JP4374434B2 - 遷移金属含有カルコゲン化物ガラス発光体 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、赤外域で発光する発光材料として利用できるガラス発光体に関する。
【0002】
【従来の技術】
赤外域におけるレーザ媒体、光アンプ媒体などの発光材料は、媒質(固体)中に分散されたイオン(希土類イオン、遷移金属イオンなど)または欠陥からの発光を利用する結晶またはガラス材料と、それ自身からの発光を利用する半導体とに大別できる。
【0003】
今日用いられている代表的な発光材料を以下に例示する。イオンを分散した結晶もしくはガラス材料として、例えばTi−Al2O3レーザ(波長:0.7〜1.1μm)、Cr−YAGレーザ(YAG:Yttrium Aluminium garnet、波長:1.3〜1.5μm),Nd−YAGレーザ(波長:1.06μm),Er−YAGレーザ(波長:1.5μm),Erドープシリカガラスファイバ(波長:1.5μm帯の光アンプ)、Er−YAGやErドープフッ化物レーザ(波長:2.8μm)などがある。
【0004】
また、欠陥からの発光を利用しているものとして、カラーセンタレーザ材料(波長:1〜4μm)がある。
【0005】
このように、イオンを分散させた結晶やガラスによる発光材料における利用できる発光波長域は、2μm以下がほとんどである。Er−YAGやErドープフッ化物、カラーセンタレーザ材料などのように2μm以上の波長の発光を利用する材料もある。しかしながら、これらの材料は、発光効率が低く、レーザ媒体や光アンプとして用いた場合、室温では極めて発振しにくく、十分な効率が得られず、その特性は十分とは言えない。
【0006】
一方、様々な波長域において高効率で発光する半導体として、例えばGaAsを基本とした半導体(波長:0.7〜1.5μm)が開発されており、これを用いた高効率なレーザ装置も実用化されている。しかしながら、この半導体の発光波長域も2μm以下である。
【0007】
2μm以上の発光波長域を有する半導体材料として、PbSを基本とした半導体(波長:2〜5μm)が開発されている。
【0008】
しかしながら、2μm以上の波長では、発光の効率が悪い。また、これを用いたレーザ装置では、室温での発振が極めて困難であり、実用的なものは開発されていない。また、半導体レーザでは、一般に発振波長は温度によって調整されるが、波長範囲は広くない。
【0009】
更に、レーザ光源に関しては、遠赤外域で発振するCO2レーザ(波長:10.6μm)、COレーザ(波長:5.6μm)のようなガスレーザが実用化されているが、発光波長域が狭いので、波長の選択性(チューナビリティ)がないという欠点がある。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、以上のような従来技術の問題点を鑑みなされたものであって、主として、赤外域、特に2μm以上の中赤外域において極めて高効率で広い波長範囲にわたって発光し、またその発光をレーザ媒体や光アンプ等の発光材料として容易に応用できるガラス発光体を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、鋭意研究を重ねた結果、特定の遷移金属イオンを含有するカルコゲン化物ガラスが、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
即ち、本発明は、以下の発光ガラスに係るものである。
1.3d遷移金属元素のイオン(但し、TiのイオンおよびCu+を除く)を含有するカルコゲン化物ガラス発光体。
2.3d遷移金属元素イオンが、V3+, Cr2+, Cr3+, Mn2+, Fe2+, Fe3+, Co2+, Co3+, Ni2+, Ni3+およびCu2+からなる群から選択された少なくとも1種である上記1に記載のカルコゲン化物ガラス発光体。
