JP4336239B2 - レーザー溶接用亜鉛系めっき鋼材及びその製造方法、並びにレーザー溶接方法 - Google Patents

レーザー溶接用亜鉛系めっき鋼材及びその製造方法、並びにレーザー溶接方法 Download PDF

Info

Publication number
JP4336239B2
JP4336239B2 JP2004124273A JP2004124273A JP4336239B2 JP 4336239 B2 JP4336239 B2 JP 4336239B2 JP 2004124273 A JP2004124273 A JP 2004124273A JP 2004124273 A JP2004124273 A JP 2004124273A JP 4336239 B2 JP4336239 B2 JP 4336239B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
zinc
oso
steel material
laser welding
alkyl group
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP2004124273A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2005305759A (ja
Inventor
育郎 山岡
信之 下田
明博 宮坂
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Nippon Steel Corp
Original Assignee
Nippon Steel Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Nippon Steel Corp filed Critical Nippon Steel Corp
Priority to JP2004124273A priority Critical patent/JP4336239B2/ja
Publication of JP2005305759A publication Critical patent/JP2005305759A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP4336239B2 publication Critical patent/JP4336239B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Classifications

    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C23COATING METALLIC MATERIAL; COATING MATERIAL WITH METALLIC MATERIAL; CHEMICAL SURFACE TREATMENT; DIFFUSION TREATMENT OF METALLIC MATERIAL; COATING BY VACUUM EVAPORATION, BY SPUTTERING, BY ION IMPLANTATION OR BY CHEMICAL VAPOUR DEPOSITION, IN GENERAL; INHIBITING CORROSION OF METALLIC MATERIAL OR INCRUSTATION IN GENERAL
    • C23CCOATING METALLIC MATERIAL; COATING MATERIAL WITH METALLIC MATERIAL; SURFACE TREATMENT OF METALLIC MATERIAL BY DIFFUSION INTO THE SURFACE, BY CHEMICAL CONVERSION OR SUBSTITUTION; COATING BY VACUUM EVAPORATION, BY SPUTTERING, BY ION IMPLANTATION OR BY CHEMICAL VAPOUR DEPOSITION, IN GENERAL
    • C23C28/00Coating for obtaining at least two superposed coatings either by methods not provided for in a single one of groups C23C2/00 - C23C26/00 or by combinations of methods provided for in subclasses C23C and C25C or C25D

Landscapes

  • Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Chemical Kinetics & Catalysis (AREA)
  • Engineering & Computer Science (AREA)
  • Materials Engineering (AREA)
  • Mechanical Engineering (AREA)
  • Metallurgy (AREA)
  • Organic Chemistry (AREA)
  • Laser Beam Processing (AREA)
  • Laminated Bodies (AREA)
  • Other Surface Treatments For Metallic Materials (AREA)

