JP4429517B2 - 弧線選択装置および方法並びに解剖学的矯正決定装置および方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、歯科矯正学の分野に関し、特に、少なくとも1本の弧線を選択するための弧線選択装置および方法に関し、また、上顎弓および下顎弓の少なくとも一方用の解剖学的矯正を決定するための解剖学的矯正決定装置および方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
歯科矯正学の分野において、上方の(上顎の)および下方の(下顎の)歯の大きさ(近遠心の幅)間には、数学的比率が存在している。この数学的比率は理想的な歯の咬合において存在すべきである。頻繁という程ではないが、特に歯科矯正の問題を有する患者においては、歯の大きさの相違が存在している。これらの統計を確認する信頼し得る疫学的研究はないが、アメリカ人の略1/3が、釣り合ったかつ理想的な咬合の理に適った範囲内にある歯の大きさを有していると判断される。しかしながら、アメリカ人の残りの2/3は、数学的比率が理想的でない歯を有しており、かつ重大な歯の大きさの相違または不適合性に対して消極的である。
【0003】
ドクター・ウエイン・エイ・ボルトンによる「歯の大きさの不調和および不正咬合の分析および処置との関係」と題された科学研究論文においては、歯の大きさの相違の存在および大きさを識別するための方法(「ボルトン分析」)が記載されている。この方法は6本の前歯(2本の犬歯、2本の外側歯、および2本の中切歯)について、または12本の歯(6本の前歯、4本の小臼歯、および2本の大臼歯)について実施され得る。数学的比率は、6本の前歯に関しては0.772であり、12本の歯の分析に関しては0.913である、理想的な数学的比率と比較される。この比較により、数学的比率と理想的な数学的比率との間の差である、あらゆる存在している歯の大きさの相違および歯の大きさの相違の大きさが識別される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
代表的には、ボルトン分析は、ボルトンの論文に設けられた表、もはや製造されていない計算尺、または計算機を使用して実施される。それゆえ、ボルトン分析を使用して歯の大きさの相違の存在を判定することは、非常に冗長でかつ時間を消費することである。ボルトン分析は、歯の大きさの相違の存在および大きさを判定する一方、理想的な咬合を達成するために上顎および/または下顎の歯に必要な数学的矯正を定量化するものではない。したがって、歯を測定しかつ容易かつ迅速な方法で歯の大きさの相違の存在および大きさを正確に判定するコンピュータ化された装置が必要である。
【0005】
診断の間中歯の大きさの相違の存在および量を認識し、かつ処置の間中歯の構造の理想的な比率に近づけることを達成するような歯科矯正医の失敗は、結果として、上顎および/または下顎歯の密集または広がり等の処置の問題を生じるかも知れない。理想的な比率からのずれは、また、処置の再発および/または機能的な、審美的なかつ衛生的な問題を結果として生じるかも知れない。
【0006】
しかしながら、歯科矯正医がボルトン分析を使用して判定された歯の大きさの相違を矯正しようと試みるとき、問題が発生する。ボルトン分析の結果は比率に直接関連しているので、その結果は上顎または下顎弓に必要な実際の解剖学的矯正の量を正確には示していない。変化がいずれかの方向に始められると直ぐに、比率が変化する。歯の大きさの相違が、上顎または下顎弓において、ボルトン分析の結果によって示された歯の構造の量を単に追加または除去することによって矯正され得ると仮定しているような歯科矯正医は間違いを犯すであろう。そのうえ、ボルトン分析の結果は、歯の大きさの相違を促している1本または複数本の実際の歯を歯科矯正医または研究者に明瞭には示すものではない。したがって、ボルトン分析の結果を使用して必要な解剖学的矯正の量を決定するコンピュータ化された装置がさらに必要である。歯の大きさの相違の原因となり得る1本または複数本の歯を医者に即座に知らしめるように、この装置が各歯の実際のおよび平均の大きさを、モニタ上におよび/またはプリンタ出力に示すならば望ましい。
