JP4311976B2 - 軟骨組織の物性測定用の光励起音響波検出装置 - Google Patents

軟骨組織の物性測定用の光励起音響波検出装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、軟骨組織の物性測定用の光励起音響波検出装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
膝などの関節には、関節にある骨と骨との摩擦を緩和し、そして関節に加わる衝撃を吸収する軟骨が存在する。軟骨は、関節の骨と骨との対向する面のそれぞれを覆うように形成されている。関節の骨と骨との結合部の周囲には、絶えず小量の滑液を分泌する滑膜が存在する。軟骨組織は、滑膜が分泌した滑液を吸収して表面が滑らかとなり、骨と骨との摩擦を緩和する。そして軟骨組織は、滑液を吸収して柔軟であるため、例えば、歩行の際に膝関節などに加わる衝撃を、軟骨が柔軟に形を変えることにより吸収する。
【0003】
偏食、老化、関節の酷使などにより、軟骨組織を形成する軟骨基質(コラーゲンやプロテオグリカンなど)に変性あるいは分子鎖の切断が生じると、軟骨組織が滑液を吸収し難くなり、関節の骨と骨との摩擦もしくは関節に加わる衝撃によって関節に痛みを伴う変形性関節症が発症する。
【0004】
変形性関節症の初期には、栄養バランスのよい食事や適度な運動により軟骨組織の機能を回復させたり、薬物の投与により軟骨組織を再生させたりする治療が行われる。このような治療により痛みなどの症状が改善されない場合には、内視鏡を用いた診断や治療が行われる。例えば、変形性関節症を発症した膝関節の場合には、膝の外部から関節内部に通ずる孔を数カ所開け、内視鏡と、診断用もしくは治療用の器具とを前記の孔から関節内部へと挿入して、内視鏡により軟骨組織を観察しながら、診断や治療が行われる。
【0005】
軟骨組織が、正常な機能(関節の骨と骨との摩擦の緩和、あるいは関節に加わる衝撃の吸収)を有するかどうかは、軟骨組織の粘性率、弾性率、厚みもしくは組成などの物性測定により定量的に評価することが好ましい。ところが、従来の内視鏡を用いた診断において、軟骨組織の機能は、内視鏡による軟骨組織の外観観察あるいは診断用の器具により軟骨組織に触れた際の感触などにより定性的に評価されている。軟骨組織の機能は、軟骨組織の一部を摘出して、摘出された軟骨組織を病理組織学的に判断することにより定性的に評価される場合もある。
【0006】
軟骨組織の機能の定量的な評価は、軟骨組織の一部を摘出し、粘弾性測定装置(例、レオメータ)などを用いた生体外での物性測定によりなされる場合もある。患者の軟骨組織の一部を摘出する(破壊する)ことは好ましくなく、軟骨組織の本来の機能を評価するための物性(特に、粘性率や弾性率などの力学特性)の測定は、殆どなされていないのが現状である。
【0007】
一方、変形性関節症の治療のために、患者自身の健常部の軟骨組織(関節症を発症していない軟骨組織)を摘出し、これを生体外で育成(培養により増殖)して得られる軟骨組織を患部に移植する場合がある。このような移植用の軟骨組織も、その機能を評価するために物性測定することが必要である。前記と同様に、移植用の軟骨組織の場合も、育成した軟骨組織の一部を切り取って(破壊して)、病理組織学的評価や物性測定による評価がされている。
【0008】
特許文献1には、軟骨組織に超音波を付与し、軟骨組織の表面において反射された超音波(超音波エコー)から、軟骨組織の力学特性を測定する装置が開示されている。
【0009】
【特許文献1】
特開2002−345821号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、軟骨組織の物性を、組織を破壊することなく測定できる装置を提供することにある
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、物性を測定するための検出部の生体内への挿入を容易とするために、検出部の小型化が可能な測定装置であること、物性測定により生体組織を破壊しないことなどを要件として、様々な物性測定装置の生体内への適用の可能性について検討した。その結果、光励起音響波検出装置の構成を工夫することにより、生体内での生体組織(特に、軟骨組織)の物性測定に適した、光励起音響波検出装置を提供できることを見出した
【0012】
本発明は、レーザ光発生源、そして一方の端部がレーザ光発生源に近接付設され、他方の端部にレーザ光照射面を有するレーザ光伝送用光ファイバを含むレーザ光照射装置、レーザ光の励起により発生する音響波の検出面を有し、検出面で検出された音響波を電気信号に変換する圧電トランスデューサからなる音響波検出変換手段、そして音響波検出変換手段に電気的に接続された音響波検出装置が組み合わされてなる光励起音響波検出装置であって、前記の光ファイバのレーザ光照射面と音響波検出変換手段の音響波検出面とが、別に用意された筒状の支持具の先端面に両者の面が同一平面上に配置される位置関係にて固定され、そして前記光ファイバのレーザ光照射面に接続する部分と音響波検出変換手段とが筒状支持具に収容されている軟骨組織の物性測定用の光励起音響波検出装置にある。
【0013】
本発明の光励起音響波検出装置の好ましい態様は、下記の通りである。
(1)支持具が金属もしくは合金組成物からなる
(2)支持具の長さが150乃至500mmの範囲にある。
)音響波検出面が、前記支持具先端面に固定された光照射面を囲む環状の形状にある
【0014】
