JP4375405B2 - 発酵法によるプリンヌクレオシドの製造法 - Google Patents
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Description
本発明にいうエシェリヒア属に属する微生物の例としては、エシェリヒア・コリ(E.coli) 等があげられる。E.coliを遺伝子工学的手法を用いて育種する場合には、E.coli K12株及びその誘導体を用いることができる。
エシェリヒア属に属する微生物におけるプリンヌクレオシド生合成に関与する全酵素と、同酵素が触媒する全反応はすでに明らかにされている(Escherichia coli and Salmonella CELLULAR AND MOLECULAR BIOLOGY second Edition vol. 1 and vol. 2 ASM PRESS WASHINGTON D.C.)。これら酵素のうち、律速段階となっている反応を触媒する酵素の酵素活性を上昇させることによって、プリンヌクレオシド生産能を付与することができる。そのような律速段階となっている反応を触媒する酵素は、たとえばPRPPアミドトランスフェラーゼ(PRPP amidotransferase)やPRPPシンセターゼ(PRPP synthetase)である。
にも、トランソポゾン(Berg, D.E. and Berg, C.M., Bio/Technol., 1, 417(1983))やMuファージ(特開平2-109985)も含む。遺伝子を相同組換え用プラスミド等を用いた方法で染色体に組込んでコピー数を上昇させることも可能である。
エシェリヒア属に属する微生物のプリンヌクレオシド生合成経路は明らかになっており、プリンヌクレオシド生合成に関与する全酵素と、同酵素が触媒する全反応はすでに明らかにされている(Escherichia coli and Salmonella CELLULAR AND MOLECULAR BIOLOGY second Edition vol. 1 and vol. 2 ASM PRESS WASHINGTON D.C.)。これらに加え、他の代謝産物にいたる反応のいくつかは明らかになっている。
細胞外に排出したプリンヌクレオシドをふたたび細胞内へ取り込むことはプリンヌクレオシドを蓄積する上では、エネルギー的に不合理なことと考えられるので、プリンヌクレオシドの取り込みを弱化することは有効なことである。
プリンヌクレオシド生産能を獲得した微生物を用いて発酵法によってプリンヌクレオシドを製造する方法を以下説明する。
ロース、リボースや澱粉の加水分解物などの糖類、グリセロール、マンニトールやソルビトールなどのアルコール類、グルコン酸、フマール酸、クエン酸やコハク酸等の有機酸類を用いることができる。窒素源としては、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、リン酸アンモニウム等の無機アンモニウム塩、大豆加水分解物などの有機窒素、アンモニアガス、アンモニア水等を用いることができる。有機微量栄養素としては、ビタミンB1等のビタミン類、アデニンやRNA等の核酸類などの要求物質または酵母エキス等を適量含有させることが望ましい。これらの他に、必要に応じて、リン酸カルシウム、硫酸マグネシウム、鉄イオン、マンガンイオン等が少量添加される。
まずエシェリヒア・コリ(E.coli) K12のW3110株(ATCC27325)の染色体DNAよりPCR法を用いてPRPPアミドトランスフェラーゼ(PRPP amidotransferase)をコードする遺伝子であるpurF、プリン・リプレッサー(purine repressor)をコードする遺伝子であるpurR、プリンヌクレオシド・フォスフォリラーゼ(purine nucleoside phosphorylase)をコードする遺伝子であるdeoD、サクシニル−AMPシンターゼ(succinyl-AMP synthase)をコードする遺伝子であるpurA、アデノシン・デアミナーゼ(adenosine deaminase)をコードする遺伝子であるadd、イノシン−グアノシン・キナーゼ(inosine-guanosine kinase)をコードする遺伝子であるgsk、GMPレダクターゼ(GMP reductase)をコードする遺伝子であるguaC、6−フォスフォグルコン酸デヒドラーゼ(6-phosphogluconate dehydrase)をコードする遺伝子であるedd、フォスフォグルコース・イソメラーゼ(phophoglucose isomerase)をコードする遺伝子であるpgi、アデニン・デアミナーゼ(adenine deaminase)をコードする遺伝子であるyicP、PRPPシンセターゼ(PRPP synthetase)をコードする遺伝子であるprs、キサントシン・フォスフォリラーゼ(xanthosine phosphorylase)をコードする遺伝子であるxapAおよびヌクレオシド・パーミアーゼ(nucleoside permiase)をコードする遺伝子であるnupGをクローニングし、これらの遺伝子をそれぞれの目的に応じて変異させる。この際使用する染色体DNAはE.coli由来であればどの菌株でもよい。
ton Press(1989))、特定の部分のDNAを化学合成する方法あるいは当該遺伝子をヒドロキシアミン処理する方法や当該遺伝子を保有する菌株を紫外線照射処理、もしくはニトロソグアニジンや亜硝酸などの化学薬剤処理をする方法がある。また遺伝子の機能を完全に不活化する目的の場合には適当な制限酵素サイトにDNAの付加や欠失を入れる方法がある。
射処理、もしくはニトロソグアニジンや亜硝酸などの化学薬剤処理して、目的の遺伝子の機能を不活化することも行われる。
1)PRPPアミドトランスフェラーゼ遺伝子(purF)欠失株の取得
E. coli K12のW3110株(ATCC27325)の染色体DNAを鋳型として用い、遺伝子データバンク(GenBank Accession No.M26893)の情報に基づき作製された、CTCCTGCAGAACGAGGAAAAAGACGTATG(配列番号1)とCTCAAGCTTTCATCCTTCGTTATGCATTTCG(配列番号2)の塩基配列を有する29merと31merの両端プライマーによるPCR法(94℃,30sec; 55℃,1min; 72℃,2min;
30サイクル; Gene Amp PCR System Model9600(ハ゜ーキンエルマー社製))を行い、SD-ATGと翻訳終止コドンをカバーするpurF構造遺伝子領域の約1530bpの増幅断片をpCRTMIIベクター(Invitrogen社製)にクローン化した。本ベクターにはPCR産物増幅断片をそのままクローニングすることができ、また、クローニングサイトの両近傍に制限酵素サイトとしてEcoRIサイトが存在する。またPCR用プライマーにはPstIサイトとHindIIIサイトがそれぞれデザインされている。
