[第1の実施の形態]
図1は、本発明の第1の実施の形態に係るトランス1の構成を展開して表すものである。図2は図1の1次側コイル10のA−A矢視方向の断面構成を、図3は1次側コイル10の回路図をそれぞれ表すものである。
このトランス1は、1次側コイル10(第2のコイル)および2次側コイル20(第1のコイル)が絶縁シートSを介して互いに磁芯30に巻回されることにより磁気結合された磁気素子である。このトランス1は、降圧型のトランスであり、1次側コイル10の引出部16,17(後述)に入力された入力交流電圧を変圧(降圧)し、2次側コイル20の引出部22,23(後述)から出力交流電圧を出力するようになっている。なお、この場合の変圧の度合いは、1次側コイル10と2次側コイル20との巻数比によって定まる。
磁芯30は、磁心30Aと磁心30Bとを互いに重ね合わせて構成されたものであり、その中心部分に、巻線の積層方向に延在する円柱状の中足30Cを有する。なお磁心30は、例えば図1に示したようにE型同士を重ね合わせたものであってもよいし、E型のものとI型のものとを互いに重ね合わせたものであってもよい。
2次側コイル20は、中足30Cの延在方向に垂直な面内に1巻きされたリング状の導体板からなるコイル巻回部21と、コイル巻回部21に電気的に接続された矩形状の導体板からなる一対の引出部22,23と、引出部22,23の近傍に設けられたスリット状のギャップGとを有する。すなわち、2次側コイル20は1ターンのコイルである。
1次側コイル10は、中足30Cの延在方向に垂直な面内にそれぞれ1巻きされたリング状の導体板からなる8つのコイル巻回部11A〜11Hを、絶縁層12を介して上からこの順に積層して構成されたものである。また、1次側コイル10は、コイル巻回部11Aに電気的に接続された矩形状の導体板からなる引出部16と、コイル巻回部11Hに電気的に接続された矩形状の導体板からなる引出部17とを有する。この1次側コイル10は、コイル巻回部11A側を2次側コイル20に向けると共に、2次側コイル20に対して積層方向に隣接して配置されている。
コイル巻回部11Aおよびコイル巻回部11B、ならびにコイル巻回部11Cおよびコイル巻回部11Dはそれぞれ、積層方向に延在する接続部13を介して互いに電気的に並列に接続されている。さらに、コイル巻回部11A,11Bからなる巻回部と、コイル巻回部11C,11Dからなる巻回部とは接続部13を介して互いに電気的に直列に接続されている。一方、コイル巻回部11Eおよびコイル巻回部11F、ならびにコイル巻回部11Gおよびコイル巻回部11Hはそれぞれ、積層方向に延在する接続部14を介して互いに電気的に並列に接続されている。さらに、コイル巻回部11E,11Fからなる巻回部と、コイル巻回部11G,11Hからなる巻回部とは接続部14を介して互いに電気的に直列に接続されている。また、コイル巻回部11A,11B,11C,11Dからなる巻回部と、コイル巻回部11E,11F,11G,11Hからなる巻回部とは接続部15を介して互いに電気的に直列に接続されている。すなわち、1次側コイル10は4ターンのコイルである。なお、1次側コイル10は、図4および図5に示したように、コイル巻回部11A〜11Hをすべて直列に接続して構成されていてもよい。
図6(A)、図7(A)、図8(A)、図11および図12は、1次側コイル10のB−B矢視方向の断面構成を例示して表すものである。図6(B)、図7(B)および図8(B)は、コイル巻回部11A〜11Hの要部を拡大して表すものである。コイル巻回部11A〜11Hは、図6ないし図12に例示したように、2次側コイル20に電流が流れたときに2次側コイル20に設けられたスリット状のギャップGから発生する漏洩磁束のプロファイルに対応した位置に切欠き16A〜16Hが設けられている。これは、この位置において、1次側コイル10を2次側コイル20の漏洩磁束の集中領域からより離すためであり、これにより、1次側コイル10に切欠きが何ら設けられていない場合に、図13に示したような、2次側コイル20の漏洩磁束によって1次側コイル10に局所的に発生する渦電流Iを低減させるようになっている。
ここで、2次側コイル20の漏洩磁束は、ギャップGのうち、2次側コイル20の外周側で局所的に大きく、さらに、ギャップGから遠ざかるにつれて小さくなるというプロファイルを有する。そのため、2次側コイル20の漏洩磁束によって1次側コイル10に局所的に発生する渦電流を低減させるには、例えば、図6(A),(B)に示したように、コイル巻回部11A〜11Hのうち2次側コイル20に最も近いコイル巻回部11Aの外周側におけるギャップGに対向した位置に切欠き16Aを設けることが好ましい。また、図7(A),(B)に示したように、切欠き16Aだけでなく、さらに、コイル巻回部11A〜11Hのうち2次側コイル20に2番目に近いコイル巻回部11Bの導体板の外周側におけるギャップGに対向した位置にも切欠き16Bを設けることがより好ましい。また、図8(A),(B)に示したように、各コイル巻回部11A〜11Hの導体板の外周側におけるギャップGに対向した位置に切欠き16A〜16Hを設けてもよい。