(4)光ファイバに、レーザ光と蛍光とを分離する分離手段、そして分離手段に付設された蛍光検出手段が備えられている。
(5)光ファイバのレーザ光照射面に近接配置された光検出面を一方の端部に有する光検出用光ファイバ、そして光検出用光ファイバに付設された蛍光検出手段が備えられている
【0015】
本発明には包含されないが、レーザ光発生源、そして一方の端部がレーザ光発生源に近接付設され、他方の端部にレーザ光照射面を有するレーザ光伝送用光ファイバを含むレーザ光照射装置、光伝送用光ファイバに付設されたレーザ光と蛍光とを分離する分離手段、そして分離手段に付設された蛍光検出手段を有する光励起蛍光検出装置であって、前記の光ファイバのレーザ光照射面が、別に用意された支持具の先端面に固定されていることを特徴とする光励起蛍光検出装置についても説明する
【0016】
本発明には包含されないが、レーザ光発生源、そして一方の端部がレーザ光発生源に近接付設され、他方の端部にレーザ光照射面を有するレーザ光伝送用光ファイバを含むレーザ光照射装置、前記の光ファイバのレーザ光照射面に近接配置された光検出面を一方の端部に有する光検出用光ファイバ、そして光検出用光ファイバに付設された蛍光検出手段を有する光励起蛍光検出装置であって、前記の光ファイバのレーザ光照射面と光検出面とが、別に用意された支持具の先端面に固定されていることを特徴とする光励起蛍光検出装置についても説明する
【0017】
上記の二つの光励起蛍光検出装置は、軟骨組織の物性測定用であることが好ましい。
【0018】
本発明には包含されないが、レーザ光発生源、そして一方の端部がレーザ光発生源に近接付設され、他方の端部にレーザ光照射面を有するレーザ光伝送用光ファイバを含むレーザ光照射装置、レーザ光の励起により発生する音響波の検出面を有し、検出面で検出された音響波を電気信号に変換する音響波検出変換手段、そして音響波検出変換手段に電気的に接続された音響波検出装置が組み合わされてなる光励起音響波検出装置を用い、生体外で育成した軟骨組織にレーザ光を照射し、軟骨組織にて発生する音響波を検出することによって、軟骨組織の物性を測定する方法についても説明する
【0019】
記の軟骨組織の物性測定方法の好ましい態様は、下記の通りである。
(1)光ファイバのレーザ光照射面と音響波検出変換手段の検出面とを、軟骨組織を挟んで対向配置させる。
(2)前記の光ファイバに、レーザ光と蛍光とを分離する分離手段、そして分離手段に付設された蛍光検出手段が備えられている光励起音響波検出装置を用い、レーザ光の照射によって軟骨組織にて発生する音響波と蛍光とを検出することによって、軟骨組織の物性の測定を行なう。
(3)前記の光ファイバのレーザ光照射面に近接配置された光検出面を一方の端部に有する光検出用光ファイバ、そして光検出用光ファイバに付設された蛍光検出手段が備えられている光励起音響波検出装置を用い、レーザ光の照射によって軟骨組織にて発生する音響波と蛍光とを検出することによって、軟骨組織の物性の測定を行なう。
【0020】
本発明には包含されないが、レーザ光発生源、そして一方の端部がレーザ光発生源に近接付設され、他方の端部にレーザ光照射面を有するレーザ光伝送用光ファイバを含むレーザ光照射装置、前記の光ファイバに付設されたレーザ光と蛍光とを分離する分離手段、そして分離手段に付設された蛍光検出手段を有する光励起蛍光検出装置を用い、生体外で育成した軟骨組織にレーザ光を照射し、軟骨組織にて発生する蛍光を検出することによって、軟骨組織の物性を測定する方法についても説明する
【0021】
本発明には包含されないが、レーザ光発生源、そして一方の端部がレーザ光発生源に近接付設され、他方の端部にレーザ光照射面を有するレーザ光伝送用光ファイバを含むレーザ光照射装置、前記の光ファイバのレーザ光照射面に近接配置された光検出面を一方の端部に有する光検出用光ファイバ、そして光検出用光ファイバに付設された蛍光検出手段を有する光励起蛍光検出装置を用い、生体外で育成した軟骨組織にレーザ光を照射し、軟骨組織にて発生する蛍光を検出することによって、軟骨組織の物性を測定する方法についても説明する
【0022】
本発明には包含されないが、レーザ光発生源を含むレーザ光照射装置、レーザ光の励起により発生する音響波の検出面を有し、検出面で検出された音響波を電気信号に変換する音響波検出変換手段、そして音響波検出変換手段に電気的に接続された音響波検出装置が組み合わされてなる光励起音響波検出装置を用い、生体外で育成した軟骨組織にレーザ光を照射し、軟骨組織にて発生する音響波を検出することによって、軟骨組織の物性を測定する方法についても説明する
【0023】
上記の(光伝送用光ファイバを用いない軟骨組織の物性を測定する方法においては、レーザ光発生源と測定対象の軟骨組織との間に配置されたレーザ光とレーザ光の励起により発生する蛍光とを分離する分離手段、そして分離手段に付設された蛍光検出手段が備えられている光励起音響波検出装置を用い、レーザ光の照射によって軟骨組織にて発生する音響波と蛍光とを検出することによって、軟骨組織の物性の測定を行なうことが好ましい。
【0024】
本発明には包含されないが、レーザ光発生源を含むレーザ光照射装置、レーザ光とレーザ光の励起により発生する蛍光とを分離する分離手段、そして分離手段に付設された蛍光検出手段を有する光励起蛍光検出装置を用い、生体外で育成した軟骨組織にレーザ光を照射し、軟骨組織にて発生する蛍光を検出することによって、軟骨組織の物性を測定する方法についても説明する
【0025】
なお、本明細書において、「軟骨組織」には、生体外で育成(培養により増殖)した軟骨様組織が含まれる。