3.ガラス構成成分としてLi,Na,K,Rb,Cs,Be,Mg,Ca,Sr,Ba,Sc,Y,La,Gd,Lu,Ti,Zr,Hf,Nb,Ta,Mo,W,Cu,Ag,Zn,Cd,B,Al,Ga,In,Tl,Si,Ge,Sn,Pb,P,As,SbおよびBiからなる群から選択された少なくとも1種の元素(但し、Cu2+を除く)のカルコゲン化物を含む上記1または2に記載のカルコゲン化物ガラス発光体。
4.ガラス構成成分としてSiS2, GeS,GeS2,GaS,Ga2S3,P2S3, P2S5, As2S3,Sb2S5,Bi2S3および Bi2S5からなる群から選択される少なくとも1種のカルコゲン化物を含むことを特徴とする上記1〜3のいずれかに記載のカルコゲン化物ガラス発光体。
5.ガラス構成成分が、以下の▲1▼〜▲4▼のいずれかに記載のカルコゲン化物である上記1〜3のいずれかに記載のカルコゲン化物ガラス発光体。
▲1▼:B, Al, Ga, In, Si, Ge, P, As, SbおよびBiからなる群から選択される少なくとも1種の元素のカルコゲン化物と
Li,Na,K,Rb,Cs,Be,Mg,Ca,SrおよびBaからなる群から選択される少なくとも1種のアルカリ金属元素またはアルカリ土類金属元素のカルコゲン化物
▲2▼:Gaのカルコゲン化物とLaのカルコゲン化物、
▲3▼:Gaのカルコゲン化物および/またはGeのカルコゲン化物とLaのカルコゲン化物、
▲4▼:As, SbおよびBiからなる群から選択される少なくとも2種の元素のカルコゲン化物
6.3d遷移金属イオンが、ガラス発光体中において4つのカルコゲン化物イオンに配位された4配位構造を有することを特徴とする上記1〜5のいずれかに記載のガラス発光体。
7.3d遷移金属元素が、カルコゲン化物を形成している上記1〜6のいずれかに記載のカルコゲン化物ガラス発光体。
8.光照射によって、照射光よりも長波長の光を発光する上記1〜7のいずれかに記載の発光体。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明は、3d遷移金属元素のイオン(但し、TiのイオンおよびCu+を除く)を含有するカルコゲン化物ガラス発光体に係る。以下、遷移金属イオンをドープされる媒質(カルコゲン化物ガラスを構成するカルコゲン化物)を「ガラス構成成分」ということがある。
【0014】
カルコゲン化物ガラスとは、硫化物、セレン化物およびテルル化物からなる群から選択される少なくとも1種のカルコゲン化物を含むガラスを意味する。
【0015】
本発明のガラス発光体に含まれる3d遷移金属イオンとして、V3+, Cr2+, Cr3+, Mn2+, Fe2+, Fe3+, Co2+, Co3+, Ni2+, Ni3+, Cu2+などを例示することができる。これらのなかでは、Cr2+, Mn2+, Fe2+, Co2+, Ni2+およびCu2+が好ましく、Cr2+, Fe2+, Co2+およびNi2+が特に好ましい。
【0016】
3d遷移金属イオンは、好ましくは、ガラス発光体中において4つのカルコゲン化物イオンに配位された4配位構造を有している。
【0017】
本発明の発光体に含まれる3d遷移金属イオンの含有量は、特に制限されない。3d遷移金属は、ガラス構成成分に対して、通常0.03〜1wt%程度であり、好ましくは0.03〜0.5wt%程度であり、より好ましくは0.03〜0.3wt%程度である。
【0018】
本発明の発光体は、Li,Na,K,Rb,Cs,Be,Mg,Ca,Sr,Ba,Sc,Y,La,Gd,Lu,Ti,Zr,Hf,Nb,Ta,Mo,W,Cu,Ag,Zn,Cd,B,Al,Ga,In,Tl,Si,Ge,Sn,Pb,P,As,SbおよびBiからなる群から選択された少なくとも1種の元素のカルコゲン化物をガラス構成成分として含んでいる。但し、Cu2+のカルコゲン化物は、ガラス構成成分には含まれない。
【0019】
