JP4422342B2 - せん妄の治療へのコリン作動性中枢神経系エフェクターの使用 - Google Patents

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Description

【0001】
アセチルコリン((2−アセトキシエチル)トリメチルアンモニウムヒドロキシド)は、コリン作動性シナプスの神経伝達物質である。コリン作動性シナプスは、副交感神経の神経路全体、神経節前の交感神経線維、末梢運動神経および中枢神経系のほとんどすべての領域(中枢神経系のあらゆるコリン作動性シナプス)に存在している。
【0002】
アセチルコリンは、軸索のシナプス前部の膜の周辺で、コリン−O−アセチルトランスフェラーゼ酵素によるコリンのアセチル化によって形成され、シナプス小胞に貯えられる。シナプス前部の神経細胞が興奮するとCaイオンが流入してシナプス間隙にアセチルコリンが放出される。アセチルコリンはシナプス後部にある特殊な受容体(「アセチルコリン受容体」)に結合し、その結果、シナプス後部細胞に信号が伝達される。その場合、シナプス細胞としては、たとえば、神経細胞、筋肉細胞または腺細胞が可能である。アセチルコリンが、アセチルコリンエステラーゼによってコリンとアセタートに分解されると、興奮状態は終了し、再び興奮状態を受ける態勢が準備される。そこで再びコリンはシナプシス前部に吸収され、再利用される。
【0003】
アセチルコリン受容体は、作動物質であるムスカリンおよびニコチンに対する反応性の違いから大きく2つのタイプに分類され、それぞれムスカリン性アセチルコリン受容体およびニコチン性アセチルコリン受容体と呼ばれる。
【0004】
ニコチン性受容体は、交感神経節および副交感神経節、神経筋終板および脳に存在している。ニコチン性受容体が脳に存在することは、学習、すなわち学習能力に対するニコチンの作用、およびアルツハイマー病と関連している。ニコチン性アセチルコリン受容体は、最もよく研究されている神経伝達物質受容体であって、5本のポリペプチド鎖(2本のα鎖、それぞれによって1本のβ鎖、γ鎖およびδ鎖)で構成され、膜内に5角形の孔を形成している。この孔は、陽イオンのチャンネルとして働き、アセチルコリンが2つのサブユニットに結合すると、チャンネルが開く。各種のヘビ毒(たとえば、αブンガロトキシン、コブラトキシン)、ヤリ毒クラーレ((+)ツボクラリン)、ロフォトキシンおよびアセチルコリンに代わって結合しうる若干の4級アンモニウム塩は、このイオンチャンネルに対する阻害剤である。さらに、個数は不明であるが(少なくとも3個)ニコチン性アセチルコリン受容体のサブタイプが存在する。
【0005】
ムスカリン性受容体は、ただ1本のポリペプチド鎖から成り、Gタンパク質や、ホスホリパーゼC又はアデニレートシクラーゼのようなさまざまなエフェクターに影響を及ぼす。この受容体の薬理学的な特性は5種類のサブユニットによって規定され、中枢神経系には、主としてM受容体とM受容体が存在し、M、MおよびM受容体はほんのわずかしか存在しない。M受容体とM受容体の興奮作用と、それらが海馬に存在することは、これらの受容体が活性化される際に、正の認識効果を期待させる。それに対して、M受容体は阻害作用を獲得するため、認知不全の改善に何ら期待するものはない。しかしこれに対して、M受容体に対する作動物質は、コリン作動性中枢神経系を活性化する。
【0006】
アセチルコリンと匹敵する興奮伝達作用を有する薬物は、コリン作動薬または副交感神経類似作動薬と呼ばれ、これらの過程を妨害する薬物、すなわち、たとえばアセチルコリン受容体を阻害する薬物は、抗コリン作動薬または副交感神経遮断薬と呼ばれる。
【0007】
アセチルコリンエステラーゼは、4種類の同等なサブユニットから成っており、セリンエステラーゼグループに属している。この酵素1モルは、1秒間に約25,000モルのアセチルコリンを加水分解する。こうした極めて高い変換速度は、アセチルコリンによって伝達される神経パルスを適時に消去する(シナプス間隙に存在するアセチルコリンが0.1msで完全に加水分解される)ために不可欠である。アセチルコリンエステラーゼを(可逆的に)阻害する物質としては、臭化デメカリウム、ネオスチグミン、臭化ピリドスチグミンおよびフィゾスチグミンならびにそれらの類縁カルバミン酸エステル類が知られている。それに対して、ジイソプロピルフルオロホスファート、パラチオン(=E605)、テトラスチグミンまたは有機リン化合物(その一部は毒ガスまたは農薬として使用されている。その例をあげればホスゲン、アルキルホスファートなど)は不可逆的に阻害する。
