JP4357876B2 - 多変量検出センサおよびそれを用いた物理量識別方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、圧力、加速度、温度等の複数の物理量を単体で検出するセンサおよびこのセンサの出力から目的とする物理量を識別する物理量識別方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
圧力、加速度、温度等の種々の物理量を検出するセンサが各種知られている。これまでは、このようなセンサはたとえば工場に設置され、工場内の生産設備の監視や制御に用いられていた。そのため、圧力、流量、温度等、注目する個々の物理量を、複数のセンサを用いてそれぞれ単独に検出する手法が主流であった。
【0003】
このように個々の物理量を単独に検出するセンサを用いると、複数の物理量を検出するためには複数のセンサを用いる必要があり、センシングのためのシステムが大規模かつ高コストになる可能性が高い。そのため、ある一つの物理量を検出し、コストを抑制して製造可能なセンサが提案されている(たとえば、特許文献1および特許文献2参照。)。
上記特許文献1および特許文献2に記載のセンサにおいては市販のコンデンサマイクロフォンまたはセラミックマイクロフォンが使用されており、このためコストを抑制することが可能である。
【0004】
【特許文献1】
特許第2753896号公報
【特許文献2】
特開平6−50985号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、個々のセンサをいかに安価に製造することができたとしても、個別のセンサによって個々の物理量を単独に検出するというアプローチでは、複数の物理量の検出のためのシステムの大規模化および高コスト化を根本的に解決することはできない。
特に、家庭や車のセキュリティセンサ、あるいは独居老人の生存確認のためのセンサ等のように、エネルギの使用量を減らし規模やコストの抑制が望まれるセンサにおいては、構造が簡単な単一のセンサによって変動する複数の物理量を検出することが望まれる。
【0006】
本発明の目的は、単体で多変量を検出することが可能であり、かつ構造が簡単な多変量検出センサを提供することにある。
また、本発明の他の目的は、上記多変量検出センサの出力から目的とする物理量にそれぞれ対応する出力を分離して複数の物理量を識別する物理量識別方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る多変量検出センサは、エレクトレットフィルムの変位量に応じて変化する静電容量の値を、トランジスタを介して電圧信号に変換して出力するコンデンサマイクロフォンと、前記コンデンサマイクロフォンの筐体と前記エレクトレットフィルムとの間に空気の漏れを存在させて前記コンデンサマイクロフォンに密着され、当該コンデンサマイクロフォンの周波数特性を低周波側に広げる所定容積の透光性のチャンバと、前記チャンバ内に収容され、前記チャンバを介して伝播される光および熱を圧力に変換する変換手段とを有し、前記エレクトレットフィルムの永久電荷量、単位面積あたりのばね定数、質量をそれぞれQ,k,m、前記チャンバの容積をV、前記チャンバ内の空気のモル数をn、空気のガス定数をR、前記静電容量をCc、前記トランジスタの入力インピーダンスをRc、前記漏れの流量抵抗をr、前記変換手段への光の照射による輻射熱発生係数をCr、としたときに、電気伝達関数LPFと前記コンデンサマイクロフォンの空気圧伝達関数HPFとがそれぞれLPF=((Q/Cc)/(1+sCcRc))、HPF=srV/(1+srV)となり、前記コンデンサマイクロフォンの周囲の静圧変動Psと動圧変動Pd、音響Po、前記エレクトレットフィルムに発生する加速度a、前記変換手段への光の照射量lおよび前記変換手段の周囲の温度変化量Tが、前記空気圧伝達関数HPFに(Ps+Pd+Po+(m/k)a+nR(Cr・l+T)/V)として入力され、前記空気圧伝達関数HPFの出力が前記電気伝達関数LPFの入力になるように前記コンデンサマイクロフォンと前記チャンバと前記変換手段とを構成している。
【0008】
また、本発明に係る物理量識別方法は、エレクトレットフィルムの変位量に応じて変化する静電容量の値を電圧信号に変換して出力するコンデンサマイクロフォンと、前記コンデンサマイクロフォンの筐体と前記エレクトレットフィルムとの間に空気の漏れを存在させて前記コンデンサマイクロフォンに密着され、当該コンデンサマイクロフォンの周波数特性を低周波側に広げる所定容積の透光性のチャンバと、前記チャンバ内に収容され、前記チャンバを介して伝播される光および熱を圧力に変換する変換手段とを有するセンサから、該センサの周囲の静圧変動、動圧変動、音響、前記エレクトレットフィルムに発生する加速度、前記変換手段への光の照射および前記変換手段の周囲の温度変化に応じて出力される前記電圧信号を取得し、前記電圧信号の時系列データおよび該時系列データの周波数特性を取得し、前記時系列データと前記周波数特性との組み合わせに基づいて、前記静圧変動、前記動圧変動、前記音響、前記加速度、前記光の照射および前記温度変化をそれぞれ識別する物理量識別方法である。
【0009】
本発明に係る多変量検出センサにおいては、コンデンサマイクロフォンのエレクトレットフィルムの変位量に応じて、コンデンサマイクロフォンの静電容量の値が変化する。変化する静電容量の値は電圧信号に変換されてコンデンサマイクロフォンから出力される。コンデンサマイクロフォンの筐体とエレクトレットフィルムとの間に空気の漏れを存在させてコンデンサマイクロフォンに密着される透光性のチャンバは、コンデンサマイクロフォンの周波数特性を低周波側に広げる。チャンバ内に収容される変換手段は、チャンバを介して伝播される光および熱を圧力に変換する。チャンバ内の圧力が変化した結果、エレクトレットフィルムが変位する。
このような多変量検出センサは、その空気伝達関数および電気伝達関数がそれぞれ所定の関数となるように構成される。このように構成された多変量検出センサは、コンデンサマイクロフォンの周囲の静圧変動と動圧変動、音響、エレクトレットフィルムに発生する加速度、変換手段への光の照射量および変換手段の周囲の温度変化量を入力として受け取る。
この入力に応じて多変量検出センサから得られる出力電圧信号の時系列データおよびその周波数特性の組み合わせに基づいて、静圧変動、動圧変動、音響、加速度、光の照射および温度変化がそれぞれ識別される。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照しながら述べる。