【0007】
超弾性の予め形成された弧線等の予め形成された弧線が、歯および弓を平らにし、整列させ、回転させ、および/または成形するような処置の第1および第2の段階の間に頻繁に使用される。予め形成された弧線の現行の歯科矯正での使用(上顎弓に1本、下顎弓に1本)は、患者の略17%が大き過ぎる弧線により処置されかつ患者の17%が小さ過ぎる弧線により処置されることを意味している。これらの予め形成された弧線は患者の顔面の大きさに調整することができないので、これらの弧線は上顎および/または下顎弓の過剰な膨張または収縮によって問題を生じるかも知れない。これらの問題は、最小に望まれるとき、処置において後で修正されるかも知れず、その場合、処置時間が延長されることになる。加えて、これらの予め形成されたワイヤの使用は、また、「周遊(ラウンドトリッピング)」、すなわち、歯を間違った方向に動かし、したがって歯を再び矯正しなければならないという結果を生じるかもしれない。かくして、より精密なかつ安定した処置をもたらすために理想的な弧線の大きさを決定するコンピュータ化された装置がさらに必要である。
【0008】
したがって、本発明は、個々の患者の歯の大きさに基づいて理想的な大きさの弧線を選択することができるような弧線選択装置および方法を提供することを目的としている。また、本発明は、理想的な解剖学的矯正を決定することができるような解剖学的矯正決定装置および方法を提供することを他の目的としている。また、本発明は、理想的な弧線を提供することをさらに他の目的としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明の弧線選択装置は、少なくとも1本の弧線を選択するための弧線選択装置において、複数の歯の大きさの少なくとも1つの合計および複数の歯の大きさのうち少なくとも一方を入力する入力装置と、前記入力装置にインターフェイスされかつ前記入力装置から前記少なくとも1つの合計および前記複数の歯の大きさのうち前記少なくとも一方を受信するプロセッサであって、前記入力装置から前記複数の歯の大きさを受信した際、前記複数の歯の大きさの関数として前記少なくとも1つの合計を決定しかつ前記少なくとも1つの合計の関数として少なくとも1本の弧線を選択する該プロセッサと、前記選択された少なくとも1本の弧線を表示する表示装置と、を備えてなることを特徴としている。
【0010】
本発明の解剖学的矯正決定装置は、上顎弓および下顎弓の少なくとも一方用の解剖学的矯正を決定するための解剖学的矯正決定装置において、少なくとも1つの歯の大きさを測定するカリパスと、前記カリパスにインターフェイスされ、前記カリパスから前記少なくとも1つの歯の大きさ受信し、前記少なくとも1つの歯の大きさの関数として複数の歯の大きさの少なくとも1つの合計を決定し、前記上顎弓および前記下顎弓の少なくとも一方用の前記解剖学的矯正を前記少なくとも1つの合計の関数として決定するプロセッサと、前記決定された解剖学的矯正を表示する表示装置と、を備えてなることを特徴としている。
【0011】
本発明の弧線選択方法は、少なくとも1本の弧線を選択するためのコンピュータ化された弧線選択方法において、プロセッサによって入力装置から複数の歯の大きさの少なくとも1つの合計および複数の歯の大きさのうち少なくとも一方を受信する工程と、前記複数の歯の大きさが受信される場合に、前記プロセッサによって前記少なくとも1つの合計を決定する工程と、前記プロセッサによって前記少なくとも1つの合計の関数として前記少なくとも1本の弧線を選択する工程と、を備えてなることを特徴としている。
【0012】
本発明の解剖学的矯正決定方法は、上顎弓および下顎弓の少なくとも一方用の解剖学的矯正を決定するためのコンピュータ化された解剖学的矯正決定方法において、複数の歯の大きさをカリパスにより測定する工程と、前記プロセッサによって前記カリパスから前記少なくとも1つの歯の大きさ受信する工程と、前記プロセッサによって前記少なくとも1つの合計を前記複数の歯の大きさの関数として決定する工程と、少なくとも1つの近遠心幅の関数として前記上顎弓および前記下顎弓の少なくとも一方に関して前記解剖学的矯正を決定する工程と、前記決定された解剖学的矯正を表示する工程と、を備えてなることを特徴としている。
