JP4349669B2 - アンモニア測定用液状試薬 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、試料中の生体物質に由来するアンモニアの測定用液状試薬に関する。本発明の試薬は耐熱性グルタミン酸デヒドロゲナーゼを含み、液体状であることを特徴とする。
【0002】
本発明はさらに、前記測定試薬を用いることを特徴とする、生体物質に含まれるアンモニアの測定方法に関する。
【0003】
【従来の技術】
例えば、尿素、クレアチン等のように、アンモニアを生成する生体物質の含有量を測定する場合に、先ず当該生体物質からアンモニアを発生させて、生じたアンモニアの量および/または当該生体物質の量を測定することができる。
【0004】
グルタミン酸デヒドロゲナーゼ(以下、「GLDH」と言う)は、以下の式(1):
【0005】
【化1】
で表される反応を触媒する酵素であり、動植物、微生物に広く分布している。プロテウス属、バチルス属、サーモコッカス属等の細菌を含む、種々の起源に由来するGLDHが知られてり、グルタミン酸の定量、臨床診断等への応用酵素として生化学的、医学的分野においても近年特に注目されている。GLDHの酵素活性はアンモニアを反応成分の一つとするので、当該酵素を用いて生体物質から生じたアンモニアおよび/または当該生体物質の量の量を測定することが可能である。
【0006】
近年、多くの臨床検査用測定試薬組成物が、凍結乾燥された粉末から溶液状のものに置き換えられる傾向にある。これは多忙な臨床検査業務の現場において、粉末状の測定試薬組成物を、使用の都度、溶液に溶かす作業過程が省略され、現場の負担が軽減されるからである。GLDHに関しても簡便な液体状の試薬の開発が希求されている。
【0007】
しかし、GLDHを含む液状試薬を開発する場合、NAD(P)H(還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(リン酸))の安定性のために要求されるアルカリ条件の溶液を使用すると、GLDHの失活が早く長期保存が困難であるという問題を伴う。また、保存時の偶発的温度変化に対する安定性の面からも長期間保存に適したものが得られていなかった。
【0008】
よって、本発明前には保存時の温度変化に対する安定性、アルカリpH溶液中における反応性、安定性に優れたGLDHを含む液状試薬は得られていなかった。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、耐熱性グルタミン酸デヒドロゲナーゼを含む、アンモニアを生成する生体物質(以下、「アンモニアを反応生成物とする生体物質」と言う)に由来するアンモニアを測定するための液状試薬を提供する。
【0010】
本発明のアンモニア測定用液状試薬は、一態様において、耐熱性グルタミン酸デヒドロゲナーゼがピロコッカス属、好ましくはピロコッカス・フリオザスに由来する。
【0011】
本発明のアンモニア測定用液状試薬は、一態様において、アンモニアを反応生成物とする生体物質が尿素またはクレアチンである。
【0012】
本発明は、また、アンモニアを反応生成物とする試料中の生体物質に由来するアンモニアの測定方法であって、試料中の前記生体物質からアンモニアを生じさせ、そして当該アンモニアの量を上記アンモニア測定用液状試薬によって測定する、ことを含む前記方法を提供する。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記従来の問題解決のために鋭意研究の努めた結果、耐熱性GLDHが、保存時の温度変化に対する安定性、アルカリ溶液安定性を示し、溶液中で高い酵素活性を長期間維持することを見いだした。そして、アンモニアを反応生成物とする生体物質の測定系に、前記耐熱性GLDHを採用することにより本発明を完成するに至った。即ち、本発明は、アンモニアを反応生成物とする試料中の生体物質に由来するアンモニアを測定するための液状試薬として、耐熱性GLDHを使用することを特徴とする。
