JP4323866B2 - 凍結防止剤の製法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、凍結防止剤、特にフェノール類と、カルボン酸塩とを含む凍結防止剤の製法に属する。
【0002】
【従来の技術】
積雪及び気温低下による自動車のスリップ事故等を防止するため、寒冷地では融雪及び融氷作用の速効性が高い塩化ナトリウム、塩化カルシウム等の凍結防止剤を路面に散布して路面上の雪及び氷を溶融する。特許文献1は、塩化カルシウムにポリフェノール等を腐食抑制剤として添加して柱状粒子に形成した融氷雪剤を開示する。また最近は、金属の腐食を抑制し、長時間凍結作用が持続する酢酸カルシウム・マグネシウム(CMA)を単独又は他の物質と混合して凍結防止剤に使用する。例えば、特許文献2は、酢酸カルシウム・マグネシウムと酢酸カリウムとを含む凍結防止剤を開示し、特許文献3は、酢酸カルシウム・マグネシウムの製造時にアルカリ金属又はアルカリ土類金属を混合する凍結防止剤の製造法を開示する。更に、酢酸カルシウム・マグネシウムと塩化ナトリウムとを含む凍結防止剤も公知である。
【0003】
【特許文献1】
特開2000−26843公報(特許請求の範囲、段落0019)
【特許文献2】
特開平8−99928号公報(特許請求の範囲)
【特許文献3】
特開2001−115150公報(特許請求の範囲)
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
前記塩化ナトリウム、塩化カルシウム等の塩化物から成る凍結防止剤は、融氷作用の速効性に優れているが、路面から流出すると周辺植物の枯死や地下水及び河川湖沼の水質汚染を招くと共に、自動車や道路設備の金属部分を激しく腐食させる。このため、特許文献1に示すようにポリフェノール等の腐食抑制剤を添加するが、塩化物による腐食を抑制するには、多量の腐食抑制剤を添加する必要があり、多量に添加すると凝固点が上昇して融氷作用が低減する。また、特許文献1の融氷雪剤は、柱状粒子に形成して路面に対する定着性を向上するが、融氷及び融雪作用を長時間持続させることはできず、路面への散布回数が増え、散布する設備、機械、維持管理費、人件費等の散布コストが増大する。
【0005】
一方、酢酸カルシウム・マグネシウムの凍結防止剤は、塩化物から成る凍結防止剤に比べて金属の腐食を抑制でき、融氷作用も長時間持続するが、路面に散布した直後に融氷作用が現れず、散布後暫くして最初は粒子に接する氷面だけ融解し、所望の融氷を達成するには長時間要する。また、酢酸カルシウム・マグネシウムに酢酸カリウム及びアルカリ金属又はアルカリ土類金属を添加する特許文献2及び3の凍結防止剤では、酢酸カルシウム・マグネシウム単独に比べて、融氷融雪作用の速効性は向上するが、水分を吸湿し易く長期間安定な状態で保存できない。
【0006】
そこで、本発明は、散布直後の速効性に優れ、融氷融雪作用を長時間持続できる凍結防止剤の製法を提供することを目的とする。
また、本発明は、金属の腐食を抑制すると共に、環境保護性に優れた凍結防止剤の製法を提供することを目的とする。
更に、安定な状態で長期間保持できる凍結防止剤の製法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明による凍結防止剤の製法は、木材又は竹を加熱して発生する気体を冷却し、粗木酢液を生成する工程と、粗木酢液を静置してタール分を分離除去することにより、木酢液を生成する工程と、木酢液にアルカリ金属及びアルカリ土類金属から選択された1種又は2種以上の金属を含む塩基性化合物を添加して、混合液を生成する工程と、混合液を乾燥させて、フェノール水酸基含有量として2×10-4〜9重量%のフェノール類を含む凍結防止剤を生成する工程とを含む。
【0008】
