JP4368857B2 - 排水処理システム及びトイレ装置 - Google Patents

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Description

本発明は、排水処理システム及びトイレ装置に関する。
屎尿、及び、屎尿以外のBOD源を含有する排水(例えば、台所排水、洗濯機排水、風呂排水等の生活雑排水等)の処理方法として、浄化槽を用いたシステムが知られている。浄化槽において、屎尿を含むし尿排水やBOD源を含有する排水を含む大量の排水(例えば、200〜250L/(日・人))中に含まれる窒素成分の除去を目的とする場合、主として、微生物による窒素の硝化及び脱窒反応を利用した生物学的硝化脱窒法が広く用いられている。
稲盛悠平、生活排水対策ハンドブック、1998年12月、産業用水調査会、pp158−161 浄化槽の維持管理、第3版、財団法人日本環境整備教育センター、1999年7月、pp20−21
従来の浄化槽では、屎尿排水及び屎尿以外のBOD源を含有する排水を合わせて処理している。したがって、被処理水の水量が多くなる(例えば、200〜250L/(日・人)程度)と共に、被処理水が希釈されてしまう。
このような条件下では、窒素成分の硝化、脱窒による窒素の除去を達成しようとする場合、硝化を進行させるための処理工程において被処理水中のBOD源も分解、消失してしまい、窒素を高度に除去するうえで理想的な、被処理水中にBOD源が多量に存在し、尚且つ、窒素成分については硝化が十分に進行している環境を作り出すことは原理的に困難であった。このため、窒素濃度が相対的に高い排水を浄化槽において処理する場合、BODで示される汚濁成分の除去を達成しながら、同時に窒素成分の効率的な硝化及び脱窒を行うことが困難であった。
言い換えると、窒素成分とBOD源とが混合された状態で曝気を行うため、窒素成分の硝化と同時にBOD源も酸化されてしまう。このため、硝化された窒素成分が脱窒(還元)されるため必要なBOD源が不足するうらみがある。そして、脱窒を行うためにはこの問題を解決するために処理水の循環や曝気の時間調節など装置及び運転の両面に過大な負担が必要であった。
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、尿及びBOD源を含有する排水の効率的な脱窒処理が可能な排水処理システム及びこれに使用するトイレ装置を提供することを目的とする。
本発明者らは、屎尿及び生活雑排水において、窒素成分の大部分は(例えば約80%程度)は屎尿に由来し、さらに、屎及び尿の中でも窒素成分の約90%は尿に由来することに着目し、本発明に想到するに至った。
本発明にかかる排水処理システムは、尿含有排水を屎と分離した状態で排出する尿排出部と、尿排出部から供給される尿含有排水を屎と混合することなく好気条件下で微生物により硝化する尿硝化部と、尿硝化部で硝化された尿含有排水及びBOD源を含有する排水を嫌気条件下で微生物により脱窒する脱窒部と、を備え、尿排出部は、尿便器、又は、排せつされた尿を屎と混合することなく排出する屎尿分離便器である。
これによれば、家庭等から出る屎尿及びBOD源を含有する排水のうち特に窒素分が濃縮されている尿が、屎や、生活雑排水等のBOD源を含む排水と分離された状態で尿硝化部において事前に硝化される。特に、尿が屎と分離されているので臭いの発生等が抑えられ、また、尿が生活雑排水等のBOD源を含む排水と分離されているので水量も小さく、尿素やアンモニア等の窒素成分を簡易に微生物により亜硝酸態窒素や硝酸態窒素に変化できる。さらに、尿の硝化により生成した硝酸態及び亜硝酸態窒素が脱窒部に供給される。硝酸態及び亜硝酸態窒素とBOD源を含む排水とを原料とする脱窒及びこれに伴うBOD源除去は、アンモニア態窒素とBOD源とを原料とする脱窒及びBOD源除去に比べて、極めて迅速に行われる。したがって、浄化槽において脱窒及びBOD源の除去が極めて効率良く行われる。このため、排水処理システム全体におけるBOD源を含有する排水、例えば、台所排水、風呂排水、洗濯機排水等の生活雑排水等)及び尿について、窒素及びBOD源の処理をきわめて効率よく行うことができる。