【0014】
一般にGLDHとは、グルタミン酸を酸化して2−オキソグルタル酸とアンモニアを生じる反応を触媒する酵素であり、酵素番号1.4.1.2.、1.4.1.3.、1.4.1.4.が挙げられ、前述した式(1)に示す反応を触媒する。酵素番号1.4.1.2.の酵素は、NAD+(酸化型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)に特異的で、動物組織、植物、細菌に分布している。酵素番号1.4.1.3.の酵素は、NAD+とNADP+(酸化型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸る)の両方と反応性を有し、動物の肝・腎臓のミトコンドリアに局在している。酵素番号1.4.1.4.の酵素は、酵母、細菌中にありNADP+に特異的である。
【0015】
本発明は、アンモニアを反応生成物とする生体物質の定量方法において、このGLDHの活性を利用するものである。より詳細には、先ず、尿、血液、血清、血漿、膵液等の試料に存在する内因性アンモニアを、2−オキソグルタル酸、NAD(P)H及びGLDHを別々に任意の順序で、または同時に作用させることにより除去し、次に酵素反応等によって該試料に含まれる生体物質からアンモニアを生成させ、内因性アンモニアの場合と同様に2−オキソグルタル酸、NAD(P)H及びGLDHを別々に任意の順序で、または同時に作用させる。そして、例えば、NADPHの減少速度を340nm付近における吸光度で測定することにより、生体物質由来のアンモニアの量を定量する。
【0016】
本発明の対象となるアンモニアを反応生成物とする生体物質は、限定されるわけではないが、尿素、クレアチンなどが含まれる。例えば、尿素の場合、以下の式(2)ような反応によって尿素に由来するアンモニアの量を測定することができる。
【0017】
【化2】
【0018】
耐熱性GLDH
本発明は上記反応において耐熱性GLDHを用いるものである。限定されるわけではないが、古細菌のピロコッカス属に由来するGLDHが好ましく、特に、超好熱菌として広く知られるようになった、ピロコッカス・フリオザス(Pyrococcus furiosus)が好ましい。ピロコッカス・フリオザスは、95℃、10分間の熱処理を行っても酵素活性が保持される。また、アルカリ条件下(例えば、pH9−11)で37℃1週間保存後でも80%以上安定である。具体的には、後述する実施例4では、例えば、pH9.3、37℃の条件下で2週間保存した場合でも、95%の活性が残存していた。
【0019】
ピロコッカス・フリオザス由来の耐熱性GLDHについては、Biochimica et Biophysica Acta.1120(1992)p.267−272;Biosci.Biotech.Biochem.57(6),p.945−951,1993;Gene 132(1993) p.143−148等に記載されている。また、ピロコッカス・フリオザスの代表的な菌株は、DSM(Deutsche Sammlung von Mikroorganismen,Mascheroder Weg 1b,D−3300,Braunschweig,FDR)にブタペスト条約の下、寄託番号DSM3638で国際寄託されている。さらに、工業技術院生命工学研究所(〒305 茨城県つくば市東1丁目1番3号)にもPyrococcus furiosus DSM3638(FERM BP−6159、1997年11月6日)として寄託されている。
【0020】