される酵素は機能を持たなくなると予測される(図2)。
W3110株の染色体DNAを鋳型として用い、遺伝子データバンク(GenBank Accession No.J04199)の情報に基づき作製された、CTCGAGCTCATGGGTAACAACGTCGTCGTAC(配列番号3)とCTCGTCGACTTACGCGTCGAACGGGTCGCGC(配列番号4)の塩基配列を有する31merと31merの両端プライマーによるPCR法(94℃,30sec; 55℃,1min; 72℃,2min; 30サイクル; Gene Amp PCR System Model9600(ハ゜ーキンエルマー社製))を行い、ATGと翻訳終止コドンをカバーするpurA構造遺伝子領域の約1300bpの増幅断片をpUC18ベクター(宝酒造社製)のSacIサイトとSalIサイトの間にクローン化した。なお、PCR用プライマーにはSacIサイトとSalIサイトがそれぞれデザインされている。クローン化されたpurA断片の約1300bpの5'側から約520bpと710bpの位置にそれぞれHpaIおよびSnaBIサイトが1ヶ所あるのでプラスミドをHpaIおよびSnaBIで消化し、約190bp断片を除去したものを得る目的でT4 DNA リガーゼで連結した。このライゲイション液でE.coli JM109のコンピテント細胞を形質転換し、アンピシリン25μg/mlを含むLB寒天プレートに生育する形質転換体を得た。18クローンの形質転換体からプラスミドDNAを調製し、この中からFspIでは切断せず、SacIおよびSalIでの切断で約1100bpの断片が得られるプラスミドDNA(pUC18purA'#1)を選択した。本プラスミドDNAが有するpurAはHpaIおよびSnaBIサイトの間で欠失が生じることになり、コードされる酵素は機能を持たなくなると予測される(図2)。
プレートに塗布し、42℃で生育するコロニーを得た。さらにもう一度、42℃で生育するシングルコロニーを得る操作を繰り返し、相同組換えによりプラスミド全体が染色体に組込まれたクローンを選択した。本クローンがプラスミドを細胞質液中に持たないことを確認した。次にこのクローンの複数個をLB寒天プレートに塗布し、30℃で一晩培養した後に、LB液体培地(3ml/試験管)に接種し、42℃で3〜4時間、振とう培養した。これをシングルコロニーが得られるように適当に希釈(10-5〜10-6程度)し、LB寒天プレートに塗布し、42℃で一晩培養し、コロニーを得た。出現したコロニーの中から無作為に100コロニーをピックアップしてそれぞれをLB寒天プレートとアンピシリン25μg/mlを含むLB寒天プレートに生育させ、LB寒天プレートにのみ生育するアンピシリン感受性のクローンを選んだ。さらにアンピシリン感受性のクローンの中からヒポキサンチン 50mg/L添加最小培地に生育せず、アデニン 50mg/L添加最小培地には生育するクローンを選択した。さらにはこれらの目的クローンの染色体DNAからPCRによりpurA約1.1kb断片を増幅させ、野生型(約1.3kb)よりサイズが小さいこと、およびFspIで切断されないことを確認した。以上を満足するクローンをpurA欠失株とし、ここではFA-31株とした。
W3110株の染色体DNAを鋳型として用い、遺伝子データバンク(E. coli Gene Bank)において「deoD」をキーワードにして検索される情報に基づいて作製された、CTCGTCGACGCGGGTCTGGAACTGTTCGAC(配列番号5)とCTCGCATGCCCGTGCTTTACCAAAGCGAATC(配列番号6)の塩基配列を有する30merと31merの両端プライマーによるPCR法(94℃,30sec; 55℃,1min; 72℃,2min; 30サイクル; Gene Amp PCR System Model9600(ハ゜ーキンエルマー社製))を行い、SD-ATGと翻訳終止コドンをカバーするdeoD構造遺伝子領域を含む約1350bpの増幅断片をpCRTMIIベクター(Invitrogen社製)にクローン化した。本ベクターにはクローニングサイトの両近傍に制限酵素サイトとしてEcoRIサイトが存在する。またPCR用プライマーにはSalIサイトとSphIサイトがそれぞれデザインされている。クローン化されたdeoD断片の約1350bpの5'側から約680bpの位置にHpaIサイトが1ヶ所あるのでプラスミドをHpaIで消化し、消化されたプラスミドと10merのClaIリンカーとを混合してT4 DNA リガーゼ反応を行った。この結果、HpaIサイトにClaIサイトが挿入された。このライゲイション液でE.coli HB101のコンピテント細胞を形質転換し、アンピシリン25μg/mlを含むLB寒天プレートに生育する形質転換体を得た。16クローンの形質転換体からプラスミドDNAを調製し、この中からHpaIでは切断せず、ClaIで切断されるプラスミドDNA(pCRTMIIdeoD'#16)を選択した。本プラスミドDNAが有するdeoDはHpaIサイトでフレームシフトが生じることになり、コードされる酵素は機能を持たなくなると予測される(図2)。
、これらの培養液を薄層クロマトグラムにより分析して、イノシンがヒポキサンチンに分解していないクローンを選択した。さらにはこれらの目的クローンの染色体DNAからPCRによりdeoDを含む約1.35kb断片を増幅させ、ClaIで切断されるがHpaIで切断されないことを確認した。以上を満足するクローンをdeoD欠失株とし、F-1-72株(purF-)およびFA-31株(purF-,purA-)由来のものをそれぞれFD-6株およびFAD-25株とした。
W3110株の染色体DNAを鋳型として用い、遺伝子データバンク(E. coli Gene Bank)において「purR」をキーワードにして検索される情報に基づいて作製された、CTCGTCGACGAAAGTAGAAGCGTCATCAG(配列番号7)とCTCGCATGCTTAACGACGATAGTCGCGG(配列番号8)の塩基配列を有する29merと28merの両端プライマーによるPCR法(94℃,30sec; 55℃,1min; 72℃,2min; 30サイクル; Gene Amp PCR System Model9600(ハ゜ーキンエルマー社製))を行い、ATGと翻訳終止コドンをカバーするpurR構造遺伝子領域およびATGの5'上流域約800bpを含む約1.8kbの増幅断片をpUC19ベクター(宝酒造社製)のSalIサイトおよびSphIサイトの間にクローン化した。PCR用プライマーにはSalIサイトとSphIサイトがそれぞれデザインされており、このサイトがクローニングに利用された。クローン化されたpurR断片の約1.8kbの5'側から約810bpの位置にPmaCIサイト(purR構造遺伝子領域でのN末端近傍)が1ヶ所あるのでプラスミドをPmaCIで消化した。消化されたプラスミドと8merのBglIIリンカーを混合してT4 DNA リガーゼ反応を行った。この結果、PmaCIサイトにBglIIサイトが挿入された。このライゲイション液でE.coli JM109のコンピテント細胞を形質転換し、アンピシリン25μg/mlを含むLB寒天プレートに生育する形質転換体を得た。10クローンの形質転換体からプラスミドDNAを調製し、この中からPmaCIでは切断せず、BglIIで切断されるプラスミドDNA(pUC19purR'#2)を選択した。本プラスミドDNAが有するpurRはPmaCIサイトでフレームシフトが生じることになり、コードされる酵素は機能を持たなくなると予測される(図2)。
