JP2002017385A - ジカプロラクトンおよびカプロラクトン重合体の製造方法 - Google Patents

ジカプロラクトンおよびカプロラクトン重合体の製造方法

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JP2002017385A JP2000198866A JP2000198866A JP2002017385A JP 2002017385 A JP2002017385 A JP 2002017385A JP 2000198866 A JP2000198866 A JP 2000198866A JP 2000198866 A JP2000198866 A JP 2000198866A JP 2002017385 A JP2002017385 A JP 2002017385A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 カプロラクトン重合体を再重合可能なモノマ
ーへ選択的に変換する方法、および前記モノマーからカ
プロラクトン重合体を製造する方法を、酵素反応を用い
ることにより低エネルギー消費でかつ環境受容型の方法
として提供すること。 【解決手段】 カプロラクトン重合体を加水分解酵素の
存在下、解重合させることを特徴とするジカプロラクト
ンの製造方法、およびジカプロラクトンを加水分解酵素
の存在下、重合させることを特徴とするカプロラクトン
重合体の製造方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、酵素による高分子
化合物の合成と分解間での可逆的反応を利用したカプロ
ラクトン重合体から14員環ジカプロラクトン(1,8
−dioxacyclotetradecane−2,
9‐dione)への変換、および14員環ジカプロラ
クトンからカプロラクトン重合体への重合に関するもの
である。
【0002】
【従来の技術】近年地球温暖化など地球環境がますます
悪化しつつある危機的状況において、限りのある炭素資
源(C資源)の有効利用と有限エネルギー資源の節約の
観点から、サステイナブル材料利用システムの構築が急
がれている。高分子製品についてみると、使用後はその
まま再使用されるか(この中にはPETボトルの繊維素
材化なども含まれる)、リサイクルされるかあるいは廃
棄されている。リサイクルの方法としては、マテリアル
リサイクル法、ケミカルリサイクル法、サーマルリサイ
クル法などが用いられているが、マテリアルリサイクル
法は分子量低下などの品質劣化を伴い、ケミカルリサイ
クル法はエネルギー多消費型であり、またサーマルリサ
イクル法は多量の炭酸ガスが発生するなど、それぞれ問
題を内包していて、最終的にはどの方法でも廃プラスチ
ックを排出することになり、焼却、埋め立などにより処
理されているのが現状である。炭素資源の有効利用の観
点からは、最終的にはケミカルリサイクル法により原料
に戻すことが理想的である。ケミカルリサイクル法に
は、解重合反応によるモノマーの回収や化学的分解反応
による原料モノマー回収が知られているが、いずれもエ
ネルギー多消費型で環境に対する負荷は大きく、また一
般に採算性はない。
【0003】また再利用の観点からははずれるが、環境
に対する負荷が小さいポリマーとして、地中のバクテリ
ア等により分解されるいわゆる生分解性ポリマーが注目
され、種々の生分解性ポリマーが提案されている。たと
えば生分解性ポリマーとして生分解性ポリエステルが知
られている。その代表的なものとしてはポリカプロラク
トン、ポリ乳酸、ジオールとコハク酸との重縮合ポリエ
ステルなどの脂肪族ポリエステルが挙げられる。中でも
ポリカプロラクトンは、ε−カプロラクトンの開環重合
により石油化学工業的に得られることから、1980年
頃に既に量産化されており、特徴的な機能を有するプラ
スチックとして実用化が図られている。ポリカプロラク
トンは融点60℃、ガラス転移温度−60℃を有する高
結晶性の脂肪族ポリエステルであり、柔軟でナイロン並
の抗張力がある。また、室温で放射線を照射すると、分
岐構造が導入され、伸張粘度が上がる。そのため成形温
度領域が拡大され、発泡製品の製造が可能となり、断熱
剤等に広く利用が可能となっている。さらに近年、生分
解性の機能に着目した新製品、用途開発も種々行われて