【0008】
アセチルコリンエステラーゼ阻害剤以外に、(アセチルコリン以外に)ベタネコール、カルバコール及びメタコリンなどのコリンエステル、並びにムスカリン及びピロカルピンなどのアルカロイドも副交感神経類似作動薬と考えることができる。さらに、フィゾスチグミン及びガランタミンなどのコリンエステラーゼ阻害剤ばかりでなく、たとえば(+)−2−メチルピペリジンもニコチン作動性アセチルコリン受容体のチャンネルアクチベーターとして作用する。ニコチン性(ニコチン、シチシン、ロベリン、アナトキシン−a、エピバチジン、2,4−ジメチルシンナミリデン=アナバシン、2,4−ジメチルオキシベンジリデン=アナバシンおよび、ニコチンのイソオキサゾール同配体、ABT−418)受容体及びムスカリン性受容体−作動薬(RS86、アレコリン、オキソトレモリン、AF102B、アザスピロデカンなど)も存在する。
【0009】
ここ数年、アルツハイマー痴呆症に見られる中枢神経におけるアセチルコリンの欠損を抑制して脳の機能を改善する薬物が、この病気の治療に使用できるようになってきた。オーストリアでは、ガランタミン(Nivalin(登録商標))、タクリン(Cognex(登録商標))、ドネペジル(Aricept(登録商標))及びリバスチグミン(Exelon(登録商標))がこの適応に許可されている。さらに中枢神経系アセチルコリンエステラーゼ阻害剤の開発が世界中で進められている(たとえば、Metrifonate(登録商標)、バイヤー・コーポレーション;Synapton(登録商標);Galantamine−Remyl,ヤンセン・ファーマシュテイカ;Eptastigmine,メジオラヌム;Velnacrine、ヘキスト−ルセル;Suronacrine,ヘキスト−ルセル;Huperzine A,中国科学アカデミー;NX−066,アストラ・アーカス;KA−672,Schwabe;など)。また、現在、アルツハイマー型痴呆症に対してコリン作動系作動薬、特にM1作動薬の効果が臨床段階または臨床前の段階で試験されている(たとえば、Memic(登録商標)、スミスクライン・ビーチャム;Talsaclidine(登録商標)、ベーリンガー・インゲルハイム・ファーマシューテイカルズ;など)。アセチルコリンエステラーゼ非経口阻害剤、フィゾスチグミンは、数十年にわたって、抗コリン作動物質(アトロピン、抗うつ剤、神経弛緩薬)による中毒の解毒剤として世界中のほとんどすべての国でアンプルの形で許可されている。オーストリアでは「中枢神経系抗コリン作動性症候群の中毒の解毒」を適応とする抗コリンアンプル剤として許可されている。
【0010】
器質的な慢性精神障害である痴呆症ばかりでなく、精神医学の歴史的な経緯の中で全く異なった病名が与えられている器質的な急性精神病も存在する。現在、精神病に関する2つの国際的診断体系が、急性の錯乱状態について論じており、「Delir(せん妄)」という用語を同義語として使用している。急性の錯乱状態は、中枢神経系の機能が急性的に障害を受けて発症するものであって、脳組織に構造的な損傷がなくても、あらゆる年齢層に現れる可能性がある。もちろん急性錯乱状態の出現のリスクは、高齢者で高いが、痴呆症の内科病棟でも急性錯乱状態の患者は約25%に過ぎない(Erkinjunttiら、(1986)Int Med 146:1923〜1926)。痴呆症の患者に見られるように脳に既往の損傷があると、急性機能障害において錯乱状態に発展する危険性が高くなる。急性錯乱状態になる原因はきわめて多い。
【0011】
最も頻度の高い錯乱状態は、内科的な疾患によって引き起こされるか、負傷または手術後の内科病棟及び外科病棟に現れる。また、急性錯乱状態は、抗コリン作動性でない中毒後(たとえば、リチウム中毒、個々の事例の記述を参照)または物質からの離脱(アルコールからの離脱、トランキライザーからの離脱)の際にも現れる。急性錯乱状態は入院を要し、原因となる疾患併発率および死亡率が高くなる。現在、その治療は、その原因(たとえば、血圧の上昇、肺炎における抗生物質の投与)を除く試みを通して行われ、自己または他者に対する危害の危険性がある場合には、錯乱し興奮しやすい患者に対して、効力は大きいが副作用の激しい神経弛緩薬が使用される。
