次に、本発明の具体的な実施の形態を図面について説明すると、図1は立坑T1を掘削しているトンネル掘削機の簡略縦断正面図、図2はその掘削機本体部分の横断面図であって、トンネル掘削機は、先端にカッタヘッド2を回転自在に配設している前胴部1の外周四方にフロントグリッパ3をトンネル径方向に拡縮自在に配設してなる掘削機本体Aと、この掘削機本体1の上記前胴部1の基端面中央(図1においては上端面中央)に先端面を着脱自在に連結してなるメインビーム4と、このメインビーム4に該メインビーム4の長さ方向に移動自在に配設してなる後胴部5と、この後胴部5の外周面両側部にトンネル径方向に拡縮自在に配設してなるリアグリッパ6、6と、これらのリアグリッパ6と上記掘削機本体Aの前胴部1の基端外周部とを連結し且つ先端が前胴部2の基端外周面に着脱自在に取り付けられてなる推進ジャット7、7とから構成されている。
掘削機本体Aの上記前胴部1は、長さが掘削すべき立坑T1の径よりも短い筒状胴部1aをトンネル中心部に配設していると共にこの筒状胴部1aを該筒状胴部1aよりも短い長さに形成されている矩形枠部1bの中央円形孔の中心部に挿通し、矩形枠部1bの上端(基端)から筒状胴部1aの上端部を上方に突出させた状態で両者を一体に固着してなるものであり、この前胴部1の先端に回転自在に配設している上記カッタヘッド2の先端から上記筒状胴部1aの基端(上端)までの機長は、この掘削機本体Aによって掘削される立坑径(トンネル径)に等しいか、該立坑径よりも僅かに短い長さに形成されている。
上記前胴部1における矩形枠部1bの四方端面、即ち、掘削機本体Aの長さ方向に平行な四方の平坦な垂直面に上記フロントグリッパ3を配設している。このフロントグリッパ3は、トンネル長さ方向の長さが上記前胴部1における筒状胴部1aの長さに略等しい長さであって、且つ、その外面が周方向(幅方向)に掘削壁面の周方向と同じ湾曲度でもって湾曲している凸円弧状湾曲外面に形成した矩形状のグリッパシュー3aを矩形枠部1bの四方端面に複数本の傾斜ジャッキ3b、3cによってトンネル径方向に拡縮自在に装着してなる。
さらに、掘削機本体Aの直径方向に対向する互いに平行な二組のフロントグリッパ3、3において、一方の一組のフロントグリッパ3、3は、掘削機本体Aの軸心に直交する軸回りに回動自在に装着されてあり、他方の一組のフロントグリッパ3'、3'は、上記一方の一組のフロントグリッパ3、3と同様に、掘削機本体1の軸心に直交する軸回りに回動自在に装着しておいてもよいが、図においては、前胴部1の矩形枠部1bの互いに平行な面にそれぞれ回動不能に装着されている。
掘削機本体1の前胴部1における矩形枠部1bに対するこれらのフロントグリッパ3、3'の取付構造をさらに詳しく説明すると、矩形枠部1bの外周四方の上記垂直な四方端面に、図2に示すように固定台板3dを固着し、互いに平行な二組の固定台板3d、3dにおける一方の一組の固定台板3d、3d上に支持台3e、3eを重ね合わせてその中心部を固定台板3d、3dの中心に突設している支軸8に回動自在に枢着すると共にこれらの回動支持台3e、3eとグリッパシュー3a、3aとの対向面間を上記複数本の傾斜ジャッキ3b、3cによって連結している一方、他方の一組の固定台板3d、3dには支持台を設けることなくこの固定台板3d、3dとグリッパシュー3a、3aとの対向面間を複数本の上記傾斜ジャッキ3b、3cによって連結している。
