JP4362859B2 - Inkjet recording head and printer - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、インクジェット式のプリンタ等に用いられるインクジェット式記録ヘッド及びその製造方法に係る。また、上記のインクジェット式記録ヘッドを備えたプリンタに関する。
【0002】
【従来の技術】
インクジェット式記録ヘッドは、振動板上に少なくとも圧電体膜及び上部電極を順次積層して形成された圧電体素子と、前記圧電体素子を覆う保護膜とを備えて構成される。圧電体素子が薄膜化されインクジェット式記録ヘッドが小型化、高集積化されるに伴い、圧電体素子を保護する保護膜の膜厚が無視できないものになりつつある。特に振動板が圧電体素子の駆動により振動する際、圧電体素子の保護膜も振動板とともに振動するため、振動板、圧電体素子、保護膜を含めた振動部全体の変位量が、保護膜の膜厚による影響を大きく受けるようになってきている。また、振動部の中立面が圧電体膜より上部電極側にシフトするため、変位量や特性が十分に確保できないという問題もある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、保護膜の膜厚を薄くすることは、耐湿性など保護膜の機能そのものを減じることになるので困難である。
【0004】
そこで、本発明は、保護膜の膜厚を減じることなく、振動部の変位量や特性を確保でき、高集積化が可能で性能の高いインクジェット式記録ヘッドを提供することを目的とする。
【0005】
また、上記のインクジェット式記録ヘッドを備え、印字速度が速く高解像度なプリンタを提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明のインクジェット式記録ヘッドは、振動板上に少なくとも圧電体膜及び上部電極を順次積層して形成された圧電体素子と、前記圧電体素子を覆い前記振動板に密着する保護膜とを備え、前記振動板上には、前記保護膜に対する密着性が前記上部電極より高い面を有することを特徴とする。
【0007】
上部電極と保護膜との密着性が低いので、保護膜が振動部の振動を阻害することなく、振動部の変位量や特性を確保することができる。これにより、インクジェット式記録ヘッドの高性能化、高集積化も可能となる。
【0008】
上記インクジェット式記録ヘッドにおいて、前記圧電体素子の駆動時に、前記保護膜が前記上部電極に対して剥離されることが望ましい。これにより、上部電極と保護膜とが剥離しているので、振動部の振動が保護膜の影響を大きく受けずに十分な変位量を得ることができる。
【0009】
上記インクジェット式記録ヘッドにおいて、前記振動板上に、前記保護膜に対する密着性が前記上部電極より高い密着層を積層し、当該密着層上に前記保護膜を積層することが望ましい。これにより振動板と保護膜との剥離を防止することができる。
【0010】
上記インクジェット式記録ヘッドにおいて、前記振動板の圧電体素子形成面と反対側の面に、側壁で囲まれた圧力室が形成され、前記振動板の圧電体素子形成面であって前記側壁と対向する位置に、前記保護膜に対する密着性が前記上部電極より高い密着層を積層し、当該密着層上に前記保護膜を積層することが望ましい。隔壁に対向する位置は振幅が少ないので、保護膜を密着させても振動部の振動を阻害しにくいからである。
【0011】
上記インクジェット式記録ヘッドにおいて、前記保護膜はパリレンよりなることが望ましい。パリレンは上部電極に通常用いられる白金やイリジウムとの密着性が低いので、振動板に対する接触面より密着性を低くすることができる。
【0012】
上記インクジェット式記録ヘッドにおいて、前記振動板上に、クロム層を積層し、当該クロム層上に前記保護膜を積層することが望ましい。クロムはパリレンとの密着性が高いので、保護膜と振動板との密着性を高めることができる。
【0013】
上記インクジェット式記録ヘッドにおいて、前記保護膜と前記上部電極との間にガス層を有することが望ましい。これにより、振動部の変位量を更に大きくすることができる。
【0014】
本発明のプリンタは、上記インクジェット式記録ヘッドを備えたことを特徴とする。上記の高性能化、高集積化が可能なインクジェット式記録ヘッドを用いるので、印字スピードが高く解像度の高いプリンタを提供することができる。
【0015】
本発明のインクジェット式記録ヘッドの製造方法は、振動板上に少なくとも圧電体膜及び上部電極を順次積層して圧電体素子を形成する工程と、前記圧電体素子を覆う保護膜を形成する工程であって、前記保護膜の前記上部電極に対する接触面より密着性の高い接触面が、前記保護膜と前記振動板との間に形成されるように保護膜を形成する工程と、前記圧電体素子に電圧を印加して前記保護膜を前記上部電極に対して剥離させる工程と、を備えたことを特徴とする。これにより、保護膜と上部電極とを剥離させ、振動部の変位量が大きく高性能で、高集積化可能なインクジェット式記録ヘッドを容易に製造することができる。またこの方法により製造されたインクジェット式記録ヘッドを用いてプリンタを製造することにより、印字スピードが高く解像度の高いプリンタを容易に製造することができる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。