いる。加えて、ポリカプロラクトンは多くの樹脂に対し
て相溶性があるので、改質剤として、各種生分解性ポリ
エステルとブレンドすることも検討されている。
【0004】しかし、ポリカプロラクトンなどの生分解
性ポリマーは環境に対する負荷は小さいものの、その原
料は回収されないため、炭素資源が有効利用される完全
循環型再利用の範疇に入るものではなく、理想的なポリ
マー分解方法とは云い難い。したがって、生分解性ポリ
マーと同様、石油エネルギー等の高エネルギーを必要と
せずに低分子化合物に分解でき、しかも低分子化合物が
有効利用でき、なお望むならばその低分子化合物から元
のポリマーが同様に高エネルギーを消費せず得られるの
であれば、低エネルギー消費型で完全循環型のポリマー
製造・分解法を構築することができる。
【0005】ポリカプロラクトンの生分解性や酵素分解
性については古くは1970年代から多くの研究論文が
発表され、自然界における完全生分解性はほぼ共通認識
となっており、「Y.Tokiwa,T.Suzuki,Nature 270,
76(1997)」、「Y.Tokiwa,T.Suzuki,K.Takeda,
Agric.Biol.Chem.52,1936(1998)」には、ポリカ
プロラクトンの酵素分解について記載されている。ま
た、本発明者は先に、ポリカプロラクトンが酵素触媒に
より液状オリゴマー(液状の低分子量体)に分解し、こ
のものは酵素により再重合できることを見いだし、ポリ
カプロラクトンの新規リサイクル法として発表した
(S.Matsumura,H.Ebata,K.Toshima, Macromol.R
apid.Commun.in press.)しかし、この方法は、ポリ
カプロラクトンのオリゴマーへの分解過程で水分量や不
純物の影響を強く受け、生成するオリゴマーの分子量な
どの性状が異なり、分解反応を精密に制御することは困
難である。また、オリゴマーを用いた重合反応では、減
圧操作を必要とし、さらに共重合における正確な組成制
御が難しく、得られる分子量分布が広くなることなど、
改善の余地が残されている。
【0006】一方、ε−カプロラクトンを酵素触媒を用
いて重合する方法も知られている(「D.Knani,A.L.
Gutman,D.H.Kohn,J.Polym.Sci.,Part A,Polym
Chem.31,1221(1993)」、「H.Uyama,S.Kobayash
i,Chem.Lett.1994,1149」、「R.T.MacDonald,
S.K.Pulapura,Y.Y.Svirkin,R.A.Gross,D.L.
Kaplan,G.Swift,S.Wolk, Macromolecules 28,73
(1995)」、「H.Uyama,K.Takeya,N.Hoshi,S.Ko
bayashi,Macromolecules 28,7046(1995)」、「G.A.
R.Nobes,R.J.Kazlauskas,R.H. Marchessault,Macromole
cules 29,4829(1996)」、「L.A.Henderson,Y.Y.Svirki
n,R.A.Gross,D.Kaplan,G.Swift,, Macro-molecules 29,
7759(1996)」、「A.Cordova,T.Iversen,K.Hult,M.Marti
nelle,Polymer 39,6519(1998)」)。さらに、ε−カプ
ロラクトンと環状トリメチレンカーボネートモノマーと
の酵素触媒共重合についても知られている(Deng,
F.;Gross,R.A.Int.J.Biolog.Macromol.1999,
25,153.) この方法は、酵素を用いるため低エネルギー・低環境負
荷の方法であるといえる。しかし、ε−カプロラクトン
の酵素触媒重合法は、重合速度が若干遅いことや、モノ
マーが低エネルギー・低環境負荷の酵素法により得られ
ないという課題が残されている。したがって、カプロラ
クトン重合体を低エネルギー・完全循環型で再利用する
方法は未だ存在しない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、前記問題点
に鑑みてなされたものであり、その目的は、カプロラク
トン重合体を再重合可能なモノマーへ選択的に変換する
方法、および前記モノマーからカプロラクトン重合体を
製造する方法を、酵素反応を用いることにより低エネル