なお、上記回動支持台3e、3eと掘削機本体Aとを支軸8を中心として相対的に回動させる回動駆動機構9としては、矩形枠部1b上に回動用モータを設置し、このモータの回転軸に固着したピニオンを回動支持台3e、3eに支軸8を中心として一体に設けている円形ラックに噛合させて上記回動用モータにより回動支持台3e、3eを上記支軸8回りに回動させるように構成しておいてもよいが、本発明の実施の形態においては、図7に示すように、上記一方の一組のグリッパシュー3a、3a又は回動支持台3e、3eの内面における上記支軸8の上方に対応する数カ所に連結金具9a、9aを固定しておくと共にこれらの連結金具9a、9aの上方側に位置する筒状胴部1aの垂直面に同じく一つの連結金具9bを固定しておき、これらの連結金具9a、9b間にジャッキ9cを連結して、該ジャッキ9cを作動させることにより、掘削壁面tに押し付けている上記一組のグリッパシュー3a、3aに対してこのグリッパシュー3aに傾斜ジャッキ3b、3cによって連結している回動支持台3e、3eを介して掘削機本体Aを支軸8回りに回動させるように構成している。
この場合、筒状胴部1a側の連結金具9bと支軸8とを結ぶ線上に回動用の上記ジャッキ9cの下端部を連結させている連結金具9aがくると、掘削機本体Aが回動不能となるので、該ジャッキ9cの下端を次の別な連結金具9aに盛り替えるように連結して掘削機本体Aをグリッパシュー3a、3aに対して支軸8回りに回動させるように構成している。なお、回動支持台3e、3eは通常は、取り外し可能なボルト(図示せず)によって固定台板3dに回動不能に固定されていて、グリッパシュー3a、3aの凸円弧状湾曲外面を掘削壁面tの周方向に向けた状態に保持している。
なお、上記のように、互いに平行な二組のフロントグリッパ3、3:3'、3'を掘削機本体Aの矩形枠部1bの四方に配設した状態においては、これらのフロントグリッパ3、3'のグリッパシュー3aはその先端面(前端面)を掘削機本体1の先端側に回転自在に配設しているカッタヘッド2の外周端縁に近接させた状態にしてカッタヘッド2の直後に対向させてあり、さらに、隣接するグリッパシュー3a、3aの対向側端面を互いに近接させてこれらの側端面間の間隔を小さくすることにより、掘削壁面tに対するグリッパシュー3a、3aの押し付け面積(圧着面積)を大きくして掘削壁面tの崩落を防止すると共にこれらのグリッパシュー3a、3aによる掘削機本体1の支持を確実に行わせるように構成している。
このように、上記グリッパシュー3a、3aの周方向の幅を大きくし且つこれらのグリッパシュー3a、3aをカッタヘッド2の直後に配設すると、上記一方の一組のフロントグリッパ3、3のグリッパシュー3a、3aを掘削壁面tに圧着させた状態で他方の一組のフロントグリッパ3'、3'のグリッパシュー3a、3aを収縮させたのち、上記回動駆動機構9によって掘削機本体Aを上記支軸8を中心としてそれまでの掘削方向に対して屈曲する方向に回動させると、掘削機本体Aの先端に設けている上記カッタヘッド2が掘削機本体Aと共に旋回動して掘削壁面tに圧着している上記一方の一組のグリッパシュー3a、3aの側部に当接して所定方向に向きを変えることができなくなる。
そのため、本発明の実施の形態においては、上記カッタヘッド2の旋回軌跡上に重なる側の上記一方の一組のフロントグリッパ3、3におけるグリッパシュー3a、3aの側部を切り離し可能な分割グリッパシュー片31とし、この分割グリッパシュー片31をグリッパシュー3aの分割側端面に着脱自在に連結してあり、この分割グリッパシュー片31をグリッパシュー3aから取り外すことにより、その取り外したことによって生じる空間部に旋回動するカッタヘッド2の外周部を通過させるように構成している。