Description

本発明は、亜鉛系めっき鋼材及びその製造方法、並びにレーザー溶接方法に関する。
亜鉛系めっき鋼材同士、あるいは亜鉛系めっき鋼材と他の金属材を、亜鉛系めっき層が前記めっき鋼材間又はめっき鋼材と他の金属材との間に挟まれるように、重ね合わせてレーザー重ね合せ溶接する際、重ね合せ部の隙間が零あるいは微小であれば、溶接部に多数の溶接欠陥(例えば、ピット、貫通孔やブローホール等)が生じることがあり、その場合は、溶接部の外観や機械的強度が低下する。この理由は、亜鉛系めっき層に存在する低融点(常圧では約420℃)、低沸点(常圧では907℃)の亜鉛が、レーザー照射熱により母材より先に蒸発し、重ね合せ部の隙間が不十分で亜鉛蒸気の逃げ場がないため、母材の溶融に伴い圧力が上昇した亜鉛蒸気が溶融池を通過する際に、溶融母材が爆飛してピットや貫通孔を生じたり、亜鉛蒸気が溶融母材内に閉じ込められブローホールが生成するためである。ここで、「爆飛」とは、亜鉛蒸気が母材の溶融池を通過する際に、溶融母材を激しく吹き飛ばす現象を言う。また、「母材」の融点は、例えば、使用母材が炭素のみを合金元素として含む普通鋼の場合、炭素含有量に依存するが、約1380〜1540℃の範囲で、亜鉛の沸点(907℃)より十分に高い。
亜鉛蒸気の逃げ道となる重ね合せ部の隙間を確保して溶接欠陥の発生を抑止するため、めっき鋼板aに設けた突起の先端部がめっき鋼板bと接するように重ね合せ、次に、鋼板aの突起からやや離れた部位をbに対し押圧クランプして、鋼板aとbを接触させることで、両接触部(突起部とクランプ部)の間に、次第に狭くなる隙間を形成する方法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。また、防錆鋼板cに凸形状のポンチを押し込んで、その周囲を環状に盛り上がらせ、防錆鋼板dと重ね合せた際に、隙間を形成する方法が開示されている(例えば、特許文献2参照)。しかし、いずれの場合も溶接の前に、鋼材に突起や盛り上がりを設ける工程が必要で、新たな設備導入や工程増によるコストアップが問題であった。
また、溶接前に溶接部の亜鉛を除去し、亜鉛蒸気の発生を抑える方法として、レーザー光を2つのビ−ムに分離し、エネルギー密度の低い先行ビームで溶接部の亜鉛を蒸発、離散させ、追従する高エネルギー密度のビームで溶接する方法が開示されている(例えば、特許文献3参照)。しかし、この方法では、重ね合せられた亜鉛めっき鋼板に挟まれた部位の亜鉛除去が不十分となり、溶接欠陥の有効な抑止策とならない欠点があった。
亜鉛を蒸発しにくい化合物にして、亜鉛蒸気の発生を抑える方法として、酸化物の標準生成自由エネルギーΔG°が、鉄より小さく、亜鉛よりも大きい元素の酸化物粉末を、亜鉛めっき鋼板の溶接部に供給しながら、溶接する方法が開示されている(例えば、特許文献4参照)。このような元素の酸化物は、溶接部で鉄を酸化せず、亜鉛を酸化して酸化亜鉛を生成し、亜鉛の蒸発を抑止するとしている。酸化物の標準生成自由エネルギーΔG°が小さい元素ほど酸化され易く、また、その酸化物はより安定であるため、上記特許文献4における考え方は合理的である。しかしながら、標準生成自由エネルギーを温度に対してプロットした所謂エリンガムダイヤグラム(例えば、非特許文献1参照)から明らかなように、室温〜1300℃程度の温度範囲においては、酸化鉄の標準生成自由エネルギーΔG°(Fe→Fe3O4又はFe→FeO)(以下ΔGFe)は、酸化亜鉛の標準生成自由エネルギーΔG°(Zn→ZnO)(以下ΔGZn)より大きいが、両者の差異(|ΔGFe-ΔGZn|)が小さいため、両者の間に酸化物の標準生成自由エネルギーを持つ元素Mと亜鉛とのΔG°差(|ΔGM-ΔGZn|)はさらに小さい。そのため、このような元素の酸化物の多くは、亜鉛を速やかに酸化できず、亜鉛蒸気の発生を有効に抑止できなかった(例えばV2O5(酸化バナジウム(V))。また、1300℃を超える温度では、ΔGFeはΔGZnより小さいため、ΔG°がΔGFeより小さく、かつ、ΔGZnよりも大きい元素は、あり得ない。さらに、前記の特許文献4の実施例では、酸化物粉末としてMnO(酸化マンガン(II))を用いているが、MnOの標準生成自由エネルギーは、室温から1700℃程度の広い温度範囲でΔGZnより小さいため、MnOは亜鉛を酸化できない(例えば、非特許文献1参照)。したがって、亜鉛めっきと、溶接部に供給されたMnOとの共存下でレーザー溶接により生じるとされている酸化亜鉛は、MnOの作用により生じるのではないと考えられる。また、前記の特許文献4における技術については、適量の酸化物を的確に溶接部に供給する設備導入によるコストアップも問題であった。
他の例として、二酸化炭素を含むシールドガスで亜鉛を酸化亜鉛に固定する方法が開示されているが(例えば、特許文献5、特許文献6参照)、この場合も、適量のガスを的確に溶接部に供給する設備導入や、ガスの使用によるコストアップが問題であった。
一方、溶接時に亜鉛より低沸点の化合物を最初に蒸発させ、亜鉛蒸気圧を逃がすための空洞を設ける方法として、亜鉛めっき鋼板の重ね合せ部に、樹脂、セロハンテープ等の有機物の薄いインサート材を介在させてから、溶接する方法が開示されている(例えば、特許文献7参照)。溶接時、沸点が亜鉛より低い樹脂等の有機物が最初に蒸発し、できた隙間に亜鉛蒸気の一部が逃げて、溶鋼中に入る亜鉛蒸気が減るだけでなく、有機物の炭素の一部が溶鋼中に入って、その粘度を下げるため、亜鉛蒸気が表面から抜け易いとしている。ところが、樹脂等の有機物の多くは、溶接時、亜鉛の沸点より遥かに低温(大凡300〜600℃)で、炭化水素基の分解ガスが多量に発生し、溶接部周辺の内圧が急激に上昇する。そのため、亜鉛めっきの目付け量、有機インサート材の種類やインサート方法にもよるが、樹脂コーティング(塗膜)の場合は、概ね5〜25μmの膜厚の時、短時間に大量に発生する分解ガスが溶融母材を爆飛させたり、溶融母材内に閉じ込められ易くなる欠点があった。また、有機接着テープの場合にも、同様の欠点が見出された。さらに、有機インサート材を用いる方法では、溶接時に前記の分解ガスにより異臭が発生し、作業環境を悪化させる懸念があった。加えて、有機インサート材は、母材である亜鉛めっき鋼板に比べ高価なため、この技術が推奨する10μm〜200μmもの厚い有機インサート材の使用は、コストの面でも問題であった。
特開2001-162388号公報 特開2001-162387号公報 特開平4-231190号公報 特開平8-215882号公報 特開平6-328279号公報 特開平7-232293号公報 特開平6-7978号公報 日本金属学会編,金属化学入門シリーズ 第1巻「金属物理化学」、第1刷、日本金属学会、81(1996)
本発明は、亜鉛系めっき鋼材のレーザー重ね溶接技術に関わる上記のような問題点を解決するためになされたものであって、新たな溶接付帯設備の導入を必要とせず、さらに、高価な有機インサート材を用いることなしに、溶接欠陥の発生を最小限に抑え、溶接部外観を低下させないレーザー溶接用亜鉛系めっき鋼材、及びその製造方法、並びに前記亜鉛系めっき鋼材を用いたレーザー溶接方法を提供することを目的としている。
本発明者らは、上記目的を達成するため検討を重ねた結果、レーザー重ね溶接する亜鉛系めっき鋼材上に、150〜850℃の温度範囲で分解し酸素ガスを発生するMnO 、Mn 、Co 、Ag O、TeO 、I 、PrO から選ばれる酸化剤を含む皮膜を設け、前記亜鉛系めっき鋼材同士、又は、前記亜鉛系めっき鋼材と他の金属材との重ね合せ部に、前記皮膜を挟み込んでレーザー溶接すれば、溶接欠陥の発生を最小限に抑えることができ、かつ、溶接部外観を低下させないことを見出した。本発明は、このような知見に基づいて完成されたものであり、その要旨は、以下のとおりである。
(1) 亜鉛又は亜鉛系合金めっきを片面あたり20g/m2以上の亜鉛付着量で被覆してなる鋼材表面の少なくとも一部に、150℃を下回る温度では安定で、150〜850℃の温度範囲で分解し酸素ガスを発生するMnO 、Mn 、Co 、Ag O、TeO 、I 、PrO から選ばれる酸化剤を1種又は2種以上含む皮膜を有することを特徴とするレーザー溶接用亜鉛系めっき鋼材。
(2) 前記皮膜の平均膜厚が0.5〜50μmである(1)記載のレーザー溶接用亜鉛系めっき鋼材。
(3) 前記皮膜中の酸化剤含有量が10体積%以上である(1)記載のレーザー溶接用亜鉛系めっき鋼材。
(4) 前記酸化剤の90体積%以上が粒径10μm以下の微粒子である(1)記載のレーザー溶接用亜鉛系めっき鋼材。
() 前記皮膜が、バインダーを2〜50体積%含有する(1)〜(4)のいずれかに記載のレーザー溶接用亜鉛系めっき鋼材。
() 前記バインダーが、有機樹脂、有機-無機複合体、無機系ゾル、界面活性剤から選ばれる1種又は2種以上である()記載のレーザー溶接用亜鉛系めっき鋼材。
() 前記界面活性剤が、前記めっき表面に付着した有機質又は無機質の一方又は双方の汚れ物質の洗浄剤である()記載のレーザー溶接用亜鉛系めっき鋼材。
() 前記洗浄剤が、分枝型又は直鎖型アルキルベンゼンスルホン酸塩(構造式CaH2a+1-C6H4-SO3 -M+;式中、M+は、分枝型又は直鎖型アルキルベンゼンスルホン酸イオンCaH2a+1-C6H4-SO3 -の対イオンであり、MはNa、NH4、NH(C2H4OH)3、NH2(C2H4OH)2、又はNH3-C2H4OHであり、aは、分枝型又は直鎖型アルキル基の炭素数で、10〜16である)、飽和アルコール硫酸エステル塩(構造式CbH2b+1-OSO3 -M+;式中、M+は、飽和アルコール硫酸エステルイオンCbH2b+1-OSO3 -の対イオンであり、M=Na、NH4、NH(C2H4OH)3、NH2(C2H4OH)2、又はNH3-C2H4OHであり、bは、アルキル基の炭素数で、12〜16である)、不飽和アルコール硫酸エステル塩(構造式CcH2c-1-OSO3 -M+、CcH2c-3-OSO3 -M+ 又はCcH2c-5-OSO3 -M+;式中、M+は、不飽和アルコール硫酸エステルイオンCcH2c-1-OSO3 -、CcH2c-3- OSO3 -又はCcH2c-5-OSO3 -の対イオンであり、MはNa、NH4、NH(C2H4OH)3、NH2(C2H4OH)2、又はNH3-C2H4OHであり、cは、アルケニル基の炭素数で、16〜18である)、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩(構造式CdH2d+1O-(CH2CH2O)m-SO3 -M+;式中、M+は、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステルイオンCdH2d+1O-(CH2CH2O)m-SO3 -の対イオンであり、MはNa、NH4、NH(C2H4OH)3、NH2(C2H4OH)2、又はNH3-C2H4OHであり、dは、アルキル基の炭素数で、12〜18であり、mは、エチレンオキサイド単位の繰返し数で、2〜4である)、α-オレフィンスルホン酸塩(構造式CeH2e+1-CH=CH-(CH2)x-SO3 -M+とCeH2e+1-CH(OH)-(CH2)y-SO3 -M+の混合物;式中、M+は、アルケンスルホン酸イオンCeH2e+1-CH=CH-(CH2)x-SO3 -とヒドロキシアルカンスルホン酸イオンCeH2e+1-CH(OH)-(CH2)y-SO3 -の対イオンであり、MはNa、NH4、NH(C2H4OH)3、NH2(C2H4OH)2、又はNH3-C2H4OHであり、eは、アルキル基の炭素数で、13〜16であり、x、yは、メチレン基の繰返し数で、1〜4である)、石鹸(構造式CfH2f+1-COO-Me+又はC17H33-COO-Me+;式中、Me+は、飽和脂肪酸イオンCfH2f+1-COO-又はオレイン酸イオンC17H33-COO -の対イオンであり、MeはNa、K、NH4、NH(C2H4OH)3、NH2(C2H4OH)2、又はNH3-C2H4OHであり、fは、アルキル基の炭素数で、11〜17である)、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(構造式CgH2g+1O-(CH2CH2O)n-H;式中、gは、アルキル基の炭素数で、12〜18であり、nは、エチレンオキサイド単位の繰返し数で、4〜10である)から選ばれる1種又は2種以上である()記載のレーザー溶接用亜鉛系めっき鋼材。
() 前記洗浄剤が、分枝型又は直鎖型アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム(構造式CaH2a+1-C6H4-SO3Na;式中、aは、分枝型又は直鎖型アルキル基の炭素数で、10〜16である)、飽和アルコール硫酸エステルナトリウム(構造式CbH2b+1-OSO3Na;式中、bは、アルキル基の炭素数で、12〜16である)、不飽和アルコール硫酸エステルナトリウム(構造式CcH2c-1-OSO3Na、CcH2c-3-OSO3Na又はCcH2c-5-OSO3Na;式中、cは、アルケニル基の炭素数で、16〜18である)、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステルナトリウム(構造式CdH2d+1O-(CH2CH2O)m-SO3Na;式中、dは、アルキル基の炭素数で、12〜18であり、mは、エチレンオキサイド単位の繰返し数で、2〜4である)、α-オレフィンスルホン酸ナトリウム(構造式CeH2e+1-CH=CH-(CH2)x-SO3Na、CeH2e+1-CH(OH)-(CH2)y-SO3Naの混合物;式中、eは、アルキル基の炭素数で、13〜16であり、x、yは、メチレン基の繰返し数で、1〜4である)、ナトリウム石鹸(構造式CfH2f+1-COONa又はC17H33-COONa;式中、fは、アルキル基の炭素数で、11〜17である)、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(構造式CgH2g+1O-(CH2CH2O)n-H;式中、gは、アルキル基の炭素数で、12〜18であり、nは、エチレンオキサイド単位の繰返し数で、4〜10である)から選ばれる1種又は2種以上である()記載のレーザー溶接用亜鉛系めっき鋼材。
(10) 150℃を下回る温度では安定で、150〜850℃の温度範囲で分解し酸素ガスを発生するMnO 、Mn 、Co 、Ag O、TeO 、I 、PrO から選ばれる酸化剤、又は、前記酸化剤の複数の混合物を、溶媒に分散または溶解させた処理液を、亜鉛又は亜鉛系合金めっきを片面当たり20g/m2以上の亜鉛付着量で被覆してなる鋼材表面の少なくとも一部に塗布・乾燥して、前記酸化剤を含有する皮膜を形成することを特徴とするレーザー溶接用亜鉛系めっき鋼材の製造方法。
(11) 前記皮膜を鋼材のレーザー溶接部のみに形成する(10)記載のレーザー溶接用亜鉛系めっき鋼材の製造方法。
(12) 前記処理液が、さらに有機樹脂、有機-無機複合体、無機系ゾル、界面活性剤から選ばれる1種又は2種以上からなるバインダー成分を含有する(10)記載のレーザー溶接用亜鉛系めっき鋼材の製造方法。