【0012】
一般にせん妄と言えば、抗コリン作動的に作用する物質の投与によって現れる抗コリン作動性のせん妄を指す。それに対して、抗コリン作動性でないせん妄は、抗コリン作動的に作用する物質を前に(通常48〜72時間前)投与していなくても現れるせん妄を言う。
【0013】
従って、せん妄を治療する場合、現在では特に器質的な治療が治療法の中心となる。しかし原因を究明し、それに合わせてせん妄の(薬物)治療を行おうとすると、考えられる原因の数がきわめて多く多大な費用と時間がかかるため、迅速に治療することは通常困難である。そこで、まず薬物に起因するせん妄を常に想定し、生命の危機に関わらない、そしていかなる場合でも抗コリン作動的に作用する、薬物、および血液−脳関門を通過する薬物の使用を中止する。それとともに、幻覚が激しく、夜間睡眠時に他の患者の妨害になるせん妄患者は、症状的に効力の高い神経弛緩薬(たとえば、ハロペリドール)による治療を実施しなければならない。せん妄患者に対するこのような神経弛緩薬は、適応と用量が適切か毎日点検しなければならない。
【0014】
他方、急性錯乱状態は高齢者の痴呆及びうつ症候群より発生率が高いため(入院時のある時点で70才を超える高齢者の患者の30ないし50%に急性錯乱状態が観察される)、迅速で万能的に適用できる治療法への要求が高い。
【0015】
全体として、内科または外科の入院患者のおよそ10%は、入院中に錯乱を経験するものと推定される(Lipowski,JAMA 258(1987),1789〜1792)。
【0016】
従って、本発明の課題は、費用のかかる原因の究明を行わないで、迅速かつ万能的に適用が可能な、抗コリン作動性でないせん妄状態の治療を使用可能にし、急性錯乱状態を迅速かつ確実に改善、治癒又は阻止することができるようにすることである。
【0017】
せん妄を改善、治癒又は阻止するというこの課題は、この抗コリン作動性でないせん妄の治療に、コリン作動性中枢神経系の活性を直接に又は間接に高める薬物、たとえばアセチルコリンエステラーゼ阻害剤、コリン類似のシナプス後部受容体作動薬、特にM受容体及びM受容体作動薬、ニコチン性シナプス後部受容体作動薬、コリン作動系における自己受容体作動薬、アセチルコリン受容体チャンネルアクチベーター、M受容体作動薬及びこれらの物質の組み合わせを使用することによって解決される。
【0018】
従って、本発明の対象は、抗コリン作動性でないせん妄を治療又は阻止するための調剤の製造に、コリン作動性中枢神経系エフェクターを使用することである。驚いたことに、本発明に従う治療によれば、急性錯乱状態が、たとえ抗コリン作動性でないせん妄と1次的な関連がないように見えても、これに対して迅速かつ効果的に打ち勝つことができる。これまでは、本発明に従って処置されるせん妄とコリン作動系との関連が想定されなかったため、もっぱら薬物によって誘発される抗コリン作動性のせん妄が疑われた場合にのみ、フィゾスチグミンが、コリンエステラーゼ阻害剤として非経口投与され(通常、抗コリン作動性せん妄はこれによって解決し、患者の症状は改善される)、抗コリン作動性でないせん妄の場合にこの種の薬物を投与することは考慮されてこなかった。
【0019】
コリン作動性中枢神経系エフェクターとは、本発明に従って、関与するアセチルコリンの量を多くするか(たとえばアミノピリジン)、アセチルコリンの分解を減らすか(またはアセチルコリンの分解を遅くする)(たとえばコリンエステラーゼ阻害剤)、又はコリン作動性中枢神経系を興奮させるか(たとえばムスカリン性作動薬及び/又はニコチン性作動薬)、又はこのシナプスに対する抗コリン作動作用を強化することによって(アセチルコリン−受容体チャンネル−アクチベーター)、又はコリン作動系の自動受容体−作動薬、コリン作動性シナプスの活性を改善する薬物を意味する。
【0020】
従って、本発明によれば、失血した患者、術中に低酸素状態が発生した患者、術前の認知能力が低い患者、又は非常に高齢の患者で、手術が長時間にわたった場合、すなわち、術後にせん妄が現れる危険性がある場合、その患者に対して、せん妄が発現しないようにコリン作動系のアクチベーターで処置することができる(せん妄の二次的な防止)。
【0021】