なお、以下では、本発明を適用して、家屋のセキュリティを守るために火災、不審者の侵入および地震を検出する場合を一例として挙げる。
【0011】
構成
図1は、本発明の一実施形態に係る多変量検出センサの構成を示す図である。図1において、(a)は多変量検出センサの全体構成を表わし、(b)は本実施の形態に係る多変量検出センサに用いるコンデンサマイクロフォンの概略的な断面図を表わしている。
【0012】
図1(a)に示すように、本実施の形態に係る多変量検出センサ1は、検出部3と、減算回路21と、ローパス回路23と、判定手段としての判定回路5とを有する。
検出部3は、コンデンサマイクロフォン7と、チャンバ18と、変換手段としての黒色スポンジ19とをさらに有する。
【0013】
図1(b)の概略的な断面図に示すように、コンデンサマイクロフォン7は、円筒状の筐体9と、エレクトレットフィルム11と、エレクトレットフィルム11に対向する対向電極12と、トランジスタ14とを有する。
【0014】
コンデンサマイクロフォン7は、エレクトレットフィルム11と対向電極12とにより形成されるコンデンサのエレクトレットフィルム11の変位に応じた静電容量の変化を、電気信号として出力するマイクロフォンである。コンデンサマイクロフォン7としては、市販のコンデンサマイクロフォンを用いることができる。本実施の形態においては、コンデンサマイクロフォン7として、たとえば、(株)プリモ製のコンデンサマイクロフォンEM-75を用いる。
【0015】
筐体9において、エレクトレットフィルム11が配置されている一方の端部は、エレクトレットフィルム11が変位可能なように開放されている。筐体9のエレクトレットフィルム11よりも内部側に、対向電極12が配置され、対向電極12よりもさらに内部側にトランジスタ14が配置される。
エレクトレットフィルム11および対向電極12は、図示しないリング状の絶縁ワッシャによって保持されて筐体9の内部に装着される。
【0016】
エレクトレットフィルム11は、永久電荷が荷電されたフィルムである。本実施の形態に係るエレクトレットフィルム11は、たとえば、厚さが20μm、直径が9mmの円形フィルム形状をしている。
対向電極12も、エレクトレットフィルム11と同様な円形形状をしている。
対向配置されるエレクトレットフィルム11と対向電極12とによって、コンデンサが形成される。
【0017】
トランジスタ14としては、たとえば、電界効果トランジスタを用いる。トランジスタ14の1つのリード線は対向電極12に接続されており、他の2つのリード線16,16は図1(b)に示されるように筐体9の外部へ取出されている。
トランジスタ14は、エレクトレットフィルム11と対向電極12とにより形成されるコンデンサの静電容量の値を、リード線16,16の間の電圧信号として出力する。
【0018】
筐体9の開放側とは反対側の端部は封止されており、かつ、適宜決められる個数の穴9hが形成されている。これらの穴9hは、コンデンサマイクロフォン7に対するエレクトレットフィルム11側からの音の位相とその反対側からの音の位相とがほぼ同じ場合にはエレクトレットフィルム11の歪を小さくし、位相が異なる場合には歪を大きくして、コンデンサマイクロフォン7に空間指向性を付与するためのものである。図1(b)に示すようにエレクトレットフィルム11と対向する端部に穴9hを形成した場合には、コンデンサマイクロフォン7は、エレクトレットフィルム11の横方向からの音は検出しにくく、前方や後方からの音は検出し易くなる。
【0019】
チャンバ18は、一方の端部が密封されており他方の端部が開放されている中空の部材である。チャンバ18は、コンデンサマイクロフォン7により、開放されている端部が密封される。チャンバ18は、その内部空間に黒色スポンジ19を収容する。本実施の形態においては、たとえば、チャンバ18は円筒形をしており、開放されている端部を円筒形のコンデンサマイクロフォン7の外周に嵌合させて、コンデンサマイクロフォン7のエレクトレットフィルム11側に密着される。
黒色スポンジ19を収容する円筒状の内部空間の直径Rおよび長さLは、本実施の形態においては、それぞれR=10mm、L=20mmとした。
【0020】
光を検出するために、チャンバ18には透光性を備えさせる。本実施の形態においては、透明なアクリル樹脂によりチャンバ18を形成している。ただし、透光性を備え、コンデンサマイクロフォン7の一方側を密封可能であれば、チャンバ18を形成する材料は任意である。
【0021】
コンデンサマイクロフォン7の筐体の開放側はエレクトレットフィルム11および対向電極12によって完全に密閉されているわけではなく、エレクトレットフィルム11および対向電極12を保持する絶縁ワッシャの間隙がある程度のオリフィスとなっている。このため、図1(b)に示すように、エレクトレットフィルム11を挟んで筐体9の外部とチャンバ18の内部空間との間にはある程度の空気の漏れvlが存在する。したがって、検出部3は、定常状態ではチャンバ18の内圧と大気圧は等しくなる不完全微分(ハイパスフィルタ)特性を持つ。
詳しくは後述するが、このハイパスフィルタの遮断周波数は漏れvlの大きさやチャンバ18の内部空間の容積から決まる。このように、チャンバ18は、検出部3のハイパスフィルタ特性の遮断周波数を下げて、コンデンサマイクロフォン7の周波数特性をたとえば0.1Hz程度の低周波側に下げるためのものである。
【0022】
弾性を有する黒色スポンジ19の容積は、たとえば、チャンバ18の内部空間の容積と同程度にする。黒色スポンジ19は、後ほど詳述するようにチャンバ18を介して伝播される光および熱を圧力に変換してエレクトレットフィルム11を変位させる。
【0023】
変換手段としては、黒色スポンジ19以外にも、たとえば綿を用いることができる。スポンジや綿の色は任意であるが、光および熱を効率的に吸収するために、黒またはそれに近い色が好ましい。
また、温度に応じて伸縮する材料であれば、バイメタル等の他の材料を変換手段として用いてもよい。
【0024】
トランジスタ14からのリード線16は減算回路21に接続され、減算回路21にはトランジスタ14からの出力電圧信号、すなわち検出部3からの出力電圧信号が入力される。検出部3から出力される電圧信号には、エレクトレットフィルム11の永久電荷の存在に伴い直流分が重畳されている。
