JP4310983B2 - 生物処理装置の運転支援方法、運転支援プログラム及び運転支援システム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、各種工場、研究施設、発電施設、酪農業、遊戯施設等から排出される産業廃水、一般家庭、ビル、宿泊施設、入浴施設、飲食店、病院等の医療機関、各種学校等の教育施設、運動施設等から排出される生活廃水等の各種廃水の浄化に用いられる生物処理に関し、特に、生物処理槽に生息する微生物とその微生物が水中の不純物を分解(吸収も含む)する能力との関係付けを行う生物処理装置の運転支援方法、運転支援プログラム及び運転支援システムに関する。
【0002】
【従来の技術】
微生物による有機物の分解能力を利用して汚水の浄化を行う生物処理装置が多く利用されている。この生物処理装置は大別すると、嫌気性生物処理装置と好気性生物処理装置に分けられる。また、有機物の分解だけでなく、リンや窒素を分解し、若しくは体内に吸収する微生物を利用した生物処理装置も実用化されている。廃水中に含まれている物質は千差万別であり、その中に含有する物質を好む菌もまた数多く存在する。つまり、ある水系の浄化に用いられている生物処理装置内に生息する微生物種は、その水種や条件によって営まれる生存競争の結果、選択的に増殖する微生物種群で成り立っている。従って、その水種が変化しなければ、安定した微生物の活性が維持されて分解反応が行われるが、水種が変化した場合には、新しく流入した物質を分解する微生物種が増殖するまではその物質の分解能力は期待できない。
【0003】
このような場合、予めその新しい水種(仮に物質Aを含むものとする)が判っている場合には、模擬水を調整し、適当な生物汚泥、例えば下水処理場の汚泥を導入し、物質Aを分解できる菌を育てるいわゆる「馴養」操作が行われる。この馴養によって出現した微生物種を培養、増殖させ、生物処理装置に導入することで、新しい水種に対応できる微生物群が形成されることになる。
【0004】
馴養前後の微生物相の変化を調べるためには、従来は馴養前後の生物汚泥を採取し、希釈平板法により生菌数を測定し、適当希釈度の平板に出現した全てのコロニーを純粋分離して諸性質を調べ、細菌、酵母、かび、それぞれの分類学的位置を検索して、その変化を捉える方法が行われている。
【0005】
ところで、ネットワークを利用して汚泥をトレーディングする技術には、例えば、特許文献1がある。
【0006】
【特許文献1】
特開2002−163420号公報
【0007】
この特許文献1に記載された「種汚泥の仲介システム」は、新設の生物処理施設の運転を立ち上げる場合や、既設の生物処理施設において汚泥に異常が生じた場合に、良好な汚泥を他の処理施設から運搬し投入するために、複数の処理施設の余剰汚泥の状況を検索し供給する、というものである。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、新物質に対応する微生物を培養する馴養には時間を要する。予め水質の変化が予測でき、時間的な余裕がある場合には、模擬水を調整して適当な汚泥を導入し、予め馴養を実施し、必要な微生物を培養して準備することができる。しかしながら、例えば、下水等の広域処理場のように、流入物質に予測がつかないような場合には、この馴養等の手法ではその処理に対応することが不可能となる。馴養によって分解に必要な微生物が繁殖する期間、例えば、数週間〜数ヶ月に亘って、汚水が下流に流出することになりかねない。
【0009】
特に、ベンゼンやフェノール等、一般に生物の代謝阻害を与えると言われている物質が流入した場合には、これらを分解できないだけでなく、正常であった汚泥の活性も低下し、処理水質が著しく悪化してしまう。生物処理槽の微生物で分解できない物質が流入すると、その物質はそのまま下流に流出し、その処理水の水質監視装置に異常が検出されると、処理を停止することになる。従来、係る場合には、その原水を汲み出して他の処理装置等に移し、分解しなければならなかった。一方、水質分析技術の進歩、取り分け分析機器自身の感度向上や、前処理である抽出技術の進歩等により、水中に含まれる有機性物質の特定が可能となった。
【0010】
物質の特定が可能であれば、対応する微生物を特定することは理論的には可能であろうが、多種多様な有機性物質に効果的な微生物を培養し、準備することは現実的ではない。生態系に現存する微生物は、数百万とも数千万とも言われ、その全てを特定できている訳ではなく、仮に分析によって微生物が特定されたとしても、各微生物種がどの物質に対して効果的に分解反応をするのか、他の微生物種と共存下でその反応が維持できるのかは未知数である。
【0011】
また、特定物質の分解に有効な微生物が判明しても、その微生物が何処に存在しているかを即座に探索することは不可能である。水は、世界各地で同一ではなく、季節によって、水種と濃度が変動し、また、気温や水温、pH等の諸条件によって増殖する微生物が変動し、これらの諸条件を一定に保つのは難しい。一定品目しか生産しない生産工場である場合でも、一時的な操業停止、洗浄水の流入、気温変化等により、微生物種群は変化し、一定にはならない。世界的規模で水系に含まれる微生物分析を実施したとしても、存在する微生物はすぐに変化することから、微生物種の存在地図の作成は、事実上不可能であると言われている。
【0012】
このため、水種に変化が起きると、打つ手に乏しく、既に述べたように、微生物の馴養と培養を待つ等の対応しか術がなかった。しかも、pHや温度等の諸条件が整わないと、馴養が失敗する場合もあった。
【0013】
そして、特許文献1に記載された「種汚泥の仲介システム」では、新設の生物処理施設の運転を立ち上げる場合や、既設の生物処理施設において汚泥に異常が生じた場合に、良好な汚泥を他の処理施設から運搬し投入するために、複数の処理施設の余剰汚泥の状況を検索し供給する、というものにすぎないものであって、特許文献1に係る「種汚泥の仲介システム」は、特定物質の分解に有効な微生物を提供するものではなく、係る問題を解決することはできなかった。