1)でpCRTMIIベクター(Invitrogen社製)にクローン化した約1530bpのpurFを搭載したプラスミドよりPstIとHindIIIでの消化によりpurF断片を切り出し、変異導入用プラスミドpKF18(宝酒造社製)のマルチクローニングサイトのPstIサイトとHindIIIサイトの間に挿入し直し、目的のクローンを得た(pKFpurF)。G.Zhouら(J.Biol.Chem., 269, 6784(1994))により、PRPPアミドトランスフェラーゼ(PurF)の326位のLys(K)がGln(Q)に変異したもの、さらに410位のPro(P)がTrp(W)に変異したものがいずれもGMPおよびAMPのフィードバック阻害に対して脱感作されていることが示されている。そこで、PRPPアミドトランスフェラーゼ(PurF)の326位のLys(K)をGln(Q)に、410位のPro(P)をTrp(W)に変異できるような遺伝子置換を行うために以下の合成DNAプライマーを作製し、Site-directed Mutagenesis System Mutan-Super Express Km(宝酒造社製)のプロトコールに従って、pKFpurFに部位特異的変異を導入した。
P410W変異用プライマー:5'-TATGGTATTGATATG TGG AGCGCCACGGAAC-3'(配列番号10)
3382(1979))の方法に従って行った。その結果を表1に示す。
4)で作製したFDR-18株(purF-,deoD-,purR-)およびFADR-8株(purF-,purA-,deoD-,purR-)にpKFpurFKQおよびpKFpurFKQPWを導入した形質転換体を作製し、これらの株のプリンヌクレオシド生産能を評価した。
培地および培養方法ならびに分析方法を示す。
最終濃度
グルコース 40 g/L(別殺菌)
(NH4)2SO4 16 g/L
KH2PO4 1 g/L
MgSO4・7H2O 1 g/L
FeSO4・7H2O 0.01 g/L
MnSO4・4H2O 0.01 g/L
イーストエキストラクト 2 g/L
CaCO3 30 g/L(別殺菌)
リフレッシュ(refresh)培養;保存状態の菌を接種
LB寒天培地(必要に応じて薬剤添加)
37℃、一晩
種(seed)培養;リフレッシュ培養した菌を接種
LB液体培地(必要に応じて薬剤添加)、37℃、一晩
主(main)培養;種培養液体培地から2%接種
MS培地(必要に応じてアデニン、薬剤添加)
37℃、20ml/500ml容坂口フラスコ
培養液500μlを経時的にサンプリングし、15,000rpmで、5分間遠心し、その上清液をH2Oにて4倍希釈後、HPLC分析する。特記しない限り3日間培養後の培地当たりのプリンヌクレオシド蓄積量として評価する。
分析条件:
カラム : Asahipak GS-220 (7.6mmID×500mmL)
緩衝液 : 0.2M NaH2PO4(pH3.98) リン酸にてpH調整
温度 : 55℃
流速 : 1.5ml/min
検出 : UV254nm
保持時間 (min)
イノシン 16.40
ヒポキサンチン 19.27
グアノシン 20.94
グアニン 23.55
アデニン 24.92
アデノシン 26.75
1)アデノシン・デアミナーゼ遺伝子(add)欠失株の取得
W3110株の染色体DNAを鋳型として用い、遺伝子データバンク(E. coli Gene Bank)において「add」をキーワードにして検索される情報に基づいて作製された、CTCGTCGACGGCTGGATGCCTTACGCATC(配列番号11)とCTCGCATGCAGTCAGCACGGTATATCGTG(配列番号12)の塩基配列を有する29merと29merの両端プライマーによるPCR法(94℃,30sec; 55℃,1min; 72℃,2min; 30サイクル; Gene Amp PCR System Model9600(ハ゜ーキンエルマー社製))を行い、ATGと翻訳終止コドンをカバーするadd構造遺伝子領域およびATGの5'上流域約420bpおよび翻訳終止コドンの下流域約370bpを含む約1.8kbの増幅断片をpUC19ベクター(宝酒造社製)のSalIサイトとSphIサイトの間にクローン化した。PCR用プライマーにはSalIサイトとSphIサイトがそれぞれデザインされており、このサイトをクローニングに利用した。クローン化されたadd断片の約1.8kbの5'側から約880bpの位置にStuIサイトが1ヶ所あるのでプラスミドをStuIで消化した。消化されたプラスミドと8merのBglIIリンカーとを混合し、T4 DNAリガーゼ反応を行った。この結果、StuIサイトにBglIIサイトが挿入された。このライゲイション液でE.coli JM109のコンピテント細胞を形質転換し、アンピシリン25μg/mlを含むLB寒天プレートに生育する形質転換体を得た。10クローンの形質転換体からプラスミドDNAを調製し、この中からStuIでは切断されず、BglIIで切断されるプラスミドDNA(pUC19add'#1)を選択した。本プラスミドDNAが有するaddはStuIサイトでフレームシフトが生じることになり、コードされる酵素は機能を持たなくなると予測される(図2)。
アデノシン1.5g/L添加LB培地に生育させ、これらの培養液を薄層クロマトグラムにより分析して、アデノシンがイノシンに転換していないクローンを選択した。さらにこれらの目的クローンの染色体DNAからPCRによりadd約1.8kb断片を増幅させ、BglIIで切断されるがStuIで切断されないことを確認した。これらのクローンをadd欠失株とし、FDR-18株(purF-,deoD-,purR-)およびFADR-8株(purF-,purA-,deoD-,purR-)由来のものをそれぞれFDRadd-18-1株およびFADRadd-8-3株とした。
1)で作製したFDRadd-18-1株(purF-,deoD-,purR-,add-)およびFADRadd-8-3株(purF-,purA-,deoD-,purR-,add-)にpKFpurFKQおよびpKFpurFKQPWを導入した形質転換体を作製し、これらの株のプリンヌクレオシド生産能を評価した。なお、FADRadd-8-3株については野生型purFプラスミド(pKFpurF)による形質転換体も作製し、pKFpurFKQによる形質転換体およびpKFpurFKQPWによる形質転換体と比較評価した。プリンヌクレオシド生産用の基本培地および培養方法ならびに分析方法は実施例1と同じである。purA-(アデニン要求性)の菌株についてはMS培地にアデニン5mg/Lが添加されている。
