JP4306277B2 - 芳香族ポリエステル環状オリゴマーの製造方法 - Google Patents

芳香族ポリエステル環状オリゴマーの製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、酵素による高分子化合物の分解と合成間での可逆的反応を利用した、芳香族ポリエステル線状重合体からの芳香族ポリエステル環状オリゴマーの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
芳香族ポリエステル環状オリゴマーは、直鎖状芳香族ポリエステル合成の為の有望な中間体であり、またコンポジット材料等にも使用される有用化合物である。代表的な芳香族ポリエステルの一つであるポリエチレンテレフタレート(PET)の環状オリゴマーは、1954年にRossらによってPETフィルム中に存在していることが初めて発見されている(例えば、非特許文献1参照)。その後、PETの重縮合反応の過程で環状三量体など様々な環状オリゴマーが副産物として数重量%の割合で生成していることが分かり、詳細に分析されてきた。
【0003】
PET環状オリゴマーを化学的に合成した報告例としては、例えば、PETオリゴエステルのジカルボン酸塩化物とPETオリゴエステルのジオール化合物とをベンゼンに溶解し、ピリジン、マグネシウム粉末を加えて80℃で反応させることによって合成した例がある(例えば、非特許文献2参照)。また、PETを脱水したベンゼンと触媒である三酸化アンチモンとともにオートクレーブに入れ、310〜340℃の温度で溶液解重合することで環状オリゴマーの生成を確認している報告もある(例えば、非特許文献3参照)。しかしながらこれらの方法では、目的物質であるPET環状オリゴマーの収率が低いことや、ジカルボン酸塩化物の工業的調製が困難であるといった問題があった。また線状ポリエステルを高温の有機溶媒中、スズ触媒を作用させることによって大環状ポリエステルオリゴマーを製造する方法(例えば、特許文献1参照)、ビス(ヒドロキシアルキル)エステルとほぼ等モル量のジカルボン酸塩化物を溶媒中でルイス酸を触媒として大環状ポリエステルオリゴマーを製造する方法(例えば、特許文献2参照)などが開示されている。しかしこれらの方法は反応条件が穏やかでなく、またジカルボン酸塩化物の工業的調製が困難といった問題などがあった。また、ジカルボン酸成分とジオール成分とのエステル化反応を仕込みモル比の限定により、直鎖状ポリエステルオリゴマーを経て環状ポリエステルオリゴマーを製造する方法(例えば、特許文献3参照)などが開示されているが、高温の反応条件であって、低エネルギープロセスとは言えなかった。
【0004】
一方、比較的穏和な条件下で反応が可能である酵素を用いてポリエステル環状オリゴマーを合成した例が報告されている。ジメチルテレフタル酸とジエチレングリコールを原料とし、トルエン中でリパーゼを用いて反応させることによってポリジエチレンテレフタレートの環状ダイマーを合成した例が挙げられる(例えば、非特許文献4参照)。しかしこの方法では原料の一つであるジエチレングリコールがトルエンに溶解し難いという問題があった。また、脂肪族ポリエステルであるポリカプロラクトンを含水有機溶媒中に溶解し、リパーゼを用いて解重合反応することによって環状オリゴマーを生成できることも知られている(例えば、特許文献4参照)。しかしながらこれまでに芳香族ポリエステル重合体から酵素を用いて環状オリゴマーを合成した報告はなかった。
【0005】
【特許文献1】
特開平8−198962号公報
【特許文献2】
特開平6−211975号公報
【特許文献3】
特開2002−293903号公報
【特許文献4】
特開2002−17385号公報
【非特許文献1】
Rossら、J.Polym.Sci., 13, 406 (1954)
【非特許文献2】
Hans Repinら、J.Polym.Sci.;PartA-1, 7, 3426 (1969)
【非特許文献3】
橋本静信ら、高分子化学, 23, 422(1966)
【非特許文献4】