減算回路21は、この直流分を差し引き、検出部3の出力電圧信号から検出部3が検出した信号成分だけを取出すためのものである。
【0025】
減算回路21はローパス回路23に接続され、ローパス回路23には検出部3の出力電圧信号から直流分が差し引かれた電圧信号ebが入力される。
ローパス回路23は、入力される信号の高周波側を遮断し低周波側を通過させるローパスフィルタとして機能する回路である。
【0026】
ローパス回路23にはさらに判定回路5が接続され、ローパス回路23により電圧信号ebのうちの高周波成分が遮断された電圧信号eが判定回路5に入力される。
詳しくは後述するが、判定回路5は入力された電圧信号eの時系列データとその周波数特性との組み合わせに基づいて、検出部3が検出した物理量の種類を判定する。
判定回路5は、判定結果を判定信号rgとして出力する。
【0027】
火災が発生した場合には、熱や煙、光が発生するだけでなく、4Hz近傍において炎(熱)が揺らぐことがこれまでの研究により知られている。また、室内の温度は火災の進行に伴い上昇し、空気は対流する。これらの温度変化に伴い室内の静圧は変化し、また対流により動圧が発生することが知られている。
不審者が侵入した場合、扉の開閉により室内の静圧が変動し、ピッキングに伴い音響が発生する。夜誰もいない室内に不審者が侵入した場合、ライトを点灯することもありえる。
地震が発生した場合には、家屋が振動しあるレベルの加速度が発生する。
【0028】
検出部3のエレクトレットフィルム11は、0.1Hz以下の極低周波から可聴領域全域の範囲における静圧および動圧の変動、ならびに音響に起因する圧力変動により直接的に変位する。
検出部3の周囲の温度が変化すれば温度変化はチャンバ18を介してチャンバ18の内部まで伝播する。この温度変化に応じてチャンバ18の圧力が変化し、この圧力変化に応じてエレクトレットフィルム11が変位する。
黒色スポンジ19が存在する場合には、黒色スポンジ19が熱を効率的に吸収し、温度が上昇する場合にチャンバ18内の圧力上昇の検出感度および応答性が向上する。
【0029】
ライト等の点灯により光がチャンバ18に照射されると、チャンバ18は透光性であるため光はチャンバ18を介して黒色スポンジ19まで伝播する。黒色スポンジ19は受光により僅かではあるが輻射熱を発生する。この輻射熱に伴うチャンバ18内の圧力の上昇によりエレクトレットフィルム11が押圧され、光が検出される。
【0030】
変換手段としてバイメタルを使用する場合には、たとえば、線状にして一端をチャンバ18内に、他端をエレクトレットフィルム11に固着させてもよいし、対向電極12をバイメタルにより形成してもよい。
バイメタルを用いる場合には、温度に応じてバイメタルが膨張または収縮して変位し、コンデンサマイクロフォン7に形成されているコンデンサの静電容量が変化する。バイメタルの変位量は温度にほぼ比例するため、静電容量の値から温度の値を直接的に測定することができる。
バイメタルが光を受けると、黒色スポンジ19と同様に輻射熱が発生し、この輻射熱によりバイメタルは膨張する。その結果コンデンサの静電容量が変化し、この変化から光を検出することができる。
【0031】
エレクトレットフィルム11の面の法線方向に、ある加速度で検出部3が運動すればエレクトレットフィルム11の質量はその加速度に比例する力を発生する。この力によりエレクトレットフィルム11が変位し、加速度が検出される。
【0032】
静圧、動圧、音響、加速度、光および温度という各物理量の変化に起因して、コンデンサマイクロフォン7から出力される電圧信号は変化する。この電圧信号には、上記物理量に関わる信号成分が1つ以上含まれている。
検出部3が検出可能な物理量の信号成分を1つ以上含む電圧信号は、減算回路21により直流分を差し引きされてローパス回路23に入力される。ローパス回路23により高周波成分が遮断された結果残る信号eが、たとえば、増幅率10〜30倍の反転増幅器により増幅された後に判定回路5に入力される。判定回路5により、増幅されて入力された信号eから静圧、動圧、音響、加速度、光および温度に関する信号成分がそれぞれ分離されて各物理量が識別される。
【0033】
ここで、エレクトレットフィルム11の永久電荷量、単位面積あたりのばね定数、質量をそれぞれQ,k,m、チャンバ18の内部空間の容積をV、チャンバ18内の空気のモル数をn、空気のガス定数をR、、エレクトレットフィルム11と対向電極12とによって形成されるコンデンサの静電容量をCc、トランジスタ14の入力インピーダンスをRc、エレクトレットフィルム11の前後における空気の漏れの流量抵抗をr、黒色スポンジ19への光の照射による輻射熱発生係数をCr、そして減算回路21のゲインをGとする。
また、静圧変動をPs、動圧変動をPd、音響をPo、エレクトレットフィルム11に発生する加速度をa、黒色スポンジ19への光の照射量をl、そして黒色スポンジ19の周囲の温度変化量をTとして表わすこととする。
【0034】
コンデンサマイクロフォン7の種類やチャンバ18および変換手段としての黒色スポンジ19の材料特性や形状等の条件により多変量検出センサ1の特性は変化する。本実施の形態においては、入力としての各物理量と出力としての信号eが、図2に示すブロック線図の関係を満たすように多変量検出センサ1を構成する。
すなわち、本実施の形態においては、黒色スポンジ19とチャンバ18とを備えたコンデンサマイクロフォン7の空気圧伝達関数HPFがHPF=srV/(1+srV)となり、コンデンサマイクロフォン7からローパス回路23までの電気伝達関数LPFがLPF=(G(Q/Cc)/(1+sCcRc))となるように多変量検出センサ1が構成される。減算回路21のゲインがGであるため、コンデンサマイクロフォン7からローパス回路23までのうちの減算回路21を除く部分の電気伝達関数は((Q/Cc)/(1+sCcRc))となる。
【0035】
また、静圧変動Ps、動圧変動Pd、音響Po、加速度a、光の照射量l、温度変化量Tが、Ps+Pd+Po+(m/k)a+nR(Cr・l+T)/V)として空気圧伝達関数HPFに入力されるように検出部3を構成する。
そして、空気圧伝達関数HPFの出力e0が電気伝達関数LPFの入力となるようにコンデンサマイクロフォン7からローパス回路23までの回路を構成する。
【0036】