【0017】
(インクジェットプリンタの全体構成)
図1は、本実施形態のインクジェット式記録ヘッドが使用されるプリンタの構造を説明する斜視図である。このプリンタには、本体2に、トレイ3、排出口4および操作ボタン9が設けられている。さらに本体2の内部には、インクジェット式記録ヘッド1、供給機構6、制御回路8が備えられている。
【0018】
インクジェット式記録ヘッド1は基板上に形成された複数の圧電体素子を備え、制御回路8から供給される吐出信号に対応して、ノズルからインクを吐出可能に構成されている。
【0019】
本体2は、プリンタの筐体であって、用紙5をトレイ3から供給可能な位置に供給機構6を配置し、用紙5に印字可能なようにインクジェット式記録ヘッド1を配置している。トレイ3は、印字前の用紙5を供給機構6に供給可能に構成され、排出口4は、印刷が終了した用紙5を排出する出口である。
【0020】
供給機構6は、モータ600、ローラ601・602、その他の図示しない機械構造を備えている。モータ600は、制御回路8から供給される駆動信号に対応して回転可能になっている。機械構造は、モータ600の回転力をローラ601・602に伝達可能に構成されている。ローラ601および602は、モータ600の回転力が伝達されると回転するようになっており、回転によりトレイ3に載置された用紙5を引き込み、ヘッド1によって印刷可能に供給するようになっている。
【0021】
制御回路8は、図示しないCPU、ROM、RAM、インターフェース回路などを備え、図示しないコネクタを介してコンピュータから供給される印字情報に対応させて、駆動信号を供給機構6に供給したり、吐出信号をインクジェット式記録ヘッド1に供給したりできるようになっている。また、制御回路8は操作パネル9からの操作信号に対応させて動作モードの設定、リセット処理などが行えるようになっている。
【0022】
本実施形態のプリンタは、後述の高性能で高集積化が可能なインクジェット式記録ヘッドを備えているので、印字スピードが高く解像度の高いプリンタとなっている。
【0023】
(インクジェット式記録ヘッドの構成)
図2は、本実施形態によるインクジェット式記録ヘッドの構造の説明図である。インクジェット式記録ヘッド1は、図に示すように、ノズル板10、圧力室基板20および振動板30を備えて構成されている。このヘッドは、オンデマンド形のピエゾジェット式ヘッドを構成している。
【0024】
圧力室基板20は、キャビティ(圧力室)21、側壁(隔壁)22、リザーバ23および供給口24を備えている。キャビティ21は、シリコン等の基板をエッチングすることにより形成されたインクなどを吐出するために貯蔵する空間となっている。側壁22はキャビティ21間を仕切るよう形成されている。リザーバ23は、インクを共通して各キャビティ21に充たすための流路となっている。供給口24は、リザーバ23から各キャビティ21にインクを導入可能に形成されている。なおキャビティ21などの形状はインクジェット方式によって種々に変形可能である。例えば平面的な形状のカイザー(Kyser)形であっても円筒形のゾルタン(Zoltan)形でもよい。またキャビティが1室形用に構成されていても2室形に構成されていてもよい。
【0025】
ノズル板10は、圧力室基板20に設けられたキャビティ21の各々に対応する位置にそのノズル穴11が配置されるよう、圧力室基板20の一方の面に貼り合わせられている。ノズル板10を貼り合わせた圧力室基板20は、さらに筐体25に納められて、インクジェット式記録ヘッド1を構成している。
【0026】
振動板30は圧力室基板20の他方の面に貼り合わせられている。振動板30には圧電体素子(図示しない)が設けられている。振動板30には、インクタンク口(図示せず)が設けられて、図示しないインクタンクに貯蔵されているインクを圧力室基板20内部に供給可能になっている。
【0027】
(層構造)
図3に、本実施形態のインクジェット式記録ヘッドのさらに具体的な構造を説明する断面図を示す。この断面図は、一つの圧電体素子に対応する部分の断面を拡大したものである。図に示すように、振動板30は、絶縁膜31および下部電極32を積層して構成され、圧電体素子は下部電極32上に圧電体膜41及び上部電極42を積層して構成されている。振動板30及び圧電体素子の上面には、圧電体素子を覆う保護膜51が積層されている。特にこのインクジェット式記録ヘッド1は、圧電体素子、キャビティ21およびノズル穴11が一定のピッチで連設されて構成されている。このノズル間のピッチは、印刷精度に応じて適時設計変更が可能である。例えば400dpi(dot per inch)になるように配置される。