凍結防止剤は、フェノール類と、アルカリ金属及びアルカリ土類金属から選択された1種又は2種以上の金属のカルボン酸塩とを含む。フェノール類と、アルカリ金属及びアルカリ土類金属から選択された1種又は2種以上の金属のカルボン酸塩とを混合することにより、相乗効果として、速効性及び持続性のある融雪作用及び融氷作用が得られ、また金属の腐食を長期間抑制できる。
【0009】
本発明により製造した凍結防止剤を凍結面に散布すると、氷表面に接触した凍結防止剤の結晶が短時間で崩壊し、粒子が速やかに融解して氷の溶解速度が向上する。特に、単体では速効性が劣るカルボン酸塩でもフェノール類の添加により、凍結防止剤の結晶化を抑制し結晶界面の結合強度を低減させるので、融雪作用及び融氷作用を促進して速効性が得られる。また、フェノール類の水酸基は、融氷作用に防錆作用を付与し金属の腐食を確実に抑制できる。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明による凍結防止剤の製法の実施の形態を説明する。
本実施の形態による凍結防止剤は、フェノール類とカルボン酸塩とを含有する。フェノール類は、フェノール、クレゾール、アルキルフェノール、フェニルフェノール、ビニルフェノール、アリルフェノール、プロペニルフェノール、アルコキシフェノール、ヒドロキシベンズアルデヒド、ヒドロキシフェノン、ナフトール及びサリチル酸から選択された一分子内に1個のフェノール性水酸基を有するモノフェノールと、ジヒドロキシベンゼン、没食子酸、カテキン、タンニン及びフェノール樹脂から選択された一分子内に複数個のフェノール性水酸基を有するポリフェノールとの何れか又は両方を使用できる。
【0011】
本凍結防止剤は、フェノール水酸基含有量として1×10-4〜5mol/kgのフェノールを含む。本明細書のフェノール水酸基含有量とは、凍結防止剤中のフェノール量を水酸基量で表した割合であり、前記数値に水酸基分子量17を掛けて百分率で表記すると2×10-4〜9重量%となる。フェノール水酸基含有量が1×10-4mol/kg(2×10-4重量%)未満であると、凍結防止剤の結晶化度が高く融氷融雪作用の速効性が低下すると共に、金属の腐食抑制作用も低下する。また、5mol/kg(9重量%)を超えると、凍結防止剤の溶融温度が上昇して融氷融雪作用が低下すると共に、凍結防止剤の造粒が困難となる。フェノール水酸基含有量は、1×10-3〜2mol/kg(2×10-3〜3重量%)が特に好ましい。
【0012】
カルボン酸塩のカルボン酸は、蟻酸、蓚酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、アクリル酸、クロトン酸、アジピン酸等の脂肪族カルボン酸並びに安息香酸、フタル酸、サリチル酸等の芳香族カルボン酸の1又は2以上である。カルボン酸を含む凍結防止剤は単位重量当たりのカルボン酸濃度が高い程、解氷融雪能が高いため、分子量が小さい蟻酸、蓚酸及び酢酸が特に好ましい。カルボン酸塩は、リチウム、ナトリウム及びカリウムのアルカリ金属並びにカルシウム及びマグネシウムのアルカリ土類金属から選択される1又は2以上である。
【0013】
本実施の形態では、フェノール類と、カルボン酸と、アルカリ金属及びアルカリ土類金属から選択された1種又は2種以上の金属を含む塩基性化合物とを原料として含む。
【0014】
塩基性化合物は、酸化リチウム、酸化ナトリウム、酸化カリウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム等の金属酸化物、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等の金属水酸化物、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム等の炭酸塩及び炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素カルシウム等の炭酸水素塩から選択される。