図では非常に高いバックグラウンドを伴っているのに対し、B図ではノイズが抑えられタンパク質消化断片がより効率よく観察された。またこれらのペプチドフラグメントの質量データをMascotシステム(Matrix Science)により解析した結果、いずれの場合もSerum Albuminに有意に一致したが、B図の場合のほうが一致率においてより高いスコアを導いた。
従来の方法(A)と本発明の方法(B)とによる質量分析の結果である。 従来の方法(A)と本発明の方法(B)とによる質量分析の結果である。

Claims (12)

  1. 疎水的性質を有するメンブレン上に、解析すべきサンプルを含み且つ前記メンブレンに対して非浸透性であるサンプル液を滴下し、前記メンブレンの表面上に前記サンプル液の液滴を存在させ、前記メンブレンの表面上において前記サンプル液を乾燥させることにより、前記メンブレン表面上及び/又は表層に前記解析すべきサンプルの結晶を形成させ、レーザー脱離イオン化質量分析によって前記サンプルの解析を行うレーザー脱離イオン化質量分析法であって、
    前記サンプル液が、有機溶媒を全く含まないか、又は25体積%以下の有機溶媒を含むものである、レーザー脱離イオン化質量分析法。
  2. 前記サンプル液の液滴が、前記メンブレンの表面上に隆起して存在している、請求項1に記載のレーザー脱離イオン化質量分析法。
  3. 前記サンプル液がさらにマトリックスを含み、前記メンブレン表面上及び/又は表層に前記解析すべきサンプルの結晶を前記マトリックスの結晶と共に形成させ、レーザー脱離イオン化質量分析によって前記サンプルの解析を行う、請求項1又は2に記載のレーザー脱離イオン化質量分析法。
  4. 前記サンプル液がさらに内部標準物質を含み、前記メンブレン表面上及び/又は表層に前記解析すべきサンプルの結晶を前記内部標準物質の結晶と共に形成させ、レーザー脱離イオン化質量分析によって前記サンプルの解析を行う、請求項1又は2に記載のレーザー脱離イオン化質量分析法。
  5. 前記サンプル液がさらにマトリックス及び内部標準物質を含み、前記メンブレン表面上及び/又は表層に前記解析すべきサンプルの結晶を前記マトリックス及び前記内部標準物質の結晶と共に形成させ、レーザー脱離イオン化質量分析によって前記サンプルの解析を行う、請求項1又は2に記載のレーザー脱離イオン化質量分析法。
  6. 前記サンプル液を滴下する前に、界面活性剤及び/又は有機溶媒を含む溶液によって前記メンブレンを処理しておく、請求項1〜のいずれか1項に記載のレーザー脱離イオン化質量分析法。
  7. 疎水的性質を有し、解析すべきサンプルが保持されたメンブレンの上に、前記メンブレンに対して非浸透性である液体を滴下し、前記メンブレンの表面上に前記液体の液滴を存在させ、前記メンブレンの表面上において、前記メンブレンに保持された前記解析すべきサンプルを前記液体中に抽出しながら前記液体を乾燥させることにより、前記メンブレン表面上及び/又は表層に前記解析すべきサンプルの結晶を形成させ、レーザー脱離イオン化質量分析によって前記サンプルの解析を行うレーザー脱離イオン化質量分析法であって、
    前記液体が、有機溶媒を全く含まないか、又は25体積%以下の有機溶媒を含むものである、レーザー脱離イオン化質量分析法。
  8. 前記液体の液滴が、前記メンブレンの表面上に隆起して存在している、請求項に記載のレーザー脱離イオン化質量分析法。
  9. 前記液体がマトリックスを含み、前記メンブレン表面上及び/又は表層に前記解析すべきサンプルの結晶を前記マトリックスの結晶とともに形成させ、レーザー脱離イオン化質量分析によって前記サンプルの解析を行う、請求項7又は8に記載のレーザー脱離イオン化質量分析法。
  10. 前記液体が内部標準物質を含み、前記メンブレン表面上及び/又は表層に前記解析すべきサンプルの結晶を前記内部標準物質の結晶と共に形成させ、レーザー脱離イオン化質量分析によって前記サンプルの解析を行う、請求項7又は8に記載のレーザー脱離イオン化質量分析法。
  11. 前記液体がマトリックス及び内部標準物質を含み、前記メンブレン表面上及び/又は表層に前記解析すべきサンプルの結晶を前記マトリックス及び前記内部標準物質の結晶と共に形成させ、レーザー脱離イオン化質量分析によって前記サンプルの解析を行う、請求項7又は8に記載のレーザー脱離イオン化質量分析法。
  12. 前記液体を滴下する前に、界面活性剤及び/又は有機溶媒を含む溶液によって前記メンブレンを処理しておく、請求項11のいずれか1項に記載のレーザー脱離イオン化質量分析法。
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