【0028】
絶縁膜31は、導電性でない材料、例えばシリコン基板を熱酸化等して形成された二酸化珪素(SiO2)により構成され、圧電体膜層の変形により変形し、キャビティ21の内部の圧力を瞬間的に高めることが可能に構成されている。絶縁膜31上には下部電極32を形成するが、絶縁膜31と下部電極32との間に酸化ジルコニウムの膜を形成しても良い。
【0029】
下部電極32は、圧電体膜層に電圧を印加するための一方の電極であり、導電性を有する材料、例えば、白金(Pt)などにより構成されている。なお、下部電極32はこれに限らず、白金と同じFCC構造を有する金属であるイリジウム(Ir)で構成しても良い。図に示す下部電極32は、圧力室基板20上に形成される複数の圧電体素子に共通な電極として機能するように絶縁膜31と同じ領域に形成されている。ただし、圧電体膜41と同様の大きさに、すなわち上部電極42と同じ形状に形成することも可能である。この場合には、絶縁膜31が振動板30を構成する。
【0030】
圧電体膜41は例えばペロブスカイト構造を持つ圧電性セラミックスの結晶であり、振動板30上に所定の形状で形成されて構成されている。その組成は、例えばチタン酸ジルコン酸鉛(Pb(Zr0 . 56、Ti0 . 44)O3:PZT)の他、チタン酸鉛ランタン((Pb,La)TiO3)、ジルコニウム酸鉛ランタン((Pb,La)ZrO3)またはマグネシウムニオブ酸ジルコニウム酸チタン酸鉛(Pb(Mg、Nb)(Zr、Ti)O3:PMN−PZT)、ジルコニウム酸チタン酸バリウム(Ba(Zr、Ti)O3:BZT)、チタン酸バリウム(BT)などでもよい。
【0031】
上部電極42は、圧電体膜層に電圧を印加するための他方の電極となり、導電性を有する材料、例えば白金(Pt)又はイリジウム(Ir)で構成されている。
【0032】
保護膜51は、例えばパリレン等の、上部電極に対する密着性が低い材料で構成され、圧電体素子を振動板30とともに被覆している。圧電体素子の駆動時には保護膜51が上部電極42に対して剥離される程度に、密着性が低いことが望ましい。
【0033】
振動板30上には、保護膜51に対する密着性が上部電極41より高い部分が存在する必要がある。特に振動板と保護膜との密着性を向上させる密着層50が形成されていることが望ましい。密着層50は例えばクロム(Cr)よりなり、保護膜51を構成する上記パリレンと高い密着性を有するので、保護膜全体がインクジェット式記録ヘッドから剥離することを防止する。密着層50は、基板20がエッチングされずに残った部分、すなわち側壁22に対向する部分に形成されることが望ましい。側壁22に対向する部分は振動板30のなかで最も振幅の小さい部分であり、ここに保護膜を密着させても振動板の振動を阻害しにくいからである。保護膜51と上部電極42との間には、空気層を形成してもよい。
【0034】
(印刷動作)
上記インクジェット式記録ヘッド1の構成において、印刷動作を説明する。制御回路8から駆動信号が出力されると、供給機構6が動作し用紙5がヘッド1によって印刷可能な位置まで搬送される。制御回路8から吐出信号が供給されず圧電体素子の下部電極32と上部電極42との間に電圧が印加されていない場合、圧電体膜41には変形を生じない。吐出信号が供給されていない圧電体素子が設けられているキャビティ21には、圧力変化が生じず、そのノズル穴11からインク滴は吐出されない。
【0035】
一方、制御回路8から吐出信号が供給され圧電体素子の下部電極32と上部電極42との間に一定電圧が印加された場合、圧電体膜41に変形を生じる。吐出信号が供給された圧電体素子が設けられているキャビティ21ではその振動板30が大きくたわむ。このためキャビティ21内の圧力が瞬間的に高まり、ノズル穴11からインク滴が吐出される。ヘッド中で印刷させたい位置の圧電体素子に吐出信号を個別に供給することで、任意の文字や図形を印刷させることができる。
【0036】
(製造方法)
次に、この実施形態によるインクジェット式記録ヘッドの製造方法を説明する。図4及び図5は、本実施形態によるインクジェット式記録ヘッドの製造工程断面図である。
【0037】
絶縁膜形成工程(S1)
シリコン基板20に絶縁膜31を形成する。シリコン基板20の厚みは、例えば200μm程度のものを使用する。絶縁膜31は例えば1μm程度の厚みに形成する。絶縁膜の製造には公知の熱酸化法等を用い、二酸化珪素の膜を形成する。なお、絶縁膜31の上に、厚さ400nm程度の酸化ジルコニウム膜(図示せず)を更に形成しても良い。
【0038】
下部電極形成工程(S2)
次に、絶縁膜31の上に下部電極32を形成する。下部電極32は、例えば白金又はイリジウムを200nmの厚みで積層する。これらの層の製造は公知の電子ビーム蒸着法、スパッタ法等を用いる。
【0039】