ここで、脱窒部に供給される、BOD源を含有する排水は、尿を含まないことが好ましいが、尿を含んでも発明の実施は可能である。
また、尿排出部が、屎尿分離便器ある場合には、屎尿分離便器ら尿と分離した状態で排出される屎が脱窒部に供給されることが好ましい。この場合には、屎中に豊富に含まれるBOD源を用いて脱窒を効率よく行える。
一方、尿排出部が、屎尿分離便器ある場合には、さらに、攪拌部を備えることが好ましい。攪拌部は、屎尿分離便器ら尿と分離した状態で排出される屎を多孔質材と混合して攪拌する。
この場合、屎が浄化槽とは別の攪拌装置にて乾式にて処理されるので、浄化槽における処理負荷を小さくすることができて好ましい。攪拌装置内で処理された屎は堆肥等として利用可能である。
また、尿硝化部は、尿含有排水に対して曝気を行う曝気手段を有すると硝化を好適に行える。
また、尿硝化部の前段に、尿排出部から供給される尿含有排水を脱窒する事前脱窒部をさらに備えると好ましい。
事前脱窒槽等を有して、硝化により生成した硝酸及び亜硝酸性窒素を利用して尿を事前に脱窒すると、後段である脱窒部における脱窒負荷を下げることができる。
また、尿硝化部の前段に、尿排出部から供給される尿含有排水中のリンを除去するリン除去部をさらに備えることも好ましい。
リン除去部としては、例えば、リン成分の吸着処理が可能な多孔質濾材や、電解手段が挙げられる。
また、尿処理装置は、さらに、分離された尿を、カキ殻、珊瑚、石灰石等、炭酸カルシウムを含有するpH緩衝材と接触させることも好ましい。
これによれば、硝化の進行により尿のpHが低下することが抑制され、硝化用微生物の活性の低下が抑制できる。
また、脱窒部の後段に、前記脱窒部で脱窒された排水を硝化する別の硝化部をさらに有することが好ましい
一方、脱窒部は、下水管路であってもよい。この場合も、脱窒が好適に行われ、また、既設の下水管路を利用できるので好ましい。
また、BOD源を含有する排水が供給される脱窒部には風呂からの排水が供給されても良いが、風呂からの排水を脱窒部に供給せずに土壌と接触させるろ過部をさらに備えてもよい。
これによれば、BOD源を含有する排水の中でも、窒素成分やBOD源が特に少なくかつ体積が多い風呂排水を浄化槽に流さずに処理できるため、浄化槽の処理負荷を低減できる。
本発明にかかるトイレ装置は、尿含有排水を屎と分離した状態で排出する尿排出部と、尿排出部から供給される尿含有排水を屎と混合することなく硝化する尿硝化部と、を備え、尿排出部は、尿便器、又は、排せつされた尿を屎と混合することなく排出する屎尿分離便器である。
これによれば、上述の排水処理システムに適したトイレ装置が提供できる。このような、トイレ装置は、従来の浄化槽に接続するのも容易である。
また、尿硝化部は、尿含有排水に対して曝気を行う曝気手段を有することが好ましい。
さらに、尿硝化部は尿排出部から排出された尿含有排水を貯留する尿タンクを有し、さらに、屎尿分離便器から屎を排出する屎排出管と、尿タンクから溢流した液体を屎排出管に合流させる尿合流管と、を備えることが好ましい。
このようなトイレ装置では、トイレ装置からの出口が1つで済むので、従来のトイレ装置との交換による上記排水処理システムの実現が特に容易である。
本発明によれば、屎尿及び生活雑排水の効率的な処理が可能な排水処理システム及びこれに使用するトイレ装置が提供される。
図1は、第1の実施形態にかかる排水処理システム200を示すフロー図である。この排水処理システム200は、浄化槽(脱窒部)150、トイレ装置100、及び、土壌ろ過装置190を主として備えている。
