JP4356307B2 - 低温貯蔵方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、積雪を利用した低温貯蔵方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
雪の冷熱エネルギーを利用した低温貯蔵施設は、貯蔵のための定常的電力を不要とするため、省エネ型の貯蔵施設である。この貯蔵方式としては、雪室(氷室)、人工凍土、アイスシェル、アイスシェルター、アイスボンド、雪中(雪下)貯蔵など、各種のタイプの貯蔵形式が考案され、低温で穀物などの貯蔵物を貯蔵するための実用施設として使用されつつある(特許文献1参照)。
【0003】
この種の雪を利用する低温貯蔵施設において、例えば、貯蔵物が貯蔵された状態で輸入されたコンテナをそのまま貯蔵施設に配置し、その外周囲にあたかも「かまくら」のように、雪で覆った状態とすることにより、穀物を輸入したままの状態、かつ輸送のみの手間で、豪雪地帯においては、降り積った雪を除雪作業をすることなく放置するか、あるいは除雪した雪をコンテナの外周囲に盛り立てて放置すればよいので、積み替えの手間が省け、敷地さえあれば格別な備蓄施設が不要となるため、最も簡単かつ安価な低温保存方法となる。
【0004】
【特許文献1】
特許第2643032号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、このような積雪を利用した貯蔵施設においては、季節の進行により外気温が高まり、日射の影響が強くなると、貯蔵庫周囲を覆っていた雪が溶け出すが、このような季節にこそ積雪状態が長く保たれる必要性が高まる。
【0006】
しかしながら、図(a)に示すように、平坦な敷地に設置されたコンテナ1の周囲に雪2をかまくら状に覆った場合、融雪時期になって雪が溶け出した状態では、(b)に示すように、コンテナ1の屋根部1aに覆った状態で順次溶け出すが、側壁面1b側の雪2は日射による側壁面1bの帯熱により、側壁面上部側に接する面が早く溶け出し、側壁面1bから離れた状態で山形に堆積しつつ順次溶けるため、低温保温性が失われやすい。
【0007】
一方、昼夜の気温差が大きい時期や地域では、(c)に示すように、屋根部1aと側壁面1bとの境界位置に堆積した雪が氷結し、また日射による側壁面1bの帯熱で側壁面位置の雪が溶け出し、氷結部分2aがアーチ状に連結したままの状態で側壁面1b側の雪が溶けて側壁面1bとの間に空洞ができ、同じく側壁面1bに対する低温保温性は失われるといった課題もある。
【0008】
本発明は、以上の技術課題を解決するものであって、その目的は、融雪時期において、表面から順に溶けだした雪が貯蔵庫の側壁面に密集することで、低温保温効果をより長期間持続できるようにした低温貯蔵方法を提供するものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するため、本発明は、低温貯蔵庫の設置ヤードとなる底面部と、この底面部に設置される貯蔵庫の側壁面との間に導入された雪を該側壁面側に集めるための前記底面部と連続する傾斜部とを備えた低温貯蔵施設を用いた低温貯蔵方法であって、前記貯蔵庫における屋根面の縁部に沿って屋根側積雪と側壁面側積雪とを縁切りするシート材を配置し、雪を前記貯蔵庫の周囲に集積する時に、垂れている前記シート材を立ち上げて展張し、この状態で前記シート材を雪の内部に埋設することを特徴とするものである。従って、本発明によれば、溶け出した雪が傾斜部に沿って滑り落ちることで貯蔵庫の側壁面から離れることなくこれに接した状態となるため、低温保温性を長期間保持できる。また、屋根と側壁面との境界部の氷結によるアーチ現象を防止でき、これにより昼夜の気温差があったとしても、滑り現象を生じさせ、雪を貯蔵庫の側壁面側に集積させることができる。
【0010】
本発明においては、前記傾斜部の傾斜面に滑り材を敷設することにより、雪が滑落しやすい状態とすることができる
【0011】
また、前記貯蔵庫は、スペーサを介して前記底面部に設置するとともに、前記底面部の周囲に排水溝を形成することが好ましい。従って、融水により貯蔵庫が水浸しとなることがなく、融水は順次下流側に排出される。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好ましい実施の形態につき、添付図面を参照して詳細に説明する。図1は本発明にかかる低温貯蔵施設を示すもので、この貯蔵施設10は、寒冷地の山間の地形を利用し、貯蔵庫となる複数の穀物コンテナ12が設置される敷地14を切り土または盛土により、底面部14aとその両側に直線ないしは円弧面の傾斜部14bを造成したもので(本実施の形態では、傾斜部を両側に設けたが一方であってもよい)、中央の底面部14aを複数のコンテナ12のストックヤードとしている。
【0013】
コンテナ12は、一般的な貨物流通に使用されるISO規格に適合した縦横高さ寸法のドライコンテナ、上部を開口し、その開口よりクレーンにより荷役可能としたオープン・トップコンテナ、あるいは冷凍輸送に用いられるリーファコンテナ(断熱材が内張りされ、冷凍機などの保冷設備を備えたもの)であり、前2種は融雪時期までを貯蔵期間とする場合に好適であり、また、後者は融雪後保冷設備を稼働して貯蔵期間をのばす場合に好適である。いずれのコンテナ12も、例えば輸入港のコンテナヤードから穀類などを満載した状態でトレーラ車により貯蔵施設10まで輸送され、ストックヤードに一冬を過して所定期間ストックされる。勿論、貯蔵施設に設置してからコンテナ12内に穀物等を貯蔵することもできる。
