以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。まず、本発明の実施の形態を説明するための参考例について以下説明する。
図1は、本発明に対する第1参考例である血液検査ユニット10の分解斜視形状を示すものであり、また図2は、この血液検査ユニット10の側面形状を一部破断して示すものである。図示される通りこの血液検査ユニット10は、図中下方の端部が開放された円筒形の外筒11と、図中下方の端部に底面23が形成された内筒21とを有している。これらの外筒11および内筒21は、一例として透明の合成樹脂から形成され、外筒11は例えば外径15mm×高さ30mm程度、内筒21は例えば外径10mm×高さ30mm程度の大きさとされる。なお外筒11および内筒21は、その他例えばガラス等を用いて形成されてもよい。
外筒11は図中上側の端面に円形の開口13を持つ上底面14を有し、この開口13は常時は、上底面14の内面に接着されたゴム膜15によって閉じられている。このゴム膜15は、後述するように血液導入部を構成するものである。また外筒11の内部には、いわゆる挟み込み成形加工によって、円形の血液成分分離膜16が保持されている。血液成分分離膜16は、そこに血液検体が供給された際に血漿および/または血清は透過させる一方固形成分は透過させない多孔質構造体から形成され、ここでは一例として、空孔の径が0.5〜50μmの範囲にあるポリスルホン膜を用いて構成されている。そしてこの外筒11の内周壁部には、図中下端となる開放端の近くにおいて、内側に向けて突出した環状の係止部17が形成されている。
他方内筒21は、図中の下端が底面23によって閉じられたもので、開放した上端には試薬層24が取り付けられている。またこの内筒21の外周壁部には、その上端に比較的近い位置において、Oリング25が嵌着されている。さらにこの内筒21の周壁には、その内部と外部とを連通させる小さな空気導入孔26が形成され、この空気導入孔26は周壁に貼着したシート状のシール27で閉じられている。
上記試薬層24は、例えばミリポア・コーポレイション製の空孔径が0.45μmのニトロセルロース多孔質膜に、グルコースオキシダーゼ,ペルオキシダーゼ,1,7−ジヒドロキシナフタレン,4−アミノアンチピリンを混ぜたpH5.5〜6.5に調製したMES緩衝液を2スポット点着し、さらにウリカーゼ,ペルオキシダーゼ,ジアリルイミダゾール系ロイコ色素を混ぜた緩衝液を2スポット点着し、縦に2点,横に2点、合計4点のスポットを形成した後に乾燥させることにより、505nm付近を極大吸収波長とする色素系のグルコース検出スポットを2点、650nm付近を極大吸収波長とする色素系の尿酸検出スポットを2点作成してなるものである。なおこの試薬層24は、支持体が上述のようなニトロセルロース多孔質膜から形成されているので、そこに後述のようにして血漿および/または血清が供給されると、層の拡がり方向に血漿および/または血清が展開するようになる。
図3には、上記構成の試薬層24の平面形状を示す。図中の24aがグルコース検出スポット、24bが尿酸検出スポットである。なお本例ではこの試薬層24に、血液検査ユニット10に関する情報、つまりその製造番号や種別等を示すマークとしてのバーコード24cが記されている。このバーコード24cについては、後に詳述する。
上記の外筒11と内筒21とは、図2に示すように組み合わされて血液検査ユニット10を構成する。なお、内筒21を外筒11の内部に収める際には、内筒21のOリング25と外筒11の係止部17とが若干干渉するが、内筒21をある程度強く押し込めば、外筒11の周壁部およびOリング25が弾性変形して、Oリング25が係止部17を乗り越える。
図2の状態において、内筒21は外筒11の内部で、長軸方向つまり図中の上下方向に移動することができる。そのとき、内筒21はOリング25を介して外筒11の内周壁と摺動するので、内筒21と外筒11とで画成された密閉空間が形成されることになる。つまり本実施の形態では、外筒11と内筒21とによって、その内部と外部とを水密に保つ密閉容器が構成されている。
またここでは特に上記Oリング25の作用で、上記密閉空間は外部に対して略気密状態に保たれるので、内筒21が図2の状態から下方つまり外筒11の上底面14から離れる方向に引かれると、この密閉空間内は負圧になる。なお、このように内筒21が引かれて所定距離だけ移動すると、そのOリング25と外筒11の係止部17とが互いに係止して、内筒21が外筒11から離脱してしまうことが防止される。
以下、上記構成の血液検査ユニット10を用いた血液検査について説明する。まず、採血作業について説明する。その際には、内筒21が先に述べたように外筒11の上底面14から離れる方向に引かれ、該内筒21と外筒11とが画成する密閉空間内が負圧にされる。この状態を図4に示す。次に同図に示すように、例えばヒトの上腕部に一端が刺された採血針30の他端を外筒11のゴム膜15に突き刺して、上記密閉空間内に導く。すると、この密閉空間内が負圧になっていることにより、採血針30を通って全血31が該密閉空間内に導入される。この全血31は、図示のように血液成分分離膜16の上に展開し、そのうちの固形成分は血液成分分離膜16の上に捕捉され、また血漿および/または血清は該血液成分分離膜16を透過する。
なお、上述のようにして血液検査ユニット10内に採血される全血31の量と、内筒21を、図2の状態から下方に引いた距離との間には相関が有る。このことは、該血液検査ユニット10を用いて上記のように採血する場合と各条件の次元を揃えた採血実験によって確認されている。つまり例えば、内筒21を引く距離を1,2,4cmと設定することにより、それぞれの場合で採血量を10,20,40μl(マイクロ・リットル)と設定するようなことも可能である。
また、上記のように内筒21と外筒11とが画成する密閉空間内を負圧にしてから採血針30をゴム膜15に突き刺す他、採血針30をゴム膜15に突き刺した後に、内筒21を引いて上記密閉空間内を負圧にするようにしても構わない。
以上のようにして全血を血液検査ユニット10内に供給した後、採血針30はゴム膜15から引き抜かれる。ゴム膜15には採血針30が貫いた孔が残るが、ゴム膜15が高い弾性を有することから、この孔はそのままにしておく限りは閉じた状態となるので、そこから全血が漏れ出るような不具合は生じない。また、採血針30がゴム膜15に突き刺されているとき、この採血針30の外周壁とゴム膜15との間は、ゴム膜15が高い弾性を有することから略気密状態に保たれるので、全血31が導入されるまで血液検査ユニット10内の負圧状態が維持され、そして血液検査ユニット10内に全血31が供給されるとその内部は常圧に戻る。
次に、測光操作について説明する。図5は、本発明に対する第2参考例である血液検査装置40の外観を示すものであり、また図6は、この血液検査装置40の要部の構造を詳しく示すものである。図示される通りこの血液検査装置40は、筐体上面41に、血液検査ユニット10を受け入れる円筒形の穴からなるユニット受承部42を有している。血液検査ユニット10はこのユニット受承部42に対して、引き出されている内筒21側から収容される。そして、外筒11が軽く押し込められると、その中で内筒21が相対的に動いて、該内筒21の試薬層24が外筒11の血液成分分離膜16に接触する状態となる(図6の状態)。ここで、試薬層24は血液成分分離膜16と平行な状態に形成されているので、それら両者は互いに全面的に接触する状態となる。
前述したように血液成分分離膜16の上側には全血中の固形成分31aが捕捉され、また血漿および/または血清はこの血液成分分離膜16を透過するので、上記のように内筒21の試薬層24が血液成分分離膜16に接触すると、この試薬層24に血漿および/または血清が展開するようになる。試薬層24に形成されている前記グルコース検出スポット24aおよび尿酸検出スポット24bの各緩衝液(試薬)はこの血漿および/または血清と反応して、発色を呈する。