また、切欠き16A〜16Hの形状としては、図6(B),図7(B)および図8(B)に示したような、幅W、深さDの矩形状となっていてもよいし、図9に示したような半円形状や、図10に示したような、弦と円弧とにより囲まれた形状となっていてもよい。また、切欠き16A〜16Hは、2次側コイル20の漏洩磁束のプロファイルに応じた大きさを有していることが好ましく、例えば、図11および図12に示したように、切欠き16A〜16Hの大きさが、ギャップGから離れるにつれて小さくなっていることが好ましい。
このような構成のトランス1では、1次側コイル10の引出部16,17に入力交流電圧が入力されると、入力交流電圧は出力交流電圧に変圧(降圧)され、2次側コイル20の引出部22,23から出力交流電圧が出力される。
このとき、2次側コイル20に設けられたスリット状のギャップGから漏洩磁束が発生する。この漏洩磁束は、上記したように、ギャップGのうち、2次側コイル20の外周側で局所的に大きく、さらに、ギャップGから遠ざかるにつれて小さくなるというプロファイルを有するが、1次側コイル10のうち、ギャップGから発生する漏洩磁束のプロファイルに対応した位置に切欠きが設けられているので、漏洩磁束によって1次側コイル10に局所的に発生する渦電流が低減する。
例えば、図6(A),(B)に示したように、コイル巻回部11A〜11Hのうち2次側コイル20に最も近いコイル巻回部11Aの外周側におけるギャップGに対向した位置に切欠き16Aを設けることにより、1次側コイル10に切欠きを何ら設けていない場合と比べて、漏洩磁束によってコイル巻回部11Aに局所的に発生する渦電流が大幅に低減する。これにより、コイル巻回部11Aでの局所的な損失による温度上昇を大幅に低減することができる。
また、図7(A),(B)に示したように、切欠き16Aだけでなく、さらに、コイル巻回部11A〜11Hのうち2次側コイル20に2番目に近いコイル巻回部11Bの導体板の外周側におけるギャップGに対向した位置に切欠き16Bを設けることにより、コイル巻回部11Bに局所的に発生する渦電流も大幅に低減する。これにより、コイル巻回部11A,11Bでの局所的な損失による温度上昇を大幅に低減することができる。
また、図8(A),(B)に示したように、各コイル巻回部11A〜11Hの導体板の外周側におけるギャップGに対向した位置に切欠き16A〜16Hを設けることにより、1次側コイル10に切欠きを何ら設けていない場合と比べて、コイル巻回部11A〜11Hに局所的に発生する渦電流が低減する。これにより、コイル巻回部11A〜11Hでの局所的な損失による温度上昇を低減することができる。ただし、この場合は他の要因による損失が発生するため、その分だけ温度上昇の低減が妨げられる。
[第2の実施の形態]
図14は、本発明の第2の実施の形態に係るトランス2の構成を展開して表すものである。このトランス2は、上記実施の形態のトランス1の構成に、さらに、2次側コイル40(第3のコイル)および絶縁シートSを追加して構成されたものである。以下、上記実施の形態と同様の構成、作用、効果についての記載は適宜省略し、上記実施の形態と相違する点について詳細に説明する。
この2次側コイル40は、1次側コイル10および2次側コイル20に対して、1次側コイル10のコイル巻回部11H側に積層方向に隣接して配置されている。2次側コイル40は、中足30Cの延在方向に垂直な面内に1巻きされたリング状の導体板からなるコイル巻回部41と、コイル巻回部41に電気的に接続された矩形状の導体板からなる一対の引出部42,43と、引出部42,43の近傍に設けられたスリット状のギャップGとを有する。すなわち、2次側コイル40は1ターンのコイルである。
図15(A)、図16(A)、図8(A)、図17および図18は、1次側コイル10のC−C矢視方向の断面構成を例示して表すものである。図15(B)、図16(B)および図8(B)は、コイル巻回部11A〜11Hの要部を拡大して表すものである。コイル巻回部11A〜11Hは、図15ないし図17および図8に例示したように、2次側コイル20,40に電流が流れたときに2次側コイル20,40にそれぞれ設けられたスリット状のギャップGから発生する漏洩磁束のプロファイルに対応した位置に切欠きが設けられている。これは、この位置において、1次側コイル10を2次側コイル20,40の漏洩磁束の集中領域からより離すためであり、これにより、1次側コイル10に切欠きが何ら設けられていない場合に、図13に示したような、2次側コイル20,40の漏洩磁束によって1次側コイル10に局所的に発生する渦電流Iを低減させるようになっている。
ここで、2次側コイル20,40の漏洩磁束は、ギャップGのうち、2次側コイル20,40の外周側で局所的に大きく、さらに、ギャップGから遠ざかるにつれて小さくなるというプロファイルを有する。そのため、2次側コイル20,40の漏洩磁束によって1次側コイル10に局所的に発生する渦電流を低減させるには、例えば、図15(A),(B)に示したように、コイル巻回部11A〜11Hのうち2次側コイル20,40に最も近いコイル巻回部11A,11Hの外周側におけるギャップGに対向した位置に切欠き16A,16Hを設けることが好ましい。また、図16(A),(B)に示したように、切欠き16Aだけでなく、さらに、コイル巻回部11A〜11Hのうち2次側コイル20,40に2番目に近いコイル巻回部11B,11Gの導体板の外周側におけるギャップGに対向した位置に切欠き16B,16Gを設けることがより好ましい。また、図8(A),(B)に示したように、各コイル巻回部11A〜11Hの導体板の外周側におけるギャップGに対向した位置に切欠き16A〜16Hを設けてもよい。