【0026】
【発明の実施の形態】
本発明の光励起音響波検出装置を、添付の図面を用いて説明する。図1は、本発明に従う光励起音響波検出装置の一例の構成を示す図である。図2は、図1の光励起音響波検出装置の支持具とその内部の構造を示す一部切り欠き斜視図である。
【0027】
図1と図2に示す光励起音響波検出装置は、レーザ光発生源11、そして一方の端部がレーザ光発生源11に近接付設され、他方の端部にレーザ光照射面12を有するレーザ光伝送用光ファイバ13を含むレーザ光照射装置、レーザ光の励起により発生する音響波の検出面14を有し、検出面14で検出された音響波を電気信号に変換する圧電トランスデューサからなる音響波検出変換手段15、そして音響波検出変換手段15に電気的に接続された音響波検出装置16が組み合わされてなる光励起音響波検出装置である。音響波検出装置16は、電気配線17により音響波検出変換手段15に電気的に接続されている。音響波検出装置16には、音響波検出変換手段15により変換された音響波に対応する電気信号の増幅出力手段18を付設することもできる。このような構成の光励起音響波検出装置と、これを用いた生体外における皮膚組織の物性測定については、佐藤俊一等の研究報告(光学、第30巻、第10号、2001年、658〜662頁)に詳しい記載がある。
【0028】
本発明に従う光励起音響波検出装置は、軟骨組織の物性測定用の装置であって、さらに前記の光ファイバ13のレーザ光照射面12と、音響波検出変換手段15の音響波検出面14とが、別に用意された筒状の支持具19の先端面に両者の面(レーザ光照射面12及び音響波検出面14)が同一平面上に配置される位置関係にて固定され、そして光ファイバ13のレーザ光照射面12に接続する部分と音響波検出変換手段15とが筒状支持具19に収容されていることに特徴がある。図1に示すように、支持具19は、生体内に挿入し易いように、筒状とされている。支持具19には、光ファイバ13のレーザ光照射面12に接続する部分(光ファイバの一部)と、音響波検出変換手段15とが収容されている。支持具の生体内への挿入、特に内視鏡視下での生体組織の物性測定を考慮すると、支持具の外径は、15mm以下であることが好ましく、10mm以下であることがさらに好ましい。支持具の長さは、100乃至800mmの範囲にあることが好ましく、150乃至500mmの範囲にあることがより好ましい。
【0029】
支持具19により、光ファイバ13と音響波検出変換手段15とを支持して、これらを生体内に挿入することができる。支持具19は、生体組織に無害である材料であれば、どのような材料から形成してもよい。支持具19を形成する材料の例としては、鉄、銅、チタン、アルミニウムなどの金属、ステンレススチールなどの合金組成物、ポリエチレンやポリプロピレンなどの樹脂、ガラス、およびセラミックスなどが挙げられる。
【0030】
図9は、図1の光励起音響波検出装置の支持具の別の構成例と、その内部の構造を示す図である。図9の支持具99の先端面には、光ファイバ13のレーザ光照射面12と、音響波検出変換手段95の音響波検出面94とが両者の面が同一平面上に配置される位置関係にて固定されている。図9に示すように、音響波検出面94は、支持具99の先端面に固定された光照射面12を囲む環状の形状にあることが好ましい。音響波検出面94を環状の形状とすることにより、軟骨組織にて発生する音響波の検出感度を高くすることができる。
【0031】
生体内での生体組織の物性の測定に、光励起音響波検出装置を用いる主な理由を、以下に記載する。
【0032】
(1)光励起音響波検出装置は、測定対象の材料にレーザ光を照射し、このレーザ光の励起により材料にて発生する音響波を検出することにより、測定対象の材料の物性を測定する装置である。光励起音響波検出装置による物性測定に用いるレーザ光は、光ファイバを用いることにより生体内に導入し易い。そして、レーザ光の励起により発生する音響波を検出して電気信号に変換する音響波検出変換手段として、小型化が可能な圧電トランスデューサなどを用いることができる。従って、物性測定の際に測定対象である生体組織に近接して配置する必要がある装置の検出部(生体内に挿入するレーザ光照射面を含む光ファイバの一部と音響波検出変換手段)の小型化や一体化が可能であり、さらに支持具を用いることにより検出部の生体内への挿入を容易とすることができる。
【0033】
(2)光励起音響波検出装置は、生体組織に照射するレーザ光の強度を調節することにより、生体組織を破壊することなく、その物性を測定できること。
【0034】
(3)光を用いた様々な原理に基づく物性測定ができるように、光励起音響波検出装置の多機能化が可能であること。例えば、生体組織にレーザ光を照射した場合に、生体組織にて発生する蛍光を検出することにより、生体組織の組成や組成変化を測定することができる。このような蛍光の検出を、光励起音響波検出装置に導入することが可能である。また、光励起音響波検出装置を、生体組織に光を照射した場合に、生体組織にて発生する赤外光、散乱光、反射光、散乱光、あるいは散乱光の第二高調波を検出して生体組織の物性を測定するように多機能化することも可能である。
【0035】
(4)光励起音響波検出装置により、軟骨組織の機能を評価するために必要な、軟骨組織の粘性率、弾性率、そして厚みの測定が可能であること。
【0036】
