JP4384060B2 - 軌道制御装置 - Google Patents
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Description
一般に、衛星の軌道は複数の軌道要素パラメータによって表される。例えば静止衛星の軌道は、南北方向および東西方向の軌道要素パラメータで表され、静止衛星の位置を所望の範囲内に保持するためには、南北方向および東西方向の制御を定期的に行う必要がある。
このように、衛星の軌道を保持するためには、各軌道要素パラメータの目標値からの誤差が、ある範囲内にとどまるように制御する必要がある。そこで、軌道要素パラメータごとにそれぞれ誤差許容値を設定し、誤差が許容値を超える場合には軌道制御を行うことにより誤差を相殺するという方法がとられる。
人工衛星の軌道制御装置における制御量を削減するための技術の例として、特許文献1に開示された従来の軌道制御装置は、複数の軌道要素の誤差に基づいて、全ての軌道要素の誤差を相殺するような軌道制御量および軌道制御時刻を算出し、軌道制御を行う。
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1による、人工衛星200の軌道制御装置100の構成を示すブロック図である。図に示すように、軌道制御装置100は、閾値設定部101、制御対象選択部102、制御量算出部103、スラスタ104及び軌道誤差算出部105を備えている。
実施の形態1では、人工衛星200の各軌道要素パラメータについて、その目標値からの誤差許容値が予め与えられており、軌道制御装置100は、全ての軌道要素パラメータの誤差が誤差許容値内に維持されるように軌道制御を行う。以下、軌道制御装置100による軌道制御動作の概要を説明する。
閾値設定部101は、軌道誤差算出部105から出力される各軌道要素パラメータの誤差と予め与えられている誤差許容値に基づいて、制御対象となる軌道要素の選択のための閾値を決定する。閾値設定部101の動作の詳細については後述する。
制御対象選択部102は、軌道誤差算出部105から出力される各軌道要素パラメータの誤差と、閾値設定部101から出力される閾値に基づいて、制御対象となる軌道要素を選択する。制御対象選択部102の動作の詳細については後述する。
制御量算出部103は、軌道誤差算出部105から出力される各軌道要素の誤差と、制御対象選択部102から出力される制御対象軌道要素の選択結果に基づいて、選択された各々の軌道要素の誤差を補正するための制御時刻及び制御量を算出する。ここで、制御時刻とは、スラスタ104を駆動して軌道制御を行う、軌道上のタイミングを指定するものである。
制御量とそれにともなう軌道要素パラメータの変化は線形の関係にあり、その算出方法は公知である(例えば、冨田信之:宇宙システム入門、第10章、東京大学出版会(1993))。すなわち、制御量をベクトルΔV、制御による軌道要素パラメータの変化をベクトルδEとすると、δE=A×ΔVという関係がある。ここで、Aは行列であり、その各要素は軌道要素パラメータの値によって決まる。制御量の算出においては、一連の制御によるδEの総和が、補正すべき軌道要素パラメータの誤差の符号を反転させたものと一致することが条件となる。さらに、消費推薬量を最小にするためには、この条件のもとで各時刻の制御量絶対値の総和を最小にすればよい。これは、一般に線形計画問題として汎用的なソフトウェアを用いて解くことが可能である。
また、制御可能な時刻が固定されない場合には、特許文献1に記載の手法を用いることもできる。その他にも衛星のミッションに応じて適切な手法を選択することができる。
制御量算出部103は、算出した制御時刻と制御量をスラスタ104に供給する。スラスタ104は、供給された制御時刻と制御量に応じて人工衛星200に推進力を与え、軌道制御を実行する。
閾値設定部101では、各軌道要素パラメータの誤差許容値に0以上1以下の係数を乗じることにより、各軌道要素パラメータの閾値を決定する。
すなわち、ある軌道要素パラメータE(E={a、e、i、Ω、ω})の誤差許容値ΔELMTに対し、予め定められた係数kE(0≦kE≦1)を乗じた値ΔETH=kE×ΔELMTを、軌道要素パラメータEに対する閾値とする。係数kEの値は、軌道誤差算出部105から出力される各軌道要素パラメータの誤差ΔEの変化率等を考慮して決めることができる。例えば、ある軌道要素パラメータの誤差の変化が比較的緩やかである場合には、その軌道要素パラメータに対しては係数kEに大きめの値を設定するとよい。また、係数kEを一定値とせず、軌道に加わる外乱の大きさによって変化する値としてもよい。
