JP4424644B2 - ノイラミン酸化合物を含有する医薬 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、優れたシアリダーゼ阻害活性を有するノイラミン酸化合物(I)の水和物、結晶、及び、該水和物または結晶を有効成分として含有する医薬、特に抗インフルエンザ薬に関する。
【0002】
【従来の技術】
特開平10−330373号公報には、式(I)で表されるノイラミン酸化合物(以下、化合物(I)という)が開示されている。化合物(I)は優れたシアリダーゼ阻害作用を示し、インフルエンザ治療薬及び予防薬としての有用性が期待できる。しかし、本化合物を医薬の原体として実用化するには保存安定性、取り扱いの容易さが要求される。
【0003】
【特許文献1】
特開平10−330373号公報(第98ページ、実施例35)
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
発明者等は、化合物(I)について鋭意検討を行った結果、化合物(I)の水和物が優れた安定性を示す結晶として得られることを見出した。化合物(I)の水和物結晶は、特開平10-330373号公報に実施例35として記載された化合物(I)のトリフルオロ酢酸塩と比較して、保存安定性及び取り扱いの容易性が著しく改善されており、医薬として実用化する上で極めて有用であることを見出し、本発明を完成した。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、
(1) 式(I)
【0006】
【化3】
【0007】
で表される化合物の水和物、
(2) 式(I)
【0008】
【化4】
【0009】
で表される化合物を含有する結晶、
(3) (2)において、式(I)で表される化合物の水和物結晶、
及び
(4) (2)及び(3)において、銅のKα線の照射で得られる粉末X線回折において、面間隔が4.0、4.4、4.7、7.5及び10.2オングストロームに主ピークを示す式(I)で表される化合物の水和物結晶
である。
本発明の結晶は、その内部構造が三次元的に構成原子(又はその集団)の規則正しい繰り返しでできている固体をいい、そのような規則正しい内部構造を持たない無定形の固体とは区別される。
【0010】
同じ化合物の結晶であっても、結晶化の条件によって、複数の異なる内部構造及び物理化学的性質を有する結晶(結晶多形)が生成することがあるが、本発明の結晶は、これら結晶多形のいずれであってもよく、2以上の結晶多形の混合物であっても良い。
【0011】
化合物(I)は分子内にグアニジノ基及びカルボキシル基を有するので、薬理的に毒性を示さない酸又は塩基と結合して薬理上許容される塩を形成することができる。
【0012】
薬理上許容される塩としては、例えばフッ化水素酸塩、塩化水素酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩のようなハロゲン化水素酸塩;硝酸塩、過塩素酸塩、硫酸塩、りん酸塩のような無機酸塩;メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、トリフルオロメタンスルホン酸塩のようなアルカンスルホン酸塩;ベンゼンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩のようなアリールスルホン酸塩;酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、しゅう酸塩、マレイン酸塩のような有機酸塩;グリシン塩、リジン塩、アルギニン塩、オルニチン塩、グルタミン酸塩、アスパラギン酸塩のようなアミノ酸塩;リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩のようなアルカリ金属塩;カルシウム塩、マグネシウム塩のようなアルカリ土類金属塩;アルミニウム塩、鉄塩、亜鉛塩、銅塩、ニッケル塩、コバルト塩のような金属塩;アンモニウム塩、t−オクチルアミン塩、ジベンジルアミン塩、モルホリン塩、グルコサミン塩、エチレンジアミン塩、グアニジン塩、ジエチルアミン塩、トリエチルアミン塩、ジシクロヘキシルアミン塩、プロカイン塩、エタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、ピペラジン塩、テトラメチルアンモニウム塩のような有機アミン若しくは有機アンモニウム塩等を挙げることができ、好適にはリチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩のようなアルカリ金属塩;酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩のような有機酸塩;または塩酸塩、硫酸塩のような無機酸塩である。