ギー消費でかつ環境受容型の方法として提供するもので
ある。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明の前記目的は、以
下のジカプロラクトンの製造方法、およびカプロラクト
ン重合体の製造方法を提供することにより解決される。 (1)カプロラクトン重合体を加水分解酵素の存在下、
解重合させることを特徴とするジカプロラクトンの製造
方法。 (2)加水分解酵素がリパーゼであることを特徴とする
前記(1)に記載のジカプロラクトンの製造方法。 (3)リパーゼがCandida antarctica由来であること
を特徴とする前記(1)または(2)に記載のジカプロ
ラクトンの製造方法。 (4)ジカプロラクトンを加水分解酵素の存在下、重合
させることを特徴とするカプロラクトン重合体の製造方
法。
【0009】
【発明の実施の形態】本発明は、加水分解酵素の存在
下、カプロラクトン重合体を解重合して14員環のジカ
プロラクトンモノマーを製造する方法、および前記ジカ
プロラクトンモノマーを加水分解酵素の存在下重合させ
ることによりカプロラクトン重合体を製造する方法に関
する。本発明の解重合によって生成する14員環のジカ
プロラクトンモノマー(1,8‐dioxacyclo
tetradecane−2,9−dione)は以下
の構造式で表わされる。
【0010】
【化1】
【0011】また、本発明のカプロラクトン重合体は、
分子中に以下の構造式で示される単位を繰り返し単位と
して有する重合体である。本発明の解重合方法を利用し
て効率よくジカプロラクトンを回収するために、下記単
位構造を50モル%以上含有する重合体であることが好
ましい。また、カプロラクトン重合体の分子量(数平均
分子量)は特に制限はない。
【0012】
【化2】
【0013】前記式中の末端基部分にはポリマー合成法
により決定されるいずれの置換基によって置換されてい
ることが可能である。上記単位の他に、以下の構造式
(A)、構造式(B)または構造式(C)等で示される
単位を含有することができるがこれら単位に限定される
ものではない。前記単位は50モル%より低い含有量で
あることが好ましい。
【0014】
【化3】
【0015】式中R1は炭素数1〜17(5を除く)の
直鎖または分岐のアルキレン基を、R2は炭素数2〜1
1の直鎖または分岐のアルキレン基を、R3は炭素数1
〜10の直鎖または分岐のアルキレン基を、R4は炭素
数2〜10の直鎖または分岐のアルキレン基をそれぞれ
表わす。
【0016】[カプロラクトン重合体の解重合]本発明
のカプロラクトン重合体の解重合は、カプロラクトン重
合体を適当な溶剤に溶解し、それに加水分解酵素を加え
て解重合溶液を調製し、該溶液を適切な温度に保持しつ
つ、好ましくは攪拌しながら、適切な時間解重合反応を
させることにより行われる。カプロラクトン重合体は、
最初のカプロラクトン重合体の分子量には無関係にジカ
プロラクトンに解重合する。本発明の解重合反応におい
ては、たとえばポリカプロラクトンを酵素で処理するこ
とにより、ジカプロラクトンモノマーを収率97%以上
で得ることができる。
【0017】本発明の解重合に用いる酵素としてはカー
ボネート結合を加水分解する酵素が特に制限なく使用さ
れる。加水分解酵素としては入手のしやすさと酵素の熱
安定性によりリパーゼが好ましく、中でもCandida ant
arctica由来のリパーゼ(以下において「CAリパー
ゼ」ということがある。)が好ましい。また、酵素は、
固定化していても固定化していなくてもよい。リパーゼ
としては、例えば、Candida antarctica由来の固定化酵
素であるノボノルディスクバイオインダストリー(株)
のNovozym 435(商品名)を挙げることがで
きる。本発明の解重合における酵素(固定化酵素を含
む)の添加量は、ポリマー当たり酵素1〜500重量
%、好ましくは、酵素5〜100重量%である。1重量
%未満では、反応は重合に偏りモノマーの生成が著しく
低下し、500重量%を超えるとジカプロラクトンモノ
マーがさらに酵素分解を受け、ヒドロキシ酸にまで分解
し、前記構造式のジカプロラクトンモノマーの収量が著
しく低下する。
【0018】前記溶媒としてはアセトニトリル、1,4
−ジオキサン、テトラヒドロフラン、イソプロピルエー