さらに、掘削機本体Aをそのカッタヘッド2を下方に向けての立坑掘削状態から屈曲トンネル部T2を掘削するために横方向に向けるには、上記一方の一組のグリッパシュー3a、3aを掘削壁面tの対向壁面(図においては前後対向壁面)に押し付けた状態にして他方の一組のグリッパシュー3a、3aを内方に収縮させたのち、上記支軸8回りに掘削機本体Aを回動させるものであるが、この際、グリッパシュー3a、3aの基端部(上端部)同士が当接してそれ以上の回動ができなくなると共に他方の一組のグリッパシュー3a、3aのうち、掘削機本体Aの向きを変える時に掘削壁面t側を通過する側のグリッパシュー3aの基端部(上端部)が掘削壁面tに当接して掘削機本体1の回動ができなくなるので、これらの四方のグリッパシュー3a、3aの基端部(上端部)も一定長さだけ切り離し可能な分割グリッパシュー片32、33に形成している。
また、上記グリッパシュー3aと固定台板3d又は回動支持台3e間を連結している上記傾斜ジャッキ3b、3cは、固定台板3d又は回動支持台3eからグリッパシュー3aに向かって掘削機本体Aの後方(図においては上方)側に傾斜している推進用傾斜ジャッキ3bと、固定台板3d又は回動支持台3eからグリッパシュー3aに向かって掘削機本体Aの前方(図においては下方)側に傾斜している突っ張り用傾斜ジャッキ3cとからなり、固定台板3d又は回動支持台3eから前方側に向かって傾斜している突っ張り用傾斜ジャッキ3cの伸長によりグリッパシュー3aを掘削壁面tに圧着させて掘削機本体Aが必要以上に下動するのを阻止すると共に固定台板3d又は回動支持台3eから前方側に向かって傾斜している推進用傾斜ジャッキ3bの伸長により掘削機本体Aを緩速度でもって掘進させるように構成している。
一方、上記カッタヘッド2は上記掘削機本体Aよりも外径を大径に且つその水平円板形状の回転中心部21から外周端に向かって後方(上方)に傾斜した逆截頭円錐形状に形成されていると共に掘削面に多数のローラビット22を突設してあり、さらに、周方向に所定間隔毎にズリ取込み開口部23を設けていて、このズリ取込み開口部23の回転方向に面している側端縁に、掘削ズリを機内に取り込むためのスクレーパを取付けている。
さらに、カッタヘッド4の外周端部にはビット受枠24が埋設状態に固着してあり、このビット受枠24内にジャッキ25によって該受枠24の掘削壁面t側に向かって開口している開口端からカッタヘッド2外に掘削壁面tに向かって出没する拡径トンネル部掘削用ビット26を配設している。
また、このカッタヘッド2の外周端から内径方向に向かってアーム部材27を突設してこれらのアーム部材27の内端にリング部材28を一体に固着し、該リング部材28を掘削機本体Aの上記矩形枠部1bの円形内周面における下端部(先端部)に回転自在に支持させていると共に、このリング部材28の内周面に設けている内歯ギヤ29に、筒状胴部1aと矩形枠部1bとの間に設置している複数個数の駆動用モータ10の回転軸に固着した外歯ギヤ11を噛合させてモータ10の駆動によりカッタヘッド2を回転させるように構成している。
掘削機本体Aの上記前胴部1に着脱自在に連結している上記メインビーム4は前胴部1の筒状胴部1aと略同径の円筒部材体又は角筒部材からなり、その長さは掘削機本体Aの機長の数倍を有している。このメインビーム4を掘削機本体Aの前胴部1に着脱自在に連結する構造としては、メインビーム4の先端面と前胴部1の筒状胴部1aの基端面とにそれぞれフランジ部4a、12を固着し、これらのフランジ部4a、12に設けている複数個のボルト取付孔間をボルト・ナット13によって着脱自在に連結してなる構造としている。
メインビーム4上に配設している後胴部5は、その中心部に設けている挿通孔5aにメインビーム4を挿通させてこのメインビーム4の長さ方向に摺動移動自在配設されてあり、この後胴部5の外周面両側部にトンネル径方向に拡縮自在に配設してなるリアグリッパ6、6は、後胴部5の両側部に装着されたトンネル径方向に伸縮する伸縮ジャッキ6b、6bと、この伸縮ジャッキ6b、6bの先端にそれぞれ固着しているグリッパシュー6a、6aとから構成されている。なお、このグリッパシュー6aの外面も上記フロントグリッパ3のグリッパシュー3aと同様にトンネル掘削壁面tの周方向に凸円弧状に湾曲している。
