JP4376491B2 - 粘着剤組成物及び粘着シート - Google Patents

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Description

【0001】
【発明が属する技術分野】
本発明は、粘着シート及び該粘着シートに使用される粘着剤組成物に関する。
更に詳しくは、本発明は、被着体に貼着された後、高温高湿の環境下で長期間置かれても、黄変するなどの外観変化がなく、充分な接着力を維持し、粘着シートの浮き、剥がれがないことはもちろん、経時後においても再剥離が容易である粘着シート及び該粘着シートに使用される粘着剤組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
粘着シートは各種プラスチックス、金属、ガラス、木質材料、布、セラミックス等各種の被着体に使用されてきた。
また、粘着シートは、ラベル、看板等の如き表示、装飾、物体の固定、表面保護等の各種目的で使用される。
【0003】
ガラスに対して使用される場合には、ガラスが破砕された時に、個々のガラス破片をつなぎ止め、ガラスの飛散を防止するガラス飛散防止用粘着シート、あるいは、粘着シートの表面に特定の凹凸模様を入れる、あるいは意匠を印刷をしてガラスを装飾する装飾用粘着シートなどが知られている。
【0004】
温水プール、温泉、浴室等の窓ガラスに貼着する装飾用の粘着シートは、一旦ガラスに貼られて高温高湿下で一定期間使用された後、しばしばそれを剥離して、新たな外観意匠を有する装飾用粘着シートを再度ガラスに貼着して使用されている。
装飾用粘着シートは、このように被着体が厳しい環境下に置かれた後に再度剥離される可能性が多く、高温高湿の環境下で長期間置かれても、黄変するなどの外観変化がないこととともに、充分な接着力を維持し、粘着シートの浮き、剥がれがないことはもちろん、経時後においても再剥離が容易であり、剥離時に糊残りしてガラス表面が汚染されないことが要求される。更にはガラスの飛散防止の効果を併せ持つことも要求される。
【0005】
ガラスに対して、良好な接着性を示す粘着剤組成物は公知である。
特開昭61―7369号公報には、高温高湿度の環境下に置かれても、ほとんど接着力の低下がなく、長期間ガラス飛散防止効果を保持するガラス飛散防止用シートに使用される粘着剤組成物を得ることを目的とした、エポキシ基含有シランを配合した粘着剤組成物が開示されている。
【0006】
また、特開平4−202584号公報には、上記特開昭61―7369号公報に開示された粘着剤組成物においても、ガラス表面に接着はもとより他の基材との接着性の点においても高温時の粘着物性の改善はまだ満足のいくものではないとして、室温での使用時はもちろんのこと、高温時の粘着物性のより改善したアクリル系粘着剤を開発することを目的とした、エポキシ基又はメルカプト基含有シラン化合物を添加したアクリル系粘着剤組成物であって、イソシアネート架橋剤で架橋して使用する粘着剤組成物が記載されている。
【0007】
しかしながら、上記特開昭61―7369号公報及び特開平4−202584号公報に開示された粘着剤組成物は、装飾用粘着シートに使用する場合には、上記ガラス装飾用粘着シートに要求される諸物性を充分に満たすことはできない。
即ち、特開昭61―7369号公報に開示された粘着組成物は、初期接着力は高いものの高温高湿時の粘着物性が充分に改善されておらず、また、再剥離が困難であって、例え剥離しても被着体の表面に糊残りが存在するものである。
【0008】
一方、特開平4―202584号公報に開示された粘着剤組成物は、イソシアネートで架橋することにより、耐熱性は向上するものの依然として高温高湿下に置かれた場合の物性が充分ではない。
一般に粘着層を芳香族系のイソシアネートで架橋すると耐候性が悪く、太陽光線が長期間当たると粘着層が変色して黄変する。耐候性を付与して、変色のない粘着シートを得るために、粘着層を脂肪族系のイソシアネートで架橋することが知られているが、脂肪族のイソシアネート架橋剤は反応性が充分でないため要求される物性が得られにくい。
【0009】
上記特開平4―202584号公報に開示された粘着剤組成物においても、芳香族系のイソシアネート架橋剤と脂肪族系のイソシアネート架橋剤が使用されているが、芳香族系のイソシアネート架橋剤を使用した粘着シートは耐候性に劣り、脂肪族系のイソシアネート架橋剤を使用した粘着シートは、高温高湿下に置いた場合特に接着性の変化が大きく、特に再剥離性を必要とされるガラス装飾用粘着シートとして使用するのには問題がある。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、従来の粘着シートの上記の諸欠点を克服し、被着体に貼着された後高温高湿の環境下で長期間置かれても、黄変するなどの外観変化がなく、充分な接着力を維持し、粘着シートの浮き、剥がれがないことはもちろん、経時後においても再剥離が容易であり、剥離時に糊残りしてガラス表面が汚染されることがなく、ガラスの飛散防止の効果を併せ持つ粘着シート及び該粘着シートに使用される粘着剤組成物を提供することにある。
【0011】
本発明者らは、上記問題点を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、特定の単量体から構成されたアクリル系共重合体と特定のシラン化合物からなる粘着剤組成物が、前記の問題点をことごとく解決する粘着シートを製造しうるものであることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
【課題を解決するための手段】
かくして、本発明は、(A)少なくとも
(a)水酸基含有ビニル単量体1.3〜10重量%、
(b)カルボキシル基含有ビニル単量体0.05〜1.0重量%
を重合成分とし、且つ、全重合成分の50重量%以上がアクリル系単量体であるアクリル系共重合体100重量部と
(B)イソシアネート基含有シラン化合物0.05〜2.0重量部
とを含有することを特徴とする粘着剤組成物を提供するものである。
【0013】
