JP4310033B2 - フラップの作動装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、テーパーした主翼の後縁部に沿って設けたフラップを、スパン方向に離間して配置した少なくとも2個のリンクユニットによって後方に移動させながら下降させるフラップの作動装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
かかるフラップの作動装置は、米国特許第4444368号明細書により公知である。このフラップの作動装置はフラップの前縁に固定したフランジリンクをメインリンク、第1ポジショニングリンク、プログラミングリンクおよび第2ポジショニングリンクを介してスパーに支持し、アクチュエータでメインリンクを揺動させることによりフラップを後方に移動させながら下降させるようになっている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
一般に従来のフラップの作動装置は、フラップを支持すべくスパン方向に離間して配置された複数のリンクユニットに同一のものが使用されているため、フラップの後方への張り出し量がスパン方向に均一になる。しかしながら、コード長が翼根側から翼端側に向けて漸減するテーパー翼では、フラップの後方への張り出し量がスパン方向に均一であると、コード長に対するフラップの張り出し量の比率がスパン方向に変化するため、フラップの空力特性がスパン方向に不均一になってしまう問題があった。特に、主翼とフラップの前縁との間にスロットを形成するスロッテッドフラップでは、翼根側で最適のスロット幅に設定すると翼端側でスロット幅が過大になり、翼端側で最適のスロット幅に設定すると翼根側でスロット幅が過小になるため、フラップの空力特性を充分に高めることが困難であった。
【0004】
かかる問題を解決するために、スパン方向に分割された複数のフラップを設け、各々のフラップの張り出し量を主翼のコード長に応じて変化させることが考えられるが、このようにするとフラップを作動させるリンクユニットの数が増加するため、部品点数や重量の増加を招いてしまう。またリンクユニットを用いずに、ガイドレールによってフラップを案内するものも知られているが、ガイドレールがフラップや他の構造と干渉するのを回避しようとすると、設計自由度に制約が生じる問題がある。
【0005】
本発明は前述の事情に鑑みてなされたもので、テーパー翼に設けられたフラップの空力特性をスパン方向に均一化することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1に記載された発明によれば、テーパーした主翼の後縁部に沿って設けたフラップを、スパン方向に離間して配置した少なくとも2個のリンクユニットによって後方に移動させながら下降させるフラップの作動装置において、各々のリンクユニットは、一端が主翼のリヤスパーの上部に第1支点ピンを介して上下揺動自在に枢支されたスイングアームと、一端が主翼のリヤスパーの下部に第2支点ピンを介して上下揺動自在に枢支されたキャリッジと、一端がスイングアームの中間部に第3支点ピンを介して枢支され、他端がキャリッジの中間部に第4支点ピンを介して枢支されたミッドリンクと、フラップの前縁に突設されて先端がスイングアームの他端に第1球面軸受を介して枢支されたリテーナと、一端がキャリッジの他端に第2球面軸受を介して枢支され、他端がリテーナの基端に第3球面軸受を介して枢支されたサポートリンクと、各々のスイングアームを同一角度ずつ揺動させるアクチュエータとを備え、前記各々のリンクユニットのスイングアーム、キャリッジ、ミッドリンク、リテーナおよびサポートリンクは所定の寸法比を有する相似形状に配置されることを特徴とするフラップの作動装置が提案される。
【0007】
上記構成によれば、テーパーした主翼の後縁部にフラップを支持する少なくとも2個のリンクユニットを、それぞれスイングアーム、キャリッジ、ミッドリンク、リテーナおよびサポートリンクで構成し、それら各構成要素を所定の寸法比を有する相似形状に配置したので、アクチュエータで各々のリンクユニットのスイングアームを同一角度ずつ揺動させると、各々のリンクユニットの相互に対応する構成要素が互いに同一角度ずつ揺動するため、前記リテーナと一体のフラップをスムーズに張り出すことができる。そしてフラップの張り出し量、つまりリテーナの移動量は各々のリンクユニットの寸法比によって定まるので、この寸法比を任意に選択することによりフラップの張り出し量をスパン方向に変化させることができる。その結果、スパン方向の各部においてフラップの空力特性を自由に設定することができ、離着陸性能の向上に寄与することができる。