1)脱感作型purF相同組換えプラスミドの作製
実施例1の1)で作製したpurF-株を利用して脱感作型purFを染色体置換するために、先に取得したpurF断片(約1.6kb)よりもさらに3'側に約0.5kb長いpurF断片を取得した。W3110株の染色体DNAを鋳型として用い、遺伝子データバンク(E. coli Gene Bank)の情報に基づき、CTCCTGCAGAACGAGGAAAAAGACGTATG(配列番号1)とCTCAAGCTTGTCTGATTTATCACATCATC(配列番号13)の塩基配列を有する29merと29merの両端プライマーによるPCR法(94℃,30sec; 55℃,1min; 72℃,2min; 30サイクル; Gene Amp PCR System Model9600(ハ゜ーキンエルマー社製))を行い、SD-ATGと翻訳終止コドンをカバーするpurF構造遺伝子領域を含む約2.1kbの増幅断片をpCRTMIIベクター(Invitrogen社製)にクローン化した。このクローンの保持するプラスミドをpCRTMIIpurFLとする。pCRTMIIpurFLにはクローニングサイトの両近傍に制限酵素サイトとしてEcoRIサイトが存在する。またPCR用プライマーにはPstIサイトとHindIIIサイトがそれぞれデザインされている。
PWのSnaBIサイトとHindIIIサイトとの間に挿入し、pKFpurFLKQおよびpKFpurFLKQPWを作製した。
プラスミドpMAN997purFLKQおよびpMAN997purFLKQPWでそれぞれFDRadd-18-1株(purF-,deoD-,purR-,add-)およびFADRadd-8-3株(purF-,purA-,deoD-,purR-,add-)を30℃で形質転換し、得られたコロニーの複数個をアンピシリン25μg/mlを含むLB寒天プレートに塗布し、30℃で一晩培養した。次にこれらの培養菌体をシングルコロニーが得られるようにアンピシリン25μg/mlを含むLB寒天プレートに塗布し、42℃で生育するコロニーを得た。さらにもう一度、42℃で生育するシングルコロニーを得る操作を繰り返し、相同組換えによりプラスミド全体が染色体に組込まれたクローンを選択した。本クローンがプラスミドを細胞質液中に持たないことを確認した。次にこのクローンの複数個をLB寒天プレートに塗布し、30℃で一晩培養した後に、LB液体培地(3ml/試験管)に接種し、42℃で3〜4時間、振とう培養した。これをシングルコロニーが得られるように適当に希釈(10-5〜10-6程度)し、LB寒天プレートに塗布し、42℃で一晩培養し、コロニーを得た。出現したコロニーの中から無作為に100コロニーをピックアップしてそれぞれをLB寒天プレートとアンピシリン25μg/mlを含むLB寒天プレートに生育させ、LB寒天プレートにのみ生育するアンピシリン感受性のクローンを選んだ。さらにアンピシリン感受性のクローンの中から、FDRadd-18-1株(purF-,deoD-,purR-,add-)の場合には最小培地に生育し、FADRadd-8-3株(purF-,purA-,deoD-,purR-,add-)の場合にはL-ヒスチジン 100mg/Lおよびアデニン 50mg/L添加最小培地に生育するクローンを選択した。
2)で作製したFDRadd-18-1::KQ株(purFKQ,deoD-,purR-,add-)、FDRadd-18-1::KQPW株(purFKQPW,deoD-,purR-,add-)、FADRadd-8-3::KQ株(purFKQ,purA-,deoD-,purR-,add-)およびFADRadd-8-3::KQPW株(purFKQPW,purA-,deoD-,purR-,add-)のプリンヌクレオシド生産能を評価した。プリンヌクレオシド生産用の基本培地および培養方法ならびに分析方法は実施例1と同じである。purA-(アデニン要求性)の菌株についてはMS培地にアデニン 5mg/Lが添加されている。
1)イノシン−グアノシン・キナーゼ遺伝子(gsk)欠失株の取得
W3110株の染色体DNAを鋳型として用い、遺伝子データバンク(GenBank Accession No.D00798)の情報に基づき、CTCGAGCTCATGAAATTTCCCGG(配列番号14)とCTCGGATCCGGTACCATGCTG(配列番号15)の塩基配列を有する23merと21merの両端プライマーによるPCR法(94℃,30sec; 55℃,1min; 72℃,2min; 30サイクル; Gene Amp PCR System Model9600(ハ゜ーキンエルマー社製))を行い、ATGと翻訳終止コドンをカバーするgsk構造遺伝子領域を含む約1.5kbの増幅断片をpUC18ベクター(宝酒造社製)のSacIサイトとBamHIサイトの間にクローン化した。PCR用プライマーにはSacIサイトとBamHIサイトがそれぞれデザインされている。
シン20μg/mlを含むLB寒天プレートに生育させ、アンピシリン25μg/mlを含むLB寒天プレートには生育しないがカナマイシン20μg/mlを含むLB寒天プレートには生育するクローンを選んだ。さらにこれらの目的クローンの染色体DNAからPCRによりgsk遺伝子を含む断片を増幅させ、本来の約1.5kb断片ではなくKmr遺伝子を含む約2.8kb断片が増幅されていることを確認した。またこれらのクローンでは、イノシン−グアノシン・キナーゼ活性が検出されないことを確認した。イノシン−グアノシン・キナーゼ活性は臼田ら(Biochim. Biophys. Acta., 1341, 200-206(1997))の方法に従って行った。これらのクローンをgsk欠失株とし、FDR-18株(purF-,deoD-,purR-)およびFADRadd-8-3株(purF-,purA-,deoD-,purR-,add-)由来のものをそれぞれFDRG-18-13株およびFADRaddG-8-3株とした。