【0014】
そこで、本発明は、生物処理槽毎に物質の分解能力に相違があり、係る相違が微生物に起因している、との知見に基づき、生物処理槽と分解可能な特定物質とを関係付けることにより、特定物質を分解可能な微生物を含む活性汚泥の利用を可能にし、馴養の迅速化、水質浄化の安定化に寄与することができる生物処理装置の運転支援方法、運転支援プログラム及び運転支援システムを提供することを目的とする。
【0015】
また、本発明の他の目的は、生物処理槽の処理能力の推移を迅速に知ることができる生物処理装置の運転支援方法、運転支援プログラム及び運転支援システムを提供することにある。
【0016】
【課題を解決するための手段】
係る課題を解決した本発明の生物処理装置の運転支援方法、運転支援プログラム及び運転支援システムの構成は、以下の通りである。
【0017】
本発明の生物処理装置の運転支援方法は、微生物の分解能力を利用する複数の生物処理装置とこれら生物処理装置に通信接続されるデータ処理手段とを用いた生物処理装置の運転支援方法であって、前記複数の生物処理装置の各々の、微生物を生息させた生物処理槽(プラント2、201、202・・・20N)の流入水(原水18)と流出水(処理水21)との成分及び濃度が特定の波長範囲で吸収スペクトル又は発光スペクトルを用いて計測されるステップと、前記ステップで得られた成分データが各生物処理装置のコンピュータ(36、361、362、36N)に取り込まれ、前記データ処理手段(ホストコンピュータ40)へ送信されるステップと、前記データ処理手段により、前記成分が比較され、その成分の濃度の相違が検出されるステップと、前記データ処理手段により、検出された濃度の相違に基づき、前記生物処理槽毎に特定物質を分解可能な微生物が存在するか否かが判別され、前記特定物質と前記生物処理槽による前記特定物質の分解可能性とが関係付けられ、少なくとも前記特定物質から前記生物処理槽を表す情報が検索可能とされるように、前記特定物質と該特定物質の分解可能性を有する前記生物処理槽とを表す情報がデータベース化されるステップと、少なくとも前記各生物処理装置のコンピュータから前記データ処理手段に前記特定物質から前記生物処理槽が検索されることで、前記特定物質に関係付けられた前記生物処理槽に関する情報が前記各生物処理装置のコンピュータに提供されるステップとを含むことを特徴とする。
【0018】
この生物処理装置の運転支援方法において、生物処理槽の流入水の成分と流出水の成分とを比較し、特定の成分の濃度が相違している場合、生物処理槽に特定物質を分解できる微生物が生息していると判定することができる。この場合、微生物が生息しているとは、生物処理槽にその微生物のみが存在し、又は、生息している微生物群にその微生物が含まれることを意味する。この処理は、特定物質を分解する微生物そのものを特定することではなく、その生物処理槽に特定物質を分解可能な微生物が存在していることが判明すれば、特定物質と生物処理槽との関係付けを行うことにより、その特定物質から処理が可能な生物処理槽を即座に知ることができる。
【0019】
その特定物質を分解可能な生物処理槽が判明すれば、その情報を利用し、他の生物処理槽でその特定物質の分解が可能となる。要するに、特定物質を分解する微生物が生息する生物処理槽から汚泥を採取すれば、その汚泥を用いて他の生物処理槽でその特定物質の分解が可能である。この場合、特定物質を分解する微生物は、その汚泥から採取ないし抽出する必要はなく、その微生物が生息するであろう汚泥の授受でその微生物の移動が可能である。
【0020】
この場合、係る処理を用いれば、生物処理槽の処理能力の時間的推移を把握することができ、突発的な能力低下、換言すれば、突発的な流入水の水質変化を即座に知ることができ、不足した処理能力の補強ないし改善等の対策を取ることが可能である。
【0021】
本発明の生物処理装置の運転支援方法において、前記成分は、200〜2500nmの波長範囲で吸収スペクトル又は発光スペクトルにより計測されることを特徴とする。即ち、生物処理槽の流入水又は流出水の成分の計測には、各種の計測法を利用できるが、例えば、吸収スペクトル又は発光スペクトルを用いて計測すれば、容易かつ精度よく、生物処理槽の流入水又は流出水の成分及びその濃度を検出することができ、その検出波長範囲を200〜2500nmに設定すれば、生物処理槽で処理可能な物質の成分濃度を容易かつ高精度に計測することが可能である。
【0022】
また、本発明の生物処理装置の運転支援方法では、前記特定物質と該特定物質の分解可能性を有する前記生物処理槽とを表す情報がデータベース化され、少なくとも前記特定物質から前記生物処理槽を表す情報の検索が可能である。即ち、特定物質と該特定物質を分解可能な生物処理槽との関係を表す情報をデータベース化すれば、特定物質から生物処理槽を特定し、また、生物処理槽から分解可能な特定物質を特定することができる。ここで、生物処理槽の特定とは、その規模、所在地、設置者等の個別情報をも包含する。係るデータベース化により、検索によって特定物質が分解可能な活性汚泥の入手が容易になる。この場合、データベースは、電子化に限定されるものではなく、ペーパーを用いた台帳をも包含するが、最新情報に頻度よく更新する必要や検索の簡便化からみれば、電子化されたデータベースが望ましい。
【0023】