【0013】
本発明の弧線は、上顎弓に嵌合するように寸法付けられた金属ワイヤを備えてなり、この金属ワイヤが25.4125mm、26.75mmおよび28.0875mmのうち1つの曲率半径を有していることを特徴としている。
【0014】
本発明の弧線は、下顎弓に嵌合するように寸法付けられた金属ワイヤを備えてなり、この金属ワイヤが25.4625mm、24.25mmおよび25.4625mmのうち1つの曲率半径を有していることを特徴としている。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明の一実施形態を図面を参照しながらさらに詳細に説明する。図1は、本発明によるコンピュータ装置を示している。このコンピュータ装置は、中央処理ユニット(プロセッサ)101、第1記憶装置(フロッピーディスクドライブ)102、第2記憶装置(ハードディスクドライブ)103、ダイナミックメモリ装置(ランダムアクセスメモリ(RAM))104、および入力/出力装置105、106、107、108および109(それぞれ、キーボード、マウス、カリパス、レーザプリンタおよびモニタ)を含んでいる。中央処理ユニット101は、コンピュータプログラム、特に、歯の大きさの相違、必要な解剖学的矯正、歯の大きさの相違の原因となっている1本または複数本の歯、および弧線の大きさを決定するソフトウェアプログラムを実行し、コンピュータ装置の動作を管理かつ制御するためのものである。
【0016】
フロッピーディスクドライブ等の第1記憶装置102は、フロッピーディスク等の取り外し可能な記憶媒体にデータおよびコンピュータプログラムを書き込みかつそれから読み取るために中央処理ユニット101に結合されている。また、第2記憶装置103も、中央処理ユニット101に結合されており、コンピュータプログラムおよびデータを記憶するための手段を提供している。しかしながら、第2記憶装置103は、例えば、大記憶容量を有するハードディスクドライブであってもよい。
【0017】
ダイナミックメモリ装置104、例えばRAMは、中央処理ユニット101に結合されている。コンピュータ装置は、例えば、キーボード105、マウス106、レーザプリンタ108、およびモニタ109等の代表的な入力/出力装置を含んでいる。コンピュータ装置は、また、例えば、コンピュータ化されたカリパス107等の歯の近遠心幅を測定するための入力/出力装置を含んでいる。
【0018】
本実施形態においては、コンピュータ化されたカリパス107は、例えば、ファウラー「マックス−カル:コンピュータ化されたカリパス」、注文番号54−200−000または54−200−0008等のデジタルカリパスであってもよい。この装置は、実施形態にしたがって変更可能である。例えば、測定用タインは、それらが鋭く向けられかつ個々の歯の非常に正確な測定に適するように取り替え可能である。実際の歯または歯の石膏モデルが測定可能である。留意すべきことは、実際の歯を測定するその場合には、コンピュータ化されたカリパスを消毒すべきである、ということである。
【0019】
カリパス107からの入力を読み取るためにドライバが設けられる。このドライバは、カリパス107の入力ボタンが押された後カリパス107によって取り込まれた各測定値を検出することができる。ドライバは、例えば、カリパスが接続される図1に示したコンピュータ装置の通信ポートを決定する。さらに、ドライバは、例えば、カリパス107とコンピュータ装置との間の通信リンクを確立する。
【0020】
図2は、使用者が患者の情報、例えば、患者の氏名、年齢および性別および欠けているかまたは奇形の歯を入力する画面表示を示している。
【0021】
図3は、測定値を入力するのにキーボード105またはカリパス107を使用するかどうかを選択するためのプルダウンメニュー205を示している。測定値をキーボード105を介して入力しようとする場合、使用者は何も選択すべきでない。測定値をカリパス107を介して入力しようとする場合、使用者は、通信ポート、すなわち、カリパス107が接続されているCOM1,COM2等を選択すべきである。使用者がいったん入力装置を選択しかつ患者の情報を入力すると、使用者は図6および図7に示されるプログラムを実行するために「次へ」ボタンを選択すべきである。
