JP4372680B2 - 抗アシアロガングリオシド抗体の測定による敗血症の診断方法 - Google Patents

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Description

本発明は、敗血症および敗血症様全身性炎症性疾患、医学的診断、特に予防診断のための新規な方法、ならびにまた、それらから導かれる、供血者の血液をモニターする方法(例えば血液バンクのスクリーニングにおける)に関する。本方法は、敗血症患者の血清中で大幅に上昇したIgGタイプおよびIgAタイプの、抗ガングリオシド自己抗体、特に抗アシアロGM1自己抗体、およびそれらと交差反応する抗体、例えば抗GM1抗体の濃度に関する初の検出に基づいている。
特に、本発明は、例えば、過去の医学的介入および/または外傷(事故、火傷、戦傷、褥瘡等)により敗血症反応発症の危険性の高いヒト患者(敗血症の危険性のある患者)における敗血症反応の早期診断方法と、例えば、医学的介入の前または外傷の直後に、敗血症がその後危険性のある併発症として発症し得るようなタイプであるかどうかについて、患者に対する敗血症反応の潜在的危険性を評価する方法に関する。
本方法は、危険性を回避する方法として、すなわち、上述抗体について陰性の試験結果である場合に敗血症の深刻な危険性を回避するための方法として特に有用である。
炎症は、一般に、種々のタイプの外部作用(例えば、損傷、火傷、アレルゲン、微生物(細菌、菌類およびウイルス等)による感染)に、拒絶反応を誘発する異種組織に、または、例えば自己免疫性疾患および癌で炎症を誘発する身体の特定の内因性状態に対する生物の特定の生理学的反応として定義されている。炎症は無害な身体の局所的反応として発生し得るが、個々の組織、器官、器官の各部分および組織の各部分における数多くの重篤な慢性疾患および急性疾患の典型的な特徴でもある。
局所的炎症は、一般に有害な作用に対する身体の健全な免疫反応の一部であり、したがって生物の生命を維持する生体防御反応の一部である。しかし、炎症が、例えば自己免疫性疾患などにおける特定の内因性プロセスに対する身体の誤った応答の一部である場合、および/または慢性状態である場合、あるいは全身性炎症反応症候群(SIRS)のケースまたは感染によって生じた重篤な敗血症のように炎症が全身的範囲に至る場合、炎症反応に典型的な生理学上のプロセスは調節不能となり、生命に危険を及ぼす実際の病理学上のプロセスになることが多い。
現在、炎症プロセスの原因および過程は、主としてタンパク質またはペプチド性状である相当数の物質によって調節されていること、あるいはほぼ一定時間に特定の生体分子の発生が伴うことが知られている。炎症反応に関与している内因性物質としては、特に、サイトカイン、メディエイター、血管作動性物質、急性期タンパク質、および/またはホルモン調節物質に属し得るものが挙げられる。炎症反応は、炎症プロセスを活性化する内因性物質(例えば、TNF-α、インターロイキン-1)と、炎症プロセスを非活性化する物質(例えばインターロイキン-10)の両方が関与している複雑な生理的反応である。
敗血症または敗血症性ショックの場合のような全身性炎症では、炎症特異反応カスケードが未調節で全身にわたって広まり、過度の免疫反応では生命が危険にさらされるようになる。公表されている関連の文献で明らかであって、内因性の炎症特異的物質の個々の群に関する発生と予想される機能に関する知見については、例えば、A.Beishuizenら、「Endogenous Mediators in Sepsis and Septic Shock」、Advances in Clinical Chemistry、第33巻、1999年、55〜131頁;およびC.Gabayら、「Acute Phase Proteins and Other Systemic Responses to Inflammation」、The New England Journal of Medicine、第340巻、第6号、1999年、448〜454頁を参照することができる。敗血症および関連の全身性炎症性疾患についての理解と、それによってまた認識されている定義は近年変わってきており、敗血症の最新の定義が記載されている、K.Reinhartら、「Sepsis und septischer Schock」[Sepsis and Septic Shock]、Intensivmedizin、Georg Thieme Verlag、Stuttgart、New York、2001年、756〜760頁を参照することができる。本出願において使用している敗血症および炎症性疾患という用語は、この記載した3つの文献中で与えられている定義に基づいている。
少なくともヨーロッパでは、敗血症という用語は、長らく陽性の血液培養により検出可能な全身性細菌感染により特定されてきたが、今日では、主として敗血症とは、感染によって発生するが、病理学上のプロセスとして、他の原因によって誘導される全身性炎症とかなりの類似点を持っている全身性炎症であるものと理解されている。敗血症の理解において前記のような変更があったことから、結果的に診断的手法に変化が生じてきている。そのため、細菌性病原体の直接検出は、生理学的パラメーターの複雑なモニタリングによって置き替えられるか補足され、ごく最近では、特に敗血症プロセスまたは炎症性プロセスに関与している特定の内因性物質、すなわち特定の「バイオマーカー」の検出によって置き替えられたか補足された。
導入された敗血症のバイオマーカーとして特に好適な内因性物質は、プロカルシトニンである。プロカルシトニンは、その血清中濃度が感染性病因の全身性炎症(敗血症)の条件下では非常に高い値に達するが、健常者では実質的に検出されないプロホルモンである。また、プロカルシトニンは比較的敗血症の初期段階で高い値に達するので、プロカルシトニンの測定は、敗血症の早期診断に、あるいは、感染によって発生した敗血症を他の原因の重篤な炎症と早期に区別するのに好適である。敗血症マーカーとしてのプロカルシトニンの測定は、M.Assicotら、「High serum procalcitonin concentrations in patients with sepsis and infection」、The Lancet、第341巻、第8844号、1993年、515〜518頁による刊行物;ならびに独国特許第4227454 C2号および欧州特許0656121 B1号および米国特許第5,639,617号の主題である。近年、プロカルシトニンを主題とする刊行物の数が非常に増加してきている。そのためまた、W.Karzaiら、「Procalcitonin - A New Indicator of the Systemic Response to Severe Infection」、Infection、第25巻、1997年、329〜334頁;およびM.Oczenskiら、「Procalcitonin:a new parameter for the diagnosis of bacterial infection in the peri-operative period」、European Journal of Anaesthesiology、1998年、15、202〜209頁;さらに、H.Redlら、「Procalcitonin release patterns in a baboon model of trauma and sepsis:Relationship to cytokines and neopterin」、Crit Care Med、2000年、第28巻、第11号、3659〜3663頁;およびH.Redlら、「Non-Human Primate Models of Sepsis」、Sepsis、1998年;2:243〜253頁;ならびに最近発行された代表的な論文として、これらの文献中に引用されているさらなる文献を参照することができる。