好ましくは、上記イソシアネート基含有シラン化合物が下記化学式で表されるγ-イソシアネートプロピルトリメトキシシランであり、
O=C=N-C36-Si(OCH33
好ましくは、上記水酸基含有ビニル単量体がアクリル系単量体であり、カルボキシル基含有ビニル単量体がアクリル系単量体であり、
好ましくは、上記アクリル系共重合体中の水酸基及びカルボキシル基の合計当量の1当量当たり、(C)イソシアネート系架橋剤が0.05〜1当量含有されている粘着剤組成物を提供するものである。
【0014】
本発明の別の目的は、基材シートと、該基材シートの一方の面に積層された
(A)少なくとも
(a)水酸基含有ビニル単量体1.3〜10重量%
(b)カルボキシル基含有ビニル単量体0.05〜1.0重量%
を重合成分とし、且つ、全重合成分の50 重量%以上がアクリル系単量体であるアクリル系共重合体100重量部と
(B)イソシアネート基含有シラン化合物0.05〜2.0重量部
とを含有する粘着剤組成物から形成された粘着剤層
とからなることを特徴とする粘着シートを提供するものである。
【0015】
好ましくは、上記イソシアネート基含有シラン化合物が下記化学式で表されるγ-イソシアネートプロピルトリメトキシシランであり、
O=C=N-C36-Si(OCH33
好ましくは、上記水酸基含有ビニル単量体がアクリル系単量体であり、カルボキシル基含有ビニル単量体がアクリル系単量体であり、
好ましくは、上記アクリル系共重合体中の水酸基及びカルボキシル基の合計当量の1当量当たり、(C)イソシアネート系架橋剤が0.05〜1当量含有されている粘着シートを提供するものである。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の粘着シート及び粘着剤組成物について更に詳しく説明する。
本発明の粘着剤組成物は、特定の組成の(A)アクリル系共重合体と、特定の(B)シラン化合物からなる組成物であって、粘着シートの製造に使用される際には(C)イソシアネート系架橋剤を含有する組成物である。
【0017】
上記アクリル系共重合体は、(A)少なくとも
(a)水酸基含有ビニル単量体1.3〜10重量%
(b)カルボキシル基含有ビニル単量体0.05〜1.0重量%
を重合成分とし、且つ、全重合成分の50重量%以上がアクリル系単量体から構成された共重合体であり、上記以外の種類の単量体を、上記の構成量を損なわれない範囲内でその重合成分として含有することができる。
上記の単量体が、アクリル系共重合体の重合成分であることにより、本発明の粘着剤組成物の他の構成要素と組み合わされることにより、本発明の粘着シートは、良好な初期接着力を有するとともに、高温高湿に置かれた場合においてもその粘着特性が変化せずに、良好な再剥離性を保持することができる。
【0018】
なお、本発明においては、アクリル系共重合体とはアクリル酸及びアクリル酸エステル単量体等のアクリル酸誘導体を主成分とする共重合体を意味するのみならず、メタクリル酸、メタクリル酸エステル単量体等のメタクリル酸誘導体を主成分とする共重合体をも包含する。
【0019】
上記(a)水酸基含有ビニル単量体が、(A)アクリル共重合体中に特定量含有されることにより、(A)アクリル共重合体は、(C)イソシアネート系架橋剤と効果的に架橋して粘着剤層を形成し、粘着剤層に再剥離性を付与することができる。
(A)アクリル系共重合体を構成する(a)水酸基含有ビニル単量体としては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、N−メチロールアクリルアミド、アリルアルコール、メタリルアルコール等の1種又は2種以上を選ぶことができる。
【0020】
上記(a)水酸基含有ビニル単量体が(A)アクリル系共重合体中に占める構成量は、(A)アクリル系共重合体を構成する全単量体の合計を100重量%とすると、1.3〜1.0重量%であり、好ましくは1.5〜5重量%であり、更に好ましくは2〜3重量%である。
【0021】
上記(a)水酸基含有ビニル単量体が(A)アクリル系共重合体中に占める構成量が上記上限値を超えると、架橋反応が過剰に進み接着力が低下する。その結果、飛散防止効果がなくなり、粘着シートが被着体から部分的に分離する浮き現象、剥がれ現象が性ずるので好ましくない。また、上記下限値未満であると、架橋反応が充分に進まず、粘着剤層の凝集力が低下し、糊残りが生ずるので好ましくない。
【0022】
上記(a)水酸基含有ビニル単量体が、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシ低級アルキルアクリレート若しくはヒドロキシ低級メタアクリレート等のアクリル系単量体であると、他の単量体との共重合性が良好で、またイソシアネート系架橋剤との反応性も良好であるため好ましく、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートが更に好ましい。
【0023】
上記(b)カルボキシル基含有ビニル単量体が、(A)アクリル共重合体中に特定量含有されることにより、(A)アクリル共重合体中の(a)水酸基含有ビニル単量体に起因する水酸基側鎖と(C)イソシアネート系架橋剤とを架橋反応させる際に、適度に架橋反応速度をコントロールすることができる。特に、イソシアネート系架橋剤として、脂肪族イソシアネート系架橋剤を使用する場合には(A)アクリル系共重合体中の水酸基側鎖とイソシアネート系架橋剤との架橋反応速度は遅いが、アクリル共重合体中に所定量の(b)カルボキシル基含有ビニル単量体を重合成分として含有せしめることにより、その架橋反応を効果的に促進させることができる。
【0024】