(13) 前記界面活性剤が、前記めっき表面に付着した有機質又は無機質の一方又は双方の汚れ物質の洗浄剤である(12)記載のレーザー溶接用亜鉛系めっき鋼材の製造方法。
(14) 前記洗浄剤が、分枝型又は直鎖型アルキルベンゼンスルホン酸塩(構造式CaH2a+1-C6H4-SO3 -M+;式中、M+は,分枝型又は直鎖型アルキルベンゼンスルホン酸イオンCaH2a+1-C6H4-SO3 -の対イオンであり、MはNa、NH4、NH(C2H4OH)3、NH2(C2H4OH)2、又はNH3-C2H4OHであり,aは、分枝型又は直鎖型アルキル基の炭素数で、10〜16である)、飽和アルコール硫酸エステル塩(構造式CbH2b+1-OSO3 -M+;式中、M+は飽和アルコール硫酸エステルイオンCbH2b+1-OSO3 -の対イオンであり、MはNa、NH4、NH(C2H4OH)3、NH2(C2H4OH)2、又はNH3-C2H4OHであり、bは、アルキル基の炭素数で、12〜16である)、不飽和アルコール硫酸エステル塩(構造式CcH2c-1-OSO3 -M+、CcH2c-3-OSO3 -M+又はCcH2c-5-OSO3 -M+;式中、M+は、不飽和アルコール硫酸エステルイオンCcH2c-1-OSO3 -、CcH2c-3- OSO3 -又はCcH2c-5-OSO3 -の対イオンであり、MはNa、NH4、NH(C2H4OH)3、NH2(C2H4OH)2、又はNH3-C2H4OHであり、cは、アルケニル基の炭素数で、16〜18である)、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩(構造式CdH2d+1O-(CH2CH2O)m-SO3 -M+;式中、M+は、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステルイオンCdH2d+1O-(CH2CH2O)m-SO3 -の対イオンであり、MはNa、NH4、NH(C2H4OH)3、NH2(C2H4OH)2、又はNH3-C2H4OHであり、dは、アルキル基の炭素数で、12〜18であり、mは、エチレンオキサイド単位の繰返し数で、2〜4である)、α-オレフィンスルホン酸塩(構造式CeH2e+1-CH=CH-(CH2)x-SO3 -M+とCeH2e+1-CH(OH)-(CH2)y-SO3 -M+の混合物;式中、M+は、アルケンスルホン酸イオンCeH2e+1-CH=CH-(CH2)x-SO3 -とヒドロキシアルカンスルホン酸イオンCeH2e+1-CH(OH)-(CH2)y-SO3 -の対イオンであり、MはNa、NH4、NH(C2H4OH)3、NH2(C2H4OH)2、又はNH3-C2H4OHであり、eは、アルキル基の炭素数で、13〜16であり、x、yは、メチレン基の繰返し数で、1〜4である)、石鹸(構造式CfH2f+1-COO-Me+又はC17H33-COO-Me+;式中、Me+は、飽和脂肪酸イオンCfH2f+1-COO-又はオレイン酸イオンC17H33-COO -の対イオンであり、MeはNa、K、NH4、NH(C2H4OH)3、NH2(C2H4OH)2、又はNH3-C2H4OHであり、fは、アルキル基の炭素数で、11〜17である)、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(構造式CgH2g+1O-(CH2CH2O)n-H;式中、gは、アルキル基の炭素数で、12〜18であり、nは、エチレンオキサイド単位の繰返し数で、4〜10である)から選ばれる1種又は2種以上である(13)記載のレーザー溶接用亜鉛系めっき鋼材の製造方法。
(15) 前記洗浄剤が、分枝型又は直鎖型アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム(構造式CaH2a+1-C6H4-SO3Na;式中、aは、分枝型又は直鎖型アルキル基の炭素数で、10〜16である)、飽和アルコール硫酸エステルナトリウム(構造式CbH2b+1-OSO3Na;式中、bは、アルキル基の炭素数で、12〜16である)、不飽和アルコール硫酸エステルナトリウム(構造式CcH2c-1-OSO3Na、CcH2c-3-OSO3Na又はCcH2c-5-OSO3Na;式中、cは、アルケニル基の炭素数で、16〜18である)、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステルナトリウム(構造式CdH2d+1O-(CH2CH2O)m-SO3Na;式中、dは、アルキル基の炭素数で、12〜18であり、mは、エチレンオキサイド単位の繰返し数で、2〜4である)、α-オレフィンスルホン酸ナトリウム(構造式CeH2e+1-CH=CH-(CH2)x-SO3Na、CeH2e+1-CH(OH)-(CH2)y-SO3Naの混合物;式中、eは、アルキル基の炭素数で、13〜16であり、x、yは、メチレン基の繰返し数で、1〜4である)、ナトリウム石鹸(構造式CfH2f+1-COONa又はC17H33-COONa;式中、fは、アルキル基の炭素数で、11〜17である)、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(構造式CgH2g+1O-(CH2CH2O)n-H;式中、gは、アルキル基の炭素数で、12〜18であり、nは、エチレンオキサイド単位の繰返し数で、4〜10である)から選ばれる1種又は2種以上である(14)記載のレーザー溶接用亜鉛系めっき鋼材の製造方法。
(16) レーザービームを用いて、2つの金属材を重ね合せ溶接するレーザー溶接方法において、少なくとも一方の金属材に(1)〜()のいずれかに記載のレーザー溶接用亜鉛系めっき鋼材を用い、該めっき鋼材の酸化剤を含有する皮膜を、該めっき鋼材と相対する金属材との重ね合せ部に挟み込むように配置することを特徴とするレーザー溶接方法。
本発明のレーザー溶接用亜鉛系めっき鋼材は、通常の亜鉛系めっき鋼材上に、レーザー溶接性を高める特定の酸化剤を含有する機能性皮膜を設けるだけでよく、高価な溶接付帯設備の導入が不要であり、また更に、前記酸化剤のバインダーとして、油脂類や人脂を始めとする有機質汚れや、無機塩や鉱物等の無機質汚れに適する洗浄剤を選べば、これらで汚染された亜鉛系めっき鋼材上に、これらの汚れを除去する工程を経ずに前記皮膜を直接設けることができるため、レーザー溶接により組み立てられる自動車や種々車輌の外板材、構造材、部品類等の用途に適用される低コストのレーザー重ね溶接用鋼材として、その産業上の価値は極めて高い。
以下、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
本発明では、150℃を下回る温度では安定で、150〜850℃の温度範囲で分解し酸素ガスを発生するMnO 、Mn 、Co 、Ag O、TeO 、I 、PrO から選ばれる酸化剤、又は、前記酸化剤の複数の混合物を含む皮膜を、亜鉛系めっき鋼材のめっき表面に設け、レーザー溶接する金属材との重ね合せ部に、前記皮膜を挟み込んでレーザー溶接することが大きな技術上のポイントである。このように重ね合せた前記亜鉛系めっき鋼材と金属材にレーザーを照射すると、照射熱による温度上昇に伴い、めっき中の亜鉛が蒸発する温度に昇温する前に前記酸化剤が分解し、めっき近傍で酸素ガスが発生する。この酸素ガスが固体状亜鉛あるいは溶融亜鉛と反応し、亜鉛より遥かに高沸点の亜鉛酸化物(酸化亜鉛ZnOやその他の亜鉛含有複合酸化物)が生成する。そのため、溶接時の爆飛や外観不良を引き起こす亜鉛蒸気の発生を抑えることができる。なお、前記酸化剤以外の酸素の供給源として、溶接部周辺の雰囲気中の酸素ガスがあるが、これらの雰囲気ガスは鋼材の重ね合せ部に入り込み難く、めっき中の固体亜鉛又は溶融状態の亜鉛と有効に接触できない。そのため、雰囲気中の酸素ガスだけでは、めっき中の亜鉛を短時間に効率よく酸化できない。
実際のレ−ザ−溶接では、レ−ザ−照射を受けた溶接部が急激に温度上昇するため、溶接部周辺でどのような反応が何℃で起こるかを直接調査、追跡するのは非常に難しい。そこで、本発明者らは、前記酸化剤の粉末単独、又は前記酸化剤の粉末と金属亜鉛粉末の乾燥混合物をヒーターで加熱し、高温下での反応生成物を分析することによって、レーザー溶接時に、どのような反応がどのような温度レベルで起こるかを推定した。即ち、前記酸化剤の粉末単独、又は前記混合物を被験材とした示差熱分析(以下DTA)と熱質量測定(以下TG)により、反応や蒸発等が起こる温度を調べ、さらに、前記酸化剤の粉末単独又は前記混合物を所定の温度まで昇温後、急冷したものを被験材として、粉末X線回折法で高温下での反応生成物を調べた。前記酸化剤の分解反応で発生する酸素ガスは、反応時の発生ガスを捕集して、ガスクロマトグラフ法(以下GC-TCD)で検出した。これらの調査結果から、温度上昇による前記酸化剤の分解反応(酸素発生反応)の有無、亜鉛と酸素ガスとの反応の有無、亜鉛蒸発の有無、及び、これらの反応や変化が生じる場合は、それらが生じる概ねの温度域が判った。前記DTA、TGにおける昇温条件は、常圧のアルゴンガス雰囲気下で、昇温速度10℃/分、室温〜1600℃までの測定である。本実験の昇温条件は、特に昇温速度において実際のレ−ザ−溶接時と異なるが、亜鉛が蒸発する温度に達する前に、酸化剤から発生する酸素ガスが亜鉛を酸化して固定できるかどうかを判断する方法として有用である。前記粉末X線回折法における測定条件は、Cu管球、広角ゴニオメータを用い、測定角度2θを5〜100°までの走査である。前記GC-TCDにおける測定は、検出器として熱伝導度検出器(TCD)、カラムとしてモレキュラーシーブ5A、13X等を用いた。
本発明者らは、前記DTA、TG及び粉末X線回折法、GC-TCDを併用することにより、150℃を下回る温度では金属亜鉛が共存していても安定で、150℃以上、かつ金属亜鉛が盛んに蒸発を始める温度(概ね800〜850℃)以下の温度で分解して酸素ガスを発生し、亜鉛を酸化、固定できる特定の酸化剤としてMnO 、Mn 、Co 、Ag O、TeO 、I 、PrO から選ばれるを見出した。その酸化剤をめっき上の皮膜の主成分とする本発明のレーザー溶接用亜鉛系めっき鋼材を作製し、別の亜鉛系めっき鋼材との重ね合せ部に、前記皮膜を挟み込んでレーザー重ね合せ溶接した。その結果、反応性が低い化合物(金属亜鉛が盛んに蒸発を始める温度(概ね800〜850℃)以下の温度では酸素ガスを発生せず、かつ亜鉛と直接反応しない化合物)を用いた場合に比べ、レーザー溶接で生じる溶接欠陥が大幅に減少し、かつ溶接部外観が非常に良くなることを確認した。
前記DTA、TG及び粉末X線回折法、GC-TCDを併用した分析調査の例として、酸化剤がMnO2(酸化マンガン(IV))の場合を挙げる。MnO2は、本発明において用いることができる酸化剤の1つである。MnO2粉末と亜鉛粉末の乾燥混合物(亜鉛とMnO2の酸素とのmol比=1.00)を加熱すると、亜鉛の融点(約420℃)よりやや高温側の580℃付近でMnO2が分解し、酸素ガスが発生する(大きな発熱反応で、主反応は4MnO2→2Mn2O3+O2)。この反応で生成するMn2O3は、引き続き、約600℃〜約950℃で酸素ガスを放出してMn3O4に変化するため(6Mn2O3→4Mn3O4+O2)、溶融亜鉛は、MnO2が分解する580℃付近から、亜鉛の沸点(907℃)付近に温度上昇するまで、近傍で発生する酸素ガスに暴露され続ける。その結果、亜鉛の蒸発温度より低い温度で2Zn+O2→2ZnOを主反応とする溶融亜鉛の酸化反応が起こり、溶融亜鉛の多くが、ZnO(沸点1725℃)等の高沸点の亜鉛酸化物に固定されることを確認した。700℃〜780℃の間で、反応せずに残った少量の亜鉛が蒸発する(混合物の質量が7〜15%程度減少する)が、その後、亜鉛の沸点を超える温度(1200℃)までさらに加熱しても、混合物の質量は全く減少せず、昇温による金属亜鉛の蒸発量が、亜鉛粉末単独を加熱する場合に比べ激減することを確認した。また、ZnO等の亜鉛酸化物と、Mn酸化物の最終形態のMn3O4は、いずれも鋼の融点より高い1600℃でも安定に存在し、かつ蒸発しないことを確認した。
一方、MnO2をめっき上の皮膜の主成分とする本発明のレーザー溶接用亜鉛系めっき鋼材を作製し、別の亜鉛系めっき鋼材との重ね合せ部に前記皮膜を挟み込んでレーザー重ね合せ溶接すると、反応性が低い比較化合物(亜鉛の蒸発温度に達するまでに酸素ガスを発生せず、かつ亜鉛と直接反応しない化合物(例えばMnO等))を皮膜主成分に用いた場合や、皮膜を鋼材間に挟み込まない場合に比べ、溶接欠陥が大幅に減少し、かつ溶接部外観が非常に良くなることを見出した。このことから、MnO2を含む皮膜を亜鉛系めっき鋼材のめっき表面に設け、該皮膜を挟み込むように別の鋼材を重ね合せてレーザー溶接した場合、DTA、TG、粉末X線回折法、GC-TCDを併用した調査で見出した反応と同様の反応(酸素ガス発生反応、及び、発生した酸素ガスによる亜鉛の酸化、固定反応)が、レーザー溶接部において亜鉛の蒸発温度に達する前に生じ、亜鉛の蒸発が抑制されたと推測できる。
前記MnO2を加熱することにより生成するMn2O3も、本発明において用いることができる酸化剤の1つである。MnO2の代わりにMn2O3をめっき上の皮膜の主成分とするレーザー溶接用亜鉛系めっき鋼材を作製した場合でも、亜鉛が蒸発する温度以下でMn2O3が酸素ガスを放出するため、MnO2を用いた場合に準ずる溶融亜鉛の固定効果が得られる。
前記DTA、TG及び粉末X線回折法、GC-TCDを併用した分析調査のもう1つの例として、酸化剤がAg2O(酸化銀(I))の場合を挙げる。Ag2Oは、本発明において用いることができる金属酸化物の1つである。Ag2O粉末と亜鉛粉末の乾燥混合物(亜鉛とAg2Oの酸素とのmol比=1.00)を加熱すると、亜鉛の融点(約420℃)より低温側の300℃付近でAg2Oの分解が始まり(2Ag2O→4Ag+O2)、分解による酸素ガスの発生は、約300℃〜400℃前後までの範囲で確認できた。DTAでは、この分解反応に対応する明瞭な吸発熱ピ−クは見られなかったが、TGでは、酸素ガス放散に起因する質量減少が亜鉛の融点より低い約300℃〜400℃前後の間で観察され(混合物の質量の4〜5%程度減少)、さらに昇温すると質量は増大傾向に転じ、亜鉛の酸化(亜鉛による酸素ガス捕捉)に起因する質量増大が、約400℃〜約850℃まで続いた。これは、約400〜420℃で亜鉛が軟化、溶融すると、亜鉛がAg2O粉末表面を濡らし、Ag2Oから放出される酸素ガスと亜鉛との接触効率が高まるため、それ以降の昇温過程では、酸素ガスによる亜鉛の酸化反応が急速に進んだためと思われる。さらに昇温すると、約960℃で、Ag2Oの還元生成物である金属Agの融点に相当する吸熱ピ−クが観察された。亜鉛の沸点を超える温度(1200℃)まで引き続き加熱しても、混合物の質量は全く減少せず、昇温による金属亜鉛の蒸発量が、亜鉛粉末単独を加熱する場合に比べ激減することを確認した。また、溶融亜鉛と酸素ガスとの反応で生じたZnO等の亜鉛酸化物と、還元生成物のAgは、いずれも鋼の融点より高い1600℃でも安定に存在し、かつ蒸発しないことを確認した。