【0008】
またフラップの張り出し量がスパン方向に変化すると、フラップは後方移動および下降しながらスパン方向に移動する三次元的な運動を行うが、スイングアームおよびリテーナの連結と、キャリッジおよびサポートリンクの連結と、サポートリンクおよびリテーナの連結とをそれぞれ球面軸受を介して行うことにより、フラップの前記三次元的な運動を支障無く行わせることができる。しかもリンクユニットは主翼のリヤスパーの後方に配置されるため、リヤスパーの前方に配置される燃料タンク等の構造物と干渉する虞がない。
【0009】
また請求項2に記載された発明によれば、請求項1の構成に加えて、前記寸法比は、各々のリンクユニットの位置に対応する主翼のコード長の比に一致することを特徴とするフラップの作動装置が提案される。
【0010】
上記構成によれば、相互に相似に形成された各リンクユニットの寸法比が、それらリンクユニットの位置に対応する主翼のコード長の比に一致するので、主翼のコード長が大きい部分ではフラップの後方移動量を大きくし、主翼のコード長が小さい部分ではフラップの後方移動量を小さくすることができる。これにより、主翼のスパン方向の各部でフラップを主翼のコード長に応じた最適の位置および角度に張り出すことができ、特にスロッテッドフラップの場合にはスパン方向の各部で適切なスロット幅を確保することができる。
【0011】
また請求項3に記載された発明によれば、請求項2の構成に加えて、各々のリンクユニットの位置に対応するフラップのコード長の比は、各々のリンクユニットの位置に対応する主翼のコード長の比に一致することを特徴とするフラップの作動装置が提案される。
【0012】
上記構成によれば、各々のリンクユニットの位置において、主翼のコード長とフラップのコード長との比が一定になり、かつ主翼のコード長とフラップの後方移動量との比が一定になるので、スパン方向の各部でフラップの空力特性を均一化することができる。
【0013】
尚、実施例の第1〜第3ボールジョイントb1〜b3は本発明の第1〜第3球面軸受に対応する。また実施例の油圧シリンダ31は本発明のアクチュエータに対応する。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を、添付図面に示した本発明の実施例に基づいて説明する。
【0015】
図1〜図8は本発明の一実施例を示すもので、図1は飛行機の左主翼の平面図、図2は展張状態にあるフラップおよびその作動装置の全体平面図、図3は展張状態にあるフラップおよびその作動装置の全体斜視図、図4は図2の4−4線拡大断面図(着陸時)、図5はリンクユニットの部分斜視図、図6は図2の6−6線拡大断面図、図7は巡航時のフラップの状態を示す図、図8は離陸時のフラップの状態を示す図である。
【0016】
図1および図2に示すように、飛行機の主翼Wは直線よりなる前後縁を有してテーパーするテーパー翼からなり、その後縁には翼根側に位置するフラップFと、翼端側に位置するエルロンEとが設けられる。フラップFのコード長fr,fm,ftは一律に主翼Wのコード長wr,wm,wtの25%であり、従ってフラップFの平面形も翼根側から翼端側にテーパーしている。フラップFはフラップ本体11の前縁上部に固定ベーン12を備えたダブルスロッテッドフラップであり、巡航時には格納され(図7参照)、離陸時には後方に張り出しながら下降し(図8参照)、着陸時には更に後方に張り出しながら更に下降する(図4参照)。固定ベーン12は図示せぬステーを介してフラップ本体11に一体に固定される。図4および図8に示すフラップFの展張状態において、主翼W上面および固定ベーン12間と、固定ベーン12およびフラップ本体11間とにスロット13,14が形成され、このスロット13,14を主翼Wの下面から上面に気流が吹き抜けることにより、抗力の増加を抑制しながら揚力の増加が図られる。
【0017】