前述のように、コンデンサマイクロフォン7においては、エレクトレットフィルム11および対向電極12を保持する絶縁ワッシャの間隙がある程度のオリフィスとなっており、エレクトレットフィルム11の前後において漏れvlが存在する。このため、定常状態ではチャンバ18の内圧と大気圧は等しくなり、図2のブロック線図において空気圧伝達関数HPFはハイパスフィルタとして機能する。
絶縁ワッシャによるオリフィスの開口面積は、筐体9の開放部の面積および穴9hの面積に比べて非常に小さい。このため、流量抵抗rは極めて大きくなり、空気圧伝達関数HPFにおける遮断周波数1/(2πrV)は極めて小さくなる。つまり、チャンバ18を取付けることにより、コンデンサマイクロフォン7の周波数特性を低周波側に広げることができる。
【0037】
遮断周波数の式が1/(2πrV)によって規定されるため、漏れvlを小さくすることにより流量抵抗rは大きくなり、また、チャンバ18の内部空間の容積Vを大きくすることにより遮断周波数は小さくなる。したがって、チャンバ18の容積Vを適宜規定することにより、コンデンサマイクロフォン7の周波数特性を、たとえば0.1Hz以下の極低周波領域まで広げることができる。
【0038】
また、電気伝達関数LPFはローパス回路23を含む電気系の伝達関数であるため、図2のブロック線図において電気伝達関数LPFはローパスフィルタとして機能する。
【0039】
特性試験
上述の多変量検出センサ1の圧力、加速度、温度、光センサとしての特性を調べる。
特性試験においては、負荷抵抗2kΩ、電源電圧3Vで検出部3を駆動し、減算回路21により検出部3の出力電圧信号から直流分を差し引いた信号ebに基づき評価を行なった。
【0040】
図3(a)に、多変量検出センサ1を圧力センサとして利用した場合の周波数特性のグラフを示す。図3(a)に示すグラフの横軸は周波数[Hz]を、縦軸は感度[dB]をそれぞれ表わしている。
マイクロフォンとして使用する場合と同様に、多変量検出センサ1における圧力と出力電圧信号ebは比較的広い範囲において線形性を保つ。図3(a)のグラフに示すように、20Hzにおける感度は−12dB・V/Paと非常に高感度である。
図3(a)に示す周波数特性は、通常のマイクロフォンと比較して極めて低い周波数領域まで感度が高い特性になっている。0.5Hz〜200Hzの範囲においてほぼフラットであり、図示はしないが0.1Hz以下でも十分な感度がある。火災または不審者の侵入に伴う圧力変動は十分に検出できる。
【0041】
図3(b)に、多変量検出センサ1の周辺温度に対する出力電圧信号ebの特性を示す。図3(b)に示すグラフの横軸は温度[℃]を、縦軸は減算回路21からの出力電圧[V]をそれぞれ表わしている。
図3(b)のグラフから明らかなように、温度Tと出力電圧の信号ebの振幅との関係はほぼeb=0.01Tとなっており、出力電圧はほぼ温度に比例した特性を示している。したがって、多変量検出センサ1は温度センサとして使用できる。
【0042】
図3(c)には、検出部3に照射された光の照度と出力電圧の信号ebの振幅との関係を示している。図3(c)に示すグラフの横軸は照度[lx]を、縦軸は減算回路21からの出力電圧[V]をそれぞれ表わしている。
図3(c)のグラフから明らかなように、入力照度と出力電圧との間には線形性が認められ、感度も良好である。
【0043】
また、図4(a)に、多変量検出センサ1を加速度センサとして利用した場合の周波数特性のグラフを示す。図4(a)に示すグラフの横軸は周波数[Hz]を、縦軸は感度[dB]をそれぞれ表わしている。
図4(a)のグラフに示されるように感度は50Hzにおいて約−54dB(0dB=1V/0.1G)(Gは加速度(m/s2)を表わす。)であり、比較的高感度な加速度センサとはいえないが、地震振動を検出するセンサとしては十分な感度を有するといえる。図4(a)に示すように加速度センサとしての周波数特性はなだらかなローパス特性を持つが、低周波領域ではほぼ平坦な特性を持つ。10kHzを超えた周波数領域において大きなピークが出現しているが、これはエレクトレットフィルム11の固有振動数である。
試験に用いた加振機の特性上25Hz以上の振動加速度しか計測できなかったが、マイクロフォンとしての特性から判断して低周波領域においても計測は可能である。以下にそれを示す。
【0044】
多変量検出センサ1を重りとして糸に吊るし、周期1.5s(即ち周波数1.5Hz)、振幅0.05mの単振り子運動をさせたときの出力電圧信号ebを計測した。図4(b)が信号ebの時系列データを表わすグラフであり、図4(c)が得られた時系列データに基づくスペクトルのグラフである。
図4(b)のグラフの横軸は時間[sec]を、縦軸は減算回路21からの出力電圧[V]をそれぞれ表わしている。また、図4(c)のグラフの横軸は周波数[Hz]を、縦軸はスペクトルの大きさをそれぞれ表わしている。
【0045】
図4(b),(c)のグラフから、1.5Hz程度の低周波領域における正弦波振動による加速度を比較的高精度に検出できていることが分かる。したがって、多変量検出センサ1により地震の周波数領域の加速度を検出することが可能である。実際の地震ではさらに強い加速度成分が発生すると考えられるため、地震の検知は十分可能である。
既存の地震計は、加速度記録に周波数0.5Hz〜10Hzの低周波の範囲において地震動を強調するフィルタをかけたうえで、振動継続時間等の条件も考慮して震度を10段階にわけている。これと同じ基準を用いれば、多変量検出センサ1の出力から震度の決定も可能である。
【0046】
物理量の識別および物理現象の判定
これまでの記載により、多変量検出センサ1を用いて静圧変動Ps、動圧変動Pd、音響Po、加速度a、光の照射量lおよび温度変化量Tを検出することができることは分かった。以下では、検出部3の出力から上記の各物理量に対応する成分を識別して多変量検出センサ1が検出した物理量を識別し、また、識別した物理量が火災、不審者の侵入および地震のどの物理現象によって発生したか判定することを考える。たとえば、静圧変動Psは火災に伴う室内の温度変化によっても不審者侵入時の扉の開閉によっても発生する。このため、識別した物理量がどの物理現象に関わる物理量であるかを判別する必要がある。
【0047】
判定回路5は、検出部3からの出力に基づく信号にどの物理量に関わる成分が含まれているかを判別してどの物理現象が発生したかを判定するためのものである。図1(a)に示すように、減算回路21からの出力電圧信号ebはローパス回路23に入力される。コンデンサマイクロフォン7、減算回路21およびローパス回路23の電気的特性を表わし、図2の電気伝達関数LPFとして規定される一次のローパスフィルタの遮断周波数は、たとえば、16Hzとした。これは、以下に述べるように火災、侵入および地震に伴う物理量に関する信号の特徴的な周波数領域が、全て約15Hz以内であることに基づいている。