一方、Ag2Oをめっき上の皮膜の主成分とする本発明のレーザー溶接用亜鉛系めっき鋼材を作製し、別の亜鉛系めっき鋼材との重ね合せ部に前記皮膜を挟み込んでレーザー重ね合せ溶接すると、反応性が低い比較化合物(亜鉛の蒸発温度に達するまでに酸素ガスを発生せず、かつ亜鉛と直接反応しない化合物(例えばMnO、BaO等))を皮膜主成分に用いた場合や、皮膜を鋼材間に挟み込まない場合に比べ、溶接欠陥がかなり減少し、かつ溶接部外観が良くなることを見出した。このことから、Ag2Oを含む皮膜を亜鉛系めっき鋼材のめっき表面に設け、該皮膜を挟み込むように別の鋼材を重ね合せてレーザー溶接した場合、DTA、TG、粉末X線回折法、GC-TCDを併用した調査で見出した反応と同様の反応(酸素ガス発生反応、及び、発生した酸素ガスによる亜鉛の酸化、固定反応)が、レーザー溶接部において亜鉛の蒸発温度に達する前に生じ、亜鉛の蒸発が抑制されたと推測できる。
本発明で用いる亜鉛系めっき鋼材は、片面当たり20g/m2以上の亜鉛付着量を有する亜鉛又は亜鉛系合金めっきで被覆された亜鉛系めっき鋼材である。本発明者らは、本発明の皮膜を有さない従来のめっき鋼材において、重ね合せ部の2つの金属材に挟まれた部位にあるめっき層中の全亜鉛量が20g/m2以上であれば、レーザー溶接時に亜鉛蒸気が作る溶接欠陥が表面外観等に悪影響を及ぼし、さらに、重ね合せ部にあるめっき層中の全亜鉛量が40g/m2以上であれば、亜鉛蒸気による溶接欠陥が顕著になり、実用上の問題が生じることを明らかにしている。なお、本発明で用いる亜鉛系めっき鋼材は、片面当たり600g/m2以下の亜鉛付着量を有する亜鉛又は亜鉛系合金めっきで被覆された亜鉛系めっき鋼材であることが好ましい。めっき付着量が片面当たり600g/m2を超える場合、めっき層が極厚のため耐食性に非常に優れるが、成形加工時に著しいめっき割れや剥離が生じるため用途が著しく限定されるだけでなく、製造コスト高となるため、実用性がない。
前記めっき層は、レーザー溶接される重ね合せ部の2つの金属材に挟まれた部位にあればよく、そのような要件を満たすなら、めっき層は、前記亜鉛系めっき鋼材の片面のみにあっても、両面にあっても、少なくとも一方の面に部分的にめっきされていない部分があってもよい。
本発明で用いる亜鉛系めっき鋼材の母材となる鋼は、成分を特に限定せず、普通鋼であっても、Cr含有鋼であっても良い。また、亜鉛系めっき鋼材の表面に被覆される亜鉛系めっきは、片面当たり20g/m2以上の亜鉛付着量を有するものであれば、その種類を特に限定せず、適用可能なめっき層としては、例えば、亜鉛めっき、又は、亜鉛とさらに鉄、アルミニウム、コバルト、錫、ニッケルの少なくとも1種からなる亜鉛系合金めっき、または、これら以外の金属元素や非金属元素を含む亜鉛系合金めっきが挙げられる。めっき層の形成方法も特に限定されず、例えば、電気めっき、無電解めっき、溶融めっき、気相めっき等を用いることができる。めっき処理方法は、連続式、バッチ式のいずれでもよく、例えば、溶融めっきでは、連続式は主に薄板材、線材類に用いられ、バッチ式のめっきは、管類、圧延材、加工品、ボルト・ナット類、鋳鍛造品類等の最終製品に成形した後に、溶融めっき浴に浸漬することによるいわゆる後めっきである。
また、本発明で用いる亜鉛系めっき鋼材へのめっき後の処理として、溶融めっき後の外観均一処理であるゼロスパングル処理、めっき層の改質処理である焼鈍処理、表面状態や材質調整のための調質圧延等があり得るが、本発明においては、特にこれらを限定せず、いずれを適用することも可能である。
本発明で用いる酸化剤は、150℃を下回る温度では安定でなければならない。本発明のレーザー溶接用亜鉛系めっき鋼材は、自動車や種々車輌の外板材、構造材、部品類等の加工、組立分野で用いられる可能性が高く、連続プレス成形等の連続加工の際には、前記鋼材が最高で150℃程度にまで昇温する場合がある。そのため、前記鋼材表面の皮膜に含まれる酸化剤が150℃を下回る温度で不安定な場合、鋼材の連続加工時に少なくとも一部の酸化剤が分解したり周囲の物質を酸化する可能性があり、その結果、めっき中の亜鉛分の一部が酸化され鋼材のめっき性能(耐食性等)が低下したり、有機系バインダーや有機系添加剤が共存すればこれらの一部が酸化劣化したり、未反応の酸化剤量が減って、後のレーザー溶接時に、めっき中の亜鉛分の酸化に必要な酸素ガス量が十分に得られない可能性がある。
本発明で用いる酸化剤は、150℃を下回る温度では安定であるが、150〜850℃の温度範囲で分解して酸素ガスを発生するMnO 、Mn 、Co 、Ag O、TeO 、I 、PrO から選ばれる酸化剤、又は、前記酸化剤の複数の混合物でなければならない。これらを亜鉛との共存下で加熱すると、150℃を下回る温度では安定であるが、150〜850℃の温度範囲で分解して生じる酸素ガスが、固体状亜鉛あるいは溶融亜鉛と反応し、亜鉛の酸化物を形成することができる。前記酸化剤を亜鉛との共存下で加熱した場合、150〜850℃の温度範囲では、前記酸化剤の主要な化学反応は、酸化剤が熱分解して酸素ガスを発生する単独反応(酸化剤→分解生成物+酸素ガス)である。150〜850℃の温度範囲において、前記酸化剤と亜鉛との間で、前記酸化剤の酸素原子を亜鉛に直接供与し、亜鉛の酸化物を形成する酸化還元反応(酸化剤+亜鉛→酸化剤の還元により生成する化合物+亜鉛の酸化物)が起こってもよいが、本発明においては、このような酸化還元反応は、前記酸化剤の主要な化学反応ではない。本発明においては、亜鉛の酸化物生成の主反応は、酸化剤が熱分解して酸素ガスを生成し、その酸素ガスに亜鉛が酸化されると言う、2段階反応である。
本発明で用いるMnO 、Mn 、Co 、Ag O、TeO 、I 、PrO から選ばれる酸化剤が酸素を放出する反応は、150〜850℃の温度範囲で生じる必要があり、固体状亜鉛がやや軟化する約380℃〜溶融亜鉛の蒸発が始まる約700℃までの温度範囲で生じるのが好ましい。レーザー溶接用亜鉛系めっき鋼材表面の皮膜に含まれる酸化剤が、150℃を下回る温度で酸素ガスを放出する場合、既に述べたように、鋼材の連続加工時に昇温して酸素ガスを放出し、めっき中の亜鉛分の少なくとも一部が酸化され鋼材のめっき性能(耐食性等)が低下したり、有機系バインダーや有機系添加剤が共存すればこれらの一部が酸化劣化したり、未反応の酸化剤量が減って、後のレーザー溶接時に、めっき中の亜鉛分の酸化に必要な酸素ガス量が十分に得られない可能性がある。一方、前記酸化剤が酸素ガスを放出する分解温度が850℃を超える場合、レーザー溶接時に亜鉛系めっき中の亜鉛が盛んに蒸発を始める温度(概ね800〜850℃)を超えるまで亜鉛が酸化されないため、亜鉛が殆ど固定されず、昇温と共に亜鉛の多くが蒸発して亜鉛蒸気の圧力が上昇し、レーザー重ね合せ溶接時に溶融母材が爆飛する。なお、本発明のレーザー溶接用亜鉛系めっき鋼材として、亜鉛系合金めっきで被覆された鋼材を用いる場合、めっき中の亜鉛系合金の蒸発温度は、亜鉛と合金を作る元素の種類や合金組成により異なるが、亜鉛のみの場合より高温の場合が多い。従って、前記酸化剤が酸素ガスを放出する分解温度が850℃以下であれば、レーザー溶接時に、亜鉛だけでなく亜鉛系合金めっき中の亜鉛系合金も蒸発前に十分に酸化、固定でき、溶融母材の爆飛を抑制できる。
なお、本発明で用いる酸化剤の粉末と金属亜鉛粉末の乾燥混合物を加熱すると、酸素ガスの発生開始温度以上の温度域で前記酸素ガスによる亜鉛の酸化反応が進み、酸化反応の温度域の多くが380〜850℃の範囲に入る。380℃前後の温度を超えると、固体状亜鉛がやや軟化して亜鉛の酸化剤粉末への浸潤、拡散が始まり、さらに、亜鉛の融点(420℃)以上では、液化した亜鉛が酸化剤粉末を濡らし、速やかに浸潤して両者の接触面積を急速に増大させる。そのため、380℃以上のある温度に達すると、酸化剤から発生する酸素ガスによる亜鉛の酸化反応が、急速に進むと考えられる。また、亜鉛の酸化反応が急速に進む温度域の上限は、酸化剤の種類や粒子形状、大きさ等によりやや異なるが、850℃以下の場合が殆どである。未反応の亜鉛は、概ね800〜850℃に達すると盛んに蒸発を始め、この温度域以上の温度では、酸化反応を受ける溶融亜鉛が極端に少なくなるからである。本発明におけるレーザー重ね合せ溶接においても、亜鉛系めっき鋼材のめっき中の亜鉛又は亜鉛系合金が軟化、さらに溶融する温度以上で、めっきを覆う皮膜に含まれる酸化剤表面を速やかに濡らし、酸化剤の内部に浸潤すると考えられる。そのため、亜鉛又は亜鉛系合金と酸化剤との接触面積が急速に増え、ある温度に達すると、酸化剤から発生した酸素ガスにより、亜鉛又は亜鉛系合金の酸化反応が急速に進むと考えられる。
前記DTA、TGを用いて酸化剤/亜鉛共存系を加熱し、酸化剤が分解して酸素ガスが発生するかどうか、及び、分解生成ガスである酸素による亜鉛の酸化反応が生じるかどうか、実験的に確かめる際に用いる雰囲気ガスとしては、アルゴン、窒素、ヘリウム等の不活性ガスや、前記不活性ガスの複数の混合ガスを用いる。前記不活性ガスは、通常のレーザー溶接時にシールドガスとして用いられるため、DTA、TGを用いた分析の際の雰囲気条件を、実際のレーザー溶接の雰囲気条件に近づけることができる。ここでは、酸素ガス発生を検出することが目的の1つのため、前記雰囲気ガスには、大気中等からの酸素が混入しないよう留意する必要がある。
本発明において、皮膜の平均膜厚は、0.5〜50μmの範囲であることが好ましい。平均膜厚が0.5μm未満の場合、皮膜中の酸化剤の含有量が少なく、鋼材の片面あたり20g/m2以上の亜鉛付着量を有するめっき中の亜鉛又は亜鉛系合金の多くを酸化、固定するには不十分なため、結果として溶接欠陥が生じ易くなる。平均膜厚が50μmを超える場合、皮膜中の酸化剤が過多で、前記めっき中の亜鉛又は亜鉛系合金を酸化、固定する効果が飽和するだけでなく、皮膜コストが高くなる。
なお、本発明において、亜鉛系めっき鋼材の表面に被覆された皮膜の平均膜厚を求める方法としては、例えば、(1) 走査型電子顕微鏡(SEM)や光学顕微鏡を用いて前記皮膜表面に垂直な皮膜断面を観察し、平均膜厚を求める方法、(2) 電磁誘導式の膜厚計を用いて前記皮膜の数箇所の膜厚を測定し、平均膜厚を求める方法、(3) 前記皮膜に電磁波(X線、電子線等)を照射し、主たる皮膜構成元素から発する特性X線(蛍光X線)強度を測定し、平均膜厚を導出する蛍光X線分析法等を適用できる。ここで、蛍光X線分析による平均膜厚は、例えば、以下のようにして求める。(a) 本発明の亜鉛系めっき鋼材の表面に被覆された皮膜に比較的多く含まれ、皮膜中の含有率(質量%)が既知のNa以上の重元素(1種以上)を蛍光X線分析の被験元素とし、前記皮膜に電磁波(X線、電子線等)を照射し、皮膜中に存在する前記被験元素から発する特性X線(蛍光X線)強度を測定する。(b) 前記被験元素を含み、それらの含有量が異なる複数の標準皮膜(例えば、本発明で用いる亜鉛系めっき鋼材表面を被覆する皮膜で、単位表面積の皮膜中に存在する前記被験元素の質量(g/m2)が既知の皮膜)について、前記(a)と同一方法で皮膜中の前記被験元素から発する特性X線(蛍光X線)強度を測定し、特性X線強度と被験元素量の検量線を作成する。(c) 前記(a)(b)から、前記皮膜について、単位表面積の皮膜付着量(g/m2)を求め、皮膜比重から平均膜厚に換算する。このような蛍光X線分析法は測定精度が高く、かつ測定が簡便なため、好適である。
本発明において、亜鉛系めっき鋼材の表面に被覆される皮膜は、本発明に関わる酸化剤を10体積%以上含むのが好ましい。10体積%未満では、皮膜中の酸化剤の含有量が少なく、前記と同様の理由で溶接欠陥が生じ易くなる。本発明では、前記皮膜全体が酸化剤のみで形成されていても問題ない。
本発明で用いる酸化剤は、90体積%以上が粒径10μm以下の微粒子であることが好ましく、90体積%以上が粒径5μm以下の微粒子であることがより好ましい。粒径10μm以下の微粒子が90体積%未満しか含まれない(即ち、粒径10μmを超える大粒子の含有率が10体積%を超える)場合、酸化剤を主成分とする皮膜の平均膜厚(0.5〜50μm)と同程度あるいはそれを超える大きさの粒子が多くなり、皮膜中に酸化剤粒子が偏在したり、酸化剤の比表面積(酸化剤粒子の全表面積/全体積の比率)が少なくなる。その結果、酸化剤表面を濡らし、酸化剤の内部に浸潤するめっき中亜鉛又は亜鉛系合金の割合が少なくなり、酸化剤から発生する酸素ガスと亜鉛又は亜鉛系合金との反応効率が低下し、これらを酸化、固定する効果が不十分になる。また、大粒子が多いと表面凹凸が大きくなって不均一な皮膜となり、皮膜の表面外観を損なう。なお、本発明において、酸化剤微粒子の90体積%以上が粒径10μm以下であるかどうかを判定するには、用いようとする酸化剤粒子の集合体(種々の大きさの粒子からなる混合物)の粒径と累積体積比率の関係を、小粒径のものから順にプロットし、累積体積比率が90%のところの粒径を読み取った「d90(90%粒径)」が10μm以下かどうか調べる。その際の測定は、レーザー光散乱法によるのが好適で、溶媒に粉体を分散させた状態でレーザー光を照射し、その時生じる干渉縞を解析することにより、d90や粒径分布を求めるものである。
本発明で用いる酸化剤微粒子は、どのような方法で製造されたものでもよい。例えば、金属酸化物の場合、固体の粉砕(鉱物塊や金属を酸化した粒子等を機械的に破砕する)、アトマイズ法(溶湯を飛散させるか又は噴霧し、急冷凝固させる)、溶液からの析出(液体に溶け込んだ成分を沈殿させる)、気相法(気化した原料を急冷し析出させるか、気化後に反応ガスと反応させ析出させる)、等で製造したものを用いることができる。
発明で用いるMnO2(酸化マンガン(IV)、二酸化マンガン)、Mn2O3(酸化マンガン(III)、三酸化二マンガン)、Co2O3(酸化コバルト(III))、Ag2O(酸化銀(I))、TeO3(酸化テルル(VI)、三酸化テルル)、I2O5(五酸化二よう素)、PrO2(酸化プラセオジム(IV))は、大気中、150℃を下回る温度においては、単独で存在する場合、亜鉛粉又は亜鉛系合金粉等の金属粉と共存する場合、亜鉛又は亜鉛系合金めっきに接触する場合、有機系バインダーや有機系添加剤等の有機物と共存する場合、水性溶媒に分散させた場合のいずれの場合でも安定であるため、取り扱い易く、工業的用途に最も適する。
一方、NaNO3、KNO3等の硝酸塩類、NaMnO4、KMnO4等の過マンガン酸塩類、NaIO3、KIO3、NaIO4、KIO4等のよう素酸塩、過よう素酸塩類、BaO2等の過酸化物類等の酸化剤も、単独では150〜850℃の温度範囲で分解し酸素ガスを発生するが、本発明においては、皮膜を構成する酸化剤の主成分として用いることは避けた方が好ましい。また、前記の硝酸塩類、過マンガン酸塩類、よう素酸塩類、過よう素酸塩類、過酸化物類の粉末と金属亜鉛粉末の乾燥混合物を用いたDTA、TG測定を行うことも避けた方が好ましい。これらの酸化剤の酸化力は非常に強く、有機系バインダーや有機系添加剤等の有機物と接触させたり、亜鉛粉末等の金属粉と混合すると、150℃を下回る温度でもこれらと反応し、激しく酸化、燃焼させる危険性があるからである。また、一般に不安定で、衝撃を加えると爆発の危険性があるものも含まれるので、皮膜の主成分ではなく添加剤として少量を止むを得ず用いる場合でも、取り扱いに細心の注意が必要である。