トイレ装置100は、主として、屎尿分離便器10、及び、尿処理装置50を備えている。屎尿分離便器10は、排せつされた尿を屎と混合することなく尿含有排水として、屎と分離された状態で排出する。屎尿分離便器10から排出された尿含有排水はラインL1を介して尿処理装置50に供給される。尿処理装置50は、後述するように尿硝化部51を有すると共に、必要に応じて脱リン部52及び事前脱窒部53を有しており、尿含有排水に対して硝化作用、脱リン作用、脱窒作用等が行われる。
ここで、尿含有排水とは、尿を含むが実質的に屎(固形分)を含まない排水であり、例えば、尿のみでも良く、尿と水洗用洗浄水等との混合物等が例示できる。
尿硝化部51による硝化作用は、たとえば、尿含有排水に対して、散気(曝気)、攪拌等の操作により空気、酸素富化空気等の酸素含有ガスを効率よく接触させ、好気性細菌の作用により行わせれば良い。硝化により尿含有排水中の尿素等の窒素成分がアンモニア態窒素を経由して亜硝酸態窒素や硝酸態窒素に変化する。
脱リン部52による脱リン作用は、たとえば、尿含有排水に対して、多孔質濾材を接触させて吸着させる吸着法や、鉄やアルミニウムを電極とした電解手段により除去する電解法により実施できる。なお、尿処理装置50における脱リン作用は必須ではない。
事前脱窒部53による尿含有排水の脱窒作用は、例えば、嫌気性環境下において嫌気性細菌により行わせればよい。
尿処理装置50により、硝化や脱リン等された尿含有排水はラインL3を介して浄化槽150に供給される。また、屎尿分離便器10で尿と分離して排出された屎含有排水もラインL2を介して浄化槽150に送られる。さらに、台所DからのBOD源を含有する排水もラインL10を介して浄化槽150に供給される。
浄化槽150では、嫌気性微生物による脱窒や、好気性微生物による未硝化アンモニア性窒素成分の硝化等が行われる。
脱窒においては、主として、嫌気性条件下で、脱窒部51において尿が硝化されることにより生成した亜硝酸態及び硝酸態窒素が、屎や台所排水等の中のBOD源(有機物)を利用して嫌気性微生物により窒素に還元される。
硝化においては、未硝化のアンモニア性窒素が、好気性微生物により硝酸態及び亜硝酸態窒素に酸化される。具体的には、曝気等により空気等の酸素含有ガスを排水に対して接触させればよい。
風呂Bからの排水は、土壌ろ過装置190を通過する。土壌ろ過装置190は、団粒ろ材等の土壌を充填層として有するろ過装置である。窒素分やBOD源が少ない風呂Bからの排水は、このような処理でも容易に浄化される。
なお、図示は省略するが、洗濯機からの排水や、洗面所からの排水を脱窒槽130に供給してもよいが、これらも汚濁成分が少ないので土壌ろ過装置190に供給することが好ましい。また、台所Dからの排水以外でも、BOD源となる有機物を含む排水、例えば、事業所から出る厨房排水等の事業系排水等、BOD源となる有機物を含む排水であれば浄化槽150に供給することができる。
続いて、トイレ装置100の具体例について、図2を参照して説明する。
図2のトイレ装置100は、屎尿分離便器10と尿処理装置50とが一体化したものであり、屎尿分離便器10、、水タンク24、尿排出管としてのラインL1、屎排出管としてのラインL2、尿合流管としてのラインL3、尿処理装置50を主として備えている。尿処理装置50は、尿タンク30、散気管42、ブロア44、濾材55、覆い部48、通気口48b等を備えている。
屎尿分離便器10は、窪み部10aと窪み部10bとを有しており、窪み部10aで尿を受け止める一方、窪み部10bで屎を受け止める。これにより、排出された屎と尿とを互いに混合させること無く、それぞれ分離された状態で排出可能である。窪み部10aの底部にはラインL1が接続されており、受け止めた尿を尿含有排水として尿タンク30内に導く。なお、好ましくは、尿含有排水は、尿と、水タンク24からの少量の水(例えば、約0.1L/回)との混合物であるが、水洗用の水を含有せず尿のみを尿含有排水としてもよい。