この実施形態では下部電極32を基板全面に形成しているが、これに限らず、下部電極を所定形状にパターニングしてから以下の圧電体膜形成を行なってもよい。
【0040】
圧電体前駆体膜の形成(S3)
次に、下部電極32上に圧電体前駆体膜41’を成膜する。圧電体前駆体膜は、後述の処理で結晶化されて圧電体膜41となる以前の、非晶質膜として構成される。本実施例ではチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)等の前駆体膜をゾル・ゲル法で成膜する。なお、PZTの成膜方法はゾル・ゲル法に限定されるわけではなく、MOD(Metal-Organic Decomposition)法等であってもよい。
【0041】
ゾル・ゲル法とは、金属アルコキシド等の金属有機化合物を溶液系で加水分解、重縮合させるものである。具体的には、まず、基板上に金属有機化合物を含む溶液(ゾル)を塗布し、乾燥させる。用いられる金属有機化合物としては、無機酸化物を構成する金属のメトキシド、エトキシド、プロポキシド、ブトキシド等のアルコキシドやアセテート化合物等が挙げられる。硝酸塩、しゅう酸塩、過塩素酸塩等の無機塩でも良い。
【0042】
この混合溶液を、下部電極上に例えば20nmの厚さに塗布する。塗布した段階では、PZTを構成する各金属原子は有機金属錯体として分散している。
【0043】
塗布後、一定温度で一定時間乾燥させ、ゾルの溶媒を蒸発させる。例えば、乾燥温度は例えば150℃以上200℃以下に設定する。好ましくは、180℃で乾燥させる。乾燥時間は例えば5分以上15分以下にする。好ましくは10分程度乾燥させる。
【0044】
乾燥後、さらに大気雰囲気下において一定の脱脂温度で一定時間脱脂する。脱脂温度は、400℃以上600℃以下の範囲が好ましい。この範囲より高い温度では結晶化が始まってしまい、この範囲より低い温度では、十分な脱脂が行えないからである。好ましくは450℃〜550℃程度に設定する。脱脂時間は、例えば5分以上90分以下にする。この範囲より長い時間では結晶化が始まってしまい、この範囲より短い時間では十分に脱脂されないからである。好ましくは10分程度脱脂させる。脱脂により金属に配位している有機物が金属から解離し酸化燃焼反応を生じ、大気中に飛散する。以上の工程により、圧電体前駆体膜41’が形成される。
【0045】
結晶化工程(S4)
上記の工程によって得られた圧電体前駆体膜41’を加熱処理することによって結晶化させ、圧電体膜41を形成する。焼結温度は材料により異なるが、例えば650℃で5分から30分間加熱を行う。加熱装置としては、RTA(Rapid Thermal Annealing)装置、拡散炉等を使用することができる。
【0046】
この結晶化により、圧電体膜41が形成される。この実施形態では、ゾルの塗布、乾燥、脱脂、パターニング、結晶化の工程を1回実施することにより圧電体膜41を形成したが、これに限らず、2回またはそれ以上繰り返すことによって圧電体膜41を厚膜化し、例えば1.4μm程度としても良い。
【0047】
上部電極形成工程(S5)
以上により形成された圧電体膜41上に上部電極42を形成する。上部電極42としては白金(Pt)、イリジウム(Ir)その他の金属を用い、50nmの膜厚にDCスパッタ法で成膜する。
【0048】
圧電体素子形成工程(図5:S6)
次に、上部電極42上にレジストをスピンコートした後、インク室が形成されるべき位置に合わせて露光・現像してパターニングする。残ったレジストをマスクとして上部電極42、圧電体膜41をイオンミリング等でエッチングする。以上の工程により圧電体素子が形成される。なお、この工程において下部電極も同様にエッチングしても良い。
【0049】
密着層の形成(S7)
次に、振動板30上に保護膜51との密着性の高い材料(クロムなど)で構成される密着層50を厚さ50nm程度に形成する。密着層50は、インク室周囲の側壁22に対向する部分に形成することが好ましい。
【0050】
保護膜の形成(S8)
次に、振動板30、密着層50及び上部電極42上に、上部電極との密着性の低い材料(パリレンなど)で構成される保護膜51を厚さ1μm程度に形成する。図示の例では保護膜51を振動板30の全面に形成したが、これに限らず、圧電体素子を覆い振動板30に密着することができれば、振動板の全面に形成しなくてもよい。
【0051】
インクジェット式記録ヘッドの形成(S9、S10)
更に、インク室基板20にインク室21を形成し、ノズル板10を形成する。具体的には、インク室基板20に、インク室が形成されるべき位置に合わせてエッチングマスクを施し、例えば平行平板型反応性イオンエッチング等の活性気体を用いたドライエッチングや、水酸化カリウム水溶液を用いたウェットエッチングにより、予め定められた深さまでインク室基板20をエッチングし、インク室21を形成する。エッチングされずに残った部分は側壁22となる。
【0052】