レーザ光の照射(レーザ光による励起)により軟骨組織の表面(もしくは表面近傍)にて発生した音響波は、徐々にその強度を減衰させながら、軟骨組織を伝搬していく。この音響波の波形(具体的には、音響波の強度の時間に対する変化)から、音響波の伝搬媒体の粘性率と弾性率の比に相関のある緩和時間を得ることができる。粘性率と弾性率の比に相関のある音響波の緩和時間については、多くの文献(例えば、超音波便覧(丸善株式会社、1999年、244頁)に記載がある。なお、弾性率は「貯蔵弾性率」と、粘性率は「損失弾性率」と呼ばれる場合がある。
【0037】
また、音響波(超音波)を物体に入射して、そしてこの物体に反射された音響波から、前記物体の弾性率の絶対値を測定する方法は既に知られている。同様の原理により、本発明においても、軟骨組織(前記の物体に対応する)の弾性率の絶対値を測定することができる。具体的には、軟骨組織の表面から離れた部位(例、軟骨組織の周囲に存在する関節液)にレーザ光を吸収させることにより音響波を発生させ、そして軟骨組織の表面にて反射された前記の音響波から、同様に軟骨組織の弾性率の絶対値を測定することができる。
【0038】
そして、測定された弾性率の絶対値と、前記の粘性率と弾性率の比に相関のある緩和時間とから、軟骨組織の粘性率の絶対値を得ることもできる。
【0039】
また、レーザ光の照射により軟骨組織の表面(もしくは表面近傍)にて発生した音響波は、軟骨組織の内部へと伝搬する。音響波は、軟骨の下にある軟骨下骨の表面(軟骨と軟骨下骨の界面)において反射され、軟骨組織の表面に到達する。従って、音響波検出装置で得られる音響波に対応する電気信号の波形における、軟骨組織の表面(もしくは表面近傍)での音響波の発生から、音響波が軟骨下骨の表面において反射され、軟骨組織の表面に到達するまでの時間を検出し、この時間と音響波の音速とを用いることにより、軟骨組織の厚みを得ることができる。軟骨組織の厚みの測定原理は、超音波式の厚み計と同様の原理である。なお、音響波は、圧力波あるいは応力波と呼ばれる場合もある。
【0040】
上記のように、軟骨組織の粘性率、弾性率、もしくは厚みは、具体的な数値として得ることもできるが、正常な軟骨組織と、変形性関節症を発症後の軟骨組織とのそれぞれに対応する音響波に基づく電気信号の波形を基準波形として予め用意しておき、これらの基準波形と患者の軟骨組織の物性測定で得られた波形とを比較して、軟骨組織(他の生体組織も同様)の機能を評価することもできる。同様に、軟骨組織の組成についても基準となる蛍光検出結果を予め用意しておき、これと患者の軟骨組織の物性測定で得られた蛍光検出結果とを比較して、軟骨組織の機能を評価することもできる。
【0041】
上記のようにして得られた軟骨組織の物性値(粘性率や弾性率など)は、その値が正常な軟骨組織に対してどの程度の大きさであるかを、視覚的に容易に判断することができる方法により表示することが好ましい。
【0042】
例えば、測定された物性値が、正常な軟骨組織の物性値とほぼ等しい値である場合には測定値を青色で表示し、正常な軟骨組織の物性値との差が大きくなるにつれ、測定値を赤色に近い色で表示することなどが好ましい。また、軟骨組織の物性値を、軟骨組織の表面に沿った二次元方向において測定した場合には、測定された物性値を、二次元方向に対応する疑似カラー画像として表示することなども好ましい。
【0043】
レーザ光発生源11は、パルスレーザを発生することが好ましい。レーザ光発生源11の例としては、エキシマレーザ、Nd:YAG(Yttrium Aluminum Garnet)レーザ、Ho:YAGレーザ、Er:YAGレーザ、および光パラメトリック発振器が挙げられる。レーザ光発生源は、連続的にレーザ光を発生するレーザ光発生源と、発生したレーザ光をパルス状のレーザ光に変換するチョッパや光シャッタリング装置などの装置とが組み合わされた構成を有していてもよい。図1に示すレーザ光発生源11には、レーザ光発生源から発生したレーザ光20を光ファイバ13へ入射するためのレンズ21が備えられている。
【0044】
軟骨組織の物性を測定する場合には、軟骨組織、例えば、軟骨組織のコラーゲン、あるいは水分などに吸収され易い波長のレーザ光を、軟骨組織に照射することが好ましい。
【0045】
軟骨組織のコラーゲンにレーザ光を効率良く吸収させる場合には、軟骨組織に、波長が100nm以上、700nm未満のレーザ光を照射することが好ましく、波長が100nm以上、500nm未満のレーザ光を照射することがさらに好ましい。このような短波長のレーザ光としては、エキシマレーザにより発生したレーザ光、あるいはYAGレーザにより発生したレーザ光の第三高調波、第四高調波、もしくは第五高調波などを用いることができる。
【0046】
軟骨組織の水分にレーザ光を効率良く吸収させる場合には、軟骨組織に、波長が2乃至3μmのレーザ光を照射することが好ましい。このような長波長のレーザ光としては、Ho:YAGレーザにより発生したレーザ光(波長:2.1μm)、あるいはEr:YAGレーザにより発生したレーザ光(波長:2.9μm)などを用いることができる。
【0047】
軟骨組織に照射するレーザ光は、その波長や強度(エネルギー)を、軟骨組織の軟骨細胞の増殖活性に影響を及ぼさない条件に設定することが好ましい。
【0048】