尿タンク30内には散気管42が設けられている。散気管42にはライン46を介してブロア44から空気が供給される。なお、ブロア44から、酸素発生器により発生させた酸素富化空気等の空気以外の酸素含有ガスを供給しても良い。散気管42、ライン46及びブロア44が曝気手段47を構成している。また、尿タンク30及び曝気手段47が尿硝化部51を構成している。これにより、尿タンク30内において酸素含有ガスの気泡が発生し、尿含有排水が好気性雰囲気に維持され、尿タンク30内の好気性微生物により尿由来の窒素成分がアンモニア性窒素を経て亜硝酸性及び硝酸性窒素に酸化されることとなる。
また、尿タンク30内には、濾材55が配置されている。濾材55としては、多孔質濾材、非多孔質濾材等が挙げられる。
多孔質濾材は、団粒濾材とも言われるものであり、例えば、焼赤玉土、鹿沼土、ゼオライト、軽石、黒ボク土、シラス土壌焼結体、琉球石灰、バガス炭、セラミクス製の多孔質粒状濾材等が挙げられる。このような多孔質濾材55により、硝化用微生物を固定させて硝化を促進させられると共に、尿中のリンを多孔質濾材55に吸着等させて回収することができる。ここでは、多孔質濾材が脱リン部52を構成する。
また、非多孔質濾材としては、プラスチック製の充填材が挙げられるが、炭酸カルシウムを含有したpH緩衝材、例えば、貝殻(カキ殻等)等を用いることが好ましい。尿の硝化により尿が酸性となると、尿タンク30内において硝化用の微生物の生育が阻害される場合があるが、このpH緩衝材によりpHの変動を抑制することによって硝化作用を一層促進できるからである。もちろん、多孔質濾材と、非多孔質濾材とを混合しても良い。
なお、このような濾材55は、樹脂メッシュ製等の濾材容器56に収容されている。また、尿タンク30の上方は、覆い部48により覆われている。覆い部48の上端には、開閉可能な蓋部48aと、通気口48bとが設置されている。濾材55の濾材容器56にはフック57が設けられており、このフック57が蓋部48aの開口の縁に引っかかるようになっている。これにより、所定の期間毎に、濾材55を交換するのが容易である。なお、濾材55を濾材容器56無しに直接尿タンク30内に充填しても良いのは言うまでもない。なお、使用済みの多孔質濾材55は、リンを豊富に含むので、例えば、肥料等の土壌改良剤として再利用可能である。
尿タンク30の側面の一部は、硝化や脱リンがなされた尿が溢流可能な堰30aとされており、溢流した処理済の尿含有排水は、ラインL3(尿合流管)を介してラインL2と合流するようになっている。
屎尿分離便器10からは、さらに、尿と分離された状態で屎含有排水が排出する。屎含有排水は、U字に曲げられたラインL2を介して浄化槽150の脱窒槽130に供給される。なお、本実施形態では、排泄された屎は水タンク24からの少量の水(例えば、約4L/回)に押し流されて、ラインL2を介して浄化槽150に流入する。
このような屎尿分離便器10を使用すると、トイレにおける水使用量が減るので好ましく、例えば、従来型50L/(日・人)の1/8程度とすることができる。この節約量は家庭での平均全排水200L/(日・人)の20%程度となる。
続いて、浄化槽(脱窒部)150の例について図3を参照して簡単に説明する。この浄化槽150は、第1脱窒層130、第2脱窒槽131、硝化槽140を主として備えている。便器10で分離された屎含有排水はラインL2を介して第1脱窒槽130に流入し、尿処理装置50で硝化処理された尿含有排水はラインL3を介して第1脱窒槽130に流入し、台所DからのBOD源を含む排水はラインL10を介して第1脱窒槽130に流入する。
第1脱窒層130及び第2脱窒槽131には、多孔質や非多孔質の濾材135が充填されている。また、硝化槽140には、多孔質や非多孔質の濾材145が充填されている。さらに、硝化槽140には、ブロア160に接続され空気等の酸素含有ガスを散気する散気管165が設けられている。また、硝化槽140内の排水の一部を第1脱窒槽130に戻すラインL8及びポンプ170が設けられている。