敗血症マーカーのプロカルシトニンの有用性によって敗血症研究にかなりのはずみがついてきており、現在では、プロカルシトニン測定を補足し、かつ/または詳細診断または識別診断の目的で追加情報の提供が可能な、さらなるバイオマーカーを発見するために多大な努力が行われている。これらの努力の結果は、本出願人の多数の特許出願、具体的には、独国特許出願公開第19847690 A1号または国際公開第00/22439号、未公開の多数の独国特許出願(独国特許出願第10119804.3号またはPCT/EP02/04219号;独国特許出願第10131922.3号;独国特許出願第10130985.6号)、あるいは欧州特許出願(EP 01128848.7号;EP 01128849.5号;EP 01128850.3号;EP 01128851.1号;EP 01128852.9号;EP 01129121.8号;EP 02008840.7号およびEP 02008841.5号)で確認することができる。前記特許および特許出願の内容は、本明細書を補完するものとしてこれにより援用することができる。
炎症中に形成された内因性物質が身体の複合反応カスケードの一部であることから、かかる物質はまた診断目的であるだけでなく、例えば敗血症で確認されている炎症の全身への広がりをできるだけ初期段階で阻止するために、このタイプの個々の物質の起源および/または濃度に影響を及ぼすことにより炎症プロセスに治療的介入するという試みが現在強力に推し進められている。本明細書においては、炎症プロセスに関与していることが明らかであり得る内因性物質もまた、有望な治療上の標的と見なすものとする。炎症プロセスの特定メディエイターを起点として良好な方法で治療的にこれに影響を及ぼす試みは、例えば、E.A.Panacek、「Anti-TNF strategies」、Journal fur Anasthesie und Intensivbehandlung;第2号、2001年、4〜5頁;T.Calandraら、「Protection from septic shock by neutralization of macrophage migration inhibitory factor」、Nature Medicine、第6巻、第2号、2000年、164〜170頁;またはK.Garber、「Protein C may be sepsis solution」、Nature Biotechnology、第18巻、2000年、917〜918頁に記載されている。しかし、これまでかかる治療的手法がかなり不本意な結果に終わっていることを考えると、できるだけ炎症特異的または敗血症特異的であって、かつ、治療上の標的として、首尾よく炎症を抑制する新たな可能性をもたらす、さらなる内因性生体分子の同定が非常に期待されている。
前述のすべてのバイオマーカーまたは前記の先行出願に記載されているバイオマーカーは、例えば、酵素特性または(プロ)ホルモン特性を有する生理学的なペプチドまたはタンパク質分子であるか、定義されている細胞断片である。しかし、免疫グロブリンタイプ(特に、IgGタイプおよびIgAタイプ)のタンパク質、すなわち抗体は、これまで、敗血症、具体的には細菌によって誘発された敗血症に対する診断的に妥当なバイオマーカーとして、あるいは敗血症の発生に関する、または進行敗血症における特有の危険性のある状態に対する診断的に妥当なバイオマーカーとして報告されていない。
A.Beishuizenら、「Endogenous Mediators in Sepsis and Septic Shock」、Advances in Clinical Chemistry、第33巻、1999年、55〜131頁 C.Gabayら、「Acute Phase Proteins and Other Systemic Responses to Inflammation」、The New England Journal of Medicine、第340巻、第6号、1999年、448〜454頁 K.Reinhartら、「Sepsis und septischer Schock」[Sepsis and Septic Shock]、Intensivmedizin、Georg Thieme Verlag、Stuttgart、New York、2001年、756〜760頁 M.Assicotら、「High serum procalcitonin concentrations in patients with sepsis and infection」、The Lancet、第341巻、第8844号、1993年、515〜518頁 独国特許第4227454 C2号 欧州特許0656121 B1号 米国特許第5,639,617号 W.Karzaiら、「Procalcitonin - A New Indicator of the Systemic Response to Severe Infection」、Infection、第25巻、1997年、329〜334頁 M.Oczenskiら、「Procalcitonin:a new parameter for the diagnosis of bacterial infection in the peri-operative period」、European Journal of Anaesthesiology、1998年、15、202〜209頁 H.Redlら、「Procalcitonin release patterns in a baboon model of trauma and sepsis:Relationship to cytokines and neopterin」、Crit Care Med、2000年、第28巻、第11号、3659〜3663頁 H.Redlら、「Non-Human Primate Models of Sepsis」、Sepsis、1998年;2:243〜253頁 独国特許出願公開第19847690 A1号 国際公開第00/22439号 独国特許出願第10119804.3号 PCT/EP02/04219号 独国特許出願第10131922.3号 独国特許出願第10130985.6号 EP 01128848.7号 EP 01128849.5号 EP 01128850.3号 EP 01128851.1号 EP 01128852.9号 EP 01129121.8号 EP 02008840.7号 EP 02008841.5号 E.A.Panacek、「Anti-TNF strategies」、Journal fur Anasthesie und Intensivbehandlung;第2号、2001年、4〜5頁 T.Calandraら、「Protection from septic shock by neutralization of macrophage migration inhibitory factor」、Nature Medicine、第6巻、第2号、2000年、164〜170頁 K.Garber、「Protein C may be sepsis solution」、Nature Biotechnology、第18巻、2000年、917〜918頁 欧州特許出願第02009884.4号 欧州特許出願第02009882.8号 欧州特許出願第02009884.2号 欧州特許出願第02009882.1号 Michael Wellerら、「Ganglioside antibodies:a lack of diagnostic specificity and clinical utility?」、J Neurol (1992年)、239:455〜459頁 Einar Bechら、「ELISA-Type Titertray Assay of IgM Anti-GM1 Autoantibodies」、Clin.Chem.40/7、1331〜1334頁、1994年 Alan Pestronk,MDら、「Multifocal motor neuropathy:Serum IgM anti-GM1 ganglioside antibodies in most patients detected using covalent linkage of GM1 to ELISA plates」、Neurology、1997年、49:1289〜1292頁 Mepur H.Ravindranathら、「Factors affecting the fine specificity and sensitivity of serum antiganglioside antibodies in ELISA」、J.Immunol.Methods 169、1994年、257〜272頁 Armin Alaediniら、「Detection of anti-GM1 Ganglioside Antibodies in Patients with Neuropathy by a Novel Latex