また、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウムの複合塩であるドロマイト、ドロマイトを焼成した酸化マグネシウム、酸化カルシウムを主成分とした焼成ドロマイト、焼成ドロマイトを水和した水酸化マグネシウム、水酸化カルシウムを主成分としたドロマイトプラスター等の複合酸化物、複合水酸化物、複合炭酸塩も使用できる。更に、アンモニア、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、プロピルアミン、ジプロピルアミン、トリプロピルアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン、トリブチルアミン、エタノールアミン、ブタノールアミン及びアミノ酸類から選択された窒素化合物と、アルカリ金属及びアルカリ土類金属から選択された金属とを含む塩基性化合物も使用できる。フェノール類及びカルボン酸は前記同様である。
【0015】
前記原料から凍結防止剤を形成するとき、最初に原料としてカルボン酸500〜10000重量部と、アルカリ金属及びアルカリ土類金属から選択された1種又は2種以上の金属を含む塩基性化合物500〜3000重量部とを水中で混合し反応させてカルボン酸塩の水溶液を生成する。カルボン酸塩の水溶液は、金属の腐食を抑制するためにアルカリ性溶液とする。カルボン酸が500重量部未満であると融氷作用の持続性が低下し、10000重量部を超えると酸性度が高くなり金属の腐食を招く。塩基性化合物が500重量部未満であると凍結防止作用の速効性が低下し、3000重量部を超えると金属腐食が早期に起こる。
【0016】
特に、カルボン酸として酢酸2000〜4000重量部と、アルカリ金属及びアルカリ土類金属から選択された1種又は2種以上の金属を含む塩基性化合物として、水酸化カルシウム10〜2000重量部及び水酸化マグネシウム10〜2000重量部含む混合物1000〜2500重量部とを反応させて、酢酸カルシウム・マグネシウムの水溶液を得ることが好ましい。
【0017】
次に、得られたカルボン酸塩の水溶液と、フェノール類2×10-2〜1500重量部とを混合してフェノール混合液を生成する。フェノール類が2×10-2重量部未満であると凍結防止作用の速効性及び防錆作用が低下し、1500重量部を超えると凍結防止作用自体が低下する。特に、没食子酸、2,6−ジメトキシフェノール(シリンゴール)及びp−クレゾールから選択されたフェノール類0.2〜100重量部を混合してフェノール混合液を生成するこが好ましい。
【0018】
更に、生成したフェノール混合液を乾燥させて、フェノール水酸基含有量として2×10-4〜9重量%のフェノール類を含む粒状又は粉状の凍結防止剤を形成する。
【0019】
凍結防止剤の原料となるカルボン酸及びフェノール類の何れか又は両方を木材又竹の炭化による炭製造過程で抽出される木酢液から得てもよい。木材、竹を加熱して炭化し発生する気体を冷却すると、タール分を含む粗木酢液が得られ、粗木酢液を長期間、例えば1ヶ月以上静置しタール分を分離除去して清澄な木酢液を精製する。木酢液の製造装置、製造方法は、例えば特許第3,346,723号公報、特開平8−157832号公報に開示される。本実施の形態に使用する木酢液は特に限定されないが、酢酸含有率の高い木酢液が好ましく、タール分は凍結防止に本質的な効果が無いことから、タール分含有率が低い木酢液が好ましい。
【0020】
木酢液の組成は、原料、炭化法、木酢液採取法及び精製法により異なるが、一般的に水分80〜90%と、有機物10〜20%とを含有する。有機物は酢酸、蟻酸、酪酸、プロピオン酸等の有機酸類、メタノール、ブタノール、アミルアルコール等のアルコール類、ホルムアルデヒド、フルフラール等のアルデヒド類である。更に、本発明により得られる凍結防止剤に有効なフェノール類も含有する。