このように構成したトンネル掘削機Aにおけるメインビーム4の後端(上端)には図1に示すように、後続設備を搭載している後続台14が切り離し可能に連結してあり、メインビーム4内に設けている土砂搬送手段(図示せず)を通じて排出される掘削土砂等をこの後続台14を通じて上方(後方)に排除可能に構成していると共に、この後続台14には掘削壁面tに覆工コンクリートを施工するための設備や、各種の油圧設備等が配設されている。
次に、このように構成したトンネル掘削機によって、まず、立坑Bを所定深さまで垂直状に切り下げ掘削していくには、図1に示すように、メインビーム4の後胴部5の両側部に装着しているリアグリッパ6、6の伸縮ジャッキ6b、6bを伸長させることによってグリッパシュー6a、6aをトンネル掘削壁面tに圧着させ、トンネル掘削機全体をこれらのリアグリッパ6、6を介して掘削壁面tに支持させると共に掘削機本体A側においては前胴部1の四方に配設しているフロントグリッパ3、3'のグリッパシュー3aを掘削壁面tに摺接させた状態にしたのち、カッタヘッド2を回転させると共に推進ジャッキ7、7を伸長させると、後胴部5に対して前胴部1が推進してカッタヘッド2により切羽の岩盤が掘削される。
推進ジャッキ7、7の伸長によって掘削機本体Aが一定長、掘進すると、今度は掘削機本体Aの前胴部1に配設している四方のフロントグリッパ3、3'のグリッパシュー3aを掘削壁面tに強く圧着させることによってトンネル掘削機全体を支持した状態にして後胴部5側のリアグリッパ6、6のグリッパシュー6a、6aを収縮させ、しかるのち、推進ジャッキ7、7を収縮させることによって後胴部5をメインビーム4に沿って一定長さだけ下動させ、その下動位置で該リアグリッパ6、6のグリッパシュー6a、6aを伸長させることによって掘削壁面tに圧着させ、この圧着後に上記前胴部1側のフロントグリッパ3、3'のグリッパシュー3aを僅かに縮小させて掘削壁面tに摺接した状態にする。
この状態にして再び推進ジャッキ7、7を伸長させることによって掘削機本体Aを推進させ、カッタヘッド2によって切羽の岩盤を掘削する。この手順を繰り返しおこなって所定深さまで立坑T1を掘削すると、フロントグリッパ3とリアグリッパ6とを掘削地盤tに圧着させた状態にして、図3に示すように掘削機本体Aの筒状胴部1aからメインビーム4を切り離すと共に推進ジャッキ7も掘削機本体Aに対してその先端から切り離す。
しかるのち、掘削機本体Aのカッタヘッド4の外周端部に装着している受け枠24内のジャッキ25を伸長させることにより、ビット26を掘削壁面tに向かってカッタヘッド4の外周端部から外径方向に突出させ、カッタヘッド4の回転と共に掘削機本体1のみを下方に推進させることにより一定長の拡径トンネル部T1' を掘削する。この拡径トンネル部T1' の長さは掘削機本体Aの筒状胴部1aの長さに略等しい長さを有している。なお、掘削機本体Aの推進は、フロントグリッパ3、3'の突っ張り用傾斜ジャッキ3cによりグリッパシュー3aを一定の圧力でもって掘削地盤tに圧接させて掘削機本体Aを掘削壁面tに支持させながら推進用傾斜ジャッキ3b、3bを伸長させることによって行われる。こうして、掘削機本体Aのみによって一定長さの拡径トンネル部T1' を掘削したのち、次いで、この拡径トンネル部T1' から横坑T3を連続的に掘削するための屈曲トンネル部T2の掘削作業に移る。