上記の元素のうち、As, Ge, Si, P, BおよびSbのカルコゲン化物は、単独でガラス化することができる。Ga, Al, InおよびBiのカルコゲン化物は、副生物があれば、ガラス化することができる。副成分として、Li,Na,K,Rb,Cs,Be,Mg,Ca,Sr,Ba,Sc,Y,La,Gd,Lu,Ti,Zr,Hf,Nb,Ta,Mo,W,Cu,Ag,Zn,Cd,B,Tl,Si,Ge,Sn,Pb,P,As,Sbなどを例示できる。Li,Na,K,Rb,Cs,Be,Mg,Ca,Sr,Ba,Sc,Y,La,Gd,Lu,Ti,Zr,Hf,Nb,Ta,Mo,W,Cu,Ag,Zn,Cd,B,Tl,SnおよびPbのカルコゲン化物は、副成分としてカルコゲン化物ガラスに存在する。
【0020】
これらのガラス構成成分の中では、B, Al, Ga, In, Si, Ge, P, As, Sb, Biなどのカルコゲン化物が好ましく、Ga, Si, Ge, As, Sbのカルコゲン化物などが特に好ましい。
【0021】
ガラス構成成分中のB, Si, Ge, P, AsおよびSbのカルコゲン化物の含有量(2種以上が含まれる場合には、その総量)は、特に制限されないが、通常20〜100wt%程度、好ましくは30〜100wt%程度、特に好ましくは40〜100wt%程度である。ガラス構成成分中のGa, Al, InおよびBiのカルコゲン化物の含有量(2種以上が含まれる場合には、その総量)は、特に制限されないが、通常40〜80wt%程度、好ましくは50〜70wt%程度、特に好ましくは50〜60wt%程度である。
【0022】
硫化物の中では、SiS2, GeS, GeS2, GaS, Ga2S3, P2S3, P2S5, As2S3, Sb2S5, Bi2S3, Bi2S5が好ましく、SiS2, GeS2, Ga2S3, Sb2S5が特に好ましい。セレン化物の中では、SiSe2, GeSe, GeSe2, GaSe, Ga2Se3, P2Se5, As2Se3, Sb2Se5, Bi2Se3, Bi2Se5などが好ましく、SiSe2, GeSe2, Ga2Se3, Sb2Se5が特に好ましい。テルル化物の中では、SiTe2, GeTe, GeTe2, GaTe, Ga2Te3, P2Te5, As2Te3, Sb2Te5, Bi2Te3, Bi2Te5などが好ましく、SiTe2, GeTe2, Ga2Te3, Sb2Te5が特に好ましい。ガラス構成成分としては、硫化物が好ましい。
【0023】
ガラス構成成分は、1種のカルコゲン化物でもよいが、2種以上のカルコゲン化物を併用してもよい。2種以上のカルコゲン化物を併用する場合の好ましい組合せとして、以下の組合せを例示できる。
▲1▼B, Al, Ga, In, Si, Ge, P, As, SbおよびBiからなる群から選択される少なくとも1種の元素のカルコゲン化物と
Li,Na,K,Rb,Cs,Be,Mg,Ca,SrおよびBaからなる群から選択される少なくとも1種のアルカリ金属元素またはアルカリ土類金属元素のカルコゲン化物との組合せ
▲2▼Gaのカルコゲン化物とLaのカルコゲン化物との組合せ
▲3▼Gaのカルコゲン化物および/またはGeのカルコゲン化物とLaのカルコゲン化物との組合せ
▲4▼As, SbおよびBiからなる群から選択される少なくとも2種の元素のカルコゲン化物の組合せ
Gaのカルコゲン化物として、GaS, Ga2S3, GaSe, Ga2Se3, GaTeおよびGa2Te3からなる群から選択される少なくとも1種を例示することができる。Geのカルコゲン化物として、GeS, Ge2S3, GeSe, Ge2Se3, GeTeおよびGe2Te3からなる群から選択される少なくとも1種を例示することができる。Laのカルコゲン化物として、La2S3, La2Se3およびLa2Te3からなる群から選択される少なくとも1種を例示することができる。
【0024】
上記の組合せの中では、▲1▼の一部である下記▲5▼の組合せと▲3▼の組合せが特に好ましい。
▲5▼Gaおよび/またはGeのカルコゲン化物とLi,Na,K,Rb,Cs,Be,Mg,Ca,SrおよびBaからなる群から選択される少なくとも1種のアルカリ金属元素またはアルカリ土類金属元素のカルコゲン化物との組合せ
上記▲1▼の組合せにおける前者:後者の組成比(重量比)は、特に制限されないが、通常30:70〜100:0程度、好ましくは40:60〜70:30程度である。