ローパス回路23、図2においては電気伝達関数LPFからの出力電圧信号eが、反転増幅器により増幅されて判定回路5に入力される。図5に、判定回路5の機能的構成図を示す。
【0048】
図5に示すように、判定回路5は、入力信号eがそれぞれ入力されるフィルタ部FL,FM,FI,FP,FEと、これらのフィルタ部にそれぞれ接続される複数の増幅器30と、各増幅器30からの出力が入力される判定部35とを有する。
【0049】
フィルタ部FL,FM,FI,FP,FEはそれぞれ、入力された信号eの特定の周波数帯を強調して出力するフィルタ回路である。
火災が発生したときには、発生した火炎により生じる熱が輻射、対流により室内に拡散し室内の温度は徐々に上昇する。この温度変化に伴う動圧変動は極めて緩やかであり、フィルタ部FLのような遮断周波数0.1Hz程度のローパスフィルタからの出力によってこの緩やかな温度変化を分離して捉えることができる。0.1Hz程度の非常にゆっくりとした変化は、不審者の侵入および地震等の他の物理現象には現われないため、火災発生の判定が可能である。さらに、火炎の成長に伴い信号eの周波数特性のピーク周波数はより低い帯域へ移行する性質がある。このピーク周波数の推移から火炎の強さを判別することも可能である。
【0050】
火災に伴う圧力変動については、室内に発生した火炎はゆらぎながら徐々にその規模を拡大していき、火炎によって室内には静圧変動が生じる。そのゆらぎの周波数は約3Hz〜6Hz程度の低周波帯域に強いスペクトルを持つという特徴がある。このため、フィルタ部FMのような約3Hz〜6Hz程度の帯域を通過させるバンドパスフィルタからの出力により、ゆらぎに伴う静圧変動成分を分離して捉えることができ、この出力が発生したことにより火災の発生を判定することができる。また、ゆらぎに伴う静圧変動は上述の熱変動同様に低周波側へ移行する性質を示す。これからも火災発生を判定することができる。
【0051】
このように、火災に伴う静圧変動の識別に用いる約3Hz〜6Hz程度の周波数帯は、火災に伴う温度変化の識別に用いる約0.1Hz以下の周波数帯よりも高周波側である。
フィルタ部FLおよびフィルタ部FMからの出力信号はそれぞれ増幅器30により増幅された後に加算されて信号SNとなる。
【0052】
なお、以上の火災に伴う静圧および動圧の変動については、たとえば、大原,脇,岸田,渡辺,「火災に伴う室内圧力変動による火災感知システム」,Bulletin of Japanese Association of Fire Science and Engineering,1997年,第47巻,第1・2号に詳細が記載されている。
【0053】
不審者の侵入に伴う静圧変動について述べる。不審者が侵入してくる扉は、蝶番式の扉のように、回転軸まわりにスイング、または回転するタイプの扉であると仮定する。扉の一度の開閉により、室内に静圧変動が生じる。この静圧変動は、開動作の速さにもよるが7Hz〜10Hz程度の周波数帯において現われる。したがって、フィルタ部FIのようなこの周波数帯の信号を通過させるバンドパスフィルタからの出力により扉の開閉に伴う静圧変動成分を分離して捉えることができ、扉の開閉を判定することができる。また、扉の開閉に伴う静圧変動の波形は、ある時間で単発的に変化が生じるという特徴を持つ。この特徴からも扉の開閉は判定できる。
【0054】
扉の開閉に伴う静圧変動の識別に用いる7Hz〜10Hz程度の周波数帯は、火災に伴う静圧変動の識別に用いる3Hz〜6Hz程度の周波数帯よりも高周波側である。
フィルタ部FIからの出力信号は増幅器30により増幅されて信号SIとなる。
【0055】
不審者の侵入に伴うピッキングに関しては、扉の錠の鍵穴をこじ開ける際に特徴的な音響が発生する。このピッキングによる音響の周波数特性の波形は約10Hz〜15Hzにおいて特徴を持つ。したがって、フィルタ部FPのようなこの周波数帯の信号を通過させるバンドパスフィルタからの出力によりピッキングに伴う音響成分を分離して捉えることができ、ピッキングを判定することができる。また、上述の扉の開閉による静圧変動と同様にある時間で単発的に生じる変化であるという特徴も有する。
【0056】
ピッキングに伴う音響成分の識別に用いる10Hz〜15Hz程度の周波数帯は、扉の開閉に伴う静圧変動の識別に用いる7Hz〜10Hz程度の周波数帯よりもさらに高周波側である。
フィルタ部FPからの出力信号は増幅器30により増幅されて信号SPとなる。
【0057】
地震に伴う加速度に関しては、地盤、または建物の振動により、周波数0.5Hz〜10Hz程度の範囲においてスペクトル強度が高い周波数特性波形が、比較的広い周波数帯において発生する。したがって、地震に伴う加速度を識別するためのフィルタ部FEを、約0.5Hz〜10Hzの周波数帯の信号を通過させるバンドパスフィルタとして構成し、信号eから加速度成分を分離して識別する。
分離した加速度成分の周波数特性の振動振幅および時間等の情報から震度は決定される。
【0058】
地震に伴う加速度の識別に用いる約0.5Hz〜10Hzの周波数帯は、火災に伴う温度変化の識別に用いる約0.1Hz以下の周波数帯よりも高周波側、かつ、ピッキングに伴う音響成分の識別に用いる約10Hz〜15Hzの周波数帯よりも低周波側である。
フィルタ部FEからの出力信号は増幅器30により増幅されて信号SEとなる。
【0059】
判定部35は、入力される信号SN,SI,SP,SEのいずれが変化したかという情報と、その変化の特徴とに基づいて、どのような物理現象が発生したかを判定する。たとえば、上述のように地震による加速度識別に必要な周波数成分は火災に伴うゆらぎに起因する静圧変動の周波数成分と同じ帯域に存在するが、0.1Hz以下の周波数帯には存在しない。これにより地震の発生を判定できる。また、侵入に伴う扉の開閉に起因する静圧変動の周波数成分も地震判定のための周波数成分と同じ帯域に存在する。しかしながら、上述のように扉の開閉による静圧変動および地震による加速度の波形にはそれぞれ特徴があり、互いに異なっているため、このような波形の特徴から侵入と地震とを判別することができる。