その他の耐熱性GLDH、例えばサーモコッカス属のサーモコッカス・リトラリス(Thermococcus litoralis)由来のGLDH(特開平6−327471号公報、APPLIED AND ENVIROMENTAL MICROBIOLOGY Feb.1994 p.562−568)も利用可能である。サーモコッカス・リトラリスのGLDHは、pH7.0−11.0で安定で、pH7.8が至適pHで高い活性が認められ、また90℃付近に作用適温を有し、pH7のとき10分間の熱処理で95℃までは安定である。また、ピロコッカスの場合と同様にアルカリ条件下で長期保存しても安定である。具体的には、例えば、後述する実施例4では、例えば、37℃で2週間保存した場合でも、90%の活性が残存していた。
【0021】
本発明の耐熱性GLDHは、限定されるわけではないが、ピロコッカス属、サーモコッカス属などを含む好熱性細菌等から公知の方法によって、抽出、精製することができる。例えば、ピロコッカス・フリオザスは前述したBiosci.Biotech.Biochem.57(6),p.945−951に記載された方法に準じて行うことが出来る。また、本発明の耐熱性GLDHは、遺伝子工学によって得られた組換え型GLDHであっても良い。当業者は本明細書の開示に基づいて容易に耐熱性GLDHを得ることができる。
【0022】
耐熱性GLDを含む液状試薬
本発明の液状試薬は、水性媒体中に耐熱性GLDHを含むことを特徴とする。耐熱性GLDHは、1単位/mlから100単位/ml、好ましくは、5単位/mlから20単位/mlの濃度で含まれる。この場合のGLDHの単位は、GLDHの活性測定の標準的な条件下、例えば、37℃、pH8.0で、1分間あたり1μmolのNADP+を生成する酵素の量を1単位とする。
【0023】
本発明の液状試薬はNAD(P)Hの保存中および/または反応中の安定性を保持するためアルカリ性、好ましくは、pH8−11、より好ましくはpH9−10であることが必要である。そのため、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン等の塩基を含むことが望ましい。塩基は、例えば、炭酸水素ナトリウムの場合、5mM−50mMの濃度で含む。
【0024】
本発明の液状試薬はさらに、所望により0.2mM−0.5mM、好ましくは0.3mM−0.4mMのNADPH、および1mM−20mM、好ましくは5mM−10mMの2−オキソグルタル酸を含む。これらは、液状試薬中に耐熱性GLDHと共にあらかじめ含まれていても、あるいは反応時に加えるように、別々の容器に含まれていてもよい。
【0025】
本発明はさらに、本発明の液状試薬とともに、尿素、クレアチン等からアンモニアを生成させるための酵素、例えばウレアーゼを別の容器に含んだ、測定キットも提供する。
【0026】
アンモニアを反応生成物とする試料中の生体物質に由来するアンモニアの測定方法
本発明の試薬を用いて、アンモニアを反応生成物とする試料中の生体物質に由来するアンモニアを測定することができる。具体的には、本発明の方法は、試料中の前記生体物質からアンモニアを生じさせ、そして当該アンモニアの量を本発明の液状試薬によって測定することを特徴とする。
【0027】
本発明の対象となるアンモニアを反応生成物とする生体物質は、分解、変換等の反応によってアンモニアを発生する生体物質であり、限定されるわけではないが、尿素、クレアチンなどが含まれる。好ましくは尿素である。
【0028】
本発明の試料は、前記生体物質を含む可能性のあるものであれば特に限定されず、尿、血液、血清、血漿、膵液等が含まれる。試料は、生体から得たものであっても、あるいは研究試薬等人為的に調製されたものであってもよい。
【0029】
本発明においては、先ず酵素反応等によって生体物質からアンモニアを生成させる。アンモニアを発生させる方法は公知の方法に従って行うことができる。例えば、生体物質が尿素の場合にはウレアーゼを用いることができる。またクレアチンの場合には先ず、水酸化バリウムの作用により尿素(およびサルコシン)を生成させ、さらにウレアーゼを用いることができる。ウレアーゼは例えば、25℃−40℃で、5分−1時間反応させる。当業者は生体物質に応じて容易に反応を選択することが可能である。
【0030】