Agglutination Assay」、J.Immunoassay、21(4)、377〜386頁、2000年 Armin Alaediniら、「Ganglioside Agglutination Immunoassay for Rapid Detection of Autoantibodies in Immune-Mediated Neuropathy」、J.Clin.Lab.Anal.15:96〜99頁、2001年 Hugh P.Pressら、「Role of Natural Killer Cells in Cancer」、Nat Immun 1993年;12:279〜292頁 Lewis L.Lanierら、「Arousal and inhibition of human NK Cells」、Immunological Reviews 1997年、第155巻:145〜154頁 Yoichi Fukiら、「IgG Antibodies to AsialoGM1 Are More Sensitive than IgM Antibodies to Kill in vivo natural Killer Cells and Prematured Cytotoxic T Lymphocytes of Mouse Spleen」、Microbiol.Immunol.、第34(6)巻、533〜542頁、1990年 N.Saijoら、「Analysis of Metastatic Spread and Growth of Tumor Cells in Mice with Depressed Natural Killer Activity by Anti-asialo GM1 Antibody or Anticancer Agents」、J Cancer Res Clin Oncol (1984年)107:157〜163頁 Sonoku HABUら、「Role of Natural Killer Cells against Tumor growth in Nude Mice - A Brief Review」、Tokai J Exp Clin Med.、第8巻、第5号、6:465〜468頁、1983年 Lewis L.Lanier、「NK Cell Receptors」、Annu.Rev.Immunol.、1998年、16:359〜93頁; Theresa L.Whitesideら、「The role of natural killer cells in immune surveillance of cancer」、Current Opinion in Immunology、1995年、7:704〜710頁 Tuomo Timonenら、「Natural Killer cell-target cell interactions」、Current Opinion in Cell Biology、1997年、9:667〜673頁。 Shuiui Sekiらは、「Role of Liver NK Cells and Peritoneal Macrophages in Gamma Interferon and Interleukin-10 Production in Experimental Bacterial Peritonitis in Mice」、Infection and Immunity、第66巻、第11号、1998年、5286〜5294頁 P.Toftら、「The effect of surgical stress and endotoxin-induced sepsis on the NK-cell activity,distribution and pulmonary clearance of YAC-1 and melanoma cells」、APMIS、1999年;107:359〜364頁 D.H.Broniaら、「Ganglioside treatment of acute Trypanosoma cruzi infection in mice promotes long-term survival and parasitological cure」、Annals of Tropical Medicine & Parasitology、第93巻、第4号、341〜350頁(1999年
本発明の根本的な目的は、敗血症診断および敗血症予防において測定可能であり、場合によっては、敗血症予防療法および敗血症予防のための対策の開始を可能にする、さらなる敗血症パラメーターを提供することである。
本目的は、請求項1に記載の方法と、請求項2から9に記載のその好ましい実施形態によって達成される。
さらに、ヘルスケアの方法は請求項1から9に記載の方法から導かれ、供血および外因性物質をモニターする方法として示すことができる。これらの方法は、請求項10および12と、これらに関係している請求項11および13にまとめられている。
本発明のさらなる実施形態は、以下の説明および実施例から明らかである。
本発明は、一般に、その時点で実験的にチェックすることが可能な限りにおいて、他の報告ではそれ自体周知である特定の抗体または自己抗体が、敗血症患者の試験血清中で、診断的に有意に上昇した濃度で驚くべき頻度でもって確認されるが、同じ抗体が健常者では検出不可能であるか、実質的に少量しか検出されないという非常に驚くべき知見に基づいている。抗体が有意に上昇した濃度で確認された敗血症患者の血清サンプルは、敗血症の危険性を生じさせる状況のごく直後(例えば、手術、事故、火傷の約2時間後)に(この場合、患者はその後に敗血症の完全な症状のみを発症する)、かなりの部分を患者から得たものである。敗血症の発症時のかかる初期に高感度の特異的抗体が生じること(敗血症患者のサンプルの正確な検出)は非常に驚くべきことであり、これは、かかる抗体の発生と、敗血症プロセスでそれら抗体が担っている、あるいは担い得る負の機能に関して重要な因果関係を有している。これについて、以下により詳しく説明する。
本発明による抗アシアロGM1抗体およびそれらと交差反応するガングリオシド抗体(すなわち、アシアロGM1に結合するもの)の測定によれば、個体の危険性の高まった状態における敗血症の発症に対して、あるいは敗血症の危険性のある患者のケースですでに発症している敗血症に起因する深刻な危険性に対して、高い信頼度でもって罹病性を検出することが本発明により可能である。同時に、この抗体測定で結果が陰性の場合には、これらの患者にかかる危険性の上昇がないこと、あるいはこれらの患者には敗血症の発症が始まっていないことが同定される。
また、測定された抗体の濃度が一部の他の特定疾患でも上昇する場合、一般に敗血症診断の目的で敗血症の危険性のある患者の臨床所見と病歴をさらに考慮することによって、多大な困難なく正確な測定結果の判断を行うことができる。これは、抗ガングリオシド抗体が発見されている周知の神経障害と、かかる抗体が通常同様に上昇している癌患者の双方に適用される。癌患者の血清における抗ガングリオシド抗体の上昇は、本出願人の少し前の未公開欧州特許出願第02009884.4号の主題であり、前記出願には、本発明による敗血症診断方法で測定されている同じ抗体が、実質的にすべての種類の悪性腫瘍性疾患に対する全般的なバイオマーカーとしても有用であり得ることが開示されている。前記の先行出願および並行特許出願第02009882.8号の全内容は、治療態様に関して、特に、ガングリオシドの一般的説明および抗ガングリオシド抗体についてすでに知られている機能の一般的な説明に関して、本出願の記述を補完するためにこれにより援用する。
さらに以下に説明されているように、敗血症および悪性新生物(欧州特許出願第02009884.4号および同第02009882.8号を参照)において有意に上昇した濃度で見出されている抗アシアロGM1抗体およびそれらと交差反応する抗体は、特に、細胞障害性リンパ球(「ナチュラルキラー細胞」(NK細胞)と呼ばれ、免疫反応の重要なメンバーである)の破壊または阻害/非活性化において正常な免疫反応に悪影響を及ぼすことにより、敗血症と癌の発生の両過程でおそらく決定的な疾患進行の機能を果たしていると想定されるさらなる理由がある。