このように、判定回路5のフィルタ部を適宜構成することにより、たとえば、火災、扉の開閉、ピッキングおよび地震等の物理現象の少なくともいずれか一つを判定することができる。複数の物理現象が重なったときも、各物理現象に関わる物理量を分離することができるため、重なって発生した物理現象を判定することができる。
判定部35は、判定結果を判定信号rgとして出力する。
【0060】
判定信号rgが出力されたときには、セキュリティに関わる物理現象が発生したことを意味しているため、たとえば、一律に警告を発生するようにする。
また、判定信号rgにより判定される物理現象の種類に応じて、スプリンクラーの作動やガスの遮断等の処理を行なうようにしてもよい。
【0061】
以上のように、本実施の形態に係る多変量検出センサ1においては、コンデンサマイクロフォン7の出力から、判定回路5のフィルタ部により各種の物理現象に伴う物理量の周波数成分を分離する。これにより、複数の物理量を単体の検出部3により検出して識別することが可能になる。
本実施の形態においてはコンデンサマイクロフォン7にチャンバ18を装着して、多変量検出センサ1の空気圧伝達関数HPFおよび電気伝達関数LPFが極低周波領域においても感度を有するように構成されるようにしている。また、光および熱を圧力に変換する変換手段としての黒色スポンジ19を設けているため、検出可能な物理量が増え、多変量検出センサ1をセキュリティセンサとして好適に利用することができる。複数のフィルタ部の遮断周波数を適宜設定しているため、各物理量の成分の分離精度を向上させることが可能である。
以上のように、本実施の形態においては、単体のセンサ1によって複数の物理量を識別して対象とする物理現象を判定することができる。また、センサ1の検出部3に用いるコンデンサマイクロフォン7には市販品を利用することができ、センサ1の構成が簡単である。このため、多変量を検出するためのセンシングシステムの規模およびセンシングシステムのコストの増大を大幅に抑制することができる。
【0062】
検証実験
以下、本実施の形態に係る多変量検出センサ1の性能を検証するための実験およびその結果について述べる。
【0063】
まず、セキュリティ対象である物理現象の検知を妨害する暗騒音(バックグラウンドノイズ)について調査した。暗騒音には、各種の生活雑音が含まれる。ここでは、暗騒音として多変量検出センサ1に影響を与えるテレビジョン(以下、テレビと略記。)とラジオの音、および換気扇による送風を考える。
検証実験は、図6に示すような木造ワンルーム住宅の一室において行なった。実験を行なった部屋の奥行きDは約2.0m、幅Wは約4.0m、高さHは約2.2mである。
暗騒音の測定は、以下の3つのケースにおいて行なった。
【0064】
(C1)通常状態:何もしない無人状態における暗騒音を計測する。
(C2)換気扇を稼動させた状態:図6に示すように部屋のコーナーに設置された換気扇42(22W)を稼動させた状態において計測する。換気扇42から多変量検出センサ1までの直線距離DS1は約1.5mである。
(C3)テレビ・ラジオをつけた状態:多変量検出センサ1から直線距離で約2m離れた場所に通常音量(60dB)のテレビおよびラジオを設置した状態において計測する。
【0065】
以上の各ケースにおいて、サンプリング間隔0.01s、データサンプル数1024点として多変量検出センサ1からの出力信号ebを計測した。スペクトルが必要な場合には高速フーリエ変換処理により求めた。その結果得られた周波数特性を図7に示す。
【0066】
図7において、(a)がケース(C1)の結果を表わし、(b)がケース(C2)の結果を表わし、(c)がケース(C3)の結果を表わしている。図7(a)〜(c)の各周波数特性のグラフにおいて、横軸は全て周波数[Hz]を表わし、縦軸はスペクトルの強度を表わしている。
図7(a)〜(c)から明らかなように全てのケースにおいて暗騒音によるスペクトルレベルは1.0×10-3V〜1.5×10-3V程度であり、後述するセキュリティ対象の物理現象発生時のスペクトルレベルの1/100程度であった。このため、暗騒音が存在したとしても、対象とする物理現象を高精度に判定可能であると考えられる。
【0067】
火災判定の検証実験について述べる。
火源40には2500kcal/h(約10465kJ/h)のガスレンジを用いた。計測開始2秒後に着火し、約20秒間(2048サンプル)計測した。図6に示すように、火源40から多変量検出センサ1までの直線距離DS2は約2mとした。その結果を図8に示す。
【0068】
図8において、(a)は得られた出力電圧の信号eの時系列データ、(b)はそのスペクトルのグラフである。また、(c)はフィルタ部FLを通過した時系列データ、(d)はフィルタ部FMを通過した時系列データのグラフをそれぞれ示している。
図8(a),(c),(d)の各グラフの横軸は時間[sec]であり、縦軸は電圧[V]である。また、図8(b)の横軸は周波数[Hz]であり、縦軸はスペクトル強度である。
【0069】
図8(c)に示すように温度上昇による熱変動(動圧変動)が観測される。また、図8(d)に示すように火炎のゆらぎによる静圧変動が観測される。
熱変動に関わる周波数帯域は暗騒音の帯域と重なるが、熱変動によるスペクトルの大きさは暗騒音によるスペクトルの大きさの200倍以上である。
【0070】
また、窓を開けた密閉性の悪い状態における計測も行なった。その結果は図示しないが、温度変化の波形には大きな変化は見られなかった。一方、静圧変動の波形は大きく影響され、窓を開けた状態では振幅はほぼ半分程度となった。このように、環境の変動に対する性能、即ち環境性能は静圧変動についてはある程度低下するが、火災検出できないレベルではない。
図8(c)に示すような熱変動に関しては、既存の報知器と同様にたとえば65℃〜75℃において反応する判定基準を判定部35について設定することができた。
図8(d)に示すような静圧変動に関しては、誤動作の要因としてガスレンジ等の炎を発する道具の火炎が考えられるが、フィルタ部FMの通過周波数帯をより低周波側に設定することにより火災を判定することは可能である。
【0071】
次に、不審者の侵入判定の検証実験について述べる。
扉の開閉に関しては、計測開始3秒後に扉の開操作を行ない、計測開始約15秒後に閉操作を行なった。急速(0.5秒以下での開操作)、通常(1秒程度の開操作)、緩慢(2秒以上14秒以下)の3種類の開操作の場合について計測した。図6に示すように、扉37と多変量検出センサ1との位置関係は、扉37のノブの鍵穴39からセンサ1までの直線距離DS3が約2mとなるように設定した。このときの結果を図9に示す。