ステップST101で、制御対象選択部102は、軌道誤差算出部105から出力される各軌道要素パラメータEの誤差ΔEと誤差許容値ΔELMTを比較し、ΔE≧ΔELMTとなる軌道要素Eが存在するか否かを判定する。
ΔE≧ΔELMTとなる軌道要素パラメータが存在しない場合には、軌道制御の必要はないのでステップST102へ進み処理を終了する。ΔE≧ΔELMTとなる軌道要素が存在する場合にはステップST103へ進む。
ステップST103で、制御対象選択部102は、誤差ΔEが閾値設定部101から出力された閾値ΔETH以上になる軌道要素の全てを制御対象として選択する。
全ての軌道要素パラメータを制御対象とすると、誤差の小さい軌道要素に対してまで無駄な制御を行うことになる。また、誤差ΔEが、誤差許容値ΔELMT以上となる軌道要素のみを制御対象にすると、そのようなパラメータが検出される度に軌道制御を行うことになるため、制御頻度の増加につながる。
しかし、実施の形態1によれば、制御量と制御頻度をともに削減することが可能となり、効率的な軌道保持制御が実現され、衛星の軽量化やミッション寿命の増加が可能となる。また、実施の形態1による軌道制御は、軌道要素パラメータの選択により、任意の軌道に対して適用することができる。
実施の形態2による軌道制御装置の構成は、図1に示す実施の形態1と同様である。
実施の形態1では、5つの軌道要素パラメータ全てについて、閾値設定部101による閾値の設定と制御対象選択部102による判定を行った。
軌道制御において、一部の軌道要素パラメータの制御により他の軌道要素パラメータが変化し、誤差を増加させることがある。そのため、実施の形態1では、制御量算出部103において、制御対象ではないパラメータが変化しないように制御量を算出する必要があり、計算が複雑になる。
そこで、実施の形態2では、軌道要素のうち、軌道面内成分であるa、e、ωについては常に制御対象とし、軌道面外成分である軌道傾斜角iと昇交点赤経Ωについてのみ、制御対象とするか否か判断する。
閾値設定部101は、軌道面外成分i、Ωに対してのみ、実施の形態1と同様にして閾値ΔETHを決定する。
ステップST101で、実施の形態1と同様にΔE≧ΔELMTとなる軌道要素Eが存在するか否かを判定し、存在する場合にはステップST104へ進む。
ステップST104では、軌道面内成分(E={a、e、ω})を全て制御対象とする。
次に、ステップST105で、昇交点赤経Ωについて、ΔΩが閾値設定部101から出力された閾値ΔΩTH以上か否かを判定する。
ステップST105でΔΩ≧ΔΩTHとなると判定された場合には、軌道要素Ωを制御対象とする(ステップST106)。
次に、ステップST107で、軌道傾斜角iについて、Δiが閾値設定部101から出力された閾値ΔiTH以上か否かを判定する。
ステップST107でΔi≧ΔiTHとなると判定された場合には、軌道要素iを制御対象とする(ステップST108)。
実施の形態3による軌道制御装置の構成は、図1に示す実施の形態1と同様である。
実施の形態3も実施の形態2と同様に、軌道面内成分a、e、ωについては常に制御対象とする。一方、軌道面外成分である軌道傾斜角iと昇交点赤経Ωについては、実施の形態2と異なる方法により制御対象とするか否か判断する。
そこで、実施の形態3では、軌道面外成分iとΩのうちいずれかが制御対象となる場合には、常に両方を同時に制御する。
閾値設定部101は、軌道面外成分i、Ωに対してのみ、実施の形態1と同様にして閾値ΔETHを決定する。
ステップST101で、ΔE≧ΔELMTとなる軌道要素Eが存在するか否かを判定し、存在する場合にはステップST104へ進み、実施の形態2と同様に軌道面内成分(E={a、e、ω})を全て制御対象とする。
次に、ステップST109で、昇交点赤経Ω及び軌道傾斜角iについて、ΔΩが閾値設定部101から出力された閾値ΔΩTH以上か否か、またはΔiが閾値設定部101から出力された閾値ΔiTH以上か否か判定する。
ステップST109で、ΔΩ≧ΔΩTHまたはΔi≧ΔiTHとなると判定された場合には、軌道要素Ω及び軌道要素iを共に制御対象とする(ステップST110)。
実施の形態4による軌道制御装置の構成は、図1に示す実施の形態1と同様である。
制御量算出部103による制御時刻と制御量の決定方法としては、制御対象となる全ての軌道要素パラメータの誤差が軌道制御完了後に0となるように制御量と制御時刻を決定する方法が考えられる。