したがって、例えば供与血液の投与により、患者に対してかかる抗体を外部から何気なく提供しないことと、さらには健常者におけるかかる抗アシアロ抗体の形成に関して感作をもたらし得るそのヒト環境からこれらの因子を測定することが重要である。これは、下記に説明されている本発明のさらなる態様、すなわち、第1に、保存血をモニターするためのかかる抗体の測定、または保存血のスクリーニング(血液バンクスクリーニング)のための供与血液中のかかる抗体の測定と、第2に、分子類似によってこれらの抗体の形成を引き起こすそれらの潜在能力の物質結合環境因子の試験とを提供する。
したがって、さらなる態様では、本発明はまた、敗血症または癌診断用の患者血清では測定されないが、供与血液(例えば、保存血)のモニタリングでは測定される、抗アシアロGM1抗体およびそれらと交差反応する抗体の測定方法であって、特に、患者のNK細胞を非活性化し、それらの機能を無効にすることによって、この血液が投与される患者の免疫反応に障害が起こることを避けるための、前記方法に関する。かかる測定は、患者の血液サンプル(血清サンプル)で同じ抗体を測定することは基本的に相違しないが、血液サンプルの起源と測定(スクリーニング)の実施目的だけが相違する。
また以下に簡単に説明されているように、ヒトにおいて、GM1などのガングリオシドと反応する抗体の形成が細菌曝露(例えば、Campylobacter jejuni感染またはHeliocobacter pylori感染)によっても誘発され得ることがすでに知られている(先行の欧州特許出願第02009884.4号とその中に引用されている文献中の対応している記述を参照)。したがって、ガングリオシドの糖成分に類似しているさらなる分子構造が存在しており、その結果、それらの構造がヒトにおいて分子擬似により同様の方法で前記細菌に対する抗AGM1抗体またはそれらと交差反応する抗体の形成を発生させる可能性があり、かつ非常に広範囲の形態でヒト環境で発生し得ることが想定される。したがって、本出願および本出願人の先行出願に記載されている診断の結果から導かれるさらなる目的は、かかるものとして、ガングリオシド(特にアシアロGM1)に擬似しているものを環境物質中で同定すること、またそれによって、ヒトの健康に対するかかる物質の別の可能性のある検出不能な危険性を測定することを可能にする方法を提供する。
本目的は、かかる物質として好適な物質を抗AGM1抗体およびそれに対する特異的バインダー(例えば固定化形態のAGM1)を含むアッセイ系と接触させ、アッセイで使用されているそれらの特異的バインダーに抗AGM1抗体が結合している場合に、被試験物質のそれ自体競合として示されている影響を測定するスクリーニング法により提供する。例えば、かかる試験では、高抗体力価が測定された患者の血清を抗AGM1抗体の供給源として直接用いることができ、特異的バインダーへの特異的結合の相対競合阻害は、試験する外来物質を反応混合物に添加し、得られた結果を前記物質が入っていない反応混合物の基準値と比較する点を除いては、血清中または血液サンプル中の抗体の測定と実質的に同じ方法で測定することができる。したがって、この観点から本発明はまた、環境スクリーニングの方法と見なすことができる方法に関する。
以下に、本方法が基づいている測定値の提示とともに、本発明による敗血症診断方法の知見と、実際に本方法を実施するのに現時点で好ましい方法をより詳細に説明する。
本発明による方法の判断および事後可能性のチェックは、本発明の主題と関連し得る科学系刊行物を踏まえて以下に記載するが、これらは、本発明により測定される抗ガングリオシド抗体または自己抗体(特に抗AGM1抗体およびそれらと交差反応する抗体)が、それらのNK細胞の機能に対する作用によって、敗血症プロセスにおける、特に敗血症の発生とその過程において重要な機能を果たしていることを明確にし、一方においては、敗血症予防、敗血症防止および場合により敗血症治療の新規な治療上の手法に関する情報を提供し、また上記の内容から、本発明のさらなる予防の態様を導くことができる。
本発明は、自己免疫性疾患および敗血症の臨床診断領域において、本出願人に行われた徹底した研究の結果である。本件においては、研究は、特定の抗ガングリオシド抗体が、自己免疫性疾患(特に、神経を損傷する神経障害性自己免疫性疾患)に随伴する、文献に記載されている抗体に属しているという知見から出発している。
ガングリオシドは動物細胞の原形質膜の細胞外サイドの成分である糖脂質であり、また当該物質は神経組織中にも生じる。ガングリオシドは、1モル当たり数単位の単糖を含有しているが、リン含有量はなく、スフィンゴ脂質に属している。タンパク質と比較すると、ガングリオシドはどちらかといえば低分子量の生体分子である傾向にある。本発明において検討されている抗体が結合するガングリオシドは、主として、本出願でAGM1と略記されているアシアロGM1と、GM1と略記されている関連のモノシアロ-ガングリオシドである。本出願人は、ガングリオシドに関し、血清中で発見された抗体群または少なくとも主要部分が両ガングリオシド(AGM1および/またはGM1)によって選択的に結合されることを見出すことができた。GM1は、D-ガラクトース2単位、N-アセチルガラクトサミン1単位、およびD-グルコース1単位を含む糖モノマー4単位の多糖鎖を有するガングリオシドであり、D-グルコース単位はいわゆるセラミド成分に結合している。ガングリオシドGM1では、N-アセチルノイラミン酸基(NANA;シアル酸またはo-シアリン酸基;「モノシアロ」基)(これはシアリン酸非含有のアシアロGM1(AGM1)には存在しない)が多糖鎖内に位置しているD-ガラクトース単位に結合している。
前記ガングリオシドと関連化合物は、例えば、軸索増殖およびニューロン分化、受容体機能ならびに身体の種々の免疫反応への関与およびシグナル伝達と細胞間認識への関与をはじめとする、人体の多くの重要な生物学的機能に関係している。さらなる詳細は、例えば、すでに記載している先行欧州特許出願第02009884.2号の引用文献一覧に記載されている刊行物で確認することができる。
前記ガングリオシドおよび関連ガングリオシドに結合する抗体または自己抗体がヒトの体内で生じ得ることは長らく知られている。かかる抗体の生理学的機能とそれらの臨床診断で推定される重要性は、数多くの科学研究における課題である。
公開されているすべての刊行物の主要部分は、神経障害、例えば、免疫性運動神経障害(例えば、ギランバレー症候群(神経根炎、多発性神経根炎)および関連の(ミラー)フィッシャー症候群など)における抗ガングリオシド抗体の機能と診断重要性に関するものである。また、アルツハイマー病に随伴して、一部の患者で抗GM1自己抗体が多量に発生することも報告されている。さらに、これらの抗体は個々のHIV患者でも見つかっている。特定の種類の癌との関連においてこれらの抗体を測定する試みでは、出願人が独自の研究(これらの結果は、記載されている未公開の先行欧州特許出願第02009884.4号および同第02009882.1号で報告している)を行う以前は、ほとんど有効でないか、あるいは感度が低いといった反対の結果が報告されていた。
「抗ガングリオシド抗体の測定」の主題についての関連の科学文献をより詳しく研究した場合、確認すべき量(それは概して低い傾向にある)と、種々の患者および病理学的状態におけるタイプの異なる(自己)抗体に関する知見および情報は、非常に類似した多くの知見を有しつつ、相互に非常に相違していることが明らかである。このことは、かかる抗体の測定は、臨床診断においては不確かな値にとどまるという結論を得るのに十分であった(例えば、Michael Wellerら、「Ganglioside antibodies:a lack of diagnostic specificity and clinical utility?」、J Neurol (1992年)、239:455〜459頁を参照)。
しかし、出願人は、文献データが時として大幅に異なっている理由は方法論にある可能性があり、また用いる測定法の系統誤差により、これまで、真に信頼性があって、有益かつ一貫した結果がこれまで得ることができなかった可能性があること推定した。結果が公開されている測定の大部分は神経学的障害を有する患者に関するものであり、かつガングリオシド(場合によっては、著者自身により生物材料から得たもの)が結合されている固相を用いるように設計されたELISAタイプのイムノアッセイによって実施されていた。この固相は、測定すべき抗体が存在すると推定される液体の生体サンプルと反応させていた。各ケースで選択された時間にわたって培養し、固液分離し、固相を洗浄した後、次いで、前記固相に結合しているヒト抗体が酵素標識した動物抗ヒトIg抗体で非特異的に標識され、測定されていた。