次に、耐熱性GLDH、2−オキソグルタル酸およびNAD(P)Hを含む、本発明のアンモニア測定用液状試薬を作用させる。反応は、アルカリ条件下、pH8−11、より好ましくはpH9−10において行う。反応は、好ましくは25℃−40℃で、5分−1時間行う。
【0031】
上記反応により消費されたアンモニアの量は、公知の方法によって測定することができる。限定するわけではないが、例えば、NADPHは340nmにおいて特異的な吸収特性を有するので、当該波長における吸光度をGLDHを反応させる前後で測定し、その変化を既知量のアンモニアおよび/または生体物質を使用して得られたデータと比較することにより、生体物質由来のアンモニア、および/または生体物質の量を測定することができる。
【0032】
本発明の測定方法においては、生体物質からアンモニアを発生させる前に、試料中に既に存在する遊離のアンモニア(内因性アンモニア)をあらかじめ除去することが好ましい。内因性アンモニア除去のための前処理は、限定するわけではないが、本発明のアンモニア測定用液状試薬を、生体物質からアンモニアを発生させる反応の前に試料に添加することによって行うことができる。
【0033】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の技術的範囲を制限するためのものではない。当業者は本明細書の記載に基づいて容易に本発明に修飾、変更を加えることができ、それらは本発明の技術的範囲に含まれる。
【0034】
【実施例】
実施例1 ピロコッカス・フリオザスおよびサーモコッカス・リトラリス由来の耐熱性GLDHの抽出および精製
好熱性細菌ピロコッカス・フリオザス(DMS 3638)およびサーモコッカス・リトラリスから耐熱性GLDHを以下のように抽出・精製した。
【0035】
a.菌体培養
微生物の培養方法は、以下の表1に示す組成の培地を使用した。
【0036】
【表1】
表1 培地組成
(1L当り)
トリプトン 5g
酵母エキス 1g
NaCl 24g
MgCl2・6H2O 11g
Na2SO4 4g
CaCl2 2H2O 1.5g
KCl 0.7g
NaHCO3 0.2g
NaBr(KBr) 0.1g
H3BO3 0.03g
SrCl2・6H2O 0.025g
Na2WO4・2H2O 10μM
粉末硫黄 10g
Na 2 S・9H 2 O 0 . 5g
硫化ナトリウムの添加混合前に、塩酸でpH6.5±0.2に設定した。
【0037】
上記培地を作成後、95−98℃付近に設定したオーブン庫内にガラスベッセルに分注した培地を入れ、1−2時間加温した(本加温時はガス発生を考慮し密栓はしない)。ついで、絶対嫌気性の雰囲気を調製するため、N2ガスを吹き込み窒素ガス置換を行った後、予め溶かしていた硫化ナトリウム水溶液を培地に注ぎ培地を調製した。該調製培地に対して、1/20−1/10容量の添加を目安に前培養液の接種を行った後、上記の培養温度で嫌気培養を1終夜行った。
【0038】
b.耐熱性GLDHの抽出・精製
(1)抽出
培養終了後、遠心分離により微生物菌体を集菌した。その際、あらかじめ培地中に添加した粉末硫黄はナイロンメッシュにより取り除いた。集菌した菌体に、100−1000mL程度の抽出用緩衝液(1mM 2ME,0.5mM EDTA,0.02% NaN3および0.1mM PMSFを含む10mM K-PO4緩衝液(pH 7.5))を添加しよく懸濁した。その後、短時間の超音波破砕処理を行いGLDHを抽出をした。遠心分離により上清を回収しGLDH抽出液とした。
【0039】
(2)イオン交換クロマトグラフィ
先のGLDH抽出液を純水にて希釈し、そのイオン強度を平衡化用緩衝液(1mM 2ME,0.5mM EDTA,0.02% NaN3を含む10mM K-PO4緩衝液(pH 7.5))のイオン強度に調整した。次いで、DEAE−Sepharose CL6Bカラム(DI 5cm×10cmH,200 mLgel)に装填し、平衡化緩衝液にて充分に洗浄した。次いで、0−0.6MのNaCl溶液にて勾配溶出をおこなった。その結果、GLDHは、0.5MNaCl付近に単一なピークとして回収された。