【0022】
図4および図5は、図6および図7に示されるフローチャートを実行するプログラムの画面表示である。プログラムは、C++等の通常のプログラミング言語を使用して実行可能である。
【0023】
図4は、使用者が6本の歯の分析に必要な個々の歯の大きさを入力した画面表示を示している。図4に示されているように、使用者はラジオボタン(選択ボタン)201で6本の歯の分析またはラジオボタン202で12本の歯の分析を選択することができる。使用者は、また、ラジオボタン203で個々の歯の大きさまたはラジオボタン204で上顎および下顎弓の合計を入力するように選択することができる。この場合、使用者は6本の歯の分析を選択しかつ個々の歯の大きさを入力するように選択している。これらの選択はキーボード105またはマウス106を介して行われる。使用者が個々の測定よりむしろ合計を入力するように選択した場合、使用者は6本の歯の分析に関しては入力点207および208において、12本の歯の分析に関しては入力点209および210において合計を入力する。
【0024】
この段階において、使用者はキーボード105またはカリパス107を介して測定値を入力する。使用者が入力装置としてキーボード105を選択した場合、使用者はキーボード105を使用して指示された順序で測定値を入力し、かつキーボード105の入力キーを押す。本実施形態においては、測定値を入力する順序は、入力点206において示されているように取り込まれるべき測定値を強調することによって指示される。入力点206の上方には、右上の犬歯の平均の大きさ、7.91mmが示されている。
【0025】
使用者が入力装置としてカリパス107を選択した場合、使用者は各歯の近遠心幅を測定するためにカリパス107を使用し、かつ各測定の後カリパス107上の入力ボタンを押す。すべての測定値が入力された後、使用者は「印刷」ボタン211および/または「計算」ボタン212をクリックすべきである。「印刷」ボタン211は、すべての入力された測定値により図4に示されているような画面表示をプリントアウトする。「計算」ボタン212は、弓の大きさ、歯の大きさの相違、必要な矯正、および弧線の大きさの決定を実行し、結果として、例えば、図5に示されるような画面表示を生じる。
【0026】
図5は、図6および図7に示されるフローチャートを実行するプログラムの出力分析概要の画面表示を示している。この画面表示は、上顎弓合計213、下顎弓合計214、必要な解剖学的矯正215,216、および推奨される弧線の大きさ217を示している。この場合においては、上顎弓の合計は44.28mmそして下顎弓の合計は36.19mmである。必要な解剖学的矯正は2.6mmだけの上顎弓の増加または2.01mmだけの下顎弓の減少である。これは、上顎歯の近遠心幅が2.6mmだけ増加されるべきであり、そして下顎歯の近遠心幅が2.01mmだけ減少されるべきであることを示している。しかしながら、歯科矯正医は、また、2つの計算の組み合わせである処置を実行するように決定することも可能である。推奨される弧線の大きさ217は、この場合には、「小さい」である。
【0027】
歯の大きさの相違の原因となっている歯は、個々の歯の測定値のすべてを入力した後図4に示した画面表示を見ることより決定することができる。この特別な画面表示は、歯の測定値の上方または下方に各歯の平均の大きさを示している。上顎の歯に関しては、平均の大きさは各測定値の上方に表示されている。下顎の歯の平均の大きさは、各測定値の下方に表示されている。使用者は、各特定の歯に関して測定値を平均の大きさと比較することによって歯の大きさの相違の原因となっている歯を決定することができる。
【0028】
図6および図7は、歯の大きさの相違、必要な歯の大きさの矯正、歯の大きさの相違の原因となっている個々の歯、および本発明による弧線の大きさを決定するソフトウェアプログラムのフローチャートを示している。
【0029】