しかし、本発明によって、ほとんどの急性錯乱状態は、病理生理学的見て、おそらくいくつかの伝達系に、機能の不釣り合いが生じていることに原因があり、おそらくモノアミン作動系が相対的に強くなり、それに対してコリン作動系の活動が相対的に弱まっていることが裏付けられた。
【0022】
このことを糸口にすれば、コリン類似作用による治療によって、抗コリン作動性のせん妄ばかりでなく、あらゆるせん妄に打ち勝ち、短縮し又は解決することができる。このことは個々の症例の観察において明確に確認される。
【0023】
以上に述べたように、本発明は、薬物、たとえばリバスチグミン、ガランタミン、タクリン又はドネペジルといった最新のアセチルコリンエステラーゼ阻害剤、又は直接若しくは間接的なコリン類似作動性作用部位を持つ後続の調剤による、コリン作動系の活性化によって、あらゆる種類の、そしてあらゆる原因による急性錯乱状態を治療する方法に関する。抗コリン作動性せん妄の場合、この治療法は−常に原因の克服を目指した従来の治療指針に基づいて−容易に推測がつくのに対して、他のすべてのせん妄の場合は、この治療法は、アルツハイマー型痴呆症の治療に対して開発された、又は現在開発中のこれらの薬剤の、全く新規な治療上の適応である。
【0024】
急性錯乱状態又はせん妄の定義は、その歴史の中でしばしば曖昧であった。たとえば、「器質的精神病」という用語は、K.Boefferによって使用され、急性「外来反応タイプ」、すなわち急性の損傷に対する病因論的に特定できない脳の反応と、慢性外来反応タイプとを区別した。慢性外来反応タイプの例としては、脳の機能低下、すなわち記憶及び思考の障害か、または当時、より困難な脳の不可逆的な機能低下に限って診断された痴呆を挙げることができる。そこで、広い意味では、脳の損傷によるすべての精神障害を「器質的な精神病」と呼ぶことができるが、狭い意味では、「器質的な精神病」という用語は、脳を損傷した急性精神病に限って適用され、国際的にはほとんど使用されていない「急性外来反応タイプ」という歴史的な用語に対応する。同意語として使用されている別の用語には、「症状から見た精神病」、「身体的に理由付けが可能な精神病」又はこの状態の可逆的な形成を表現した「機能的精神病」がある。希望を持たせるような「通過症候群」という用語も、「機能的精神病」という用語に似ている。
【0025】
これらの用語は、今日では、もはや狭い意味の「器質的精神病」には使用されず、国際的に広く行き渡ったる新しい診断的な概念として、「急性錯乱状態(=せん妄)」が使用されている。今日、その意味範囲は広く受け入れられ、定義されている。
【0026】
上記の「狭い意味での器質的精神病」は、現在使用されている2つの新しい精神医学的診断体系、DSM−IV(米国精神医学協会:Diagnostic and Statiscal Manual of Mental Disorders(心的障害の診断及び統計マニュアル)、第4版、ワシントン,DC,APA,1994年)又はICD−10(ICD−10,WHO、Internationale Klassifikation psychischer Storungen(精神障害の国際分類),ベルン,H.Huber,1991年)でそのように命名され、極めてよく似た定義がされている。現在、米国精神医学協会(APA)の診断体系、Diagnostic and Statiscal Manual(DSM)(診断及び統計マニュアル)の第4改訂版(DSM−IV,1994年)の中で、せん妄について解説されており、次のように細分されている:
(1)Delir(せん妄)は、医学的な疾病因子に基づいてたとえば、術後のせん妄、低血糖性昏睡後のせん妄、蘇生後のせん妄,・・・)
(2.1)物質によって誘発されるせん妄、下位形態として、物質中毒後のせん妄、たとえばアルコール、アンフェタミン、アヘン製剤、アトロピンなどによる中毒後のせん妄、又は
(2.1)物質によって誘発されるせん妄、下位形態として、物質離脱後のせん妄、たとえばアルコール、アンフェタミン、アヘン製剤、アトロピンから離脱した後のせん妄、及び
(3)複数の病原に基づくせん妄。原因がはっきりしない場合は
(4)「詳しくは表示されないせん妄」と診断される。
【0027】
世界保健機構(WHO)の診断体系、ICD−10(1991)では、器質的な精神障害の項目の下に、痴呆とならんで、「アルコールまたは向精神物質によらないせん妄」が定義されている。
【0028】