【0040】
(3)疎水クロマトグラフィ
次いでイオン交換カラム溶出分画液中に1.5M硫安濃度になるようにpHを調整しながら粉末硫安を添加、溶解した。この時、生じた沈殿は遠心分離により除去した。上清をPhenyl-Toyopearl 650Cカラム(DI3cm×15cmH,100mLgel)に装填し、平衡化用緩衝液(1mM 2ME,0.5mM EDTA,0.02% NaN3および1.5M硫安を含む10mM K-PO4緩衝液(pH 7.5))にて充分に洗浄した。次いで、1.5−0Mの硫安溶液にて勾配溶出をおこなった。その結果、GLDHは、1M硫安付近に単一なピークとして回収された。
【0041】
(4)ゲル濾過クロマトグラフィ(HPLC)
疎水クロマトグラフィ溶出分画液を限外濾過膜(Amicon,PM10)を用いて濃縮試料を作製後、Tskgel G3,000SW(1インチカラム)東ソー製上にてゲルろ過クロマトグラフィをおこなった。その結果、GLDHは分子量300kDのところに単一なピークとしてアイソクラテック溶出された。
【0042】
HPLC条件を以下の表2に示す。
【0043】
【表2】
表2
HPLC装置 :CCPM(東ソー製)
流速 :3mL/分
検出 :280nmにおけるUV (UV8010,東ソー製)
平衡化緩衝液 :0.2 M NaClおよび0.02 % NaN3を含む100mM K-PO4バッファー(pH 7.0)
【0044】
c.耐熱性GLDHの活性
上記抽出・精製工程によって得られたピロコッカス・フリオザスおよびサーモコッカス・リトラリス由来の耐熱性GLDHの酵素活性を以下の表3に示す条件で測定した。
【0045】
【表3】
表3
測定温度;37℃
測定波長;340nm
反応液pH;8.0
活性単位は1分間あたり1μmolのNADP+生成量を1単位と定めた。
【0046】
その結果、上記の精製工程を通じて、40Lの菌体培養より精製GLDHがピロコッカス・フリオザス由来のものが5000単位、サーモコッカス・リトラリス由来のものが10,000単位得られた。得られた2種類の耐熱性GLDHの性質を以下の表4に示した。
【0047】
【表4】
表4
サーモコッカス・リトラリス ピロコッカス・フリオザス
分子量 300kD 300kD
サブユニット構造 6×50kD 6×50kD
至適pH pH7.5 pH 8.0
作用適温 90℃付近 90℃付近
37℃での作用反応性: 可能 可能
【0048】
実施例2 耐熱性グルタミン酸デヒドロゲナーゼを含む液状試薬を用いた尿素由来のアンモニアの測定
a.実施例1で得られた耐熱性グルタミン酸デヒドロゲナーゼを種々の濃度で含む液状試薬を用いて、尿素由来のアンモニアの測定を行った。
【0049】
アンモニア測定用液状試薬
各種濃度のピロコッカス・フリオザスまたはサーモコッカス・リトラリス由来のGLDH
20mM NaHCO3 (pH 9.3)
7mM 2−オキソグルタル酸
0.3mM NADPH
0.02% NaN3
アンモニア生成用試薬
100mM TEA-HCl (pH 8.0)
0.1% Briji−35
125mM Borax
60単位/mL ウレアーゼ
(タチナタマメ(jack bean)由来,TOYOBO)
【0050】
先ず、214mg/dlの尿素を含む試料15μlに、実施例1で得られた各種濃度のピロコッカス・フリオザスまたはサーモコッカス・リトラリス由来のGLDHを含む上記アンモニア測定用液状試薬を320μl反応させることにより、試料中に含まれる可能性のあるアンモニアを予備的に除去した。反応は37℃で5分間行った。次に、アンモニア生成用試薬を80μl加え、アンモニアの生成反応、並びに生成したアンモニアを用いたGLDH酵素反応を行った。反応は、37℃で5分行った。
【0051】