【0072】
図9において、(a)は急速に扉37を開閉したときに得られた出力電圧の信号eの時系列データ、(b)はそのスペクトルのグラフである。また、(c),(d)はそれぞれ通常、緩慢に扉37を開閉したときの信号eの時系列データのグラフである。
図9(a),(c),(d)の各グラフの横軸は時間[sec]であり、縦軸は電圧[V]である。また、図9(b)の横軸は周波数[Hz]であり、縦軸はスペクトル強度である。
【0073】
図9(a),(c),(d)のグラフから明らかなように、扉37を開く速度が高いほどグラフの波形の振幅は大きくなる。実際の侵入において、扉37の開操作はさらに遅いことも想定されるが、本実施の形態に係る多変量検出センサ1は前述のように極低周波領域まである程度の感度を有しているため、開閉動作の検出は可能である。
【0074】
時系列データを比較すれば、火災に起因する信号は図8(a)のように継続的に変動するのに対し侵入に起因する信号の変化は瞬時的であるといえる。このため、扉37の開閉に関する静圧変動のスペクトルと火災による静圧変動のスペクトルとをフィルタにより分離することが困難な場合にも、時系列データの特性の差異に基づいて火災と侵入とを区別して判定することができる。
【0075】
侵入に関わるセンサ1の環境性能については、侵入に際して発生する物理量は静圧変動であるため、室内の窓を開け密閉性の悪い状態において計測を行なった。図示はしないが、計測結果から出力電圧波形の振幅が半分程度になるものの検知は十分に可能であることを確認した。
【0076】
侵入におけるピッキングに関しては、扉37の錠の鍵穴39を対象とする。(I)鍵穴39に鍵を差す、(II)鍵をこじる、(III)鍵を回し込む、の各動作を行ない、そのときの音圧を計測した。上述のように、多変量検出センサ1から鍵穴39までの直線距離DS3は約2mとした。
そのときの結果を図10に示す。
【0077】
図10(a)は得られた出力電圧の信号eの時系列データ、図10(b)はそのスペクトルのグラフである。
図10(a)のグラフの横軸は時間[sec]であり、縦軸は電圧[V]である。また、図10(b)のグラフの横軸は周波数[Hz]であり、縦軸はスペクトル強度である。
【0078】
図10(a)における(I)〜(III)の各波形が上記(I)〜(III)の各動作に対応している。また、図10(b)に示すように、10Hz〜15Hzの周波数帯において固有の変動が現われている。この周波数帯も暗騒音の周波数帯と重なっているが、ピッキングによるスペクトルの大きさは暗騒音のスペクトルの大きさの100倍程度である。換気扇・テレビ・ラジオ等の道具を稼動させた状態において計測を数回行なったが、得られたデータに違いはほとんどみられなかった。また、ピッキング動作の強弱によるデータの変化を調査したが、これも暗騒音による影響が及ぶほどの違いはみられなかった。
したがって、本実施の形態における多変量検出センサ1によってピッキングを判定することができるといえる。
【0079】
地震の判定に関しては、図4(b),(c)に関連して述べたように、本実施の形態に係る多変量検出センサ1は、地震の周波数帯に含まれる1.5Hz程度の周波数における加速度を検出可能である。したがって、多変量検出センサ1を用いて地震を判定することができる。
【0080】
本実施の形態に係る多変量検出センサ1は、光を圧力に変換することができる。このセンサ1により実際に光をどのように計測できるかの実験を行なった。
センサ1を60Wの白熱電球から約2.5mの位置に設置し、計測開始5秒後から10秒間光を照射させた。
その結果を図11に示す。
【0081】
図11(a)は得られた出力電圧の信号eの時系列データ、図11(b)はそのスペクトルのグラフである。
図11(a)のグラフの横軸は時間[sec]であり、縦軸は電圧[V]である。また、図11(b)のグラフの横軸は周波数[Hz]であり、縦軸はスペクトル強度である。
【0082】
図11(a),(b)から明らかなように、出力は微分特性を持つ。
図11(a)に示されるように、白熱電球のオンとほぼ同時に正のパルス、オフとほぼ同時に負のパルスが現われている。このような特性から、センサ1が設置されている空間に光が照射されたか否かを判定することができる。センサ1の光の検出精度は高く、光センサとしても使用可能である。その結果、たとえば、センサ1を用いてセキュリティ対象空間における光の有無を監視することができ、セキュリティシステムの要素としてセンサ1を使用可能であるとも言える。
【0083】
以上述べたように、本実施の形態に係る多変量検出センサ1を用いて、出力信号から、アナログ信号処理によって対象とする物理現象に関わる物理量の成分を分離することができる。
そして、分離した各物理量の成分ごとに、時系列データとその周波数特性とを適宜組み合わせることにより、発生した物理現象を判断することができる。
【0084】
なお、本発明は上記実施の形態の内容に限定されない。たとえば、家屋のセキュリティに限らず、車のセキュリティセンサとして本発明を適用してもよい。車のセキュリティセンサとして用いる場合には、たとえば、衝突やドアのピッキング、侵入、キャビン内の温度・光等に係る物理量を検出することができる。
セキュリティに限定せず、たとえば、動物の生態調査等の分野に本発明を適用することもできる。また、たとえば、圧力や加速度等の特定の物理現象のみの検出に本発明を用いてもよい。
【0085】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、単体で多変量を検出することが可能であり、かつ構造が簡単な多変量検出センサを提供することができる。
また、本発明によれば、上記多変量検出センサの出力から目的とする物理量にそれぞれ対応する出力を分離して複数の物理量を識別する物理量識別方法を提供することもできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)は本発明の一実施の形態に係る多変量検出センサの全体構成図であり、(b)は(a)に図解の多変量検出センサに用いるコンデンサマイクロフォンの概略的な断面図である。
【図2】図1に図解の多変量検出センサにおける入出力関係を表わすブロック線図である。
【図3】(a)は図1に図解の多変量検出センサを圧力センサとして利用した場合の周波数特性のグラフであり、(b)は周辺温度に対する出力電圧の特性のグラフであり、(c)は照射された光の照度に対する出力電圧の特性のグラフである。