また、切欠き16A〜16Hの形状としては、図15(B),図16(B),図8(B)に示したような矩形状となっていてもよいし、図9に示したような半円形状や、図10に示したような、弦と円弧とにより囲まれた形状となっていてもよい。また、切欠き16A〜16Hは、2次側コイル20,40の漏洩磁束のプロファイルに応じた大きさを有していることが好ましく、例えば、図17および図18に示したように、切欠き16A〜16Hの大きさが、ギャップGから離れるにつれて小さくなっていることが好ましい。
このような構成のトランス2では、1次側コイル10の引出部16,17に入力交流電圧が入力されると、入力交流電圧は出力交流電圧に変圧(降圧)され、2次側コイル20の引出部22,23および2次側コイル40の引出部42,43から出力交流電圧が出力される。
このとき、2次側コイル20,40に設けられたスリット状のギャップGから漏洩磁束が発生する。この漏洩磁束は、上記したように、ギャップGのうち、2次側コイル20,40の外周側で局所的に大きく、さらに、ギャップGから遠ざかるにつれて小さくなるというプロファイルを有するが、1次側コイル10のうち、ギャップGから発生する漏洩磁束のプロファイルに対応した位置に切欠きが設けられているので、漏洩磁束によって1次側コイル10に局所的に発生する渦電流が低減する。
例えば、図15(A),(B)に示したように、コイル巻回部11A〜11Hのうち2次側コイル20,40に最も近いコイル巻回部11A,11Hの外周側におけるギャップGに対向した位置に切欠き16A,16Hを設けることにより、1次側コイル10に切欠きを何ら設けていない場合と比べて、漏洩磁束によってコイル巻回部11A,11Hに局所的に発生する渦電流が大幅に低減する。これにより、コイル巻回部11A,11Hでの局所的な損失による温度上昇を大幅に低減することができる。
また、図16(A),(B)に示したように、切欠き16A,16Hだけでなく、さらに、コイル巻回部11A〜11Hのうち2次側コイル20,40に2番目に近いコイル巻回部11B,11Gの導体板の外周側におけるギャップGに対向した位置に切欠き16B,16Gを設けることにより、コイル巻回部11B,11Gに局所的に発生する渦電流も大幅に低減する。これにより、コイル巻回部11A,11B, 11G, 11Hでの局所的な損失による温度上昇を大幅に低減することができる。
また、図8(A),(B)に示したように、各コイル巻回部11A〜11Hの導体板の外周側におけるギャップGに対向した位置に切欠き16A〜16Hを設けることにより、1次側コイル10に切欠きを何ら設けていない場合と比べて、コイル巻回部11A〜11Hに局所的に発生する渦電流が低減する。これにより、コイル巻回部11A〜11Hでの局所的な損失による温度上昇を低減することができる。ただし、この場合は他の要因による損失が発生するため、その分だけ温度上昇の低減が妨げられる。
[第3の実施の形態]
図19は、本発明の第3の実施の形態に係るトランス3の構成を展開して表すものである。図20は図19の1次側コイル50(第4のコイル)のD−D矢視方向の断面構成を、図21は1次側コイル50の回路図をそれぞれ表すものである。以下、上記実施の形態と同様の構成、作用、効果についての記載は適宜省略し、上記実施の形態と相違する点について詳細に説明する。
このトランス3は、上記実施の形態のトランス1の構成に、さらに、1次側コイル50および絶縁シートSを追加して構成されたものである。1次側コイル50は、1次側コイル10および2次側コイル20に対して、2次側コイル20側に積層方向に隣接して配置されている。この1次側コイル50は、上記実施の形態の1次側コイル10と同様、中足30Cの延在方向に垂直な面内にそれぞれ1巻きされたリング状の導体板からなる8つのコイル巻回部51A〜51Hを、絶縁層12を介して2次側コイル20側からこの順に積層して構成されたものである。また、1次側コイル50は、コイル巻回部51Aに電気的に接続された矩形状の導体板からなる引出部56と、コイル巻回部51Hに電気的に接続された矩形状の導体板からなる引出部57とを有する。
コイル巻回部51Aおよびコイル巻回部51B、ならびにコイル巻回部51Cおよびコイル巻回部51Dはそれぞれ、積層方向に延在する接続部53を介して互いに電気的に並列に接続されている。さらに、コイル巻回部51A,51Bからなる巻回部と、コイル巻回部51C,51Dからなる巻回部とは接続部53を介して互いに電気的に直列に接続されている。一方、コイル巻回部51Eおよびコイル巻回部51F、ならびにコイル巻回部51Gおよびコイル巻回部51Hはそれぞれ、積層方向に延在する接続部54を介して互いに電気的に並列に接続されている。さらに、コイル巻回部51E,51Fからなる巻回部と、コイル巻回部51G,51Hからなる巻回部とは接続部54を介して互いに電気的に直列に接続されている。また、コイル巻回部51A,51B,51C,51Dからなる巻回部と、コイル巻回部51E,51F,51G,51Hからなる巻回部とは接続部55を介して互いに電気的に直列に接続されている。すなわち、1次側コイル50は4ターンのコイルである。なお、1次側コイル50は、上記実施の形態の図4および図5と同様に、コイル巻回部11A〜11Hをすべて直列に接続して構成されていてもよい。