1)で作製したFDRG-18-13株(purF-,deoD-,purR-,gsk-)およびFADRaddG-8-3株(purF-,purA-,deoD-,purR-,add-,gsk-)にpKFpurFKQおよびpKFpurFKQPWを導入し、プリンヌクレオシド生産能を評価するにあたり、プラスミドpKFpurFKQおよびpKFpurFKQPWは薬剤選択マーカー遺伝子がKmr遺伝子であり、宿主FDRG-18-13株およびFADRaddG-8-3株もまたカナマイシン耐性となっているので、形質転換体を得るのが困難である。そこでプラスミドpKFpurFKQおよびpKFpurFKQPWの薬剤選択マーカー遺伝子の交換をアンピシリン耐性遺伝子を持つpUC18ベクター(宝酒造社製)を用いて行った。pKF18とpUC18とはlacプロモーターとマルチクローニングサイトの位置関係が全く同じなので、pKFpurFKQおよびpKFpurFKQPWからPstIとHindIIIでpurFKQおよびpurFKQPW断片を切り出し、これらをpUC18のPstIサイトとHindIIIサイトの間に挿入し、pUCpurFKQおよびpUCpurFKQPWを作製した。これらで宿主FDRG-18-13株およびFADRaddG-8-3株を形質転換し、組換え体のプリンヌクレオシド生産能を評価した。プリンヌクレオシド生産用の基本培地および培養方法ならびに分析方法は実施例1と同じである。purA-(アデニン要求性)の菌株についてはMS培地にアデニン 5mg/Lが添加されている。
プラスミドpMAN997purFLKQおよびpMAN997purFLKQPWでそれぞれFDRG-18-3株(purF-,deoD-,purR-,gsk-)およびFADRaddG-8-3株(purF-,purA-,deoD-,purR-,add-,gsk-)を30℃で形質転換し、得られたコロニーの複数個をアンピシリン25μg/mlを含むLB寒天プレートに塗布し、30℃で一晩培養した。次にこれらの培養菌体をシングルコロニーが得られるようにアンピシリン25μg/mlを含むLB寒天プレートに塗布し、42℃で生育するコロニーを得た。さらにもう一度、42℃で生育するシングルコロニーを得る操作を繰り返し、相同組換えに
よりプラスミド全体が染色体に組込まれたクローンを選択した。本クローンがプラスミドを細胞質液中に持たないことを確認した。次にこのクローンの複数個をLB寒天プレートに塗布し、30℃で一晩培養した後に、LB液体培地(3ml/試験管)に接種し、42℃で3〜4時間、振とう培養した。これをシングルコロニーが得られるように適当に希釈(10-5〜10-6程度)し、LB寒天プレートに塗布し、42℃で一晩培養し、コロニーを得た。出現したコロニーの中から無作為に100コロニーをピックアップしてそれぞれをLB寒天プレートとアンピシリン25μg/mlを含むLB寒天プレートに生育させ、LB寒天プレートにのみ生育するアンピシリン感受性のクローンを選んだ。さらにアンピシリン感受性のクローンの中から、FDRG-18-13株(purF-,deoD-,purR-,gsk-)の場合には最小培地に生育し、FADRaddG-8-3株(purF-,purA-,deoD-,purR-,add-,gsk-)の場合にはL-ヒスチジン 100mg/Lおよびアデニン 50mg/L添加最小培地に生育するクローンを選択した。
1)野生型purR相同組換えプラスミドの作製とpurR+復帰染色体組込み株の作製
実施例1の4)でpUC19ベクター(宝酒造社製)のSalIサイトとSphIサイトの間に約1.8kbのpurR断片が搭載されているプラスミド(pUCpurR)を得た。このpUCpurRをSacIとSphIで消化し、野生型purRを含む約1.8Kbの断片を調製した。この断片を温度感受性複製起点(tsori)を有する相同組換え用ベクターであるpMAN997(上述)のSacIサイトとSphIサイトの間に挿入し、プラスミドpMAN997purRを得た。プラスミドpMAN997purRでFADRadd-8-3株(purF-,purA-,deoD-,purR-,add-)を30℃で形質転換し、得られたコロニーの複数個をアンピシリン25μg/mlを含むLB寒天プレートに塗布し、30℃で一晩培養した。次にこれらの培養菌体を、シングルコロニーが得られるようにアンピシリン25μg/mlを含むLB寒天プレートに塗布し、42℃で生育するコロニーを得た。さらにもう一度、42℃で生育するシングルコロニーを得る操作を繰り返し、相同組換えによりプラスミド全体が染色体に組込まれたクローンを選択した。本クローンがプラスミドを細胞質液中に持たないことを確認した。次にこのクローンの複数個をLB寒天プレートに塗布し、30℃で一晩培養した後に、LB液体培地(3ml/試験管)に接種し、42℃で3〜4時間、振とう培養した。これをシングルコロニーが得られるように適当に希釈(10-5〜10-6程度)し、LB寒天プレートに塗布し、42℃で一晩培養し、コロニーを得た。出現したコロニーの中から無作為に100コロニーをピックアップして,それぞれをLB寒天プレートとアンピシリン25μg/mlを含むLB寒天プレートに生育させ、LB寒天プレートにのみ生育するアンピシリン感受性のクローンを選んだ。さらにアンピシリン感受性のクローンの中から10クローンを無作為に選び、これらの染色体DNAからPCRによりpurR約1.8kb断片を増幅させ、PmaCIで切断されるがBglIIで切断されないクローンを選択した。これらのクローンをpurR+復帰株とし、FADadd-8-3-2株(purF-,purA-,deoD-,add-)とした。
1)で作製したFADadd-8-3-2株(purF-,purA-,deoD-,add-)にpKFpurFKQを導入した形質転換体を作製し、これらの株のプリンヌクレオシド生産能を評価した。なお、FADRadd-8-3株についてもpKFpurKQによる形質転換体を作製し、purR欠失の効果を比較評価した。プリンヌクレオシド生産用の基本培地および培養方法ならびに分析方法は実施例1と同じである。MS培地にアデニン5mg/Lが添加されている。
1)イノシン−グアノシン・キナーゼ遺伝子(gsk)欠失株の再取得
W3110株の染色体DNAを鋳型として用い、遺伝子データバンク(GenBank Accession No.D00798)の情報に基づき、CTCGGTACCCTGTTGCGTTAAGCCATCCCAGA(配列番号16)とCTCGCATGC
CAACGTACGGCATTAACCTA(配列番号17)の塩基配列を有する32merと29merの両端プライマーによるPCR法(94℃,30sec; 55℃,1min; 72℃,2min; 30サイクル; Gene Amp PCR System Model9600(ハ゜ーキンエルマー社製))を行い、ATGと翻訳終止コドンをカバーするgsk構造遺伝子領域(約800bp)を含む約3.0kbの増幅断片をpUC19ベクター(宝酒造社製)のKpnIサイトとSphIサイトの間にクローン化した。PCR用プライマーにはKpnIサイトとSphIサイトがそれぞれデザインされている。
W3110株の染色体DNAを鋳型として用い、遺伝子データバンク(E. coli Gene Bank)の情報に基づき、CTCAAGCTTACGGCTCTGGTCCACGCCAG(配列番号18)とCTCCTGCAGCAGCGTTGGGAGATTACAGG(配列番号19)の塩基配列を有する29merと29merの両端プライマーによるPCR法(94℃,30sec; 55℃,1min; 72℃,2min; 30サイクル; Gene Amp PCR System Model9600(ハ゜ーキンエルマー社製))を行い、SD-ATGと翻訳終止コドンをカバーするguaC構造遺伝子領域の約2.2kbの増幅断片をpUC18ベクター(宝酒造社製)のHindIIIサイトとPstIサイトの間にクローン化した。PCR用プライマーにはHindIIIサイトとPstIサイトがそれぞれデザ