第1脱窒層130及び第2脱窒槽131は嫌気性条件に維持され、濾材中の嫌気性微生物により、主として、尿処理装置50や硝化槽140において生成した硝酸態及び亜硝酸態窒素の還元すなわち脱窒、及び、これに伴う、台所排水等のBOD源を含有する排水や、屎等に由来するBOD源の分解除去が行われる。
硝化槽140においては、好気性濾床中の微生物により、未硝化のアンモニア性窒素の硝化が行われる。
なお、前段に硝化槽140を配置し、後段に脱窒槽130,131を配置しても実施は可能である。また、本実施形態では、嫌気処理による脱窒と、好気処理による硝化とを互いに異なる槽で行っているが、例えば、図3の槽130及び131を有さずに、1つの槽140のみを有する浄化槽を用いて硝化及び脱窒を行っても良い。この場合には、散気管165による曝気を間欠的に行うことにより、嫌気性条件における脱窒と、好気性条件による硝化とを回分式に行うことができる。
続いて、トイレ装置100の他の例として、尿処理装置50が屎尿分離便器10とは離れて設置された装置について図4を参照して説明する。この尿処理装置50は、事前脱窒槽31(事前脱窒部53)、第1硝化槽32、第2硝化槽33を主として有するものである。事前脱窒槽31には団粒ろ材等の多孔質濾材(脱リン部)57が充填されており、ラインL1を介して、屎尿分離便器10から排出された尿含有排水が供給される。ラインL1は、尿含有排水を事前脱窒槽31の下部に供給し、処理済尿を第1硝化槽32に溢流させることが好ましい。
第1硝化槽32は脱窒槽31に接続され、脱窒槽(脱窒部)31から処理済の尿含有排水を受け入れる。第2硝化槽33は第1硝化槽32に接続されており、第1硝化槽32から供給された尿含有排水を受け入れる。第1硝化槽32及び第2硝化槽33が尿硝化部及び部及びに対応する。
第1硝化槽32及び第2硝化槽33には、ブロア44に接続された散気管42が設けられている。また、第1硝化槽32及び第2硝化槽33には、濾材55、例えば、多孔質濾材や、炭酸カルシウムを含むpH緩衝材が充填されている。さらに、第2硝化槽33の処理済尿含有排水の一部はラインL3を介して浄化槽150の事前脱窒槽130に供給される一方、残りはラインL7及びポンプ38を介して事前脱窒槽31にリサイクルされる。
事前脱窒槽31では、嫌気性濾床により、尿中のBOD源と、第2硝化槽33からリサイクルされた亜硝酸性及び硝酸性窒素とによる脱窒及び有機物の分解が行われる。また、事前脱窒槽31では、多孔質濾材51により、リンの吸着が行われる。
第1硝化槽32及び第2硝化槽33では、好気性濾床により、アンモニア性窒素の硝化が行われる。なお、ラインL7によるリサイクルは、第2硝化槽33の出口におけるアンモニア性窒素の濃度が5mg/L程度まで低下するように、例えば、尿含有排水の循環回数が2〜4回程度となるように設定することが好ましい。
このように、浄化槽150に流入する前に、尿含有排水を、硝化を行なう硝化槽32,33だけでなく、事前脱窒槽31を設けた尿処理装置50により処理することにより、浄化槽150における脱窒負荷をより低下させられるという利点がある。
以上説明したように、本実施形態に係る排水処理システム200によれば、種々の排水のうち特に窒素分が濃縮されている尿が、屎尿分離便器10により屎と分離された状態で排出され、さらに台所排水等の大量のBOD源含有排水による希釈がされない状態で尿処理装置50内において事前に硝化される。ここで、特に、尿が屎と分離されているので尿処理装置50における臭いの発生等が抑えられ、また、尿が生活雑排水等と分離されていて水量が小さいままであるので、容量の小さい装置により尿素やアンモニア等の窒素成分を容易に亜硝酸態窒素や硝酸態窒素に変化させられる。具体的には、尿処理装置50での尿自体の処理量は、例えば1〜2L/(日・人)程度であるので、水洗用の水を含めてもこの尿処理装置50の容量を極めて小さいものとすることができる。また、尿にはSS(固形分)が少なく、沈殿物の問題や固体窒素分の処理についてのトラブルが殆ど起らないので、この点からも尿処理装置50は極めて簡易なものとすることができる。