図6に詳しく示される通り血液検査装置40は、測定光43を発する光源ユニット44と、この光源ユニット44から発せられた測定光43を伝搬させる光ファイバ等からなる光ガイド45と、この光ガイド45の途中に介設されて測定光43の波長を選択するフィルタユニット46と、光ガイド45の先端部近くにおいてその中に配設された測光部47とを有している。
上記光源ユニット44は、505nm近辺の波長の光を発する発光ダイオードと、650nm近辺の波長の光を発する発光ダイオードとを内蔵してなるものであり、それらの発光ダイオードは一方のみが選択的に駆動されるようになっている。またフィルタユニット46は、505nmの波長の光を透過させるフィルタと、650nmの波長の光を透過させるフィルタとを内蔵してなるものであり、それらのフィルタは一方のみが選択的に光ガイド45内の光路に挿入されるようになっている。なお、このような2つの発光ダイオードを用いる代わりに、505nmおよび650nm近辺の波長の光を含む白色光を発する白色発光ダイオードを用いてもよい。
このフィルタユニット46のフィルタ選択動作と、上記光源ユニット44の発光ダイオード選択駆動動作は、共通の制御部53により互いに連動して制御される。すなわち、505nm近辺の波長の光を発する発光ダイオードが駆動される際には、505nmの波長の光を透過させるフィルタが光路に挿入され、650nm近辺の波長の光を発する発光ダイオードが駆動される際には、650nmの波長の光を透過させるフィルタが光路に挿入される。
光ガイド45は、その先端部が、ユニット受承部42内に収容された血液検査ユニット10の内筒21に対向する状態に配置されている。
測光部47は、測定光43が内筒21の試薬層24に照射されたとき、そこで反射した反射光43Rを集光する対物レンズ48と、この対物レンズ48で集光された反射光43Rによる像を結ばせる結像レンズ49と、この像の結像位置に配されたCCD等からなる2次元光検出器50とから構成されている。
以下、上記構成の血液検査装置40の作用について説明する。ユニット受承部42内に血液検査ユニット10が収容されると、光源ユニット44およびフィルタユニット46の駆動が前述のように制御部53によって制御されることにより、波長505nmの測定光43と波長650nmの測定光43とが、例えば0.1秒に一度ずつ交互に光ガイド45を通して、内筒21の試薬層24に照射される。なお図6では、光ガイド45の先端から発散光状態で出射する測定光43のうち、試薬層24の検出スポット24aおよび24bが形成されている領域に向かう成分のみを示してある。このとき試薬層24で反射した反射光43Rの光量が、2次元光検出器50によって検出される。
試薬層24に形成されている前記グルコース検出スポット24aおよび尿酸検出スポット24bの各緩衝液(試薬)は、検査対象の血漿および/または血清と反応して発色しており、この各検出スポットの光学濃度が0.1秒に一度ずつ測定される。すなわち、2次元光検出器50は画素分割されたものであって、試薬層24上の微細な点毎に反射光量を検出可能であるので、該2次元光検出器50が出力する光検出信号Sに基づいて、各検出スポット24a、24bの時間経過に伴って変化する光学濃度を測定することが可能である。
なお、2次元光検出器50が出力する光検出信号Sに基づいて各検出スポット24a、24bの光学濃度を測定するためには、2次元光検出器50の光検出面上の位置と、試薬層24上の位置との対応を取っておくことが必要である。そのためには、内筒21をユニット受承部42内に常に所定の向きで収容させればよく、具体的には、例えば内筒21の外周壁上の1箇所とユニット受承部42の内周壁上の1箇所に各々位置合わせマークを記しておき、これらの位置合わせマークが整合するようにして血液検査ユニット10をユニット受承部42内に収容させればよい。
上記各検出スポット24a、24b毎の反射光量を示す光検出信号Sは、信号処理部51に入力される。信号処理部51はこの反射光量に基づいて各検出スポットの光学濃度を求める。さらに該信号処理部51は、予め実験から作成されたグルコースおよび尿酸の濃度に対する、検出スポット光学濃度の関係を示す検量線を記憶しており、時間軸上で変化する上記各検出スポットの光学濃度から、該検量線に基づいてグルコースおよび尿酸の濃度を求める。そして信号処理部51は、この求めたグルコースおよび尿酸の濃度を示す信号Sdを表示部52に入力し、表示部52ではこの信号Sdが示すグルコースおよび尿酸の濃度が検査結果として表示される。なお、上記反射光量から光学濃度への換算は、Lambert−Beerの法則および拡散反射の式等の光学的計算方法を適用してなされる。
ここで、試薬層24の検出スポットを構成する試薬には、検出対象物質と反応する上で、あるいは検出対象物質と所定時間内で反応する上で、酸素が供給されていることが必要であるものも存在する。そのような試薬が用いられている場合には、血液検査ユニット10に前述のようにして全血を導入した後、内筒21の周壁に貼着されているシール27が剥がされる。それにより、該シール27が塞いでいた空気導入孔26が開かれ、この空気導入孔26を通して内筒21内に、つまりは試薬層24に空気中の酸素が供給される。なお、空気導入後に再びシール27で空気導入孔26を閉じておけば、検査従事者が血液検査ユニット10内の血液成分に触れてしまうことを防止できる。
なお、上述のようなシート状のシール27の他に、空気導入孔26を閉じておく栓状のシール部材を適用することもできる。その場合も、空気導入後にその栓状のシール部材で再度空気導入孔26を閉じるようにすれば、検査従事者が血液検査ユニット10内の血液成分に触れてしまうことを防止できる。
なおこの血液検査を行なう際には、通常、図示外のインキュベータを利用して血液検査ユニット10を恒温保持し、血漿および/または血清と試薬とを室温より高い所定温度(例えば37℃)下で反応させる。その場合には、試薬層24を構成して血漿および/または血清を展開させる前記ニトロセルロース多孔質膜に、水分が加えられることによって発熱する物質を添加しておくとよい。その場合には、水分を含む血漿および/または血清が展開することにより試薬層24が加温される。このようにして試薬層24を予備的に加温できれば、インキュベータにおいて血液検査ユニット10が上記所定温度に到達するまでの時間を短縮でき、それにより、血液検査を能率良く実行できるようになる。
なお、上記のような物質としては、ゼオライトなどのアルミノケイ酸、消石灰、(鉄粉+酸化剤)等が挙げられる。
また本例の血液検査装置において、光ガイド45の先端面は、ユニット受承部42の底板下面42aに当接するように配置されている。それにより、測光部47を構成するレンズ48、49および2次元光検出器50と試薬層24との間の距離は、常に所定の値に保たれることになる。
なお血液検査装置は、血漿および/または血清中の特定成分の濃度等を上述のように検量線に基づいて求める他、試薬層24の各検出スポット24a、24bの光学濃度まで求めて、それを表示したり、あるいはその光学濃度を示す信号を出力するだけのものとして構成されてもよい。
以上説明した通り第1参考例の血液検査ユニット10は、外筒11と内筒21とから構成される密閉容器の中に血液成分分離膜16と試薬層24とを配置してなるものであるので、この血液検査ユニット10を用いれば、密閉容器の中に全血を導入した後、発色した試薬層24に容器外側から測定光43を照射し、そのときの反射光量をユニット外から測定することによって血液検査をすることができる。つまり、血液検体の導入後は、密閉容器の中の血液成分に全く接触せずに血液検査をすることが可能である。したがってこの血液検査ユニット10によれば、検査従事者が血液に接触してそこから感染症に感染することを防止できる。
このように本例の血液検査ユニット10は、本質的に外から血液検体に触れる恐れが無いものであるから、検査に供した後は、例えばオートクレーブ処理する等してからそのまま廃棄処分することができ、よって、使い捨ての形態で使用するのに適したものとなっている。