【0021】
木酢液に含まれるフェノール類のモノフェノールは、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、2−メトキシ−4−クレゾール等のクレゾール、2,3−ジメチルフェノール、2,4−ジメチルフェノール、2,5−ジメチルフェノール、2,6−ジメチルフェノール、3,4−ジメチルフェノール、3,5−ジメチルフェノール、2−エチルフェノール、3−エチルフェノール、4−エチルフェノール、t−ブチルフェノール、2,3,5−トリメチルフェノール、2−エチル−5−メチルフェノール、3−エチル−5−メチルフェノール、2−メトキシ−3−メチルフェノール、2−メトキシ−4−メチルフェノール(4−メチルグアイコール)、2−メトキシ−4−エチルフェノール、2−メトキシ−4−イソプロピルフェノール、2−メトキシ−4−プロピルフェノール、2,6−ジメトキシ−4−メチルフェノール、2,6−ジメトキシ−4−エチルフェノール、2,6−ジメトキシ−4−イソプロピルフェノール、2,6−ジメトキシ−4−プロピルフェノール等のアルキルフェノール、フェニルフェノール、2−メチル−4−ビニルフェノール、2,6−ジメトキシ−4−ビニルフェノール等のビニルフェノール、2−メチル−4−アリルフェノール、2,6−ジメトキシ−4−アリルフェノール等のアリルフェノール、2−メトキシ−4−(Z)−プロペニルフェノール、2−メトキシ−4−(E)−プロペニルフェノール、2,6−ジメトキシ−4−(Z)−プロペニルフェノール、2,6−ジメトキシ−4−(E)−プロペニルフェノール等のプロペニルフェノール、2−メトキシフェノール(グアイアコール)、3−メトキシフェノール、2,6−ジメトキシフェノール(シリンゴール)、4−アセチル−2−メトキシフェノール(アセトバニロン)、4−アリル−2,6−ジメトキシフェノール、4−アリル−2−メトキシフェノール(オイゲノール)等のアルコキシフェノール、2−ヒドロキシベンズアルデヒド、4−ヒドロキシ−3−メトキシベンズアルデヒド(バニリン)、4−ヒドロキシ−3,5−ジメトキシベンズアルデヒド等のヒドロキシベンズアルデヒド、4'−ヒドロキシ−3'−メトキシアセトフェノン、4'−ヒドロキシ−3',5'−ジメトキシアセトフェノン、4'−ヒドロキシ−3',5'−ジメトキシプロピオフェノン等のヒドロキシフェノン、1−ナフトール等のナフトール及びサリチル酸である。
【0022】
また、木酢液に含まれるフェノール類のポリフェノールは、1,2−ジヒドロキシベンゼン、1,3−ジヒドロキシベンゼン、1,2−ジヒドロキシ−3−メチルベンゼン、1,2−ジヒドロキシ−4−メチルベンゼン、1,2−ジヒドロキシ−3−メトキシベンゼン、1,2−ジヒドロキシ−4−エチルベンゼン等のジヒドロキシベンゼンである。
【0023】
得られた木酢液にアルカリ金属及びアルカリ土類金属から選択された1種又は2種以上の金属を含む前記同様の塩基性化合物を添加して、混合液を生成する。続いて混合液を乾燥することにより、フェノール水酸基含有量として2×10-4〜9重量%のフェノール類を含む粒状又は粉状の凍結防止剤が得られる。木酢液を用いた凍結防止剤は、木酢液由来の着色成分により、太陽光を良く吸収して発熱し解氷及び融雪作用を促進する。
【0024】
本凍結防止剤では、カルボン酸塩水溶液生成、混合液生成又は凍結防止剤形成の際に、防錆剤、着色剤、消臭剤、芳香剤、造粒用バインダ、消泡剤、防腐剤、固結防止等を添加できる。また、カルボン酸塩の水溶液を生成するとき、水、有機溶剤等の反応溶媒を添加して中和反応を制御してもよい。凍結防止剤を実際に路上に散布する形態は、液状及び粒子状の何れでもよいが、長時間融氷作用を維持する粒径0.1〜30mmの粒子状凍結防止剤が好ましい。粒径が0.1mm未満であると、粒子が互いに固結し易く、目的箇所以外への飛散量が増え、融氷作用の持続性が低下する。粒径が30mmを超えると、速効性が低下すると共に、散布ムラが増加し路面全体に均一に散布できない。凍結防止剤の粒径は、0.5〜20mmが好ましく1〜10mmが特に好ましい。