図22(A)、図23(A)、図24(A)、図25および図26は、1次側コイル50のC−C矢視方向の断面構成を例示して表すものである。図22(B)、図23(B)および図24(B)は、コイル巻回部51A〜51Hの要部を拡大して表すものである。コイル巻回部51A〜51Hは、図22ないし図26に例示したように、1次側コイル10のコイル巻回部11A〜11Hと同様、2次側コイル20に電流が流れたときに2次側コイル20に設けられたスリット状のギャップGから発生する漏洩磁束のプロファイルに対応した位置に切欠きが設けられている。これは、この位置において、1次側コイル50を2次側コイル20の漏洩磁束の集中領域から離すためであり、これにより、1次側コイル50に切欠きが何ら設けられていない場合に、図13に示したような、2次側コイル20の漏洩磁束によって1次側コイル50に局所的に発生する渦電流Iを低減させるようになっている。
ここで、2次側コイル20の漏洩磁束は、ギャップGのうち、2次側コイル20の外周側で局所的に大きく、さらに、ギャップGから遠ざかるにつれて小さくなるというプロファイルを有する。そのため、2次側コイル20の漏洩磁束によって1次側コイル50に局所的に発生する渦電流を低減させるには、例えば、図22(A),(B)に示したように、コイル巻回部51A〜51Hのうち2次側コイル20に最も近いコイル巻回部51Aの外周側におけるギャップGに対向した位置に切欠き56Aを設けることが好ましい。また、図23(A),(B)に示したように、切欠き56Aだけでなく、さらに、コイル巻回部51A〜51Hのうち2次側コイル20に2番目に近いコイル巻回部51Bの導体板の外周側におけるギャップGに対向した位置にも切欠き56Bを設けることがより好ましい。また、図24(A),(B)に示したように、各コイル巻回部51A〜51Hの導体板の外周側におけるギャップGに対向した位置に切欠き56A〜56Hを設けてもよい。
また、切欠き56A〜56Hは、2次側コイル20の漏洩磁束のプロファイルに応じた大きさを有していることが好ましく、例えば、図25および図26に示したように、切欠き56A〜56Hの大きさが、ギャップGから離れるにつれて小さくなっていることが好ましい。
このような構成のトランス3では、1次側コイル10の引出部16,17または(および)1次側コイル50の引出部56,57に入力交流電圧が入力されると、入力交流電圧は出力交流電圧に変圧(降圧)され、2次側コイル20の引出部22,23から出力交流電圧が出力される。
このとき、2次側コイル20に設けられたスリット状のギャップGから漏洩磁束が発生する。この漏洩磁束は、上記したように、ギャップGのうち、2次側コイル20の外周側で局所的に大きく、さらに、ギャップGから遠ざかるにつれて小さくなるというプロファイルを有するが、1次側コイル10, 50のうち、ギャップGから発生する漏洩磁束のプロファイルに対応した位置に切欠きが設けられているので、漏洩磁束によって1次側コイル10, 50に局所的に発生する渦電流が低減する。
例えば、図6(A),(B)に示したように、コイル巻回部11A〜11Hのうち2次側コイル20に最も近いコイル巻回部11A,11Hの外周側におけるギャップGに対向した位置に切欠き16Aを設けると共に、図22に示したように、コイル巻回部51A〜51Hのうち2次側コイル20に最も近いコイル巻回部51Aの外周側におけるギャップGに対向した位置に切欠き56Aを設けることにより、1次側コイル10, 50に切欠きを何ら設けていない場合と比べて、2次側コイル20の漏洩磁束によってコイル巻回部11A,51Aに局所的に発生する渦電流が大幅に低減する。これにより、コイル巻回部11A,51Aでの局所的な損失による温度上昇を大幅に低減することができる。
また、図7(A),(B)および図23(A),(B)に示したように、切欠き11A,51Aだけでなく、さらに、コイル巻回部11A〜11Hのうち2次側コイル20に2番目に近いコイル巻回部11Bの導体板の外周側におけるギャップGに対向した位置に切欠き16Bを設けると共に、コイル巻回部51A〜51Hのうち2次側コイル20に2番目に近いコイル巻回部51Bの導体板の外周側におけるギャップGに対向した位置に切欠き56Bを設けることにより、コイル巻回部11B,51Bに局所的に発生する渦電流も大幅に低減する。これにより、コイル巻回部11A,11B,51A,51Bでの局所的な損失による温度上昇を大幅に低減することができる。
また、図8(A),(B)および図24(A),(B)に示したように、各コイル巻回部11A〜11Hおよび各コイル巻回部51A〜51Hの導体板の外周側におけるギャップGに対向した位置に切欠き16A〜16Hおよび56A〜56Hを設けることにより、1次側コイル10, 50に切欠きを何ら設けていない場合と比べて、コイル巻回部11A〜11Hおよび51A〜51Hに局所的に発生する渦電流が低減する。これにより、コイル巻回部11A〜11Hおよび51A〜51Hでの局所的な損失による温度上昇を低減することができる。ただし、この場合は他の要因による損失が発生するため、その分だけ温度上昇の低減が妨げられる。