フラップFを主翼Wのリヤスパー15の後部に支持する3個のリンクユニットは、翼根側の第1リンクユニットLrと、中間部の第2リンクユニットLmと、翼端側の第3リンクユニットLtとから構成される。各リンクユニットLr,Lm,Ltの構造は実質的に同一であるが、その寸法は同一でなく、翼根側から翼端側に向かって次第に小さくなる相似形状とされる。即ち、第1リンクユニットLr、第2リンクユニットLmおよび第3リンクユニットLtが位置する部分の主翼Wのコード長をそれぞれwr,wm,wtとすると、相互に相似な各リンクユニットLr,Lm,Ltの相似比はwr:wm:wtに設定され、各リンクユニットLr,Lm,Ltの位置に対応するフラップF(フラップ本体11)のコード長fr,fm,ftの比もwr:wm:wtに設定される。従って,フラップFの展張時(離陸時および着陸時の両方を含む)において、各リンクユニットLr,Lm,Ltの位置に対応するフラップFの張り出し量er,em,etの比も同じくwr:wm:wtとなる。
【0018】
尚、実施例において、wr:wm:wtは100:85:70であり、第3リンクユニットLtは第1リンクユニットLrの3分の2の寸法であり、第2リンクユニットLmは第1リンクユニットLrおよび第3リンクユニットLtの中間の寸法である。
【0019】
従って、フラップFは平面視で機体後方に真っ直ぐ張り出すのではなく、図1に白抜きの矢印で誇張して示すように、機体後方に張り出しながら翼端方向に僅かに移動する。つまり従来のフラップが展張時に後方に張り出しながら下降する二次元的な動作を行うのに対し、本実施例のフラップFは展張時に後方および下方に移動しながら更に左方(あるいは右方)にも移動する三次元的な動作を行うことになる。尚、各リンクユニットLr,Lm,Ltの位置に対応するフラップFの張り出し量er,em,etは異なっているが、フラップFの下げ角がスパン方向に一定であることは勿論である。これは、相互に相似な各リンクユニットLr,Lm,Ltの各部材の移動距離が相似比に応じて異なっても、各部材の回転角度は同じになるからである。
【0020】
以上のように、スパン方向に位置の異なる3個のリンクユニットLr,Lm,Ltを相似形状とし、その相似比を各リンクユニットLr,Lm,Ltの位置に対応するコード長wr,wm,wtの比率に一致させたので、各リンクユニットLr,Lm,Ltの位置に対応するフラップFの張り出し量er,em,etの比率や、主翼W上面および固定ベーン12間に形成されるスロット13の大きさの比率を前記コード長wr,wm,wtの比率に一致させることができる。これにより、フラップFの空力特性をスパン方向の全域に亘って最適に設定することが可能となり、飛行機の離着陸性能の向上に寄与することができる。
【0021】
また3個のリンクユニットLr,Lm,Ltは何れも主翼Wのリヤスパー15の後部に配置されているため、主翼Wの内部でリヤスパー15の前部に配置された燃料タンクTの容量がリンクユニットLr,Lm,Ltの配置スペースによって減少することが回避される。これにより、燃料タンクTの容量を充分に確保して航続距離の増加に寄与することができる。
【0022】
次に、3個のリンクユニットLr,Lm,Ltの構造を図2〜図6に基づいて説明する。3個のリンクユニットLr,Lm,Ltは相似形状であって実質的に同じ構造であるため、主として翼根側の第1リンクユニットLrについて説明する。
【0023】
図4に示すように、リヤスパー15に支持される第1リンクユニットLrは、リヤスパー15の後面に固定したベース部材20の後面上部に設けられたスイングアームブラケット21と、リヤスパー15の下面に設けられたキャリッジブラケット22とを備えており、スイングアームブラケット21に第1支点ピンp1を介してスイングアーム23の一端が枢支され、キャリッジブラケット22に第2支点ピンp2を介してキャリッジ24の一端が枢支される。スイングアーム23の中間部とキャリッジ24の中間部とが、ミッドリンク25の両端にそれぞれ第3支点ピンp3および第4支点ピンp4を介して枢支される。
【0024】
フラップ本体11の前縁からリテーナ26が一体に延びており、このリテーナ26の先端が球面軸受の一種である第1ボールジョイントb1を介してスイングアーム23の他端に枢支される。キャリッジ24の他端とリテーナ26の基端とが、前記第1ボールジョイントb1と同種の第2ボールジョイントb2および第3ボールジョイントb3を介してサポートリンク27の両端に枢支される。
【0025】