Anaud Lavalette ら、Biomacromolecules, 3, 225 (2002)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、芳香族ポリエステル環状オリゴマーを低エネルギープロセスで効率的に合成する方法を提供するものである。
【0007】
【課題を解決するための手段および発明の実施の形態】
前記課題に鑑みて、本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、芳香族ポリエステル線状重合体を基質として加水分解酵素で反応させることにより芳香族ポリエステル環状オリゴマーが生成されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、
(1)芳香族ジカルボン酸成分およびグリコール成分から生成した構成単位を有する芳香族ポリエステル線状重合体を、Novozym(登録商標)435で反応させ、副生成する水を反応系外に取り除くことを特徴とする芳香族ポリエステル環状オリゴマーの製造方法、
(2)ゼオライトを添加して副生成する水を反応系外に取り除くことを特徴とする請求項1に記載の芳香族ポリエステル環状オリゴマーの製造方法、
(3)芳香族ポリエステル線状重合体がポリエチレンテレフタレート線状オリゴマー、ポリトリメチレンテレフタレート線状オリゴマー、ポリブチレンテレフタレート線状オリゴマーからなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1または2に記載の芳香族ポリエステル環状オリゴマーの製造方法、
(4)構成単位の含有率が50モル%以上である芳香族ポリエステル線状重合体であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の芳香族ポリエステル環状オリゴマーの製造方法、
(5)1,4−ジオキサン、トルエン、またはそれらの混合物を溶媒として反応を行うことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の環状オリゴマーの製造方法
を提供するものである。
【0009】
以下、本発明について詳細に説明する。上述のとおり、本発明の方法は、溶媒中において、芳香族ポリエステル線状重合体を加水分解酵素で反応させることにより芳香族ポリエステル環状オリゴマーを製造するものである。
【0010】
本発明の方法に使用される芳香族ポリエステル線状重合体は、公知のものを含め特に限定されるものではないが、芳香族ジカルボン酸成分およびグリコール成分から生成した構成単位を含有する重合体が好ましい。本発明の方法に用いられる芳香族ポリエステル線状重合体における芳香族ジカルボン酸成分およびグリコール成分から生成した構成単位の含有率は特に限定されるものではないが、酵素反応を利用して効率よく芳香族ポリエステル環状オリゴマーを生成するためには50モル%以上含有する重合体であることが好ましい。
【0011】
また、上記芳香族ポリエステル線状重合体の重合度は特に限定されるものではないが、本発明における加水分解酵素による反応が進行し易いことから重合度が低いものが好ましく、1から10程度までであることが好ましい。これら芳香族ポリエステル線状重合体はモノマーからの重合物であっても構わないし、高分子量の芳香族ポリエステル線状重合体の分解物であっても差し支えない。また、芳香族ポリエステル線状重合体の分子鎖末端の化学構造に限定はなく、両末端とも酸成分、あるいはグリコール成分であっても構わないが、酵素反応が進行しやすいと言う点からは、少なくとも一方がグリコール成分であることが好ましい。
【0012】