【0025】
本発明により得られる凍結防止剤を単独で又は従来の凍結防止剤と併用して使用できる。従来の凍結防止剤は、例えば酢酸カルシウム・マグネシウム、酢酸カルシウム、酢酸マグネシウム、酢酸カリウム、蟻酸カリウム、蟻酸ナトリウム等のカルボン酸系凍結防止剤、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム等の塩化物系凍結防止剤、硝酸カルシウム、硝酸マグネシウム等の硝酸系凍結防止剤である。
【0026】
【実施例】
以下、本発明による凍結防止剤の製法の実施例を具体的に説明する。
[実施例1]
30重量%酢酸9050gとドロマイトプラスター(村樫石灰社製)1378g(水酸化カルシウム868g及び水酸化マグネシウム507g含有)とを混合して、撹拌機及び温度計付きステンレス製反応器により70℃で1時間撹拌して酢酸マグネシウム・カルシウム(CMA)水溶液を生成した。次に、酢酸マグネシウム・カルシウム水溶液に没食子酸(化1)一水和物2×10-2gを添加し混合して得たフェノール混合液をステンレスバットに移し、150℃で4時間オーブンにより加熱して水分を蒸発させて白色塊状の固形物3120gを得た。この固形物をピンミル(奈良機械社製)により粉砕し、水をバインダとしてパン型造粒器により造粒した後、オーブンにより150℃で2時間乾燥して、フェノール水酸基含有量1×10-4mol/kgの凍結防止剤を形成した。
【0027】
【化1】
【0028】
[実施例2]
没食子酸一水和物の添加量を0.2gとした以外は、実施例1と同様の方法により、フェノール水酸基含有量1×10-3mol/kgの凍結防止剤を形成した。
【0029】
[実施例3]
没食子酸一水和物の添加量を2gとした以外は、実施例1同様の方法により、フェノール水酸基含有量1×10-2mol/kgの凍結防止剤を形成した。
【0030】
[実施例4]
没食子酸の代わりに2,6−ジメトキシフェノール(シリンゴール)(化2)0.5gを添加した以外は、実施例1と同様の方法により、フェノール水酸基含有量1×10-3mol/kgの凍結防止剤を形成した。
【0031】
【化2】
【0032】
[実施例5]
ニセアカシアから木炭を製造する際に副生成物として得られた粗木酢液を3ヶ月間静置してタール層を除き、比重1.026、pH=2.2及び酢酸含有量4.9重量%(ガスクロマトグラフにより定量)の褐色透明の木酢液を精製した。タール分の目安となる150℃の加熱残分は、木酢液10gをガラスシャーレに採取し150℃で3時間加熱した後の質量を加熱前の質量で割った値を百分率で表した1.6重量%であった。木酢液10000gとドロマイトプラスター305gとを混合して、撹拌機及び温度計付きステンレス製反応器中、70℃で1時間撹拌して混合液を得た。得られた混合液をステンレスバットに移し、150℃で4時間オーブンにより加熱して水分を蒸発させて黒色塊状の固形物960gを得た。この固形物をピンミルにより粉砕し、水をバインダとしてパン型造粒器により造粒した後、オーブンにより150℃で2時間乾燥して凍結防止剤を形成した。フェノールを検量線としたFolin-Denis法により、実施例5の凍結防止剤のフェノール水酸基量を測定した結果、1.8mol/kgであった。ガスクロマトグラフ−質量分析計による分析では、p−クレゾール(化3)及び2,6−ジメトキシフェノールの含有を確認できた。
【0033】
【化3】
【0034】
[実施例6]