【図4】(a)は図1に図解の多変量検出センサを加速度センサとして利用した場合の周波数特性のグラフであり、(b)はその場合の出力信号の時系列データ、(c)はそのスペクトルのグラフである。
【図5】図1に図解の多変量検出センサにおける判定回路の機能的構成図である。
【図6】図1に図解の多変量検出センサの検証実験における実験環境を示す図である。
【図7】暗騒音の計測結果を表わすグラフであり、(a)は何もしない通常状態、(b)は換気扇を稼動させた状態、(c)はテレビおよびラジオをつけた状態における計測結果をそれぞれ表わしている。
【図8】火災の判定実験結果を表わすグラフであり、(a)は出力の時系列データ、(b)はそのスペクトル、(c)は遮断周波数0.1Hzのローパスフィルタを通過した時系列データ、(d)は通過周波数3Hz〜6Hzのバンドパスフィルタを通過した時系列データのグラフをそれぞれ表わしている。
【図9】扉の開閉の判定実験結果を表わすグラフであり、(a)は急速に扉を開閉したときの出力の時系列データ、(b)はそのスペクトル、(c)は通常の開閉、(d)は緩慢な開閉における出力の時系列データのグラフをそれぞれ表わしている。
【図10】ピッキングの判定実験結果を表わすグラフであり、(a)は出力の時系列データ、(b)はそのスペクトルのグラフをそれぞれ表わしている。
【図11】光の判定実験結果を表わすグラフであり、(a)は出力の時系列データ、(b)はそのスペクトルのグラフをそれぞれ表わしている。
【符号の説明】
1…多変量検出センサ
3…検出部
5…判定回路
7…コンデンサマイクロフォン
9…筐体
11…エレクトレットフィルム
12…対向電極
14…トランジスタ
18…チャンバ
19…黒色スポンジ(変換手段)
vl…漏れ
Claims (5)
- エレクトレットフィルムの変位量に応じて変化する静電容量の値を、トランジスタを介して電圧信号に変換して出力するコンデンサマイクロフォンと、
前記コンデンサマイクロフォンの筐体と前記エレクトレットフィルムとの間に空気の漏れを存在させて前記コンデンサマイクロフォンに密着され、当該コンデンサマイクロフォンの周波数特性を低周波側に広げる所定容積の透光性のチャンバと、
前記チャンバ内に収容され、前記チャンバを介して伝播される光および熱を圧力に変換して前記エレクトレットフィルムを変位させる変換手段と
を有し、
前記エレクトレットフィルムの永久電荷量、単位面積あたりのばね定数、質量をそれぞれQ,k,m、前記チャンバの容積をV、前記チャンバ内の空気のモル数をn、空気のガス定数をR、前記静電容量をCc、前記トランジスタの入力インピーダンスをRc、前記漏れの流量抵抗をr、前記変換手段への光の照射による輻射熱発生係数をCrとしたときに、
電気伝達関数LPFと前記コンデンサマイクロフォンの空気圧伝達関数HPFとがそれぞれLPF=((Q/Cc)/(1+sCcRc))、HPF=srV/(1+srV)となり、
前記コンデンサマイクロフォンの周囲の静圧変動Psと動圧変動Pd、音響Po、前記エレクトレットフィルムに発生する加速度a、前記変換手段への光の照射量lおよび前記変換手段の周囲の温度変化量Tが、前記空気圧伝達関数HPFに(Ps+Pd+Po+(m/k)a+nR(Cr・l+T)/V)として入力され、前記空気圧伝達関数HPFの出力が前記電気伝達関数LPFの入力になるように
前記コンデンサマイクロフォンと前記チャンバと前記変換手段とを構成した
多変量検出センサ。 - 前記コンデンサマイクロフォンから出力された前記電圧信号から得られる時系列データと該時系列データの周波数特性との組み合わせに基づいて、前記静圧変動、前記動圧変動、前記音響、前記加速度、光の照射および温度変化に関わる物理現象をそれぞれ判定する判定手段
を有する請求項1に記載の多変量検出センサ。 - 前記判定手段が判定する前記物理現象は火災、扉の開閉、ピッキングおよび地震の少なくともいずれか一つであり、
前記周波数特性のうち、前記判定手段が火災に伴う前記温度変化の識別に用いる第1の周波数帯よりも火災に伴う前記静圧変動の識別に用いる第2の周波数帯が高周波側であり、
前記第2の周波数帯よりも前記判定手段が扉の開閉に伴う前記静圧変動の識別に用いる第3の周波数帯が高周波側であり、
前記第3の周波数帯よりも前記判定手段がピッキングに伴う前記音響の識別に用いる第4の周波数帯がさらに高周波側であり、
前記判定手段が地震に伴う前記加速度の識別に用いる第5の周波数帯は、前記第1の周波数帯よりも高周波側かつ前記第4の周波数帯よりも低周波側である
請求項2に記載の多変量検出センサ。 - エレクトレットフィルムの変位量に応じて変化する静電容量の値を電圧信号に変換して出力するコンデンサマイクロフォンと、前記コンデンサマイクロフォンの筐体と前記エレクトレットフィルムとの間に空気の漏れを存在させて前記コンデンサマイクロフォンに密着され、当該コンデンサマイクロフォンの周波数特性を低周波側に広げる所定容積の透光性のチャンバと、前記チャンバ内に収容され、前記チャンバを介して伝播される光および熱を圧力に変換して前記エレクトレットフィルムを変位させる変換手段とを有するセンサから、該センサの周囲の静圧変動、動圧変動、音響、前記エレクトレットフィルムに発生する加速度、前記変換手段への光の照射および前記変換手段の周囲の温度変化に応じて出力される前記電圧信号を取得し、
前記電圧信号の時系列データおよび該時系列データの周波数特性を取得し、
前記時系列データと前記周波数特性との組み合わせに基づいて、前記静圧変動、前記動圧変動、前記音響、前記加速度、前記光の照射および前記温度変化をそれぞれ識別する
物理量識別方法。 - 前記周波数特性のうちの所定の周波数以下の第1の周波数帯の特性を用いて火災に伴う前記静圧変動を識別し、
前記第1の周波数帯よりも高周波側の第2の周波数帯の特性を用いて火災に伴う前記温度変化を識別し、
前記第2の周波数帯よりも高周波側の第3の周波数帯の特性を用いて扉の開閉に伴う前記静圧変動を識別し、
前記第3の周波数帯よりも高周波側の第4の周波数帯の特性を用いてピッキングに伴う前記音響を識別し、
前記第1の周波数帯よりも高周波側かつ前記第4の周波数帯よりも低周波側の第5の周波数帯の特性を用いて地震に伴う前記加速度を識別する
請求項4に記載の物理量識別方法。
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