[第4の実施の形態]
図27(A)は、本発明の第4の実施の形態に係るコイル70の構成を展開して表すものである。図27(B)は、コイル70の上面図である。
このコイル70は、積層方向に垂直な面内にそれぞれ1巻きされたリング状の導体板からなる3つのコイル巻回部71〜73を、絶縁層(図示せず)を介して上からこの順に積層して構成されたものである。また、コイル70は、コイル巻回部71に電気的に接続された矩形状の導体板からなる引出部74と、コイル巻回部73に電気的に接続された矩形状の導体板からなる引出部75とを有する。コイル巻回部71〜73は、積層方向に延在する円筒状の接続部(図示せず)を介して互いに直列に接続されている。
ここで、コイル巻回部71と引出部74との接続部分を便宜的にコイル70の巻き始め76と称し、コイル巻回部73と引出部75との接続部分を便宜的にコイル70の巻き終わり77と称する。コイル70を上面側から見ると、巻き始め76と巻き終わり77との間にスリット状のギャップGが形成されているのがわかる。
コイル巻回部71〜73は、コイル巻回部71〜73に電流が流れたときにスリット状のギャップGから発生する漏洩磁束のプロファイルに対応した位置に切欠き71A,72A,73Aが設けられている。これは、この位置において、各コイル巻回部71〜73を漏洩磁束の集中領域からより離すためであり、これにより、各コイル巻回部71〜73に切欠きが何ら設けられていない場合に、図13に示したような、各コイル巻回部71〜73に局所的に発生する渦電流Iを低減させるようになっている。
ここで、漏洩磁束は、ギャップGのうち、各コイル巻回部71〜73の外周側で局所的に大きく、さらに、引出部74,75の接続されたコイル巻回部71,73から遠ざかるにつれて小さくなるというプロファイルを有する。そのため、漏洩磁束によって各コイル巻回部71〜73に局所的に発生する渦電流を低減させるには、図27(A),(B)に示したように、引出部74,75の接続されたコイル巻回部71,73と、引出部74,75の接続されたコイル巻回部71,73に最も近いコイル巻回部72との外周側におけるギャップGに対向した位置に切欠き71A,72A,73Aを設けることが好ましい。なお、図27(A),(B)では、全てのコイル巻回部に切欠きを設けていたが、引出部74,75の接続されたコイル巻回部71,73にだけ切欠きを設けるようにしてもよい。また、コイルの巻回数が4以上の場合も、コイルの巻回数が3の場合と同様、全てのコイル巻回部に切欠きを設けたり、引出部74,75の接続されたコイル巻回部71,73およびその近傍のコイル巻回部にだけ切欠きを設けるようにしてもよいし、引出部74,75の接続されたコイル巻回部71,73にだけ切欠きを設けるようにしてもよい。
また、切欠き71A,72A,73Aの形状としては、図6(B),図7(B)および図8(B)に示したような、幅W、深さDの矩形状となっていてもよいし、図9に示したような半円形状や、図10に示したような、弦と円弧とにより囲まれた形状となっていてもよい。また、切欠き71A,72A,73Aは、漏洩磁束のプロファイルに応じた大きさを有していることが好ましく、例えば、切欠き71A,72A,73Aの大きさが、ギャップGから離れるにつれて小さくなっていることが好ましい。
このような構成のコイル70では、引出部74,75に入力交流電圧が入力されると、コイル巻回部71,73が交流抵抗として機能するようになる。
このとき、スリット状のギャップGから漏洩磁束が発生する。この漏洩磁束は、上記したように、ギャップGのうち、各コイル巻回部71〜73の外周側で局所的に大きく、さらに、引出部74,75の接続されたコイル巻回部71,73から遠ざかるにつれて小さくなるというプロファイルを有するが、各コイル巻回部71〜73のうち、ギャップGから発生する漏洩磁束のプロファイルに対応した位置に切欠きが設けられているので、漏洩磁束によってコイル70に局所的に発生する渦電流が低減する。
例えば、引出部74,75の接続されたコイル巻回部71,73の外周側におけるギャップGに対向した位置に切欠き71A,73Aを設けることにより、各コイル巻回部71〜73に切欠きを何ら設けていない場合と比べて、漏洩磁束によってコイル巻回部71,73に局所的に発生する渦電流が大幅に低減する。これにより、コイル巻回部71,73での局所的な損失による温度上昇を大幅に低減することができる。
また、図27(A),(B)に示したように、各コイル巻回部71〜73の導体板の外周側におけるギャップGに対向した位置に切欠き71A〜73Aを設けることにより、各コイル巻回部71〜73に切欠きを何ら設けていない場合と比べて、各コイル巻回部71〜73に局所的に発生する渦電流が低減する。これにより、各コイル巻回部71〜73での局所的な損失による温度上昇を低減することができる。ただし、この場合は他の要因による損失が発生するため、その分だけ温度上昇の低減が妨げられる。
[適用例]
次に、上記実施の形態のトランス1,2,3をスイッチング電源に適用した場合について説明する。
[第1の適用例]
まず、上記実施の形態のトランス2をスイッチング電源に適用した場合について説明する。なお、本適用例は、トランス2だけでなく、上記実施の形態のトランス1,3およびこれらの変形例に対しても適用可能である。