プログラムの実行の間中、使用者は、6本の歯の分析または12本の歯の分析が行われるのかどうかを示すためにキーボード105またはマウス106を介して6または12を選択する(ステップ301)。次に、プログラムは6本の歯または12本の歯の分析が選択されたかどうかを判断する(ステップ302および304)。使用者が6本の歯の分析を指示した場合には、理想的な数学的比率Rは0.772に設定される(ステップ303)。使用者が12本の歯の分析を指示した場合には、理想的な数学的比率Rは0.913に設定され(ステップ305)、それ以外の場合には、プログラムはプログラムの始めに戻る(ステップ301)。
【0030】
理想的な数学的比率Rが設定された後、プログラムは個々の歯の大きさまたは各弓の個々の歯の大きさの合計が入力されるかどうかを判断する(ステップ306)。合計が入力される場合には、使用者は上顎の歯の近遠心幅の合計Uを入力する(ステップ307)。同様に、使用者は下顎の歯の近遠心幅の合計Lを入力する(ステップ308)。個々の歯の近遠心幅が入力される場合には、使用者は上顎歯の個々の近遠心幅および上顎歯の近遠心幅の合計Uを入力するように促される(ステップ309)。同様に、使用者は下顎歯の個々の近遠心幅および下顎歯の近遠心幅の合計Lを入力するように促される(ステップ310)。
【0031】
次に、上顎および下顎弓の必要な解剖学的矯正が決定される。上顎弓に必要な解剖学的矯正Xの大きさは、略1/100mmに丸みが付けられる(ステップ311)。
【0032】
上顎弓に必要な解剖学的矯正Xが、次式、
X=L/R−U (1)
にしたがって決定される。
【0033】
下顎弓に必要な解剖学的矯正Yが、次式、
Y=(U×R)−L (2)
にしたがって決定される。
【0034】
次いで、上顎弓に必要な解剖学的矯正Xがゼロと比較される(ステップ312)。上顎弓に必要な解剖学的矯正Xがゼロより大きい場合、プログラムは、上顎弓の歯の近遠心幅が丸みを付けられたXだけ減少されるべきであることを出力する(ステップ313)。上顎に必要な解剖学的矯正Xがゼロより小さい場合、プログラムは、上顎弓の歯の近遠心幅が丸みを付けられたXだけ増加されるべきであることを出力する(ステップ314)。上顎弓に必要な解剖学的矯正がゼロに等しい場合、歯の大きさの相違はなくかつ解剖学的矯正は必要ない。
【0035】
次に、下顎弓に必要な解剖学的矯正Yの大きさが、略1/100mmに丸みを付けられる(ステップ315)。
【0036】
次いで、下顎弓に必要な解剖学的矯正Yがゼロと比較される(ステップ316)。必要な解剖学的矯正Yがゼロより大きい場合、プログラムは、下顎弓の歯の近遠心幅が丸みを付けられたYだけ減少されるべきであることを出力する(ステップ317)。必要な解剖学的矯正Yがゼロより小さい場合、プログラムは、下顎弓の歯の近遠心幅が下顎弓に関して丸みを付けられたYだけ増加されるべきであることを出力する(ステップ318)。下顎弓に必要な解剖学的矯正Yがゼロに等しい場合、歯の大きさの相違はなくかつ解剖学的矯正は必要ない。
【0037】
最後に、推奨される弧線の大きさが選択されそして使用者に表示される(ステップ319)。上顎の歯の合計が44.5mm以下である場合、1組の小さい弧線が上顎および下顎弓に関して選択される。上顎の歯の合計が44.5mmより大きいが49.4mmより小さい場合、1組の中位の弧線が上顎および下顎弓に関して選択される。上顎の歯の合計が49.4mm以上である場合、1組の大きい弧線が上顎および下顎弓に関して選択される。これらのパラメータは、ボルトンの科学的研究に使用された未処置の理想的な咬合を有する患者の上顎の前歯の大きさの平均の合計の標準偏差に基づいて決定された。
【0038】
上顎および下顎弓に必要な解剖学的矯正がいったん本発明にしたがって計算されたならば、歯科矯正医は通常の処置方法を選択することができる。歯科矯正医は、以下の方法の1つまたは組み合わせによって弓の大きさの相違を修正することができる。
1.歯間磨耗による選択された歯の近遠心幅の選択的なかつ測定された減少(必要な矯正によるエナメル面の減少)。
2.摘出。
3.必要な矯正にしたがって義歯の取り替えまたは歯の追加。
4.存在する歯の大きさを変更する複雑な追加、表面仕上げまたは人工歯冠を利用する義歯の処置。
【0039】