しかし、通常1回の制御で可能な制御量は、スラスタ104の噴射可能時間等により制限されているため、常にそのような制御が可能であるとは限らない。実施の形態4では、制御量算出部103において、予め定められた上限値を超えない範囲で制御量を算出する。
まず、制御量算出部103は、軌道誤差算出部105から出力された軌道要素パラメータ毎の軌道要素誤差ΔEに基づいて、制御による補正量目標値ΔEDを決定する(ステップST201)。補正量目標値ΔEDの初期値には、軌道要素誤差ΔEそのものを設定する。
次に、ステップST201で決定した補正量目標値ΔEDを実現するための制御量及び制御時刻を算出する(ステップST202)。
次に、ステップST203で、ステップST202で算出した制御量と、予め与えられた1回あたりの制御量上限値ΔVLMTを比較する。制御量が上限値ΔVLMTを超える場合には、ステップST201に戻り、補正量目標値ΔEDをより少なく設定する。
2回目以降の処理では、1サイクル前のステップST202で得られた1回あたりの制御量の最大値をΔVMAXとすると、補正量目標値ΔEDには、1サイクル前のステップST201での補正量目標値ΔEDにΔVMAX/ΔVLMTを乗じた値を設定する。
これにより、制御量上限値ΔVLMTを超えない補正量目標値ΔEDが設定できる。
次に、ステップST202で、決定した補正量目標値ΔEDを実現するための制御量と制御時刻を算出し、ステップST203で、ステップST202で算出した制御量と、制御量上限値ΔVLMTを比較する。
以上のように、ステップST203で制御量が上限値以下と判断されるまでステップST201〜ステップST203を繰り返す。
なお、補正量目標値を実現するための制御量と制御時刻は、実施の形態1と同様の方法で求めることができる。
従来は、誤差を誤差許容値以内に補正するために必要な制御量が1回の制御量上限値を超えていた場合、軌道数周回に分けて制御を行うのが一般的であった。このため、誤差が大きい場合には制御頻度が過度に増大していた。本発明の実施の形態4では、制御量上限値内で補正を行い、残りの誤差は次回の制御まで放置しておくので、制御頻度を減少させることができる。また、放置した誤差は、逆向きの外乱が加わることにより自然に小さくなることもある。
さらに、制御により補正する誤差の割合が適切に設定されることで、他の軌道要素パラメータへの影響が大きくなり過ぎないよう抑えることができるという効果もある。
Claims (5)
- 中心天体の周りを周回する飛翔体の軌道を制御する軌道制御装置であって、
上記軌道を表現する複数の軌道要素パラメータの実測値と各々の目標値との差分を取り、各軌道要素パラメータの誤差を算出する軌道誤差算出部と、
各々の軌道要素パラメータについて、予め与えられた誤差許容値以下の任意の値を制御要否の閾値として設定する閾値設定部と、
上記誤差が、上記誤差許容値以上となる軌道要素パラメータが存在する場合に、上記誤差が上記閾値以上となる軌道要素パラメータを制御対象として選択する制御対象選択部と、
上記制御対象選択部によって選択された制御対象の軌道要素パラメータの誤差を、上記誤差許容値内の値に補正するための制御時刻と制御量を算出する制御量算出部を備えたことを特徴とする軌道制御装置。 - 閾値設定部は、軌道要素パラメータの誤差の値の変化量に基づいて閾値を設定することを特徴とする請求項1記載の軌道制御装置。
- 閾値設定部は、軌道要素パラメータのうち軌道面外成分について閾値を設定し、
制御対象選択部は、誤差が誤差許容値以上となる軌道要素パラメータが存在する場合に、軌道要素パラメータのうち軌道面内成分は全て制御対象とし、軌道面外成分については、誤差が上記閾値以上となるものを制御対象とすることを特徴とする請求項1または請求項2記載の軌道制御装置。 - 閾値設定部は、軌道要素パラメータのうち軌道面外成分について閾値を設定し、
制御対象選択部は、誤差が誤差許容値以上となる軌道要素パラメータが存在する場合に、軌道要素パラメータのうち軌道面内成分は全て制御対象とし、軌道面外成分については、誤差が上記閾値以上となる軌道面外成分が存在する場合に、全ての軌道面外成分を制御対象とすることを特徴とする請求項1または請求項2記載の軌道制御装置。 - 制御量算出部は、1回の制御で可能な制御量上限値の範囲内で補正可能な誤差のみを補正するように、制御時刻と制御量を算出することを特徴とする請求項1から請求項4のうちのいずれか1項記載の軌道制御装置。
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