図28はトランス2の一適用例に係るスイッチング電源の回路構成を表すものである。このスイッチング電源は、高圧バッテリ(図示せず)から供給される高圧の直流入力電圧Vinを、より低い直流出力電圧Voutに変換して、負荷(図示せず)に供給するDC−DCコンバータとして機能するものであり、後述するように2次側がセンタタップ型のスイッチング電源である。
このスイッチング電源は、一次側高圧ラインL1Hと1次側低圧ラインL1Lとの間に設けられたスイッチング回路6と、トランス2と、スイッチング回路6とトランス2との間に設けられた共振用インダクタ7とを備える。1次側高圧ラインL1Hに入力端子T1が、1次側低圧ラインL1Lに入力端子T2がそれぞれ設けられており、これら入力端子T1,T2が高圧バッテリの出力端子と接続されるようになっている。
このスイッチング電源はまた、トランス2の2次側に設けられた整流回路8と平滑回路9とを備える。なお、整流回路8および平滑回路9からなる回路が本発明の「出力回路」に相当する。平滑回路9の高圧側のラインである出力ラインL0に出力端子T3が、平滑回路9の低圧側のラインである接地ラインLGに出力端子T4がそれぞれ設けられており、これら出力端子T3,T4が負荷の入出力端子と接続されるようになっている。
スイッチング回路6は、高圧バッテリから出力される直流入力電圧Vinをほぼ矩形波状の単相交流電圧に変換する単相スイッチング回路である。このスイッチング回路6は、制御回路(図示せず)から供給されるスイッチング信号によってそれぞれ駆動される4つのスイッチング素子61,62,63,64をフルブリッジ接続してなるフルブリッジ型のスイッチング回路である。スイッチング素子としては、例えば、MOS−FET(Metal Oxide Semiconductor-Field Effect Transistor )やIGBT(Insulated Gate Bipolor Transistor )などの素子が用いられる。
スイッチング素子61は、トランス2の1次側コイル10の引出部16に接続された共振用インダクタ7の一端と1次側高圧ラインL1Hとの間に設けられ、スイッチング素子62は1次側コイル10の引出部16に接続された共振用インダクタ7の一端と1次側低圧ラインL1Lとの間に設けられている。スイッチング素子63は1次側コイル10の引出部17と1次側高圧ラインL1Hとの間に設けられ、スイッチング素子64は1次側コイル10の引出部17と1次側低圧ラインL1Lとの間に設けられている。
これより、スイッチング回路6は、スイッチング素子61,64のオン動作により、1次側高圧ラインL1Hから順にスイッチング素子61、共振用インダクタ7、1次側コイル10およびスイッチング素子64を通って1次側低圧ラインL1Lに至る第1の電流経路に電流が流れる一方、スイッチング素子62,63のオン動作により、1次側高圧ラインL1Hから順にスイッチング素子63、1次側コイル10、共振用インダクタ7およびスイッチング素子62を通って1次側低圧ラインL1Lに至る第2の電流経路に電流が流れるようになっている。
共振用インダクタ7は、スイッチング素子61,62,63,64の寄生容量の少なくとも1つと共に共振回路を構成するようになっており、その共振特性を利用して、スイッチング素子のオン・オフによって生じる電力損失を低減するようになっている。なお、共振用インダクタ7は、コイル部品を実際に配置して構成されていてもよいが、これに代えて(これと共に)、トランス2の漏洩インダクタンスや配線などを含めた直列インダクタンスを利用して構成されていてもよい。
トランス2の2次側では、2次側コイル20の引出部22と、2次側コイル40の引出部43とが、センタタップCで互いに接続され、このセンタタップCが接地ラインLGを介して出力端子T4に接続されている。また、2次側コイル20の引出部23と、2次側コイル40の引出部42とが、後述のダイオード81,82を介して接続点Eで互いに接続され、この接続点Eが出力ラインL0を介して出力端子T3に接続されている。つまり、トランス2の2次側はセンタタップ接続となっている。
整流回路8は、一対のダイオード81,82からなる単相全波整流型のものである。ダイオード81のアノードは2次側コイル20の引出部23に、ダイオード81のカソードは出力ラインL0にそれぞれ接続されている。ダイオード82のアノードは2次側コイル40の引出部42に、ダイオード82のカソードは出力ラインL0にそれぞれ接続されている。この整流回路8は、トランス2の交流出力電圧の各半波期間をそれぞれダイオード81,82によって個別に整流してセンタタップCおよび接続点Eから整流電圧を出力するようになっている。つまり、この整流回路8はカソードコモン接続となっている。
平滑回路9は、チョークコイル91と、平滑コンデンサ92とを含んで構成されており、整流回路8で整流された直流電圧を平滑化して直流出力電圧Voutを生成し、これを出力端子T3,T4から負荷に供給するようになっている。この平滑回路9は、整流回路8から出力された整流電圧を平滑して出力直流出力電圧Voutを出力端子T3および出力端子T4に出力するようになっている。