なお、血液検査ユニット10が既に使用に供されたことは、試薬層24の各検出スポット24a、24bが所定の色に発色していること、あるいは、ゴム膜15に残った採血針30の跡を見ることによって確認できるが、その旨をさらに正確に確認できるように試薬層24に、血液検体と反応して発色する試薬を利用して「使用済み」等の文字が浮き出るようにしておくとよい。
そしてこの血液検査ユニット10においては、密閉容器の中に配置した血液成分分離膜16によって全血から血漿および/または血清が分離されるので、この血液検査ユニット10によれば、全血から血漿および/または血清を分離するために該ユニット10を遠心分離機にセットするような煩わしい手間は不要にして、簡単な操作で血液検査を行なうことができる。
また特に本第1参考例の血液検査ユニット10では、先に説明した通り、外筒11と内筒21とを相対移動させることにより、内部の密閉空間を負圧状態にすることができる。このようにユニット内の密閉空間を負圧状態にしてから採血針30をゴム膜15に突き刺せば、あるいは、採血針30をゴム膜15に突き刺した後に上記密閉空間を負圧状態にすれば、この密閉空間に全血31が強く吸引されるようになる。それにより、所定量の全血31を短時間で密閉容器内に採取可能となり、血液検査の作業能率を高めることができる。
また本第1参考例の血液検査ユニット10においては、血液成分分離膜16が、血漿および/または血清を透過させる一方固形成分は透過させない多孔質構造体から構成されているので、血漿および/または血清の分離のための構造が簡単で、ユニットの小型化の上で有利となっている。またここでは特に、そのような多孔質構造体として、空孔の径が前述の範囲にあるポリスルホン膜が用いられているので、極めて良好な血漿および/または血清の分離作用が得られ、血液検査の信頼性を高める効果が得られる。
また本例の血液検査ユニット10においては、血液成分分離膜16が外筒11に対して挟み込み成形加工で一体化されたことにより、この血液成分分離膜16は外筒11の内周面に対して、全周に亘って隙間を形成しない状態で緊密に固定されている。このようになっていると、血漿および/または血清が分離される前の全血31が外筒11の内周面と血液成分分離膜16との間の隙間から試薬層24側に漏れ出ることがなくなるので、この全血31が試薬層24に付着して検査が困難になったり、あるいは誤った検査がなされてしまうことを防止できる。
またこの血液検査ユニット10においては、血液導入部を構成するゴム膜15が外筒11の1つの底面14に形成されているので、このゴム膜15が先端側に位置する状態にして血液検査ユニット10を持ち、内筒21を手前に引くという操作によって、該血液検査ユニット10内の空間を負圧状態にすることができる。このような操作は極めてやりやすいものであるから、この操作により、血液検体の導入を簡単かつ確実に行なうことが可能になる。
またこの血液検査ユニット10においては、内筒21の、外筒上底面14に対して遠い方の端部に底面23が形成されているので、両底面14、23間の距離が最大となって、外筒11と内筒21とが画成する密閉空間は可能な限り大きいものとなる。そこで、この密閉空間の容積を所定大きさに設定するという前提の下では、内筒21および外筒11の全体の大きさを最小にできるので、血液検査ユニットを小型化する上で有利となる。
またこの血液検査ユニット10では、血液導入部としてのゴム膜15を上底面14に固定してなる外筒11において、該上底面14と対面する状態にして血液成分分離膜16が固定されているので、導入された全血31を直ちにこの血液成分分離膜16に供給することが可能である。
さらに、本実施の形態の血液検査ユニット10では、内筒21と外筒11とがOリング25を介して摺動するように構成されているので、前述のようにこれらの筒21、11を相対移動させて内部の密閉空間を負圧状態にする際に、より確実にこの負圧状態を作り出すことができる。またこのようなOリング25が設けられていることにより、内筒21と外筒11との隙間から血液成分がユニット外に漏れてしまうことも防止できる。
また、本第1参考例の血液検査ユニット10においては、上記Oリング25と外筒11の係止部17とが互いに係止して、内筒21が外筒11から離脱してしまうことが防止されるので、内筒21と外筒11とが不用意に離脱して、それらの中から血液成分が外に漏れてしまうことを防止できる。なお内筒21の側の係止部としては、上記Oリング25を利用する他、該Oリング25よりも図2中下方において内筒21の外周面上に突部を形成し、それを係止部としてもよい。
またこの血液検査ユニット10は、血漿および/または血清と反応して発色する互いに異なる複数種類の試薬が、互いに位置を変えて検出スポット24aおよび24bとして担持されてなる試薬層24を有するので、血漿および/または血清を試薬層24に供給する操作を1回するだけで該血漿および/または血清を複数の検出スポット24aおよび24bに供給できるものとなり、それにより、検査作業の能率が向上する。
また本例においては、血液検査ユニット10の試薬層24が、血漿および/または血清中の互いに異なる物質と反応する複数種類の検出スポット24aおよび24bを有するものとされる一方、血液検査装置40は上記検出スポット24aおよび24bにそれぞれ適合する波長の測定光43を逐次照射するように形成されているので、血漿および/または血清中の互いに異なる物質、つまりここではグルコースおよび尿酸についての検査を迅速に行なうことが可能となっている。なお血液検査装置40は、上記複数種類の検出スポット24aおよび24bに対して測定光を互いに同時に照射して、それらからの反射光量を同時に測定するように構成されてもよい。検査作業の能率向上という点からは、そのようにする方がより好ましい。
また本例の血液検査装置40においては、上記検出スポット24aおよび24bの光学濃度を検出する手段として、血液検査ユニット10の試薬層24の像を撮像する2次元光検出器50が用いられて、試薬層24に記されたバーコード24c(図3参照)をこの2次元光検出器50によって読取り可能となっている。したがって、この2次元光検出器50が出力する光検出信号Sを、信号処理部51において適宜処理してから表示部52に入力することにより、該表示部52において、上記バーコード24cが示す血液検査ユニット10に関する情報、つまりその製造番号や種別等を表示させることもできる。さらには、バーコード24cが示す血液検査ユニット10のロット毎の補正情報に基づいて、検査結果に補正を加えることも可能である。
このバーコード24cによって示す情報としては、血液検査ユニット10の製造番号や種別の他に、ロット番号情報、検量線情報、干渉物質補正情報、温度補正情報、液量補正情報等が挙げられる。
なお上記バーコード24cとしては、一般的な1次元方式のものに限らず、2次元バーコード等も適用可能である。さらには、血液検査ユニット10に関する情報を示すマークとして、バーコード以外のマークが適用されてもよい。
ここで、前述のように各検出スポット24a、24b毎の反射光量を示す光検出信号Sから光学濃度を正確に求めるには、反射が100%の場合、0%の場合の光検出信号Sを求め、それらの信号Sに基づいて、各検出スポット24a、24b毎の反射光量を示す光検出信号Sを較正する必要がある。図22は、そのための手段を示すものである。
すなわちここでは、血液検査装置40のユニット受承部42に収められる血液検査ユニット10と同形状のダミーユニット10Wおよび10Kが用いられる。ダミーユニット10Wは、血液検査ユニット10の試薬層24に相当する位置に白板23Wが設けられてなるものである。またダミーユニット10Kは、血液検査ユニット10の試薬層24に相当する位置に黒板23Kが設けられてなるものである。このようなダミーユニット10Wおよび10Kを各々血液検査装置40のユニット受承部42に収めてから、血液検査ユニット10に対する測光操作と同様の操作を行なえば、それぞれ反射が100%の場合、0%の場合の光検出信号Sが得られる。そこで、それらの光検出信号Sを適宜の記憶手段に記憶させておけば、上述の較正に適用することができる。