本発明の生物処理装置の運転支援プログラムは、微生物の分解能力を利用する複数の生物処理装置に通信接続されるデータ処理手段に実行させるための運転支援プログラムであって、前記複数の生物処理装置の各々の、微生物を生息させた生物処理槽の流入水と流出水との成分及び濃度が特定の波長範囲で吸収スペクトル又は発光スペクトルを用いて計測された成分データが各生物処理装置から取り込まれて比較されるステップ、前記成分の濃度情報に基づき、前記生物処理槽に特定物質を分解可能な微生物が存在するか否かが判別されるステップ、前記特定物質と前記生物処理槽による前記特定物質の分解可能性との関係付けを行うステップ、少なくとも前記特定物質から前記生物処理槽を表す情報が検索可能とされるように、前記特定物質と該特定物質の分解可能性を有する前記生物処理槽とを表す情報がデータベース化されるステップ、前記各生物処理装置側からの検索に応答し、前記特定物質に関係付けられた前記生物処理槽に関する情報を前記各生物処理装置側に提供するステップを実行させる構成である。即ち、この運転支援プログラムは、成分の比較処理、濃度情報を基礎とする微生物の有無の判定処理、特定物質と生物処理槽との関係付け処理を段階的に行っている。これらの処理により、特定物質とその分解能力を持つ微生物が生息する生物処理槽との関係付けが、画一化されたデータ処理で実現できるので、容易にしかも、高精度に行うことができるとともに、関係付け処理の信頼性を高めることができる。
【0024】
また、本発明の生物処理装置の運転支援システムは、微生物の分解能力を利用する複数の生物処理装置とこれら生物処理装置に通信接続されるデータ処理手段とを用いた生物処理装置の運転支援システムであって、前記複数の生物処理装置の各々が、生物処理槽の流入水の成分及び濃度が特定の波長範囲で吸収スペクトル又は発光スペクトルにより検出される第1の検出手段(センサー30)と、前記生物処理槽の流出水の成分及び濃度が特定の波長範囲で吸収スペクトル又は発光スペクトルにより検出される第2の検出手段(センサー32)と、前記第1及び第2の検出手段で検出された成分データが入力され、これらを前記データ処理手段に送信するコンピュータ(36、361、362・・・36N)とを備え、前記データ処理手段(ホストコンピュータ40)で、各生物処理装置の前記コンピュータにより検出された濃度の相違に基づき、前記生物処理槽に特定物質を分解可能な微生物が存在するか否かが判別され、前記特定物質と前記生物処理槽による前記特定物質の分解可能性とが関係付けられ、前記データ処理手段の処理により、前記特定物質と該特定物質の分解可能性を有する生物処理槽を表す情報が、少なくとも前記特定物質から前記生物処理槽を表す情報の検索が可能となるようにデータベースに格納され、前記データ処理手段が、各生物処理装置の前記コンピュータからの検索に応答して、前記特定物質の分解可能な微生物が存在する前記生物処理槽を検索し、その結果を各生物処理装置の前記コンピュータに提供することを特徴とする。
【0025】
この生物処理装置の運転支援システムにあっては、第1の検出手段で生物処理槽の流入水の成分及び濃度が検出され、第2の検出手段で生物処理槽の流出水の成分及び濃度が検出される。これらの検出結果を比較すれば、生物処理槽における処理内容を知ることができる。即ち、検出成分の濃度の相違は、特定物質を分解可能な微生物の有無を表す情報であり、未知の微生物が生息する生物処理槽の能力ないし特性を表していることになる。そこで、データ処理手段では、特定物質とその特定物質を分解できる生物処理槽との関係付けを行っている。このデータ処理手段で得られた特定物質と生物処理槽との関係を表す情報は、他の生物処理槽の処理に利用できる。具体的には、その情報を得て、特定の生物処理槽から汚泥を採取し、その汚泥を他の生物処理槽に入れることで、その特定物質の分解が可能になる。
【0026】
また、本発明の生物処理装置の運転支援では、前記データ処理手段の処理により、前記特定物質と該特定物質の分解可能性を有する生物処理槽を表す情報を格納し、少なくとも前記特定物質から前記生物処理槽を表す情報の検索を可能にしたデータベース42を備えている。
【0027】
即ち、このデータベースでは、多数の生物処理槽について、特定物質が分解可能であると関係付けられたその特定物質と生物処理槽との関係を表す情報を用いれば、特定物質が分解可能な生物処理槽を瞬時に特定することが可能である。このデータベースは、コンピュータにおける記憶手段で構成できるが、係る記憶手段だけでなく、検索可能なペーパーからなる台帳であってもよい。そこで、データベースを検索して特定物質から生物処理槽を特定し、その生物処理槽から活性汚泥を採取し、活用することが可能である。
【0028】
また、本発明の生物処理装置の運転支援システムにおいて、前記データベースに格納されている前記データを生物処理サイトで読出し可能にしたことを特徴とする。即ち、生物処理サイト間をネットワークで連係し、共通のデータベースを活用すれば、各生物処理サイトでデータベースから特定物質の分解が可能な生物処理槽を特定し、要求される活性汚泥情報の入手が容易かつ迅速化できる。
【0029】
また、本発明の生物処理装置の運転支援システムにおいて、関係付けられた前記特定物質及び前記生物処理槽の情報が参照され、任意の生物処理槽から取り出された汚泥が他の生物処理槽に提供されることを特徴とする。即ち、特定物質を分解可能な生物処理槽の特定に基づき、その生物処理槽から活性汚泥の採取ないし提供を受ければ、特定物質の分解能力に乏しい生物処理槽の分解能力の増強や馴養の迅速化を図ることができ、特定物質の分解能力を飛躍的にしかも、短時間で高めることができる。従って、廃水等の水質変化に迅速に対応できるとともに、水質浄化の安定化を図ることができる。
【0030】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の生物処理装置の運転支援方法、運転支援プログラム及び運転支援システムの実施の形態に係る生物処理システムを示している。なお、図1に示す処理システムは本発明の一つの実施の形態を説明するにすぎないものであって、係る実施の形態が本発明の生物処理装置の運転支援方法、運転支援プログラム及び運転支援システムそのものを示すものでもなく、図1に示す形態に本発明が制限されるものでもない。
【0031】