芳香族ジカルボン酸成分は、芳香族ジカルボン酸および芳香族ジカルボン酸の低級アルキルエステルのいずれに由来するものであってもよい。芳香族ジカルボン酸成分としては、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸などを例示することができる。中でもテレフタル酸が好ましい。グリコール成分としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ヘプタメチレングリコールなどの脂肪族ジオール;シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノールなどの脂環族ジオール;ナフタレンジオール、ビスフェノールA、レゾルシンなどの芳香族ジオール等を例示することができる。中でもエチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコールなどの脂肪族ジオールが好ましい。上記芳香族ジカルボン酸成分およびグリコール成分は、製造される芳香族ポリエステル環状オリゴマーの所望物性や使用目的に応じて適宜選択することができる。
【0013】
本発明の方法において、芳香族ポリエステル線状重合体のみを基質として加水分解酵素にて反応させてもよく、ジオール類化合物をさらなる基質として添加して加水分解酵素にて反応させてもよい。好ましくは、ジオール類化合物は芳香族ポリエステル線状重合体のグリコール成分とは異なる構成単位のジオール類化合物である。芳香族ポリエステル線状重合体のグリコール成分とは異なる構成単位のジオール類化合物と該芳香族ポリエステル線状重合体とを反応させることによって、該芳香族ポリエステル線状重合体のグリコール成分と上記ジオール成分とが、加水分解酵素による加水分解とエステル化との可逆的反応によって置換され得るので、上記ジオール成分が取り込まれた芳香族ポリエステル環状オリゴマーが得られる。本発明の方法に用いられるジオール類化合物は公知のものを含め特に限定されるものではないが、エチレングリコール、トリメチレングリコール(1,3-プロパンジオール)、テトラメチレングリコール(1,4-ブタンジオール)などの脂肪族ジオールを好ましく用いることができる。これらのジオール類化合物のは、製造される芳香族ポリエステル環状オリゴマーの所望物性や使用目的に応じて選択することができる。
【0014】
本発明において得られる芳香族ポリエステル環状オリゴマーとは、芳香族ポリエステルが環状化したオリゴマーである。これらの重合度は特に限定されるものではないが、加水分解酵素により反応の進行しやすさの観点から、2量体から約10量体程度までが好ましい。なお、本発明において得られる芳香族ポリエステル環状オリゴマーの一つであるポリエチレンテレフタレート環状三量体を例示すると以下の構造式で表される。
【0015】
【化1】
Figure 0004306277
【0016】
本発明の芳香族ポリエステル環状オリゴマーの製造方法は、芳香族ポリエステル線状重合体および所望によりジオール類化合物を適当な溶媒に溶解し、それに加水分解酵素を加えて反応溶液を調製し、該溶液を適切な温度に保持しつつ、好ましくは攪拌しながら適切な時間、反応をさせることにより行われる。反応はワンポットのバッチ反応であっても構わないし、反応の経過時間に伴って反応生成物を回収し、さらに原料や酵素を反応溶液に添加する連続反応であっても差し支えない。
【0017】
本発明に用いる加水分解酵素としては水含有溶液中でエステル結合を加水分解する酵素であれば公知のものを含めて特に制限なく使用される。例えば、カルボキシエステラーゼ、リパーゼ、ホスホリパーゼ、アセチルエステラーゼ、ペクチンエステラーゼ、コレステロールエステラーゼ、タンナーゼ、モノアシルグリセロールリパーゼ、ラクトナーゼ、リポプロテインリパーゼ等のEC(酵素番号)3.1群(丸尾・田宮監修「酵素ハンドブック」朝倉書店(1982)等参照)に分類されるエステラーゼ、グルコシダーゼ、ガラクトシダーゼ、グルクロニダーゼ、キシロシダーゼ等のグリコシル化合物に作用するEC3.2群に分類される加水分解酵素、エポキシドヒドロラーゼ等のEC3.3群に分類される加水分解酵素、アミノペプチダーゼ、キモトリプシン、トリプシン、プラスミン、ズブチリシン等のペプチド結合に作用するEC3.4群に分類されるプロテアーゼ、フロレチンヒドロラーゼ等のEC3.7群に分類される加水分解酵素等を挙げることができる。本発明の合成反応には1種類あるいは2種類以上の酵素を混合して用いても良く、また酵素の安定化や反応後の回収を容易にするために、公知の方法で固定化した酵素を用いることも可能である。これら酵素の精製レベルは特に制限はなく、高度に精製したものや粗精製物、あるいはこれら酵素を含有する微生物をそのまま、あるいは公知の方法で固定化した微生物を用いても構わない。また、溶媒中における酵素の溶解を向上させるために脂質や界面活性剤等によって酵素分子の表面を被覆したものを使用しても構わない。