まず、掘削機本体Aをその突っ張り用傾斜ジャッキ3cを伸長させることによって図4に示すように僅かに上方に後退させてカッタヘッド2を切羽面から離間させる。しかるのち、図5、図6に示すように、四方のフロントグリッパ3、3'のグリッパシュー3aの上端部の分割グリッパシュー片32、33を取り外して撤去すると共に、回動支持台3e、3e側の一方の一組のフロントグリッパ3、3のグリッパシュー3a、3aからその側部を形成している分割グリッパシュー片31、31を取り外して撤去する。
そして、一方の一組のフロントグリッパ3、3のグリッパシュー3a、3aを装着している回動支持台3eを固定ボルトの撤去によって固定台板3dに対して回動可能にすると共にこれらのグリッパシュー3a、3aを掘削壁面tに圧着させた状態で、他方の一組のフロントグリッパ3'、3'のグリッパシュー3a、3aをそれらを支持しているジャッキ3b、3cを収縮させることによって図7、図8に示すように、掘削機本体Aに向かって内方に移動(図においては一方のグリッパシュー3aのみ移動させている)させると共に上記一方の一組のグリッパシュー3a、3a又は回動支持台3e、3eの内面における一つの連結金具9aと筒状胴部1aに装着している連結金具9b間にジャッキ9cを連結したのち、このジャッキ9cを伸長させると、掘削壁面tに押し付けている一組のグリッパシュー3a、3aに対してこのグリッパシュー3aにジャッキ3b、3cによって連結している回動支持台3e、3eを介して掘削機本体Aが支軸8を中心として図9、図10に示すようにカッタヘッド2が下向き状態から徐々に掘削壁面tの一側方に対向する方向に回動する。
この際、図9から図11に示すように、グリッパシュー3aに装着している数個の連結金具9aに対して回転駆動機構9の上記ジャッキ9cの端部の連結を盛り替えながら該ジャッキ9cを作動させることにより、掘削機本体Aを所定角度ずつその機軸が垂直状態から水平状態となるまで回動させる。このように、掘削機本体Aが支軸8を中心として垂直状態から水平状態となるまで回動する時に、カッタヘッド2側においては、下向き状態のカッタヘッド2と拡径トンネル部T1' の底面との間には上述したように掘削機本体Aの後退による隙間Dが設けられていると共に拡径トンネル部T1' の径が上記支軸8とカッタヘッド2の逆截頭円錐形状の下面間の最大距離よりも大きい径となるように上記拡径トンネル部掘削用ビット26によって掘削されていてカッタヘッド2の外周端縁と拡径トンネル部T1' との間にも隙間Eが形成されているので、カッタヘッド2は拡径トンネル部T1' の掘削壁面の一側部に当接することなく、従って、カッタヘッド2により拡径トンネル部T1' の掘削壁面の一側部を掘削することなく該カッタヘッド2を下向き状態から拡径トンネル部T1' の掘削壁面の一側面に対向した水平状態となるまで旋回動させることができる。
さらに、上述したように、回動支持台3e、3e側の一方の一組のグリッパシュー3a、3aからその側部を形成している分割グリッパシュー片31、31を取り外しているので、このグリッパシュー3a、3aにカッタヘッド2が突き当たることなく該カッタヘッド2を上記支軸8回りに旋回動させることができる。なお、上記カッタヘッド2の外周端縁と拡径トンネル部T1' との間の隙間Eが小さくてカッタヘッド2が僅かに当接する場合であっても、当接するまでにカッタヘッド2が拡径トンネル部T1' 内において掘削壁面の一側部に向かって適宜角度回動しているので、掘削壁面の一部分を拡径トンネル部掘削用ビット26等によって簡単に掘削しながら旋回動させることができる。