上記(b)カルボキシル基含有ビニル単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、シトラコン酸、桂皮酸、コハク酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリ レート、マレイン酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、フマル酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、フタル酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、1,2-ジカルボキシシクロヘキサンモノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸ダイマー、ω-カルボキシ-ポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。他の単量体との反応性、及びイソシアネート系架橋剤との反応性からアクリル酸、メタクリル酸が好ましく、アクリル酸が更に好ましい
【0025】
上記(b)カルボキシル基含有ビニル単量体が(A)アクリル系共重合体中に占める構成量は、(A)アクリル系共重合体を構成する全単量体の合計を100重量%とすると、0.05〜1.0重量%であり、好ましくは0.1〜0.7重量%であり、更に好ましくは0.3〜0.5重量%である。
【0026】
上記(b)カルボキシル基含有ビニル単量体が(A)アクリル系共重合体中に占める構成量が上記上限値を超えると、イソシアネート架橋剤を配合した場合にその粘着剤組成物のポットライフが短くなり、塗工作業性に問題が生ずるので好ましくない。また、上記下限値未満であると、(A)アクリル系共重合体中の水酸基側鎖とイソシアネート系架橋剤との架橋反応速度が遅くなり、糊残りの現象が現れるので好ましくない。
【0027】
上記(A)アクリル系共重合体は、それを構成する全単量体成分の50重量%以上がアクリル系単量体から構成される。
(A)アクリル系共重合体を構成する、アクリル系単量体としては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n-ブチルアクリレート、i-ブチルアクリレート、n-オクチルアクリレート、i-オクチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、n-ノニルアクリレート、i-ノニルアクリレート、n-デシルアクリレート、n-ドデシルアクリレート等のアクリル酸の炭素数1〜12の直鎖もしくは分枝アルキルエステル;例えば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n-ブチルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、n-ドデシルメタクリレート等のメタクリル酸の炭素数1〜12の直鎖もしくは分枝アルキルエステル、更にはこれらの各種誘導体の1種又は2種以上を選ぶことができる。
【0028】
なお、前記(a)水酸基含有ビニル単量体が、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等の分子内に水酸基を含有するアクリル系単量体である場合、本発明においては、該(a)水酸基含有アクリル系単量体の構成量は、上記アクリル系単量体の構成量として積算し、また前記(b)カルボキシル基含有ビニル単量体が、例えば、アクリル酸、メタクリル酸等の分子内にカルボキシル基を含有するアクリル系単量体である場合も同様に上記アクリル系単量体の構成量として積算する。
【0029】
上記アクリル系単量体が(A)アクリル系共重合体中に占める構成量は、(A)アクリル系共重合体を構成する全単量体の合計を100重量%とすると、50重量%以上であり、好ましくは70重量%以上であり、更に好ましくは90重量%以上である。
【0030】
上記アクリル系単量体が(A)アクリル系共重合体中に占める構成量が、上記下限値未満であると、他のアクリル系共重合体との重合性が低下するため、物性を得ることが困難となるとともに、アクリル共重合体の耐候性が低下し、太陽光線を長期間受ける場所で粘着シートを使用する場合には黄変の可能性があるため好ましくない。
【0031】
上記アクリル系共重合体は、(a)水酸基含有ビニル単量体、(b)カルボキシル基含有ビニル単量体、アクリル系単量体から構成されるが、その他の種類の単量体を、上記の単量体の構成量を損なわれない範囲内でアクリル系共重合体の重合成分として使用することができる。
その他の種類の単量体としては、例えば、スチレン、αーメチルスチレン、tーブチルスチレン、pー クロロスチレン、クロロメチルスチレン、ビニルトルエン等の芳香族モノビニル単量体;例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル単量体;例えば、蟻酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、「バーサチック酸ビニル」等を挙げることができる。
【0032】
上記(A)アクリル系共重合体のガラス転移温度(Tg)は―75〜―25℃が好ましく、―50〜―35℃が更に好ましい。
【0033】
ガラス転移温度(Tg)が上記上限値を超えると、粘着剤層が硬くなり、接着力が低下して飛散防止の効果がなくなる傾向があるため好ましくない。
また、上記下限値未満であると、上限値を超えた場合と同様に接着力が低下するので好ましくない。
【0034】
尚、本発明においてTgとは、共重合体を構成するそれぞれの単量体成分の単独重合体のTgを用いて次式によって求めたものである。
1/Tg=w1/Tg1+w2/Tg2+・・・・・・・・・+w/Tg
但し、Tgは共重合体のガラス転移温度であり、Tg1、Tg2、・・・・、Tgkは各単量体成分の単独重合体のTgであり、w1、w2、・・・・、wkは各単量体成分の重量分率を表わし、w1+w2+・・・・+wk=1である。
【0035】
上記(A)アクリル系共重合体の重合度は重量平均分子量(Mw)で30万〜80万が好ましく、40〜60万が更に好ましい。
【0036】
重量平均分子量(Mw)が上記下限値未満であると、剥離後に粘着剤が被着体表面に糊残りする傾向があるので好ましくない。
重量平均分子量(Mw)が上記上限値を超えると、粘着剤組成物の粘度が高くなり、粘着剤組成物を基材シートに塗工する場合に塗工作業性が低下する傾向があるので好ましくない。