【0013】
また、化合物(I)及びその薬理上許容される塩は、大気中に放置したり、水又は有機溶媒と混和することによって水又は溶媒を吸収し、水和物又は溶媒和物を形成する場合がある。
【0014】
本発明の化合物(I)を含有する結晶は、化合物(I)からなる結晶に加え、化合物(I)の薬理上許容される塩、水和物または溶媒和物からなる結晶を包含する。これら化合物(I)を含有する結晶のうち好適には水和物結晶である。
【0015】
本発明の化合物(I)を含有する結晶の一形態として、例えば、銅のKα線(波長λ=1.54オングストローム)の照射で得られる粉末X線回折において、面間隔d=4.0、4.4、4.7、7.5及び10.2オングストロームに主ピークを示す結晶を挙げることができる。ここで主ピークは面間隔d=4.7オングストロームを示すピークの強度を100としたときの相対強度が80以上のピークである。尚、図面1の粉末X線解析パターンにおいて縦軸は回折強度をカウント/秒(cps)単位で示し、横軸は回折角度2θ(度)を示す。また、面間隔d(単位:オングストローム)は、式 2dsinθ=nλ においてn=1として算出することができる。
【0016】
【発明の実施の形態】
化合物(I)またはその薬理上許容される塩は、特開平10-330373号公報に開示された方法又はそれに準ずる方法に従って製造することができる。
【0017】
化合物(I)を含有する結晶は、化合物(I)またはその薬理上許容される塩を適当な溶媒に溶解し、pHの調整、溶液の濃縮、良溶媒と貧溶媒の混合等を行い、化合物(I)、その薬理上許容される塩または溶媒和物(水和物を含む)を過飽和状態に導いて析出させることによって製造することができる。
【0018】
結晶の析出は、反応容器中で自然に開始し得るが、種結晶の接種、超音波刺激、反応器の表面を擦る等の機械的刺激を与えることによっても開始又は促進させることができる。
【0019】
より具体的には、本発明の化合物(I)を含有する結晶(特に水和物結晶)は、化合物(I)またはその薬理上許容される塩を含む水溶液を、必要に応じて、適切なpHに調節し、濃縮し、冷却することにより結晶を析出させ、次いで析出した結晶を単離することによって製造することができる。
【0020】
また、化合物(I)を含有する結晶(特に水和物結晶)は、これを含む水溶液を逆相シリカゲルカラムにて精製し、化合物(I)を含む分画を、必要に応じて、濃縮し、冷却することにより結晶を析出させ、ついで析出した結晶を単離することによっても製造することができる。
【0021】
得られた結晶は、再結晶やスラリー精製によって、その純度及び品質を向上させることができる。
【0022】
化合物(I)を含有する結晶(特に水和物結晶)を結晶化させるための温度としては、0乃至40℃が好ましく、更に好適には20乃至30℃である。
【0023】
化合物(I)を含有する結晶(特に水和物結晶)を結晶化させるために適切なpHとしては、化合物(I)の水和物の水に対する溶解度が小さいpH4乃至9が好ましく、更に好適には5乃至7である。
【0024】
析出した結晶は、例えば、ろ過、遠心分離、または傾斜法によって単離することができる。単離した結晶は必要に応じて適当な溶媒で洗浄することができる。
【0025】
水和物結晶を洗浄する場合、例えば水、エタノール、イソプロパノール、アセトン、酢酸エチル、トルエン、アセトニトリル、酢酸メチルまたはエーテルのような溶媒を使用することができ、好適には水、アセトン、酢酸エチル又はトルエンである。
【0026】
単離した結晶(特に水和物結晶)は、通常10乃至100℃の温度で、好ましくは30乃至50℃の温度で重量がほぼ一定になるまで乾燥させることができる。結晶の乾燥は、必要に応じて、シリカゲルまたは塩化カルシウムのような乾燥剤の存在下、または、減圧下で行うこともできる。
【0027】
乾燥した結晶(特に水和物結晶)は、通常10乃至30℃の温度、20%乃至90%の相対湿度で好ましくは20乃至30℃の温度、50%乃至80%の相対湿度で重量がほぼ一定になるまで吸湿させてもよい。
【0028】