【0014】
前記底面部14aは平坦地であるが、奥行方向に向けて緩勾配となっており、底面部14aの中央におけるコンテナ12の設置位置には、角材の井桁組などによるスペーサ16を予め配置し、このスペーサ16上にトレーラ車により搬入されたコンテナ12を奥から順に設置することにより、コンテナ12を底面部14bの地表面より一段高い位置に位置させ、コンテナ12が、のちに融雪水に漬かることを防止している。なお、スペーサは簀子などであってもよいし、貯蔵庫がフォークリフトなどで可般の小型ボックス状のものであれば搬送用パレットなども採用可能である。
【0015】
また、以上の貯蔵施設10を恒久的設備とする場合には、上部側地表部に奥行方向に沿って移動可能なガントリークレーンなどを配備し、施設搬入口などでトレーラ車から受取って所定位置に吊りおろすようにしてもよいし、一時的施設である場合には、クローラクレーンなどを用いて荷役作業を行ってもよい。
【0016】
さらに、底面部14aの両側には底面部14aの勾配方向に沿って排水溝18が形成され、融雪水の水みちを確保している。
【0017】
前記傾斜部14bの法勾配は30〜45°と、この部分に集雪した雪の滑りやすい急勾配で造成され、またその表面にはさらに雪を滑りやすくするために、ビニールシートなどの滑り材20を敷設し、その上縁を上部側地表部の端縁に固定工22などにより固定している。なお、ビニールシートに換えて表面滑性のある合成樹脂製波形板を一面に敷設してもよい。
【0018】
そして、搬入されたコンテナ12の屋根部12aの両側縁には、仕切りとなるシート材24が配置される。このシート材24は、屋根部12aの防水性を保持するとともに、融雪時に屋根部12aと側壁面12b間の境界部における雪の結氷を防止し縁切りするもので、これを屋根部12aの全面に敷設し、その両側を側壁面に12bに垂らしておき、積雪があった時に垂れた両側部24aを上部側に展張するものである。展張作業は、例えば、図示しないポールにシートの端部を引っかけることによって容易に行うことができる。
【0019】
以上の低温貯蔵施設10にコンテナ12を配置した後、積雪時期になると、図2(a)に示すように、自然降雪毎に、コンテナ12の屋根部12aおよび側壁面12bと傾斜面12bとで囲われる空間部に雪2が順次積雪する。ある程度積雪したら(b)に示すように、上部側地表面にたまった雪2をかき集め、強制的にコンテナ12の周囲に雪2を集積することもできる。この集積時に、垂れている仕切り24の両側面を立ち上げて展張し、この状態で雪2の内部に埋設しておく。以後は自然降雪状態で放置し、冬期の間、各コンテナ12を雪2による低温下に保存する。
【0020】
次いで、春先の融雪時期が到来すると、(c)に示すように、雪2は表面から溶け出し、その融雪水は上部側地表部あるいは底部14aの排水溝18を伝ってその勾配方向に流下し、気温の上昇とともに減容化する。そして側壁面12b側においては、残雪は傾斜部14bの傾斜面を滑って側壁面12bに密着状態に集雪し、コンテナ12の側壁面との間に空洞を作ることがない。
【0021】
また、この頃になると、展張していた仕切り24の両側部24aは自重により再度垂れ、側壁面12bの上部側に日陰を作り、日射による側壁面12bの帯熱を防止する。これと同時に、昼夜温度差が大きくとも再結氷による屋根と壁との境界位置におけるアーチ現象も防止され、これによって低温保温期間を従来よりも長期とすることができるのである。
【0024】
なお、以上の実施形態では低温貯蔵施設10の底面部14aの開口幅をコンテナ12を縦一列に収容する間口幅としたが、縦または横に複数台分収容できる間口幅とすることもできることは勿論である。
【0025】
【発明の効果】
以上の説明により明らかなように、本発明による低温貯蔵方法によれば、融雪時期において、表面から順に溶け出した雪が貯蔵庫の側壁面側に集まることで、低温保温効果をより長期間持続できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の低温貯蔵施設を示す鳥瞰図である
【図2】(a)〜(c)は同施設に対する積雪および融雪時期を示す正面図である。
【図】(a)はかまくら式に貯蔵庫を雪で覆った場合を示す正面図、(b),(c)は同融雪時における不具合を示す正面図である
【符号の説明】
2 雪
10 低温貯蔵施設
12 コンテナ(貯蔵庫)
12a 屋根部
12b 側壁面
14 敷地
14a 底面部
14b 傾斜部
16 スペーサ
18 排水溝
20 滑り材
4 シート材

Claims (3)

  1. 低温貯蔵庫の設置ヤードとなる底面部と、この底面部に設置される貯蔵庫の側壁面との間に導入された雪を該側壁面側に集めるための前記底面部と連続する傾斜部とを備えた低温貯蔵施設を用いた低温貯蔵方法であって、
    前記貯蔵庫における屋根面の縁部に沿って屋根側積雪と側壁面側積雪とを縁切りするシート材を配置し、雪を前記貯蔵庫の周囲に集積する時に、垂れている前記シート材を立ち上げて展張し、この状態で前記シート材を雪の内部に埋設することを特徴とする低温貯蔵方法
  2. 前記傾斜部の傾斜面に滑り材を敷設することを特徴とする請求項1に記載の低温貯蔵方法
  3. 前記貯蔵庫、スペーサを介して前記底面部に設置するとともに、前記底面部の周囲に排水溝を形成することを特徴とする請求項1又は2に記載の低温貯蔵方法
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