JP4400771B2 - 船舶推進機のエンジン制御装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、船舶推進機のエンジン制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
船舶に備えられる船舶推進機には、エンジンが搭載され、このエンジンの動力によりプロペラを回転して推進力を得ている。この船舶推進機には、エンジン制御装置を備え、シフトのニュートラル位置においてエンジンを始動し、エンジンにはバッテリを電源とする点火装置で点火を行なうものがある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、シフトが前進または後進に入っている状態で、エンジン停止が生じることがあり、例えば特定気筒が圧縮上死点前で停止すると、バッテリを電源とする点火装置では、点火コイルの通電が既に開始している場合、連続通電を行なうことになり点火コイルが焼損する。このため、通電を遮断する必要があるが、この通電終了により点火プラグに高電圧が発生して点火することがあり、この点火による燃焼によりクランク軸は瞬時の間逆方向に回転し、制御装置がクランク角信号を検出すると、始動判定を行なう。
【0004】
このように始動判定するときに、シフトが前進または後進に入っている状態であり、ニュートラル位置検出手段がニュートラル位置を検出していないため、制御装置はニュートラル位置検出手段が異常であると判定することになる。
【0005】
この発明は、かかる事情を考慮してなされたもので、エンジン停止直後の点火による瞬時のクランク軸の逆回転によりニュートラル位置検出手段が異常と判定されることを防止する船舶推進機のエンジン制御装置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決し、かつ目的を達成するために、この発明は、以下のように構成した。
【0007】
請求項1に記載の発明は、
『シフトのニュートラル位置を検出するニュートラル位置検出手段と、シフトのニュートラル位置においてエンジンを始動するエンジン始動手段と、エンジン回転速度を検出するエンジン回転速度検出手段と、を備え、エンジン回転速度に基づきエンジン始動モードか否かの判断を行なう船舶推進機のエンジン制御装置において、
前記エンジン回転速度に基づいてエンジン停止を検出し、点火の通電を遮断するエンジン停止検出手段と、
前記点火の通電遮断から所定時間、前記エンジン始動モードでは前記ニュートラル位置検出手段が前記シフトのニュートラル位置を検出しないことによる異常判定を禁止する異常検出手段と、を有する、
ことを特徴とする船舶推進機のエンジン制御装置。』である。
【0008】
この請求項1に記載の発明によれば、エンジン回転速度に基づいてエンジン停止を検出し、点火の通電を遮断し、この点火の通電遮断から所定時間、エンジン始動モードではニュートラル位置検出手段がシフトのニュートラル位置を検出しないことによる異常判定を禁止することで、シフトが前進または後進に入っている状態でエンジンが停止し、このエンジン停止直後の点火により瞬時にクランク軸が逆回転することにより、ニュートラル位置検出手段が異常と判定されることを防止する。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の船舶推進機のエンジン制御装置の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。図1乃至図3は、この発明が適用される船外機の例を示し、図1は船外機の側面図、図2はエンジンの側面図、図3はエンジンの平面図、図4はニュートラル位置検出部の平面図である。なお、各図面間で同一の構成については同一番号を付して説明を省略する場合がある。
【0010】
この実施の形態では、船舶に搭載される船舶推進機として船外機を示すが、船内機にも同様に適用される。船外機1は、船体2の船尾2aにクランプブラケット3を介して上下、左右に揺動可能に支持されている。この船外機1は、トップカウリング4a、ボトムカウリング4b、上部ケース5及び下部ケース6を有し、トップカウリング4a及びボトムカウリング4b内にエンジン7が配置され、上部ケース5及び下部ケース6内に推進ユニット8が配設された構造のものである。