前記タイプのアッセイは、抗ガングリオシド抗体の測定に用いた場合、測定の変調と誤差の影響を極端に受けやすく、注意深く標準化と規格化を行った場合のみ、信頼性があり再現可能な結果を得ることができる。この原因の1つは、比較的低分子量のガングリオシドを固定化することにより得られる固相の質が、大きな変化の影響を受けやすいということである。これは、1つには、液体試料との反応前に、残存している固相のフリーの結合能力が飽和されていなければならないという事実によるものである。この目的には、一般に、ウシ血清アルブミン(すなわちタンパク質)が用いられている。しかし、このステップの結果、被測定抗体が測定されなければならないものに対抗して、サンプル由来の他のタンパク質(例えばIgGタイプのもの)の非特異的結合が非常に強くなる(これは、強いバックグラウンドシグナルをもたらす)。しかし、アッセイの感度があまり高くない場合(概してELISAタイプのアッセイの場合)には、バックグラウンドシグナルと測定シグナルが非常に強く重複発生し、不正確な結果(有病誤診もしくは無病誤診)、または再現が不確かにしかならない測定結果が生じる可能性がある。
抗ガングリオシド抗体の測定に用いられる様々なアッセイ方法、ならびにかかる方法の適用における系統的問題および実際的問題については、例えば、Einar Bechら、「ELISA-Type Titertray Assay of IgM Anti-GM1 Autoantibodies」、Clin.Chem.40/7、1331〜1334頁、1994年;Alan Pestronk,MDら、「Multifocal motor neuropathy:Serum IgM anti-GM1 ganglioside antibodies in most patients detected using covalent linkage of GM1 to ELISA plates」、Neurology、1997年、49:1289〜1292頁;Mepur H.Ravindranathら、「Factors affecting the fine specificity and sensitivity of serum antiganglioside antibodies in ELISA」、J.Immunol.Methods 169、1994年、257〜272頁;Armin Alaediniら、「Detection of anti-GM1 Ganglioside Antibodies in Patients with Neuropathy by a Novel Latex Agglutination Assay」、J.Immunoassay、21(4)、377〜386頁、2000年;Armin Alaediniら、「Ganglioside Agglutination Immunoassay for Rapid Detection of Autoantibodies in Immune-Mediated Neuropathy」、J.Clin.Lab.Anal.15:96〜99頁、2001年を参照することができる。特に、Mepur H.Ravindranathらは、前記文献中に、実際的な抗ガングリオシド抗体測定に関するいくつかの基本的問題を詳細に記述している。
この冒頭の状況に鑑み、本出願人は、再現可能な抗GM1または抗AGM1抗体の測定と、例えばアルツハイマー病患者におけるそれらの診断的重要性の問題に取り組むこと、ならびに自己抗体の臨床診断のためのアッセイの作るものとしてその特定の技術および材料を利用することを決心した。内部検討においては、本出願人は、すべての従来の品質基準を保持しながら、これまでに知られている抗ガングリオシドアッセイを変更した改良型を開発した。関連する臨床的病理学症状のない健常者(供血者)の比較群の血清、および病気を患っている様々な人の血清中のGM1またはAGM1に結合している抗体の測定は、これらの改良型アッセイ(先行欧州特許出願第02009884.4号および同第02009882.8号に記載されている)によって実施したところ、第1に、健常者と比較した場合に、本出願人が入手可能なすべての血清、および癌患者から得られたすべての血清中のIgAおよびIgGタイプ(しかしIgMタイプではない)の抗GM1抗体または抗AGM1抗体に関する力価が有意に上昇していたという驚くべき結果が得られた。第2に、これらの測定からは、比較状況が敗血症患者血清中の対応する抗体の存在に適用されるという、まさに驚くべき結果が得られた。本出願はこれらの最後に記載した知見に基づき、それらから導かれる、敗血症予防および敗血症治療およびヘルスケアに関する技術的教示を一般的に記載する。
下記により詳細に記載した結果は、特定の改良型リガンド結合アッセイ(「イムノアッセイ」)を用いて本出願人の研究所で得られたものであるが、得られた知見は、記載されているこの特別なフォーマットのアッセイでのみ使用可能というわけではない。むしろ、下記に記載されている特定のアッセイは、関連の抗体測定において実質的には部分最適であり、抗ガングリオシド抗体(特に抗AGM1および抗GM1(自己)抗体)の臨床測定用の市販のアッセイは、最適化後の本記載アッセイとはいくつかの点において実質的に異なると考えられる。
生体サンプル中の前記抗体を測定する方法は、抗体(自己抗体)の量の選択的検出および測定に用いられている周知の任意の免疫診断法であってよい。好ましくは、抗体は、探し出す抗体に結合する抗原として固定化形態の各ガングリオシドを用いる、リガンド結合アッセイを用いて測定する。生体サンプル由来の特異的に結合している抗体を標識するには、それ自体周知である一部の好適な方法で標識した抗ヒト抗体、標識したガングリオシド誘導体、またはそれらの糖構造に擬似しており、各アッセイフォーマットに好適な親和性を有しているバインダーを次いで用いることができる。
また、競合アッセイフォーマットも特有の長所を有し得る。好ましくは、酵素標識を用いる代わりに、別のマーカー、例えば、化学発光検出反応のマーカー(例えば、アクリジニウムエステル)を選択する。もちろん、生じている抗体濃度の範囲に必要な高感度が保証されており、アッセイバックグラウンドからの測定されたシグナルを分離することができるアッセイを抗体測定に用いることが望ましい。
さらに、アッセイ方法は、チップ技術に適応させることが可能であるか、あるいは加速試験(ポイントオブケア試験、point-of-care test)として設計することができる。これはまた、少なくとも1つのさらなる敗血症パラメーターまたは感染パラメーターを同時測定し、少なくとも2種類の測定量が1セットである形態の測定シグナルを得て、敗血症または感染の詳細な診断に関してより正確に評価される多重パラメーター測定の一部として本発明による抗体測定を実施することができる。このタイプのさらなるパラメーターは、場合によっては周知のパラメーター、または本出願人の上述の先行特許出願に記載されているパラメーターからなる群、すなわち、特にプロカルシトニン、CA125、CA19-9、S100B、S100Aタンパク質、可溶性サイトケラチン(cytokeratin)断片、特にCYFRA21、TPSおよび/または可溶性サイトケラチン-1断片(sCY1F)、ペプチドのインフラミン(inflammin)およびCHP、ペプチドプロホルモン、グリシンN-アシル基転移酵素(GNAT)、カルバモイルリン酸シンテターゼ1(CPS1)およびその断片、ならびにC-反応性蛋白質(CRP)、または記載されているすべてのタンパク質の断片からなる群から選択されるものであると見なす。
チップ技術測定装置またはイムノクロマトグラフ測定装置により同時定量として多重パラメーター測定を実施する。この場合、測定装置により得られた複雑な測定結果の評価は、コンピュータプログラムによって行なうのが有利である。
本出願と関連する特許請求の範囲で用いられている用語が不当に狭く限定的に判断されるのを避けるために、最も重要ないくつかの用語について、特に本出願の目的において以下に定義するものとする。
「抗体」:この用語には、発生および形成の異なる体系の区別なく、外部抗原に対する抗体および内因性構造に対する抗体(すなわち自己抗体)の両抗体が含まれる。またこの場合、後者は、抗原交差反応によって外部抗原に対する抗体から自己抗体になり、外部抗原に関してそれらの結合能力を維持し得る。