せん妄は、おそらく脳のいかなる病因でも現れるので、せん妄によって瞬時に複雑化する痴呆患者も常に存在する。そこでDSM−IVは、まず痴呆症を診断し、追加的に存在するせん妄を診断するのに対して、ICD−10では、せん妄はまず「痴呆のせん妄」と診断される。圧倒的な数の急性錯乱状態は、痴呆症の存在と関連がないことは重要である。
【0029】
病院ではせん妄(急性錯乱状態)は、常に注意力障害(質的量的意識障害)を伴い、睡眠覚醒リズム障害と精神運動的な特異性をしばしば伴った、通常、全く突然に、かつ一時的に出現する知的機能障害を意味する(機能低下性又は機能高進性せん妄)。
【0030】
急性錯乱状態では、知覚、思考および記憶の機能に部分的な障害ないし重い障害が現れる。知覚の解釈に誤りが生じて、錯乱の印象を左右する。幻想による誤認とともに、単純な内容ばかりでなく、動いている人間、動物および光景全体を含む視覚的な幻覚が現れる。このような幻覚が現れた場合、当の患者は大きな不安感に襲われ、その幻覚を回避するか、それと戦おうとする。
【0031】
思考は脈絡を失い、思考と言語に一貫性がなくなり、一つ一つの事象を把握する力を失い、もはや抽象概念を理解することができなくなる。「頭の中に表象」(英語でimagery)を描く力が喪失するため、患者は思いつきで応答し、本人は意味を成さないことをしゃべっていることに気づかないまま、無意味なことをしゃべるようになる。知覚と思考に障害が現れると同時に記憶力も障害を受けるため、妄想的な解釈と妄想的な確信が生まれやすくなる。こうした知性障害の結果、時間と場所に、そして場合によっては、その状況に合わせることができなくなり、まれではあるが人格に一致させることができなくなってしまう。
【0032】
注意力は常に乱れていて、それを脳波(EEG)で病理学的に把握することができる。患者は、偏向の可能性がいちじるしいため、本人の注意力を意識的に調整したり新しい内容に向けることができない。注意力が乱れていることの例として、数字や文字を後について言うことができない点を挙げることができる。軽い錯乱状態の場合、注意力が大きく変動し、個々の結果が突然非常に良くなったかと思うと、その数秒後には全くだめになったりする。注意力の変動の激しさは、数分間つづける集中力テスト(たとえば○×テスト(Durchstreichtests))で良く観察することができる。注意力の障害は、障害を受けた意識の把握と大きな重なりを示す。しかし、錯乱の質的な意識障害は、量的な意識障害(疲労)を伴って現れる可能性はほとんどない。
【0033】
日中に患者の覚醒状態が低下することは珍しくない。典型的に見られる現象は、患者が昼間に頻繁に居眠りをする一方で、ちょっとしたことで夜間に目を覚ましたり、ほとんど目を覚ましたままで不安におびえたりする。重篤な症例では睡眠と覚醒のリズムが完全に逆転してしまう。こうした患者の場合、活動と不安の高まりは昼過ぎから夕方にかけて典型的に現れる。
【0034】
せん妄患者は、精神運動が高まる場合と低下する場合とがあり、それは身振りや話に表れる。精神運動が高揚した患者は看護者や所属職員によって正しく認識されるのに対して、活動が低下した患者は、錯乱状態にあることが正しく診断され置されないおそれがある。
【0035】
せん妄患者の声は沈みがちであるにも関わらず、しばしば身体の違和感に襲われ(気むずかしく興奮しやすい)、そのことが外部刺激に過敏に反応することと関係している。交感神経は過敏に反応し、激しい発汗、頻拍、血圧及び心拍数の低下、顔面紅潮、大きく開いた瞳孔、怒り、激昂といった自律神経症状が現れる。
【0036】
本発明に従えば、すべての抗コリン作動性でないせん妄、すなわち、たとえば抗コリン作動性中毒(たとえば、ベラドンナ(ナス科有毒植物)中毒及びその他のトロパン系アルカロイド中毒)によらない、又は変質性痴呆症に見られるようなコリン作動性の変性による、すべてのせん妄の治療が行われる(Int.Psychoger.3(2)(1991),373〜395;Psych.Clin.Neuroscience 248 (Suppl.1)(1998),S.59を参照)。
【0037】
本発明に従えば、術後のせん妄、内科的な病気を抱えている間のせん妄か、または外傷を受けた後のせん妄の治療が望ましい。特に、臨床的にきわめて重要なこれらのせん妄の場合には、これまで、薬物による治療法がなかった。
【0038】
本発明の別の好ましい実施態様は、抗コリン作動性でない中毒に起因するせん妄の治療に関する。