本発明において、酸化剤のみでは成膜性や亜鉛系めっき鋼材との密着性が不足する時、バインダーを用いる。その時、亜鉛系めっき鋼材を被覆する皮膜は、酸化剤微粒子を保持するバインダーを2〜50体積%含有するのが好ましい。バインダーは、皮膜をめっき面上に成膜する時、酸化剤微粒子同士をバインドし、皮膜中に均一に分散させ、かつ、皮膜をめっき面に密着させる働きがある。バインダーが皮膜の2体積%未満の場合でも、本発明の他の要件を満たしていれば、期待する効果が発現するが、酸化剤微粒子の種類によっては、微粒子同士をバインドする力や、皮膜のめっき面への密着力が不足する可能性がある。バインダーが酸化剤微粒子をバインドする効果は、バインダーが皮膜の2〜50体積%で十分に発現し、50体積%を超えるとその効果が概ね飽和するため、50体積%を超えてレーザー溶接性に特に寄与しないバインダーを増やすのは好ましくない。
前記バインダーは、有機樹脂、有機-無機複合体、無機系ゾル、界面活性剤の1種又は2種以上の混合物が好ましく、環境負荷性の見地から、それぞれ、水性有機樹脂、水性有機-無機複合体、水性無機系ゾル、水性界面活性剤がより好ましい。
これらの内、水性有機樹脂は、めっき面に塗布後、前記酸化剤の酸素ガス発生温度を下回る鋼材表面到達温度にて乾燥し、均一な皮膜を形成する水溶性樹脂や水分散性樹脂(水不溶性樹脂がエマルションやサスペンション等の形で水中に微分散したもの)が主成分であって、酸化剤微粒子同士をバインドする力や皮膜のめっき面への密着力を高めるものであれば、特に限定しない。本発明で用いる酸化剤は150℃を下回る温度では安定なため、鋼材表面に塗布した水性有機樹脂を乾燥する際、150℃を下回る鋼材表面到達温度は、本発明で用いることができるすべての酸化剤に対して適用できる。
前記水性有機樹脂に共通に見られる構造は、例えば、水に溶解又は分散できるように分子鎖に各種の親水性基を導入したもの、乳化重合や重合後の乳化処理によりエマルションを形成したものを例示できる。このような水性有機樹脂として使用できる樹脂としては、ポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、その他の加熱硬化型の樹脂等を例示でき、架橋可能な樹脂であることがより好ましい。
また、前記の水性有機-無機複合体としては、前記の水性有機樹脂や他の有機成分で変性した有機ポリシロキサン、有機変性シリコーン等を例示できる。前記の水性無機系ゾルとしては、水に分散できるようにコロイド表面に各種の親水性基を導入したものや解膠剤(コロイド粒子の分散剤)を加えたもの等を例示でき、このようなコロイドとして、シリカ、アルミナ、セリア、チタニア、イットリア、ジルコニア等の各種酸化物を例示できる。
前記の水性界面活性剤は、前記酸化剤微粒子同士をバインドする力やめっき面への皮膜密着性を高めるものであれば、特に限定しないが、動植物油、鉱物油等の油脂類、人脂、指紋、汗染み、炭水化物、蛋白質、有機溶媒、樹脂、色素等、種々の有機物や、無機塩、鉱物等、種々の無機物で汚染されためっき面を洗浄できる洗浄剤が好ましい。このような洗浄剤は、有機質汚れ、無機質汚れに対し優れた洗浄力を持つものであれば特に限定しないが、好ましくは、有機質汚れを洗浄する力が強い陰イオン性界面活性剤あるいは非イオン性界面活性剤、あるいはこれらの1種又は2種以上の混合物であって、めっき面の汚れが甚だしくても、これらをめっき面から除去する能力に優れ、かつ、めっき面への比較的良好な濡れ性、成膜性、前記酸化剤微粒子とバインダーの密着性、めっき面への皮膜密着性を発揮するものがよい。このような洗浄剤として本発明で用いることができる陰イオン性界面活性剤の主なものは、分枝型又は直鎖型アルキルベンゼンスルホン酸塩(構造式CaH2a+1-C6H4-SO3 -M+;式中、M+は、分枝型又は直鎖型アルキルベンゼンスルホン酸イオンCaH2a+1-C6H4-SO3 -の対イオンであり、MはNa(分枝型又は直鎖型アルキルベンゼンスルホン酸のナトリウム塩を構成)、NH4(アンモニウム塩を構成)、NH(C2H4OH)3(トリエタノールアミン塩を構成)、NH2(C2H4OH)2(ジエタノールアミン塩を構成)、又はNH3-C2H4OH(モノエタノールアミン塩を構成)であり、aは、分枝型又は直鎖型アルキル基の炭素数で、10〜16である)、飽和アルコール硫酸エステル塩(構造式CbH2b+1-OSO3 -M+;式中、M+は、飽和アルコール硫酸エステルイオンCbH2b+1-OSO3 -の対イオンであり、MはNa(飽和アルコール硫酸エステルのナトリウム塩を構成)、NH4(アンモニウム塩を構成)、NH(C2H4OH)3(トリエタノールアミン塩を構成)、NH2(C2H4OH)2(ジエタノールアミン塩を構成)、又はNH3-C2H4OH(モノエタノールアミン塩を構成)であり、bは、アルキル基の炭素数で、12〜16である)、不飽和アルコール硫酸エステル塩(構造式CcH2c-1-OSO3 -M+、CcH2c-3-OSO3 -M+又はCcH2c-5-OSO3 -M+;式中、M+は、不飽和アルコール硫酸エステルイオンCcH2c-1-OSO3 -、CcH2c-3- OSO3 -又はCcH2c-5-OSO3 -の対イオンであり、MはNa(不飽和アルコール硫酸エステルのナトリウム塩を構成)、NH4(アンモニウム塩を構成)、NH(C2H4OH)3(トリエタノールアミン塩を構成)、NH2(C2H4OH)2(ジエタノールアミン塩を構成)、又はNH3-C2H4OH(モノエタノールアミン塩を構成)であり、cは、アルケニル基の炭素数で、16〜18である)、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩(構造式CdH2d+1O-(CH2CH2O)m-SO3 -M+;式中、M+は、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステルイオンCdH2d+1O-(CH2CH2O)m-SO3 -の対イオンであり、MはNa(ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステルのナトリウム塩を構成)、NH4(アンモニウム塩を構成)、NH(C2H4OH)3(トリエタノールアミン塩を構成)、NH2(C2H4OH)2(ジエタノールアミン塩を構成)、又はNH3-C2H4OH(モノエタノールアミン塩を構成)であり、dは、アルキル基の炭素数で、12〜18であり、mは、エチレンオキサイド単位の繰返し数で、2〜4である)、α-オレフィンスルホン酸塩(構造式CeH2e+1-CH=CH-(CH2)x-SO3 -M+とCeH2e+1-CH(OH)-(CH2)y-SO3 -M+の混合物;式中、M+は、アルケンスルホン酸イオンCeH2e+1-CH=CH-(CH2)x-SO3 -とヒドロキシアルカンスルホン酸イオンCeH2e+1-CH(OH)-(CH2)y-SO3 -の対イオンであり、MはNa(ナトリウム塩を構成)、NH4(アンモニウム塩を構成)、NH(C2H4OH)3(トリエタノールアミン塩を構成)、NH2(C2H4OH)2(ジエタノールアミン塩を構成)、又はNH3-C2H4OH(モノエタノールアミン塩を構成)であり、eは、アルキル基の炭素数で、13〜16であり、x、yは、メチレン基の繰返し数で、1〜4である)、石鹸(構造式CfH2f+1-COO-Me+又はC17H33-COO-Me+;式中、Me+は、飽和脂肪酸イオンCfH2f+1-COO-又はオレイン酸イオンC17H33-COO -の対イオンであり、MeはNa(脂肪酸のナトリウム塩を構成)、K(カリウム塩を構成)、NH4(アンモニウム塩を構成)、NH(C2H4OH)3(トリエタノールアミン塩を構成)、NH2(C2H4OH)2(ジエタノールアミン塩を構成)、又はNH3-C2H4OH(モノエタノールアミン塩を構成)であり、fは、アルキル基の炭素数で、11〜17である)である。また、洗浄剤として本発明で用いることができる非イオン性界面活性剤の主なものは、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(構造式CgH2g+1O-(CH2CH2O)n-H;式中、gは、アルキル基の炭素数で、12〜18であり、nは、エチレンオキサイド単位の繰返し数で、4〜10である)である。本発明では、これらの陰イオン性及び非イオン性界面活性剤から選ばれる1種又は2種以上の混合物を用いる。
前記陰イオン性界面活性剤のナトリウム塩は、対応するアンモニウム塩やトリエタノ−ルアミン塩等より洗浄力、脱脂力が優れるため、本発明で用いる陰イオン性界面活性剤としては、ナトリウム塩が好ましい。即ち、分枝型又は直鎖型アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム(構造式CaH2a+1-C6H4-SO3Na;式中、aは、分枝型又は直鎖型アルキル基の炭素数で、10〜16である)、飽和アルコール硫酸エステルナトリウム(構造式CbH2b+1-OSO3Na;式中、bは、アルキル基の炭素数で、12〜16である)、不飽和アルコール硫酸エステルナトリウム(構造式CcH2c-1-OSO3Na、CcH2c-3-OSO3Na又はCcH2c-5-OSO3Na;式中、cは、アルケニル基の炭素数で、16〜18である)、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステルナトリウム(構造式CdH2d+1O-(CH2CH2O)m-SO3Na;式中、dは、アルキル基の炭素数で、12〜18であり、mは、エチレンオキサイド単位の繰返し数で、2〜4である)、α-オレフィンスルホン酸ナトリウム(構造式CeH2e+1-CH=CH-(CH2)x-SO3Na、CeH2e+1-CH(OH)-(CH2)y-SO3Naの混合物;式中、eは、アルキル基の炭素数で、13〜16であり、x、yは、メチレン基の繰返し数で、1〜4である)、ナトリウム石鹸(構造式CfH2f+1-COONa又はC17H33-COONa;式中、fは、アルキル基の炭素数で、11〜17である)が好ましい。また、前記の分枝型又は直鎖型アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムナトリウムの中で、アルキル基の炭素数が12の分枝型又は直鎖型ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムが特に好ましい。
前記陰イオン性界面活性剤には、陰イオン性界面活性剤との併用により洗浄力を増強できる非イオン性界面活性剤として、ラウリン酸エタノールアミド、ラウリン酸ジエタノールアミド、やし油脂肪酸ジエタノールアミド、パーム核油脂肪酸ジエタノールアミド等の脂肪酸アルカノールアミド(構造式ChH2h+1-CONH-CH2CH2OH又はChH2h+1-CON(CH2CH2OH)2;式中、hは、アルキル基の炭素数で、11〜17である)を添加してもよい。また、前記陰イオン性界面活性剤及び非イオン性界面活性剤の洗浄力を損なわない範囲で、他の陰イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤を添加してもよい。
本発明では、前記の水性有機樹脂、水性有機-無機複合体、水性無機系ゾル、水性界面活性剤の単独使用だけでなく、2種類以上を混合、もしくは変性してバインダーとして用いてもよい。
本発明において、亜鉛系めっき鋼材表面にめっき酸化物等が付着していても、前記皮膜が亜鉛系めっき鋼材のめっき被覆面への密着性を確保できるように、前記皮膜に、めっき酸化物との反応剤やエッチング剤等を含んでいてもよい。
前記の酸化剤とバインダーは、これらを溶媒に分散又は溶解させて処理液を作製するのが、亜鉛系めっき鋼材表面に形成される皮膜中での酸化剤とバインダーの分散性向上や、処理液粘度の最適化等の観点から好ましい。本発明で用いる溶媒は、本発明で用いる酸化剤とバインダーの両方に対し不活性な溶媒、又は、前記酸化剤とバインダーの少なくとも一方に対し膨潤、溶解、変性、化学反応等の活性作用を及ぼすが、本発明の目的を損なうほど大きな性質変化をもたらさない溶媒であれば、どのようなものを用いても良いが、環境負荷性が低くかつ引火性が低い溶媒、特に、水性溶媒が好ましい。水性溶媒としては、水、各種の弱酸や弱アルカリでpH調製した水、あるいは、エタノール、イソプロピルアルコール、メチルエチルケトン等の極性有機溶媒や各種の水溶性添加剤等を少量含む水等を例示できる。水性溶媒への酸化剤とバインダーの分散又は溶解の方法としては、特に限定しない。酸化剤、バインダー、又はその他の添加剤等が水性溶媒に溶解しない場合、安定で均一な分散液を調製するためには、水性溶媒に溶解しない粒子(以下、不溶粒子)と水性溶媒との濡れ性を高めるため湿潤剤(湿潤目的の界面活性剤)を用いたり、不溶粒子の水性溶媒への分散性を高めるため分散剤(分散目的の界面活性剤)を用いたり、湿潤剤と分散剤を併用したり、水性溶媒中での不溶粒子の沈降を防ぐため増粘剤を添加したり、不溶粒子の表面変性等により、表面に酸基を化学結合させ水分散エマルション化(乳化)する等の方策を取るのが好ましい。分散剤を用いた具体的な分散方法の例としては、不溶粒子に陰イオン性又は陽イオン性の界面活性剤等を吸着させ、粒子表面に静電荷を与え、粒子同士を反発させる方法(解膠法)、不溶粒子に分子量の比較的大きな非イオン性界面活性剤を担持させ、見かけの粒子径を嵩高くし、立体障害効果で凝集を防ぐ方法等がある。分散液を調製するために用いる湿潤剤、分散剤や増粘剤は、均一で安定な粒子分散、及び、皮膜形成後は、酸化剤、バインダー、その他の添加剤、さらにめっき面との良好な接着効果が得られるものであれば、特に限定しない。このような分散液は、例えば、微粒子がコロイドであればコロイド分散液、粒子径が概ね0.1μm以上であればサスペンション、粒子を乳化させた場合エマルションである。
本発明で用いる酸化剤は、レーザー溶接用亜鉛系めっき鋼材を製造するため、微粉化工程、他の酸化剤、バインダー、添加剤、溶媒等との混合工程、溶媒への分散又は溶解工程、亜鉛系めっき鋼材への塗布工程、皮膜乾燥工程等の種々の工程を経るが、このような工程で、酸化剤が酸素ガスを発生する温度以上に昇温しない方がよい。このような製造工程で酸化剤が酸素ガス発生温度以上になると、少なくとも一部の酸化剤が分解して酸素ガスが発生し、失われた酸化剤相当量が無駄になり、製造歩留りが低下する。
本発明において、酸化剤とバインダーを溶媒に分散又は溶解させた処理液を亜鉛系めっき鋼材表面に塗布、乾燥する方法としては、処理液を塗布後、前記酸化剤の酸素ガス発生温度を下回る鋼材表面到達温度にて乾燥し、均一な皮膜を形成させ得る方法であれば、特に限定しない。例えば、処理浴への鋼材のディップ、処理液のロールコート、バーコート、刷毛塗り、筆塗りあるいはスプレー等の後、鋼材表面に付着した処理液を熱風等により加熱乾燥あるいは反応させることにより行うが、他の方法で塗布、皮膜形成させてもよく、ここで掲げた方法に限定しない。本発明で用いる酸化剤は150℃を下回る温度では安定なため、鋼材表面に塗布した処理液を乾燥する際、150℃を下回る鋼材表面到達温度は、本発明で用いることができるすべての酸化剤に対して適用できる。