音響波検出変換手段15としては、音響波を検出して電気信号に変換するトランスデューサ用いられる。音響波検出変換手段としては、小型化が容易であること、音響波の検出感度が高いことなどから、圧電トランスデューサ用いられる。圧電トラスデューサの例としては、圧電セラミックトランスデューサ、および圧電高分子トランスデューサが挙げられる。圧電トランスデューサとしては、圧電高分子トランスデューサを用いることが好ましい。圧電高分子トランスデューサに用いる圧電高分子材料の例としては、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)、P(VdF/TrFE)(フッ化ビニリデン/三フッ化エチレン共重合体)が挙げられる。図2に示す音響波検出変換手段15としては、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)フイルムを用いた圧電高分子トランスデューサが用いられている。
【0049】
音響波検出変換手段15に電気的に接続された音響波検出装置16としては、従来より光励起音響波検出装置に用いられている装置を用いることができる。前記のように、軟骨組織の物性(粘性、弾性もしくは厚み)は、音響波検出変換手段15により変換された音響波に対応する電気信号の波形から得ることができる。音響波検出装置16は、電気信号の波形を表示するか、あるいは電気信号を処理して前記の物性に関する情報を表示する装置を用いることができる。図1に示す音響波検出装置16としては、市販のオシロスコープが用いられている。
【0050】
音響波検出装置16には、音響波検出変換手段15により変換された電気信号を増幅する電気信号増幅出力手段18を付設することができる。図1に示す電気信号増幅出力手段18としては、FET(Field Effect Transistor)アンプを用いた。また、音響波検出装置(オシロスコープ)16には、検出される電気信号の波形と、レーザ光発生源11が発生するパルスレーザの波形とを同期させるために、バイプラナー光電管22が付設されている。バイプラナー光電管に代え、公知の光検出器(例えば、フォトダイオードなど)を用いることもできる。光検出器の応答時間は、レーザ光発生源にて発生するパルスレーザのパルス幅より短いことが好ましい。
【0051】
図3は、本発明に従う光励起音響波検出装置の別の一例の構成を示す図である。図3の光音響波検出装置の構成は、光ファイバ13にレーザ光と蛍光とを分離する分離手段31、そして分離手段に接続している蛍光検出手段32が付設されていること以外は、図1の光励起音響波検出装置と同様である。
【0052】
レーザ光照射装置により測定対象の材料にレーザ光を照射すると、レーザ光の励起により測定対象の材料にて蛍光を生ずる場合がある。このような蛍光を検出して、測定対象の材料の組成もしくは組成の変化を測定する方法は、レーザ誘起蛍光分光(LIF:Laser Induced Fluorescence)法として、一般に知られている。本発明においては、生体内における軟骨組織の物性測定に光励起音響波検出装置を用いるために、装置が備える光ファイバ13を用いて、レーザ光の励起により生体組織から発生する蛍光を、生体外に取り出すことができる。得られた蛍光33を、蛍光検出手段32により検出することにより、軟骨組織の組成もしくは組成の変化も測定することができる。
【0053】
蛍光検出手段32の例としては、ポリクロメータなどの分光器、電荷結合素子(CCD)が備えられたオプティカルマルチチャンネルアナライザが挙げられる。蛍光を蛍光検出手段32に導くために、光ファイバに13には、レーザ光と蛍光33とを分離する分離手段31が備えられている。分離手段31の例としては、ハーフミラーや、特定の波長を選択的に反射する誘電体多層膜ミラーなどが挙げられる。分離手段31は、レーザ光発生源11とレンズ21との間に配置することもできる。
【0054】
図4は、本発明には包含されない光励起蛍光検出装置の一例を示す図である。図4の光励起蛍光検出装置の構成は、音響波を検出しない構成(音響波検出変換手段と音響波検出装置を用いない構成)であること以外は、図3の光励起音響波検出装置と同様である。生体組織の力学特性など(粘性率、弾性率もしくは厚み)を知る必要がない場合には、このような簡易な構成により生体組織の組成を測定することができる。
【0055】
図5は、本発明には包含されない光励起蛍光検出装置の別の一例の構成を示す図である。図5の光励起蛍光検出装置の構成は、レーザ光伝送用光ファイバ13のレーザ光照射面12に近接配置された光検出面52を一方の端部に有する光検出用光ファイバ53を有し、そして光検出用光ファイバ53に蛍光検出手段32が付設されていること以外は、図4の光励起蛍光検出装置と同様である。図5の光励起蛍光検出装置において、レーザ光伝送用光ファイバ13のレーザ光照射面12と、光検出用光ファイバ53の光検出面52とは、支持具19の先端面に固定される。
【0056】
光検出用光ファイバ53により、レーザ光の励起により生体組織から発生した蛍光を、蛍光検出手段32に導くことにより、図4の光励起蛍光検出装置が有する分離手段を不要とすることができる。同様に、図3の光励起音響波検出装置の場合も、光検出用光ファイバを付設することにより、分離手段を不要とすることができる。
【0057】
本発明の光励起音響波検出装置は、軟骨組織の物性測定に(特に、生体内における内視鏡視下での軟骨組織の診断に)用いられる。
【0058】
また、変形性関節症などの治療の際に用いる、生体外で育成した移植用の軟骨組織の物性を測定する場合には、光励起音響波検出装置もしくは光励起蛍光検出装置には、必ずしも支持具が備えられている必要はない。生体外で育成した軟骨組織にレーザ光を照射し、軟骨組織にて発生する音響波もしくは蛍光を上記の場合と同様にして検出することにより、移植用の軟骨組織の物性(粘性率、弾性率、厚みもしくは組成)を非破壊で測定して、移植用の軟骨組織の機能を評価(品質の管理)することができる。なお、生体外で軟骨組織の物性を測定する場合には、音響波検出手段は、軟骨組織のレーザ光が照射される面とは逆側の面に配置することもできる。