【0039】
本発明のさらに別の適用範囲は、物質からの離脱によるせん妄の治療である。この種のせん妄も効果的な治療法に対する必要性がきわめて高い。
【0040】
さらにまた、本発明によれば、低血糖過程、とりわけ低血糖による昏睡に起因するせん妄の治療も良好な成績を上げることができる。
【0041】
しばしば蘇生と関連してせん妄が現れることがあり、そうした場合も当然本発明に従って治療することができる。
【0042】
列挙したすべてのせん妄は、表面的にはコリン作動系と関連がないように見える点で共通しており、そのために、本発明による処置によって効果的な治療が実施されることは驚くべきことである。
【0043】
急性錯乱状態を識別診断することは、横断的な精神病理学と外来既往症の経過に関する情報から可能である。EEGに顕著な特徴がなければ、せん妄を除外することができるとしても、特異的な診断テストは存在しない。痴呆ばかりでなく、せん妄を診断する際に、精神分裂症、躁病及び精神病によるもうろう状態を除外しなければならない。その上、卒中発作後の失語症は、特に比較的高齢者の場合、せん妄と取り違えられる例が絶えない。やはり比較的高齢者の場合、精神分裂症の病勢悪化が、視覚よりもむしろ聴覚の幻覚を伴って進行する。さらに、内因性精神病の場合にこうしたせん妄の感じを与える状態では、EEGに目立った特徴は見られないのが特徴である。
【0044】
純粋なせん妄と痴呆症との基本的な区別は病歴によって行われ、せん妄は急速に始まり、しばしば構成員又は看護職員によって夜間に初めて観察される。それに対して、痴呆症は潜行して始まり、一日経過して発見される。痴呆症患者の状態は数日及び数週間比較的安定しているのに対して、せん妄の場合は、数日の間にいちじるしい変動が始まり、良好な見当識の短いエピソードが頻発する。痴呆が始まりかけた時点では、普通、注意力は低下せず、患者に非常な努力と覚醒をもたらす。それに対して、せん妄患者は気移りが激しく集中しない。
【0045】
錯乱状態の頻度に関して、代表となりうるような疫病学的な調査は存在しないが、内科病棟に入院した患者に対する調査によれば、高齢者の場合、急性錯乱の発生率は、痴呆症候群及びうつ病症候群より高いことが示唆される。内科に入院している期間中のある時点で、70才を超える患者の30%ないし50%に急性錯乱が観察される。
【0046】
本発明に従う治療は、コリン作動性(中枢)神経系の活動を、直接的に又は間接的に高めることができる薬物を好適量だけ患者に投与することによって行われる。このような薬物は既に他の適応に対して多数市販されているので、既に適用されている用量を参考にして、本発明による治療のための用量を決定することができる。本発明に従う治療の優れた効果によれば、神経弛緩薬の投与は、本発明に従ってもはや必要ではない。
【0047】
しかし、従来の治療実施方法と同様に、付随的な治療処置を実施することは有用である。そこで、たとえば電解質及び水分の代謝を制御し、栄養素と必要不可欠なビタミン及び微量元素の補給を確保することが推奨される。
【0048】
実際に則した見当識について訓練を受けた看護職員を配置すれば、比較的高齢なせん妄患者であっても、明白に再方向づけを促進することができる。患者は落ち着いた照明の明るい病室に入れることが好ましい。患者の周囲には普段使用していたものを置き、時計、カレンダー、新聞も自由に使用できるようにすることが望ましい。絶えず、方向づけの意味について見解を求め、口頭で方向を修正する。
【0049】
せん妄は、その定義から、一過性の疾患であって、普通は数日ないし数週間続く。しかし、せん妄は、随伴する汎性の植物的症状であるために、複数の病気にかかる率が高い高齢者では、危険な併発病である。循環器系の負担が悪化した心臓の状態にかかるばかりでなく、錯乱状態では、患者自身が自分の身体に傷をつけたり、負傷する可能性がある。また、せん妄患者は静脈内カテーテルを引き抜いたり、包帯をはずしたり、特に夜間にはベッドから落ちやすい。患者が過度に鎮静されると、深部の四肢静脈血栓症及び肺の塞栓症の危険性が高い。全体として、せん妄状態が、重篤な脳外疾患に随伴して現れても、この病気による死亡率とせん妄による死亡率とを分離することができないため、せん妄死亡率を学術的に推計することは困難である。
【0050】