テル、トルエン、ベンゼンなど、カプロラクトン重合体
を溶解し、かつ酵素を失活させない溶媒であれば制限な
く使用することができる。水やアルコールは、生成する
ジカプロラクトンモノマーの酵素分解を引き起こすので
好ましくない。
【0019】カプロラクトン重合体の溶媒中の濃度は重
要である。カプロラクトン重合体の濃度が小さくなるほ
どジカプロラクトンの濃度は増加する。濃度を溶剤1リ
ットル当たりのジカプロラクトンの重量で表わす(g/
L)と、たとえば、カプロラクトン重合体を1g/L含
むトルエン溶液では97%のジカプロラクトンの収率が
得られた。一般的に、解重合反応溶液中に含まれるカプ
ロラクトン重合体の濃度は、1〜100g/L、中でも
1〜20g/Lが適切である。1g/Lより低い濃度の
場合は、収率自体は特に低くないが濃度が低いため得ら
れるジカプロラクトンの量を十分に得にくく、また10
0g/Lを超えるとジカプロラクトンへの変換率が低下
するので、前記範囲が好ましい。
【0020】さらに、溶媒としては水は適切ではない
が、解重合の系の中に全く水が存在しないと加水分解酵
素の活性が保てないので、系に微量の水分を添加するこ
とが好ましい。酵素自体が水分を保持している場合に
は、水を添加する必要はない。酵素の活性を保つための
水分は、反応系中ポリカプロラクトンに対して0.1〜
5重量%程度である。解重合の温度は25〜80℃、好
ましくは30〜50℃である。25℃より低い温度では
解重合速度が小さく、また80℃を超えると酵素の失活
が起こり易いので前記範囲が適切である。また、解重合
の反応時間は少なくとも10時間であることが望まし
い。反応時間の上限は特にないが、48時間以上行って
もそれ以上解重合は進行せず経済的に不利となるので前
記範囲が適切である。10ないし48時間が一般的な反
応時間である。
【0021】[ジカプロラクトンの重合]本発明のジカ
プロラクトンの重合は、ジカプロラクトンを適当な溶剤
に溶解し、それに加水分解酵素を加えて重合溶液を調製
し、該溶液を適切な温度に保持しつつ、好ましくは攪拌
しながら、適切な時間重合反応をさせることにより行わ
れる。カプロラクトン重合体の解重合によりジカプロラ
クトンが生成する酵素反応は、可逆反応であるので、ジ
カプロラクトンを加水分解酵素、たとえばリパーゼによ
り重合させることができる。加水分解酵素は固定化され
ていても固定化されていなくてもよい。ジカプロラクト
ンの重合に用いるリパーゼとしてはCAリパーゼ(Cand
ida antarctica lipase)、PPL(porcine pancre
atic lipase)、Candida cylindracea lipase 、Li
pase PS、Lipozyme IMなど、制限なく用いることがで
きるが、特にCandida antarctica由来のリパーゼ(CA
リパーゼ)が好ましく用いられる。CAリパーゼは固定
化されていても固定化されていなくてもよい。CAリパ
ーゼを用いることにより、極めて高いモノマー変換率で
ジカプロラクトンを重合させることが可能になった。リ
パーゼとしては、例えば、Candida antarctica由来の固
定化酵素であるノボノルディスクバイオインダストリー
(株)のNovozym 435(商品名)を挙げるこ
とができる。
【0022】ジカプロラクトンを加水分解酵素を用いて
重合させることにより、数平均分子量で20000まで
の分子量のカプロラクトン重合体が得られる。また、モ
ノマー変換率は100%を達成することも可能である。
本発明のジカプロラクトンの重合における酵素(固定化
酵素を含む)の添加量は、ジカプロラクトン当たり酵素
0.1〜50重量%、好ましくは、酵素0.1〜10重
量%である。0.1重量%未満では、重合速度が低下
し、モノマー変換率も低くなりやすく、また、50重量
%を超えると生成するポリマーの分子量が低くなりやす
いので、前記範囲が適切である。
【0023】ジカプロラクトンを溶解させる溶媒として
は、酵素を失活させない溶媒、たとえばアセトニトリ
ル、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン、イソプ
ロピルエーテル、トルエン、ベンゼン等が用いられる。
酵素活性を保つための反応系中の水分量は前記カプロラ
クトン重合体の解重合の場合と同様である。ジカプロラ
クトンの他に共重合モノマーとして、ラクチド、ε−カ