化合物(I)またはその薬理上許容される塩の逆相シリカゲルカラム精製に用いる溶離液は水、アセトン、アセトニトリル、メタノール、エタノール及びこれらの混合溶媒であり、好適には水、メタノール及びその混合溶媒である。逆相シリカゲルとしては、シリカゲル表面がアルキル基等の有機残基で修飾されたものを用いることができるが、好適にはオクタデシル基で修飾されたものである。
【0029】
再結晶は、化合物(I)を含有する結晶を良溶媒に溶解させ、貧溶媒を加えることによって結晶を析出させる等、有機合成化学の分野で通常使用される方法によって達成される。
【0030】
化合物(I)の水和物結晶の再結晶に用いる良溶媒としては、例えばメタノール、エタノールのようなアルコール類を挙げることができ、好適にはメタノールである。
【0031】
化合物(I)の水和物結晶の再結晶に用いる貧溶媒としては、例えば水、ヘキサン、ジイソプロピルエーテル、t-ブチルメチルエーテル等を挙げることができ、好適には水、ヘキサンまたはジイソプロピルエーテルであり、更に好適には水またはジイソプロピルエーテルである。
【0032】
スラリー精製とは、化合物の結晶を適切な溶媒に懸濁させて撹拌したのち、結晶を再び単離する操作である。水和物結晶のスラリー精製に用いる溶媒としては、例えばアセトン、メチルエチルケトン、酢酸メチル、酢酸エチル、アセトニトリル、塩化メチレン、トルエン、エタノール、イソプロパノール、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミド、水、ヘキサン、ジイソプロピルエーテル、エーテル等を挙げることができ、好適にはアセトン、メチルエチルケトン、酢酸メチル、酢酸エチル、アセトニトリル、エタノールまたはイソプロパノールであり、更に好適にはアセトンまたは酢酸エチルである。
【0033】
再結晶及びスラリー精製で得られた結晶についても、上記と同様にして単離することができる。
【0034】
化合物(I)を含有する結晶(特に水和物結晶)を医薬、特にインフルエンザの治療剤または予防剤として使用する場合には、それ自体あるいは適宜の薬理学的に許容される、賦形剤、希釈剤等と混合し、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、シロップ剤、注射剤、軟膏剤、液剤、懸濁剤、エアゾール剤、トローチ剤等によって投与することができる。本発明の医薬は、経口的または非経口的に投与することができるが、有効成分である化合物(I)が肺または気道(口腔内及び鼻腔内を含む)へ直接送達され得る方法によって投与されることが好ましい。
【0035】
これらの製剤は、賦形剤(例えば、乳糖、白糖、ブドウ糖、マンニット、ソルビットのような糖類;トウモロコシデンプン、馬鈴薯デンプン、α−デンプン、デキストリン、カルボキシメチルデンプンのようなデンプン誘導体;結晶セルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、内部架橋カルボキシメチルセルロースナトリウムのようなセルロース誘導体;アラビアゴム;デキストラン;プルラン;軽質無水珪酸、合成珪酸アルミニウム、メタ珪酸アルミン酸マグネシウムのような珪酸塩類;リン酸カルシウムのようなリン酸塩類;炭酸カルシウムのような炭酸塩類;硫酸カルシウムのような硫酸塩類等)、結合剤(例えば、前記の賦形剤;ゼラチン;ポリビニルピロリドン;マグロゴール等)、崩壊剤(例えば、前記の賦形剤;クロスカルメロースナトリウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、架橋ポリビニルピロリドンのような化学修飾された、デンプンまたはセルロース誘導体等)、滑沢剤(例えば、タルク;ステアリン酸;ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウムのようなステアリン酸金属塩;コロイドシリカ;ビーガム;ビーズワックス、ゲイロウのようなワックス類;硼酸;グリコール;フマル酸、アジピン酸のようなカルボン酸類;安息香酸ナトリウムのようなカルボン酸ナトリウム塩;硫酸ナトリウムのような硫酸類塩;ロイシン;ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸マグネシウムのようなラウリル硫酸塩;無水珪酸、珪酸水和物のような珪酸類;前記の賦形剤におけるデンプン誘導体等)、安定剤(例えば、メチルパラベン、プロピルパラベンのようなパラヒドロキシ安息香酸エステル類;クロロブタノール、ベンジルアルコール、フェニルエチルアルコールのようなアルコール類;塩化ベンザルコニウム;フェノール、クレゾールのようなフェノール類;チメロサール;無水酢酸;ソルビン酸等)、矯味矯臭剤(例えば、通常使用される、甘味料、酸味料、香料等)、懸濁化剤(例えば、ポリソルベート80、カルボキシメチルセルロースナトリウム等)、希釈剤、製剤用溶剤(例えば、水、エタノール、グリセリン等)等の添加物を用いて周知の方法で製造される。