【0018】
上記加水分解酵素の中でもエステラーゼおよび/またはプロテアーゼを用いることが好ましい。エステラーゼの中でも特に好ましいのはリパーゼである。リパーゼとはグリセロールエステルを加水分解し脂肪酸を遊離する酵素であるが、溶媒中での安定性が高く、溶媒中で収率良く加水分解反応の逆反応を触媒し、さらに安価に入手できることなどの利点がある。一方、プロテアーゼとはタンパク質分解酵素とも呼ばれ、ペプチド結合の加水分解を触媒する酵素の総称である(ペプチダーゼとも呼ばれる)。かかる加水分解酵素は動物、植物、微生物など種々の起源のものが使用でき特に限定されるものではない。例えば微生物由来の場合、真菌としては、アスペルギルス(Aspergillus)属、ベアウベリア(Beauveria)属、ゲオトリカム(Geotrichum)属、ペニシリウム(Penicillium)属、カンジダ(Candida)属、リゾプス(Rhizopus)属、ムコール(Mucor)属、フミコーラ(Humicola)属に属する微生物が挙げられ、細菌としては、アルカリゲネス(Alcaligenes)属、アセトバクター属(Acetobacter)、バシルス(Bacillus)属、ブレビバクテリウム(Brevibacterium)属、コリネバクテリウム(Corynebacterium)属、シュードモナス(Pseudomonas)属、ロドコッカス(Rhodococcus)属、セラチア(Serratia)属、クロモバクテリウム(Chromobacter)属に属する微生物が挙げられ、又放線菌としては、ノカルディア(Nocardia)属、ストレプトマイセス(Streptomyces)属に属する微生物が挙げられる。これらの微生物は、野性株、変異株であってもよく、さらにはこれらの微生物から遺伝子組換え、細胞融合等の生物工学的手法により誘導されるものであってもよい。また、本発明に使用し得る酵素は市販の酵素でも構わない。
【0019】
本発明における酵素(固定化酵素を含む)の添加量には特に限定はないが、原料である芳香族ポリエステル線状重合体当たり酵素0.1〜5000重量%、好ましくは、酵素10〜1000重量%である。0.1重量%未満では、酵素反応が進行しにくい為に環状オリゴマーの生成が著しく低下するので好ましくない。5000重量%を超えると経済的に問題が生じてしまい好ましくない。
【0020】
本発明における溶媒としては、原料である芳香族ポリエステル線状重合体を溶解することができ、かつ酵素を失活させない溶媒であれば制限なく使用することができる。例えばジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、1,4-ジオキサン、テトラヒドロフラン、クロロホルム、イソプロピルエーテル、トルエン、または二酸化炭素等の超臨界流体などが挙げられる。これらの溶媒は1種類あるいは2種類以上の溶媒を任意に混合して用いても良い。さらに溶媒としての水は芳香族ポリエステル環状オリゴマーの酵素分解を引き起こすので適切ではないが、酵素反応の系中に全く水が存在しないと酵素活性が保てない場合もあるので、系に微量の水分を添加していても構わない。また、酵素によるエステル化反応の過程で副生成する水を反応系外に取り除く手段を用いても構わない。例えば一定の分子サイズより小さい分子を選択的に吸着することができるゼオライトなどの無機化合物を反応溶液中に添加する方法などが例示できる。
【0021】