【0025】
上記▲2▼の組合せにおける前者:後者の組成比(重量比)は、特に制限されないが、通常30:70〜70:30程度、好ましくは40:60〜60:40程度である。
【0026】
上記▲3▼の組合せにおける前者(Gaおよび/またはGeのカルコゲン化物の総量):後者の組成比(重量比)は、特に制限されないが、通常30:70〜70:30程度、好ましくは40:60〜65:45程度である。
【0027】
上記▲4▼の組合せにおける組成比は、特に制限されない。Asのカルコゲン化物を含む場合は、Asのカルコゲン化物と他のカルコゲン化物の重量比は、通常90:10〜10:90程度、好ましくは90:10〜40:60程度である。Asのカルコゲン化物を含まない場合には、Sbのカルコゲン化物:Biのカルコゲン化物の重量比は、通常30:70〜70:30程度、好ましくは40:60〜60:40程度である。
【0028】
本発明のガラス発光体は、例えば以下のような方法で製造することができる。最終目的物であるカルコゲン化物ガラス発光体と同じ組成となるように、ガラス構成成分となる元素の単体とカルコゲン元素(S, Seおよび/またはTe)の単体と3d遷移金属元素の金属単体とを調製する。これを真空下、窒素などの不活性ガス雰囲気下、アルゴンなどの希ガス雰囲気下などにおいて加熱することによって3d遷移金属イオンをドープしたカルコゲン化物を生成する。加熱温度および加熱時間は、カルコゲン化物が生成し溶融混合する限り特に制限されず、用いる原料などに応じて適宜設定することができる。加熱温度は、通常300〜1100℃程度、好ましくは600〜1000℃程度である。加熱時間は、通常50〜240時間程度、好ましくは70〜120時間程度である。加熱工程は、徐々に昇温するのが好ましく、通常0.5〜1℃/分程度で昇温する。
【0029】
必要に応じて、加熱工程をカルコゲン化物生成工程と溶融混合工程の2工程としてもよい。即ち、真空下、窒素などの不活性ガス雰囲気下、アルゴンなどの希ガス雰囲気下などにおいて、先ず比較的低温で加熱することによりカルコゲン化物を生成し、その後加熱温度を上げてカルコゲン化物を溶融混合させてもよい。
【0030】
カルコゲン化物生成工程における加熱温度および加熱時間は、原料などに応じて適宜設定することができる。カルコゲン化物生成工程における加熱温度は、通常300〜800℃程度、好ましくは400〜700℃程度である。カルコゲン化物生成工程における加熱時間は、通常20〜60時間程度、好ましくは30〜60時間程度である。
【0031】
溶融混合工程における加熱温度および加熱時間は、原料などに応じて適宜設定することができる。溶融混合工程における加熱温度は、通常400〜1100℃ 程度、好ましくは500〜1000℃程度である。溶融混合工程における加熱時間は、通常30〜200時間程度、好ましくは40〜60時間程度である。
【0032】
加熱後は、必要に応じてガラスを急冷してもよい。
【0033】
または、原料としてカルコゲン化物を使用し、これを真空下、窒素などの不活性ガス雰囲気下、アルゴンなどの希ガス雰囲気下などにおいて、溶融混合することも可能である。カルコゲン化物は、市販品をそのまま用いてもよいし、上述したようにそれぞれの元素の単体から調製してもよい。カルコゲン化物を溶融混合する加熱条件として、上述した溶融混合工程と同様の条件を用いることができる。
【0034】
本発明のガラス発光体は、赤外域において高効率で発光する。この発光を利用して、赤外域でのレーザ媒体、光アンプ等へ適用できる。本発明の発光体は、その発光波長に応じて、様々な用途が考えられる。
【0035】
例えば、2μmより短波長の光を発光するレーザでは、1.55μmを中心とした光通信関連のデバイスへの利用が考えられ、非線形光学デバイスを用いることによって可視、紫外レーザ光を得るための基本波レーザ光源としての利用が最も大きい。
【0036】
一方、2μm以上の光を発光するレーザは、(1)赤外分光、微量な化学物質のセンシングなどの測定技術、(2)医療用メス、機械加工用メス、ライダー(lidar: light detection and ranging)などの器具などへの用途が考えられる。