推奨された弧線は処置の全過程の間中使用されるべきである。本実施形態においては、選択された弧線は処置の全過程を通して、すなわち始めから終わりまで使用される。本発明による弧線の使用は3つの問題に対応している。第1に、歯の測定による弓の大きさの決定は、ほとんど例外なく、処置の結果が患者の顔および顎との、顔面および骨格の、機能的かつ審美的調和をもたらすことを保証する。第2に、本発明によって選択された弧線は、個々の患者の歯の大きさに適合しており、処置過程中の弓の過剰な膨張または収縮を防止する。第3に、本発明による弧線は、間違った方向に歯を動かし次いで歯を再び矯正することにより発生する「周遊」を防止することができる。かかる動きは重い医原性の後遺症を発生させるかもしれない。
【0040】
図8は、本発明による1組の小さい弧線、中位の弧線および大きい弧線を示す図である。各組は上顎弓および下顎弓用の弧線を含んでいる。上顎弓用の大きい弧線は略28.0875mmの曲率半径を有している。下顎弓用の大きい弧線は略25.4625mmの曲率半径を有している。上顎弓用の中位の弧線は略26.75mmの曲率半径を有している。下顎弓用の中位の弧線は略24.25mmの曲率半径を有している。上顎弓用の小さい弧線は略25.4125mmの曲率半径を有している。下顎弓用の小さい弧線は略23.0375mmの曲率半径を有している。弧線の各々の曲率半径は履歴的な患者のデータから決定されており、小さい弧線および大きい弧線は±標準偏差となっている。
【0041】
弧線は、例えば、ステンレス鋼および/またはニッケル−チタン(NiTi)から作られており、例えば、円形、矩形または正方形であってもよい。NiTiから作られた円形の弧線の大きさは、例えば、0.014インチ、0.016インチ、および0.018インチである。矩形のNiTi弧線の寸法は、例えば、0.016インチ×0.016インチ、0.016インチ×0.022インチ、0.017インチ×0.025インチ、0.018インチ×0.025インチ、0.02インチ×0.02インチ、および0.021インチ×0.028インチである。バイオフォース弧線の寸法は、例えば、0.016インチ×0.016インチ、0.016インチ×0.022インチ、0.018インチ×0.018インチ、0.018インチ×0.025インチ、0.02インチ×0.02インチ、および0.021インチ×0.028インチである。
【0042】
歯の大きさの相違、必要な矯正、および弧線の大きさは、部分的に、ボルトン分析による理想的な数学的比率を使用して決定される。「歯の大きさの不調和および不正咬合の分析および処置との関係」と題された論文に記載された最初のボルトン分析は、コーカサス人の患者のみを含んでいた。他の実施形態において、本発明は、他の人種に特定の、僅かであるが統計的に顕著な差異を補償するために、その計算を調整している。その方法および過程は同一であるが、個々の歯の理想的な比率および平均の大きさは、これらの統計的な差異に基づいて変化する。
【0043】
【発明の効果】
上述した説明から明らかなように、本発明の弧線選択装置および方法によれば、個々の患者の歯の大きさに基づいて理想的な大きさの弧線を選択することができる。また、本発明の解剖学的矯正決定装置および方法によれば、理想的な解剖学的矯正を決定することができる。さらに、本発明の弧線によれば、理想的な弧線が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明によるコンピュータ装置を示すブロック図である。
【図2】本発明によるプログラムの第1の画面表示を示す図である。
【図3】図2に示した画面表示からのプルダウンメニューの第2の画面表示を示す図である。
【図4】図6および図7に示されるフローチャートを実行するプログラムの第3の画面表示を示す図である。
【図5】図6および図7に示されるフローチャートを実行するプログラムの第4の画面表示を示す図である。
【図6】歯の大きさの相違、必要な解剖学的矯正、歯の大きさの相違の原因となっている個々の歯、および上顎および下顎弓用の推奨される弧線の大きさを決定するための本発明によるソフトウェアプログラムを示すフローチャートである。
【図7】歯の大きさの相違、必要な解剖学的矯正、歯の大きさの相違の原因となっている個々の歯、および上顎および下顎弓用の推奨される弧線の大きさを決定するための本発明によるソフトウェアプログラムを示すフローチャートである。