図2、図5および図6から明らかなように、第1リンクユニットLrのスイングアーム23を駆動するドライブアーム28は、ベース部材20に上下方向に延びる枢軸29を介して揺動自在に枢支される。ドライブアーム28は枢軸29の軸線から相互に90°の角度を有して半径方向に延びる第1腕部28aおよび第2腕部28bを有しており、第1腕部28aに支点ピン30を介して油圧シリンダ31の出力ロッド31aが枢支される。ドライブアーム28の第2腕部28bの先端には、ユニバーサルジョイントの一種であるフックジョイントhを介してプッシュロッド32の一端が枢支されており、このプッシュロッド32の他端は球面軸受の一種である第4ボールジョイントb4を介してスイングアーム23の中間部に枢支される。
【0026】
第2リンクユニットLmのドライブアーム28および第3リンクユニットLtのドライブアーム28を、第1リンクユニットLrのドライブアーム28に連動して駆動すべく、第1リンクユニットLrのドライブアーム28に設けた支点ピン33と第2リンクユニットLmのドライブアーム28に設けた支点ピン34とが連結ロッド35を介して連結され、かつ第2リンクユニットLmのドライブアーム28に設けた支点ピン34と第3リンクユニットLtのドライブアーム28に設けた支点ピン36とが連結ロッド37を介して連結される。
【0027】
左主翼WのフラップFおよび右主翼WのフラップFは各々対応する油圧シリンダ31,31で駆動されるが、左右のフラップF,Fを同調して作動させるべく、左右の第1リンクユニットLr,Lrのドライブアーム28,28が同調機構38を介して連結される。図2および図3に示すように、同調機構38は、支軸39,39に枢支された左右のクオドラント40,40と、左右のクオドラント40,40を左右の第1リンクユニットLr,Lrのドライブアーム28,28の支点ピン41,41に連結する左右の同調ロッド42,42と、左右のクオドラント40,40をX字状に連結する2本の同調ケーブル43,43とから構成される。
【0028】
第1〜第3リンクユニットLr,Lm,Ltのドライブアーム28…は、連結ロッド35,37に連結される支点ピン33,34,36から枢軸29…までの距離が同じに設定されているため、3個のドライブアーム28…の回転角は均一になる。従って、図5において第1〜第3リンクユニットLr,Lm,Ltのドライブアーム28…、プッシュロッド32…およびスイングアーム23を相似形状とすれば、つまり枢軸29およびフックジョイントh間の距離D1と、フックジョイントhおよび第4ボールジョイントb4間の距離D2と、第4ボールジョイントb4および第1支点ピンp1間の距離D3とが相似形状をなすようにすれば、3個のドライブアーム28…が相互に同じ角度回転したときに、3個のスイングアーム23…を相互に同じ角度回転させることができる。
【0029】
尚、実施例では3個のリンクユニットLr,Lm,Ltの全ての部材を相似形状とし、その相似比を各リンクユニットLr,Lm,Ltの位置に対応するコード長wr,wm,wtの比率に一致させているが、第1〜第3リンクユニットLr,Lm,Ltのドライブアーム28…、プッシュロッド32…およびスイングアーム23(第4ボールジョイントb4および第1支点ピンp1間の部分)の3つの部材の相似比は、必ずしも前記コード長wr,wm,wtの比率に一致させる必要はなく、それと異なる比率に設定しても良い。なぜならば、第1〜第3リンクユニットLr,Lm,Ltの3つのドライブアーム28…が同じ角度回転したとき、3つのスイングアーム23…が第1支点ピンp1…まわりに同じ角度回転すれば、フラップFを支障無く作動させることができるからである。
【0030】
而して、フラップFの格納時に油圧シリンダ31は伸長しており、この状態から油圧シリンダ31が収縮すると、ドライブアーム28の第1腕部28aおよび第2腕部28bが枢軸29まわりにそれぞれ図5の矢印a方向および矢印b方向に揺動する。その結果、プッシュロッド32に押し上げられたスイングアーム23が、図7に示す略鉛直な姿勢から、図8に示す傾斜した姿勢を経て、図4に示す略水平な姿勢へと揺動する。このようにしてスイングアーム23の他端が後上方に揺動すると、フラップ本体11から前方に突出するリテーナ26の前端が後上方に押し上げられる。スイングアーム23の後上方への揺動に伴って、このスイングアーム23にミッドリンク25を介して連結されたキャリッジ24が、図4に示す略水平な位置から図8に示す位置まで僅かに下方に揺動した後に、図7に示す略水平な位置へと復帰する。またキャリッジ24の他端に一端を枢支されたサポートリンク27の他端は、上に凸な円弧状の軌跡を描いて後方に移動する。