本発明の酵素反応における芳香族ポリエステル線状重合体および所望により添加されるジオール類化合物の濃度は、溶媒に極わずかでも溶解していれば良いので特に制限はないが、反応収量および反応収率の点から0.001〜30重量%、好ましくは0.01〜20重量%である。0.001重量%より小さいと収量が少なく効率的ではなく、30重量%以上だと溶媒に溶解しにくくなり好ましくない。
【0022】
酵素反応の温度は酵素活性が保持される温度であれば特に制限はないが、10〜100℃、好ましくは30〜80℃である。10℃より低い温度では酵素反応速度が小さく、また100℃を超えると酵素の失活が起こり易いので前記範囲が適切である。また、反応時間に制限はないが、少なくとも1時間以上であることが望ましい。反応時間の上限は特にないが、300時間以上行ってもそれ以上エステル化反応が進み難くなり経済的に不利となるので好ましくない。
【0023】
反応系のpHを一定に保ち、反応効率を向上させるために、反応系に緩衝液を添加してもよい。緩衝液の種類およびpHは主として使用酵素の種類・性質に左右され、使用酵素の反応に適したものであり、使用酵素の安定性に悪影響を及ぼさないものが好ましい。公知の緩衝液としては、例えば、リン酸カリウム緩衝液、Tris緩衝液、Hepes緩衝液、グリシン−NaOH緩衝液等がある。
【0024】
酵素反応を促進する他の因子、例えば、塩類や金属イオン等が知られている場合、これらを使用酵素に応じて反応系に添加してもよい。また、酵素反応における基質特異性やエナンチオ選択性等が向上する他の因子、例えば界面活性剤等が知られている場合、これを使用酵素に応じて反応系に添加してもよい。
【0025】
当業者に公知の手段・方法を用いて、本発明の方法により生成した芳香族ポリエステル環状オリゴマーを他の反応物や酵素から単離することができ、あるいは所望の重合度の芳香族ポリエステル環状オリゴマーを単離することができる。例えば、高速液体クロマトグラフィーやゲル濾過クロマトグラフィーのごとき公知のクロマトグラフィー手段を用いることができ、カラムの種類や移動相溶媒等の条件はの選択は当業者が適宜なし得ることである。また、沈殿(結晶)生成法や、再結晶法等の公知の手段・方法も芳香族ポリエステル環状オリゴマーの単離に使用することができる。
【0026】
上述のごとく、本発明の方法により、低エネルギープロセスで効率よく芳香族ポリエステル環状オリゴマーを製造することが可能となった。本発明の加水分解酵素を用いて芳香族ポリエステル環状オリゴマーを合成する方法は、操作が簡便であるほか、反応条件が温和であり、また低エネルギー反応プロセスでもある。また使用済みペットボトル処理物を基質として本発明の方法に用いることもでき、本発明の方法は資源のリサイクルや環境保護の観点からも大きな価値を有する。本発明の方法により得られる芳香族ポリエステル環状オリゴマーは、様々な機能材料に添加することが可能であるし、開環重合することによって再び芳香族ポリエステル重合体を生成することも可能となる。従来、芳香族ポリエステルの工業的重合法は高温、真空下で触媒を用いて重縮合する反応方法であるが、この様な方法で高分子量にするには重合時間がかかり、また重合温度が高い為に長時間の重合反応では熱劣化を起こしやすいという問題があった。これに対し芳香族ポリエステル環状オリゴマーを減圧下、触媒存在下で該芳香族ポリエステル重合体の融点未満の温度で加熱し、開環付加重合反応を行うと、分子量、分子量分布、微細構造がコントロールされ、分子鎖の絡み合いが少なく延びきり鎖構造をもつ芳香族ポリエステル重合体が得られ、結果として従来技術で得られたポリマーよりも高強度・高弾性率の物性を有することが知られている(特開2002−363272)。
【0027】
【実施例】
以下に実施例を示し、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
(参考例1)