【0037】
尚、本明細書における上記重量平均分子量(Mw)の値には、ゲルパーミネーションクロマトグラフィー(GPC)法により、定法に従って測定された値が用いられる。
【0038】
上記(A)アクリル系共重合体は、公知の重合法、例えば塊状重合、溶液重合、乳化重合、懸濁重合等の重合方法で前記のモノマーを重合することにより製造することができるが、乳化剤等の不純物が入りにくく、重合物に直接(B)シラン化合物、(C)イソシアネート系架橋剤と混合して、好適な本発明の粘着剤組成物を得ることができることから溶液重合法により製造することが好ましい。
【0039】
溶液重合は、一般に、重合槽内に所定の有機溶媒、単量体、重合開始剤、及び、必要に応じて用いられる連鎖移動剤を仕込み、窒素気流中又は有機溶媒の還流温度で、撹拌しながら数時間加熱反応させることにより行われる。この場合に有機溶媒、単量体及び/又は重合開始剤の少なくとも一部を逐次添加してもよい。
【0040】
上記の重合用有機溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、n-プロピルベンゼン、t-ブチルベンゼン、o-キシレン、m-キシレン、p-キシレン、テトラリン、デカリン、芳香族ナフサなどの芳香族炭化水素類;例えば、n-ヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタン、i-オクタン、n-デカン、ジペンテン、石油スピリット、石油ナフサ、テレピン油などの脂肪系もしくは脂環族系炭化水素類;例えば、酢酸エチル、酢酸n-ブチル、酢酸n-アミル、酢酸2-ヒドロキシエチル、酢酸2-ブトキシエチル、酢酸3-メトキシブチル、安息香酸メチルなどのエステル類;例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチル-i-ブチルケトン、イソホロン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノンなどのケトン類;例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルなどのグリコールエーテル類;例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n-プロピルアルコール、i-プロピルアルコール、n-ブチルアルコール、i-ブチルアルコール、s-ブチルアルコール、t-ブチルアルコールなどのアルコール類;などを挙げることができる。これらの有機溶媒はそれぞれ単独で、又は2種以上混合して用いることができる。
【0041】
上記の重合用有機溶媒としては、構成要素を安定に溶解し、イソシアネート系架橋剤の反応性に悪影響を及ぼさないものであれば特に制限はないが、芳香族炭化水素類、エステル類、ケトン類を使用することが好ましい。(A)アクリル系共重合体の溶解性、重合反応の容易さなどから、特にトルエン、酢酸エチル、メチルエチルケトンを使用することが好ましい。
【0042】
上記の重合開始剤としては、通常の溶液重合で使用できる有機過酸化物、アゾ化合物などを使用することが可能である。
【0043】
このような有機過酸化物としては、例えば、t-ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、カプロイルパーオキシド、ジ-i-プロピルパーオキシジカーボネート、ジ-2-エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、t-ブチルパーオキシビバレート、2,2-ビス(4,4-ジ-t-ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2-ビス(4,4-ジ-t-アミルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2-ビス(4,4-ジ-t-オクチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2-ビス(4,4-ジ-α-クミルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2-ビス(4,4-ジ-t-ブチルパーオキシシクロヘキシル)ブタン、2,2-ビス(4,4-ジ-t-オクチルパーオキシシクロヘキシル)ブタンなどが挙げられ、アゾ化合物としては、例えば、2,2’-アゾビス-i-ブチロニトリル、2,2’-アゾビス-2,4-ジメチルバレロニトリル、2,2’-アゾビス-4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリルなどを挙げることができる。
【0044】
これら有機過酸化物のうち、(A)アクリル系共重合体の重合に際しては、重合反応中にグラフト反応を起こさない重合開始剤が好ましく、特にアゾビス系が好ましい。その使用量は、通常、単量体合計100重量部に対して0.01〜2重量部、好ましくは0.1〜1.0重量部である。
【0045】
また、本発明発明に用いられる(A)アクリル系共重合体の製造に際しては、連鎖移動剤は使用しないのが普通であるが、本発明の目的及び効果を損なわない範囲で、必要に応じて使用することは可能である。
【0046】
このような連鎖移動剤としては、例えば、シアノ酢酸;シアノ酢酸の炭素数1〜8のアルキルエステル類;ブロモ酢酸;ブロモ酢酸の炭素数1〜8のアルキルエステル類;アントラセン、フェナントレン、フルオレン、9-フェニルフルオレンなどの芳香族化合物類;p-ニトロアニリン、ニトロベンゼン、ジニトロベンゼン、p-ニトロ安息香酸、p-ニトロフェノール、p-ニトロトルエンなどの芳香族ニトロ化合物類;ベンゾキノン、2,3,5,6-テトラメチル-p-ベンゾキノンなどのベンゾキノン誘導体類;トリブチルボランなどのボラン誘導体;四臭化炭素、四塩化炭素、1,1,2,2-テトラブロモエタン、トリブロモエチレン、トリクロロエチレン、ブロモトリクロロメタン、トリブロモメタン、3-クロロ-1-プロペンなどのハロゲン化炭化水素類;クロラール、フラルデヒドなどのアルデヒド類:炭素数1〜18のアルキルメルカプタン類;チオフェノール、トルエンメルカプタンなどの芳香族メルカプタン類;メルカプト酢酸、メルカプト酢酸の炭素数1〜10のアルキルエステル類;炭素数1〜12のヒドロキシアルキルメルカプタン類;ビネン、ターピノレンなどのテルペン類;などを挙げることができる。