本発明において、前記皮膜は、不揮発分として前記酸化剤を含むが前記バインダーを含まない水性ゾルの乾固物10体積%以上から構成されていてもよい。このような水性ゾルの乾固前の粒子径は、概ね0.0005〜0.05μm(0.5〜50nm)であり、水性ゾルを主成分とする処理液を亜鉛系めっき鋼材表面に塗布、乾燥する方法としては、酸化剤とバインダーを溶媒に分散又は溶解させた処理液の場合と同様に、処理液を塗布後、前記酸化剤の酸素ガス発生温度を下回る鋼材表面到達温度で均一な皮膜を形成させ得る方法であれば、特に限定しない。
本発明のレーザー溶接用亜鉛系めっき鋼材は、前記めっき鋼材にレーザー光が照射される領域のみに、前記皮膜が設けられていてもよい。例えば、前記めっき鋼材からなる部品を所望の形状に成形加工後、溶接により各部品を組上げる場合、成形加工後に、溶接のためにレーザー光が照射される部位のみに前記皮膜を設け、その後重ね合せ溶接すれば、皮膜コストの大幅な削減になる。
本発明のレーザー溶接用亜鉛系めっき鋼材は、前記めっき鋼材同士、あるいは前記めっき鋼材と他のレーザー溶接可能な金属材を重ね合せて、レーザー重ね合せ溶接することができる。その方法は、前記重ね合せ部に、前記めっき鋼材のめっき被覆面に設けられた皮膜を挟み込むように配置してレーザー溶接すればよい。その際、溶接不良等を防ぐため、前記皮膜表面と重ね合せ溶接する金属材表面との間には大きな間隙を設けないのが好ましい。
本発明において、前記皮膜とめっき鋼材の界面に下地処理皮膜を有する場合、その下地皮膜の組成を特に限定しないが、前記皮膜とめっき鋼材との密着性を向上する化合物により形成されることが好ましい。例えば、ジルコニウム、タングステン、チタン、アルミニウム、又は、希土類元素の1種又は2種以上を含む金属系化合物、該金属系化合物以外のりん酸塩、亜りん酸塩、次亜りん酸塩、シリカ、シロキサン結合を有する化合物、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、有機樹脂等から選ばれた1種又は2種以上の化合物が挙げられる。
本発明において、前記皮膜は、その目的を損なわない範囲で、各種の有機あるいは無機系の化合物をさらに含んでいても差し支えない。このような添加剤の例としては、各種の腐食抑制剤、有機あるいは無機系顔料、染料、架橋剤、固形や液状の潤滑剤等が挙げられる。
以下、本発明を実施例及び比較例によって具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
[亜鉛系めっき鋼材]
板厚0.8mmで片面当たり50g/m2の付着量を有する合金化溶融亜鉛めっき鋼板(めっき表層が酸化、発錆しないように防錆油を塗油したもの)を用いた。
[酸化剤]
(1) 二酸化マンガン(酸化マンガン(IV)、MnO2)微粒子 (和光純薬工業(株)製の試薬をさらに機械粉砕したもの、平均粒径1.9μm)
(2) 酸化銀(I)(Ag2O)微粒子 (関東化学(株)製の試薬をさらに機械粉砕したもの、平均粒径2.1μm)
[バインダー]
(i) ポリウレタン樹脂 (三洋化成工業(株)製ユーコート、不揮発分35質量%の水性エマルション)
(ii) アルミナゾル (日産化学工業(株)製アルミナゾル-200、羽毛状Al2O3の平均長さ100nm、平均幅10nm、10質量%水性コロイド溶液)
(iii) 分枝ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム溶液 (関東化学(株)製の試薬である分枝ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム分90質量%固体を水に溶解し、分枝ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム10質量%の水溶液としたもの。分枝ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムのアルキル基の炭素数12)
[酸化剤からの酸素ガス発生温度域の調査]
前記酸化剤微粒子(前記酸化剤(1)、(2)のいずれか1種)を、常圧のアルゴンガス雰囲気下で、昇温速度10℃/分、室温〜1600℃まで昇温し、示差熱分析(DTA)と熱重量測定(TG)により、温度上昇による吸発熱反応や質量変化の有無を調べた。前記酸化剤(1)では、580℃付近に大きな発熱ピークが現れた。また、前記酸化剤(2)では、300〜400℃にかけて質量減少が見られた。これらの発熱ピークや質量減少が見られた温度域での発生ガスを捕集し、熱伝導度検出器(TCD)、カラムとしてモレキュラーシーブ5A、13X等を装填したガスクロマトグラフ(GC-TCD)で分析し、これらの温度域で、前記酸化剤から酸素ガスが発生していることを確認した。
乾燥した窒素雰囲気下で、前記酸化剤微粒子(前記酸化剤(1)、(2)のいずれか1種)に金属亜鉛粉末(関東化学(株)製の試薬)を添加し、よく振り混ぜて、酸化剤の酸素と亜鉛のmol比が1:1の乾燥混合物を作製し、DTAとTGにより、前記と同一条件下で温度上昇による吸発熱反応や質量変化の有無を調べ、さらに、GC-TCDにより酸素ガス発生の有無を調べた。前記酸化剤(1)と亜鉛の混合物では、580℃付近に鋭い発熱ピークが現れ(酸素ガス発生に対応)、続いて700〜780℃にかけて混合物の質量が7〜15%程度減少した(未反応の亜鉛の蒸発に対応)。フレッシュな混合物で数回実験し、このような現象に再現性があることを確認した。また、前記酸化剤(2)と亜鉛の混合物では、300〜400℃にかけて、再現性のある4〜5%程度の質量減少が見られた(酸素ガス発生に対応)。前記酸化剤単独の場合と同様の温度域(酸化剤(1)では580℃近辺、酸化剤(2)では300〜400℃)で、酸素ガスが発生していることを確認した。
[酸化剤から発生する酸素ガスと金属亜鉛の反応温度域の調査]
前記の酸化剤微粉末と亜鉛粉末の乾燥混合物を、常圧のアルゴンガス雰囲気下で、以下の各温度まで10℃/分の昇温速度で昇温した後、急冷して粉末X線回折パターンを測定し、反応生成物を同定した。(a) 常温(熱履歴なし)、(b) 鋭い発熱ピーク(前記酸化剤(1)の場合)又は質量減少(前記酸化剤(2)の場合)が見られる温度より約20〜50℃低温側、(c) 前記の鋭い発熱ピーク又は質量減少が見られる温度より約20〜50℃高温側、(d) 850℃、(e) 1600℃。前記粉末X線回折法における測定条件は、Cu管球、広角ゴニオメータを用い、測定角度2θは5〜100°までの走査とした。(a)では亜鉛の酸化物は皆無であったが、(b)→(c)→(d)と昇温するに従い、ZnOを含む数種の亜鉛の酸化物が生成し、かつ、亜鉛の酸化物の総量が次第に増大することを確認した。(b)→(c)→(d) と昇温するに従い、前記酸化剤は酸素ガスを放出しつつ、高温下でより安定な物質に変化していく(前記酸化剤(1)ではMnO2→Mn2O3→Mn3O4、前記酸化剤(2)ではAg2O→Ag)。
前記混合系において、前記酸化剤(1)(MnO2)、前記酸化剤(1)の熱分解で得られる中間生成物Mn2O3、及び、前記酸化剤(2)(Ag2O)は、亜鉛との共存下で亜鉛を殆ど直接酸化しない。また、前記酸化剤の熱分解で得られる最終生成物Mn3O4とAgは、亜鉛との共存下で亜鉛を直接酸化することができない。さらに、前記の乾燥混合物を昇温する際、元のアルゴンガス雰囲気中には酸素ガスが存在しない。従って、前記乾燥混合物の(b)→(c)→(d)の昇温過程で系内に存在する物質の内、前記混合物に含まれる亜鉛を酸化する能力を持つ物質は、前記酸化剤の熱分解により発生した酸素ガスのみである。前記乾燥混合物を(b)→(c)→(d)と昇温するに従い、亜鉛の酸化物が生成し、かつ、亜鉛の酸化物の総量が次第に増大したのは、昇温過程で前記酸化剤が放出した酸素ガスが亜鉛を酸化したためである。
[本発明の要件を満たす皮膜の形成]
(A) 水性有機樹脂(i)又は無機系ゾル(ii)をバインダーとして用いる場合
前記亜鉛系めっき鋼材をアルカリ脱脂し、防錆油を除去、表面を清浄にした後、前記酸化剤微粒子(前記酸化剤(1)、(2)のいずれか1種)に適量のバインダー(前記バインダー(i)又は(ii)のいずれか)と蒸留水を添加して均一に混合した水性スラリーをバーコータにより塗布し、熱風炉(約80℃)で乾燥後、放冷して、亜鉛系めっき鋼材の片面に乾燥皮膜を形成し、レーザー溶接用亜鉛系めっき鋼材とした。乾燥後の平均皮膜厚は、2μm、10μm、20μmのいずれかとした。
(B) 界面活性剤(iii)をバインダーとして用いる場合
前記亜鉛系めっき鋼材の表面に防錆油や指紋汚れ等が付いたまま、脱脂せずに被験材とした。このような汚れの付着した被験鋼材に、前記酸化剤微粒子(前記酸化剤(1)、(2)のいずれか1種)に適量のバインダー(iii)と蒸留水を添加して均一に混合した水性スラリーをバーコータにより塗布したところ、被験鋼材表面に残る防錆油量の多少に関わらず、鋼材表面が水性スラリーで均一に覆われ、はじきが全く生じなかった。これを熱風炉(約80℃)で乾燥後、放冷したところ、鋼材表面は乾燥皮膜で均一に覆われ、皮膜剥れや割れ等の不良部は殆ど見出されなかった。このような乾燥皮膜を亜鉛系めっき鋼材の片面に形成し、レーザー溶接用亜鉛系めっき鋼材とした。乾燥後の平均皮膜厚は、2μm、10μm、20μmのいずれかとした。
[比較材皮膜の形成]
比較材として、本発明の要件を満たす酸化剤以外の酸化剤である酸化セリウム(IV)(CeO2)微粒子(関東化学(株)製の試薬をさらに機械粉砕したもの、平均粒径1.8μm)、酸化タンタル(V)(Ta2O5)微粒子(関東化学(株)製の試薬をさらに機械粉砕したもの、平均粒径2.8μm)を用い、前記の本発明の要件を満たす皮膜形成(A)の場合と同様にして、アルカリ脱脂した前記亜鉛系めっき鋼材の片面に成膜した。CeO2、Ta2O5は、いずれも150〜850℃の範囲では酸素ガスを放出しないが、CeO2は880〜900℃近辺で一部が分解し、またTa2O5は1480℃近辺で一部が分解し、いずれも酸素ガスを放出することを、前記のGC-TCDや粉末X線回折法を用いて確認した。また、これらは、亜鉛との共存下で850℃まで加熱しても安定で、亜鉛と直接反応しなかった。
各皮膜の構成成分とそれらの皮膜中での体積%、平均皮膜厚を表1に示す。
Figure 0004336239
[被溶接材の作製]
前記皮膜を片面に設けた亜鉛系めっき鋼材、及び、表面に皮膜を設けていない亜鉛系めっき鋼材をそれぞれ長さ120mm、幅40mmの矩形片に切出し、皮膜を挟むように矩形片を重ね合せ、めっき面を水平にして、クランプトルク1470N・cmで固定した。この時、重ね合せる矩形片の組合せにより、重ね合せ後の平均皮膜厚(=皮膜を挟む鋼材のめっき表面間距離の平均値)が、0μm(皮膜なし)、2μm、4μm、10μm、20μm、40μmのものを準備した。
[レーザー溶接条件]
連続発振YAGレーザーを用い、前記の被溶接材(長さ120mm、幅40mm)の直上からレーザービームを照射し、被溶接材の中央部を長手方向に一端から他端までレーザービーム走査し、溶接を行った。
レーザー出力:4.0kW
溶接速度:3、4.5、又は、6m/分
集光位置:鋼板表面
集光径:0.6mm
シールドガス:窒素(流量30L/分)
[レーザー溶接性の評価]
溶接中の被溶接材の爆飛散逸量(質量ロス)と、溶接ビードに生成するピット量及びブローホール発生率を溶接性の指標とした。質量ロスが大きいと、大抵の場合、ビード部が痩せたり、溶接欠陥(ピット、貫通孔やブローホール等)が多発し、継手強度が低下したり、溶接部表面外観が悪くなるため、質量ロスは小さいほどよい。ピット量やブローホール発生率は継手強度と相関があり、小さいほどよい。
(A) 爆飛散逸量(質量ロス)による評価
被溶接材のレーザー溶接前後の質量差を測定し、溶接ビード長100mm当たりの質量ロス(g/100mm)を求めた。同一溶接速度下で、重ね合せ部に皮膜がない被溶接材(表面に皮膜を設けていない亜鉛系めっき鋼材同士の重ね合せ)と皮膜を挟んだ被溶接材の質量ロスを相対比較することにより、溶接性を判定した。皮膜を挟んだ被溶接材、重ね合せ部に皮膜がない被溶接材の質量ロスをそれぞれX、Y(g/100mm)とすると、以下の基準により評価した。
評点4 : X<0.3Y
評点3 : 0.3Y≦X<0.5Y
評点2 : 0.5Y≦X<0.8Y
評点1 : 0.8Y≦X
(B) ピット量及びブローホール発生率による評価
低倍率(20倍又は50倍)の拡大鏡によって、溶接ビードに見られるピットの発生状況を、また、X線透過試験によって、溶接ビード内部のブローホール発生状況を調査した。ブローホール発生率は下記式により求め、以下の基準により溶接性を評価した。
ブローホール発生率(%) =(溶接方向に沿うブローホール長さの総和/溶接長さ120mm)×100
評点5 : 外観に0.1mm径以上のピットがなく、かつ、ブローホール発生もなし
評点4 : 外観に0.1mm径以上のピットがなく、かつ、0%<ブローホール発生率<3%
評点3 : 外観に0.1mm径以上のピットが1〜3個あり、かつ、0%≦ブローホール発生率<3%
評点2 : 外観に0.1mm径以上のピットが1〜3個あり、かつ、3%≦ブローホール発生率<20%
評点1 : 外観に0.1mm径以上のピットが4個以上あるか、又は、20%≦ブローホール発生率
以上の評価結果を、まとめて表2、表3(表2の続き1)、表4(表2の続き2)に示す。
Figure 0004336239
Figure 0004336239
Figure 0004336239
本発明の要件を満たすレーザー溶接用亜鉛系めっき鋼材は、防錆油を除去し表面を清浄にした亜鉛系めっき鋼材上に皮膜を形成した場合(No.1〜No.24;No.36〜No.45)でも、また、防錆油が付着した亜鉛系めっき鋼材にバインダー成分として洗浄剤を含む水性処理液を直接塗装後、水分乾燥することにより皮膜を形成した場合(No.25〜No.35;No.46〜No.55)でも、これらの皮膜を挟むように重ね合せ、レーザー溶接すると、重ね合せ部に皮膜がない場合(No.64〜No.66)に比べ、質量ロスが少なく、ピットやブローホール等の溶接欠陥が少ない、外観美麗な溶接ビードが得られる。その際、新たな溶接付帯設備の導入を必要とせず、前記皮膜形成には高価な有機インサート材は不要である。
一方、本発明の要件を満たさない酸化剤を皮膜主成分として用いた場合(No.56〜No.63)、試験に用いたいずれの平均皮膜厚、いずれの溶接速度においても、レーザー溶接性が非常に悪い。また、本発明の要件を満たす酸化剤を用いていても、皮膜中の含有率が本発明でより好ましい範囲より低い場合(No.9;No.21;No.44;No.54)は、質量ロス、ピット、ブローホール発生率がやや多いため、評点があまり高くなく、溶接性が多少悪い傾向が見られた。