また、掘削機本体Aの基端側においては、全てのグリッパシュー3a、3aの基端部の分割グリッパシュー片32、33が取り外されていて、グリッパシュー3a、3aの基端が掘削機本体1の基端面から先端側に没入した状態としてあり、且つ、掘削機本体Aの回動中心軸である上記支軸8は機長を2等分する位置に配設されているので、上記先端側のカッタヘッド2と同様に、掘削機本体Aの基端部が拡径トンネル部T1' の掘削壁面の他側面に当接することなく支軸8回りに水平方向にまで回動することができる。
こうして、掘削機本体Aが90度、支軸8回りに回動して水平方向に向きを変えると、収縮している他方の一組のフロントグリッパ3'、3'のグリッパシュー3a、3aが掘削機本体Aと一体的にその向きを変えて凸円弧状に湾曲した外面を次に掘削する横坑T3の掘削壁面t'の周方向に向けた状態となるが、掘削壁面tに圧着している上記一方の一組のグリッパシュー3a、3aは、掘削機本体Aが水平方向に向きを変えてもその外面は立坑T1の掘削に適した状態を保持している。
この一組のグリッパシュー3a、3aを横坑T3を掘削するのに適した状態にするに際して、まず、掘削した立坑T1の底面を埋め戻してその埋め戻した上面を、この上面に対向する他方の一組のグリッパシュー3a、3aにおける下側のグリッパシュー3aの凸円弧状外面に沿うように凹円弧状の湾曲面Fに整形する。この場合、立坑T1の底面が截頭円錐形状に形成されていて、その中央部の幅狭い部分を上述したように埋め戻してもグリッパシュー3aの基端側が埋め戻した部分から掘削壁面の他側部側にはみ出すので、そのはみ出す底面部分を掘削F'してその掘削上面を上記湾曲面Fと面一の湾曲面に整形し、しかるのち、下側のグリッパシュー3aを伸長させてこの湾曲面F上に載せ、掘削機本体Aを支持させる。この湾曲面Fが次に掘削すべき横坑T3の底面に連なるものである。
この状態にして掘削壁面tに圧着している一方の一組のフロントグリッパ3、3のグリッパシュー3a、3aを収縮させ、しかるのち、回動支持台3e、3eを90℃、支軸8を中心として回動させることによってこれらのグリッパシュー3a、3aの向きを横坑T3を掘削するのに適した状態、即ち、その凸円弧状に湾曲した外面が横坑T3の掘削壁面t'の周方向に向いた状態にする(図13参照)。この際、一方の一組のグリッパシュー3a、3aの旋回動の邪魔となる拡径トンネル部T1' の両側壁面の一部を図12に示すように掘削Gしておく。しかるのち、このグリッパシュー3a、3aの側面に分割グリッパシュー片31、31を取り付けると共にこれらのグリッパシュー3a、3aを掘削壁面tの前後部に押し付けてカッタヘッド2を回転駆動させながら、傾斜ジャッキ3b、3cを駆動することにより掘削機本体Aを僅かに水平方向に掘進させて全てのグリッパシュー3a、3aの基端(後端)に分割グリッパシュー片32、33が装着可能な空間部を形成したのち、これらの分割グリッパシュー片32、33をグリッパシュー2a、2aの基端に取り付ける(図14、図15参照)。
こうして、グリッパシュー3a、3aを元の形状に復旧したのち、固定ボルトによって一方の一組のグリッパシュー3a、3aの回転支持台3e、3eを固定台板3d、3dに固定した状態にしてこの掘削機本体Aのカッタヘッド2を回転させると共に、グリッパシュー3a、3aのジャッキ3b、3cを作動させて立坑T1の底部から横坑T3に連続的に連なる屈曲トンネル部T2を掘削する。
掘削機本体Aが立坑T1の底部から水平方向に横坑T3を掘進して該横坑T3内に進入した状態になると、四方のグリッパシュー3aを横坑T3の掘削壁面t'に押し付けた状態にして上記立坑T1の掘削時と同様に横坑T3を掘進していく。この横坑T3が掘削機本体Aに上記メインビーム4を連結することができる長さだけ掘削されると、掘削機本体Aによる該横坑T3の掘削を停止し、この掘削機本体Aの後端に図16に示すように、両側にリアグリッパ6、6を装着している後胴部5を備えたメインビーム4を連結する。