【0031】
その結果、図7に示す巡航時の状態から、フラップFは全体が大きく後方に移動しながら後縁が下方に移動して離陸時の状態になり(図8参照)、そこから後方に更に移動しながら後縁が更に下方に移動して着陸時の状態になる(図4参照)。この着陸時の状態では、フラップFの固定ベーン12は主翼Wの上面外板の後端から後方に露出する。
【0032】
ところで、第1〜第3リンクユニットLr,Lm,Ltは、相互に対応する3個の相似な位置(例えば、第1〜第3リンクユニットLr,Lm,Ltの3個の第1支点ピンp1…の位置)が同一直線上に整列し、かつ第1〜第3リンクユニットLr,Lm,Ltの対応するリンク要素23…,24…,25…,26…,27…が側面視で平行になるように配置されている。そして各リンクユニットLr,Lm,Ltのスイングアーム23…、キャリッジ24…およびミッドリンク25…は前記同一直線に直交する平面内で揺動する。一方、離陸時や着陸時において、相似形状である第1〜第3リンクユニットLr,Lm,Ltの相似比に応じて、図1に白抜きの矢印で誇張して示すように、後方移動量がLrで多く、Ltで小さいが故に、フラップFは後下方に張り出しながら翼端方向に僅かに移動する三次元的な動作を行う。従って、フラップFと一体のステー26と、このステー26をキャリッジ24に連結するサポートリンク27とは、前記同一直線に直交する平面から僅かに外れて揺動する。
【0033】
しかしながら、リテーナ26の先端が第1ボールジョイントb1を介してスイングアーム23の他端に枢支されており、かつキャリッジ24の他端とリテーナ26の基端とが第2ボールジョイントb2および第3ボールジョイントb3を介してサポートリンク27の両端に枢支されているため、これら第1〜第3ボールジョイントb1〜b3の作用で前述したフラップFの三次的な動作が支障なく行われる。
【0034】
またフラップFにスパン方向の荷重が加わっても、第1〜第3リンクユニットLr,Lm,Ltの3本のリテーナ26…はフラップ本体11に剛直に固定されており、かつ一端を第1支点ピンp1…でスイングアームブラケット21…に支持された3本のスイングアーム23…の他端はスパン方向の移動を規制されているため、前記荷重によってフラップFがスパン方向に移動する虞はない。
【0035】
ところで、展張状態にあるフラップFが図4に矢印fで示す空力荷重を受けた場合、フラップ本体11に固定されたリテーナ26は第3ボールジョイントb3回りに矢印c方向のモーメントを受け、このリテーナ26に第1ボールジョイントb1を介して連結されたスイングアーム23は、第1支点ピンp1回りに矢印d方向のモーメントを受けることになる。その結果、図5において、プッシュロッド32は矢印e方向の圧縮力を受け、ドライブアーム28は矢印a′方向のモーメントを受けることになる。前記矢印a′方向のモーメントは、第1リンクユニットLrのドライブアーム28だけでなく、第2、第3リンクユニットLm,Ltのドライブアーム28,28にも作用する(図2参照)。
【0036】
このようなドライブアーム28…のモーメントは、連結ロッド35,37に張力を発生させるため、それら連結ロッド35,37を細く軽量なもので構成しても充分な強度を確保することができる。特に、連結ロッド35,37の端部を球面軸受で支持すれば、それらのロッド25,37に曲げモーメントが一切作用しなくなるため、更なる軽量化が可能となる。
【0037】
尚、飛行機が地上にある場合には、フラップF,Fに作用する重力は空力荷重fと逆方向に作用するため、連結ロッド35,37に圧縮荷重が作用してしまう。従って、連結ロッド35,37は前記圧縮荷重によって座屈しないだけの剛性が必要であるが、重力による荷重は空力荷重fに比べて遙に小さいため、連結ロッド35,37の重量が大幅に増加する虞はない。
【0038】
以上、本発明の実施例を詳述したが、本発明はその要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更を行うことが可能である。
【0039】
例えば、実施例のフラップの作動装置は3個のリンクユニットLr,Lm,Ltを備えているが、リンクユニットの数は3個に限定されず、少なくとも2個あれば良い。
【0040】