なおこの図22に示すように、図3に示したバーコード24cと同様のバーコードが記録されたバーコード面23Dを、血液検査ユニット10の試薬層24に相当する位置に有するダミーユニット10Dも適用可能である。つまりそのようなダミーユニット10Dを、例えば血液検査ユニット10の1梱包に1個ずつ収めておき、その梱包の血液検査ユニット10を使用する前に予めそのダミーユニット10Dのバーコード情報を読み取って適宜の記憶手段に記憶させる。そのようにすれば、各血液検査ユニット10に対する測光操作時にその情報を記憶手段から読み出して、前述したように該情報を表示させたり、あるいは該情報に基づいて検査結果に補正を加えることが可能となる。
なお上述のように使用されるダミーユニットは、特に血液検査ユニット10と同形状とする必要はなく、例えば図23に示すような形状のダミーユニット210Dを用いることもできる。この図23に示すダミーユニット210Dは、棒状のつまみ部分221と、その一端に固定された円板部220とを有し、円板部220の表面が、バーコード224が記録されたバーコード面223Dとされたものである。このように血液検査ユニット10と異なる形状のダミーユニット210Dを適用する場合は、例えば血液検査装置40のユニット受承部42に上記円板部220を支持する段部を設ける等により、該ダミーユニット210Dを、そのバーコード面223Dが血液検査ユニット10の試薬層24と同位置に来る状態に保持させればよい。
また図6の血液検査装置40において、CCD等からなる2次元光検出器50は、試薬層24の各検出スポット24aあるいは24bの1つ1つを複数の画素(好ましくは100以上の画素)で検出する。つまりそれらの複数画素により、各検出スポット24aあるいは24bの1つの中の複数領域について、互いに独立して反射光量が検出される。そして信号処理部51は、その複数領域に関する光量検出結果を統計的に処理して、各検出スポット24aあるいは24bの1つ1つを代表する光量値を求め、その光量値を前述の光学濃度を求めるために使用する。
なお上記の統計的処理としては、例えば平均値を求める処理、中央値を求める処理、検出光量値の正規分布を求め、頻度最大の光量値から±2SD(SD:標準偏差)の範囲にある光量値だけの平均値を求める処理等が適用される。
このようにして、各検出スポット24aあるいは24bの1つ1つを代表する光量値を求め、その光量値に基づいて光学濃度を求めれば、1つの検出スポット24aあるいは24bの中で血漿および/または血清と試薬との反応にムラが有ったり、あるいは微小なゴミ等が存在するような場合でも、そのムラやゴミ等による特異的な光量検出結果の影響を排除して、血液検査を正確に行なえるようになる。
なおここでは、2次元光検出器50の1画素が光量検出する領域を、検出スポット24aあるいは24bの中の1領域としているが、2次元光検出器50の複数画素が光量検出する領域を、検出スポット24aあるいは24bの中の1領域としてもよい。すなわち、例えば2次元光検出器50の相隣接する4画素が光量検出する領域を1領域として、それら4画素による検出光量の平均値等を上記統計的処理にかけるようにしてもよい。
また図6の血液検査装置40においては、各検出スポット24aあるいは24bに適合するように分光された測定光43を照射するように構成されているので、各検出スポット24aあるいは24bからの反射光43Rを互いに明確に区別して検出可能となり、複数項目の検査を精度良く行なえるようになる。
また図6の血液検査装置40においては、試薬層24への測定光43の照射および該試薬層24からの反射光43Rの光量検出を、試薬層24に血漿および/または血清が供給される試薬層表面と反対側の試薬層表面側から行なうように構成されているので、反射光43Rを検出するための測光部47や光ガイド45が、血漿および/または血清を供給するための血漿分離膜16と干渉するのを避けることができ、そのために該測光部47や光ガイド45の配置の自由度が高いものとなっている。特にこの場合は、試薬層24が外筒11および内筒21からなる密閉容器内に収められて、元々測光部47や光ガイド45の配置が困難になっているから、それらの配置の自由度が高くなる効果は特に顕著で実用的価値が高いものとなる。この点は、後述する図8、9および10に示す血液検査装置においても同様である。
次に図7を参照して、本発明に対する第3参考例としての血液検査ユニット10Aについて説明する。なおこの図7において、既述の図1〜6中の要素と同等の要素には同番号を付し、それらについての説明は特に必要のない限り省略する(以下、同様)。
この図7に示される血液検査ユニット10Aは、図1〜6に示した血液検査ユニット10と比較すると、試薬層24が内筒21の側ではなく、外筒11の血液成分分離膜16の裏面(ゴム膜15と反対側の面)に接する状態にして形成されている点が異なるものである。
このような構成の血液検査ユニット10Aを用いる場合も、血液検査は基本的に、先に説明した図5、6に示す装置を用いて同様に行なうことができる。ただしこの場合は、該血液検査ユニット10Aの中に全血31を導入した後、特に内筒21を外筒11側に押し込まなくても、血液成分分離膜16で分離された血漿および/または血清が試薬層24に展開する。つまりこの場合の方が、試薬層24への血漿および/または血清の供給がより迅速になされるようになる。
次に図8を参照して、本発明に対するさらに別の参考例である血液検査ユニット10Bおよび血液検査装置40Aについて説明する。この図8に示される第4参考例としての血液検査ユニット10Bは、図1〜6に示した血液検査ユニット10と比較すると、内筒21の底面23Bが該内筒21の端部ではなく、中間部に形成されている点が異なるものである。一方この図8に示される第5参考例としての血液検査装置40Aは、図6に示した血液検査装置40と比較すると、光ガイド45の先端部が、ユニット受承部42の底板に形成された開口42bを通過した上で、血液検査ユニット10Bの内筒21内まで入り込むように形成されている点が異なるものである。この光ガイド45の先端面は上記内筒21の底面23Bに当接し、それにより、測光部47を構成するレンズ48、49および2次元光検出器50と試薬層24との間の距離が常に所定の値に保たれる。
上記構成の血液検査ユニット10Bおよび血液検査装置40Aを用いる場合も、血液検査は基本的に、先に説明した図6の血液検査ユニット10および血液検査装置40を用いる場合と同様にして行なうことができる。
次に図9を参照して、本発明に対する第6参考例である血液検査装置40Bについて説明する。この図9に示される血液検査装置40Bは、図8に示した血液検査装置40Aと比較すると、測光部の構成が異なるものである。すなわちここでは、2次元光検出器50と結像レンズ56とを備えてなる測光部55が適用されている。また本実施の形態でも、光ガイド45の先端面は内筒21の底面23Bに当接し、それにより、測光部55を構成する結像レンズ56および2次元光検出器50と試薬層24との間の距離が常に所定の値に保たれる。なおここでは、血液検査ユニット10Bとして、図8に示したものと同様のものが用いられる。
上記構成の血液検査ユニット10Bおよび血液検査装置40Bを用いる場合も、血液検査は基本的に、先に説明した図6の血液検査ユニット10および血液検査装置40を用いる場合と同様にして行なうことができる。
次に図10を参照して、本発明に対する第7参考例である血液検査装置40Cについて説明する。この図10に示される血液検査装置40Cは、図6に示した血液検査装置40と比較すると、測光部47Cがより長い形に形成されて、その後端部が光ガイド45から外に出ている点が異なるものである。血液検査ユニット10としては、図6に示したものと同様のものが用いられる。
上記構成の血液検査装置40Cを用いる場合も、血液検査は基本的に、図6の血液検査装置40を用いる場合と同様にして行なうことができる。