尿素に由来するアンモニアに対する応答性は、アンモニア生成用試薬を加える前後の吸光度変化量(△A340/分)として求めた。測定は自動分析機 コーバスファラ(ロシュ社製)を用いて行った。
【0052】
結果を図1に示す。その結果、ピロコッカス・フリオザス由来のGLDHは約10単位/ml以上、サーモコッカス・リトラリス由来のものは約100単位/ml以上の濃度でアンモニアを測定可能であることがわかった。
【0053】
b.また、耐熱性GLDHを10単位/mlを含むアンモニア測定用液状試薬を用いて、各種濃度の尿素(40mg/dl−450mg/dl)を含む試料を上記aと同様に測定した。結果を図2に示す。図2より本発明の試薬は尿素に由来するアンモニアを用量依存的に測定可能であることが判明した。
【0054】
実施例3 生体物質に由来するアンモニアの測定における内因性アンモニアの影響
試料に4mg/dlのアンモニアを加えた場合、生体物質に由来するアンモニアの測定に添加したアンモニア(内因性アンモニア)が影響を与えるか、否かについて検討した。
【0055】
アンモニア測定用液状試薬は、実施例2bで用いたピロコッカス・フリオザス由来のGLDHを10単位/mlを含むものを使用した。試料は、25mg/dlの尿素を含む市販のコントロール血清(日水製薬製)を用いた。測定は、アンモニア測定用試薬を反応させる前に、先ず、4mg/dlのアンモニアを試料に添加する点を除き、実施例2bと同様に行った。
【0056】
アンモニア生成用試薬を加える前後の吸光度変化を、30mg/dlの尿素を含む標準液を用いて得られた吸光度変化量より換算した。その結果、4mg/dlのアンモニアを加えた場合においても、加えない場合と同様に尿素の含有量25mg/dlと計測された。よって、アンモニア測定用液状試薬による前処理により、試料中にあらかじめ存在する内因性のアンモニアは完全に除去され、生体物質に由来するアンモニアの測定に影響を与えないことが示された。
【0057】
実施例4 耐熱性GLDHを含むアンモニア測定用液状試薬の保存安定性
10単位/mlの耐熱性GLDHを含む、実施例2のアンモニア測定用液状試薬の長期保存中の溶液安定性を、GLDH酵素活性の残存率として調べた。結果を以下の表5に示す。表5中のGLDHの残存活性率(%)はいずれも試薬調製時の活性を100としたときの値である。
【0058】
【表5】
【0059】
実施例5 組換え型耐熱性GLDHを含む液状アンモニア測定試薬の調製、並びに当該試薬を用いたアンモニアの測定
a.組換え型GLDHの調製
ピロコッカス・フリオザス由来の耐熱性GLDH遺伝子のクローニングおよび大腸菌での発現ならびに、発現された組換え型GLDHの精製方法については、Diruggiero J とRobb FT (1995) Appl. Environ. Microbiol Vol.61 No.1 page 159ー164に記載の方法に従っておこなった。
【0060】
得られた組換え型酵素標品の性質を、実施例1で調製した天然型GLDHと対比させた結果を以下の表6に示す。
【0061】
【表6】
【0062】
表6に示されたように、組換え型耐熱性GLDHは,その物理化学的および酵素的性状において天然型と同様なものであることが確かめられた。
【0063】
b.微量アンモニアに対する反応性
先ず、微量アンモニアに対する組換え型GLDHの反応性を、天然型GLDHと比較しながら検討した。反応液の組成は以下の通りである。
【0064】
反応液組成 (pH8.0)
1−10U/ml GLDH
100μM NH4Cl
7mM 2−オキソグルタル酸
0.3mM NADPH
【0065】
37℃5分間、加温反応させアンモニアとオキソグルタル酸をグルタミン酸へ変換する際に生じたNADPHの減少量を吸光度変化量から求め、添加GLDH量に対してプロットした。その結果を図3に示す。図3より、組換え型GLDHも天然型GLDHも微量アンモニアに対する反応性を示し、組換え型GLDHの方がより少量でも反応性を示すことが明らかとなった。
【0066】