この生物処理システムには、微生物を用いた浄化処理を行う生物処理装置ないし生物処理槽としての活性汚泥プラント(以下単に「プラント」と称する)2が設置され、この実施の形態に係るプラント2には、生物処理を実行する処理槽としてのセレクター4、第1及び第2の曝気槽6、8、沈殿池10が設置されている。セレクター4は糸状性細菌の発生を抑制するために高負荷条件となるように設計された小型の曝気槽である。これらセレクター4及び曝気槽6、8には、曝気処理のため、エアーフィルター12及びブロワー14を介して空気が供給されている。
【0032】
セレクター4の前段に設置された原水槽16には図示しない工場ラインから処理すべき廃水等の原水18が溜められ、この原水18は原水ポンプ20でセレクター4に導かれる。セレクター4で曝気処理、及び微生物による浄化処理が施された原水18は、曝気槽6で曝気処理、及び微生物による浄化処理を経てその上澄水が曝気槽8に導かれ、再び曝気処理、及び微生物による浄化処理が行われ、沈殿池10に導かれる。沈殿池10の上澄水は処理水21として河川等に排出される。また、沈殿池10に沈殿した汚泥22は、排出ライン23のバルブ24を開くことにより、図示しない脱水機に導かれて脱水処理が施される。また、汚泥22は、返送ライン25のバルブ26を開くとともに、返送汚泥ポンプ28を運転することにより、沈殿池10からセレクター4に返送される。
【0033】
そして、プラント2の入口側には、流入水である原水18の成分及びその濃度を検出する第1の検出手段としてセンサー30が設置されている。このセンサー30は、例えば、200〜2500nmの波長範囲で吸収スペクトル又は発光スペクトルを用いて成分及び濃度を計測する。また、センサー30は、破線で示すように、原水槽16又はその工場ライン側に設置してもよい。
【0034】
また、プラント2の出口側には、流出水である処理水21の成分及びその濃度を検出する第2の検出手段としてセンサー32が設置されている。このセンサー32は、例えば、200〜2500nmの波長範囲で吸収スペクトル又は発光スペクトルを用いて成分及び濃度を計測する。また、センサー32は、破線で示すように、曝気槽8から沈殿池10に導かれる処理水34を測定対象としてもよい。
【0035】
これらセンサー30、32で検出された成分や濃度等を表すデータは、データ処理手段としてのコンピュータ36に適時に取り込まれる。そして、これらのデータは、プラント2の個別情報とともに、インターネット等の各種情報ネットワーク媒体38を通して管理者等に設置されたホストコンピュータ40に向けて送信され、ホストコンピュータ40では、そのデータ受信及びデータ加工等の処理を経て、データ保存手段であるデータベース42に格納される。この実施の形態では、コンピュータ36において、センサー30、32の検出出力から成分や濃度等に変換ないしは表示する形態としているが、必ずしもこれによる必要はなく、センサー30、32の検出データを直接ホストコンピュータ40に送信し、ホストコンピュータ40にて該処理を行う形態であっても何ら問題はない。
【0036】
ホストコンピュータ40は、データ処理手段であるとともに、データベース42のデータからプラント2の活性汚泥情報を提供する等のトレーディング情報を提供するトレーディング手段である。そこで、ホストコンピュータ40では、運転支援プログラムを用いてコンピュータ36からのデータのデータベース化処理として、例えば、検出された濃度の相違に基づき、プラント2に特定物質を分解可能な微生物が存在するか否かを判別し、特定物質とプラント2による特定物質の分解可能性との関係付け処理を行うとともに、特定物質とプラント2とを表す情報のデータベース化等の処理を行う。また、データベース42は、ホストコンピュータ40のデータ処理により、特定物質とその分解可能性を有する生物処理槽としてのプラント2とを表す情報を格納し、特定物質を表す情報からプラント2を表す情報、プラント2を表す情報から分解可能な特定物質の検索を可能にしたものである。
【0037】
この場合、コンピュータ36には、図示しないが、データを表示するデータ表示手段やその印刷出力手段等のデータ提示手段を備えており、オペレータが確認することができるし、また、適時に取り込まれるプラント2の処理能力を示す成分や濃度を表すデータや、ホストコンピュータ40にて処理される各種データや、データベース42に格納されている他のプラントの情報をプラント2側で確認することができる。即ち、コンピュータ36は、データ入力端末であるとともに、ホストコンピュータ40を通じてデータベース42から所望のデータを検索するデータ検索端末を構成しており、また、ホストコンピュータ40はコンピュータ36側に所望の情報を提供するサーバを構成している。
【0038】
そして、図1に示す実施の形態では、1つのプラント2を例に取って説明したが、本発明は、多数の生物処理装置としてのプラントを対象とすることにより、情報蓄積及びその活用を企図したものであって、例えば、図2に示すように、複数のプラント201、202・・・20Nに個別にセンサー30、32を設置し、これらセンサー30、32で検出された成分や濃度等を表すデータを処理するコンピュータ361、362・・・36Nとホストコンピュータ40とを各種情報ネットワーク媒体38で連係させ、情報交換ネットワークを構成する。ホストコンピュータ40には、各種データの表示や印刷等を行うデータ提示部44が接続されるとともに、携帯端末等のコンピュータ46が接続されている。この場合、プラント201、202・・・20Nは、各センサー30、32の検出出力をホストコンピュータ40に向けて適時に自動送信する構成としてもよく、また、例えば、図3に示すように、個別に接続されたデータ入力装置48を用いて必要なデータや検出データを入力するようにしてもよい。
【0039】
係る構成を備えた生物処理システムにおいて、本発明に係る生物処理装置の運転支援方法及び運転支援プログラムの実施の形態に係る処理は、例えば、図4に示すプログラムで実行することができる。