次に図11を参照して、本発明に対する第8参考例である血液検査ユニット60について説明する。この図11に示される血液検査ユニット60は、一端に底面を有する透明部材からなる角筒状の外筒61と、この外筒61内にそれと摺動自在に組み合わされた同様に角筒状の内筒62と、外筒61の一側面63に形成された円形の開口64を閉じる血液導入部としてのゴム膜65と、外筒61の内部において該外筒61の軸方向に沿って延びるように配置された板状の血液成分分離膜66と、この血液成分分離膜66の図中下面に固定された板状の試薬層67とを有している。なお同図中では、試薬層67の明示のために、該試薬層67を血液成分分離膜66から離して示してある。
上記外筒61および内筒62は、図6に示した血液検査ユニット10の外筒11および内筒21と同様に、内部に密閉空間を画成する。また、内筒62が外筒61から引き抜く方向に(図中の右方に)動かされることにより、上記密閉空間内が負圧に設定されるようになっている。
血液成分分離膜66は、基本的に図6に示した血液検査ユニット10の血液成分分離膜16と同様のものとされているが、ここでは特に厚手に形成されて、板状のものとされている。
また試薬層67は、例えば空孔径が0.45μmの支持体としての板状のニトロセルロース多孔質膜に、互いに異なる複数種(一例として6種)の試薬が各々点着されてなる検出スポット67a,67b、67c、67d、67eおよび67fを有する。これら複数種の試薬は、血漿および/または血清中の相異なる複数の物質とそれぞれ反応して発色を呈するものである。この試薬層67は、上述した通り血液成分分離膜66に固定されているので、該試薬層67も外筒61の軸方向に沿って延びるものとなっている。
以下、上記血液検査ユニット60を用いる血液検査について説明する。まず、採血作業について説明する。その際には、該血液検査ユニット60内の密閉空間が、内筒62を上述のように操作することによって負圧に設定される。この状態で、例えばヒトの上腕部に一端が刺された採血針30の他端を外筒61のゴム膜65に突き刺して、上記密閉空間内に導く。すると、この密閉空間内が負圧になっていることにより、採血針30を通って全血31が該密閉空間内に導入される。この全血31は、図示のように血液成分分離膜66の上に展開し、そのうちの固形成分は血液成分分離膜66の上に捕捉され、また血漿および/または血清は該血液成分分離膜66を透過する。血液成分分離膜66を透過した血漿および/または血清は試薬層67の上に展開し、この試薬層67の検出スポット67a〜67fが、検査対象である血漿および/または血清中の特定物質とそれぞれ反応して発色する。
なおこの血液検査ユニット60においても、内筒62に空気導入孔26が設けられるとともに、この空気導入孔26を閉じるシール27が貼着されている。それらにより、この場合も、前述と同様の効果を得ることができる。
次に、検出スポット67a〜67fの光学濃度測定について説明する。図12は、本発明に対する第9参考例である血液検査装置40Dの要部を示すものであり、上記血液検査ユニット60はこの血液検査装置40Dにおいて測光操作にかけられる。図示される通りこの血液検査装置40Dは、血液検査ユニット60の試薬層67の裏面(図11中での下面)側から該試薬層67の検出スポット67a〜67fに測定光43を照射する1対の光ガイド70、70と、上記検出スポット67a,67b、67c、67d、67eおよび67fの直上に各々位置するように配置された6個の屈折率分布型レンズ71a,71b、71c、71d、71eおよび71fと、これらの屈折率分布型レンズ71a〜71fの全てに対向するように配置されたCCD等からなる2次元光検出器50とを備えている。
なお、上記血液検査装置40Dと試薬層67との間には、図11に示す血液検査ユニット60の外筒61の一つの側面が介在するが、図12ではこの外筒側面は省略してある。
上記構成の血液検査装置40Dにおいて、試薬層67に測定光43が照射されると、該試薬層67の各検出スポット67a〜67fで反射した光が各々屈折率分布型レンズ71a〜71fにより有効に集光され、よって各レンズ71a〜71f毎に、つまり各検出スポット67a〜67f毎に反射光量が測定される。したがってこの血液検査装置40Dによれば、2次元光検出器50が出力する光検出信号Sに基づいて、発色している各検出スポット67a〜67fの光学濃度を個別に検出することができる。
時間軸上で変化するこれらの光学濃度から、各検出スポット67a〜67fと反応した特定物質の濃度を求めるには、この場合も基本的に、先に説明した図6の装置が採用した検量線を利用する手法を適用すればよい。
以上説明した血液検査装置40Dにおいては、血液検査ユニット60の試薬層67の裏面側、つまり試薬層67に血漿および/または血清を供給する血液成分分離膜66(図11参照)と反対側から測定光43の照射、および反射光量の検出を行なうようにしているので、光ガイド70、70や屈折率分布型レンズ71a〜71f、さらには2次元光検出器50が血液成分分離膜66と干渉することがなく、よって、これらの光ガイド70、70や屈折率分布型レンズ71a〜71fや2次元光検出器50のレイアウトが容易になる。特に本装置においては、各検出スポット67a〜67fにそれぞれ対応させて屈折率分布型レンズ71a〜71fが設けられ、元々それらを配置するための自由度が低いので、上記レイアウトが容易になる効果は特に顕著で実用的価値が高いものとなる。この点は、後述する図13、21、25の装置においても同様である。
またこの血液検査装置40Dにおいては、試薬層67の各検出スポット67a〜67fに臨むようにそれぞれ屈折率分布型レンズ71a〜71fを配置しているので、検出スポット67a〜67f以外の試薬層部分で散乱した測定光が2次元光検出器50に検出されて、血液検査の精度が損なわれることを防止できる。
ここで、上記の効果を確認するために行なった実験の結果について説明する。試薬としてのブロムフェノールブルー水溶液をニトロセルロース膜にスポットして、試薬層を形成した。発色した検出スポットが一定間隔で並んでいる状態になるように、検出スポットの直径を500μm、ピッチを1mmとして、縦2点、横2点で合計4点の検出スポットを形成した。測定光を発する光源にハロゲンランプ、光フィルタにHOYA株式会社製のR-60を用いて上記検出スポットに測定光を照射し、その反射光を各検出スポットに対して個別に屈折率分布型レンズを設けて集光した際の各検出スポットからの反射光量の平均を100としたとき、試薬層67の各検出スポット67a〜67f以外の部分を黒く塗った実験用ユニットを用いた場合も、各検出スポットからの反射光量の平均は100となった。もし、上記屈折率分布型レンズからなる集光光学系が、検出スポット67a〜67f以外の部分からの散乱光も集光しているならば、後者の場合の各検出スポットからの反射光量の平均は100を下回る筈であるが、上述のような結果が出たことにより、集光光学系が上記散乱光を集光していないことが確認された。この結果は、光検出器として2次元光検出器50に代えて1次元光検出器を用いる場合も同様に得られるものである。
次に図13を参照して、本発明に対する第10参考例である血液検査装置40Fについて説明する。この図13に示される血液検査装置40Fは、1列に配置された複数(一例として4個)の検出スポット67a,67b、67cおよび67dを有する試薬層67Fを対象とするものであり、図12に示した血液検査装置40Dと比較すると、4個の屈折率分布型レンズ71a,71b、71cおよび71dが1列に配設されている点、並びに光検出器としてCCDリニアセンサ等からなる1次元光検出器72が用いられている点が異なる。
この血液検査装置40Fにおいても、試薬層67Fに測定光43が照射されると、該試薬層67Fの各検出スポット67a〜67dで反射した光が各々屈折率分布型レンズ71a〜71dにより有効に集光され、よって各レンズ71a〜71d毎に、つまり各検出スポット67a〜67d毎に反射光量が測定される。したがってこの血液検査装置40Fによれば、1次元光検出器72が出力する光検出信号Sに基づいて、発色している各検出スポット67a〜67dの光学濃度を個別に検出することができる。