【0011】
エンジン7は、4サイクルのV型6気筒のエンジンであり、このエンジン7により推進ユニット8が駆動される。推進ユニット8は、垂直方向に延びるドライブシャフト9の下端に傘歯車機構10を介して推進軸11を連結し、この推進軸11の後端にプロペラ12を結合した構成となっている。
【0012】
エンジン7は、排気ガイド13上に配置され、クランク軸20を航走時に略垂直をなすように縦向きに配置して構成されており、クランク軸20の下端にドライブシャフト9の上端が連結されている。エンジン7は、シリンダブロック21、クランクケース22によりクランク軸20が軸支されている。クランクケース22には、クランクケースカバー23が取り付けられている。排気ガイド13の下面には、オイルパン90が吊り下げ支持される。
【0013】
シリンダブロック21のV型の気筒には、シリンダヘッド24が締結され、シリンダヘッド24には、ヘッドカバー25が取り付けられている。シリンダヘッド24には、動弁機構のカム軸26が軸支され、クランク軸20の回転力がタイミングベルト27により伝達され、このカム軸26の回転で図示しない吸気弁及び排気弁を駆動する。
【0014】
クランク軸20の上端部には、フライホイールマグネト30が設けられ、このフライホイールマグネト30及びシリンダブロック21、クランクケース22、クランクケースカバー23、シリンダヘッド24、ヘッドカバー25はカバー31で覆われている。
【0015】
エンジン7には、船体前方向に左右に吸気サイレンサ40が配置され、この左右の吸気サイレンサ40は、対向面に連通孔40aを有し連通している。この左右の吸気サイレンサ40には、吸気管41がそれぞれ接続され、さらに吸気管41はスロットルバルブ51の下流側のスロットルボディ42に接続されている。インテークマニホールド81にはそれぞれの気筒に応じてインジェクタ43が設けられ、このインジェクタ43により燃料が吸気通路に供給される。それぞれのインジェクタ43はシリンダブロック21側に配置され、シリンダブロック21周りの空間SP1を利用し、コンパクトな構造になっている。
【0016】
左側の吸気管41とクランクケース22との空間SP2には、燃料ポンプ45及びベーパーセパレータ46が配置され、クランクケース22周りの空間SP2を利用し、コンパクトな構造になっている。ベーパーセパレータ46は、燃料供給経路内の燃料から燃料成分とガス成分とを分離し、ガス成分はベーパー排出管48を介して吸気サイレンサ40へ送られる。ベーパー排出管48には、逆止弁49、フィルタ50が設けられている。
【0017】
この船外機には、図1及び図4に示すように、シフトケーブル60がスライダー64を介してシフト操作軸62に連結されている。遠隔のシフト操作によってシフトケーブル60を作動することで、スライダー64がブラケット61のガイド溝61aに沿って矢印A,B方向に移動し、図示しないリンク機構を介して連結されたシフト操作軸62を作動し、これによりシフト切替手段63が傘歯車機構10を制御して前進、ニュートラル、後進のシフト切替が行なわれる。スライダー64が矢印A方向に移動した前進位置では、プロペラ12を前進方向に回転させ、矢印B方向に移動した後進位置でプロペラ12を後進方向に回転させ、中間のニュートラル位置ではプロペラ12への動力伝達を遮断する。
【0018】
シフトがニュートラル位置では、シフトケーブル60に連結したスライダー64が図4に示す位置にあり、ニュートラル位置検出手段SW1がONし、ニュートラル位置情報を制御装置ECUに送る。シフトが前進位置では、シフトケーブル60に連結したスライダー64が図4に示すA方向へ移動した位置にあり、ニュートラル位置検出手段SW1がOFFし、前進位置情報を制御装置ECUに送る。また、シフトが後進位置では、シフトケーブル60に連結したスライダー64が図4に示すB方向へ移動した位置にあり、ニュートラル位置検出手段SW1がOFFし、後進位置情報を制御装置ECUに送る。
【0019】