プロラクトン、β−プロピオラクトン、β−ブチロラク
トン、ベンジルβ−マロラクトネート、ペンタデカノラ
クトンなどの環状ラクトンや、トリメチレンカーボネー
ト、メチルトリメチレンカーボネート、ジメチルトリメ
チレンカーボネートなどの環状カーボネートを共重合さ
せることが可能である。したがって、前記構造式のカプ
ロラクトン単位の他に、他のラクトン単位、カーボネー
ト単位を有するポリエステルまたはポリエステルカーボ
ネートを容易に製造することができる。
【0024】ジカプロラクトンからカプロラクトン重合
体への重合も可逆反応であるので、生成したカプロラク
トン重合体からジカプロラクトンへの解重合を抑制する
ためには、特に重合条件を、系の水分量を抑え、重合温
度を高くすることが好ましい。ジカプロラクトンの重合
において、加水分解酵素のジカプロラクトンに対する割
合は、1:1000〜1:2の範囲が適している。重合
の温度は、30ないし85℃が可能であるが、特に40
ないし75℃の範囲内で行うことが好ましい。30℃よ
り低いと反応速度が小さくなり、また、85℃を超える
と、酵素の失活が生ずるので、重合温度は前記範囲が適
している。一般に、ジカプロラクトンの重合は、カプロ
ラクトン重合体の解重合の際の温度より高いことが好ま
しい。反応時間は、0.5〜48時間が適当である。
0.5時間より短いと十分反応が進行せず、また、48
時間を超えると生成したカプロラクトン重合体が解重合
を起こしたりするので、前記時間範囲が好ましい。
【0025】本発明の加水分解酵素によりカプロラクト
ン重合体を解重合させる方法は、ワンポットによる簡便
な操作でよい他、反応条件は温和でありまた低エネルギ
ー消費でもある。また、本発明の解重合によりカプロラ
クトン重合体は直接ジカプロラクトンに戻すことができ
る。ジカプロラクトンは、機能性、生分解性ポリマー合
成のためのモノマーとして、医薬品基材や化粧品、化成
品の分野における合成中間体として有用である。また、
ジカプロラクトンは、生分解性発泡製品の製造原料とな
り、断熱剤等工業的利用が考えられる。加えて、ジカプ
ロラクトンは、酵素重合に適するモノマーであり、酵素
により、簡便な操作でかつ温和な条件で容易に重合可能
であり、またその際他のモノマーと共重合させることも
可能で、容易にカプロラクトン重合体を製造することが
できる。さらに、解重合または重合を行うのに用いる加
水分解酵素は、回収して繰り返し用いることができ、そ
の際酵素としての活性の減少は実質的にないという有利
な点を有する。したがって、本発明により、低エネルギ
ー消費で環境に対する負荷が小さく、かつ炭素資源を完
全再利用することが可能な、完全循環型のカプロラクト
ン重合体の利用システムを構築することが可能になっ
た。
【0026】
【実施例】以下に実施例を示し本発明をさらに具体的に
説明するが、本発明はこれらの実施例により限定される
ものではない。 実施例1 ポリ(カプロラクトン)(和光純薬化学工業(株)製、M
n=110000、Mw/Mn=1.6)(30mg)
をトルエン(15mL)に溶解し、これに固定化リパー
ゼ(Novozym 435)(3mg)および水(6
0mg)を添加し40℃で24時間撹拌を行った。これ
にクロロホルムを少量加え、不溶の固定化リパーゼをセ
ライトを用いて濾別し、濾液より溶媒をエバポレーター
を用いて減圧濃縮し、14員環ジカプロラクトンモノマ
ー(1,8−dioxacyclotetradeca
ne−2,9−dione)を最高収率97%で得た。
精製はシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより行
い、以下のような結果が得られた。1 H-NMR(300MHz, CDCl3):δ=1.35-1.75(m,6H,CH2 of
C-3,4 and 5),2.38(t,J=6.05Hz,2H,CH2 of C-2),
4.16(t,J=5.63Hz,2H,CH2 of C-6).13 C-NMR(75MHz,CDCl3):δ=24.6,24.6,28.1(C-3,4 a
nd 5, CH2),34.6(C-2,CH2),63.0(C-6,CH2),17
3.5(C-1,C=0). 元素分析値:C,63.08;H,8.73%. 計算値(C12H
20O4):C,63.13;H,8.83%.