例えば、抗体が「ガングリオシド構造に、およびガングリオシド構造に擬似している抗原構造に」結合しているか、あるいは「ガングリオシドまたは特定のガングリオシドに対して反応性」である(ここで、反応性とは「特異的結合における反応性」を意味する)と記載されている場合、例えば、別のさらなる抗原構造に対するこの特異的結合なしに、あるいは試薬(固定化または標識用のもの、または競合物質としてのもの)を用いた、本発明による抗体としての定義の役割を果たしている分子構造(AGM1、特にその糖構造に唯一擬似しているもの)によるその実際的な測定なしに、この定義により十分定義されるはずである。
「交差反応する」:抗アシアロGM1抗体と交差反応する抗体も測定される、または測定され得ると記載されている場合、これは主として、NK細胞上に関する決定因子として見出されているアシアロGM1構造に同様の方法で交差反応により結合し、それにより、これらのNK細胞に対する抗アシアロGM1抗体の生理学的効果と同等の効果を有し得る抗体を意味する。
「ガングリオシド」:本発明においては、「ガングリオシド」という用語は、主として、測定される抗体と結合する性質の特徴を有するガングリオシドAGM1を意味する。しかし、この用語には、これらのガングリオシドに結合し、同等の診断重要性を有している抗体が敗血症血清中で確認されることが明らかであれば、これまでまだ調査されていない関連のガングリオシド(例えば、フコシル化ガングリオシド(fucosylated gangliosides))も含むものとする。
「アッセイ」:この用語は、本件の(自己)抗体の測定に好適なすべての高感度リガンド結合アッセイを包含しているが、特定のアッセイフォーマット(サンドイッチアッセイ、競合アッセイ、凝集アッセイ)、または目的とする標識の特定のタイプに限定するものではない。もちろん、ある特定のアッセイフォーマットおよび/または標識は他のものより優れているため、好まれている(例えば、酵素標識に対する化学発光標識)。しかし、下記に詳細に記載されているアッセイに比べて非良好なアッセイまたは良好なアッセイを使用することは、本出願で定義した診断目的に用いた場合、特許請求の範囲から逸脱するものではない。
「感度」:本発明において、高感度とは、抗体が、すべての敗血症患者の少なくとも50%、良好には70%、好ましくは少なくとも85%、さらに好ましくは少なくとも95%で見出されることを意味する。
用語のさらなる意味は、本発明の緒言および後続の記載、ならびにその実施形態から当業者には明らかである。
下記の記載においては、以下で示す図について説明する。
抗体アッセイ:
1.アッセイ成分の調製:
A.試験管(被覆試験管;CT)の調製
3種類のタイプの試験管を調製した:(a)ガングリオシドGM1およびAGM1が結合されている試験管。(b)サンプルに特異的なバックグラウンドシグナルを測定するためのBSAコーティングを施した試験管。
a)ガングリオシドを被覆した試験管(GA-CT)を調製するため、ガングリオシド(GM1およびAGM1、各ガングリオシドはドイツ国のSigma社から入手した)をメタノールに溶解し、次いで、5μg/mlの濃度までPBS(リン酸緩衝生理食塩水溶液)、pH7.2、25%メタノールで希釈した。各ケースにおいて、この溶液300μlをポリスチレン製試験管(ドイツ国、Greinerの「Star」ポリスチレン製試験管)へ入れ、16時間、室温にてインキュベートした。その後、試験管の内容物を吸引により除去し、未結合の結合部位を飽和するために、水に溶解した0.5%BSA(ウシ血清アルブミン、プロテアーゼ非含有、ドイツ国シグマ社製)4.5mlで試験管を満たし、室温で2時間インキュベートした。その後、試験管の内容物の上澄みを取り出し、0.2%トゥイーン(Tween)、10mMトリス/HCl、10mMのNaCl、pH7.5で試験管を満たし、再度上澄みを除去した。次いで、試験管を抗体アッセイに用いた。
(b)血清成分は、試験管壁の未結合の結合部位を飽和するために用いられているBSAに結合し、かかる結合の程度は種々の血清の場合で著しく異なり得るので、各血清について個別にサンプルに特異的なバックグラウンドシグナルを測定する必要がある。
本目的においては、同一の試験管を0.5%BSA水溶液4.5mlで満たし、室温で2時間インキュベートした。その後、試験管内容物の上澄みを取り、試験管を0.2%トゥイーン、10mMトリス/HCl、10mMのNaCl、pH7.5で試験管を満たし、再度デカントした。次いで、この試験管(HR-CT)を、サンプルに特異的なバックグラウンドシグナルの測定に用いた。
B.アクリジニウムエステル標識抗ヒトIgGおよび抗ヒトIgA抗体(トレーサー)の調製
ヤギ抗ヒトIgG抗体(アフィニティ-精製品;grade II、米国のScantibodies製)およびヤギ抗ヒトIgA抗体(アフィニティ-精製品;ドイツ国のSigma社製)のPBS、pH7.4、100μl溶解液、各ケース2mg/mlをアクリジニウムNHSエステル(ドイツ国Hoechst製、アセトニトリル溶解液1mg/ml;DE36 28573A1を参照)10μlと各々混合し、室温で20分間インキュベートした。300μlの20mMグリシン、50mM Nadを添加後、標識抗体をヒドロキシアパタイトHPLCによって吸着クロマトグラフィーで精製した。用いた分離カラムは、溶媒Aで平衡化したHPHTカラム(120mm×8mm)であった(1mM NaPO4、pH7.0、10%メタノール、0.1%Lubrol;「LM A」;Lubrol 17A17はドイツ国Servaから入手)。流速は0.8ml/分であった。結合抗体は、0.8ml/分の流速で、40分間かけて、LM A/LM B(500mM NaPO4、pH7.0、10%メタノール、0.1%Lubrol;「LM B」)のリニアなグラジエントによって溶出した。カラム流出は、280nm(タンパク質)および368nm(アクリジニウムエステル)においてUV吸収について連続的に測定した。タンパク質に未結合のアクリジニウムエステルは、カラムから未結合の形態で溶出し、したがって、標識抗体からは完全に分離された。抗体を約25分で溶出した。HPLC精製の標識抗体のタンパク質濃度(BCA方法)を測定した後、トレーサーをヤギIgG(ドイツ国Sigma社製)および1%BSAのPBS、pH7.2、1mg/ml中で0.1μg/mlの最終濃度まで希釈した。
2.抗ガングリオシド抗体の測定の実施
研究対象のサンプル(ヒト血清)は、PBS、pH7.2、1mg/mlのヤギIgG 1%BSAで20倍まで希釈した。各ケースでは、その10μlをGA-CTまたはHR-CTへピペットで移した。次いで、4℃にて16時間振盪することにより(IKA機械式振盪機KS250ベーシック、400rpm)インキュベーションを行った。
未結合の抗体は、1mlの0.2% Tween、10mM Tris/HCl、10mM Nad、pH7.5で試験管を5回満たし、デカントすることにより除去した。試験管表面に保持されている抗体は、各ケースにおいて、200μlの各トレーサー(上記1.B.を参照)を試験管に入れ、次いで振盪しながら4℃にて3時間インキュベートすることによって、標識ヤギ抗ヒトIgGまたは標識ヤギ抗ヒトIgAの結合により検出した。未結合のトレーサーは、(上述のようにして)5回洗浄することにより除去した。
試験管表面に残っている標識抗体の量は、Berthold LB.952T/16照度計でルミネセンス測定により測定した。
GA-CTにおいて得られた各サンプルのルミネセンスシグナルは、HR-CTで測定された、同一サンプルにおける各バックグラウンドシグナルによって調整した。得られたシグナル(異なるシグナル)は、ガングリオシドGM1またはAGM1に結合しており、かつ各サンプル由来の抗体のシグナルである。抗ガングリオシド抗体の含有量の高いサンプルの希釈系列は、定量における相対的キャリブレータとして使用した。
3.健常者(コントロール)および敗血症患者の血清の測定
以下の一連の測定は、上述のようにして調製した試験管を使用し、上述の方法を用いて実施した。
コントロール血清:
137個のコントロール血清(供血者血清、および-抗体濃度における年齢に関連する影響を回避するために-高齢者の家および本出願人の職員から得た様々な年齢の健常者の血清)を、コントロール血清として、GM1で被覆されたGA-CTを用いた抗体測定に使用した。AGM1で被覆されたGA-CTを用いた抗体測定については、これらの血清の一部の群(30検体の血清のみからなる)を測定した。