【0040】
生物処理途上において、ステップS1ではデータの取込みタイミングの到来か否かを判定し、データの取込みタイミングが到来するまでデータ取込みを待機する。即ち、刻々と変化する原水18の水質変化を監視するには継続的な計測が不可欠であるが、一定のタイミングで計測データを取り込むことにより、経時的推移を把握することができる。
【0041】
ステップS1でデータ取込みタイミングが到来すると、ステップS2に移行し、プラント2、即ち、プラント201、202・・・20Nの流入水即ち原水18、流出水即ち処理水21の成分及び濃度の取込み処理を行う。即ち、センサー30、32の検出出力がコンピュータ361、362・・・36Nに取り込まれる。ステップS3では、このデータの取込み処理が完了したか否かを判定し、データ取込み中、ステップS2及びステップS3で待機する。
【0042】
取り込まれたデータは各コンピュータ361、362・・・36Nからホストコンピュータ40に伝送され、ステップS4のデータ処理が実行される。即ち、ステップS4では、流入水及び流出水即ち、原水18及び処理水21の成分の比較処理として、センサー30、32で得られる検出データの比較を行う。この比較処理において、ステップS5では、特定物質が分解されているか否かを、特定物質毎に成分濃度の変化から判定する。一定の濃度変化、即ち、一定値以上の濃度減少が確認されたとき、ステップS6に移行し、その濃度変化から分解物質を特定する。この分解物質の特定ないし判定をコンピュータ361、362・・・36N側で処理し、その処理結果をホストコンピュータ40に取り込むようにしてもよい。
【0043】
この分解物質の特定の後、ステップS7に移行し、その判定処理が完了したか否かを判定し、対象とする物質について判定処理が完了するまでステップS5ないしステップS7の処理を繰り返し、全ての判定処理が完了したとき、ステップS1に戻って次のデータ取込みまで待機する。
【0044】
そして、ホストコンピュータ40では、プラント201、202・・・20Nと分解された特定物質とを表すデータをデータベース化し、データベース42に格納する。
【0045】
ここで、プラント201、202・・・20N側で原水18の水質に変化が生じ、その処理能力が不足している場合、特定物質の存在を確認し、コンピュータ361、362・・・36Nからホストコンピュータ40を通じてデータベース42に格納されている特定物質と、その特定物質を分解可能なプラント201、202・・・20Nを検索し、その特定物質を分解可能な微生物を有するプラント201、202・・・20Nの何れかを特定することができる。この特定に基づき、選択されたプラント201、202・・・20Nから汚泥22を採取し、その汚泥22を処理能力が低下している特定のプラント201、202・・・20Nに提供することにより、その処理能力を回復ないし増強することができる。この場合、処理能力の増強は、微生物を汚泥22から抽出する必要はなく、その微生物が含まれているであろう汚泥22を提供するだけでよく、極めて簡易な処理で水質浄化の安定化を図ることができる。
【0046】
この場合、各プラント201、202・・20Nは生物処理サイトを構成しており、各生物処理サイトのコンピュータ361、362・・・36Nを用いてホストコンピュータ40からデータベース42の保存データの読出し及び検索が可能であり、その検索データを各生物処理サイトで活用し、他の生物処理サイトから汚泥22の提供を受けることができる。
【0047】
以下、本発明の実施の形態に係る生物処理装置の運転支援方法、運転支援プログラム及び運転支援システムにおける各処理の具体例について説明する。
【0048】
この生物処理システムでは、プラント2の入口側、即ち、流入水に含まれる成分と、プラント2の出口側、即ち、流出水に含まれる成分とを比較し、特定の成分Aに着目し、その濃度がプラント2の流入水と流出水で相違している場合、流出水の成分Aの濃度が減少すると、プラント2に生息している微生物群にその成分Aを分解できる微生物を含んでいると判定すること(即ち、定義付け)ができる。
【0049】
この処理において、特定物質Aを分解できる微生物がプラント2に存在するか否かは、次のように定義することができる。
【0050】
(1) 特定物質Aを分解できる微生物が存在する場合
A1 *Q1 +A3 *Q3 >A2 *Q2 、かつ、A1 >A2 、A1 >A3 ・・・(1)
【0051】
(2) 特定物質Aを分解できる微生物が存在しない場合
A1 *Q1 +A3 *Q3 =A2 *Q2 、かつ、A1 ≦A2 、A1 ≦A3 ・・・(2)
【0052】
式(1) 及び(2) において、
A1 :装置に流入する原水中の物質Aの濃度
Q1 :装置に流入する原水の流量
A2 :該当する槽の循環水、若しくは後段の槽より返送される水に含まれる物質Aの濃度
Q2 :該当する槽の循環水、若しくは後段の槽より返送される水の流量
A3 :装置から流出する処理水に含まれる物質Aの濃度
Q3 :装置から流出する処理水の流量
【0053】
但し、Q1 +Q3 ≧Q2 を満たす。「=」となるのは、系外に引抜く汚泥22が零で、かつそのプラント2の循環水、若しくはプラント2の出口側槽より返送される処理水の流量が零のときである。
【0054】
また、上記記述において、プラント2の循環水は、例えば、プラント2における処理槽が1槽からなる完全混合槽の場合で、槽内撹拌や濃度計測、サンプリング、抜出し、余剰汚泥の分解処理を行う等の目的で循環ラインが設けられている場合を想定する。
【0055】
また、プラント2の出口側槽から返送される水は、例えば、図1において、沈澱池10下部から引き出した汚泥22を返送する場合、即ち、曝気槽である例えば、セレクター4へ返送する返送ライン25が設けられている場合を想定する。
【0056】