撹拌機、蒸留塔、圧力調整器を備えた重合装置に、テレフタル酸、エチレングリコール(酸成分に対して200モル%)を仕込み、さらにトリエチルアミン(ポリマーに対して0.3mol%)を加えて245℃、ゲージ圧0.25MPaでエステル化に生成する水を逐次除去しながら2時間エステル化反応を行った。得られたポリエチレンテレフタレート線状オリゴマー(平均重合度1.71)0.1gを10mLの1,4−ジオキサンに溶解し、これに0.05gのリパーゼ(Novozym(登録商標)435、カンジダ属由来、ノボザイムズ社製)を添加し、40℃で72時間、攪拌しながら反応を行った。その後3000rpmで15分間遠心分離し、上清を採取した後0.2μmのメンブランフィルターで遠心ろ過し、高速液体クロマトグラフィーによって生成物を分析した。高速液体クロマトグラフィーの分析条件は次の通りである。装置:LC−100(Hewlett Packard社製)、カラム:μ−Bondaspher C18(Waters社製)、移動相溶媒:2%酢酸/アセトニトリル(グラジエント)、流速:0.8ml/分、検出:UV−258nm。ポリエチレンテレフタレート環状2量体、および同環状3量体の既知化合物をスタンダードに用い、溶出時間から上記反応液中の環状オリゴマー生成量を分析した。その結果、ポリエチレンテレフタレート環状3量体が収率15%であった。
【0028】
実施例2
参考例1と同じ方法で重合したポリエチレンテレフタレート線状オリゴマー(平均重合度1.71)1.0gを1,4−ジオキサン(50mL)とトルエン(50mL)に溶解し、さらに350℃で2時間加熱処理した合成ゼオライト5gを添加した。これに0.5gのリパーゼ(Novozym(登録商標)435、カンジダ属由来、ノボザイムズ社製)を添加し、80℃で72時間、攪拌しながら反応を行った。その後5000rpmで15分間遠心分離して上清を採取し、エバポレーターにより濃縮・乾固した。得られた化合物にアセトンを加えて洗浄し、遠心分離して上清を廃棄した後、沈殿物を真空乾燥した(生成物収率65%)。生成物をジメチルホルムアミドで溶解し、0.2μmのメンブランフィルターで遠心ろ過し、参考例1と同条件で高速液体クロマトグラフィーによって生成物を分析した。その結果、ポリエチレンテレフタレート環状3量体の純度が85%であった。H−NMR分析結果を以下に示す。H−NMR(500MHz,CDCl):δ=4.69(s,4H,−CH−),8.11(s,4H,φ)。
【0029】
実施例3
参考例1と同じ方法で重合したポリエチレンテレフタレート線状オリゴマー(平均重合度1.71)0.1gとトリメチレングリコール0.05gを1,4−ジオキサン(5mL)とトルエン(5mL)に溶解し、さらに350℃で2時間加熱処理した合成ゼオライト1gを添加した。これに0.05gのリパーゼ(Novozym(登録商標)435、カンジダ属由来、ノボザイムズ社製)を添加し、40℃で72時間、攪拌しながら反応を行った。その後3000rpmで15分間遠心分離し、上清を採取した後0.2μmのメンブランフィルターで遠心ろ過し、参考例1と同条件で高速液体クロマトグラフィーによって生成物を分析した。その結果、ポリエチレンテレフタレート環状3量体の収率が33%、芳香族ポリエステル環状体の収率が30%であった。
【0030】
実施例4
テレフタル酸ジメチル100部、トリメチレングリコール70.5部及び触媒としてチタンテトラブトキシド0.0875部を、撹拌機、精留塔及びメタノール留出コンデンサーを設けた反応器に仕込み、140℃から徐々に昇温しつつ、反応の結果生成するメタノールを系外に留出させながら、エステル交換反応を行った。反応開始後3時間で内温は210℃に達した。得られたポリトリメチレンテレフタレート線状オリゴマー(平均重合度1.8)0.1gを1,4−ジオキサン(5mL)とトルエン(5mL)に溶解し、さらに350℃で2時間加熱処理した合成ゼオライト1gを添加した。これに0.05gのリパーゼ(Novozym(登録商標)435、カンジダ属由来、ノボザイムズ社製)を添加し、40℃で120時間、攪拌しながら反応を行った。その後3000rpmで15分間遠心分離し、上清を採取した後0.2μmのメンブランフィルターで遠心ろ過し、参考例1と同条件で高速液体クロマトグラフィーによって生成物を分析した。その結果、ポリトリメチレンテレフタレート環状体が収率45%で生成していた。