【0037】
本発明では、発光体本体がガラス材料であるため、結晶体からなる材料に比して容易にファイバ状、導波路状などに加工することができる。これにより、更に高効率なレーザ、光アンプを製造することが可能となる。また、カルコゲン化物は、レーザや電子線照射などにより容易に屈折率などの物性を変化することができる(光誘起現象、電子線照射誘起現象)。この現象を利用すれば、光導波路やグレーティングを書き込むことができるので、コンパクトな導波路型レーザ装置、光アンプ装置などを製造することができる。
【0038】
また、励起源として半導体レーザを用いれば、全固体型レーザ装置の製造を実現できる。
【0039】
以下に本発明の発光体が、赤外域、とりわけ約2μm以上の中赤外域において極めて高効率で広い波長範囲にわたって発光することができ、また、その発光をレーザや光アンプ等にも容易に応用できることに関して詳細に述べる。
【0040】
媒質中での発光イオンの発光効率は、励起状態(発光始準位)にある発光イオンが、基底状態または発光始準位より下にある励起準位に緩和する全遷移確率に対する発光に利用される輻射の遷移確率の比で決まる。
(発光の効率)=(輻射遷移確率)/(全遷移確率)
発光始準位にあるイオンが緩和する過程としては、主に、発光に利用される輻射遷移と、熱的に緩和される無輻射遷移があげられる。
(全遷移確率)=(輻射遷移確率)+(無輻射遷移確率)
従って、発光の効率を高くするためには、輻射遷移確率を大きくし、無輻射遷移確率を小さくすればよい。
【0041】
輻射遷移確率は、発光イオンの電子構造、媒質中での発光イオンがおかれた配位環境、すなわち発光イオンと媒質を構成するイオンとの結合状態や発光イオンのまわりの配位構造等に依存し、また媒質の屈折率にも依存する。特に屈折率に対しては、理論的に屈折率の5乗程度のオーダーで依存することが分かっている。本発明では、媒質(ガラス構成成分)としてカルコゲン化物ガラスを用いている。カルコゲン化物ガラスは、発光体の媒質として一般に用いられている酸化物やフッ化物に比べて、通常屈折率が高い(1.5〜1.7倍程度)。従って、輻射遷移確率は、理論的には、酸化物やフッ化物に比べて10倍程度大きくなる。
【0042】
一方、無輻射遷移確率は、輻射遭移確率に比べて、媒質に対する依存性が更に大きい。発光イオンが希土類イオンである場合には、無輻射遷移確率は、媒質を構成するイオン間の結合の強さに対して指数関数以上で依存し、結合の強さが小さくなるほど、無輻射遷移確率は小さくなることが知られている。
【0043】
これに対して、発光イオンが遷移金属イオンの場合には、希土類イオンのように、結合の強さと無輻射遷移確率との定量的な関係は見出されていない。これは、後述するように、遷移金属イオンの発光に関わる遷移がd−d遷移であり、遷移金属元素の最外殻であるd軌道は、配位子との結合に関わっているためである。
【0044】
本発明では、遷移金属を含有する様々なガラスを作製し、遷移金属イオンの発光を系統的に調べた。結果、硫化物、セレン化物、テルル化物などのカルコゲン化物ガラスを用いることによって、酸化物、フッ化物などからなるガラスに比して、遷移金属イオンの無輻射遷移確率を低く押さえることに成功し、これによって発光の効率を高めることができた。
【0045】
次に、幅広い発光波長帯が得られる理由について述べる。本発明では、ガラス媒質中に含まれる遷移金属イオンのd‐d遷移からの発光を用いている。遷移金属イオンのd軌道は最外殻にあり、周りの配位子場の影響を直接受け、エネルギー準位が大きく広がっている。このため、d‐d遷移による発光帯は、幅広いスペクトル幅を持つ。更にガラス中では、遷移金属イオンの構造が歪み、遷移金属イオンの置かれた配位子場環境がイオンごとによって異なるので、これに起因してスペクトル幅が広がる。
【0046】