ここで、プラント2の入口から出口側への時間的差異や汚泥22との接触時間、或いは循環/返送ライン(25)による希釈等の影響も含めて、成分Aに対し出口濃度/入口濃度<0. 9であれば分解微生物が少なくともプラント2に存在していると判定することができ、出口濃度/入口濃度<0. 7であれば十分に分解できる微生物群であると判定することができる。
【0057】
そこで、成分Aを分解できる活性汚泥を、これまで成分Aを分解できなかった他のプラントに投入してやれば、馴養の迅速化を実現し、短期間で処理能力が発現する。投入する汚泥量は、例えば、プラントに含まれる汚泥重量の少なくとも1/100以上を投入すればよい。
【0058】
例えば、物質Aを分解できる微生物汚泥を新たに要求している例えば、プラント201があった場合を想定すると、このプラント201の生物処理槽におけるMLSS濃度が仮に3500mg/Lであり、生物処理槽の容積が500m3 であったとする。すると、このプラント201の生物処理槽に含まれる汚泥重量は、MLSS換算で1750kgである。従って、投入したい汚泥の量はこの1/100量、つまりMLSS換算で17.5kgとなる。一方、物質Aを分解できる例えば、プラント202があったとする。このプラント202の余剰汚泥濃度が仮に7000mg/Lであるとする。プラント202からプラント201へ汚泥を投入するとなった場合には、プラント202の余剰汚泥2.5m3 を移送すればよいことになる。汚泥の移送には、バキュームカーを利用したり、各種水槽、タンク等を用いて輸送することができる。また、同じ敷地内のようにごく近隣であれば、移送ポンプとホースを使って直接流すことでも可能である。
【0059】
そして、このようにして得た、各プラントに含まれる微生物群情報(=分解可能な物質情報)を、随時一箇所に掲示し、絶えず更新することで、処理設備にて必要となった分解微生物群を検索することができる。また、一例として、表1には、各プラントに流入する各種有機物成分とそれに対応できる微生物群を持つプラントの関係(=プラントの分解能力)を示す。物質の分解率は、物質の分解率={(入口濃度−出口濃度)/入口濃度}×100(%)で表すことができる。
【0060】
【表1】
【0061】
表1において、◎は、出口濃度/入口濃度≧0.5を表し、この場合、その物質の分解性にすぐれた微生物群がいることを示している。また、○は、0. 5>出口濃度/入口濃度≧0. 3となる中程度の分解性を、△は、0. 3>出口濃度/入口濃度≧0. 1程度ではあるが分解性を持つ微生物群の存在を示唆している。×は、0. 1>出口濃度/入口濃度≧0であって、その物質にほとんど分解性を示さないかその物質の分解には適さない微生物群であることを示している。この表1と図2に示すネットワークによる汚泥の検索方法を示す。例えば、処理工場のプラント201、202・・・20Nの何れか、例えば、プラントXに物質Aが流入し、また、流入したことが判明した場合、図2に示すネットワークにて表1より、物質Aの分解性が◎、○、△を示すプラント201、202・・・20Nの何れかを検索する。プラント201、202・・・20N中の複数のプラントが検索された場合には、次に、物質A以外の物質B、C、D・・・の欄を調査し、そのプラントにより近似の水種のプラントを検索し、その検索の結果、プラントYが抽出されたとき、プラントYの生物汚泥を移送し、プラントXに投入すれば、その物質の分解処理能力を増強し、その処理を実行することができる。仮に、近似の水種が見つからなくても、物質Aの分解性を示す微生物群が検索でき、その生物汚泥を投入すれば、馴養時間がより短縮できる。もちろん、1箇所のプラントからだけでなく、複数のプラントから生物汚泥を移送し、投入することができるのは言うまでもない。必要なのは、物質Aを分解できる微生物を、該プラントに発現させることである。
【0062】
なお、表1はデータ表示処理の一例であって、本発明は係る処理に制限されるものではない。当然のことながら、プラント数が増えれば流入する有機性物質の種類も増えるので表1に記載される情報量が拡大し、分析技術の進歩により、現在の定性分析能に加えて「定量性」を把握することで、流入水中の各成分比率が精度よく判定でき、その結果、特定物質を分解できる微生物の存在割合を表す情報も表1に表わすことができる。
【0063】
ところで、水中に含まれる物質A、B、C・・・を特定する手段としては、ガスクロマトグラフィ法、イオンクロマトグラフィ法、NMR法等の方法があるが、廃水のような汚水中に挿入し、直に測定ができる光学的手法を用いるのがより好ましい。現在、200〜2500nmの波長で水の吸収、若しくは発光スペクトルを測定し、そのスペクトルに対してケモメトリックス演算規則を適用して、成分を特定する手法が確立されている。例えば、オーストリアのS::CAN社の製品や、ドイツのSECOMAM社の製品等がある。この手法を使えば、オンラインで、かつ連続的に水質種と濃度を連続監視することができ、被測定水をサンプリングし分析を掛けるような、従来の方法に見られる時間的ロスを最小限に抑えることができるので、前述のデータの随時更新が必要なネットワークを実現するためには最適である。
【0064】
以上は主に生物処理槽の運転途中から異物質が入ってきた場合について説明したが、新設の生物処理槽を立ち上げる際にも、原水に含まれる特定物質が判っていれば、本発明を利用して、特定物質を分解し得る種汚泥を持ち込むことにより、早期に生物処理槽を立ち上げることができる。
【0065】
以上説明したように、係る処理システムによれば、次の効果が得られる。
【0066】
これまでは、生物処理装置に流入する原水の水質(物質種)が変化すると、その水質に生物汚泥が馴化し、見合った微生物種が増殖するまで処理水質が悪化するという問題があり、かつ馴化するまでには数日〜数ヶ月程度の期間を要し、これを現場の生物処理サイトで行うと、その汚水がプラント外に流出してしまうという危険があったが、この処理システムによれば、分解できる微生物が存在するプラントを即座に検索でき、その汚泥を移送、投入することで微生物を系内に導入することができるので、短期間に馴化が完了する。この結果、安定した生物処理が可能になる。