さらに、尿の硝化により生成した硝酸態窒素や亜硝酸態窒素が浄化槽150の脱窒槽130に供給されて他のBOD含有排水と混合する。硝酸態及び亜硝酸態窒素とBOD源とを原料とする脱窒及びBOD除去は、アンモニア態窒素とBOD源とを原料とする脱窒及びBOD除去に比べて、極めて迅速に行われるので、浄化槽150の脱窒槽130等においてBOD源の除去及び脱窒が極めて効率良く行われる。このため、排水処理システム200全体における窒素やBODの処理をきわめて効率よく行うことができる。
したがって、浄化槽150の容量も極めて小さいものとすることができる。例えば、既設の単独浄化槽を本実施形態の浄化槽150として転用することが可能である。この場合、トイレ装置100を取り替え、生活雑排水等のBOD源を含む排水を浄化槽150の脱窒槽130に供給するのみでよいので、改造費も抑えられ、さらに、処理後の排水の質を合併浄化槽と同等以上の極めて高いものとすることができる。また、ブロアやポンプ用の電力コストの低減も可能である。
また、尿処理装置50中の多孔質の濾材52によりリンの除去も可能となる。加えて、水量は多いが比較的窒素分やBOD源の少ない風呂Bの排水を、浄化槽150に投入しないで土壌ろ過装置190で処理するので、より一層、浄化槽150での排水処理の効率化が可能となっている。たとえば、風呂の排水は例えば40L/(人・日)程度であるので、削減効果が大きい。なお、土壌ろ過装置190では、濾材として、土壌等の団粒ろ剤を用いると、排水が流通し易いため、目詰まりをより起こしにくくなって、メンテナンスコストを削減できる。なお、風呂Bの排水を浄化槽150に供給しても本発明の実施は可能である。
続いて、第2実施形態に係る排水処理システム202について、図5を参照して説明する。本実施形態に係る排水処理システム201が図1に係る排水処理システム200と異なる主な点は、トイレ装置101,102であるのでこれについて説明する。
トイレ装置101は、第1実施形態のトイレ装置100の屎尿分離便器10に変えて、屎尿混合便器13及び固液分離器11を備えている。
具体的には、屎尿混合便器13は、例えば、図6の(a)及び(b)に示すように、排泄された屎および尿を混合した状態で排出する便器である。
また、固液分離器11としては、例えば、図6の(a)に示すような沈殿分離型の固液分離器11aを採用できる。この固液分離器11は、沈殿槽121及び沈殿槽122を有している。屎尿混合便器13からの屎尿混合排水は、ラインL8を介して沈殿槽121の中ほどに供給される。屎の大部分は沈殿槽121中で沈殿し、屎の一部はスカムとして浮上する。尿含有排水は、沈殿槽121の中央部に分離される。沈殿槽121の中程と沈殿槽122の中程とは連通管124により連通されており、尿含有排水は沈殿槽122に移送される。沈殿槽122において追加的な沈殿分離がなされた後に、排出管124により沈殿槽122の中程から液体として尿含有排水が排出され、ラインL1を介して尿処理装置50に供給される。
一方、沈殿槽121及び沈殿槽122で沈殿した屎はラインL2を介して浄化槽150に供給される。
さらに、固液分離器11としては、例えば、図6の(b)に示すような垂直円筒型の固液分離器11bでも良い。具体的には、下部の径が上部の径に比べて拡幅された垂直管110を有し、垂直管110の拡幅部に垂直管112が下方から指し込まれており、屎尿中の液体は主として、垂直管110の内面を伝って流下して垂直官112の外側に捕集する一方、固形分は垂直管112内に捕集される。そして、液体として捕集した尿含有排水はラインL1を介して尿処理装置50に供給され、固形分として捕集した屎はラインL2を介して浄化槽に供給される。