【0047】
重合温度は、一般に約30〜180℃、好ましくは40〜150℃、より好ましくは50〜90℃の範囲である。
尚、溶液重合法などで得られた重合物中に未反応の単量体が含まれる場合は、該単量体を除くために、メタノールなどによる再沈澱法で精製することも可能である。
【0048】
本発明の粘着剤組成物を(A)アクリル系共重合体と共に構成する(B)イソシアネート基含有シラン化合物としては、イソシアネート基が結合された分子量1000以下の低分子量のシラン化合物であればよく、例えば、γ-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、γ-イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、γ-イソシアネートプロピルメチルジメトキシシラン、等を挙げることができるが、下記化学式5で表されるγ-イソシアネートプロピルトリメトキシシランが好ましい。
O=C=N-C36-Si(OCH33
【0049】
上記(B)イソシアネート基含有シラン化合物が本発明の粘着剤組成物中に占める構成量は、(A)アクリル系共重合体を100重量部とすると、0.05〜2.0重量部であり、好ましくは0.25〜1.5重量部であり、更に好ましくは0.5〜1.0重量部である。
【0050】
(B)イソシアネート基含有シラン化合物が粘着剤組成物中に占める構成量が、上記上限値を超えるとガラスに対する接着力が過大となり、再剥離できず、糊残りが生ずるため好ましくなく、上記下限値未満であると、ガラスに対する接着力が低下し、剥がれ浮きが生ずるため好ましくない。
【0051】
本発明の粘着剤組成物は、特定の組成の(A)アクリル系共重合体と、特定の(B)シラン化合物からなる組成物であって、粘着シートの製造に使用される際には(C)イソシアネート系架橋剤を含有する組成物である。
上記(C)イソシアネート系架橋剤としては、炭素数1〜1000程度の有機化合物又は珪素化合物に、イソシアネート基が結合されていればよく、例えば、トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソフォロンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンビスメチルイソシアネート、4,4−メチレンビスシクロヘキシルイソシアネート、トリレンジイソシアネート−3官能アルコール付加物、イソフォロンジイソシアネート−2官能アルコール付加物、イソフォロンジイソシアネート−3官能アルコール付加物、ヘキサメチレンジイソシアネート−2官能アルコール付加物、ヘキサメチレンジイソシアネート−3官能アルコール付加物、トリレンジイソシアネート三量体、イソフォロンジイソシアネート三量体、ヘキサメチレンジイソシアネート三量体、ビュレット型ヘキサメチレンジイソシアネート三量体、n−ブチルイソシアネート、n−ヘキシルイソシアネート、トリメチルシリコンイソシアネート、ジメチルシリコンジイソシアネート、モノメチルシリコントリイソシアネート等が挙げられる。
【0052】
なお、前記(B)イソシアネート基含有シラン化合物は、上記(C)イソシアネート系架橋剤とは見なさない。
【0053】
これらのイソシアネート系架橋剤の中でも、本発明の粘着シートに利用された後、粘着シートを構成する粘着層が経時で黄変しないという観点から、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソフォロンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンビスメチルイソシアネート、4,4−メチレンビスシクロヘキシルイソシアネート、イソフォロンジイソシアネート−2官能アルコール付加物、イソフォロンジイソシアネート−3官能アルコール付加物、ヘキサメチレンジイソシアネート−2官能アルコール付加物、ヘキサメチレンジイソシアネート−3官能アルコール付加物等の脂肪族イソシアネート系架橋剤が好ましく、ヘキサメチレンジイソシアネートが特に好ましい。
【0054】
上記(C)イソシアネート系架橋剤の粘着剤組成物中の構成量は、アクリル系共重合体中の水酸基及びカルボキシル基の合計当量の1当量当たり、0.05〜1当量が好ましく、更に好ましくは0.2〜0.5当量である。
【0055】
上記(C)イソシアネート系架橋剤の粘着剤組成物中の構成量が上記上限値を超えると、粘着シートを被着体に貼り合わせた後、被着体が高温下に置かれた際に、粘着シートの接着力が低下するで好ましくない。
また、上記下限値未満であると、架橋反応が不十分となり、粘着シートを剥離する際に粘着剤が被着体表面に糊残りするので好ましくない。
【0056】
本発明の粘着剤組成物に第3級アルコールが含有されていることが好ましい。
本発明の粘着剤組成物は、(C)イソシアネート系架橋剤を含有する状態にあっては、第3級アルコールを粘着剤組成物中に含有させることにより、(A)アクリル系共重合体中のカルボキシル基側鎖とイソシアネートとの架橋反応を抑制し、溶液状態の粘着剤組成物のポットライフを長く保つことができる。
【0057】
第3アルコールとしては、第3プチルアルコール、第3ペンチルアルコール、第3ヘキシルアルコール、第3ヘプチルアルコール等を挙げることができるが、塗工膜中に残存しにくい点から第3ブチルアルコールが好ましい。
【0058】
本発明の粘着剤組成物中に含有される第3級アルコールの量は、アクリル系共重合体100重量部に対して5〜40重量部が好ましく、更に好ましくは10〜30重量部である。