この前進位置または後進位置でシフトケーブル60によるシフト操作を行なう場合に、B位置でシフトケーブル60を引きシフトが抜けない時にはブラケット61にシフト荷重がかかると、このシフト荷重により矢印C方向に回転し、シフトカットスイッチSW2が押されてONし、このON信号を制御装置ECUに送る。また、A位置でシフトケーブル60を押しシフトが抜けない時にはブラケット61にシフト荷重がかかると、このシフト荷重により矢印C方向に回転し、シフトカットスイッチSW2が押されてONし、同様にN信号を制御装置ECUに送る。
【0020】
次に、図5乃至図7に基づいて船舶推進機のエンジン制御装置を説明する。図5はエンジン制御装置の構成図、図6はエンジン制御のタイミングチャート、図7はエンジン制御装置の動作フローチャートである。
【0021】
この船外機1には、制御装置ECUが船体前方向に配置されている。フライホイールマグネト30には、第1気筒、第2気筒及び第3気筒に応じてパルサコイルS1が配置されている。このパルサコイルS1からの信号が制御装置ECUに送られ、制御装置ECUには、エンジン回転速度検出手段77が備えられ、パルサコイルS1からの信号に基づき演算してエンジン回転速度を検出する。
【0022】
この船外機1には、エンジン始動手段70及び点火手段71が備えられている。エンジン始動手段70は、シフトのニュートラル位置において、船外機1の前側に配置されたスタータモータ78を駆動する。スタータモータ78は、図3に示すように、モータ軸78aが上下方向に配置され、このモータ軸78aに設けられた駆動ギア78bの回転により、クランク軸20に設けられたリングギア79を回転してクランク軸20を回転し、このクランク軸20の回転によりエンジンを始動する。
【0023】
点火手段71は、制御装置ECUに備えられ、スロットルセンサS11からのスロットル開度情報、吸気圧センサS12からの吸気圧情報及びエンジン回転速度検出手段77からのエンジン回転速度情報に応じて第1及び第4の点火コイルIG、第2及び第5の点火コイルIG及び第3及び第6の点火コイルIGに高電圧発生させて点火を行なう。この第1及び第4の点火コイルIG、第2及び第5の点火コイルIG及び第3及び第6の点火コイルIGは、図3に示すように、船外機1の後側のシリンダヘッド24に上下方向に気筒に応じて取り付けられている。
【0024】
スロットルセンサS11は、図3に示すように、スロットルボディ42に配置され、スロットルボディ42に備えられたスロットルバルブ51の開度を検出する。また、吸気圧センサS12は、スロットルボディ42のスロットルバルブ51の上流側に配置され、吸気管41内の吸気圧を検出する。
【0025】
また、制御装置ECUは、スロットル開度情報、吸気圧情報及びエンジン回転速度情報に応じて第1及び第4のインジェクタ43、第2及び第5のインジェクタ43及び第3及び第6のインジェクタ43を駆動して燃料供給を行なう。
【0026】
この実施の形態の制御装置ECUは、エンジン停止検出手段75と、異常検出手段76とを有する。エンジン停止検出手段75は、図6に示すように、エンジン回転速度に基づいて所定回転速度以下になると、この所定回転速度以下になる回転速度でエンジン停止P1を検出する。このように、エンジン停止が生じることがあり、例えば特定気筒が圧縮上死点前で停止し、点火コイルIGの通電が既に開始P2している場合、連続通電を行なうと点火コイルIGが焼損する。このため、通電を遮断P3する必要があるが、この通電終了により点火プラグに高電圧が発生して点火P4することがある。この点火P4によってクランク軸20が逆方向に回転P5するが、異常検出手段76は、点火P4の通電遮断から所定時間T1、ニュートラル位置検出手段SW1の異常判定を禁止する。
【0027】
この所定時間T1で異常判定を行なうと、図6に示すように、シフトが前進または後進に入っている状態では、ニュートラル位置検出手段SW1の信号がOFFでシフトが入っている状態を検出しているため、制御装置ECUはニュートラル位置検出手段SW1が異常であると判定することになるが、所定時間T1で異常判定を行なわないため、エンジン停止直後の点火P4による瞬時のクランク回転によりニュートラル位置検出手段SW1が異常と判定されることを防止することができる。