インされている。
2)で作製したFADRaddguaC株(purF-,purA-,deoD-,purR-,add-,guaC-)およびFADRaddgskguaC株(purF-,purA-,deoD-,purR-,add-,gsk-,guaC-)にpKFpurFKQを導入した形質転換体を作製し、これらの株のプリンヌクレオシド生産能を評価した。プリンヌクレオシド生産用の基本培地および培養方法ならびに分析方法は実施例1と同じである。MS培地(基本培地)にアデニンが5mg/L添加してある。
1)6−フォスフォグルコン酸デヒドラーゼ遺伝子(edd)欠失株の取得
W3110株の染色体DNAを鋳型として用い、遺伝子データバンク(E. coli Gene Bank)において「edd」をキーワードにして検索される情報に基づいて作製された、CTCGAATTCGGATATCTGGAAGAAGAGGG(配列番号20)とCTCAAGCTTGGAATAGTCCCTTCGGTAGC(配列番号21)の塩基配列を有する29merと29merの両端プライマーによるPCR法(94℃,30sec; 55℃,1min; 72℃,2min; 30サイクル; Gene Amp PCR System Model9600(ハ゜ーキンエルマー社製))を行い、ATGと翻訳終止コドンをカバーするedd構造遺伝子領域およびATGの5'上流域約810bpおよび翻訳終止コドンの下流域約360bpを含む約3.0kbの増幅断片をそのままpCRTMIIベクター(Invitrogen社製)にクローン化した。本ベクターにはPCR産物増幅断片をそのままクローニングすることができ、またクローニングサイトの両近傍に制限酵素サイトとしてEcoRIサイトが存在する。またPCR用プライマーにはBamHIサイトとHindIIIサイトがそれぞれデザインされている。クローン化されたedd断片の約3.0kbの5'側から約660bpと1900bpの位置にStuIサイトが2ヶ所あるのでプラスミドをStuIで消化した。約1.25kbのStuI断片を除去したベクター側のセルフライゲイションをT4 DNA リガーゼで行った。このライゲイション液でE.coli HB101のコンピテント細胞を形質転換し、アンピシリン25μg/mlを含むLB寒天プレートに生育する形質転換体を得た。10クローンの形質転換体からプラスミドDNAを調製し、この中からStuIでは1.25kbの断片が切りだされないプラスミドDNA(pCRTMIIedd'#1)を選択した。本プラスミドDNAが有するeddはプロモーター領域を含むタンパク質コード領域が除去されており、酵素が生成しなくなると予測される(図3)。
でPCRによりedd領域を増幅させ、増幅断片サイズが野生型の約3.0kbではなく、欠失型の約1.75kbであるクローンを選択した。これらのクローンをedd欠失株とし、FADRaddedd株(purF-,purA-,deoD-,purR-,add-,edd-)とした。
1)で作製したFADRaddedd株(purF-,purA-,deoD-,purR-,add-,edd-)にpKFpurFKQを導入した形質転換体を作製し、これらの株のプリンヌクレオシド生産能を評価した。プリンヌクレオシド生産用の基本培地および培養方法ならびに分析方法は実施例1と同じである。MS培地にアデニン5mg/Lが添加されている。eddがコードする6−フォスフォグルコン酸デヒドラーゼはグルコン酸で誘導され、グルコン酸(gluconate)をエントナー・ドゥドルフ(Entner-Doudoroff)経路でピルビン酸へと代謝する第1段階の酵素である。この酵素が欠失することにより、グルコン酸がペントースリン酸経路へのみ流入すると考えられるので、ここではMS培地中のC源としてグルコース以外にグルコン酸(48g/L添加)も使用し、評価した。
1)フォスフォグルコース・イソメラーゼ遺伝子(pgi)欠失株の取得
W3110株の染色体DNAを鋳型として用い、遺伝子データバンク(E. coli Gene Bank)において「pgi」をキーワードにして検索される情報に基づいて作製された、CTCGTCGACTCCATTTTCAGCCTTGGCAC(配列番号22)とCTCGCATGCGTCGCATCAGGCATCGGTTG(配列番号23)の塩基配列を有する29merと29merの両端プライマーによるPCR法(94℃,30sec; 55℃,1min; 72℃,2min; 30サイクル; Gene Amp PCR System Model9600(ハ゜ーキンエルマー社製))を行い、ATGと翻訳終止コドンをカバーするpgi構造遺伝子領域を含む約2.2kbの増幅断片をpUC18ベクター(宝酒造社製)のSalIサイトとSphIサイトの間にクローン化した。PCR用プライマーにはSalIサイトとSphIサイトがそれぞれデザインされている。クローン化されたpgi断片の約2.2kbの5'側から約1170bpと1660bpの位置にBssHIIサイトとMluIサイトがそれぞれ1ヶ所あるのでプラスミドをBssHIIとMluIで消化した後、T4 DNA ポリメラーゼで平滑末端化した。BssHIIサイトとMluIサイトの間の約500bpの断片を除去したベクター側のセルフライゲイションをT4 DNA リガーゼで行った。このライゲイション液でE.coli JM109のコンピテント細胞を形質転換し、アンピシリン25μg/mlを含むLB寒天プレートに生育する形質転換体を得た。10クローンの形質転換体からプラスミドDNAを調製し、この中からSalIとSphIでの処理で約1.7kbの断片が切りだされるプラスミドDNA(pUC18pgi'#1)を選択した。本プラスミドDNAが有するpgiはBssHIIサイトとMluIサイトの間で欠失が生じる
ことになり、コードされる酵素は機能を持たなくなると予測される(図3)。
1)で作製したFADRaddpgi株(purF-,purA-,deoD-,purR-,add-,pgi-)およびFADRaddeddpgi株(purF-,purA-,deoD-,purR-,add-,edd-,pgi-)にpKFpurFKQを導入した形質転換体を作製し、これらの株のプリンヌクレオシド生産能を評価した。プリンヌクレオシド生産用の基本培地および培養方法ならびに分析方法は実施例1と同じであるが、生産評価用に使用した培地はMS培地(基本培地)中のイーストエキストラクトを0.8%に増量している。
1)アデニン・デアミナーゼ遺伝子(yicP)欠失株の取得