30重量%酢酸9050gとドロマイトプラスター1378gとを混合して、撹拌機及び温度計付きステンレス製反応器により、70℃で1時間撹拌して酢酸マグネシウム・カルシウム水溶液を生成した。続いて、酢酸マグネシウム・カルシウム水溶液に没食子酸一水和物1500gを添加し混合して得たフェノール混合液をステンレスバットに移し、150℃で4時間オーブンにより加熱して水分を蒸発させて白色塊状の固形物4620gを得た。本固形物の造粒はできず、フェノール水酸基含有量5.2mol/kgの粉状体を実施例6の凍結防止剤とした。
【0035】
[比較例1]
没食子酸一水和物を無添加とした以外は、実施例1と同様の方法により凍結防止剤を形成した。
【0036】
[比較例2]
没食子酸一水和物の添加量を2×10-3gとした以外は、実施例1同様の方法により、フェノール水酸基含有量1.0×10-5mol/kgの凍結防止剤を形成した。
【0037】
[比較例3]
比較例1の凍結防止剤と塩化ナトリウムとを重量比40:60で混合して凍結防止剤を形成した。
【0038】
[比較例4]
塩化ナトリウムから成る凍結防止剤を形成した。
【0039】
[比較例5]
塩化カルシウム二水和物から成る凍結防止剤を形成した。
【0040】
前記凍結防止剤の実施例1〜6及び比較例1〜5について、以下の(1)〜(4)に示す試験を各々実施した結果を表1に示す。
(1)凍結防止剤水溶液の凝固点測定
凍結防止剤をイオン交換水で溶解し、定性濾紙の濾過により調製した20重量%の凍結防止剤の水溶液を凝固点測定方法(JIS K 0065)に準拠し凝固点を測定した。凝固点が低い程、凍結防止剤の解氷及び融雪能が高いことを示す。
【0041】
(2)凍結防止剤の初期効果の評価
縦14cm×横10cmのプラスチックバット中にイオン交換水により形成した厚さ1.5cmの氷と、凍結防止剤とを別々に−5℃の冷凍庫で一定温度に安定させた後、氷上に凍結防止剤4.2gを散布して−5℃に保温した。散布1時間後に融解した水の質量を測定し初期解氷量とした。初期解氷量が多い程、凍結防止剤の初期効果(速効性)が高いことを示す。
【0042】
(3)凍結防止剤持続性の評価
降雪中、気温−7〜−13℃、降雪0.5cm/hの野外のアスファルト舗装路1区画(縦4m×横3m)に凍結防止剤を30g/m散布した。積雪5時間後の状態について以下の評価を行った。
◎:積雪なし
○:試験区面積の1/3未満積雪
△:試験区面積の1/3以上、1/2未満積雪
×:試験区面積の1/2以上、2/3未満積雪
××:試験区全面積雪
本評価では、積雪面積が狭い程、凍結防止剤の持続作用が大きいことを意味する。
【0043】
(4)凍結防止剤金属腐食性の評価
日本テストパネル製軟質鋼板S P CC−SB 50mm×25mm×1.6mmを#400の布ヤスリにより研磨しキシレン洗浄後、60℃で30分間乾燥して試験板を作製した。イオン交換水により溶解した凍結防止剤20重量%水溶液に試験板を浸漬させて55℃で5日間静置した。静置後、試験板を取り出し、イオン交換水及びメタノールにより洗浄し105℃で15分間乾燥した。更に、試験板を1%硝酸溶液に30秒間浸漬して、ガーゼで錆を落として、イオン交換水及びメタノールにより洗浄し、105℃で15分間乾燥して脱錆処理を行い、試験板の初期質量から脱錆処理後の試験板の質量を引いた値を錆発生量とした。錆発生量が少ない程、凍結防止剤の金属腐食性が低いことを示す。
【0044】
【表1】
【0045】
表1の結果を考察すると、初期解氷量について、実施例1〜6及び比較例3〜5が15g以上を示し、凍結防止剤の持続性について、実施例1〜5及び比較例1〜3が「◎:積雪なし」を示し、また錆発生量について、実施例2〜6が5mg以下を示した。実施例1は、錆発生量が7mgと若干高い数値を示したが、初期解氷量及び凍結防止剤の持続性は良好であった。実施例6では、凍結防止剤持続性が若干劣るが、初期解氷量及び防錆性の数値は共に優れていた。このため、本実施例では、実施例1〜6に示すフェノール水酸基含有量1.0×10-4mol/kg〜5.2mol/kgの凍結防止剤が好ましく、実施例2〜5に示すフェノール水酸基含有量1.0×10-3mol/kg〜1.8mol/kgの凍結防止剤が最も好ましい。
