JP4309376B2 - Dsl用ローパスフィルタ - Google Patents

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本発明は、高速データ通信のDSL(Digital Subscriber Line)方式における音声信号を通過させるローパスフィルタに関するものである。
音声通話用の既設電話回線網を利用した高速データ通信のDSL方式は、ADSL(Asymmetric Digital Subscriber Line)方式、VDSL(Vary high-speed Digital Subscriber Line)方式などがあり、VDSLに至っては上下100Mbpsの超高速のデータ通信を実現した技術である。
DSL方式の高速データ通信を利用するには、図6に示すように宅内に引き込まれた電話回線100にDSL用スプリッタ50を接続することで、電話回線100との音声信号はローパスフィルタ(以下LPFと略す)51を通過して電話機53へつながり、データ信号はハイパスフィルタ(以下HPFと略す)52を通過してモデム54へつながり、図中には記載していないが、モデム54はコンピュータなどの情報処理機器に接続されている。
DSL用スプリッタ50のLPF51は、図7に示す回路構成であり、電話回線100のLineAとLineBの両線路にインダクタL61,L62,L63、および前記インダクタの対であるL61’,L62’,L63’と線路LineAと線路LineB間のキャパシタC61,C62,C63からなり、インダクタL61とL61’およびキャパシタC61で1つのLCフィルタを構成し、図7はLCフィルタが3段のローパスフィルタであることを示している。
LPF51には、インダクタとキャパシタの他に、コモンモードチョークコイル(以下
CMCと略す)を付加したものがあり、該CMCは、LPF51のインダクタL61,L62,L63、および、L61’,L62’,L63’による、回路アンバランスを抑制して通信の品質を保たせるものであった。
特開2003−152894
図6および図7に示すLPF51につながる電話機53を、モデム54のデータ通信中にオン・オフフックさせた時にデータ通信ができなくなった。データ通信ができない理由は、電話機53のオン・オフフックによって、モデム54の通信リンクが切れてデータ通信を遮断させる問題を発生させた。
モデム54の通信リンクが切れる原因は、電話機53のフック状態が変化する時にノイズが発生し、該ノイズがLPF51とHPF52を通過として、モデム54まで到達してモデム54が誤動作を起こしたことにより、通信リンク切れが起こることを本発明者らは見つけ出した。
特許文献1に開示されたCMCを、LPF51に組み入れても、前記電話機53より発生するノイズを低減させることができず、モデム54の誤動作を防止できなかった。
また、図7に示したインダクタL61,L62,L63、および、L61’,L62’,L63’と、キャパシタC61,C62,C63の各定数を変えることは、DSL用ローパスフィルタとしての性能を低減させることであり、電話機53に起因したノイズ対策に苦慮していた。
本発明は、上記電話機の動作に起因したノイズを対策して、モデムの通信リンク切れを解決するDSL用のローパスフィルタの提供を目的とする。
本発明は、低周波信号を通過させるインダクタとキャパシタより構成させるローパスフィルタにおいて、インダクタとキャパシタがn段として構成するフィルタ回路の内、少なくとも一対のインダクタは、漏洩インダクタンス値が40μH〜100μHであるコモンモードチョークコイルにより構成されていることを特徴とするDSL用ローパスフィルタである。
ローパスフィルタを構成するインダクタおよびキャパシタ等の部品点数を増加させることなく、電話機の動作によって発生するノイズを大幅に低減できたことにより、モデムの通信リンク切れを解消でき、高速通信であるDSLの通信品質および信頼性を高めることができる。
図を用いて本発明の実施の形態を説明する。図1は本発明のDSL用ローパスフィルタが組み込まれたスプリッタの略回路図である。電話回線100に接続するDSL用スプリッタ15のLPF16に電話機18がつながり、HPF17にモデム19がつながっている。LPF16につながる電話機18のフック状態の変化によって発生するノイズは、LPF16とHPF17を通過してモデム19に到達しており、本発明はLPF16で前記ノイズを対策するものである。
本発明のLPF16は、図1に示すようにインダクタL11とL11’,L12とL12’,L13とL13’とキャパシタC11,C12,C13のLCが3段構成となり、前記インダクタの内、電話機18に最も近い線路LineAのインダクタL13と線路LineBのインダクタL13’の一対のインダクタを、CMC20として構成している。