試験血清:
敗血症患者の血清89検体を試験血清として、GM1で被覆したGA-CTを用いて抗体測定に使用した。AGM1で被覆したGA-CTを用いた抗体測定については、敗血症患者の血清20検体(前述の血清89検体の一部の群)を用いた。各試験血清については、とりわけ、患者の病歴、サンプリングの時間、および敗血症の後の経過に関係した臨床資料があった。
GM1で被覆したGA-CTを用いた、クラスIgGおよびIgA抗体の測定結果を図1および図2に示す。
AGM1で被覆したGA-CTを用いた、クラスIgGおよびIgA抗体の測定結果を図3および図4に示す。
4.コントロール血清中および敗血症患者の血清中の抗ガングリオシド抗体の測定結果に関する考察
図1〜4に概括した測定結果によって明らかなように、ガングリオシド(AGM1および/またはGM1)に結合するIgAクラスおよび/またはIgGクラスの抗体を測定したところ、調査した敗血症血清のほぼ全部(89検体のうち82検体、すなわち92%)で実質的に上昇したAGM1およびGM1の抗体力価が確認されたという事実により、コントロール群を敗血症患者から明らかに区別することができる。AGM1を被覆した試験管を使用したIgAの測定では、高感度で(敗血症患者はすべて陽性である)、かつ選択性のある(敗血症患者でない人が陽性として検出されない)測定結果が得られたことが明らかである(実施上の理由から、測定の数が、GM1を被覆した試験管を使用した89検体の測定ケースに比べてわずかに20検体と少なかったということが考慮すべき制限事項であるが)。
また、IgGおよびIgAタイプの抗体の測定と同様にしてIgMタイプの対応する抗体を測定する実験では、IgMタイプの抗体について診断的に妥当な程度まで上昇したレベルが敗血症血清中に確認されなかった(結果は示さず)こともさらに重要である。
また、「敗血症の危険性のある状況」(例えば、手術、事故、火傷)の後の非常に短い時間(約2時間)に得られた患者の血清サンプル中のIgAタイプ抗体およびIgGタイプ抗体の濃度が実質的に上昇して検出されたことと、IgMタイプの抗体の証拠がないことから、検出される抗体が「敗血症の危険性のある状況」の結果として、またはそれに随伴する細菌感染の結果としてのみ形成されるという可能性は除外される。しかし、これは、いずれの抗体も各敗血症患者内にすでに前もって存在すること、および/または敗血症の危険性のある状況によって誘発された「ブースター」作用で患者の前感作免疫系の活性化が大量の抗体産生を開始したことを意味する。
したがって、実質的にすべての測定した敗血症血清(92%)中でAGM1抗体またはGM1抗体の濃度が実質的に上昇したことが確認されたという事実は、敗血症の形成が、各患者内に当該抗体が前もって存在していることが原因として関係しているか、あるいは少なくとも過去の免疫化により患者内にすでに存在している「分子機構」(B細胞の形態)の活性化の結果であり、その場合、「敗血症の危険性のある状況」またはそれに随伴する感染の影響下で、その抗体の大量産生が開始されるということを意味するものとして判断される。これらの抗体のない患者またはその速やかな産生に不可欠な前感作がない患者は、これまでの実験結果に基づくと、敗血症を発症しないか、ほとんどわずかにしか発症しないであろう。
確認された結果によれば、以下の可能性が高いと考えられる。いわゆる「ナチュラルキラー細胞」(NK細胞;細胞障害的に活性のあるリンパ球)は、抗AGM1抗体が特異的に結合し、それによってNK細胞を非活性化することができるアシアロGM1構造をその表面に有していることが知られている。したがって、実験動物を用いる動物実験の分野では、発癌物質または腫瘍核と組み合わせて抗AGM1抗体を投与することにより、実験動物の免疫防御をはずして腫瘍を人為的に発生させ、それによって(動物モデルで所望した)実験上の癌が発生し得ることは通例であるという事実を参照することができる(Hugh P.Pressら、「Role of Natural Killer Cells in Cancer」、Nat Immun 1993年;12:279〜292頁;Lewis L.Lanierら、「Arousal and inhibition of human NK Cells」、Immunological Reviews 1997年、第155巻:145〜154頁;Yoichi Fukiら、「IgG Antibodies to AsialoGM1 Are More Sensitive than IgM Antibodies to Kill in vivo natural Killer Cells and Prematured Cytotoxic T Lymphocytes of Mouse Spleen」、Microbiol.Immunol.、第34(6)巻、533〜542頁、1990年;N.Saijoら、「Analysis of Metastatic Spread and Growth of Tumor Cells in Mice with Depressed Natural Killer Activity by Anti-asialo GM1 Antibody or Anticancer Agents」、J Cancer Res Clin Oncol (1984年)107:157〜163頁;Sonoku HABUら、「Role of Natural Killer Cells against Tumor growth in Nude Mice - A Brief Review」、Tokai J Exp Clin Med.、第8巻、第5号、6:465〜468頁、1983年;Lewis L.Lanier、「NK Cell Receptors」、Annu.Rev.Immunol.、1998年、16:359〜93頁;Theresa L.Whitesideら、「The role of natural killer cells in immune surveillance of cancer」、Current Opinion in Immunology、1995年、7:704〜710頁;Tuomo Timonenら、「Natural Killer cell-target cell interactions」、Current Opinion in Cell Biology、1997年、9:667〜673頁)。
しかし、活性NK細胞は敗血症または重篤な細菌感染の場合においてもヒトの免疫防御において非常に重要な機能を果たしている。例えば、Shuiui Sekiらは、「Role of Liver NK Cells and Peritoneal Macrophages in Gamma Interferon and Interleukin-10 Production in Experimental Bacterial Peritonitis in Mice」、Infection and Immunity、第66巻、第11号、1998年、5286〜5294頁で、炎症を促進するサイトカインおよび抗炎症性サイトカインの産生におけるNK細胞の重要な役割を記載している。彼らは、抗AGM1抗体を実験的に使用して人為的にNK細胞をスイッチオフすると、抗炎症性インターフェロン-γ産生の阻害が誘導されることを示している。NK細胞活性に対する外科的侵襲およびエンドトキシン誘導性敗血症の作用もまた、特にP.Toftら、「The effect of surgical stress and endotoxin-induced sepsis on the NK-cell activity,distribution and pulmonary clearance of YAC-1 and melanoma cells」、APMIS、1999年;107:359〜364頁にすでに記載されている。NK細胞反応性を有する生理学的に形成された抗体の推定される影響については、記載したいずれの論文においても検討されてはいない。
しかし、天然の抗AGM1抗体、およびそれと交差反応する抗ガングリオシド抗体(例えば抗GM1抗体)の検出、ならびに敗血症患者の血清中のかかる抗体の濃度の上昇は、かかる抗体が、感染特異的または炎症特異的サイトカインカスケードに影響を及ぼしている、これまで未検討のパラメーターを表しており、その場合、かかる抗体は天然サイトカイン制御サイクルに介入し、NK細胞を阻害すること、またはスイッチオフすることによってNK細胞に機能不全を起こし、患者に敗血症反応を誘発する。