次に、以上のような構成のスイッチング電源の作用を説明する。なお、以下では、一般的なスイッチング動作でスイッチング回路6を駆動する場合について説明するが、例えば、ゼロボルトスイッチング(Zero Volto Switching)動作でスイッチング回路6を駆動することも可能である。
スイッチング回路6のスイッチング素子61,64がオンすると、スイッチング素子61からスイッチング素子64の方向に電流が流れ、トランス2の2次側コイル20,40に現れる電圧がダイオード82に対して逆方向となり、ダイオード81に対して順方向となる。このため、2次側コイル20およびダイオード81を通って出力ラインLOに電流が流れる。
次に、スイッチング素子61,64がオンからオフになると、トランス2の2次側コイル40に現れる電圧は、ダイオード82に対して順方向となる。このため、2次側コイル40およびダイオード82を通って出力ラインLOに電流が流れる。
次に、スイッチング素子62,63がオンすると、スイッチング素子63からスイッチング素子62の方向に電流が流れ、トランス2の2次側コイル20,40に現れる電圧がダイオード82に対して順方向になる一方、ダイオード81に対して逆方向となる。このため、2次側コイル40およびダイオード82を通って出力ラインLOに電流が流れる。
最後に、スイッチング素子62,63がオンからオフになると、トランス2の2次側コイル20に現れる電圧はダイオード81に対して順方向となる。このため、2次側コイル20およびダイオード81を通って出力ラインLOに電流が流れる。
このようにして、スイッチング電源は、高圧バッテリから供給された直流入力電圧Vinを直流出力電圧Voutに変圧(降圧)し、その変圧した直流出力電圧Voutを負荷に印加する。
このとき、2次側コイル20,40に設けられたスリット状のギャップGから漏洩磁束が発生する。この漏洩磁束は、上記したように、ギャップGのうち、2次側コイル20,40の外周側で局所的に大きく、さらに、ギャップGから遠ざかるにつれて小さくなるというプロファイルを有するが、1次側コイル10のうち、ギャップGから発生する漏洩磁束のプロファイルに対応した位置に切欠きが設けられているので、漏洩磁束によって1次側コイル10に局所的に発生する渦電流が低減する。これにより、コイル巻回部11A〜11Hでの局所的な損失による温度上昇を大幅に低減することができる。
次に、本スイッチング電源の一実施例の効果を比較例と対比して説明する。
本実施例および比較例では、1次側コイル10を構成するコイル巻回部11A〜11Hおよび引出部16,17を厚さ35μm、幅7mmの銅箔とし、絶縁層12を厚さ0.3mmの絶縁シートとし、2次側コイル20,40を構成するコイル巻回部21,41および引出部22,23,42,43を厚さ1.5mm、幅7mmの銅からなる板金とし、2次側コイル20,40のギャップGの幅を2mmとした。1次側コイル10と2次側コイル20,40とのそれぞれの間には、厚さ0.45mmの絶縁シートを設けた。また、スイッチング周波数を100kHzとした。
本実施例として、1次側コイル10の切欠きが種々の部位に形成されたもの(図15、図16、図8、図18など)を用意した。なお、このときの切欠きの幅Wを4mm、深さDを3mmとした。さらに、図15の形態における、切欠きの幅Wが0.5mm、1mm、2mm、4mm、18mmのものと、切欠きの深さDが2mm、3mm、4mm、5mmのものとをそれぞれ用意した。一方、比較例として、1次側コイル10に切欠きが設けられていないものを用意した。
表1〜表4は、有限要素法を用いて磁場解析した結果をそれぞれ表すものである。ここで、表1は、1次側コイル10の切欠きが図15に示した部位に形成された場合における、切欠きの深さDの大きさと、コイル巻回部11A,11Hでの損失の大きさとの関係を数値で表すものである。表2は、1次側コイル10の切欠きが図15に示した部位に形成された場合における、切欠きの幅Wの大きさと、コイル巻回部11A,11Hでの損失の大きさとの関係を数値で表すものである。表3は、切欠きの部位と、ギャップGに最も近い巻回部(コイル巻回部11A,11H)およびギャップGから2番目に近い巻回部(コイル巻回部11B,11G)での損失の大きさとの関係を数値で表すものである。表4は、1次側コイル10に切欠きの設けられていない場合における、1次側コイル10の各巻回部での損失を表すものである。
表4の比較例の結果より、1次側コイル10の各巻回部において最も損失の大きいのは、ギャップGに最も近い巻回部(コイル巻回部11A,11H)であり、その巻回部での損失は、それ以外の巻回部での損失と比べて2倍から3倍程度大きいことがわかる。このときのコイル巻回部11A,11Hにおける温度は、それ以外の巻回部におけるそれよりも高くなることがわかる。これより、ギャップGに最も近い巻回部での損失を小さくすることが局所的な温度上昇を低減する上で最も重要であることがわかる。また、ギャップGに最も近い巻回部から、ギャップGから2番目または3番目に近い巻回部(コイル巻回部11B,11C,11F,11G)までの損失を小さくすることが局所的な温度上昇を低減する上でその次に重要であることがわかる。