インダクタL13とインダクタL13’であるCMC20は、高速データ信号の阻止と音声信号を通過させるLPF用インダクタとしての機能と、電話機18からのノイズ低減用インダクタの2つの機能を有すものであり、LPFの部品点数を増加させることなく電話機18のノイズを低減し、モデム19の誤動作による通信リンク切れの問題を解決することができる。
また、本発明に係るCMC20は、インダクタンス値が1mH以上、また、漏洩インダクタンス値が40μH〜100μHの特性を有すことにより、DSL用ローパスフィルタとしてのデータ信号阻止および音声信号通過、そして電話機側からのノイズ低減に最適なインダクタを形成することができる。
なお、本発明のDSL用ローパスフィルタのCMCは、図1に示したインダクタとキャパシタのLC3段の構成に限定するものでなく、1段〜n段の構成においても有効であり、また、図1に示すようにCMCが1個、配置が電話機側にもっとの近い位置に限定するものではなく、図1におけるインダクタL11,L11’とL12,L12’をCMCとして構成しても良く、CMCの数,配置場所を限定することなく、電話機側からのノイズ低減を実施できるものである。
本発明のDSL用ローパスフィルタの効果を確認した。図1に示すモデム19を波形観測のオシロスコープに置き換えて、電話機18のオンフックからオフフックの動作によって発生するノイズを測定した。本発明のLPFは、図1に示す回路構成とし、インダクタL11,L11’は45μH、L12,L12’は85μH、キャパシタC11は6.8nF、C12は8.2nF、C13は3.3nFとし、CMC20はインダクタンス値が5mH,漏洩インダクタンス値が45μHのものを使用した。比較として、従来技術である図7に示したLPF51の回路構成を用い、インダクタL61,L61’は45μH、L62,L62’は85μH、L63,L63’は85μH、およびキャパシタC61は6.8nF、C62は8.2nF、C63は3.3nFとした。
図2は本発明の測定波形、図3は従来技術の測定波形である。波形を比較すると、明らかに本発明のDSL用ローパスが、電話機18から発生するノイズを大幅に低減させていることがわかり、この効果として、モデムの通信リンクの遮断を防止できている。また、本発明および従来技術とも、データ信号の阻止と音声信号の通過を問題なくできるものであり、本発明が優れているを確認することができた
図4は本発明のDSL用ローパスフィルタの構成を示す第2の実施例であり、LFP25はLC3段構成のフィルタであり、電話回線100側から1段目の線路LineAとLineBの一対のインダクタL21とL21’をひとつのコイル部品で構成し、また、3段目のインダクタL23とL23’も同様にひとつのコイル部品で構成した。2段目のインダクタL22とL22’は本発明に係るCMC24で構成して、電話機18から発生するノイズを低減させることができた。
図5は本発明のDSL用ローパスフィルタの構成を示す第3の実施例であり、データ信号の阻止および音声信号の通過をLC2段構成でおこなうLPF35であり、インダクタL31,L31’とL32,L32’は、CMC33およびCMC34により構成され、図1および図4に示すCMCを1個使用する場合に比べ、より高いCMCのインダクタンス値が得られ、電話機18から発生するノイズをより低減することができるDSL用LPFである。
本発明のDSL用ローパスフィルタを使用したDSL用スプリッタの略回路図 本発明のDSL用ローパスフィルタの第1の実施例によるノイズ低減効果を示す測定波形図 従来技術のDSL用ローパスフィルタのノイズ測定波形図 本発明のDSL用ローパスフィルタの第2の実施例を示す略回路図 本発明のDSL用ローパスフィルタの第3の実施例を示す略回路図 DSL用スプリッタの略回路ブロック図 従来技術のDSL用ローパスフィルタの略回路図
符号の説明
15:DSL用スプリッタ
16:ローパスフィルタ LPF
17:ハイパスフィルタ HPF
18:電話機
19:モデム
20:コモンモードチョークコイル CMC
100:電話回線
L11,L11’,L12,L12’,L13,L13’:インダクタ
C11,C12,C13:キャパシタ
LineA,LineB:線路

Claims (1)

  1. 低周波信号を通過させるインダクタとキャパシタより構成させるローパスフィルタにおいて、インダクタとキャパシタがn段として構成するフィルタ回路の内、少なくとも一対のインダクタは、漏洩インダクタンス値が40μH〜100μHであるコモンモードチョークコイルにより構成されていることを特徴とするDSL用ローパスフィルタ。
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