Claims (16)

  1. 亜鉛又は亜鉛系合金めっきを片面あたり20g/m2以上の亜鉛付着量で被覆してなる鋼材表面の少なくとも一部に、150℃を下回る温度では安定で、150〜850℃の温度範囲で分解し酸素ガスを発生するMnO 、Mn 、Co 、Ag O、TeO 、I 、PrO から選ばれる酸化剤を1種又は2種以上含む皮膜を有することを特徴とするレーザー溶接用亜鉛系めっき鋼材。
  2. 前記皮膜の平均膜厚が0.5〜50μmである請求項1記載のレーザー溶接用亜鉛系めっき鋼材。
  3. 前記皮膜中の酸化剤含有量が10体積%以上である請求項1記載のレーザー溶接用亜鉛系めっき鋼材。
  4. 前記酸化剤の90体積%以上が粒径10μm以下の微粒子である請求項1記載のレーザー溶接用亜鉛系めっき鋼材。
  5. 前記皮膜が、バインダーを2〜50体積%含有する請求項1〜4のいずれかに記載のレーザー溶接用亜鉛系めっき鋼材
  6. 前記バインダーが、有機樹脂、有機-無機複合体、無機系ゾル、界面活性剤から選ばれる1種又は2種以上である請求項5記載のレーザー溶接用亜鉛系めっき鋼材
  7. 前記界面活性剤が、前記めっき表面に付着した有機質又は無機質の一方又は双方の汚れ物質の洗浄剤である請求項6記載のレーザー溶接用亜鉛系めっき鋼材
  8. 前記洗浄剤が、分枝型又は直鎖型アルキルベンゼンスルホン酸塩(構造式C a H 2a+1 -C 6 H 4 -SO 3 - M + ;式中、M + は分枝型又は直鎖型アルキルベンゼンスルホン酸イオンC a H 2a+1 -C 6 H 4 -SO 3 - の対イオンであり、MはNa、NH 4 、NH(C 2 H 4 OH) 3 、NH 2 (C 2 H 4 OH) 2 、又はNH 3 -C 2 H 4 OHであり、aは、分枝型又は直鎖型アルキル基の炭素数で、10〜16である)、飽和アルコール硫酸エステル塩(構造式C b H 2b+1 -OSO 3 - M + ;式中、M + は、飽和アルコール硫酸エステルイオンC b H 2b+1 -OSO 3 - の対イオンであり、MはNa、NH 4 、NH(C 2 H 4 OH) 3 、NH 2 (C 2 H 4 OH) 2 、又はNH 3 -C 2 H 4 OHであり、bは、アルキル基の炭素数で、12〜16である)、不飽和アルコール硫酸エステル塩(構造式C c H 2c-1 -OSO 3 - M + 、C c H 2c-3 -OSO 3 - M + 又はC c H 2c-5 -OSO 3 - M + ;式中、M + は、不飽和アルコール硫酸エステルイオンC c H 2c-1 -OSO 3 - 、C c H 2c-3 - OSO 3 - 又はC c H 2c-5 -OSO 3 - の対イオンであり、MはNa、NH 4 、NH(C 2 H 4 OH) 3 、NH 2 (C 2 H 4 OH) 2 、又はNH 3 -C 2 H 4 OHであり、cは、アルケニル基の炭素数で、16〜18である)、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩(構造式C d H 2d+1 O-(CH 2 CH 2 O) m -SO 3 - M + ;式中、M + は、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステルイオンC d H 2d+1 O-(CH 2 CH 2 O) m -SO 3 - の対イオンであり、MはNa、NH 4 、NH(C 2 H 4 OH) 3 、NH 2 (C 2 H 4 OH) 2 、又はNH 3 -C 2 H 4 OHであり、dは、アルキル基の炭素数で、12〜18であり、mは、エチレンオキサイド単位の繰返し数で、2〜4である)、α-オレフィンスルホン酸塩(構造式C e H 2e+1 -CH=CH-(CH 2 ) x -SO 3 - M + とC e H 2e+1 -CH(OH)-(CH 2 ) y -SO 3 - M + の混合物;式中、M + は、アルケンスルホン酸イオンC e H 2e+1 -CH=CH-(CH 2 ) x -SO 3 - とヒドロキシアルカンスルホン酸イオンC e H 2e+1 -CH(OH)-(CH 2 ) y -SO 3 - の対イオンであり、MはNa、NH 4 、NH(C 2 H 4 OH) 3 、NH 2 (C 2 H 4 OH) 2 、又はNH 3 -C 2 H 4 OHであり、eは、アルキル基の炭素数で、13〜16であり、x、yは、メチレン基の繰返し数で、1〜4である)、石鹸(構造式C f H 2f+1 -COO - Me + 又はC 17 H 33 -COO - Me + ;式中、Me + は、飽和脂肪酸イオンC f H 2f+1 -COO - 又はオレイン酸イオンC 17 H 33 -COO - の対イオンであり、MeはNa、K、NH 4 、NH(C 2 H 4 OH) 3 、NH 2 (C 2 H 4 OH) 2 、又はNH 3 -C 2 H 4 OHであり、fは、アルキル基の炭素数で、11〜17である)、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(構造式C g H 2g+1 O-(CH 2 CH 2 O) n -H;式中、gは、アルキル基の炭素数で、12〜18であり、nは、エチレンオキサイド単位の繰返し数で、4〜10である)から選ばれる1種又は2種以上である請求項7記載のレーザー溶接用亜鉛系めっき鋼材
  9. 前記洗浄剤が、分枝型又は直鎖型アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム(構造式C a H 2a+1 -C 6 H 4 -SO 3 Na;式中、aは、分枝型又は直鎖型アルキル基の炭素数で、10〜16である)、飽和アルコール硫酸エステルナトリウム(構造式C b H 2b+1 -OSO 3 Na;式中、bは、アルキル基の炭素数で、12〜16である)、不飽和アルコール硫酸エステルナトリウム(構造式C c H 2c-1 -OSO 3 Na、C c H 2c-3 -OSO 3 Na又はC c H 2c-5 -OSO 3 Na;式中、cは、アルケニル基の炭素数で、16〜18である)、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステルナトリウム(構造式C d H 2d+1 O-(CH 2 CH 2 O) m -SO 3 Na;式中、dは、アルキル基の炭素数で、12〜18であり、mは、エチレンオキサイド単位の繰返し数で、2〜4である)、α-オレフィンスルホン酸ナトリウム(構造式C e H 2e+1 -CH=CH-(CH 2 ) x -SO 3 Na、C e H 2e+1 -CH(OH)-(CH 2 ) y -SO 3 Naの混合物;式中、eは、アルキル基の炭素数で、13〜16であり、x、yは、メチレン基の繰返し数で、1〜4である)、ナトリウム石鹸(構造式C f H 2f+1 -COONa又はC 17 H 33 -COONa;式中、fは、アルキル基の炭素数で、11〜17である)、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(構造式C g H 2g+1 O-(CH 2 CH 2 O) n -H;式中、gは、アルキル基の炭素数で、12〜18であり、nは、エチレンオキサイド単位の繰返し数で、4〜10である)から選ばれる1種又は2種以上である請求項8記載のレーザー溶接用亜鉛系めっき鋼材
  10. 150℃を下回る温度では安定で、150〜850℃の温度範囲で分解し酸素ガスを発生するMnO 、Mn 、Co 、Ag O、TeO 、I 、PrO から選ばれる酸化剤、又は、前記酸化剤の複数の混合物を、溶媒に分散又は溶解させた処理液を、亜鉛又は亜鉛系合金めっきを片面当たり20g/m 2 以上の亜鉛付着量で被覆してなる鋼材表面の少なくとも一部に塗布・乾燥して、前記酸化剤を含有する皮膜を形成することを特徴とするレーザー溶接用亜鉛系めっき鋼材の製造方法
  11. 前記皮膜を鋼材のレーザー溶接部のみに形成する請求項10記載のレーザー溶接用亜鉛系めっき鋼材の製造方法
  12. 前記処理液が、さらに有機樹脂、有機-無機複合体、無機系ゾル、界面活性剤から選ばれる1種又は2種以上からなるバインダー成分を含有する請求項11記載のレーザー溶接用亜鉛系めっき鋼材の製造方法
  13. 前記界面活性剤が、前記めっき表面に付着した有機質又は無機質の一方又は双方の汚れ物質の洗浄剤である請求項12記載のレーザー溶接用亜鉛系めっき鋼材の製造方法
  14. 前記洗浄剤が、分枝型又は直鎖型アルキルベンゼンスルホン酸塩(構造式C a H 2a+1 -C 6 H 4 -SO 3 - M + ;式中、M + は、分枝型又は直鎖型アルキルベンゼンスルホン酸イオンC a H 2a+1 -C 6 H 4 -SO 3 - の対イオンであり、MはNa、NH 4 、NH(C 2 H 4 OH) 3 、NH 2 (C 2 H 4 OH) 2 、又はNH 3 -C 2 H 4 OHであり、aは、分枝型又は直鎖型アルキル基の炭素数で、10〜16である)、飽和アルコール硫酸エステル塩(構造式C b H 2b+1 -OSO 3 - M + ;式中、M + は、飽和アルコール硫酸エステルイオンC b H 2b+1 -OSO 3 - の対イオンであり、MはNa、NH 4 、NH(C 2 H 4 OH) 3 、NH 2 (C 2 H 4 OH) 2 、又はNH 3 -C 2 H 4 OHであり、bは、アルキル基の炭素数で、12〜16である)、不飽和アルコール硫酸エステル塩(構造式C c H 2c-1 -OSO 3 - M + 、C c H 2c-3 -OSO 3 - M + 又はC c H 2c-5 -OSO 3 - M + ;式中、M + は、不飽和アルコール硫酸エステルイオンC c H 2c-1 -OSO 3 - 、C c H 2c-3 - OSO 3 - 又はC c H 2c-5 -OSO 3 - の対イオンであり、MはNa、NH 4 、NH(C 2 H 4 OH) 3 、NH 2 (C 2 H 4 OH) 2 、又はNH 3 -C 2 H 4 OHであり、cは、アルケニル基の炭素数で、16〜18である)、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩(構造式C d H 2d+1 O-(CH 2 CH 2 O) m -SO 3 - M + ;式中、M + は、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステルイオンC d H 2d+1 O-(CH 2 CH 2 O) m -SO 3 - の対イオンであり、MはNa、NH 4 、NH(C 2 H 4 OH) 3 、NH 2 (C 2 H 4 OH) 2 、又はNH 3 -C 2 H 4 OHであり、dは、アルキル基の炭素数で、12〜18であり、mは、エチレンオキサイド単位の繰返し数で、2〜4である)、α-オレフィンスルホン酸塩(構造式C e H 2e+1 -CH=CH-(CH 2 ) x -SO 3 - M + とC e H 2e+1 -CH(OH)-(CH 2 ) y -SO 3 - M + の混合物;式中、M + は、アルケンスルホン酸イオンC e H 2e+1 -CH=CH-(CH 2 ) x -SO 3 - とヒドロキシアルカンスルホン酸イオンC e H 2e+1 -CH(OH)-(CH 2 ) y -SO 3 - の対イオンであり、MはNa、NH 4 、NH(C 2 H 4 OH) 3 、NH 2 (C 2 H 4 OH) 2 、又はNH 3 -C 2 H 4 OHであり、eは、アルキル基の炭素数で、13〜16であり、x、yは、メチレン基の繰返し数で、1〜4である)、石鹸(構造式C f H 2f+1 -COO - Me + 又はC 17 H 33 -COO - Me + ;式中、Me + は、飽和脂肪酸イオンC f H 2f+1 -COO - 又はオレイン酸イオンC 17 H 33 -COO - の対イオンであり、MeはNa、K、NH 4 、NH(C 2 H 4 OH) 3 、NH 2 (C 2 H 4 OH) 2 、又はNH 3 -C 2 H 4 OHであり、fは、アルキル基の炭素数で、11〜17である)、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(構造式C g H 2g+1 O-(CH 2 CH 2 O) n -H;式中、gは、アルキル基の炭素数で、12〜18であり、nは、エチレンオキサイド単位の繰返し数で、4〜10である)から選ばれる1種又は2種以上である請求項13記載のレーザー溶接用亜鉛系めっき鋼材の製造方法
  15. 前記洗浄剤が、分枝型又は直鎖型アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム(構造式C a H 2a+1 -C 6 H 4 -SO 3 Na;式中、aは、分枝型又は直鎖型アルキル基の炭素数で、10〜16である)、飽和アルコール硫酸エステルナトリウム(構造式C b H 2b+1 -OSO 3 Na;式中、bは、アルキル基の炭素数で、12〜16である)、不飽和アルコール硫酸エステルナトリウム(構造式C c H 2c-1 -OSO 3 Na、C c H 2c-3 -OSO 3 Na又はC c H 2c-5 -OSO 3 Na;式中、cは、アルケニル基の炭素数で、16〜18である)、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステルナトリウム(構造式C d H 2d+1 O-(CH 2 CH 2 O) m -SO 3 Na;式中、dは、アルキル基の炭素数で、12〜18であり、mは、エチレンオキサイド単位の繰返し数で、2〜4である)、α-オレフィンスルホン酸ナトリウム(構造式C e H 2e+1 -CH=CH-(CH 2 ) x -SO 3 Na、C e H 2e+1 -CH(OH)-(CH 2 ) y -SO 3 Naの混合物;式中、eは、アルキル基の炭素数で、13〜16であり、x、yは、メチレン基の繰返し数で、1〜4である)、ナトリウム石鹸(構造式C f H 2f+1 -COONa又はC 17 H 33 -COONa;式中、fは、アルキル基の炭素数で、11〜17である)、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(構造式C g H 2g+1 O-(CH 2 CH 2 O) n -H;式中、gは、アルキル基の炭素数で、12〜18であり、nは、エチレンオキサイド単位の繰返し数で、4〜10である)から選ばれる1種又は2種以上である請求項14記載のレーザー溶接用亜鉛系めっき鋼材の製造方法
  16. レーザービームを用いて、2つの金属材を重ね合せ溶接するレーザー溶接方法において、少なくとも一方の金属材に請求項1〜9のいずれかに記載のレーザー溶接用亜鉛系めっき鋼材を用い、該めっき鋼材の酸化剤を含有する皮膜を、該めっき鋼材と相対する金属材との重ね合せ部に挟み込むように配置することを特徴とするレーザー溶接方法。
JP2004124273A 2004-04-20 2004-04-20 レーザー溶接用亜鉛系めっき鋼材及びその製造方法、並びにレーザー溶接方法 Expired - Fee Related JP4336239B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2004124273A JP4336239B2 (ja) 2004-04-20 2004-04-20 レーザー溶接用亜鉛系めっき鋼材及びその製造方法、並びにレーザー溶接方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2004124273A JP4336239B2 (ja) 2004-04-20 2004-04-20 レーザー溶接用亜鉛系めっき鋼材及びその製造方法、並びにレーザー溶接方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2005305759A JP2005305759A (ja) 2005-11-04
JP4336239B2 true JP4336239B2 (ja) 2009-09-30