c.尿素由来のアンモニアの測定
aで得られた組換え型耐熱性GLDHを含む液状試薬を用いて、尿素由来のアンモニアを測定した。測定は、実施例2と同様に、自動分析機 コーバスファラ(ロシュ社製)を用いて、37℃で測定波長340nmを用いて行った。
【0067】
アンモニア測定用液状試薬
GLDH 10U/ml
20mM NaHCO3(pH9.3)
7mM 2−オキソグルタル酸
0.3mM NADPH
0.02% NaN3
アンモニア生成用試薬
100mM TEA−HCl(pH8.0)
0.1% Briji−35
50mM CyDTA
10単位/ml ウレアーゼ(微生物(クレブシエラ属)由来)
【0068】
試料、アンモニア測定用液状試薬およびアンモニア生成用試薬を各々10μl:320μl:80μlの割合で用いて、実施例2と同様に試料中のアンモニアの測定を行った。
【0069】
尿素に由来するアンモニア中の窒素の濃度換算は、30mg/dL標準液の吸光度変化量より読み取り求めた。試料の希釈系列を作成して同様に窒素濃度を求める測定を行った。希釈系列の直線性度合いを、aで調製した組換え型GLDHと実施例1で調製した天然型GLDHの双方について調べた。
【0070】
結果を図4に示す。図4より組換え型および天然型のいずれも希釈系列を直線的に測定することが可能である。また本実施例では、天然型に比べて組換え耐熱性GLDHの方が希釈直線性が若干優れていた。
【0071】
【発明の効果】
上記の通り、本発明の液状試薬は、耐熱性GLDHを用いることにより、耐熱性、アルカリ溶液安定性に優れ、溶液中で高い酵素活性を長期間維持する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は、214mg/dlの尿素を含む試料を用いた場合の、GLDH量と吸光度変化量との関係を示す。
【図2】 図2は、10単位/mlのGLDHを用いた場合の尿素の検量線である。
【図3】 図3は、組換え型および天然型のGLDHを用いた場合の、100μlのNH4Clに対する反応性を示す。
【図4】 図4は、組換え型および天然型のGLDHを用いた場合の、尿素由来の窒素を含む試料の希釈系列の窒素濃度測定値を示す。
Claims (4)
- ピロコッカス・フリオザスに由来する、組換え型耐熱性グルタミン酸デヒドロゲナーゼを含む、アンモニアを生成する試料中の生体物質に由来するアンモニアを測定するための液状試薬であって、
100μMまたはそれ以下の濃度のアンモニアを測定可能であり、そして、
組換え型耐熱性グルタミン酸デヒドロゲナーゼの使用濃度が、1−10U/mLの範囲である、
ここにおいて、組換え型耐熱性グルタミン酸デヒドロゲナーゼは大腸菌を宿主として発現させたものであり、そして、以下の性質を有するものである:
分子量 300kD
サブユニット構造 6x50kD
至適pH pH7.5
作用適温 90℃付近
37℃での作用反応性 可能
pH安定性 3−11
熱安定性 80℃x20分間の熱処理でも失活せず
前記アンモニア測定用液状試薬。 - アンモニアを生成する生体物質が試料中の尿素またはクレアチンである、請求項1に記載のアンモニア測定用液状試薬。
- 組換え型耐熱性グルタミン酸デヒドロゲナーゼの使用濃度が、1−5U/mLの範囲である、請求項1又は2に記載のアンモニア測定用液状試薬。
- アンモニアを生成する試料中の生体物質に由来するアンモニアの測定方法であって、該試料中の前記生体物質からアンモニアを生じさせ、そして当該アンモニアの量を請求項1ないし3のいずれか1項に記載されたアンモニア測定用液状試薬によって測定する、ことを含む
ここにおいて、
前記アンモニア測定用液状試薬は100μMまたはそれ以下の濃度のアンモニアを測定可能であり、そして、
組換え型耐熱性グルタミン酸デヒドロゲナーゼの使用濃度が、1−10U/mLの範囲である、
前記方法。
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