更に、樹脂等を用いてノズル板10をインク室基板20に接合する。ノズル板10をインク室基板20に接合する際には、ノズル11がインク室21の各々の空間に対応して配置されるよう位置合せする。
【0053】
なお、インク室20及びノズル板10の形成(S9、S10)後に上記密着層50及び保護膜51の形成(S7、S8)を行なっても良い。
【0054】
最後に、圧電体素子を駆動することにより、保護膜51を密着性の低い上部電極42に対して剥離させる。この剥離工程はインク室21に対するインクの導入以前に行なうことが望ましい。また、必要に応じて上部電極42と保護膜51との間に不活性のガスを注入し、ガス層を形成してもよい。以上の工程により、インクジェット式記録ヘッドが形成される。
【0055】
【発明の効果】
本発明によれば、保護膜の膜厚を減じることなく、振動部の変位量を確保でき、高性能で高集積化が可能なインクジェット式記録ヘッドを提供することができる。また、上記のインクジェット式記録ヘッドを備え、印字速度が速く高解像度なプリンタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施形態インクジェット式記録ヘッドが使用されるプリンタの構造を説明する斜視図である。
【図2】本実施形態インクジェット式記録ヘッドの構造の説明図である。
【図3】本発明のインクジェット式記録ヘッドの具体的な構造を説明する断面図である。
【図4】本実施形態によるインクジェット式記録ヘッドの製造工程断面図である。
【図5】本実施形態によるインクジェット式記録ヘッドの製造工程断面図である。
【符号の説明】
10…ノズル板、 20…圧力室基板、 30…振動板、 31…絶縁膜、 32…下部電極、 41…圧電体薄膜層、 42…上部電極、 21…キャビティ、51…保護膜、50…密着層[0001]
BACKGROUND OF THE INVENTION
The present invention relates to an ink jet recording head used for an ink jet printer or the like and a manufacturing method thereof. The present invention also relates to a printer including the above-described ink jet recording head.
[0002]
[Prior art]
The ink jet recording head includes a piezoelectric element formed by sequentially laminating at least a piezoelectric film and an upper electrode on a vibration plate, and a protective film covering the piezoelectric element. As the piezoelectric element is thinned and the ink jet recording head is miniaturized and highly integrated, the thickness of the protective film that protects the piezoelectric element is becoming non-negligible. In particular, when the vibration plate vibrates by driving the piezoelectric element, the protective film of the piezoelectric element also vibrates with the vibration plate. Therefore, the displacement amount of the entire vibration part including the vibration plate, the piezoelectric element, and the protective film is reduced. The film is greatly affected by the film thickness. Further, since the neutral surface of the vibration part is shifted to the upper electrode side from the piezoelectric film, there is a problem that a sufficient amount of displacement and characteristics cannot be secured.
[0003]
[Problems to be solved by the invention]