また実施例では3個のリンクユニットLr,Lm,Ltの相似比を、対応する主翼Wのコード長の比wr:wm:wtに設定しているが、請求項1に記載された発明では前記相似比を任意に設定することができる。尚、リンクユニットの数が2個の場合は、その相似比をどのように設定してもフラップFを作動させることができるが、リンクユニットの数が3個以上の場合には、基準となるリンクユニットを設定し、そのリンクユニットからの距離に応じて相似比を変化させる必要がある。
【0041】
例えば、基準となる1番目のリンクユニットから距離Dだけ離れた2番目のリンクユニットの相似比が90%であれば、1番目のリンクユニットから距離2Dだけ離れた3番目のリンクユニットの相似比を80%に設定し、1番目のリンクユニットから距離3Dだけ離れた4番目のリンクユニットの相似比を70%に設定する必要がある。このことは、各リンクユニットの相互に対応する点(例えば、支点ピンp1〜p4、フックジョイントh、ボールジョイントb1〜b4の位置)を結ぶ線が折れ線でなく、直線になることと同義である。
【0042】
また実施例では捩じり下げを持たない主翼Wを前提としているが、本発明は捩じり下げを持つ主翼に対しても適用することができる。捩じり下げにより主翼Wのスパン方向各部の迎角は翼根側から翼端側に向かって漸減するため、仮に第1〜第3リンクユニットLr,Lm,Ltを、その位置における翼断面を基準にして取り付けたとすると、それら第1〜第3リンクユニットLr,Lm,Ltをスパン方向に見たときの姿勢が捩じり下げに応じて相互に異なってしまい、フラップFの後方移動量、スロット幅および舵角が各断面で変化する。
【0043】
これを回避するには、第1〜第3リンクユニットLr,Lm,Ltの第1支点ピンP1(r),P1(m),P1(t)を結ぶ仮想のヒンジラインHL上にある中央の第1支点ピンP1(m)を中心に、捩じり下げに応じて内側の第1リンクユニットLrを下方かつ後方に移動させ、かつ外側の第3リンクユニットLtを上方かつ前方に移動させれば良い。これにより第1〜第3リンクユニットLr,Lm,Ltの各位置においてフラップFの後方移動量、スロット幅および舵角を空力的に最適な大きさにコントロールすることができる。
【0044】
また実施例では固定ベーン12を備えたダブルスロッテッドフラップを例示したが、本発明は2個の固定ベーン12を持つトリプルスロッテッドフラップ、固定ベーン12を持たないスロッテッドフラップ、あるいは主翼およびフラップ間にスロットが形成されないファウラーフラップに対しても適用することができる。
【0045】
また、第1〜第4ボールジョイントb1〜b4およびフックジョイントhを、他の任意の形式の球面軸受やユニバーサルジョイントに置き換えることができる。
【0046】
またフラップFを作動させるアクチュエータは、実施例の油圧シリンダ31に限定されず、他の任意の種類の油圧アクチュエータあるいは電気アクチュエータを採用することができる。
【0047】
また本発明は、テーパー翼であれば後退翼や前進翼に対しても適用することができる。
【0048】
【発明の効果】
以上のように請求項1に記載された発明によれば、テーパーした主翼の後縁部にフラップを支持する少なくとも2個のリンクユニットを、それぞれスイングアーム、キャリッジ、ミッドリンク、リテーナおよびサポートリンクで構成し、それら各構成要素を所定の寸法比を有する相似形状に配置したので、アクチュエータで各々のリンクユニットのスイングアームを同一角度ずつ揺動させると、各々のリンクユニットの相互に対応する構成要素が互いに同一角度ずつ揺動するため、前記リテーナと一体のフラップをスムーズに張り出すことができる。そしてフラップの張り出し量、つまりリテーナの移動量は各々のリンクユニットの寸法比によって定まるので、この寸法比を任意に選択することによりフラップの張り出し量をスパン方向に変化させることができる。その結果、スパン方向の各部においてフラップの空力特性を自由に設定することができ、離着陸性能の向上に寄与することができる。
またフラップの張り出し量がスパン方向に変化すると、フラップは後方移動および下降しながらスパン方向に移動する三次元的な運動を行うが、スイングアームおよびリテーナの連結と、キャリッジおよびサポートリンクの連結と、サポートリンクおよびリテーナの連結とをそれぞれ球面軸受を介して行うことにより、フラップの前記三次元的な運動を支障無く行わせることができる。しかもリンクユニットは主翼のリヤスパーの後方に配置されるため、リヤスパーの前方に配置される燃料タンク等の構造物と干渉する虞がない。
【0049】