第3級アルコールの粘着剤組成物中に占める構成量が、上記上限値を超えるとアクリル共重合体の溶媒への溶解性が低下し、粘着剤組成物中の各構成成分の成分分布が不均一になる傾向があり、また粘着シートに粘着剤組成物を塗工乾燥した後においてもアルコールが残留し、架橋反応を阻害する傾向があるため好ましくなく、上記下限値未満であると粘着剤組成物のポットライフが短くなる傾向があるため好ましくない。
【0059】
上記(A)アクリル系共重合体、(B)イソシアネート基含有シラン化合物及び(C)イソシアネート系架橋剤以外に、本発明の粘着剤組成物中に存在してもよいものとしては、例えば、顔料、染料、消泡剤、レベルング剤等を挙げることができる。
【0060】
本発明の粘着剤組成物は(A)アクリル系共重合体、(B)イソシアネート基含有シラン化合物、及び必要に応じてその他の構成要素を公知の方法で配合することにより製造することができる。
【0061】
具体的な製造例としては、例えば、溶液重合で得られた(A)アクリル系共重合体に他の要素を添加し、混合する方法、固形の(A)アクリル系共重合体を溶媒に溶解した後、他の構成要素を添加し、混合する方法等が上げられるが、製造が容易であるという観点から、溶液重合で得られた(A)アクリル系共重合体に他の構成要素を添加し、混合する方法が好ましい。
【0062】
上記製造は、イソシアネート架橋剤を含有した粘着剤組成物を製造する際には、イソシアネート系架橋剤が架橋反応を開始しない条件で行うことが好ましく、例えば、イソシアネート系架橋剤の架橋反応温度以下で製造することが好ましい。
【0063】
本発明の粘着シートは、基材シートと、該基材シートの一方の面に積層された上記本発明の粘着剤組成物から形成された粘着剤層からなる粘着シートである。
【0064】
本発明の粘着シートを構成する上記基材シートの材料としては、シートを形成する材料であれば特に制限はなく、例えば、アルミニウム、銅、鉄の金属箔、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート/イソフタレート共重合体等のポリエステル系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン系樹脂、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリ4フッ化エチレン、エチレン−4フッ化エチレン共重合体等のポリフッ化エチレン系樹脂、ナイロン6、ナイロン6,6等のポリアミド、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリビニルアルコール、ビニロン等のビニル重合体、三酢酸セルロース、セロファン等のセルロース系樹脂、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸ブチル等のアクリル系樹脂、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリイミド等の合成樹脂フィルム又はシート、上質紙、薄葉紙、グラシン紙、硫酸紙等の紙、硝子繊維、天然繊維、合成繊維等の単層体又は複数の積層体が挙げられる。
【0065】
これらの中で、高温高湿下に置かれて変質しないという観点から、樹脂系の基材シートが好ましく、更に価格面を考慮するとポリエチレンテレフタレート若しくはポリ塩化ビニルの基材シートが特に好ましい。
【0066】
また、基材シートに対する粘着剤層の投錨性を上げるために、基材シートの表面に対してコロナ放電処理、プラズマ処理、プライマーコート、脱脂処理、表面粗面化処理等の公知の接着性を改良する処理を施しても良いし、帯電防止のために帯電防止層が設けられても良い。
【0067】
上記基材シートの厚さは特に限定されないが、一般には500μm以下、好ましくは5〜300μm、更に好ましくは10〜200μm程度の厚さを例示することができる。
【0068】
本発明の粘着シートを構成する粘着剤層は前記本発明の粘着剤組成物から形成され、例えば、上記基材シート上に、溶液状の本発明の粘着剤組成物を塗工し、加熱乾燥して製造することができる。
【0069】
上記粘着剤層の厚みは、特に制限はないが、一般には5〜100μmが好ましく、更に好ましくは10〜40μm程度の厚さを例示することができる。
粘着剤組成物の厚みが上記上限値を超えると、基材シートに対する塗工性が低下するとともに気泡を巻き込みやすくなって乾燥時の発泡の原因となるので好ましくなく、また、上記下限値未満であると、接着力が低下し、特に凹凸のある被着体に対して追随することができないので好ましくない。
【0070】
本発明の粘着シートを被着体に貼り合せるまで、その粘着剤層を汚染から保護する目的で、粘着剤層の表面にセパレーターを積層することができる。
上記セパレーターとしては、基材で例示しした合成樹脂シート、紙、布、不織布等を離型処理したものを使用することができる。
【0071】
離型処理としては、例えば、フッ素系樹脂、パラフィンワックス、モンタンワックス、合成ワックス等のワックス類や、シリコーン等の離型剤を公知のベヒクル例えば、アクリル系樹脂、繊維素系樹脂、ビニル系樹脂等に添加してなる塗料を基材に塗布して該塗料の塗膜を形成したり、離型性の樹脂例えば、フッ素系樹脂、シリコーン、ポリシロキサン、メラミン系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、電子放射線架橋型の多官能アクリレート、ポリエステル、エポキシ、チタンキレート、ポリイミン等の樹脂を基材に塗布して該樹脂の皮膜を形成したり、前記樹脂をエクストルージョンコートなどで基材上にラミレートし離型層を0.1〜1μm程度の厚さに形成する方法が挙げられる。
【0072】
本発明の粘着シートは、基材シート上に本発明の粘着剤組成物を積層することによって得られる。粘着剤組成物が溶液状である場合には、溶液状の粘着剤組成物を基材シートに直接塗工する直接塗工法や、溶液状の粘着剤組成物をセパレーターへ塗工したのち基材シートと貼り合せる転写塗工法などにより製造される。
【0073】
直接塗工法においては、基材シートに粘着剤を塗工し加熱乾燥した後にセパレーターを貼り合せる。塗工は、ロールコーティング、ダイコーティング、グラビアコーティング、コンマコーティング、スクリーン印刷等の慣用の方法により行われる。