However, it is difficult to reduce the thickness of the protective film because the function of the protective film itself such as moisture resistance is reduced.
[0004]
SUMMARY OF THE INVENTION An object of the present invention is to provide an ink jet recording head that can secure a displacement amount and characteristics of a vibrating portion without reducing the thickness of a protective film, can be highly integrated, and has high performance.
[0005]
It is another object of the present invention to provide a printer having the above-described ink jet recording head and having a high printing speed and a high resolution.
[0006]
[Means for Solving the Problems]
In order to solve the above problems, an ink jet recording head of the present invention includes a piezoelectric element formed by sequentially laminating at least a piezoelectric film and an upper electrode on a vibration plate, and covering the piezoelectric element with the vibration plate. A protective film that is in close contact, and has a surface on the diaphragm that has higher adhesion to the protective film than the upper electrode.
[0007]
Since the adhesiveness between the upper electrode and the protective film is low, the protective film can ensure the displacement amount and characteristics of the vibrating part without inhibiting the vibration of the vibrating part. Thereby, high performance and high integration of the ink jet recording head can be realized.
[0008]
In the ink jet recording head, it is preferable that the protective film is peeled off from the upper electrode when the piezoelectric element is driven. Thereby, since the upper electrode and the protective film are peeled off, a sufficient amount of displacement can be obtained without the vibration of the vibration part being greatly affected by the protective film.
[0009]
In the ink jet recording head, it is preferable that an adhesive layer having higher adhesion to the protective film than the upper electrode is laminated on the vibration plate, and the protective film is laminated on the adhesive layer. Thereby, peeling with a diaphragm and a protective film can be prevented.