時間軸上で変化するこれらの光学濃度から、各検出スポット67a〜67dと反応した特定物質の濃度を求めるには、この場合も基本的に、先に説明した図6の装置が採用した検量線を利用する手法を適用すればよい。
次に図14を参照して、本発明に対する第11参考例である血液検査ユニット80について説明する。この図14に示される血液検査ユニット80は、図11に示した血液検査ユニット60と比較すると、基本的に、血液成分分離膜66Gが外筒61の底面68と平行に配置され、それに対応してこの底面68に開口64が形成され、そして外筒61の軸方向に延びる棒状の試薬層67Gが適用されている点が異なるものである。なお上記試薬層67Gには、一例として5個の検出スポット67a,67b、67c、67dおよび67eが形成されている。
この血液検査ユニット80においても、開口64を閉じているゴム膜65に採血針30が突き刺されることにより、そこから全血が外筒61の内部に導入される。導入された全血は血液成分分離膜66Gの上に展開し、固形成分は該血液成分分離膜66Gに捕捉され、また血漿および/または血清は該血液成分分離膜66Gを透過する。血液成分分離膜66Gを透過した血漿および/または血清は試薬層67G上をその長手方向に展開し、この試薬層67Gの検出スポット67a〜67eが、検査対象である血漿および/または血清中の特定物質とそれぞれ反応して発色する。
これらの発色した検出スポット67a〜67eの光学濃度を検出するには、例えば図13に示した血液検査装置40Fと同様の基本構成を有する血液検査装置を好適に用いることができる。
なおこの血液検査ユニット80においても、内筒62に空気導入孔26が設けられるとともに、この空気導入孔26を閉じるシール27が貼着されている。それらにより、この場合も、前述と同様の効果を得ることができる。
次に図15を参照して、本発明の一実施形態による血液検査ユニット90について説明する。この図15に示される血液検査ユニット90は、密閉容器を構成する透明な可撓性シートからなる袋状容器73と、剛性の高い部材から形成されて袋状容器73の開いた一端を閉じる、血液導入開口74を有する蓋部材75と、袋状容器73の中に収容された浸透部材76と、この浸透部材76の中間部に介設された血液成分分離膜77と、試薬層67Hと、袋状容器73の周囲を取り囲む状態に取り付けられた枠部材78とからなる。
上記浸透部材76は多孔質構造体からなり、その一端が蓋部材75の血液導入開口74に臨む一方、他端が試薬層67Hに接する状態に配設されている。血液成分分離膜77は基本的に、図1〜4に示した血液検査ユニット10の血液成分分離膜16等と同様の材料から形成されている。また試薬層67Hは、図11に示した試薬層67等と同様に、板状のニトロセルロース多孔質膜に、互いに異なる複数種(一例として4種)の試薬が各々点着されてなる検出スポット67a,67b、67cおよび67dを有する。これら複数種の試薬は、血漿および/または血清中の相異なる複数の物質とそれぞれ反応して発色を呈するものである。
以下、上記血液検査ユニット90を用いる血液検査について説明する。まず、採血作業について説明する。その際には、例えばヒトの指Fにランセット等によって小さな傷が付けられ、そこから出た全血31が血液導入開口74を通して浸透部材76に付着される。浸透部材76に付着した全血31は、該浸透部材76を袋状容器73の内方側に浸透して行き、血液成分分離膜77に到達する。この全血31の固形成分は血液成分分離膜77の端面上に捕捉され、また血漿および/または血清は該血液成分分離膜77を透過する。血液成分分離膜77を透過した血漿および/または血清は試薬層67Hの上に展開し、この試薬層67Hの検出スポット67a〜67dが、検査対象である血漿および/または血清中の特定物質とそれぞれ反応して発色する。
これらの発色した検出スポット67a〜67dの光学濃度を検出するには、例えば図12に示した血液検査装置40Dと同様の基本構成を有する血液検査装置を好適に用いることができる。
なお、前記枠部材78はある程度の剛性を有する部材から形成されており、この枠部材78の上下を指で押さえながら、図16に矢印Qで示す方向に動かすことができる。採血の後にこの操作を行なうと、浸透部材76を浸透する全血31と、血漿および/または血清とを扱き送ることができるので、血漿および/または血清を確実に試薬層67Hに給送することが可能になり、さらには、採血から血漿および/または血清が試薬層67Hに展開するまでに要する時間も短縮される。
本実施形態の血液検査ユニット90は、可撓性シート製の袋状容器73から密閉容器が構成されているので、互いの間にほとんど隙間を置かずに多数集積するようなことも可能であり、よって、搬送や保管のためのスペースが小さくて済むという効果を奏する。
次に図17を参照して、本発明の別の実施形態による血液検査ユニット100について説明する。この図17に示される血液検査ユニット100は、内部に密閉空間としての直線状の微細通路81を有する透明な板状部材85と、上記微細通路81の途中に介設された血液成分分離膜82と、微細通路81の板状部材85内における端部に配置された試薬層67Jとを有している。
上記微細通路81は板状部材85の一端面83に開口し、この開口84の部分によって血液導入部が構成されている。また試薬層67Jは、図14に示した試薬層67G等と同様に、板状のニトロセルロース多孔質膜に、互いに異なる複数種(一例として4種)の試薬が各々点着されてなる検出スポット67a,67b、67cおよび67dを有する。これら複数種の試薬は、血漿および/または血清中の相異なる複数の物質とそれぞれ反応して発色を呈するものである。
以下、上記血液検査ユニット100を用いる血液検査について説明する。まず、採血作業について説明する。その際には、例えばヒトの指Fにランセット等によって小さな傷が付けられ、この傷の部分を開口84の部分に押し当てることにより、そこから出た全血31が開口84の中に供給される。この全血31は、微細通路81の中を毛細管現象によって奥方側に進み、血液成分分離膜82に到達する。この全血31の固形成分は血液成分分離膜82の端面(開口84側の端面)上に捕捉され、また血漿および/または血清は該血液成分分離膜82を透過する。血液成分分離82を透過した血漿および/または血清は試薬層67Jの上に展開し、この試薬層67Jの検出スポット67a〜67dが、検査対象である血漿および/または血清中の特定物質とそれぞれ反応して発色する。
これらの発色した検出スポット67a〜67dの光学濃度を検出するには、例えば図13に示した血液検査装置40Fと同様の基本構成を有する血液検査装置を好適に用いることができる。
なお上記微細通路81は、毛細管現象を実現するために、微細な連通路86を介して板状部材85の外に開放している。しかしこの連通路86には、空気は通過させる一方で水分はトラップするトラップ材87が介設されているので、血液成分を外に漏らさないという観点から見れば、微細通路81は上記開口84以外の部分では外部に対して密閉されていると言える。
本実施の形態の血液検査ユニット100は、板状部材85を例えばクレジットカード程度の大きさ、厚さに形成する等により、破壊の恐れも少なく、簡単に持ち運び可能なものとなる。
なお、以上説明した血液検査ユニット90および100に対しては、本明細書で説明している参考例の血液検査ユニットが備えている機構を、一部を除いて適用することが可能である。ここで除かれる一部の機構とは、密閉容器が内筒および外筒から構成されている場合に限り適用可能な機構である。また、以上説明した血液検査ユニット90および100を用いて血液する血液検査装置も、本明細書で説明している参考例の血液検査装置の構造を一部を除いて適用して構成することができる。その場合も、除かれる一部の構造とは、血液検査ユニットの密閉容器が内筒および外筒から構成されている場合に限り適用可能な構造である。