【図8】本発明による1組の小さい弧線、中位の弧線および大きい弧線を示す図である。
【符号の説明】
101 中央処理ユニット(プロセッサ)
102 第1記憶装置(フロッピーディスクドライブ)
103 第2記憶装置(ハードディスクドライブ)
104 ダイナミックメモリ装置(RAM)
105 入力/出力装置(キーボード)
106 入力/出力装置(マウス)
107 入力/出力装置(コンピュータ化されたカリパス)
108 入力/出力装置(レーザプリンタ)
109 入力/出力装置(モニタ)

Claims (24)

  1. 少なくとも1本の弧線を選択するための弧線選択装置において、
    複数の歯の大きさの少なくとも1つの合計および複数の歯の大きさのうち少なくとも一方を入力する入力装置と、
    前記入力装置にインターフェイスされかつ前記入力装置から前記少なくとも1つの合計および前記複数の歯の大きさのうち少なくとも一方を受信するプロセッサであって、前記入力装置から前記複数の歯の大きさを受信した際、前記複数の歯の大きさの関数として前記少なくとも1つの合計を決定しかつ前記少なくとも1つの合計の関数として少なくとも1本の弧線を選択する該プロセッサと、
    前記選択された少なくとも1本の弧線を表示する表示装置と、
    を備えてなることを特徴とする弧線選択装置。
  2. 前記入力装置がデジタルカリパスであることを特徴とする請求項1に記載の弧線選択装置。
  3. 前記少なくとも1つの合計が上顎弓の歯の大きさの合計および下顎弓の歯の大きさの合計を含み、前記プロセッサが前記上顎弓の解剖学的矯正および前記下顎弓の解剖学的矯正の少なくとも一方を前記上顎弓の歯の大きさの合計および前記下顎弓の歯の大きさの合計の関数として決定し、前記表示装置が前記上顎弓の解剖学的矯正および前記下顎弓の解剖学的矯正の少なくとも一方を表示することを特徴とする請求項2に記載の弧線選択装置。
  4. 前記プロセッサが、次式、
    X=L/R−U
    ここで、Xは上顎弓の解剖学的矯正、
    Lは下顎弓の歯の大きさの合計、
    Rは比率、
    Uは上顎弓の歯の大きさの合計、
    を使用して前記上顎弓の解剖学的矯正を決定することを特徴とする請求項3に記載の弧線選択装置。
  5. 前記比率が6本の歯の分析に関する0.772および12本の歯の分析に関する0.913の一方であることを特徴とする請求項4に記載の弧線選択装置。
  6. 前記プロセッサが、次式、
    Y=(U×R)−L
    ここで、Yは下顎弓の解剖学的矯正、
    Uは上顎弓の歯の大きさの合計、
    Rは比率、
    Lは下顎弓の歯の大きさの合計、
    を使用して下顎弓の解剖学的矯正を決定することを特徴とする請求項3に記載の弧線選択装置。
  7. 前記比率が6本の歯の分析に関する0.772および12本の歯の分析に関する0.913の一方であることを特徴とする請求項6に記載の弧線選択装置。
  8. 前記少なくとも1つの合計が上顎弓の歯の大きさの合計および下顎弓の歯の大きさの合計を含み、前記選択された少なくとも1本の弧線が上顎弓用の弧線および下顎弓用の弧線を含んでいることを特徴とする請求項1に記載の弧線選択装置。
  9. 前記入力装置がキーボードであることを特徴とする請求項1に記載の弧線選択装置。
  10. 上顎弓および下顎弓の少なくとも一方用の解剖学的矯正を決定するための解剖学的矯正決定装置において、
    少なくとも1つの歯の大きさを測定するカリパスと、
    前記カリパスにインターフェイスされ、前記カリパスから前記少なくとも1つの歯の大きさ受信し、前記少なくとも1つの歯の大きさの関数として複数の歯の大きさの少なくとも1つの合計を決定し、前記上顎弓および前記下顎弓の少なくとも一方用の前記解剖学的矯正を前記少なくとも1つの合計の関数として決定するプロセッサと、
    前記決定された解剖学的矯正を表示する表示装置と、
    を備えてなることを特徴とする解剖学的矯正決定装置。