[0010]
In the ink jet recording head, a pressure chamber surrounded by a side wall is formed on a surface of the diaphragm opposite to the piezoelectric element forming surface, and the piezoelectric element forming surface of the diaphragm is opposed to the side wall. It is desirable that an adhesion layer having higher adhesion to the protective film than the upper electrode is laminated at a position where the protective film is formed, and the protective film is laminated on the adhesion layer. This is because the position facing the partition wall has a small amplitude, and thus it is difficult to inhibit the vibration of the vibration part even if the protective film is closely attached.
[0011]
In the ink jet recording head, the protective film is preferably made of parylene. Since parylene has low adhesion with platinum and iridium that are usually used for the upper electrode, it can be made lower in adhesion than the contact surface with the diaphragm.
[0012]
In the ink jet recording head, it is desirable that a chromium layer is laminated on the diaphragm and the protective film is laminated on the chromium layer. Since chromium has high adhesiveness with parylene, the adhesiveness between the protective film and the diaphragm can be enhanced.
[0013]
In the ink jet recording head, it is desirable to have a gas layer between the protective film and the upper electrode. Thereby, the displacement amount of the vibration part can be further increased.
[0014]
A printer according to the present invention includes the ink jet recording head. Since the above-described ink jet recording head capable of high performance and high integration is used, a printer with high printing speed and high resolution can be provided.
[0015]
The method for manufacturing an ink jet recording head according to the present invention includes a step of sequentially stacking at least a piezoelectric film and an upper electrode on a vibration plate to form a piezoelectric element, and a step of forming a protective film covering the piezoelectric element. A step of forming a protective film such that a contact surface having higher adhesion than a contact surface of the protective film with respect to the upper electrode is formed between the protective film and the diaphragm; and the piezoelectric element. Applying a voltage to the upper electrode to peel off the protective film. As a result, the protective film and the upper electrode are peeled off, and an ink jet recording head capable of high integration with a large amount of displacement of the vibration portion and high performance can be easily manufactured. In addition, by manufacturing a printer using the ink jet recording head manufactured by this method, a printer with high printing speed and high resolution can be easily manufactured.
[0016]
DETAILED DESCRIPTION OF THE INVENTION
Hereinafter, embodiments of the present invention will be described with reference to the drawings.
[0017]
(Overall configuration of inkjet printer)
FIG. 1 is a perspective view illustrating the structure of a printer in which the ink jet recording head of this embodiment is used. In this printer, a
[0018]
The ink
[0019]
The
[0020]
The
[0021]
The
[0022]
Since the printer of this embodiment includes an inkjet recording head that can be highly integrated with high performance, which will be described later, the printer has a high printing speed and a high resolution.
[0023]
(Configuration of inkjet recording head)
FIG. 2 is an explanatory diagram of the structure of the ink jet recording head according to the present embodiment. As shown in the drawing, the ink
[0024]
The
[0025]
The
[0026]
The
[0027]
(Layer structure)
FIG. 3 is a cross-sectional view for explaining a more specific structure of the ink jet recording head of this embodiment. This sectional view is an enlarged view of a section corresponding to one piezoelectric element. As shown in the figure, the
[0028]
The insulating
[0029]
The
[0030]
The
[0031]
The
[0032]
The
[0033]
On the
[0034]
(Printing operation)
A printing operation in the configuration of the ink
[0035]
On the other hand, when a discharge voltage is supplied from the
[0036]
(Production method)
Next, a method for manufacturing the ink jet recording head according to this embodiment will be described. 4 and 5 are cross-sectional views of the manufacturing process of the ink jet recording head according to the present embodiment.
[0037]
Insulating film forming step (S1)
An insulating
[0038]
Lower electrode forming step (S2)
Next, the
[0039]
In this embodiment, the
[0040]
Formation of piezoelectric precursor film (S3)
Next, a
[0041]
In the sol-gel method, a metal organic compound such as a metal alkoxide is hydrolyzed and polycondensed in a solution system. Specifically, first, a solution (sol) containing a metal organic compound is applied onto a substrate and dried. Examples of the metal organic compound used include alkoxides such as methoxides, ethoxides, propoxides, and butoxides that constitute inorganic oxides, and acetate compounds. Inorganic salts such as nitrates, oxalates and perchlorates may be used.