なお、固液分離器11は、これらに限られず、メッシュ等を利用したもの等でも構わない。
このような固液分離器でも、液体分として尿含有排水が得られ、固形分として屎含有物が得られる。
一方、図5に戻って、トイレ装置102においては、屎尿分離便器10に代えて、尿便器12が設けられている。尿便器12は、尿のみを排泄させて尿のみを回収する便器であり、尿含有排水をラインL1を解して尿処理装置50に供給する。
本実施形態においても、尿便器12及び固液分離器11から排出された尿含有排水が、尿処理装置50に供給されるので、第1実施形態と同様の作用効果を奏する。
続いて、第3実施形態に係る排水処理システム202について、図7を参照して説明する。本実施形態に係る排水処理システム202が図1及び図5に係る排水処理システム200、201と異なる主な点は、浄化槽150に代えて下水管路(脱窒部)160を用いている点である。下水管路160は、屎尿や生活雑排水等のBOD源含有排水の発生源の近くと、下水処理場180とを接続するものである。下水管路160は、通常地下に埋設されており、内部は嫌気的雰囲気に保たれる。
下水管路160は、流達時間が数時間〜数日程度となるものであることが好ましい。
すなわち、本実施形態では、主に都市のように、屎尿やBOD源を含有する排水の発生源において浄化槽を設けずに、発生源からの排水を下水管路160を通して下水処理場180に運んで集中的に脱窒や脱リン等の処理を行うシステムである。
本実施形態においては、下水管路160に流入する前に尿処理装置50において尿含有排水が硝化等の処理を受け、その後、下水管路160において台所排水等のBOD源含有排水と合流する。そして、この下水管路160内は、嫌気性条件であり、前述の浄化槽150と同様にして脱窒及びBOD源の分解が行われる。したがって、下水処理場180における処理負荷を低減できて好ましい。なお、本実施形態では、風呂Bからの排水も下水管路160に流入して処理することが好ましい。
続いて、第4実施形態に係る排水処理システム203について、図1,4,7、8を参照して説明する。本実施形態に係る排水処理システム203が第1〜第3実施形態に係る排水処理システム200と異なる主な点は、図1、4、7に示すように、屎尿分離便器10、固液分離器11において分離された屎が浄化槽150に入らずに、攪拌槽90に供給される点である。
本実施形態の具体例について、図8を参照して説明する。屎尿分離便器10、台所D,風呂B、尿処理装置50、浄化槽150については、前述と同様であるので説明は省略する。攪拌槽90は、円筒形状の筒部91を有しており、筒部91内には攪拌翼92が設置されている。攪拌翼92は、モータ94によって回転可能とされている。さらに、筒部91には、台所Dの流し台D1のし渣受けD2等において回収される生ごみ等のし渣を投入可能な投入口96が形成されている。筒部91内には予め、おが屑等の多孔質材が予め投入されている。攪拌槽90内で、多孔質材と屎やし渣とを攪拌混合すると、屎やし渣の水分が適切に多孔質材に吸収されると共に、この多孔質材が担体となって好気性の菌が効率よく増殖する。従って、屎やし渣を発酵・分解させて臭いの少ないかつ減容、減重量された状態の有機物とすることができる。この有機物は、蓋93より排出して有機肥料として使用可能である。なお、屎がこのような水分の少ない状態に所定期間おかれることにより有機物は減菌された状態となる。また、屎から発生するアンモニア等の臭気ガスもおがくずによって吸着される。
本実施形態では、屎が浄化槽や下水管路に供給されないので、浄化槽や下水管路における脱窒負荷やBOD除去負荷がより一層小さくなるので、浄化槽150の大きさのより一層の低減や、下水処理場180における処理負荷を低減でき、処理排水のより一層の清浄化が可能となる。