【0067】
【実施例】
本発明の作用及び効果を確認するために用いた実施例を以下に示す。係る実施例は本発明の実施の形態についての一例であって、係る実施例を以て本発明の範囲が制限されるものではない。
【0068】
本発明の実証実験として、表1に記載の活性汚泥プラント1に、「ベンゼン」と、「フェノール」が混入したという想定で、ラボ試験を実施した。ラボ試験に使用した実験装置は、プラント1を実際の生物処理サイトを模してスケールダウンしたものであり、通水条件もほぼその生物処理サイトに合わせた。活性汚泥も実際にプラント1より抜き出したものを用いた。装置容積、通水条件等を下記及び表2に示す。
【0069】
実施したプラントの概要は、次の表2の通りである。
【0070】
【表2】
【0071】
そして、通水条件は以下の通りである。
原水流量:0.3L/hr
汚泥返送率:75%(流量換算で0.225L/hr)
各槽のMLSS濃度:3500±50mg/Lとなるように抜出し量で調整した。
各槽の溶存酸素濃度:2〜3mg as 0/Lとなるように送気量を調整した。
原水のCODcr濃度:2400mg as CODcr/L
フェノール、ベンゼン添加後のCODcr濃度:3000mg/L
【0072】
通常、原水等の有機物濃度を表わす指標として生物化学的酸素消費量(BOD)が用いられるが、この生物処理試験においては、フェノール、ベンゼン等の難分解性物質であっても精度よく表わせるように、CODcrで水質分析を実施した。
【0073】
(実施例1)
プラント1の原水条件で30日間通水し、装置の立上げと性能を確認した。31日目より原水中にフェノールとベンゼンを混入させた。同時に、表1より検索、抽出されたプラント2の抜出し汚泥を投入した。プラント2より抜き出した汚泥の濃度は8000mg/Lだったので、最低限必要な投入量は45mlである。これを水道水で約2.3倍希釈して3500mg/Lとし、1 時間に1回、4mlずつ、述べ26時間掛けてセレクター部に間欠的に投入した。その後は条件を変えずに90日目まで運転し、処理水質の変動を監視した。
【0074】
(実施例2)
プラント1の原水条件で30日間通水し、装置の立上げと性能を確認した。31日目より原水中にフェノールとベンゼンを混入させた。実施例2では特に条件を変えたり、他のプラントの汚泥を導入したりせず、最初に設定した条件のまま90日目まで運転し、処理水質の変動を監視した。
【0075】
各実施例の水質の変化を表3に示す。
【0076】
【表3】
【0077】
フェノール、ベンゼンが混入するまでの期間における処理性能は実施例1、2共に変わらず、処理水濃度で100mgasCODcr/L、除去率で約96%であり、良好な処理性能を示した。
【0078】
次に、フェノール、ベンゼンが混入した後の処理性能は、実施例1では一週間で処理性能が回復し(処理水濃度:150mg/L、除去率:95%)、そのまま90日目までそれを維持した。これに対し、実施例2では一週間後には著しく処理性能が低下した(処理水濃度:1000mg/L、除去率:67%)。特に、フェノール、ベンゼンによる濃度増加分を差し引いても処理水濃度が上がっており、備えていた処理性能自体も低下した。その後、僅かずつ処理性能が上昇したが、90日目であっても、実施例1の処理性能には届かなかった(処理水濃度:330mg/L、除去率:89%)。
【0079】
以上のように、フェノール、ベンゼンを分解できる微生物群を、表1のような検索方法を使って抽出し、必要量投入することで、処理性能を維持することができることが確認できた。
【0080】
なお、図1に示す実施の形態では、返送ライン25を用いて沈殿池10の汚泥22をセレクター4に返送しているが、本発明は、このような汚泥返送を用いない生物処理槽に適用してもよく、図1の実施の形態に限定されるものではない。
【0081】
本発明は、以上述べた実施の形態や実施例に限定されるものではなく、明細書に記載された目的や実施の形態から想定できるあらゆる装置や方法を包含するものである。
【0082】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、次の効果が得られる。
【0083】
a 請求項1に係る本発明によれば、刻々と変化する生物処理槽の流入水と流出水との成分及び濃度の変化を監視することで、その生物処理槽で分解できる特定物質とその生物処理槽との関係付けを容易にかつ高精度に行うことができる。このため、生物処理槽に流入する原水の水質変化に対応した微生物やその微生物を含む生物処理槽を表すデータを迅速に提供でき、馴養に要する時間を短縮できるとともに、安定した生物処理に寄与することができる。
【0084】
b 請求項2に係る本発明によれば、200〜2500nmの波長範囲で吸収スペクトル又は発光スペクトルを用いることにより、高精度に濃度変化を計測でき、分解物質の特定精度を高めることができる。
【0085】
c また、請求項1に係る本発明によれば、データベース化された特定物質と生物処理槽とを表す情報から特定物質を分解できる生物処理槽を容易かつ迅速に特定でき、その情報を迅速に活用することができる。
【0086】
d 請求項3に係る本発明によれば、運転支援プログラムを用いることにより、特定物質と生物処理槽との関係付けを画一的かつ迅速な処理で行うことができる。
【0087】
e 請求項4に係る本発明によれば、第1の検出手段、第2の検出手段及びデータ処理手段という簡単な構成で特定物質とその生物処理槽との関係付けを実現することができ、関係付けられた情報の有効利用を図ることができる。
【0088】