最後に、本発明では、発光イオンである遷移金属イオンのガラス中での存在状態については特に制限はしないが、4つのカルコゲン化物イオンに配位された4配位環境にあるのが好ましい。これは、4配位では、配位子場の分裂のエネルギー差が6配位に比べて小さいので発光波長がより長波長になること、また、振動子強度、即ち、輻射遷移確率が6配位に比べて大きくなることが期待できるからである。
【0047】
【発明の効果】
本発明によると、赤外域において広い波長範囲にわたって発光するガラス発光体を得ることができる。本発明によると、特に約2μm以上の中赤外域において広い波長にわたって発光するガラス発光体を得ることができる。
【0048】
本発明のガラス発光体は、広い波長範囲にわたって発光するので、幅広い波長で発振し得る。
【0049】
【実施例】
以下に本発明について、実施例を用いてより詳しく述べるが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
実施例1
ガラス原料として、金属ガリウム、金属ゲルマニウム、金属ランタン、金属コバルトおよびイオウ粉末を使用した。これらのガラス原料を全量が4〜5gとなり、モル比が59.7GaS3/2・10GeS2・30LaS3/2・0.3CoS(Ga2S3:GeS2:La2S3 (重量比)=50.2:9.8:40、ガラス構成成分に対するCo2-の重量比:0.13wt%)となるように秤量し、石英ガラス管に真空封入した。この石英ガラス管を遥動型電気炉で室温から600℃まで毎分1℃程度で徐々に温度を上げ、その後600℃でイオウと金属を48時間程度反応させて硫化物を生成させた。その後、更に温度を徐々に上げて800℃迄昇温し、生成した硫化物を48時間程度溶融混合した。更に、1000℃迄徐々に昇温し、1000℃で1時間程度加熱することによって十分溶融混合した後、融液を1000℃から室温に急激に冷却することによってガラスを得た。得られたガラスを約1mm厚に成形し、研磨後、吸収スペクトルを測定した。結果を図1に示す。縦軸の吸光係数(Absorption coefficient/cm-1)は、以下の式で求めた。
【0050】
【式1】
【0051】
吸収スペクトルから、コバルトイオンは2価であり、4つのイオウに配位された4配位サイトに位置している、即ち4配位構造を有していると推察された。
【0052】
また、同じ試料についてチタンサファイアレーザ(波長:745nm)励起による赤外域での蛍光スペクトルを測定した。結果を図2に示す。図2から明らかなように、1.2〜2.7μm程度にわたってブロードな蛍光が観察された。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1において製造した59.7GaS3/2・10GeS2・30LaS3/2・0.3CoSガラスの吸収スペクトルを示す。
【図2】実施例1において製造した59.7GaS3/2・10GeS2・30LaS3/2・0.3CoSガラスの赤外域での蛍光スペクトルを示す(励起光は、波長745nmのレーザ光)。
Claims (6)
- Cr 2+ ,Fe 2+ ,Co 2+ およびNi 2+ からなる群から選択された少なくとも1種の3d遷移金属元素のイオンを含有する2μm以上の中赤外域発光用の、(2)Gaのカルコゲン化物とLaのカルコゲン化物、または(3)Gaのカルコゲン化物および/またはGeのカルコゲン化物とLaのカルコゲン化物からなるカルコゲン化物ガラス発光体。
- 3d遷移金属元素イオンが、Co2+である請求項1に記載のカルコゲン化物ガラス発光体。
- 3d遷移金属イオンが、ガラス発光体中において4つのカルコゲン化物イオンに配位された4配位構造を有することを特徴とする請求項1または2に記載のガラス発光体。
- 3d遷移金属元素が、カルコゲン化物を形成している請求項1〜3のいずれかに記載のカルコゲン化物ガラス発光体。
- 光照射によって、照射光よりも長波長の光を発光する請求項1〜4のいずれかに記載の発光体。
- 前記カルコゲン化物ガラス発光体を構成するカルコゲン化物が硫化物である請求項1〜5のいずれかに記載のカルコゲン化物ガラス発光体。
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