遺伝子データバンク(E.coli Gene Bank)において、Bacillus subtilis由来のアデニン・デアミナーゼと相同性の高いORF(open reading frame,構造遺伝子)として、yicPが登録されている。そこで、W3110株の染色体DNAを鋳型として用い、「yicP」をキーワードにして検索される情報に基づいて作製された、CTCCTGCAGCGACGTTTTCTTTTATGACA(配列番号24)とCTCAAGCTTCGTAACTGGTGACTTTTGCC(配列番号25)の塩基配列を有する29merと29merの両端プライマーによるPCR法(94℃,30sec; 55℃,1min; 72℃,2min; 30サイクル; Gene
Amp PCR System Model9600(ハ゜ーキンエルマー社製))を行い、ATGと翻訳終止コドンをカバーするyicP構造遺伝子領域およびATGの5'上流域約50bpおよび翻訳終止コドンの下流域約40bpを含む約1.9kb断片を増幅した。PCR用プライマーにはPstIサイトとHindIIIサイトがそれぞれデザインされている。このPCR産物をPstIとHindIIIで切断後、pUC18ベクター(宝酒造社製)のPstIサイトとHindIIIサイトの間にクローン化した。クローン化されたyicP断片の約1.9kbの5'側から約540bpと約590bpの位置にHapIサイトとEcoRVサイトがそれぞれ1ヶ所あるのでプラスミドをHapIとEcoRVで消化した後、HapI-EcoRVの47bpを除去したDNAのセルフライゲイションをT4 DNA リガーゼで行った。このライゲイション液でE.coli JM109のコンピテント細胞を形質転換し、アンピシリン25μg/mlを含むLB寒天プレートに生育する形質転換体を得た。10クローンの形質転換体からプラスミドDNAを調製し、この中からHapIあるいはEcoRV消化で切断されないプラスミドDNA(pUC18yicP'#1)を選択した。本プラスミドDNAが有するyicPはHapI-EcoRVサイトの47bpを欠失させることでフレームシフトが生じることになり、コードされる酵素は機能を持たなくなると予測される(図3)。
さらにFADRaddeddyicP株(purF-,purA-,deoD-,purR-,add-,edd-,yicP-)にpgi欠失を付与した。実施例8で作製したpMAN997pgi'#1を用いて、実施例8に示したと同様の方法で、FADRaddeddyicPpgi株(purF-,purA-,deoD-,purR-,add-,edd-,yicP-,pgi-)を得た。
1)および2)で作製したFADRaddeddyicP株(purF-,purA-,deoD-,purR-,add-,edd-,yicP-)およびFADRaddeddyicPpgi株(purF-,purA-,deoD-,purR-,add-,edd-,yicP-,pgi-)にpKFpurFKQを導入した形質転換体を作製し、これらの株の生育におけるアデニン量に対するリスポンスならびにプリンヌクレオシド生産能を評価した。プリンヌクレオシド生産用の基本培地および培養方法ならびに分析方法は実施例1と同じであるが、MS培地にアデニンを0〜50mg/Lの範囲で添加した培地を使用した。
1)PRPPシンセターゼ遺伝子(prs)の取得
W3110株の染色体DNAを鋳型として用い、遺伝子データバンク(E. coli Gene Bank)の情報に基づき、CTCGTCGACTGCCTAAGGATCTTCTCATGCCTGATATG(配列番号26)とCTCGCATGCGCCGGGTTCGATTAGTGTTC(配列番号27)の塩基配列を有する38merと29merの両端プライマーによるPCR法(94℃,30sec; 55℃,1min; 72℃,2min; 30サイクル; Gene Amp PCR System Model9600(ハ゜ーキンエルマー社製))を行い、SD-ATGと翻訳終止コドンをカバーするprs構造遺伝子領域の約1Kbの増幅断片をpUC18ベクター(宝酒造社製)にクローン化した。PCR用プライマーにはSalIサイトとSphIサイトがそれぞれデザインされている。このPCR産物をSalIとSphIで切断後、pUC18ベクターのSalIサイトとSphIサイトの間にクローン化した(pUCprs)。
1)でクローン化した約1kbのprsを搭載したプラスミドpUCprsよりSalIとSphIでの消化によりprs断片を切り出し、変異導入用プラスミドpKF19k(宝酒造社製)のマルチクローニングサイトのSalIサイトとSphIサイトの間に挿入し直し、目的のクローンを得た(pKFprs)。S.G.Bowerら(J.Biol.Chem., 264, 10287(1989))により、PRPPシンセターゼ(Prs)はAMPやADPによりフィードバック阻害を受けることが示唆されている。またその128位のAsp(D)をAla(A)に変異したものが部分的脱感作されていると述べている。そこで、PRPPシンセターゼ(Prs)の128位のAsp(D)をAla(A)に変異できるような遺伝子置換を行うため
に以下の合成DNAプライマーを作製し、Site-directed Mutagenesis System Mutan-Super Express Km(宝酒造社製)のプロトコールに従って、pKFprsに部位特異的変異を導入した。
D128A変異用プライマー:5'-GCGTGCAGAGCCACTATCAGC-3'(配列番号28)
実施例9の3)で作製したFADRaddeddyicPpgi株(purF-,purA-,deoD-,purR-,add-,edd-,yicP-,pgi-)にpKFpurFKQを導入した形質転換体をさらにprsやprsDA遺伝子を搭載したpSTVprsとpSTVprsDAでそれぞれ形質転換し、2プラスミド共存型の菌株を作製し、これらの株のプリンヌクレオシド生産能を評価した。プリンヌクレオシド生産用の基本培地および培養方法ならびに分析方法は実施例1と同じであるが、MS培地中のイーストエキストラクト量を0.4%にした培地を使用した。
1)キサントシン・フォスフォリラーゼ遺伝子(xapA)欠失株の取得
遺伝子データバンク(E.coli Gene Bank)において「xapA」をキーワードにして検索される情報に基づいて作製された、4種類のプライマーによるCross-over PCR法により、一段階操作にて変異不活化遺伝子を構築した。使用したプライマーを以下に示す。
N-in: 5'-CCCATCCACTAAACTTAAACATCGTGGCGTGAAATCAGG-3'(配列番号30)
C-in: 5'-TGTTTAAGTTTAGTGGATGGGCATCAACCTTATTTGTGG-3'(配列番号31)
C-out:5'-CGCAAGCTTCAAACTCCGGGTTACGGGCG-3'(配列番号32)