[0042]
This mixed solution is applied on the lower electrode to a thickness of 20 nm, for example. At the applied stage, each metal atom constituting PZT is dispersed as an organometallic complex.
[0043]
After application, the sol solvent is evaporated by drying at a constant temperature for a certain time. For example, the drying temperature is set to, for example, 150 ° C. or more and 200 ° C. or less. Preferably, it is dried at 180 ° C. The drying time is, for example, 5 minutes or more and 15 minutes or less. Preferably, it is dried for about 10 minutes.
[0044]
After drying, it is further degreased for a certain period of time at a certain degreasing temperature in an air atmosphere. The degreasing temperature is preferably in the range of 400 ° C to 600 ° C. This is because crystallization starts at a temperature higher than this range, and sufficient degreasing cannot be performed at a temperature lower than this range. Preferably, it is set to about 450 ° C. to 550 ° C. The degreasing time is, for example, 5 minutes or more and 90 minutes or less. This is because crystallization starts in a time longer than this range, and degreasing is not sufficient in a time shorter than this range. Preferably, degreasing is performed for about 10 minutes. The organic matter coordinated to the metal by degreasing dissociates from the metal, causes an oxidative combustion reaction, and is scattered in the atmosphere. Through the above steps, the
[0045]
Crystallization step (S4)
The
[0046]
By this crystallization, the
[0047]
Upper electrode forming step (S5)
The
[0048]
Piezoelectric element forming step (FIG. 5: S6)
Next, after spin-coating a resist on the
[0049]
Formation of adhesion layer (S7)
Next, an
[0050]
Formation of protective film (S8)
Next, a
[0051]
Formation of ink jet recording head (S9, S10)
Further, the
[0052]
Further, the
[0053]
The
[0054]
Finally, the
[0055]
【The invention's effect】
According to the present invention, it is possible to provide an ink jet recording head capable of securing a displacement amount of the vibrating portion without reducing the thickness of the protective film, and capable of high performance and high integration. Further, it is possible to provide a printer having the above-described ink jet recording head and having a high printing speed and a high resolution.
[Brief description of the drawings]
FIG. 1 is a perspective view illustrating a structure of a printer in which an ink jet recording head according to an embodiment is used.
FIG. 2 is an explanatory diagram of a structure of an ink jet recording head according to the present embodiment.
FIG. 3 is a cross-sectional view illustrating a specific structure of an ink jet recording head of the present invention.
FIG. 4 is a cross-sectional view of a manufacturing process of the ink jet recording head according to the present embodiment.
FIG. 5 is a cross-sectional view of a manufacturing process of the ink jet recording head according to the present embodiment.
[Explanation of symbols]
DESCRIPTION OF
Claims (4)
前記振動板の前記第一面と反対側の第二面に形成され、前記圧力室の上方に配置された圧電体膜と、
前記圧電体膜上に配置された上部電極と、
前記振動板の前記第二面の前記側壁の上方に配置され、前記圧電体膜の下方には配置されない密着層と、
前記密着層と密着し、前記上部電極を覆う保護膜と、を有し、
前記密着層と前記保護膜との密着性は、前記上部電極と前記保護膜との密着性より高い
インクジェット式記録ヘッド。 A pressure chamber disposed on the first surface of the diaphragm and surrounded by side walls;
A piezoelectric film formed on the second surface opposite to the first surface of the diaphragm, and disposed above the pressure chamber;
An upper electrode disposed on the piezoelectric film;
An adhesion layer disposed above the side wall of the second surface of the diaphragm and not disposed below the piezoelectric film;
A protective film that adheres closely to the adhesive layer and covers the upper electrode;
The ink jet recording head , wherein the adhesion between the adhesion layer and the protective film is higher than the adhesion between the upper electrode and the protection film .
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