【0027】実施例2 ポリ(カプロラクトン)(和光純薬化学工業(株)製、M
n=110000、Mw/Mn=1.6)(30mg)
をトルエン(lmL)に溶解し、これに固定化リパーゼ
(Novozym 435)(3mg)および水(60
mg)を添加し、40℃で24時間撹拌を行った。これ
にクロロホルムを少量加え、不溶の固定化リパーゼをセ
ライトを用いて濾別し、濾液より溶媒をエバポレーター
を用いて減圧濃縮し、14員環ジカプロラクトンモノマ
ー(1,8−dioxacyclotetradeca
ne−2,9−dione)を収率80%で得た。
【0028】実施例3 ポリ(カプロラクトン)(和光純薬化学工業(株)製、M
n=110000、Mw/Mn=1.6)(1g)をト
ルエン(334mL)に溶解し、これに固定化リパーゼ
(Novozym 435)(100mg)および水
(2g)を添加し40℃で24時間撹拌を行った。これ
にクロロホルムを少量加え、不溶の固定リパーゼをセラ
イトを用いて濾別し、濾液より溶媒をエバポレーターを
用いて減圧濃縮し、14員環ジカプロラクトンモノマー
(1,8−dioxacyclotetradecan
e−2,9−dione)を収率96%で得た。
【0029】実施例4 トルエン1mlに、ジカプロラクトンを0.1gおよび
固定化リパーゼ(Novozym 435)を0.01
g添加し、次いで液温が70℃になるまで、サーモスタ
ット付き油浴で加熱した。溶液温度を70℃に保持し1
2時間攪拌した。その後クロロホルムを1ml添加し、
不溶のリパーゼを濾過で除いた。減圧下クロロホルムを
蒸発させ除いた。モノマー変換率は100%であった。
また、ポリカプロラクトンの収率は99%であった。G
PC法により分子量を測定したところ、Mw=4180
0、Mn=19000、Mw/Mn=2.2であった。
得られたポリカプロラクトンの分析結果を以下に示す。 IR(KBr):2984(CH2),1748,118
4(esterC=0)cm-1 1 H-NMR(300MHz, CDCl3):δ=1.3-1.70(m,6H,CH2 of C
-3,4 and 5),2.31(t,J=6.8Hz,2H,CH2 of C-2),4.
05(t,J=6.8Hz,2H,CH2 of C-6).13 C-NMR(75MHz,CDCl3):δ=24.5,25.5,28.3(C-3,4 a
nd 5, CH2),34.1(C-2,CH2),64.1(C-6,CH2),17
4.5(C-1,C=0).
【0030】実施例5 実施例1において固定化酵素を濾過により回収し、真空
で乾燥した。次いで、この酵素を用いて実施例1と同様
の解重合を行ったところ、収率97%でジカプロラクト
ンが回収された。
【0031】
【発明の効果】本発明の加水分解酵素によりカプロラク
トン重合体を解重合させる方法は、ワンポットによる簡
便な操作でよい他、反応条件は温和でありまた低エネル
ギー消費でもある。また、本発明の解重合によりカプロ
ラクトン重合体は直接ジカプロラクトンに戻すことがで
きる。ジカプロラクトンは、機能性、生分解性ポリマー
合成のためのモノマーとして、医薬品基材や化粧品、化
成品の分野における合成中間体として有用である。ま
た、ジカプロラクトンは、生分解性発泡製品の製造原料
となり、断熱剤等工業的利用が考えられる。加えて、ジ
カプロラクトンは、酵素重合に適するモノマーであり、
酵素により、簡便な操作でかつ温和な条件で容易に重合
可能であり、またその際他のモノマーと共重合させるこ
とも可能で、容易にカプロラクトン重合体を製造するこ
とができる。さらに、解重合または重合を行うのに用い
る加水分解酵素は、回収して繰り返し用いることがで
き、その際酵素としての活性の減少は実質的にないとい
う有利な点を有する。したがって、本発明により、低エ
ネルギー消費で環境に対する負荷が小さく、かつ炭素資
源を完全再利用することが可能な、完全循環型のカプロ
ラクトン重合体の利用システムを構築することが可能に
なった。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) //(C12N 9/20 (C12N 9/20 C12R 1:72) C12R 1:72) C08L 67:04 C08L 67:04 Fターム(参考) 4B050 CC10 DD04 LL05 4B064 AD83 AE47 CA21 CB02 DA16 4F301 AA25 CA09 CA12 CA13 CA23 CA65 4J029 AA01 AA02 AB04 AB07 AC01 AE01 EG09 EH01 KD17 KE13 KG02 KG03

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 カプロラクトン重合体を加水分解酵素の
    存在下、解重合させることを特徴とするジカプロラクト
    ンの製造方法。
  2. 【請求項2】 加水分解酵素がリパーゼであることを特
    徴とする請求項1に記載のジカプロラクトンの製造方
    法。
  3. 【請求項3】 リパーゼがCandida antarctica由来で
    あることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の
    ジカプロラクトンの製造方法。
  4. 【請求項4】 ジカプロラクトンを加水分解酵素の存在
    下、重合させることを特徴とするカプロラクトン重合体
    の製造方法。
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