【0036】
その使用量は投与される者の症状・体重・年齢等により異なるが、1日当たり下限0.1mg(好適には1mg)、上限1000mg(好適には、500mg)を、1日当り1乃至数回、症状に応じて投与することが望ましい。
【0037】
【実施例】
以下に実施例、製剤例及び試験例を示し、本発明を更に詳細に説明する。
(製造例1)
5−アセタミド−4−グアニジノ−9−O−オクタノイル−2、3、4、5−テトラデオキシ−7−O−メチル−D−グリセロ−D−ガラクト−ノン−2−エノピラソン酸水和物結晶
(1)特開平10−330373号公報の実施例35(i)の化合物、5−アセタミド−4−(N,N’−ビス−t−ブチロキシカルボニル)グアニジノ−9−O−オクタノイル−2,3,4,5−テトラデオキシ−7−O−メチル−D−グリセロ−D−ガラクト−ノン−2−エノピラノソン酸ジフェニルメチル(3.46g、4.1mmol)を塩化メチレン(27ml)、トリフルオロ酢酸(14ml)に溶解し、室温で終夜攪拌した。反応液を減圧下濃縮乾固した後、トルエン(5ml)で3回共沸乾固した。得られた油状物を酢酸エチル(10ml)に溶解した。一方、本溶液を飽和重曹水(50ml)に注加し、20%炭酸ナトリウム水溶液を加えpH8.5にした。室温で3時間攪拌した後、塩酸(3ml)でpH5.0に調整し、室温で1時間攪拌した。更に氷冷下1時間撹拌後、結晶を吸引ろ過し、外温50℃にて10時間真空乾燥した。空気中で1日間放置し、標記目的化合物を結晶として得た。(0.97g、51%)
赤外線吸収スペクトル(KBr)νmax cm-1: 3412, 2929, 2856, 1676, 1401, 1320, 1285, 1205, 1137, 722.
1H核磁気共鳴スペクトル(400MHz, CD3OD)δppm: 5.88(1H, d, J=2.5 Hz), 4.45 (3H, m), 4.27 (1H, dd, J=10.0 Hz, 10.0 Hz), 4.15 (1H, m), 3.47 (2H, m), 3.42 (3H, s), 2.37 (2H, t, J=7.4 Hz), 2.10 (3H, s), 1.31 (2H, m), 1.20-1.40 (8H, m), 0.85-0.95 (3H, m).
13C核磁気共鳴スペクトル(100MHz, CD3OD)δppm: 176.5, 173.7, 164.7, 158.9, 146.7, 108.7, 80.1, 78.0, 69.3, 66.8, 61.4, 52.4, 35.1, 32.8, 30.2, 30.1, 26.0, 23.7, 22.8, 14.4.
本結晶について、銅のKα線(波長λ=1.54オングストローム)の照射で得られる粉末X線回折パターンを図1に示す。尚、粉末X線解析パターンの縦軸は回折強度をカウント/秒(cps)単位で示し、横軸は回折角度2θ(度)を示す。
(2)標記化合物は次の方法によっても得られた。
【0038】
特開平10−330373号公報の実施例35(ii)の化合物、5−アセタミド−4−グアニジノ−9−O−オクタノイル−2、3、4、5−テトラデオキシ−7−O−メチル−D−グリセロ−D−ガラクト−ノン−2−エノピラソン酸トリフルオロ酢酸塩(3.0g、5.1mmol)を逆相カラムクロマトグラフィー(ナカライテスク社製コスモシル75C18PREP、100g)に付し、メタノール−水(0:1、1:1、2:1)を用いてメタノール含量を上げながら溶出させた。目的物を含む分画を減圧下濃縮し、析出した結晶を吸引ろ過し、減圧下乾燥した。空気中で1日間放置し、標記目的化合物を結晶として得た(1.2g、49%)。なお、得られた化合物の物性データは上記(1)で得られたものと完全に一致した。
(試験例1)安定性試験
本発明の製造例1の化合物(I)の結晶および対照として特開平10−330373号公報に実施例35として記載されている化合物(I)の非晶形粉末(トリフルオロ酢酸塩)を40℃、相対湿度75%のデシケーター中で保存し、14日(2週)、28日(4週)、56日(8週)後の残存率を測定した。結果を表1に示す。更に、別途、60℃、シリカゲルデシケーター中での14日(2週)、28日(4週)、56日(8週)後の残存率を測定した。結果を表2に示す。