Levkoffの研究グループが得た結果(Arch.Intern.Med.152 (1992),334〜40)によれば、急性錯乱状態にかかった多数の患者は、再び同じ様な状態にかかる可能性があるため、期待するようにすべての患者が完全に治癒することはありえないことが了解される。症状のこのような持続性については、現在、国際的な研究の対象になっており、その病理については不明である。
【0051】
驚いたことに、現在のところ、せん妄症候群の脳に関する発症条件について、国際的に認知された理論はない。せん妄は、たとえばわれわれの注意力系において、広範囲に広がった脳機能障害の結果なのか、それとも局部的な脳機能障害の結果なのかということも、特に問題である。抗コリン作動性物質によってせん妄を容易に誘発させることができるということに影響されて、中枢コリン作動性機構と中枢モノアミン作動性(ノルアドレナリン作動性及び/又はセロトニン作動性及び/又はドーパミン作動性)機構の間の不均衡が、せん妄の基礎にあるという生化学的な理論も存在する。多数のせん妄症候群の根底には、おそらく局在化しうる系や、広範囲に広がった脳障害の結果であるといった、異なるいくつかの病因機構が存在するであろう。低血圧後、心臓リズム障害又は血圧降下後のせん妄症候群は、明らかに大脳の広範囲にわたる部位の神経細胞及びニューロン系の機能障害の表れであるのに対して、コルサコフ精神病のような別のせん妄症候群は、幹脳及び間脳の書き換え障害の表れである。
【0052】
錯乱状態の病因に対する全く異なるアプローチは、ホメオスタシスの概念から得られる。生物の老化の重要な働きは、環境変化に対する適応能力が連続的に低下して行くことである、というのが老人学の基本原理である。脳の症例においても、薬物、低血糖症及び病巣によって環境変化が起きる。生物体の部位の構造と機能は、一生の中の段階によって柔軟性に違いがあり、負荷がその柔軟性の範囲内にあれば、機能の正常な範囲を維持することができる。この適応能力は、たとえばシナプスレベルで、通常は、学問から分離して分析される多数の個別反応を総合したものである。神経細胞、ニューロン系、脳及び身体は、いかなる時でも、動的で相互に依存した状態にあり、それはホメオスタシスと呼ばれる定常状態の平衡状態にある。この状態は障害があるとある範囲の中でしか出現する可能性がない。このような流動的な平衡は連続性を保証するが、適応の可能性も与える。ホメオスタシスの堅持に寄与する過程は、適応系または補償系である。
【0053】
加齢につれて、ホメオスタシスの制御は困難になり、そして正常な範囲は狭くなり、そして補償能力の安定性と大きさは小さくなる。その結果は、障害の起こしやすさとなって現れる。その障害が知覚機能、不眠症、注意力又は自分の位置づけ(Orientierung)に現れた場合はせん妄となる。年令によって適応性が低下した中枢機能の中で良く研究されている例は、体温調節機能であり、この例は、年令による脳の機能の適応能力の低下を示す。この適応性が障害を受けると、明らかに精神作用薬に対する感度も年令と共に高くなる。
【0054】
精神作用薬によってであれ、別の攪乱要因によってであれ、われわれの脳のいくつかの伝達系の平衡が、時間枠の中で、もはや補償できないほど変動すると、脳のホメオスタシスの最も高い水準である意識的な思考内容の処理が、挫折してしまう。従って、脳の機能又は構造の障害が徐々に進行する時は、せん妄は現れず、脳機能の水準が全く突然に変化する時に観察される。
【0055】
これまでの記述から明らかになったように、せん妄の根底には無数の原因がある。1次的な脳の原因と2次的な脳の原因を識別することと、薬物の副作用、水分及び電解質の代謝の乱れ、ビタミンの欠乏、及び心臓血管障害といった治療効果の上がる原因を速く見極めることは、臨床的に重要である。せん妄の出現にとって重要な危険要因は年令である。下記の表は急性錯乱の最も重要な原因をまとめたものである。
【0056】
表: 急性錯乱状態の最も重要な原因
1.1次的な脳の原因:
頭蓋骨・脳の外傷
原発性変性疾患
空間を必要とする過程
炎症過程
血管虚血過程
中毒(抗コリン作動性に限らない)
酸素欠乏(貧血、呼吸不全)
2.2次的な脳の原因:
術後
麻酔後(手術を行わない場合も含む)
中毒
薬物の副作用
心臓血管の障害
代謝的に有毒(腎臓、肝臓、・・・)
水分および電解質の代謝
内分泌系の障害(甲状腺、副甲状腺)
ビタミンまたは微量元素の欠乏
感染
体温調節の乱れ
感覚器官の障害
ストレス