【0059】
図6は、軟骨組織に直接レーザ光を照射して、軟骨組織にて発生する音響波と蛍光とを検出することによって、軟骨組織の物性を測定する方法の一例を説明する図である。図6の本発明には包含されない光励起音響波検出装置は、レーザ光発生源11を含むレーザ光照射装置、レーザ光の励起により発生する音響波の検出面14を有し、検出面14で検出された音響波を電気信号に変換する音響波検出変換手段15、そして変換手段15に電気的に接続された音響波検出装置16が組み合わされてなる光励起音響波検出装置である。
【0060】
図6に示すように、生体外で育成した軟骨組織の物性を測定する場合には、レーザ光発生源のレーザ光20を、(レーザ光伝送用ファイバを用いずに)軟骨組織61に直接照射することもできる。光ファイバを用いずに、レーザ光照射装置のレーザ光を測定対象の材料に直接照射することは、従来の光励起音響波検出装置(例えば、光音響顕微鏡など)において知られている。
【0061】
さらに、図6の光励起音響波検出装置には、レーザ光発生源11と測定対象の軟骨組織61との間に配置されたレーザ光とレーザ光の励起により発生する蛍光とを分離する分離手段31、そして分離手段31に付設された蛍光検出手段32が備えられている。分離手段31は、レーザ光発生源11とレンズ21との間に配置することもできる。図6の光励起音響波検出装置により、軟骨組織61にレーザ光20を照射し、レーザー光の励起により軟骨組織にて発生する音響波と蛍光を検出することにより、軟骨組織の物性を測定することができる。
【0062】
レーザ光20の励起により軟骨組織61にて発生する音響波のみを検出する場合(軟骨組織の粘性、弾性もしくは厚みを測定する場合)には、分離手段31及び蛍光検出手段32を付設する必要はない。また、レーザ光20の励起により軟骨組織61にて発生する蛍光33のみを検出する場合(軟骨組織の組成もしくは組成変化を測定する場合)には、音響波検出変換手段15、電気信号増幅出力手段18及び音響波検出装置16を付設する必要はない。
【0063】
生体外で育成した軟骨組織の物性を測定する場合、複数の軟骨組織の物性を同時に(もしくは順番に)測定することもできる。この場合、レーザ光発生源のレーザ光を各軟骨組織に照射するための光伝送用光ファイバ複数本と、各軟骨組織から発生する音響波を検出するための音響波検出変換手段及び音響波検出装置を付設すればよい。また、レーザ光発生源のレーザ光を各軟骨組織に直接照射する場合には、レーザ光を各軟骨組織に収束させるためのマイクロレンズ複数個と、各軟骨組織から発生する音響波を検出するための音響波検出変換手段及び音響波検出装置を付設すればよい。なお、レーザ光の励起により軟骨組織にて発生する音響波と蛍光を検出する場合、蛍光のみを検出する場合も、同様にして、複数の軟骨組織の物性を同時に(もしくは順番に)測定することができる。
【0064】
図10は、生体外で育成した軟骨組織にレーザ光を照射して、軟骨組織にて発生する音響波を検出することによって、軟骨組織の物性を測定する方法を説明する図である。図10の本発明には包含されない光励起音響波検出装置の構成は、レーザ光発生源11にて発生したレーザ光20を、光ファイバ13を用いて軟骨組織61に照射すること、レーザ光の照射により軟骨組織にて発生する蛍光を検出しないこと(分離手段及び蛍光検出手段を付設しないこと)以外は、図6の装置と同様である。
【0065】
図10の光励起音響波検出装置においては、軟骨組織61にて発生した音響波を、軟骨組織のレーザ光照射面とは逆の側の面に配置された音響波検出変換手段15により検出する。図10に示すように、光ファイバ13のレーザ光照射面12と音響波検出変換手段15の音響波の検出面14とは、軟骨組織61を挟んで対向配置されている。
【0066】
図10の光励起音響波検出装置のレーザ光発生源11にて発生したレーザ光を、生体外で育成した軟骨組織61に照射して、そして軟骨組織にて発生する音響波を音響波検出変換手段15にて検出することにより、軟骨組織の物性を測定することができる。
【0067】
以上のように、レーザ光の照射により軟骨組織にて発生する音響波を検出する場合、音響波を、軟骨組織のレーザ光照射面にて検出することもできるし、軟骨組織のレーザ光照射面とは逆の側の面にて検出することもできる。以下、音響波を軟骨組織のレーザ光照射面にて検出する方法を反射法と、音響波を軟骨組織のレーザ光照射面とは逆の側の面にて検出する方法を透過法と記載する。
【0068】
図11は、透過法により検出された音響波に対応する電気信号の波形を示す図である。図11の波形図において、横軸は軟骨組織にパルス状のレーザ光を照射した後の時間を示している。即ち、横軸の時間が0μ秒の時間にて、軟骨組織にレーザ光が照射されたことを意味する。縦軸は音響波検出変換手段にて検出された音響波に対応する電気信号の電圧値を示す。
【0069】
パルス状のレーザ光の照射により軟骨組織にて発生した音響波は、軟骨組織のレーザ光照射面から軟骨組織内部を減衰しながら伝わり、そして軟骨組織の音響波検出変換手段を配置した面に到達する。この音響波が音響波検出変換手段にて検出されて、図11の電気信号の波形におけるピークP1 を生じる。次いで音響波は、軟骨組織の音響波検出変換手段を配置した面、そしてレーザ光照射面にて反射を繰り返しながら軟骨組織の内部を伝わり、図11の電気信号の波形におけるピークP2 、P3 、そしてP4 を生じる。前記のように、これらの電気信号のピークの間隔(時間)と音響波の音速とから、軟骨組織の厚みを得ることができる。