次に図18は、本発明の血液検査ユニットにおいて適用され得る別の試薬層124を示すものである。この試薬層124においては、試薬を担持している検出スポット24a、24b以外の部分が、黒色面124Bとされている。試薬層124をこのように形成しておけば、検出スポット24a、24b以外の部分で散乱した測定光が光検出手段に検出されて、血液検査の精度が損なわれることを防止できる。なお、検出スポット24a、24b以外の部分を上述のような黒色面124Bとする代わりに、黒色に近い暗い面、あるいは鏡面としておいても、同様の効果を得ることができる。
ここで、上記の効果を確認するために行なった実験の結果について説明する。試薬としてのブロムフェノールブルー水溶液をニトロセルロース膜にスポットして、試薬層を形成した。発色した検出スポットが一定間隔で並んでいる状態になるように、検出スポットの直径を500μm、ピッチを1mmとして、縦2点、横2点、合計4点の検出スポットを形成した。測定光を発する光源にハロゲンランプ、光フィルタにHOYA株式会社製のR-60を用いて上記検出スポットに測定光を照射し、その反射光をCCDに導いた場合の各検出スポットからの反射光量の平均を100としたとき、検出スポット以外の部分を黒色に塗りつぶした場合の各検出スポットからの反射光量の平均は97となり、検出スポット以外の部分からの散乱光の影響を抑制できることが確認された。
次に図19は、本発明の血液検査ユニットにおいて適用され得るさらに別の試薬層167を示すものである。この試薬層167においては、試薬を担持している検出領域167a、167b、167cおよび167dが短冊状に形成されている。
次に図20を参照して、本発明に対する第12参考例である血液検査ユニット110について説明する。この血液検査ユニット110は、図1に示した血液検査ユニット10と比べると、外筒11と内筒21とが内部に画成する密閉空間内が負圧状態になったときに、この両筒11、21の状態を維持するロック機構が設けられている点が異なるものである。このロック機構は、外筒11の内周壁に形成されたL字状の係合溝111と、内筒21の外周壁から突設されて上記係合溝111内に収められた係合突起121とから構成されている。
この血液検査ユニット110を使用する場合は、内筒21を外筒11から離れる方向、つまり図20中で下方に引いて(そのとき係合突起121は係合溝111の縦溝部分内を移動する)上記密閉空間内を負圧状態にした後、内筒21を同図中の矢印T方向に若干回転させると、係合突起121が係合溝111の横溝部分内に誘い込まれる。すると、内筒21はその軸方向には移動できなくなるので、両筒11、21が自然に元の状態、つまり内部が大気圧になる状態に戻ることを防止できる。そうであれば、両筒11、21がこの元の状態に戻らないようにそれらを指先で保持しておく必要がなくなるので、該両筒11、21内への血液検体の導入作業を簡単に行なえるようになる。
次に図21を参照して、本発明のさらに別の実施形態による血液検査装置について説明する。同図は、この血液検査装置の受光光学系の部分の正面形状を示すものである。この実施の形態の血液検査装置は、例えば図13に示したような試薬層67Fを有する血液検査ユニットを用いて検査を行なうものであり、ここでは、検出スポット67a〜67dからの反射光43Rを集光して1次元光検出器72に導く集光光学系として、多数の屈折率分布型レンズ171が1列に並設されてなるレンズアレイ170が用いられている。
この構成においては、検出スポット67a〜67dのうちの各々で反射した光43Rが複数(一例として4個)の屈折率分布型レンズ171で効率良く集光されて、1次元光検出器72に導かれるようになっている。
なお、上述のように1次元に配列された複数のレンズで反射光43Rを集光する他、2次元に配列された複数のレンズで反射光43Rを集光する光学系も適用可能である。
次に図24を参照して、本発明のさらに別の実施形態による血液検査装置について説明する。同図は、この血液検査装置の送光光学系の部分の斜視形状を示すものである。この実施形態の血液検査装置は、互いに異なる波長の測定光43を発する4個の発光ダイオード244a、244b、244cおよび244dを有し、それらから発せられた測定光43は各々コリメーターレンズ245a、245b、245cおよび245dで平行光とされた後、各々バンドパスフィルタ246a、246b、246cおよび246dに通されるようになっている。
上記の各要素は全て移動台240に搭載され、この移動台240は駆動手段250によって、発光ダイオード244a、244b、244cおよび244dの並び方向、つまり図中の矢印M方向に移動可能となっている。また図6中のものと同様に測定光43を伝搬させる光ガイド45が設けられ、その光入射端面(前端面)の前には、チョッパ251が配設されている。
上記の構成においては、移動台240を移動させることにより、4つの発光ダイオード244a、244b、244cおよび244dの内の1つが選択的に光ガイド45の光入射端面に対向する状態に設定される。そこで、この移動台240を適宜の時間間隔を置いて間欠的に移動させることにより、互いに異なる4種の波長の測定光43を光ガイド45の後端面から出射させて、図示外の血液検査ユニットの試薬層に照射することができる。
なおこの構成においては、チョッパ251を回転させて測定光43を遮る状態を作ることができる。そこで、この状態にした際に、図示外の光検出器(例えば図6に示す2次元光検出器50等)が出力する光検出信号Sを記憶させれば、それを試薬層における測定光43の反射が0%である場合の光検出信号として、前述した光学濃度の較正に利用することができる。
次に図25を参照して、本発明のさらに別の実施形態による血液検査装置について説明する。この血液検査装置40Hは、図13に示した血液検査装置40Fと比べると、1つの大きな光ガイド70の代わりに、試薬層67Fの4つの検出スポット67a、67b、67cおよび67dに向けて個別に測定光43を出射する4つの光ガイド70a、70b、70cおよび70dが用いられている点が異なるものである。
このように4系統に分離された送光光学系を用いれば、4つの検出スポット67a〜67dの各試薬に適合するように分光された測定光を各検出スポット67a〜67d毎に独立して照射可能となり、検査精度の向上が実現される。
次に、本発明の血液検査ユニットを構成する要素の詳細について、一部その製造方法等も併せて説明する。
まず、試薬層を構成する多孔質構造体の例について説明する。本例では、ニトロセルロース膜あるいはポリスルホン膜を用いて、そこにカレンダー方式で多孔質構造体を形成する。互いの中心の間隔を500μmにして配された直径300μmの64個(縦8個×横8個)の孔を有する厚さ100μmのステンレス平板に、空孔径が15μmのニトロセルロース膜(ミリポア・コーポレイション製:STHF)を温度140℃、圧力500kg/cm2、時間2分間の条件で熱圧着し、ステンレス平板の孔の中に多孔質構造体を形成させた。ステンレス平板の孔の外側に存在していた多孔質構造体の部分では、熱圧着により多孔質が消滅して、白色膜が透明に変化し、水が浸透しない構造(障壁)が形成された。
なお、上記ニトロセルロース膜に代えて、同じくミリポア・コーポレイション製の空孔径が0.45μmのニトロセルロース膜(HA)や、富士写真フイルム株式会社製の空孔径が0.5〜50μm(最小空孔径:1〜2μm)の範囲にあるポリスルホン膜や、さらにはアセチルセルロース、セルロース、ナイロン等からなる多孔質膜を用いることも可能である。また、上記ステンレス平板に代えて、ニッケル、銅、銀、金、白金等からなる金属板、あるいはテフロン(登録商標)、ポリスチレン、ポリエチレン等からなる樹脂板を用いることも可能である。
以上のようにして形成される多孔質構造体は、先に説明した各試薬層24、67、67F、67G、67Hあるいは67Jを形成するために用いることができる。
次に、試薬層を構成する多孔質構造体の別の例について説明する。本例では、塗布方式で多孔質構造体を形成する。互いの中心の間隔を500μmにして配された直径300μmの64個(縦8個×横8個)の孔を有する厚さ100μmのステンレス平板に、スチレンブタジエンゴムを予め塗布して乾燥させ、次いでニトロセルロース液(10wt%となるように調整した酢酸エチル溶液)をこのステンレス平板に塗布する。その後、上記孔以外の部分に残ったニトロセルロース液をスクイズするとともに、孔の部分のニトロセルロース液を乾燥させて、このステンレス平板の孔の中に多孔質構造体を形成させた。