  11. 前記少なくとも1つの合計が上顎弓の歯の大きさの合計および下顎弓の歯の大きさの合計を含み、前記プロセッサが前記上顎弓の歯の大きさの合計および前記下顎弓の歯の大きさの合計の関数として前記上顎弓および前記下顎弓の少なくとも一方の解剖学的矯正を決定することを特徴とする請求項10に記載の解剖学的矯正決定装置。
  12. 前記プロセッサが、次式、
    X=L/R−U
    ここで、Xは上顎弓の解剖学的矯正、
    Lは下顎弓の歯の大きさの合計、
    Rは比率、
    Uは上顎弓の歯の大きさの合計、
    を使用して前記上顎弓の解剖学的矯正を決定することを特徴とする請求項10に記載の解剖学的矯正決定装置。
  13. 前記比率が6本の歯の分析に関する0.772および12本の歯の分析に関する0.913の一方であることを特徴とする請求項12に記載の解剖学的矯正決定装置。
  14. 前記プロセッサが、次式、
    Y=(U×R)−L
    ここで、Yは下顎弓の解剖学的矯正、
    Uは上顎弓の歯の大きさの合計、
    Rは比率、
    Lは下顎弓の歯の大きさの合計、
    を使用して下顎弓の解剖学的矯正を決定することを特徴とする請求項10に記載の解剖学的矯正決定装置。
  15. 前記比率が6本の歯の分析に関する0.772および12本の歯の分析に関する0.913の一方であることを特徴とする請求項14に記載の解剖学的矯正決定装置。
  16. 少なくとも1本の弧線を選択するためのコンピュータ化された弧線選択方法において、
    プロセッサによって入力装置から複数の歯の大きさの少なくとも1つの合計および複数の歯の大きさのうち少なくとも一方を受信する工程と、
    前記複数の歯の大きさが受信される場合に、前記プロセッサによって前記少なくとも1つの合計を決定する工程と、
    前記プロセッサによって前記少なくとも1つの合計の関数として前記少なくとも1本の弧線を選択する工程と、
    を備えてなることを特徴とする弧線選択方法。
  17. さらに、前記選択された少なくとも1本の弧線を表示する工程を備えてなることを特徴とする請求項16に記載の弧線選択方法。
  18. 前記入力装置がデジタルカリパスであることを特徴とする請求項16に記載の弧線選択方法。
  19. 前記少なくとも1つの合計が上顎弓の歯の大きさの合計および下顎弓の歯の大きさの合計を含み、さらに、
    前記上顎弓の歯の大きさの合計および前記下顎弓の歯の大きさの合計の関数として前記上顎弓の解剖学的矯正および前記下顎弓の解剖学的矯正の少なくとも一方を前記プロセッサによって決定する工程と、
    前記上顎弓の解剖学的矯正および前記下顎弓の解剖学的矯正の前記少なくとも一方を表示する工程と、
    を備えてなることを特徴とする請求項16に記載の弧線選択方法。
  20. 前記上顎弓の解剖学的矯正および前記下顎弓の解剖学的矯正の少なくとも一方を決定する前記工程が、次式、
    X=L/R−U
    ここで、Xは上顎弓の解剖学的矯正、
    Lは下顎弓の歯の大きさの合計、
    Rは比率、
    Uは上顎弓の歯の大きさの合計、
    を使用して前記上顎弓の解剖学的矯正を決定する工程を含んでいることを特徴とする請求項19に記載の弧線選択方法。
  21. 前記比率が6本の歯の分析に関する0.772および12本の歯の分析に関する0.913の一方であることを特徴とする請求項20に記載の弧線選択方法。
  22. 前記上顎弓の解剖学的矯正および前記下顎弓の解剖学的矯正の少なくとも1つを決定する前記工程が、次式、
    Y=(U×R)−L
    ここで、Yは下顎弓の解剖学的矯正、
    Uは上顎弓の歯の大きさの合計、
    Rは比率、
    Lは下顎弓の歯の大きさの合計、
    を使用して下顎弓の解剖学的矯正を決定する工程を含んでいることを特徴とする請求項19に記載の弧線選択方法。
  23. 前記比率が6本の歯の分析に関する0.772および12本の歯の分析に関する0.913の一方であることを特徴とする請求項22に記載の弧線選択方法。
  24. 前記入力装置がキーボードであることを特徴とする請求項16に記載の弧線選択方法。
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