f 請求項4に係る本発明によれば、データベース化された特定物質と生物処理槽とを表す情報から特定物質を分解できる生物処理槽を容易かつ迅速に特定でき、その情報を迅速に活用することができる。
【0089】
g 請求項5に係る本発明によれば、生物処理サイト間のネットワーク化とともに、データベースの共通化により、各生物処理サイトで活性汚泥情報等のデータの活用が可能になり、そのデータの入手及び活用の容易化、迅速化を図ることができ、汚泥の供給処理の迅速化及び安定供給化に寄与することができる。
【0090】
h また、本発明によれば、関係付けられた特定物質と生物処理槽との情報に基づき、特定の生物処理槽から採取した汚泥を他の生物処理槽に提供して欠如ないし不足した処理能力を回復ないし増強することができ、原水の水質変化に迅速に対応した浄化処理を実現できるとともに、その浄化処理の安定化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の生物処理装置の運転支援方法、運転支援プログラム及び運転支援システムの実施の形態に係る生物処理システムを示すブロック図である。
【図2】生物処理システムのネットワークを示すブロック図である。
【図3】他の実施の形態に係るプラント側の処理システムを示すブロック図である。
【図4】実施の形態に係る運転支援プログラムを示すフローチャートである。
【符号の説明】
2、201、202・・・20N プラント(生物処理槽)
30 センサー(第1の検出手段)
32 センサー(第2の検出手段)
36、361、362・・・36N コンピュータ(データ処理手段)
40 ホストコンピュータ(データ処理手段)
42 データベース
Claims (5)
- 微生物の分解能力を利用する複数の生物処理装置とこれら生物処理装置に通信接続されるデータ処理手段とを用いた生物処理装置の運転支援方法であって、
前記複数の生物処理装置の各々の、微生物を生息させた生物処理槽の流入水と流出水との成分及び濃度が特定の波長範囲で吸収スペクトル又は発光スペクトルを用いて計測されるステップと、
前記ステップで得られた成分データが各生物処理装置のコンピュータに取り込まれ、前記データ処理手段へ送信されるステップと、
前記データ処理手段により、前記成分が比較され、その成分の濃度の相違が検出されるステップと、
前記データ処理手段により、検出された濃度の相違に基づき、前記生物処理槽毎に特定物質を分解可能な微生物が存在するか否かが判別され、前記特定物質と前記生物処理槽による前記特定物質の分解可能性とが関係付けられ、少なくとも前記特定物質から前記生物処理槽を表す情報が検索可能とされるように、前記特定物質と該特定物質の分解可能性を有する前記生物処理槽とを表す情報がデータベース化されるステップと、
少なくとも前記各生物処理装置のコンピュータから前記データ処理手段に前記特定物質から前記生物処理槽が検索されることで、前記特定物質に関係付けられた前記生物処理槽に関する情報が前記各生物処理装置のコンピュータに提供されるステップと、
を含むことを特徴とする生物処理装置の運転支援方法。 - 前記成分は、200〜2500nmの波長範囲で吸収スペクトル又は発光スペクトルにより計測されることを特徴とする請求項1記載の生物処理装置の運転支援方法。
- 微生物の分解能力を利用する複数の生物処理装置に通信接続されるデータ処理手段に実行させるための運転支援プログラムであって、
前記複数の生物処理装置の各々の、微生物を生息させた生物処理槽の流入水と流出水との成分及び濃度が特定の波長範囲で吸収スペクトル又は発光スペクトルを用いて計測された成分データが各生物処理装置から取り込まれて比較されるステップ、
前記成分の濃度情報に基づき、前記生物処理槽に特定物質を分解可能な微生物が存在するか否かが判別されるステップ、
前記特定物質と前記生物処理槽による前記特定物質の分解可能性との関係付けを行うステップ、
少なくとも前記特定物質から前記生物処理槽を表す情報が検索可能とされるように、前記特定物質と該特定物質の分解可能性を有する前記生物処理槽とを表す情報がデータベース化されるステップ、
前記各生物処理装置側からの検索に応答し、前記特定物質に関係付けられた前記生物処理槽に関する情報を前記各生物処理装置側に提供するステップ
を実行させるための生物処理装置の運転支援プログラム。 - 微生物の分解能力を利用する複数の生物処理装置とこれら生物処理装置に通信接続されるデータ処理手段とを用いた生物処理装置の運転支援システムであって、
前記複数の生物処理装置の各々が、
生物処理槽の流入水の成分及び濃度が特定の波長範囲で吸収スペクトル又は発光スペクトルにより検出される第1の検出手段と、
前記生物処理槽の流出水の成分及び濃度が特定の波長範囲で吸収スペクトル又は発光スペクトルにより検出される第2の検出手段と、
前記第1及び第2の検出手段で検出された成分データが入力され、これらを前記データ処理手段に送信するコンピュータとを備え、
前記データ処理手段で、各生物処理装置の前記コンピュータにより検出された濃度の相違に基づき、前記生物処理槽に特定物質を分解可能な微生物が存在するか否かが判別され、前記特定物質と前記生物処理槽による前記特定物質の分解可能性とが関係付けられ、
前記データ処理手段の処理により、前記特定物質と該特定物質の分解可能性を有する生物処理槽を表す情報が、少なくとも前記特定物質から前記生物処理槽を表す情報の検索が可能となるようにデータベースに格納され、
前記データ処理手段が、各生物処理装置の前記コンピュータからの検索に応答して、前記特定物質の分解可能な微生物が存在する前記生物処理槽を検索し、その結果を各生物処理装置の前記コンピュータに提供する
ことを特徴とする生物処理装置の運転支援システム。 - 前記データベースに格納されている前記データを生物処理サイトで読出し可能にしたことを特徴とする請求項4記載の生物処理装置の運転支援システム。
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