また請求項2に記載された発明によれば、相互に相似に形成された各リンクユニットの寸法比が、それらリンクユニットの位置に対応する主翼のコード長の比に一致するので、主翼のコード長が大きい部分ではフラップの後方移動量を大きくし、主翼のコード長が小さい部分ではフラップの後方移動量を小さくすることができる。これにより、主翼のスパン方向の各部でフラップを主翼のコード長に応じた最適の位置および角度に張り出すことができ、特にスロッテッドフラップの場合にはスパン方向の各部で適切なスロット幅を確保することができる。
【0050】
また請求項3に記載された発明によれば、各々のリンクユニットの位置において、主翼のコード長とフラップのコード長との比が一定になり、かつ主翼のコード長とフラップの後方移動量との比が一定になるので、スパン方向の各部でフラップの空力特性を均一化することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】飛行機の左主翼の平面図
【図2】展張状態にあるフラップおよびその作動装置の全体平面図
【図3】展張状態にあるフラップおよびその作動装置の全体斜視図
【図4】図2の4−4線拡大断面図(着陸時)
【図5】リンクユニットの部分斜視図
【図6】図2の6−6線拡大断面図
【図7】巡航時のフラップの状態を示す図
【図8】離陸時のフラップの状態を示す図
【図9】主翼が捩じり下げを持つ実施例のリンクユニットの配置を説明する図
【符号の説明】
b1 第1ボールジョイント(第1球面軸受)
b2 第2ボールジョイント(第2球面軸受)
b3 第3ボールジョイント(第3球面軸受)
F フラップ
fr フラップのコード長
fm フラップのコード長
ft フラップのコード長
Lr 第1リンクユニット(リンクユニット)
Lm 第2リンクユニット(リンクユニット)
Lt 第3リンクユニット(リンクユニット)
p1 第1支点ピン
p2 第2支点ピン
p3 第3支点ピン
p4 第4支点ピン
W 主翼
wr 主翼のコード長
wm 主翼のコード長
wt 主翼のコード長
15 リヤスパー
23 スイングアーム
24 キャリッジ
25 ミッドリンク
26 リテーナ
27 サポートリンク
31 油圧シリンダ(アクチュエータ)

Claims (3)

  1. テーパーした主翼(W)の後縁部に沿って設けたフラップ(F)を、スパン方向に離間して配置した少なくとも2個のリンクユニット(Lr,Lm,Lt)によって後方に移動させながら下降させるフラップの作動装置において、
    各々のリンクユニット(Lr,Lm,Lt)は、
    一端が主翼(W)のリヤスパー(15)の上部に第1支点ピン(p1)を介して上下揺動自在に枢支されたスイングアーム(23)と、
    一端が主翼(W)のリヤスパー(15)の下部に第2支点ピン(p2)を介して上下揺動自在に枢支されたキャリッジ(24)と、
    一端がスイングアーム(23)の中間部に第3支点ピン(p3)を介して枢支され、他端がキャリッジ(24)の中間部に第4支点ピン(p4)を介して枢支されたミッドリンク(25)と、
    フラップ(F)の前縁に突設されて先端がスイングアーム(23)の他端に第1球面軸受(b1)を介して枢支されたリテーナ(26)と、
    一端がキャリッジ(24)の他端に第2球面軸受(b2)を介して枢支され、他端がリテーナ(26)の基端に第3球面軸受(b3)を介して枢支されたサポートリンク(27)と、
    各々のスイングアーム(23)を同一角度ずつ揺動させるアクチュエータ(31)と、
    を備え、
    前記各々のリンクユニット(Lr,Lm,Lt)のスイングアーム(23)、キャリッジ(24)、ミッドリンク(25)、リテーナ(26)およびサポートリンク(27)は所定の寸法比を有する相似形状に配置されることを特徴とするフラップの作動装置。
  2. 前記寸法比は、各々のリンクユニット(Lr,Lm,Lt)の位置に対応する主翼(W)のコード長(wr,wm,wt)の比に一致することを特徴とする、請求項1に記載のフラップの作動装置。
  3. 各々のリンクユニット(Lr,Lm,Lt)の位置に対応するフラップ(F)のコード長(fr,fm,ft)の比は、各々のリンクユニット(Lr,Lm,Lt)の位置に対応する主翼(W)のコード長(wr,wm,wt)の比に一致することを特徴とする、請求項2に記載のフラップの作動装置。
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