【0046】
【発明の効果】
以上のように、フェノール類と、アルカリ金属又はアルカリ土類金属を含むカルボン酸とを含む本発明により得られた凍結防止剤は、散布すると融氷融雪作用を直ちに発揮すると共に長時間持続できる。また、金属の腐食を確実に抑制し、周囲の環境に悪影響を与えず、長期間安定な状態で凍結防止剤を保存することができる。
Claims (3)
- 木材又は竹を加熱して発生する気体を冷却し、粗木酢液を生成する工程と、
粗木酢液を静置してタール分を分離除去することにより、木酢液を生成する工程と、
木酢液にアルカリ金属及びアルカリ土類金属から選択された1種又は2種以上の金属を含む塩基性化合物を添加して、混合液を生成する工程と、
混合液を乾燥させて、フェノール水酸基含有量として2×10-4〜9重量%のフェノール類を含む凍結防止剤を生成する工程とを含むことを特徴とする凍結防止剤の製法。 - 木酢液に含まれるフェノール類のモノフェノールは、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、2−メトキシ−4−クレゾール、2,3−ジメチルフェノール、2,4−ジメチルフェノール、2,5−ジメチルフェノール、2,6−ジメチルフェノール、3,4−ジメチルフェノール、3,5−ジメチルフェノール、2−エチルフェノール、3−エチルフェノール、4−エチルフェノール、t−ブチルフェノール、2,3,5−トリメチルフェノール、2−エチル−5−メチルフェノール、3−エチル−5−メチルフェノール、2−メトキシ−3−メチルフェノール、2−メトキシ−4−メチルフェノール(4−メチルグアイコール)、2−メトキシ−4−エチルフェノール、2−メトキシ−4−イソプロピルフェノール、2−メトキシ−4−プロピルフェノール、2,6−ジメトキシ−4−メチルフェノール、2,6−ジメトキシ−4−エチルフェノール、2,6−ジメトキシ−4−イソプロピルフェノール、2,6−ジメトキシ−4−プロピルフェノール、フェニルフェノール、2−メチル−4−ビニルフェノール、2,6−ジメトキシ−4−ビニルフェノール、2−メチル−4−アリルフェノール、2,6−ジメトキシ−4−アリルフェノール、2−メトキシ−4−(Z)−プロペニルフェノール、2−メトキシ−4−(E)−プロペニルフェノール、2,6−ジメトキシ−4−(Z)−プロペニルフェノール、2,6−ジメトキシ−4−(E)−プロペニルフェノール、2−メトキシフェノール(グアイアコール)、3−メトキシフェノール、2,6−ジメトキシフェノール(シリンゴール)、4−アセチル−2−メトキシフェノール(アセトバニロン)、4−アリル−2,6−ジメトキシフェノール、4−アリル−2−メトキシフェノール(オイゲノール)、2−ヒドロキシベンズアルデヒド、4−ヒドロキシ−3−メトキシベンズアルデヒド(バニリン)、4−ヒドロキシ−3,5−ジメトキシベンズアルデヒド、4'−ヒドロキシ−3'−メトキシアセトフェノン、4'−ヒドロキシ−3',5'−ジメトキシアセトフェノン、4'−ヒドロキシ−3',5'−ジメトキシプロピオフェノン、1−ナフトール及びサリチル酸の何れかを含む請求項1に記載の凍結防止剤の製法。
- 木酢液に含まれるフェノール類のポリフェノールは、1,2−ジヒドロキシベンゼン、1,3−ジヒドロキシベンゼン、1,2−ジヒドロキシ−3−メチルベンゼン、1,2−ジヒドロキシ−4−メチルベンゼン、1,2−ジヒドロキシ−3−メトキシベンゼン及び1,2−ジヒドロキシ−4−エチルベンゼンの何れかを含む請求項1に記載の凍結防止剤の製法。
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