以上のようにして形成される多孔質構造体も、先に説明した各試薬層24、67、67F、67G、67Hあるいは67Jを形成するために用いることができる。
なお、上に説明したような多孔質構造体に試薬を保持させるには、例えば、市販のスポッタを使用してそこに一例として1nl(ナノ・リットル)程度の一定量の試薬をスポットし、その後該試薬を乾燥させて検出スポットとする、といった手法を用いることができる。
また、上述のようにして検出スポットを形成する際には、多孔質構造体の検出スポットとする領域以外に水溶性試薬が浸透しないように予め障壁を形成しておくとよい。そのような障壁は、前記熱圧着の手法で多孔質構造体を形成する場合は、先に説明の通り該熱圧着によって自動的に形成されるが、多孔質構造体を形成した後に、熱融着によって新たに形成することも可能である。
さらには、この熱融着による他、必要な試薬を予め含浸させた直径300μmの円形のニトロセルロース膜あるいはポリスルホン膜を形成し、それらを、別のニトロセルロース膜あるいはポリスルホン膜の上に互いに所定間隔を置いて貼り付けて独立した試薬層を形成することにより、それらの周囲部分には水溶性試薬が浸透しない構造を形成することも可能である。
図2に示した血液成分分離膜16等の血液成分分離膜は、試薬層がそこに押し当てられるような場合には、損傷を防止するために、試薬層に接する側の表面に破損防止膜を取り付けておくのが望ましい。それを確かめるために、下記の実験を行なった。ポリスルホン膜からなる血液成分分離膜に、直径200〜400μmの孔が1mmピッチで空いている厚さ300〜400μmのナイロンメッシュを貼り合わせた。これを直径10mmの円形に打ち抜き、長さ20mm、内径10mmのプラスチック円筒の内部に取り付け、ナイロンメッシュ側から、全血を50μl(マイクロ・リットル)滴下した。そして、底面に直径6mmのニトロセルロース膜を取り付けた外径6mmのプラスチック円筒を上記円筒のポリスルホン膜側に差し込み、このポリスルホン膜に300〜500kg/m2の圧力で接触させた。比較として、ナイロンメッシュを貼り合わせないポリスルホン膜を使って、同様の操作を行なった。
その結果、ナイロンメッシュを貼り合わせない方のポリスルホン膜には損傷が生じたが、ナイロンメッシュを貼り合わせた方のポリスルホン膜には損傷が生じなかった。
次に本発明の血液検査ユニットを構成する試薬層の、その他の具体例について説明する。
顕微鏡観察用の1インチ×3インチのスライドガラスにミリポア・コーポレイション製の孔径0.45μmのニトロセルロース多孔質膜を貼り付け、この膜の上に、グルコースオキシダーゼ,ペルオキシダーゼ,1,7−ジヒドロキシナフタレン,4−アミノアンチピリンを混ぜたpH5.5〜6.5に調製したMES緩衝液を、マイクロスポッターを用いて直径約200μmのサイズで縦4個、横6個の合計24箇所に600μm間隔でスポットして乾燥させ、505nm付近を極大吸収波長とする色素系のグルコース検出スポットを作成した。
光源にハロゲンランプを用いて一定強度の光を発生させ、この光を波長505nmの光を通過させる光フィルタを用いて単色化させて測定光として用い、光源から10〜30cm離した位置に試料台を固定し、この試料台の上に置く上記ニトロセルロース多孔質膜と光源との間の距離が一定になるようにした。そして、ニトロセルロース多孔質膜の上記グルコース検出スポットに測定光を照射したときの反射光を、倍率10倍のレンズ系を通してCCD検出器に導く光学系を配置した。
外界からの光を遮った測光系内において、測定光を遮ったときのCCD各素子の受光量を測定し、これを0%反射のときの光量として記憶させた。次に上記ニトロセルロース多孔質膜を設置する同じ場所に白色板を置いてCCD各素子での受光量を測定し、これを100%反射のときの光量として記憶させた。
ニトロセルロース多孔質膜を所定の場所に固定し、24点の検出スポットが確実に濡れるようにヒト血清を点着し、波長505nmの光を照射させたまま、10秒に1度ニトロセルロース多孔質膜からの反射光量を計測し、発色した各スポットの光学濃度に換算した。血清点着後約1分で各スポットの光学濃度が一定に達したので、そのときの光学濃度を終点として求めた。異なるグルコース濃度に調製した複数の血清を同様にして点着することで、グルコース濃度に対する光学濃度の検量線を作成し、その検量線に基づいて、任意のヒト血清のグルコース濃度を求めることができた。
次に、試薬層のさらに別の具体例について説明する。黒色に色付けしたポリエチレン板あるいは表面を黒色にしたステンレス板を用い、そこに直径200〜500μmの孔を直径の2倍の間隔で縦6個、横6個の合計36個開けた、それらの孔の中にニトロセルロース膜を埋め込み、そこにグルコースオキシダーゼ,ペルオキシダーゼ,1,7−ジヒドロキシナフタレン,4−アミノアンチピリンを混ぜたpH5.5〜6.5に調製したMES緩衝液を、マイクロスポッターを用いてスポットして乾燥させた。
この試薬層についても、上記と同様にして、ヒト血清のグルコース濃度を測定可能であることが確認された。
次に、本発明による血液検査装置を構成する要素について、さらに詳細に説明する。
まず測定光を発する光源としては、前述した単色光あるいは白色光を発する発光ダイオードに限らず、ハロゲンランプ、キセノンランプ等の白色光源を用いてもよい。また、測定光を単色化する手段としては、中心波長±3nm程度の帯域の光を通過させる光学フィルタを好適に用いることができる。しかしそれに限らずに、発色した試薬の吸収波長の範囲の波長であるならば、中心波長±30nm程度の光を通過させる比較的単色度の悪いフィルタを用いてもよい。さらには、発色した試薬の吸収波長の範囲にある波長のみの光を発する単色性の高い発光ダイオードや半導体レーザー等を、フィルタを用いずに使用してもよい。
一方、試薬層で反射した光を検出する手段としては、前述のCCDからなるものに限らず、フォトダイオードアレイ、オプティカルマルチアナライザー等の同時複数点測光ができるものを用いてもよいし、光電子増倍管などの単一点測光が可能なものを複数個並べて使用してもよい。
試薬層における測定光の反射が0%である場合の光検出信号Sを得るためには、図22に示したダミーユニット10Kや図24に示したチョッパ251を利用する他、試薬層に向かう測定光や、あるいは試薬層で反射して光検出器に向かう光を遮るその他のあらゆる手段を用いることができる。そのような手段としては、単純に光を遮断する手段のみならず、光の干渉、屈折あるいは回折を利用して光の強度や光路を変えるような手段も適用可能である。さらに、光を光学的に遮ることはしないで、測定光を発する光源への電流供給を遮断し、そのときの光検出器が出力する光検出信号Sを、反射が0%である場合の光検出信号として扱うようにしてもよい。
また試薬層における測定光の反射が100%である場合の光検出信号Sを得るためには、図22に示したダミーユニット10Wの白板23Wを用いる他、光学濃度が既知の灰色・青・緑・黄・赤色板に測定光を照射して、そのときの光検出信号Sから100%反射の場合の光検出信号Sを換算して求めるようにしてもよい。
さらに、前述のダミーユニット10Kが備える黒板23Kと同様の黒板や、ダミーユニット10Wが備える白板23Wと同様の白板を試薬層24の一部に形成しておき、それらに測定光を照射して、各々0%反射の場合、100%反射の場合の光検出信号Sを得るようにしてもよい。
また、試薬層における発色反応の開始点を血液検査装置に判断させる方法は、試薬層からの反射光量を計測する方法に限らず、血液検査ユニットの一部あるいは全部を血液検査装置に直接的・間接的に接触させることによって判断させてもよいし、血液検査ユニットを血液検査装置に装填すると同時に行なうマニュアル操作によって、発色反応開始を示す信号を該血液検査装置に入力させるようにしてもよい。