なお、本発明は上記実施形態に限られず様々な変形態様が可能である。例えば、図4の尿処理装置50を図5、図7の尿処理装置に用いることも可能である。
また、脱窒部も、浄化槽150や下水管路160に限定されず、嫌気状態で脱窒が可能であればよい。
図1は、第1実施形態に係る排水処理システムのフローを示す図である。 図2は、図1のトイレ装置100の具体例を示す概略断面図である。 図3は、図1の浄化槽の具体例を示す概略断面図である。 図4は、図1のトイレ装置100の他の例を示す概略断面図である。 図5は、第2実施形態に係る排水処理システムのフローを示す図である。 図6の(a)及び(b)は、図5の屎尿混合便器13及び固液分離器11の具体例をそれぞれ示す概略断面図である。 図7は、第3実施形態に係る排水処理システムのフローを示す図である。 図8は、第4実施形態に係る排水処理システムの具体例を示す図である。
符号の説明
10…屎尿分離便器(尿排出部)、11…屎尿混合便器、12…尿便器(尿排出部)、11…固液分離器(尿排出部)、32…第1硝化槽(尿タンク)、33…第2硝化槽(尿タンク)、47…曝気手段、50…尿処理装置、51…尿硝化部、52…リン除去部、53…事前脱窒部、55…濾材(多孔質濾材)、90…攪拌装置(攪拌部)、トイレ装置…100、130…脱窒槽、140…硝化槽、150…浄化槽(脱窒部)、160…下水管路(脱窒部)、190…ろ過装置(ろ過部)、L2…ライン(屎排出管)、L3…ライン(尿合流管)、200,202、203…排水処理システム。

Claims (11)

  1. 尿含有排水を、屎と分離した状態で排出する尿排出部と、
    前記尿排出部から供給される尿含有排水を屎と混合することなく好気条件下で微生物により硝化する尿硝化部と、
    前記尿硝化部で硝化された尿含有排水及びBOD源を含有する排水を嫌気条件下で微生物により脱窒する脱窒部と、
    を備え
    前記尿排出部は、尿便器、又は、排せつされた尿を屎と混合することなく排出する屎尿分離便器である排水処理システム。
  2. 前記尿排出部は、前記屎尿分離便器あり、
    前記屎尿分離便器ら尿と分離した状態で排出される屎が前記脱窒部に供給される請求項1に記載の排水処理システム。
  3. 前記尿排出部は、前記屎尿分離便器あり、
    さらに、前記屎尿分離便器ら尿と分離した状態で排出される屎を多孔質材と混合して攪拌する攪拌部を備える請求項1に記載の排水処理システム。
  4. 前記尿硝化部は、前記尿含有排水に対して曝気を行う曝気手段を有する請求項1〜3のいずれか記載の排水処理システム。
  5. 前記尿硝化部の前段に、前記尿排出部から供給される尿含有排水を脱窒する事前脱窒部をさらに備える請求項1〜の何れかに記載の排水処理システム。
  6. 前記尿硝化部の前段に、前記尿排出部から供給される尿含有排水中のリンを除去するリン除去部をさらに備える請求項1〜のいずれかに記載の排水処理システム。
  7. 前記リン除去部は、多孔質濾材又は電解手段を有する請求項6に記載の排水処理システム。
  8. 前記尿硝化部において、前記尿含有排水が炭酸カルシウムを含むpH緩衝材と接触する請求項1〜7のいずれかに記載の排水処理システム。
  9. 前記脱窒部の後段に、前記脱窒部で脱窒された排水を硝化する別の硝化部をさらに有する請求項1〜8のいずれか記載の排水処理システム。
  10. 前記脱窒部は、下水管路である請求項1〜の何れかに記載の排水処理システム。
  11. 尿含有排水を、屎と分離した状態で排出する尿排出部と、
    前記尿排出部から供給される尿含有排水を屎と混合することなく微生物により硝化する尿硝化部と、
    を備え
    前記尿排出部は、尿便器、又は、排せつされた尿を屎と混合することなく排出する屎尿分離便器であるトイレ装置。
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