【0074】
一方、転写塗工法においては、セパレーターに粘着剤を塗工し加熱乾燥した後に基材シートを貼りあわせる。塗工方法については、直接塗工と同様の方法が使用できる。
得られた粘着シートは、40℃以下の温度でエージング処理し、架橋反応を充分進めた後使用することが好ましい。
【0075】
本発明の粘着シートは、各種の被着体に貼着して使用することができるが、特にガラスに対して貼着し、装飾用粘着シートとして使用する場合には、被着体に貼着された後高温高湿の環境下で長期間置かれても、黄変するなどの外観変化がなく、充分な接着力を維持し、粘着シートの浮き、剥がれがない。また、経時後においても再剥離が容易であり、剥離時に糊残りしてガラス表面が汚染されることがなく、ガラスの飛散防止の効果を併せ持つ。
【0076】
【実施例】
以下に実施例及び比較例を挙げ、本発明の効果を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。なお、実施例及び比較例において用いた試験片の作成、並びに各種の試験方法及び評価方法は以下のとおりである。
【0077】
(1) 試験用粘着シートの作成
この接着剤組成物を厚さ50μmのポリエステルフイルムに、乾燥後の粘着剤層の厚さが25μmとなる様に塗布し、100℃の熱風乾燥機で1分間加熱乾燥した。
これに剥離紙としてシリコンコートされた38μmポリエステルフイルムセパレーターをあて、粘着シートを得、その後23℃、50%相対湿度の条件下で7日間養生したものを粘着特性測定用の試料とした。
【0078】
(2)初期接着力
前(1)項により作製した試験用粘着シートを25mm×150mmにカットしたのち、この粘着シート片からセパレーターを取り去り、その粘着層をガラス表面にJIS Z-0237の方法に従って圧着して試験サンプルとした。このサンプルを23℃、50%RHの条件下で30分間放置した後、剥離速度300mm/min で180゜剥離を行い接着力を測定した。
【0079】
粘着シートのガラス表面に対する初期接着力は、5〜20N/25mm、好ましくは10〜15N/25mmである。
初期接着力が上記下限値未満であると、ガラス飛散防止効果が得られないため好ましくなく、初期接着力が上記上限値を超えると再剥離が困難であるため好ましくない。
【0080】
(3) 高温高湿処理後接着力
前(1)項と同様にして作製した試験サンプルを60℃、相対湿度98%の恒温恒湿槽の中に60日間セットした後、23℃、50%RHの条件下で1時間放置(コンディショニング処理)した後、剥離速度300mm/minで180゜剥離における接着力を測定した。
【0081】
粘着シートのガラス表面に対する高温高湿処理後の接着力は、5〜20N/25mm、好ましくは10〜15N/25mmである。
【0082】
(4) 温水処理後接着力
前(1)項と同様にして作製した試験サンプルを40℃の温水中に7日間浸漬した後、23℃、50%RHの条件下で取り出し、ペーパータオルで余分な水を拭き取り、直ちに剥離速度300mm/minで180゜剥離における接着力を測定した。
【0083】
粘着シートのガラス表面に対する温水湿処理後の接着力は、5〜20N/25mm、好ましくは10〜15N/25mmである。
【0084】
(5)糊残り
上記(3)高温高湿処理後のサンプル及び(4)温水処理後のサンプルについては、ガラス板から粘着シートを剥離し、粘着剤がガラス板表面に残っている状態を観察し、糊残り性を評価した。評価基準は以下のとおりである。
【0085】
(評価基準)
○:粘着剤が残存が認められない。
△:粘着剤の残存がわずかに認められる。
×:粘着剤の残存かなり認められる。
【0086】
(A)アクリル系共重合体の製造
製造例1
温度計、攪拌機、窒素導入管及び還流冷却器を備えた反応器内に、酢酸エチル37.5重量部を入れ、また別の容器に、2-エチルヘキシルアクリレート(EHA)50重量部、メチルアクリレート(MA)47.2重量部、(a)水酸基含有ビニル単量体として2-ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)2.5重量部、(b)カルボキシル基含有ビニル単量体としてアクリル酸(AA)0.3重量部を入れ混合して単量体混合物とし、その単量体混合物中の25.0重量部を反応容器中に加え、次いで該反応容器の空気を窒素ガスで置換した後、重合開始剤としてアゾイソブチロニトリル(AIBN)0.03重量部を添加して、攪拌下に窒素雰囲気中で該反応容器内の混合物温度を80℃に昇温させて初期反応を開始させた。80℃に昇温後約20分後に初期反応がほぼ終了した後、還流下で残りの単量体混合物75.0重量部、及び並びに酢酸エチル32.5重量部と及びAIBN0.25重量部との混合物をそれぞれ逐次添加しながら約1.5時間で逐次添加して環流下で反応させ、引き続いて更に1.5時間還流状態に温度を維持し反応させた。その後、酢酸エチル25重量部にAIBN0.25重量部を溶解させた溶液を30分間かけて還流状態で滴下し、さらに2時間反応させた。反応終了後、反応混合物に酢酸エチル35重量部、t-ブチルアルコール20重量部を添加してで希釈して、固形分40.1重量%の(A)アクリル系共重合体溶液を得た。
【0087】
得られた(A)アクリル系共重合体溶液の粘度は5200mPa・s、t-ブタノールの含有量はアクリル単量体100重量部に対して20重量部含有されており、またアクリル系共重合体のガラス転移温度(Tg)は約-42.6℃、重量平均分子量(Mw)は約55万であった。
【0088】
製造例2〜10
単量体組成を表1に示す単量体組成に変更する以外は製造例1と同様にしてアクリル系共重合体溶液(A)を得た。得られたアクリル系共重合体溶液のガラス転移点(Tg)、重量平均分子量(Mw)を表1に示す。
【0089】
【表1】
Figure 0004376491
【0090】
尚、表1における単量体の略号は以下のとおりである。
HEA :2-ヒドロキシエチルアクリレート
HEMA:2-ヒドロキシエチルメタクリレート
AA :アクリル酸