表1および表2より、最も大きい損失の発生しうる,ギャップGに最も近い巻回部に、ある程度の大きさの切欠き16A,16Bを設けることにより、1次側コイル10, 50に切欠きを何ら設けていない比較例の結果と比べて、10%以上損失を低減できることがわかる。
また、表3より、ギャップGに最も近い巻回部から、所定の巻回部、例えば、ギャップGに2番目に近い巻回部や、ギャップGに3番目に近い巻回部にまで切欠きを設けることにより、ギャップGに最も近い巻回部にだけ切欠き16A,16Bを設けた場合と比べて、ギャップGに最も近い巻回部およびギャップGに2番目に近い巻回部(コイル巻回部11B,11C,11F,11G)での合計損失をさらに低減できることがわかる。
ただし、ギャップGに2番目に近い巻回部にも、切欠き16A,16Hと同じ大きさの切欠き16B,16C,16F,16Gを設けた場合は、ギャップGに2番目に近い巻回部での損失が若干増加する。しかし、切欠き16A,16B,16C,16F,16G,16Hの大きさを、2次側コイル20の漏洩磁束のプロファイルに応じた大きさ、例えば、図18に示したように、ギャップGから離れるにつれて小さくすることにより、上記合計損失をさらに低減できることがわかる。
また、図8に示したように、各コイル巻回部11A〜11Hに切欠き16A〜16Hを設けることにより、1次側コイル10に切欠きを何ら設けていない場合と比べて、上記合計損失による温度上昇を低減できることがわかる。ただし、この場合は他の要因による損失が発生するため、その分だけ温度上昇の低減が妨げられている。
[第2の適用例]
上記適用例では、1次側コイル10の各巻線部11Aから11Hを図2および図3に示したように並列接続と直列接続を混在させて接続していたが、図4および図5に示したように直列に接続しても、上記適用例と同様の傾向が見られる。
表5および表6は、有限要素法を用いて磁場解析した結果をそれぞれ表すものである。ここで、表5は、切欠きの部位と、ギャップGに最も近い巻回部(コイル巻回部11A,11H)およびギャップGに2番目に近い巻回部(コイル巻回部11B,11G)での損失の大きさとの関係を数値で表すものである。表6は、1次側コイル10に切欠きの設けられていない場合における、1次側コイル10の各巻回部での損失を表すものである。
表5および表6より、ギャップGに最も近い巻回部に切欠きを設けることにより、1次側コイル10の各巻回部に切欠きを設けていない比較例の結果と比べて、ギャップGに最も近い巻回部およびギャップGに2番目に近い巻回部(コイル巻回部11B,11C,11F,11G)での合計損失を低減できることがわかる。
また、各コイル巻回部11A〜11Hに切欠き16A〜16Hを設けることにより、1次側コイル10に切欠きを何ら設けていない場合と比べて、上記合計損失による温度上昇を低減できることがわかる。ただし、この場合は他の要因による損失が発生するため、その分だけ温度上昇の低減が妨げられている。
[上記適用例の変形例]
なお、上記2つの適用例では、トランス2の2次側がセンタタップ接続、そして整流回路8がカソードコモン接続となっていたが、例えば、図29に示したように、整流回路8をアノードコモン接続とすることも可能である。
また、トランス1を、例えば、図30に示したような、整流回路8がダイオードブリッジ接続となっているスイッチング電源に適用することが可能である。また、トランス1を例えば、図31に示したような、整流回路8がカレントダブラ型であってアノードコモン接続となっているスイッチング電源に適用することも可能である。また、トランス1を例えば、図32に示したような、整流回路8がカレントダブラ型であってカソードコモン接続となっているスイッチング電源に適用することも可能である。なお、他のトランス2,3をこれらに適用することももちろん可能である。
また、トランス3を、例えば、図33に示したような、フォーワード型のスイッチング電源に適用することが可能である。なお、他のトランス1,2をこれに適用することももちろん可能である。
以上、実施の形態および適用例ならびにこれらの変形例を挙げて本発明を説明したが、本発明は、これらに限定されず、種々の変形が可能である。
例えば、上記実施の形態および適用例ならびにこれらの変形例では、1次側コイル10,50を高圧側のコイルとし、2次側コイル20,40を低圧側のコイルとしていたが、高圧側と低圧側の対応関係をそれとは逆にしてもよい。
1,2,3…トランス、6…スイッチング回路、7…共振用インダクタ、8…整流回路、9…平滑回路、10,50…1次側コイル、11A〜11H,21,41,42,51A〜51H,71〜73…コイル巻回部、12…絶縁層、13,14,15,53,54,55…接続部、16,17,22,23,42,43,56,57,74,75…引出部、16A〜16H,56A〜56H,71A〜73A…切欠き、20,40…2次側コイル、30,30A,30B…磁心、30C…中足、61,62,63,64…スイッチング素子、70…コイル、76…巻き始め、77…巻き終わり、81,82…ダイオード、91…チョークコイル、92…平滑コンデンサ、A,B…端部、C…接続点、D…深さ、G…ギャップ、I…うず電流、L1H…1次側高圧ライン、L1L…1次側低圧ライン、LO…出力ライン、LG…接地ライン、S…絶縁シート、T1,T2…入力端子、T3,T4…出力端子、Vin…入力直流電圧、Vout…出力直流電圧、W…幅。