このメインビーム4は屈曲トンネル部T2を通過することができない長さを有しているので、予め、その長さを数個に分解可能に構成されていると共に、後胴部5も分解可能に構成されている。そして、立坑T1側で後続台14を吊支してメインビーム4を吊り下ろし、立坑T1の底部内において、数分割して横坑T3側に送り込み、掘削機本体Aの後端に順次、連結することによってメインビーム4を組み立てる。次いで、このメインビーム4に後胴部5を該メインビーム4の長さ方向方向に摺動自在に装着すると共にこの後胴部5の両側にリアグリッパ6、6を組み込み、これらのリアグリッパ6、6のグリッパシュー6a、6aと掘削機本体Aの後端両側部間を推進ジャッキ7、7で連結する。
また、メインビーム4の後端部下面にサポートジャッキ15を取り付けて、このサポートジャッキ15によりメインビーム4の後端部を横坑T3の掘削壁面に支持させると共に該サポートジャッキ15の伸縮させることにより、掘削機本体Aのカッタヘッド2を両側のフロントグリッパ3、3を支点として上下方向に向きを変えさせてその方向に掘進させるように構成している。なお、掘削機本体Aを左右方向に向きを変えるには、両側のリアグリッパ6、6の一方を伸長させ、他方を収縮させることによって行われる。
こうして、掘削機本体Aの後端にメインビーム4を連結したのち、上記立坑T1の掘削時と同様に、メインビーム4の後胴部5の両側部に装着しているリアグリッパ6、6の伸縮ジャッキ6b、6bを伸長させることによってグリッパシュー6a、6aを横坑T3の両側掘削壁面t'に圧着させる一方、前胴部1の四方に配設しているフロントグリッパ3、3'のグリッパシュー3aを掘削壁面t'に摺接させた状態にしたのち、カッタヘッド2を回転させると共に推進ジャッキ7、7を伸長させると、後胴部5に対して前胴部1が推進してカッタヘッド2により横坑T3が掘削される。なお、この掘削時には、サポートジャッキ15を伸縮させて横坑T3の底面から浮き上がらせた状態にしておく。
推進ジャッキ7、7の伸長によって掘削機本体Aが一定長、掘進すると、今度は掘削機本体Aの前胴部1に配設している四方のフロントグリッパ3、3'のグリッパシュー3aを掘削壁面tに強く圧着させると共にサポートジャッキ15を伸長させて横坑T3の底面上にメインビーム4を支持させた状態としたのち、リアグリッパ6、6のグリッパシュー6a、6aを収縮させ、しかるのち、推進ジャッキ7、7を収縮させることによって後胴部5をメインビーム4に沿って一定長さだけ前進させ、その前進位置で該リアグリッパ6、6のグリッパシュー6a、6aを伸長させることによって掘削壁面t'に圧着させ、この圧着後に上記フロントグリッパ3、3'のグリッパシュー3aを僅かに縮小させて掘削壁面tに摺接した状態にする。
この状態にして再び推進ジャッキ7、7を伸長させることによって掘削機本体Aを前進させる。そして、この手順を繰り返しおこなって所定長さまで横坑T3を掘削するものである。なお、この横坑T3が20〜30m程度、掘削されると、図示していないが、該横坑T3の内底面にレールを敷設し、上記立坑T1の掘削壁面tに吊支しておいた後続台14を吊り下ろしてこのレール上に走行自在に配設すると共に掘削機本体Aに接続してもよい。
なお、以上の実施の形態においては、立坑T1から屈曲トンネル部T2を介して横坑T3に至るトンネルの連続掘削方法について説明したが、屈曲トンネル部T2を介して掘削すべきトンネルとしては立坑T1や横坑T3に限らず、トンネル掘削機によって掘削中のトンネル(坑)から該トンネルに対して屈曲トンネル部T2を介して急角度でもって任意の方向にトンネルを連続掘削する場合においても当然のことながら実施し得るものである。