【0070】
透過法の場合、緩和時間τは、例えば、前記の電気信号の波形のピークに、指数関数曲線111(exp(−t/τ))をフィッティングさせた場合のτの値から決定することができる。
【0071】
図12は、反射法により検出された音響波に対応する電気信号の波形を示す図である。図12の電気信号の波形において、ピークP0 は、パルス状のレーザ光の照射により軟骨組織の表面(もしくは表面近傍)にて発生した音響波が、軟骨組織のレーザ光照射面に沿って伝わって音響波検出変換手段に到達した際に生ずるピークである。
【0072】
反射法の場合、緩和時間τは、上記のピークP0 (レーザ光照射面に沿って伝わる音響波により生じたピーク)を除くピークに、前記と同様に指数関数曲線121をフィッティングさせることにより決定することができる。
【0073】
【実施例】
[比較例1]
ウサギから軟骨組織を摘出し、軟骨細胞を単離して培養、増殖させて、軟骨組織(正確には、完全な軟骨組織を形成していないため、軟骨様組織と呼ばれている)を育成した。育成中の軟骨組織の一部を切り取り(軟骨組織を破壊して)、レオメータを用いて粘弾性測定をした。図7に、測定結果を示す。図7のグラフにおいて、横軸は軟骨組織の培養期間(週)を、そして縦軸はレオメータにより測定された位相角の逆数(1/tanδ)を示している。(1/tanδ)の値は、弾性率と粘性率の比(弾性率/粘性率)に比例する。なお、測定値(1/tanδ)は、培養期間が三週の軟骨細胞における測定値を基準に規格化した。
【0074】
そして前記のウサギから摘出された正常な軟骨組織を、レオメータを用いて同様に粘弾性測定した。その結果、測定値(1/tanδ)を前記と同様にして規格化したところ、その値は約0.58であった。すなわち、培養した軟骨組織は、培養期間が長くなるにつれ、その粘弾性が正常軟骨に近付いていることがわかる。また、培養した軟骨組織に含まれるコラーゲンの量を、コラーゲンアッセイ法により測定した。その結果、培養した軟骨組織は、培養期間が長くなるにつれてコラーゲンの含有量が増加して、正常な軟骨組織に近付いていることが確認できた。
【0075】
この様にして、レオメータによる粘弾性測定の結果から、培養した軟骨組織の機能が評価できることを確認した。
【0076】
参考例1]
レーザ光発生源として光パラメトリック発振器、レーザ伝送用光ファイバとして石英ファイバ(コア径600μm、長さ1m)、音響波検出変換手段として直径が4mmのP(VdF/TrFE)フィルムを用いた圧電高分子トランスデューサ(クレハ(株)製)、電気的増幅出力手段としてFETアンプ、そして音響波検出装置としてデジタルオシロスコープを用いて、光励起音響波検出装置を構成した。
【0077】
光励起音響波検出装置を用いて、比較例1で育成した軟骨組織に波長250nmのパルス状のレーザ光を照射し、レーザ光の励起により軟骨組織から発生する音響波を検出した。レーザ光のパルスエネルギは、50μJに設定した。音響波は、圧電高分子トランスデューサにより検出されて、電気信号に変換される。オシロスコープで観測された音響波と対応する電気信号の波形に、前記と同様に指数関数曲線(exp(−t/τ))をフィッティングさせて音響波の緩和時間τを求めた。緩和時間は、弾性率と粘性率の比(弾性率/粘性率)に比例する。図7に、電気信号の波形から求めた音響波の緩和時間を示す。緩和時間の測定値は、培養期間が三週の軟骨細胞における測定値を基準に規格化した。
【0078】
図7に示すように、レオメータによる測定結果と、光励起音響波検出装置による測定結果とは、ほぼ同様の傾向を示すことがわかる。従って、光励起音響波検出装置を用いて、軟骨組織にて発生する音響波を検出することにより、生体外で育成した軟骨組織の物性(粘弾性)を、非破壊で測定できることがわかる。
【0079】
また、オシロスコープにおいては、軟骨組織の表面と底面で音響波が繰り返し反射されるため、電気信号のピークが周期的に観測される。そして、育成した軟骨組織の厚さに対応して、電気信号の周期(電気信号のピークとピークの間隔)が変化することも確認した。従って、光励起音響波検出装置により検出された軟骨組織にて発生する音響波に対応する電気信号の波形と、音響波の音速とを用いて、生体外で育成した軟骨組織の厚みを測定できることがわかる。
【0080】
[実施例
外径8mm、長さ150mmのステンレス製の円筒状支持具を用意した。参考例1で用いた光励起音響波検出装置の、光ファイバのレーザ光照射面(光ファイバの一方の端部)と圧電高分子トランスデューサの音響波検出面とを、円筒状支持具の先端面に固定し、レーザ光照射面に接続する光ファイバの一部と光音響波検出変換手段を筒状支持具の内部に収容した。この様にして、図1の光励起音響波検出装置を作製した。支持具を用いることにより、生体内での生体組織の物性を非破壊で測定することが可能となる。例えば、生体内で、膝関節の軟骨組織の物性を測定する場合、膝の外部から関節内部に通ずる孔を一ヶ所あるいは二ヶ所以上開け、内視鏡と、円筒状支持具とを前記の孔から関節内部に挿入する。そして、参考例1と同様にして軟骨組織の物性測定をすることにより、軟骨組織を摘出(破壊)することなく、生体内において軟骨組織の物性(粘弾性)を測定することができる。
【0081】
参考