術後のせん妄は、本発明に従う治療法の主要な適用範囲の1つである。従って、特別にここで簡潔に述べておかなければならない。心臓及び胸部外科、神経外科、移植外科、ばかりでなく災害外科、腹部外科などの分野では、費用のかかる手術が増加したことが引き金になって手術及び麻酔の技術が進歩したにも関わらず、ますます術後の錯乱が増えている。技術の向上によって、手術後に心配される合併症の発生は確かに減少している反面で、技術が向上してきたために、ますます困難な疾病や複数の疾病を持つ患者、そしてますます高齢の患者が外科手術を受けるようになってきている。臨床的に重要であるにも関わらずこれらの錯乱状態はあまり研究されていない。その理由は、精神病はごくまれにしか精神科病因で治療されないことにある。術後のせん妄発生率は、研究によって、そしてまた、調査した患者母集団又は手術によって、0%から73.5%の間で変動している(Dyerら、Postoperative Delirium, Archives of Internal Medicine,155 (13)(1995),461〜465)。術後の錯乱状態の発現は、合併症発生率および死亡率に対する危険要因であり、社会福祉施設に入所する確率を高め、入院期間を長引かせる。さらに多くの、したがってさらに高価な再入院が続き、術後の錯乱状態は長期の精神的な展開を招く可能性がある。
【0057】
術後に錯乱状態が頻発する例として整形外科の例を挙げることができる。現在までに世界的な規模で実施された術後に関する3つの調査によれば、計画によって腰部移植を受けた患者の18%ないし41%がこの併発症を経験した。大腿骨頸部を骨折して腰部移植手術を受けた患者の術後に関する4つの研究によれば、すなわち外傷後に計画されなかった手術を受けた場合、この精神的な合併症の発生頻度は、患者の26%ないし52%に達する!
本発明の実施態様は次にあげる実施例によってさらに詳しく説明されるが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
【0058】
実施例1: 経口投与が可能な新しいアセチルコリンエステラーゼ阻害剤、ラバスチグミンによる抗コリン作動性でないせん妄の治療
この患者は、35才以来、躁うつ病に悩んでいる70才の女性患者である。最後まで精神的な崩壊幻覚(Abbauerscheinungen)は存在しなかった。躁う病のリチウム治療時の尿路感染後に重篤な活動過剰せん妄を伴うリチウム中毒が現れ、内科病棟への入院を余儀なくされた。この種のリチウム中毒によるせん妄は、通常6〜8週間後にやっと完全に治まる。患者は4日後に私立クリニクに転院するが、精神病性が高く、部屋の隅で排尿し、ナイトテーブルの電灯と話をし、部屋に別人や小びとの幻覚が現れ、病棟からくり返し逃亡し、看護職員が自分を殺すと考え、気味の悪い行動をして落ち着きがなく、追い立てられるような行動を取る。ベッドカバーと電話ケーブルをもどかしそうに扱い、昼間に何度も入眠し、夜は一晩中目を覚ましている。また、患者は泣いたり笑ったりを交互にくり返し、何度も突然恐怖感に襲われ、そしてまた笑う。これらすべての症状は極めて不安定で移り変わりが激しく、入院日には全く話しかけることができない。Trzepaczのせん妄尺度(Psychiatry Research,23,(1988),89〜97)によると(獲得可能点32点のうちの)重篤なせん妄に相当する29点に達する。Exelon(登録商標)(リバスチグミン)を用量2×1.5mg投与して48時間治療を続けると、患者の症状は改善され、もはや幻覚症状は消えるが、妄想観念を思い出し、自己から距離を置き、なお軽い不安が認められ、集中力に欠ける点が多少観察される。依然として昼間に眠気を催す。夜間は緩和はしたものの、なお持続的睡眠に障害が見られる。現在症状は安定し、格別の変動は見られない。せん妄の点数は48時間以内に8点まで下がった。4週間後にはリバスチグミン(Exelon)の投与を中止し、たしかに現在でもなお2〜3週間の間、注意力の変動、睡眠障害、不安及び日変動が見られる。これは、この後でリチウム中毒がたどる自然経過で予想される症状である。

Claims (1)

  1. リチウム中毒によるせん妄を治療するための医薬であって、有効成分としてリバスチグミンを含有する医薬。
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