【0031】
実施例5
テレフタル酸ジメチル100部、1,4−ブタンジオール94.2部及び触媒としてチタンテトラブトキシド0.0875部を、撹拌機、精留塔及びメタノール留出コンデンサーを設けた反応器に仕込み、140℃から徐々に昇温しつつ、反応の結果生成するメタノールを系外に留出させながら、エステル交換反応を行った。反応開始後3時間で内温は210℃に達した。得られたポリブチレンテレフタレート線状オリゴマー(平均重合度1.9)0.1gを10mLの1,4−ジオキサンに溶解し、さらに350℃で2時間加熱処理した合成ゼオライト1gを添加した。これに0.05gのリパーゼ(Novozym(登録商標)435、カンジダ属由来、ノボザイムズ社製)を添加し、40℃で72時間、攪拌しながら反応を行った。その後3000rpmで15分間遠心分離し、上清を採取した後0.2μmのメンブランフィルターで遠心ろ過し、参考例1と同条件で高速液体クロマトグラフィーによって生成物を分析した。その結果、ポリブチレンテレフタレート環状体が収率35%で生成していた。
【0032】
(参考例2)
参考例1と同じ方法で重合したポリエチレンテレフタレート線状オリゴマー(平均重合度1.71)0.1gを10mLの1,4−ジオキサンに溶解し、さらに350℃で2時間加熱処理した合成ゼオライト1gを添加した。これに0.05gのプロテアーゼ(バチルス属由来)を添加し、40℃で120時間、攪拌しながら反応を行った。その後3000rpmで15分間遠心分離し、上清を採取した後0.2μmのメンブランフィルターで遠心ろ過し、参考例1と同条件で高速液体クロマトグラフィーによって生成物を分析した。その結果、ポリエチレンテレフタレート環状3量体が収率5%で生成していた。
【0033】
【発明の効果】
本発明により、低エネルギープロセスで効率よく芳香族ポリエステル環状オリゴマーを製造することが可能となった。本発明の加水分解酵素を用いて芳香族ポリエステル環状オリゴマーを合成する方法は、操作が簡便であるほか、反応条件が温和であり、また低エネルギー反応プロセスでもある。また使用済みペットボトル処理物を基質として本発明の方法に用いることもできる。したがって、本発明の方法は資源のリサイクルや環境保護の観点からも大きな価値を有する。本発明の方法により得られる芳香族ポリエステル環状オリゴマーは、様々な機能材料に添加することが可能であるし、開環重合することによって再び芳香族ポリエステル重合体を生成することも可能となる。

Claims (5)

  1. 芳香族ジカルボン酸成分およびグリコール成分から生成した構成単位を有する芳香族ポリエステル線状重合体を、Novozym(登録商標)435で反応させ、副生成する水を反応系外に取り除くことを特徴とする芳香族ポリエステル環状オリゴマーの製造方法。
  2. ゼオライトを添加して副生成する水を反応系外に取り除くことを特徴とする請求項1に記載の芳香族ポリエステル環状オリゴマーの製造方法。
  3. 芳香族ポリエステル線状重合体がポリエチレンテレフタレート線状オリゴマー、ポリトリメチレンテレフタレート線状オリゴマー、ポリブチレンテレフタレート線状オリゴマーからなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1または2に記載の芳香族ポリエステル環状オリゴマーの製造方法。
  4. 構成単位の含有率が50モル%以上である芳香族ポリエステル線状重合体であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の芳香族ポリエステル環状オリゴマーの製造方法。
  5. 1,4−ジオキサン、トルエン、またはそれらの混合物を溶媒として反応を行うことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の環状オリゴマーの製造方法。
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