【0039】
化合物の残存率(%)は高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて測定した化合物の残存率から求めた。なお、HPLC測定条件は次の通りである。
【0040】
カラム:化学物質評価研究機構製 L-column ODS(4.6mm I.D x 250mm)
移動相:0.1mol/リン酸緩衝液(pH3):アセトニトリル(7:3)
流量 :1mL/min
検出 :230nm
カラム温度:30℃
表1に示すように、化合物(I)の非晶形粉末(トリフルオロ酢酸塩)は40℃、加湿状態で極めて安定性が低く、56日後には10.2%程度の含量に低下した。これに対して、本発明の化合物(I)の結晶(水和物結晶)は、同条件で100%の残存率を示し、極めて高い保存安定性を有する。
表2に示すように、化合物(I)の非晶形粉末(トリフルオロ酢酸塩)は、60℃、乾燥状態でも安定性が低く、56日後には89%程度の含量に低下した。これに対し、本発明の化合物(I)の結晶(水和物結晶)は、同条件で99%以上の高い残存率を示し、極めて高い保存安定性を有する。
(試験例2)
5-アセタミド-4-グアニジノ-9-O-オクタノイル-2、3、4、5-テトラデオキシ-7-メトキシ-D-グリセロ-D-ガラクト-ノン-2-エノピラソン酸水和物結晶の抗インフルエンザ効果
5−6週令のBalb/Cマウス(メス)をクロロホルム/エーテル(1:1)で充満した麻酔瓶の中にいれ、麻酔をかけた。麻酔マウスに生理食塩水に溶解した化合物(水和物結晶)の溶液50μLを投与量が0.3μmol/kgとなるよう鼻腔内に滴下投与した。その投与から10日あるいは7日あるいは5日あるいは3日あるいは4時間後に同様に麻酔したマウスにインフルエンザウイルスA/PR/8/34株(1,500 plaque formation units)を感染させた。感染後20日までマウスの生死を観察した。
【0041】
結果として、非投与マウスが感染後6日までに全数が死亡するのに対し、10日前投与マウス、7日前投与マウスは全数が死亡するのに、それぞれ8日、11日を要した。5日前、3日前、4時間前投与マウスは感染後20日の時点でも生存マウスがおり、その時点での生存率はそれぞれ、50%、83%、100%であった。これらの結果は、本化合物(水和物結晶)がインフルエンザの治療効果を有し、予防効果も有することを示す。
(製剤例1)液剤1
製造例1の化合物が10%(W/W)、塩化ベンザルコニウムが0.04%(W/W)、フェネチルアルコールが0.40%(W/W)、精製水が89.56%(W/W)となるように液剤を調整する。
(製剤例2)液剤2
製造例1の化合物が10%(W/W)、塩化ベンザルコニウムが0.04%(W/W)、ポリエチレングリコール400が10%(W/W)、プロピレングリコールが30%(W/W)、精製水が39.96%(W/W)となるように液剤を調整する。
(製剤例3)散剤
製造例1の化合物が40%(W/W)、ラクトースが60%(W/W)となるように散剤を調整する。
(製剤例4)エアゾール剤
製造例1の化合物が10%(W/W)、レシチンが0.5%(W/W)、フロン11が34.5%(W/W)、フロン12が55%(W/W)となるようにエアゾール剤を調整する。
【0042】
【発明の効果】
本発明の化合物(I)を含有する結晶(特に水和物結晶)は、非晶形のトリフルオロ酢酸塩と比較して保存安定性に優れ、実用的に取り扱いやすい結晶であるので、医薬(特にインフルエンザの治療剤又は予防剤)の有効成分として有用である。また、化合物(I)の水和物は優れた結晶を与える分子形態として有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、製造例1で得られた5−アセタミド−4−グアニジノ−9−O−オクタノイル−2、3、4、5−テトラデオキシ−7−O−メチル−D−グリセロ−D−ガラクト−ノン−2−エノピラソン酸水和物結晶について、銅のKα線(波長λ=1.54オングストローム)の照射で得られる粉末X線回折パターンである。尚、粉末X線解析パターンの縦軸は回折強度をカウント/秒(cps)単位で示し、横軸は回折角度2θ(度)を示す。なお、面間隔d(オングストローム)は、式 2dsinθ=nλ においてn=1として算出することができる。
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