MAA :メタクリル酸
EHA :2-エチルヘキシルアクリレート
MA :メチルアクリレート
EA :エチルアクリレート
VAC :酢酸ビニル
【0091】

粘着シートの作成
実施例1
アクリル系共重合体(A)として、製造例1のアクリル系共重合体溶液250重量部(固形分100重量部)を用い、これに(B)イソシアネート基含有シラン化合物としてγ-イソシアネートプロピルトリメトキシシラン0.75重量部、(C)イソシアネート系架橋剤としてヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)1.5重量部(0.30当量)を添加し、十分に攪拌して粘着剤組成物の溶液を得た。
【0092】
この粘着剤組成物を用い、前記の試験用粘着シートの作成方法に従って試験用粘着シートを作成し、前記の各種物性試験を行った。得られた結果を表3に示す。
【0093】
実施例2〜4及び比較例1〜7
表2に示す配合組成に配合組成を変更する以外は実施例1と同様にして粘着剤組成物の溶液を得た。
【0094】
【表2】
Figure 0004376491
【0095】
尚、表2における単量体の略号は以下のとおりである。
*1 : アクリル系共重合体の固形分の重量部
*2 : 重量部
*3 :アクリル系共重合体中の水酸基及びカルボキシル基の合計当量の1当量当たりに対するイソシアネート架橋剤の添加当量数
*4 : 重量部
IPTS :γ-イソシアネートプロピルトリメトキシシラン
GPTS :3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン
MPTS :3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン
HMDI :ヘキサメチレンジイソシアネート
t-BuOH:t-ブタノール
【0096】
【表3】
Figure 0004376491
【0097】
【発明の効果】
本発明の粘着剤組成物は、特定の組成を有するアクリル系共重合体(A)と、特定の構造をもつシラン化合物(B)からなる組成物である。
本発明の粘着剤組成物がかかる特徴を有することにより、該粘着剤組成物から形成された粘着剤層と基材シートとからなる本発明の粘着シートは、被着体、特にガラス板に貼着された後、高温高湿の環境下で長期間置かれても、黄変するなどの外観変化がなく、充分な接着力を維持し、粘着シートの浮き、剥がれがないことはもちろん、経時後においても再剥離が容易であり、剥離時に糊残りしてガラス表面が汚染されることがなく、ガラスの飛散防止の効果を併せ持つことができる。

Claims (12)

  1. (A)少なくとも
    (a)水酸基含有ビニル単量体1.3〜10重量%、
    (b)カルボキシル基含有ビニル単量体0.05〜1.0重量%
    を重合成分とし、且つ、全重合成分の50重量%以上がアクリル系単量体であるアクリル系共重合体100重量部と
    (B)イソシアネート基含有シラン化合物を0.05〜2.0重量部と
    アクリル系共重合体中の水酸基及びカルボキシル基の合計当量の1当量当たり、(C)イソシアネート系架橋剤 0.05〜1当量とを含有し、
    アクリル系共重合体100重量部に対してt−ブタノールが5〜40重量部含有されていることを特徴とする粘着剤組成物。
  2. 上記イソシアネート基含有シラン化合物が下記化学式で表されるγ−イソシアネートプロピルトリメトキシシランであることを特徴とする請求項1に記載の粘着剤組成物。
    O=C=N−C−Si(OCH
  3. 上記水酸基含有ビニル単量体がアクリル系単量体であり、カルボキシル基含有ビニル単量体がアクリル系単量体であることを特徴とする請求項1又は2に記載の粘着剤組成物。
  4. 上記アクリル系共重合体のガラス転移点(Tg)が―75〜―25℃であることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の粘着剤組成物。
  5. 上記イソシアネート系架橋剤が脂肪族イソシアネート系架橋剤であることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の粘着剤組成物。
  6. 基材シートと、該基材シートの一方の面に積層された
    (A)少なくとも
    (a)水酸基含有ビニル単量体1.3〜10重量%
    (b)カルボキシル基含有ビニル単量体0.05〜1.0重量%
    を重合成分とし、且つ、全重合成分の50 重量%以上がアクリル系単量体であるアクリル系共重合体100重量部と
    (B)イソシアネート基含有シラン化合物0.05〜2.0重量部
    アクリル系共重合体中の水酸基及びカルボキシル基の合計当量の1当量当たり、(C)イソシアネート系架橋剤 0.05〜1当量とを含有し、
    アクリル系共重合体100重量部に対してt−ブタノールが5〜40重量部含有されている粘着剤層とからなることを特徴とする粘着シート。
  7. 上記イソシアネート基含有シラン化合物が下記化学式で表されるγ−イソシアネートプロピルトリメトキシシランであることを特徴とする請求項に記載の粘着シート。
    O=C=N−C−Si(OCH
  8. 上記水酸基含有ビニル単量体がアクリル系単量体であり、カルボキシル基含有ビニル単量体がアクリル系単量体であることを特徴とする請求項又はのいずれかに記載の粘着シート。
  9. 上記アクリル系共重合体のガラス転移点(Tg)が―75〜―25℃であることを特徴とする請求項のいずれかに記載の粘着シート。
  10. 上記イソシアネート系架橋剤が脂肪族イソシアネート系架橋剤であることを特徴とする請求項のいずれかに記載の粘着シート。
  11. 上記基材シートの素材がポリエチレンテレフタレート若しくはポリ塩化ビニルであることを特徴とする請求項10のいずれかに記載の粘着シート。
  12. 上記粘着シートが窓ガラス装飾用であることを特徴とする請求項11のいずれかに記載の粘着シート。
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