すでに説明しているように、敗血症血清で発見された抗AGM1抗体は、少なくとも素因としてすでに存在していない限り、それらの性質およびそれらの発生の時期により、急性の敗血症を誘発する状況またはそれに随伴する新しい感染の結果として形成されないので、かかる抗体の測定は危険な状況を測定するのに好適であり、また敗血症の危険のある患者として分類される患者のケースの予後診断にも好適である。
したがって、この高感度測定によって、抗AGM1抗体およびそれと交差反応する抗ガングリオシド抗体(特にIgGおよび/またはIgAクラスのもの)の測定、敗血症診断(特に早期診断)に有用なアッセイ方法、ならびに、上述したような敗血症の危険のある患者の個人的な危険状態または敗血症の予後診断の測定が行われる。
本発明による方法を示唆する知見は、科学文献に見出すことはできない。抗ガングリオシド抗体が重篤な急性伝染病に際して測定されたことがほんの少数の文献にのみ記載されていた。かかるケースは、寄生虫クルーズトリパノソーマ(Trypanosoma cruzi)によって発症したシャガス病である(D.H.Broniaら、「Ganglioside treatment of acute Trypanosoma cruzi infection in mice promotes long-term survival and parasitological cure」、Annals of Tropical Medicine & Parasitology、第93巻、第4号、341〜350頁(1999年)、およびその中で引用されている文献を参照)。最後に挙げられている文献には、寄生虫T.cruziに感染したマウスへ外因性ガングリオシドを投与することについて確認された実質的に優れた効果が、前記マウス内で、T.cruziの膜の糖脂質と反応する抗ガングリオシド抗体の産生を誘導し、それにより寄生虫が死滅し得るということが検討されている。本出願の知見によれば、かかる説明にはそれほど信憑性がない。すなわち、シャガス病で確認された抗ガングリオシド抗体は、それらのNK細胞阻害効果のため、治癒促進因子ではなく、疾患誘発因子または疾患促進因子である。外因性の抗原性ガングリオシドを投与しても、事実抗AGM1抗体は形成されず、恐らく阻害され、その結果として、NK細胞の効果がマウスで(または患者で)回復し、寄生虫の免疫系が支配的となりうる。周知の文献には、抗アシアロGM1抗体と敗血症の原因および悪化との間の関係についてはまったく開示されておらず、したがって、本発明による方法を予想することも示唆するもできない。
本発明の基礎を成す本知見の解釈は、以下のように拡大することができる。すなわち、抗原刺激を受けた抗ガングリオシド抗体の産生に関する患者の感作は、一般的な感染、場合によっては、対応する環境上の物質によって引き起こされ、その後長期間潜伏したままである。しかし、例えば、細菌への曝露(例えば、Campylobacter jejuni感染またはHeliobacter pylori感染)により、抗アシアロGM1抗体の産生が開始されたか、またはヒト個体中で大幅に増加した場合、この患者は、高NK細胞活性がある特定の生理学的ストレス状態(例えば、変異原性事象による細胞退行性変化;敗血症の危険性のある状態)において、NK細胞、したがって免疫防御に障害が生じるという必須条件を満たしており、その結果、例えば「敗血症ストレス」により誘発され、NK細胞による介在を必要とする防衛反応も上述の抗体の産生を刺激し、次いで、これらがNK細胞の作用を無効にするという危険性が高まる。次いで、免疫反応の調節サイクルが決定的に阻害され、敗血症が発症し得る。
したがって、むしろ、上述の測定で測定された、敗血症血清中の有意に上昇したレベルで確認された抗AGM1抗体力価は、敗血症の原因の前提条件の1つであり、かかる抗体の存在は負の作用を有すると推測すべきである。
ガングリオシドと交差反応する抗体、およびその産生に必要な免疫系に関する作用は敗血症の発症前にすでに存在しているはずなので、抗AGM1抗体の測定は、素因の測定においても、すなわち、敗血症リスクマーカーの測定測定として、本発明に従って有利に実施することができる。本内容においては、例えば手術前に、安全な刺激剤を用いた敗血症リスク患者の抗体形成のin vivoにおける刺激の後に、かかる測定を実施するのが有利であり得る。実質的に上昇した濃度で確認されたIgA抗体を検討すると(図2および図4を参照)、抗体測定は好適なアッセイによって身体分泌物(例えば唾液、粘液)で実施することもできるに違いない。
また上記の記述は、例えば、特に患者の免疫系機能が高い要件を満たさなければならない状態にある患者への供血による抗AGM1抗体の外部供給を回避すること、ならびにガングリオシド構造に擬似しているため、抗ガングリオシド抗体またはガングリオシド構造と交差反応する抗体の形成を誘導し得る抗原物質に対するヒトの曝露を一般に可能な限り回避することの重要性をも示すものである。
本出願中に記載されている知見によりもたらされ、敗血症の病理学的症状の予防、抑制および治療、ならびに一般的なヘルスケアのための新規な方法に関する重要性は、本出願と同時に出願されている別の並行特許出願の主題を構成している。
敗血症患者89名の血清における測定結果と比較した、コントロール患者137名の血清中のモノシアロGM1に結合するIgGクラスの抗体の測定結果のグラフである。 図1と同一血清のモノシアロGM1に結合するIgAクラスの抗体の測定結果のグラフである。 敗血症患者20名の血清の測定結果と比較した、健常者(コントロール)30名の血清中のアシアロGM1に結合するIgGクラス抗体の測定結果を示すグラフである(血清はすべて、図1および図2で測定した血清の一部である)。 図3の血清と同一の血清で、アシアロGM1に結合するIgAクラス抗体の測定結果を示すグラフである。

Claims (8)

  1. 血症の形成による敗血症の危険性のある患者の危険性の評価のための方法であって、前記敗血症の危険性のある患者から回収した血液、血液画分または分泌物の試料中の、IgGおよび/またはIgAタイプの抗AG M1 および/または抗G M1 (自己)抗体、およびそれと交差反応する抗体の存在および/または量を測定し、前記抗体の存在および/または量が、敗血症の危険性のある患における敗血症の危性の増加の指標である、方法。
  2. ンドイッチタイプアッセイもしくは競合的タイプアッセイのリガンド結合アッセイ、または凝集アッセイにより実施する、請求項1に記載の方法。
  3. 敗血症の危険性のある患者での、in vivoでの事前の抗体産生の刺激の後に回収した試料で、前記抗体の測定を実施する、請求項1記載の方法。
  4. 敗血症の危険性のある患者から得た試料での、in vitroでの事前の抗体産生の刺激の後に、前記抗体の測定を実施する、請求項1に記載の方法。
  5. 多重パラメーター測定の一部として実施し、回収した試料において、少なくとも1つのさらなる炎症パラメーターまたは感染パラメーターが同時に測定され、1セットの少なくとも2つの測定されたパラメーターの形態の測定結果が得られ、前記結果が敗血症の存在の決定のために評価される、請求項1に記載の方法。
  6. 前記IgGおよび/またはIgAタイプの抗AG M1 および/または抗G M1 (自己)抗体に加えて、タンパク質プロカルシトニン、CA125、CA19-9、S100B、S100Aタンパク質、LASP-1、可溶性サイトケラチン断片、CYFRA 21、TPSおよび/または可溶性サイトケラチン-1断片(sCY1F)、ペプチドのインフラミンおよびCHP、ペプチドプロホルモン、グリシンN-アシル基転移酵素(GNAT)、カルバモイルリン酸シンテターゼ1(CPS1)およびC-反応性タンパク質(CRP)またはそれらの断片からなる群から選択される少なくとも1種のさらなるパラメーターを測定する、請求項5に記載の方法。
  7. ップ技術測定装置による、またはイムノクロマトグラフ測定装置による同時測定として実施する、請求項5に記載の方法。
  8. 多重パラメーター測定で得られた複合の測定結果の評価をコンピュータプログラムにより実施する、請求項5に記載の方法。
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