【0028】
次に、図7に基づきエンジン制御装置の作動を説明する。
【0029】
ステップaにおいて、点火コイルの通電時間タイマーがスタートし、通電時間タイマーのカウントを行ない(ステップb)、エンジン回転速度が所定回転速度以下であるか否かの判断を行ない、エンジン停止の検出を行なう(ステップc)。エンジン停止でない場合は、ステップdに移行して正常位置で通電を終了して点火を行ない、ステップaに移行する。
【0030】
エンジン停止の場合は、通電時間タイマーのカウント値が通電時間タイマーの所定値を経過したかの判断を行ない(ステップe)、所定値を経過した場合には点火コイル通電を終了し、通電時間タイマーのカウントをクリアする(ステップf)。
【0031】
その後、ステップgにおいて、ニュートラル位置検出手段SW1の異常判定の禁止タイマーをスタートさせ、エンジン回転速度に基づきエンジン始動モードか否かの判断を行ない(ステップh)、所定回転速度以上の場合はステップiに移行して通常モードの場合は、正常のエンジン制御を行ない(ステップj)、禁止タイマーのカウントをクリアして終了する(ステップn)。
【0032】
ステップhにおいて、エンジン始動モードである場合には、ニュートラル位置検出手段SW1のニュートラルスイッチがOFFか否かの判断を行ない(ステップk)、ニュートラルスイッチがOFFでない場合は、即ちシフトがニュートラルであり、ステップjに移行して正常のエンジン制御を行なう。
【0033】
ステップkにおいて、ニュートラルスイッチがOFFの場合は、即ちシフトが前進または後進に入っているが、ニュートラル位置検出手段SW1の異常判定の禁止タイマーのカウント終了まで判定を行なわない(ステップl)。ニュートラル位置検出手段SW1の異常判定の禁止タイマーのカウント終了しても、ニュートラルスイッチがOFFの場合は、即ちシフトが入っていると、異常判定の制御を行ない(ステップm)、禁止タイマーのカウントをクリアして終了する(ステップn)。
【0034】
【発明の効果】
前記したように、請求項1に記載の発明では、エンジン回転速度に基づいてエンジン停止を検出し、点火の通電を遮断し、この点火の通電遮断から所定時間、エンジン始動モードではニュートラル位置検出手段がシフトのニュートラル位置を検出しないことによる異常判定を禁止することで、シフトが前進または後進に入っている状態でエンジンが停止し、このエンジン停止直後の点火により瞬時にクランク軸が逆回転することにより、ニュートラル位置検出手段が異常と判定されることを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】船外機の側面図である。
【図2】エンジンの側面図である。
【図3】エンジンの平面図である。
【図4】ニュートラル位置検出部の平面図である。
【図5】エンジン制御装置の構成図である。
【図6】エンジン制御のタイミングチャートである。
【図7】エンジン制御装置の動作フローチャートである。
【符号の説明】
1 船外機
7 エンジン
70 エンジン始動手段
71 点火手段
75 エンジン停止検出手段
76 異常検出手段
77 エンジン回転速度検出手段
SW1 ニュートラル位置検出手段
S1 パルサコイル
ECU 制御装置

Claims (1)

  1. シフトのニュートラル位置を検出するニュートラル位置検出手段と、シフトのニュートラル位置においてエンジンを始動するエンジン始動手段と、エンジン回転速度を検出するエンジン回転速度検出手段と、を備え、エンジン回転速度に基づきエンジン始動モードか否かの判断を行なう船舶推進機のエンジン制御装置において、
    前記エンジン回転速度に基づいてエンジン停止を検出し、点火の通電を遮断するエンジン停止検出手段と、
    前記点火の通電遮断から所定時間、前記エンジン始動モードでは前記ニュートラル位置検出手段が前記シフトのニュートラル位置を検出しないことによる異常判定を禁止する異常検出手段と、を有する、
    ことを特徴とする船舶推進機のエンジン制御装置。
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