レーザ光発生源として光パラメトリック発振器、レーザ伝送用光ファイバとして石英ファイバ(コア径600μm、長さ1m)、分離手段としてハーフミラー、そして蛍光検出手段としてポリクロメータを用いて、光励起蛍光検出装置を構成した。次に、実施例で用いた円筒状支持具の先端面に、光ファイバのレーザ光照射面(光ファイバの一方の端部)を固定することにより、図4に示す光励起蛍光検出装置を作製した。
【0082】
次に、ブタのひざ関節から軟骨組織を摘出し、酵素処理(6時間、24時間)して軟骨組織を変性させた。酵素としては、トリプシンを用いた。作製した光励起蛍光検出装置を用いて、摘出直後の酵素処理前の軟骨組織と、酵素処理後の軟骨組織のそれぞれについて、軟骨組織にレーザ光を照射し、レーザ光の励起により軟骨組織から発生する蛍光をポリクロメータにより検出した。ポリクロメータで得られた蛍光スペクトルを、図8に示す。
【0083】
図8において、蛍光スペクトル81が酵素処理前の軟骨組織、蛍光スペクトル82が6時間酵素処理した軟骨組織、蛍光スペクトル83が24時間酵素処理した軟骨組織についてのスペクトルを示している。測定された各蛍光スペクトルには、二つのピークが存在する。図8においては、390nm付近に存在するピークを基準として規格化して、酵素処理前後の蛍光スペクトルを重ねて記載した。波長390nm付近に現れたピークは、軟骨組織を形成するコラーゲンに由来するピークであることがわかっている。
【0084】
図8の蛍光スペクトルから、酵素処理により軟骨組織が柔らかい状態となると、波長320〜330nm付近に存在するピークの、強度やピークが現れる位置が変化していくことが分かる。波長320〜330nm付近に現れるピークは、これまでの所、軟骨を形成するどの成分に由来するかはわかっていないが、軟骨を形成する成分が分解もしくは変性していることが判断できる。
【0085】
従って、光励起蛍光検出装置を用いて、軟骨組織にて発生する蛍光を検出することにより、生体外で育成した軟骨組織の物性(組成もしくは組成の変化)を、非破壊で測定できることがわかる。なお、前記と同様に、生体外で軟骨組織の物性を測定する場合には、支持具を用いなくてもよい。そして、支持具が備えられた光励起蛍光検出装置により、生体内での生体組織の物性を非破壊で測定することが可能となる。
【0086】
【発明の効果】
本発明の光励起音響波検出装置により、生体内において、軟骨組織の物性を、組織を破壊することなく測定できる。また、本発明の装置により、生体外で育成した軟骨組織の物性を、組織を破壊することなく測定できる。そして本発明の装置は、培養した軟骨組織の物性と、そしてこの軟骨組織の生体内移植後の物性とを測定することにより、軟骨組織の機能を一貫して評価することができるため、特に再生医療の分野に有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に従う光励起音響波検出装置の一例の構成を示す図である。
【図2】 図1の光励起音響波検出装置の支持具とその内部の構造を示す一部切り欠き斜視図である。
【図3】 本発明に従う光励起音響波検出装置の別の一例の構成を示す図である。
【図4】 本発明には包含されない光励起蛍光検出装置の一例の構成を示す図である。
【図5】 本発明には包含されない光励起蛍光検出装置の別の一例の構成を示す図である。
【図6】 軟骨組織に直接レーザ光を照射して、軟骨組織にて発生する音響波と蛍光とを検出する軟骨組織の物性測定方法の一例を説明する図である。
【図7】 生体外で育成した軟骨組織の粘弾性測定結果を示す図である。
【図8】 軟骨組織にて発生する蛍光の蛍光スペクトルの測定結果を示す図である。
【図9】 図1の光励起音響波検出装置の支持具の別の構成例と、その内部の構造を示す一部切り欠き斜視図である。
【図10】 軟骨組織にて発生する音響波を検出することによる、軟骨組織の物性測定方法について説明する図である。
【図11】 透過法により検出された音響波に対応する電気信号の波形を示す図である。
【図12】 反射法により検出された音響波に対応する電気信号の波形を示す図である。
【符号の説明】
11 レーザ光発生源
12 レーザ光照射面
13 レーザ光伝送用光ファイバ
14 音響波検出面
15 音響波検出変換手段
16 音響波検出装置
17 電気配線
18 電気信号増幅出力手段
19 支持具
20 レーザ光
21 レンズ
22 バイプラナー光電管
23 光照射面固定具
31 分離手段
32 蛍光検出手段
33 蛍光
52 光検出面
53 光検出用光ファイバ
61 生体外で育成した軟骨組織
81、82、83 蛍光スペクトル
94 環状の音響波検出面
95 音響波検出変換手段
99 支持具
111、121 指数関数曲線
P0〜P4 音響波に対応する電気信号の波形のピーク

Claims (1)

  1. レーザ光発生源、そして一方の端部が該レーザ光発生源に近接付設され、他方の端部にレーザ光照射面を有するレーザ光伝送用光ファイバを含むレーザ光照射装置、レーザ光の励起により発生する音響波の検出面を有し、該検出面で検出された音響波を電気信号に変換する圧電トランスデューサからなる音響波検出変換手段、そして該変換手段に電気的に接続された音響波検出装置が組み合わされてなる光励起音響波検出装置であって、前記の光ファイバのレーザ光照射面と音響波検出変換手段の音響波検出面とが、別に用意された筒状の支持具の先端面に両者の面が同一平面上に配置される位置関係にて固定され、そして該光ファイバのレーザ光照射面に接続する部分と該音響波検出変換手段とが該筒状支持具に収容されている軟骨組織の物性測定用の光励起音響波検出装置。
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