養し、コロニーを得た。出現したコロニーの中から無作為に100コロニーをピックアップしてそれぞれをLB寒天プレートとアンピシリン25μg/mlを含むLB寒天プレートに生育させ、LB寒天プレートにのみ生育するアンピシリン感受性のクローンを選んだ。これらの目的クローンの染色体DNAから先に示したN-outとC-outのPCRプライマーでPCRによりxapA領域を増幅させ、増幅断片サイズが約1.7kbのクローンを選択した。これらのクローンをxapA欠失株とし、FADRaddeddyicPpgixapA株(purF-,purA-,deoD-,purR-,add-,edd-,yicP-,pgi-,xapA-)とした。このxapA欠失株では、キサントシンの添加培養によって、培地中にキサンチンの生成が認められず、またキサントシン・フォスフォリラーゼが誘導されていないことも確認できた。キサントシン・フォスフォリラーゼ活性の測定はK. Hammer Jespersenら(Molec. Gen. Genet., 179, 341-348(1980))の方法に従って行った。
1)で作製したFADRaddeddyicPpgixapA株(purF-,purA-,deoD-,purR-,add-,edd-,yicP-,pgi-,xapA-)にpKFpurFKQを導入した形質転換体を作製し、これらの株のプリンヌクレオシド生産能を評価した。プリンヌクレオシド生産用の基本培地および培養方法ならびに分析方法は実施例1と同じであるが、MS培地中のイーストエキストラクトを0.8%に増量した培地を使用した。
1)ヌクレオシドパーミアーゼ遺伝子(nupG)欠失株の取得
W3110株の染色体DNAを鋳型として用い、遺伝子データバンク(E. coli Gene Bank)の情報に基づき、CTCGAATTCATGGTGCCGAACCACCTTGATAAACG(配列番号33)とCTCGTCGACATGCCGAAACCGGCGAATATAGCGAC(配列番号34)の塩基配列を有する35merと35merの両端プライマーによるPCR法(94℃,30sec; 55℃,1min; 72℃,2min; 30サイクル; Gene Amp PCR System Model9600(ハ゜ーキンエルマー社製))を行い、SD-ATGと翻訳終止コドンをカバーするnupG構造遺伝子領域の約2.7Kb断片を増幅した。PCR用プライマーにはEcoRIサイトとSalIサイトがそれぞれデザインされている。この増幅断片をEcoRI、SalIおよびAflIIで処理した。AflIIサイトはPCR増幅断片中に2ヶ所あり、約750bp、820bpおよび1130bpの3断片が生成する。その中でAflII切断断片の約820bpを除く約720bpと1130bpの2断片を回収し、pUC18ベクター(宝酒造社製)をEcoRIおよびSalI切断したDNAとT4 DNA リガーゼでライゲーションした。このライゲイション液でE.coli HB101を形質転換し、出現したコロニーの16個よりプラスミドを調製し、EcoRIとSalIでの切断断片が約1.9kbのクローン(pUC18nupG'#1)を選択した。さらにpUC18nupG'#1をEcoRIとSalIで処理し、生じる約1.9kbの断片と温度感
受性複製起点(tsori)を有する相同組換え用ベクターであるpMAN997(上述)をEcoRIとSalIで切断したプラスミドとのライゲイションをT4 DNA リガーゼで行った。このライゲイション液でE.coli JM109のコンピテント細胞を形質転換し、アンピシリン25μg/mlを含むLB寒天プレートに生育する形質転換体を得た。10クローンの形質転換体からプラスミドDNAを調製し、この中からEcoRIとSalIでの処理で約1.9kbの切断断片が生じるプラスミドDNA(pMAN997nupG'#1)を選択した。本プラスミドDNAが有するnupGは構造遺伝子の約820bpを欠失させることで、コードされる酵素は機能を持たなくなると予測される(図3)。
1)で作製したFADRaddeddyicPpginupG株(purF-,purA-,deoD-,purR-,add-,edd-,yicP-,pgi-,nupG-)にpKFpurFKQを導入した形質転換体を作製し、これらの株のプリンヌクレオシド生産能を評価した。プリンヌクレオシド生産用の基本培地および培養方法ならびに分析方法は実施例1と同じであるが、MS培地中のイーストエキストラクトを1.2%に増量した培地を使用した。
Claims (7)
- プリンヌクレオシド生産能を有するエシェリヒア属細菌を培地に培養し、プリンヌクレオシドを生成蓄積せしめ、プリンヌクレオシドを回収することを特徴とする発酵法によるプリンヌクレオシドの製造方法であって、前記細菌は、ホスホリボシルピロリン酸アミドトランスフェラーゼのフィードバック阻害が解除され、プリン・リプレッサーが不活化され、かつアデノシン・デアミナーゼ、サクシニル−アデノシンモノリン酸シンターゼ、及び、プリンヌクレオシド・フォスフォリラーゼにより触媒される反応が遮断されるように改変された細菌である前記方法。
- 前記ホスホリボシルピロリン酸アミドトランスフェラーゼのアミノ酸配列の326位のリジンがグルタミンに置換、及び/又は、410位のプロリンがトリプトファンに置換することによって、前記フィードバック阻害が解除される請求項1記載の方法。
- 前記ホスホリボシルピロリン酸シンセターゼのアミノ酸配列の128位のアスパラギン酸がアラニンに置換することによって、前記フィードバック阻害が解除される請求項1又は2記載の方法。
- 前記細菌が、さらに、プリンヌクレオシド生合成から分岐して他の代謝産物にいたる反応が遮断されるように改変され、当該反応が、イノシン−グアノシン・キナーゼ、グアノシンモノリン酸リダクターゼ、6−フォスフォグルコン酸デヒドラーゼ、フォスフォグルコース・イソメラーゼ、アデニン・デアミナーゼ、キサントシン・フォスフォリラーゼから選ばれる酵素により触媒される反応である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
- 前記細菌が、さらに、プリンヌクレオシド生合成から分岐して他の代謝産物にいたる反応が遮断されるように改変され、当該反応が、フォスフォグルコース・イソメラーゼにより触媒される反応である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
- 前記細菌が、さらに、ヌクレオシドパーミアーゼの弱化によりプリンヌクレオシドの細胞内への取り込みが弱化された細菌である請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
- 前記プリンヌクレオシドが、イノシン、グアノシン、及び、アデノシンから選択される一種以上のプリンヌクレオシドである請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
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