Family

ID=35435068

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2004124273A Expired - Fee Related JP4336239B2 (ja) 2004-04-20 2004-04-20 レーザー溶接用亜鉛系めっき鋼材及びその製造方法、並びにレーザー溶接方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP4336239B2 (ja)

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN105710508A (zh) * 2014-12-17 2016-06-29 林德股份公司 气体混合物和用于电弧连接或者污染物排放降低的材料加工的方法

Families Citing this family (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2010089138A (ja) * 2008-10-09 2010-04-22 Nissan Motor Co Ltd 亜鉛めっき鋼板のレーザ溶接方法
JP5234648B2 (ja) * 2009-04-01 2013-07-10 株式会社日立ハイテクノロジーズ レーザ加工方法、レーザ加工装置及びソーラパネル製造方法
CN111230297A (zh) * 2020-01-21 2020-06-05 厦门理工学院 一种激光焊接小孔深度增大方法

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN105710508A (zh) * 2014-12-17 2016-06-29 林德股份公司 气体混合物和用于电弧连接或者污染物排放降低的材料加工的方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP2005305759A (ja) 2005-11-04

Similar Documents

Publication Publication Date Title
KR101660617B1 (ko) 신규한 브레이징 개념
Yang et al. Dissimilar laser welding/brazing of 5754 aluminum alloy to DP 980 steel: mechanical properties and interfacial microstructure
CA3026326C (en) Method and flux for hot galvanization
JP4336239B2 (ja) レーザー溶接用亜鉛系めっき鋼材及びその製造方法、並びにレーザー溶接方法
Sohn et al. Anti-corrosion performance and applications of PosMAC® steel
WO2002066705A1 (fr) Feuille d&#39;acier pour pieces electroniques traitee en surface et sans danger pour l&#39;environnement, presentant d&#39;excellentes proprietes de mouillabilite par rapport au soudage et de resistance a la rouille et a la formation de barbe
JP4146384B2 (ja) レーザー溶接用亜鉛系めっき鋼材及びその製造方法、並びにレーザー溶接方法
JP3968070B2 (ja) レーザー溶接用亜鉛系めっき鋼材及びその製造方法並びにレーザー溶接方法
CA2042970C (en) Surface treated al or al alloy material
JP5396921B2 (ja) 溶融金属が表面に付着し難い亜鉛系めっき鋼板
JP2007275706A (ja) 潤滑処理鋼板および潤滑皮膜形成用処理液
Ding et al. Removal of oxide film and wetting behavior of Sn9Zn–xSiC composite solder on 6061 aluminum alloy with activated organic water-soluble flux
Xu et al. Wetting of liquid Zinc-aluminum-magnesium alloy on steel substrate during hot-dipping: Understanding the role of the flux
JP3106635B2 (ja) プレス成形性およびスポット溶接性に優れた合金化溶融亜鉛メッキ鋼板の製造方法
JP2812818B2 (ja) 表面処理AlまたはAl合金材
JP7541278B1 (ja) 溶接継手
McFall-Boegeman et al. Effect of Laser Cleaning and Hyperpassivation on the Electrochemical Behavior of AA2024-T3
Roata et al. Cladding under the spotlight: between performance materials and occupational health hazards
JP7460944B1 (ja) 切断加工品、及びガードレール
JP3810743B2 (ja) 後処理めっき鋼板
JP3910912B2 (ja) 後処理めっき鋼板
Chen et al. Study on the formation and corrosion mechanism of black spot defects on the surface of industrial continuously hot-dip galvanized Zn-2Al-1.5 Mg coating
van Ooij et al. Cosmetic corrosion of welded hot dip galvanized steel panels
TWI396773B (zh) 熔融鍍鋅鋼板
JPH03287787A (ja) プレス成形性、化成処理性、溶接性に優れた亜鉛系めっき鋼板

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20060905

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20090203

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20090406

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20090616

A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20090626

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120703

Year of fee payment: 3

R151 Written notification of patent or utility model registration

Ref document number: 4336239

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R151

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120703

Year of fee payment: 3

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130703

Year of fee payment: 4

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130703

Year of fee payment: 4

S531 Written request for registration of change of domicile

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313531

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130703

Year of fee payment: 4

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

S533 Written request for registration of change of name

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313533

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130703

Year of fee payment: 4

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

S533 Written request for registration of change of name

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313533

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees