JP4294158B2 - 荷電粒子加速装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、医療用具殺菌、食品照射等に用いる大強度の高エネルギー電子などを発生させる荷電粒子加速装置、又は放射光装置等の入射器や高エネルギービーム実験に用いる荷電粒子加速装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来例1.
図12は、例えば「加速器と関連応用技術に関する第1回シンポジウム(1998)、84頁」に示された従来例1の荷電粒子加速装置を示す構成図である。図12は電子加速装置を示している。図12(a)は高周波空洞の回転軸に垂直な平面における断面を示し、図12(b)は高周波空洞の回転軸及び電子の軌道を含む平面における断面を示している。図において、111は加速ギャップ、112は電子銃、113はソレノイドレンズ、114は偏向電磁石、115はリッジ、116は筒状の高周波空洞、117は電子の軌道である。図12では、電子の進行方向を矢印で示している。
【0003】
次に動作について説明する。
電子銃112から出射した電子は、ソレノイドレンズ113を介して高周波空洞116に入射し、径方向へ進行する経路を通り、高周波空洞116を通過する。高周波空洞116には高周波電場がかけられているため、高周波空洞116に入射した電子は、加速ギャップ111を通過する時にエネルギーを補給され加速される。高周波空洞116を通過した電子は、高周波空洞116の外周部に設置された偏向電磁石114によって180度の偏向を受け、再び高周波空洞116に入射する。図12に示す例では、偏向電磁石114が高周波空洞116の外周部に4個設置されており、電子は各偏向電磁石114を1回だけ通過するため、電子は高周波空洞116を5回通過した後取出される。
【0004】
なお、電子が加速ギャップ111を通過する毎に加速するように、加速ギャップ111を通過するタイミングと高周波電場のタイミングとの同期をとっている。また、電子が加速ギャップ111を通過する位置は周回毎に異なるので、広い部分に均一な電界を発生させている。また、リッジ115を備えているため、加速ギャップ111部分に電界が集中し、高周波空洞116全体で消費される電力が少なくてすむ。
【0005】
従来例2.
図13は、例えば特表平2−503609号公報に示された従来例2の荷電粒子加速装置を示す概略的な構成図である。図13は電子加速装置を示している。図13は高周波空洞の回転軸に垂直な平面における断面を示している。図において、121は加速ギャップ、122は電子銃、123は偏向電磁石、124は電子ビームの軌道、125は回転軸が同一である外側筒状導体125aと内側筒状導体125bとを備えた高周波空洞である。図13では、電子ビームの進行方向を矢印で示している。
【0006】
次に動作について説明する。
電子銃122から出射した電子は、高周波空洞125に入射し、外側筒状導体125aから内側筒状導体125bへ向かう経路、及び内側筒状導体125bから外側筒状導体125aへ向かう経路を通り、高周波空洞125を通過する。高周波空洞125には高周波電場がかけられているため、高周波空洞125に入射した電子は、加速ギャップ121を通過する時にエネルギーを補給され加速される。高周波空洞125を通過した電子は、高周波空洞125の外周部に設置された偏向電磁石123によって数十度の偏向を受け、再び高周波空洞125に入射する。図13に示す例では、偏向電磁石123が高周波空洞125の外周部に5個設置されており、電子は各偏向電磁石123を1回だけ通過するため、電子は高周波空洞125を6回通過した後取出される。
【0007】
なお、外側筒状導体125a及び内側筒状導体125bには電子を通過させるための開口が設けられている。また、高周波空洞125での電界はTEモードである。また、電子が加速ギャップ121を通過する毎に加速するように、加速ギャップ121を通過するタイミングと高周波電場との同期をとっている。また、より高エネルギーの電子が通過する偏向電磁石123ほど磁場強度が強くなるように、偏向電磁石123毎に磁場強度を変えている。また、電子が加速ギャップ121を通過する位置は周回毎に異なっている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
従来例1の荷電粒子加速装置は以上のように構成されているので、(1)電子の軌道が周回毎に異なるため、大きな高周波空洞が必要となり、装置全体が大きくなるという課題、(2)高周波空洞が大きくなると壁損失が大きくなるため、高周波空洞で消費される電力が大きくなり、装置全体の消費電力が大きくなるという課題、(3)電子を50MeV程度の高エネルギーまで加速するには高周波空洞を多数回通過させなければならないため、多くの偏向電磁石や大きな高周波空洞が必要となり、電子をそのような高エネルギーまで加速することが現実的に難しいという課題、及び(4)電子を180度偏向させる偏向電磁石は水平・垂直方向の収束力を持たないため、電子ビームの収束性を高くするため特殊な加工や別のコイルを組み込むことが必要となり、構成が複雑になるという課題があった。
【0009】
また、従来例2の荷電粒子加速装置は以上のように構成されているので、(1)装置全体を小さくするために高周波空洞を小さくすると、高周波空洞の外周部に偏向電磁石を設置できなくなるため、装置の小型化に限界があるという課題、及び(2)高周波空洞の外周部に偏向電磁石を設置するため、偏向電磁石の数に制限があり、電子を50MeV程度の高エネルギーまで加速することが難しいという課題があった。
【0010】
この発明は上記のような課題を解決するためになされたもので、荷電粒子を高エネルギーに加速することができ、消費電力の少ない、小型の荷電粒子加速装置を得ることを目的とする。
【0011】
また、収束性の高い荷電粒子ビームを得ることができる簡単な構成の荷電粒子偏向手段を備えた荷電粒子加速装置を得ることを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
この発明に係る荷電粒子加速装置は、荷電粒子を発生させる荷電粒子発生手段と、内部を通過する荷電粒子にエネルギーを供給する高周波空洞と、高周波空洞を順方向に通過した荷電粒子が入射しその荷電粒子を偏向して入射時の経路を入射時と反対方向に進行するように出射する第1の荷電粒子偏向手段と、高周波空洞を逆方向に通過した荷電粒子が入射しその荷電粒子を偏向して入射時の経路を入射時と反対方向に進行するように出射する第2の荷電粒子偏向手段とを備え、第1及び第2の荷電粒子偏向手段のいずれか一方または双方は、荷電粒子の入射時の経路の延長上に配置された複数の偏向磁場発生手段を備えて成り、隣接する偏向磁場発生手段の極性が異なるようにしたものである。
【0014】
この発明に係る荷電粒子加速装置は、連続して配置された複数の偏向磁場発生手段が、共通のヨークを備えて成るものである。
【0016】
この発明に係る荷電粒子加速装置は、第1及び第2の荷電粒子偏向手段のいずれか一方または双方の内部に荷電粒子ビームを収束させる収束磁場発生手段を備えたものである。
【0017】
この発明に係る荷電粒子加速装置は、偏向磁場発生手段が荷電粒子通過領域を挟んで対向して配置された2つの磁極を備えて成り、収束磁場発生手段が偏向磁場発生手段への荷電粒子の入射側からその反対側に向かって徐々に間隔が広がるように構成された上記2つの磁極を備えて成るものである。
【0018】
この発明に係る荷電粒子加速装置は、1または複数の偏向磁場発生手段が、永久磁石対を備えて成るものである。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施の一形態を説明する。
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1による荷電粒子加速装置の機器構成を概略的に示す上面図である。また、図2は図1中の第1の荷電粒子偏向手段の構成を示す斜視図である。ただし、図2では第1の偏向電磁石を荷電粒子の入射方向に垂直な平面における断面で表わしている。図において、10は荷電粒子加速装置、11は荷電粒子を発生させる荷電粒子発生手段、12は内部を通過する荷電粒子にエネルギーを供給する高周波空洞、13は高周波空洞12を順方向Aに通過した荷電粒子が入射しその荷電粒子を偏向して入射時の経路を入射時と反対方向に進行するように出射する第1の荷電粒子偏向手段、14は高周波空洞12を逆方向Bに通過した荷電粒子が入射しその荷電粒子を偏向して入射時の経路を入射時と反対方向に進行するように出射する第2の荷電粒子偏向手段、15は荷電粒子の軌道である。
【0021】
第1の荷電粒子偏向手段13において、21は第1の偏向電磁石(偏向磁場発生手段)、22は第2の偏向電磁石(偏向磁場発生手段)、23は第3の偏向電磁石(偏向磁場発生手段)である。第1から第3の偏向電磁石21〜23は荷電粒子の入射側から順に位置する。図2中には荷電粒子の入射する方向を矢印で示している。第1及び第3の偏向電磁石21,23は同じ方向、例えば上側方向に磁場を発生し、第2の偏向電磁石22は第1及び第3の偏向電磁石21,23と逆方向、例えば下側方向に磁場を発生する。図2中には磁場の方向を矢印で示している。
【0022】
同様に、第2の荷電粒子偏向手段14において、24は第1の偏向電磁石(偏向磁場発生手段)、25は第2の偏向電磁石(偏向磁場発生手段)、26は第3の偏向電磁石(偏向磁場発生手段)である。第1から第3の偏向電磁石24〜26は荷電粒子の入射側から順に位置する。第1及び第3の偏向電磁石24,26は同じ方向、例えば上側方向に磁場を発生し、第2の偏向電磁石25は第1及び第3の偏向電磁石24,26と逆方向、例えば下側方向に磁場を発生する。
【0023】
このように第1及び第2の荷電粒子偏向手段13,14は同様の構成をしている。すなわち、両方とも荷電粒子の入射時の経路の延長上に配置された3つの偏向電磁石を備えており、隣接する偏向電磁石の極性が異なっている。
【0024】
各偏向電磁石は、図2中の第1の偏向電磁石21で代表的に示すように、荷電粒子が通過する荷電粒子通過領域21aを挟んで対向して位置する上側磁極21b及び下側磁極21cと、上側磁極21bに巻かれた上側コイル21dと、下側磁極21cに巻かれた下側コイル21eとを備えている。
【0025】
この実施の形態では、第1の荷電粒子偏向手段13に入射した荷電粒子が所定の軌道を描くように、第1の荷電粒子偏向手段13における各偏向電磁石21〜23の磁極長や磁場強度を調整し、隣接する偏向電磁石間の距離を調整している。また、第2の荷電粒子偏向手段14に入射した荷電粒子が所定の軌道を描くように、第2の荷電粒子偏向手段14における各偏向電磁石24〜26の磁極長や磁場強度を調整し、隣接する偏向電磁石間の距離を調整している。
【0026】
次に動作について説明する。
この実施の形態及び以下の各実施の形態では、荷電粒子発生手段11としての電子銃から出射する20keV〜100keVのエネルギーの電子を、加速電圧1MVの高周波空洞12によりCW運転で5MeV程度の高エネルギーまで加速する場合について動作を説明する。以下の説明では荷電粒子発生手段11から出射する電子のエネルギーを30keVとする。図3は高周波空洞12を3回通過する前までの電子の軌道を示す図であり、図4は高周波空洞12を3回通過した後、5回通過する前までの電子の軌道を示す図である。また、図5は第1の荷電粒子偏向手段13側における電子の軌道を示す図である。図5中、15aは高周波空洞12を1回通過した後2回通過する前までの電子の軌道、15bは高周波空洞12を3回通過した4回通過する前までの電子の軌道である。
【0027】
荷電粒子発生手段11としての電子銃から出射した電子は高周波空洞12に入射し、高周波空洞12内の直線経路を順方向Aにむかい、高周波空洞12を通過する。高周波空洞12には高周波電場がかけられているため、その際、高周波空洞12から1MeVのエネルギーが補給され、電子は1.03MeVのエネルギーまで加速される。高周波空洞12を順方向Aに通過した電子は、第1の荷電粒子偏向手段13に入射する。第1の荷電粒子偏向手段13に入射した電子は、第1の荷電粒子偏向手段13により、上記直線経路の延長上に位置する入射時の経路と同一の経路を入射時と反対方向に向かうように偏向され、第1の荷電粒子偏向手段13から出射する。第1の荷電粒子偏向手段13から出射した電子は、入射時の経路と同一の経路を入射時と反対方向に向かい高周波空洞12に入射し、上記直線経路を逆方向Bに向かい、高周波空洞12を通過する。その際、高周波空洞12から、1MeVのエネルギーを補給され、電子は2.03MeVまで加速される。高周波空洞12を逆方向Bに通過した電子は、第2の荷電粒子偏向手段14に入射する。第2の荷電粒子偏向手段14に入射した電子は、第2の荷電粒子偏向手段14により、上記直線経路の延長上に位置する入射時の経路と同一の経路を入射時と反対方向に向かうように偏向され、第2の荷電粒子偏向手段14から出射する。第2の荷電粒子偏向手段14から出射した電子は、入射時の経路と同一の経路を入射時と反対方向に向かい高周波空洞12に入射する。以下、同様にして、高周波空洞12をさらに3回通過し、5.03MeVのエネルギーまで加速された電子は、第1の荷電粒子偏向手段13から十分な偏向作用を受けず外部に取出される。なお、電子が高周波空洞12を通過する毎に加速するように、電子が高周波空洞12を通過してから戻ってくるまでのタイミングと高周波電場のタイミングとの同期をとっている。
【0028】
高周波空洞12を1回通過し第1の荷電粒子偏向手段13に入射した電子は、第1及び第2の偏向電磁石21,22を通り、図5に示す滴状の軌道15aを描いて、第1の荷電粒子偏向手段13と第2の荷電粒子偏向手段14とを結ぶ経路に戻る。すなわち、高周波空洞12を1回通過し第1の荷電粒子偏向手段13に入射した電子は、まず、第1の偏向電磁石21に入射し、上側方向の磁場の作用で偏向され、反時計方向の軌道を描いて第1の偏向電磁石21から出射する。第1の偏向電磁石21を出射した電子は、第1の偏向電磁石21と第2の偏向電磁石22との間で直線軌道を描いて第2の偏向電磁石22に入射する。第2の偏向電磁石22に入射した電子は、下側方向の磁場の作用で偏向され、一回転近い時計方向の軌道を描いて第2の偏向電磁石22から出射する。第2の偏向電磁石22から出射した電子は、第2の偏向電磁石22と第1の偏向電磁石21との間で直線軌道を描いて第1の偏向電磁石21に入射する。第1の偏向電磁石21に入射した電子は、上側方向の磁場の作用で偏向され、反時計方向の軌道を描いて第1の偏向電磁石21から出射し、第1の荷電粒子偏向手段13と第2の荷電粒子偏向手段14とを結ぶ経路に戻る。ただし、第1及び第2の偏向電磁石21,22からの漏れ磁場の影響で、第1の偏向電磁石21と第2の偏向電磁石22との間の磁場はゼロでないので、第2の偏向電磁石22と第1の偏向電磁石21との間の軌道は正確な直線とはならない。
【0029】
同様に、高周波空洞12を2回通過し第2の荷電粒子偏向手段14に入射した電子は、第1及び第2の偏向電磁石24,25を通り、第2の荷電粒子偏向手段14と第1の荷電粒子偏向手段13とを結ぶ経路に戻る。
【0030】
高周波空洞12を3回通過し第1の荷電粒子偏向手段13に入射した電子は、第1から第3の偏向電磁石21〜23を通り、図5に示す滴状の軌道15bを描いて、第1の荷電粒子偏向手段13と第2の荷電粒子偏向手段14とを結ぶ経路に戻る。すなわち、高周波空洞12を3回通過し第1の荷電粒子偏向手段13に入射した電子は、まず、第1の偏向電磁石21に入射し、上側方向の磁場の作用で偏向され、反時計方向の軌道を描いて第1の偏向電磁石21から出射する。第1の偏向電磁石21を出射した電子は、第1の偏向電磁石21と第2の偏向電磁石22との間で直線軌道を描いて第2の偏向電磁石22に入射する。第2の偏向電磁石22に入射した電子は、下側方向の磁場の作用で偏向され、時計方向の軌道を描いて第2の偏向電磁石22から出射する。第2の偏向電磁石22から出射した電子は、第2の偏向電磁石22と第3の偏向電磁石23との間で直線軌道を描いて第3の偏向電磁石23に入射する。第3の偏向電磁石23に入射した電子は、上側方向の磁場の作用で偏向され、一回転近い反時計方向の軌道を描いて第3の偏向電磁石23から出射する。第3の偏向電磁石23から出射した電子は、第3の偏向電磁石23と第2の偏向電磁石22との間で直線軌道を描いて第2の偏向電磁石22に入射する。第2の偏向電磁石22に入射した電子は、下側方向の磁場の作用で偏向され、時計方向の軌道を描いて第2の偏向電磁石22から出射する。第2の偏向電磁石22から出射した電子は、第2の偏向電磁石22と第1の偏向電磁石21との間で直線軌道を描いて第1の偏向電磁石21に入射する。第1の偏向電磁石21に入射した電子は、上側方向の磁場の作用で偏向され、第1の偏向電磁石21内で反時計方向の軌道を描いて第1の偏向電磁石21から出射し、第1の荷電粒子偏向手段13と第2の荷電粒子偏向手段14とを結ぶ経路に戻る。ただし、第1及び第2の偏向電磁石21,22からの漏れ磁場の影響で、第1の偏向電磁石21と第2の偏向電磁石22との間の磁場はゼロでないので、第2の偏向電磁石22と第1の偏向電磁石21との間の軌道は正確な直線とはならず、第2及び第3の偏向電磁石22,23からの漏れ磁場の影響で、第2の偏向電磁石22と第3の偏向電磁石23との間の磁場はゼロでないので、第2の偏向電磁石22と第3の偏向電磁石23との間の軌道は正確な直線とはならない。また、高周波空洞12を3回通過し第1の荷電粒子偏向手段13に入射する電子は高周波空洞12を1回通過し第1の荷電粒子偏向手段13に入射する電子ほど、第1の偏向電磁石21が発生している磁場や第2の偏向電磁石22が発生している磁場の作用による偏向を受けない。
【0031】
同様に、高周波空洞12を4回通過し第2の荷電粒子偏向手段14に入射した電子は、第1から第3の偏向電磁石24〜26を通り、第2の荷電粒子偏向手段14と第1の荷電粒子偏向手段13とを結ぶ経路に戻る。
【0032】
以上の動作説明では、30keVのエネルギーの電子を、加速電圧1MVの高周波空洞12によりCW運転で5MeV程度の高エネルギーまで加速する場合について説明したが、高周波空洞12として、共振周波数がSバンド(2.8GHz)、長さが1.5m程度、加速電圧が20MeVのものを用いた場合には、電子を100MeV程度の高エネルギーまで加速することが可能である。
【0033】
以上のように、この実施の形態1によれば、荷電粒子加速装置10は、高周波空洞12を順方向Aに通過した荷電粒子が入射しその荷電粒子を偏向して入射時の経路を入射時と反対方向に進行するように出射する第1の荷電粒子偏向手段13と高周波空洞12を逆方向Bに通過した荷電粒子が入射しその荷電粒子を偏向して入射時の経路を入射時と反対方向に進行するように出射する第2の荷電粒子偏向手段14とを備えた構成であるので、荷電粒子は高周波空洞12内の直線経路を順方向A及び逆方向Bに繰り返し通過することにより加速される。従って、高周波空洞12が小型化し荷電粒子加速装置10全体が小型化する効果や高周波空洞12の壁損失が小さくなり荷電粒子加速装置10の消費電力が小さくなる効果が得られる。すなわち、荷電粒子を高エネルギーに加速することができ、消費電力の少ない、小型の荷電粒子加速装置を得ることができる。この効果は、第1及び第2の荷電粒子偏向手段13,14が磁界を用いて荷電粒子を偏向する構成である場合に限らず、電界を用いて荷電粒子を偏向する構成である場合や電界と磁界の両方を用いて荷電粒子を偏向する構成である場合にも得られる。
【0034】
また、この実施の形態1によれば、各荷電粒子偏向手段13,14は、荷電粒子の入射時の経路の延長上に配置された3つの偏向電磁石21〜23,24〜26を備え、隣接する偏向電磁石の極性が異なる構成であるので、各荷電粒子偏向手段13,14に入射した荷電粒子が各偏向電磁石21〜23,24〜26が発生する磁場の作用で偏向され滴状の軌道15a,15bを描く。従って、簡単な構成の荷電粒子偏向手段13,14で収束性の高い荷電粒子ビームを得ることができる効果が得られる。荷電粒子ビームの収束性が低いと、図6に示すように、ビームサイズが大きくなるので、高周波空洞12からの電界の逃げが少なくなるように共振する高周波の波長を長くするため、高周波空洞12を大きくする必要がある。その結果、荷電粒子加速装置10全体が大きくなる。また、高周波空洞12の壁損失が大きくなり、荷電粒子加速装置10の消費電力が大きくなる。
【0035】
例えば、この実施の形態1の荷電粒子加速装置10において、高周波空洞12での電界がTM010 モードであり、共振する高周波の周波数が800MHzであり、シャントインピーダンスが30Mオーム/mである場合、高周波空洞12のセル数が3のとき壁損失は60kWであり、セル数が4のとき30kWであり、セル数が増えることにより、壁損失は30kW程度まで低くなる。
【0036】
また、この実施の形態1によれば、各荷電粒子偏向手段13,14は、入射した荷電粒子が入射時の経路を入射時と反対方向に進行するように出射する構成であるので、入射時の経路に荷電粒子ビームを収束させる4極電磁石などの収束電磁石を配置することにより、荷電粒子ビームの収束性を高くすることができる効果が得られる。
【0037】
実施の形態2.
この実施の形態2では荷電粒子偏向手段が4つの偏向電磁石を備えている場合について説明する。
【0038】
図7はこの発明の実施の形態2による荷電粒子加速装置の機器構成を概略的に示す上面図である。図において、30は荷電粒子加速装置、31は高周波空洞12を順方向Aに通過した荷電粒子が入射しその荷電粒子を偏向して入射時の軌道を入射時と反対方向に進行するように出射する第1の荷電粒子偏向手段、32は高周波空洞12を逆方向Bに通過した荷電粒子が入射しその荷電粒子を偏向して入射時の軌道を入射時と反対方向に進行するように出射する第2の荷電粒子偏向手段、33は荷電粒子の軌道である。
【0039】
第1の荷電粒子偏向手段31において、41は第1の偏向電磁石(偏向磁場発生手段)、42は第2の偏向電磁石(偏向磁場発生手段)、43は第3の偏向電磁石(偏向磁場発生手段)、44は第4の偏向電磁石(偏向磁場発生手段)である。第1から第4の偏向電磁石41〜44は荷電粒子の入射側から順に位置し、第1及び第3の偏向電磁石41,43は同じ方向、例えば上側方向に磁場を発生し、第2及び第4の偏向電磁石42,44は第1及び第3の偏向電磁石41,43と逆方向、例えば下側方向に磁場を発生する。
【0040】
同様に、第2の荷電粒子偏向手段32において、45は第1の偏向電磁石(偏向磁場発生手段)、46は第2の偏向電磁石(偏向磁場発生手段)、47は第3の偏向電磁石(偏向磁場発生手段)、48は第4の偏向電磁石(偏向磁場発生手段)である。第1から第4の偏向電磁石45〜48は荷電粒子の入射側から順に位置し、第1及び第3の偏向電磁石45,47は同じ方向、例えば上側方向に磁場を発生し、第2及び第4の偏向電磁石46,48は第1及び第3の偏向電磁石45,47と逆方向、例えば下側方向に磁場を発生する。
【0041】
その他の構成要素は実施の形態1と同一あるいは同等であるため、その説明は省略する。
【0042】
この実施の形態では、第1の荷電粒子偏向手段31に入射した荷電粒子が所定の軌道を通るように、第1の荷電粒子偏向手段31における各偏向電磁石41〜44の磁極長や磁場強度を調整し、隣接する偏向電磁石間の距離を調整している。また、第2の荷電粒子偏向手段32に入射した荷電粒子が所定の軌道を通るように、第2の荷電粒子偏向手段32における各偏向電磁石45〜48の磁極長や磁場強度を調整し、隣接する偏向電磁石間の距離を調整している。
【0043】
次に動作について説明する。
実施の形態1の場合と同様に、高周波空洞12を1回通過し第1の荷電粒子偏向手段31に入射した電子は、第1及び第2の偏向電磁石41,42を通り、第1の荷電粒子偏向手段31と第2の荷電粒子偏向手段32とを結ぶ経路に戻り、高周波空洞12を2回通過し第2の荷電粒子偏向手段32に入射した電子は、第1及び第2の偏向電磁石45,46を通り、第2の荷電粒子偏向手段32と第1の荷電粒子偏向手段31とを結ぶ経路に戻る。
【0044】
一方、高周波空洞12を3回通過し第1の荷電粒子偏向手段31に入射した電子は、第1から第4の偏向電磁石41〜44を通り、第1の荷電粒子偏向手段31と第2の荷電粒子偏向手段32とを結ぶ経路に戻り、高周波空洞12を4回通過し第2の荷電粒子偏向手段32に入射した電子は、第1から第4の偏向電磁石45〜48を通り、第2の荷電粒子偏向手段32と第1の荷電粒子偏向手段31とを結ぶ経路に戻る。
【0045】
以上のように、この実施の形態2によれば、各荷電粒子偏向手段31,32は、荷電粒子の入射時の経路の延長上に配置された4つの偏向電磁石を備え、隣接する偏向電磁石の極性が異なる構成であるので、各荷電粒子偏向手段31,32に入射した荷電粒子は各偏向電磁石が発生する磁場の作用で偏向され滴状の軌道を描く。従って、簡単な構成の荷電粒子偏向手段で収束性の高い荷電粒子ビームを得ることができる効果が得られる。
【0046】
例えば、この実施の形態2の荷電粒子加速装置30において、高周波空洞12での電界がTM010 モードであり、共振する高周波の周波数が800MHzであり、シャントインピーダンスが30Mオーム/mである場合、高周波空洞12のセル数が3のとき壁損失は45kWであり、セル数が4のとき23kWであり、セル数が増えることにより、壁損失は30kW以下まで低くなる。
【0047】
また、この実施の形態2によれば、第1及び第2の荷電粒子偏向手段31,32が4つの偏向電磁石41〜44,45〜48を備え、高周波空洞12を3回通過し第1の荷電粒子偏向手段31に入射した荷電粒子が第1から第4の偏向電磁石41〜44を通って第1の荷電粒子偏向手段31と第2の荷電粒子偏向手段32とを結ぶ経路に戻るように第1の荷電粒子偏向手段31における各偏向電磁石41〜44の磁極長や磁場強度、及び隣接する偏向電磁石間の距離を調整するとともに、高周波空洞12を4回通過し第2の荷電粒子偏向手段32に入射した荷電粒子が第1から第4の偏向電磁石45〜48を通って第2の荷電粒子偏向手段32と第1の荷電粒子偏向手段31とを結ぶ経路に戻るように第2の荷電粒子偏向手段32における各偏向電磁石45〜48の磁極長や磁場強度、及び隣接する偏向電磁石間の距離を調整したので、第1の荷電粒子偏向手段31における第3の偏向電磁石43と第4の偏向電磁石44との間、及び第2の荷電粒子偏向手段32における第3の偏向電磁石47と第4の偏向電磁石48との間で荷電粒子の軌道が交差する。従って、その交差位置に荷電粒子ビームを収束させる4極電磁石などの収束電磁石を配置することにより、荷電粒子ビームの収束性を高くすることができる効果が得られる。
【0048】
実施の形態3.
この実施の形態3では各荷電粒子偏向手段中の隣接する複数の偏向電磁石が共通の鉄ヨークを備えている場合について説明する。
【0049】
図8はこの発明の実施の形態3による荷電粒子加速装置に用いる第1及び第2の荷電粒子偏向手段中の第1及び第2の偏向電磁石の構成を示す断面図である。図8は荷電粒子の入射方向並びに第1及び第2の偏向電磁石の磁場発生方向を含む平面による断面を示している。図において、51は第1の偏向電磁石(偏向磁場発生手段)、52は第2の偏向電磁石(偏向磁場発生手段)、53は荷電粒子が通過する荷電粒子通過領域、51a及び51bは荷電粒子通過領域53を挟んで対向して配置された第1の偏向電磁石51の上側磁極及び下側磁極、52a及び52bは荷電粒子通過領域53を挟んで対向して配置された第2の偏向電磁石52の上側磁極及び下側磁極、53aは第1の偏向電磁石51の上側磁極51aと第2の偏向電磁石52の上側磁極52aとを連結する上側鉄ヨーク(ヨーク)、53bは第1の偏向電磁石51の下側磁極51bと第2の偏向電磁石52の下側磁極52bとを連結する下側鉄ヨーク(ヨーク)、53cは第1の偏向電磁石51の上側磁極51aに巻かれた上側コイル、53dは第1の偏向電磁石51の下側磁極51bに巻かれた下側コイルである。
【0050】
このように第1及び第2の偏向電磁石51,52を構成した場合、第1の偏向電磁石51に上側方向の磁場が発生するように上側コイル53c及び下側コイル53dに電流を流すと、第1の偏向電磁石51の上側磁極51a、上側鉄ヨーク53a、第2の偏向電磁石52の上側磁極52a、第2の偏向電磁石52の下側磁極52b、下側鉄ヨーク53b、第1の偏向電磁石51の下側磁極51b、第1の偏向電磁石51の上側磁極51aに至る磁束の流れができ、第2の偏向電磁石52に下側方向の磁場が発生する。そして、第1の偏向電磁石51に発生する磁場の強度は、第1の偏向電磁石51の上側磁極51aと下側磁極51bとの間の距離により変わり、第2の偏向電磁石52に発生する磁場の強度は、第2の偏向電磁石52の上側磁極52aと下側磁極52bとの間の距離により変わる。
【0051】
また、このように第1及び第2の偏向電磁石51,52を構成した場合、実施の形態1の場合と同様の方法で、第1及び第2の荷電粒子偏向手段に入射する電子の軌道を調整することができる。
【0052】
図9はこの発明の実施の形態3による荷電粒子加速装置に用いる第1及び第2の荷電粒子偏向手段中の第1から第3の偏向電磁石の構成を示す断面図である。図9は荷電粒子の入射方向並びに第1から第3の偏向電磁石の電場発生方向を含む平面による断面を示している。図において、61は第1の偏向電磁石(偏向磁場発生手段)、62は第2の偏向電磁石(偏向磁場発生手段)、63は第3の偏向電磁石(偏向磁場発生手段)、64は荷電粒子が通過する荷電粒子通過領域、61a及び61bは荷電粒子通過領域64を挟んで対向して配置された第1の偏向電磁石61の上側磁極及び下側磁極、62a及び62bは荷電粒子通過領域64を挟んで対向して配置された第2の偏向電磁石62の上側磁極及び下側磁極、63a及び63bは荷電粒子通過領域64を挟んで対向して配置された第3の偏向電磁石63の上側磁極及び下側磁極、64aは第1の偏向電磁石61の上側磁極61aと第2の偏向電磁石62の上側磁極62aと第3の偏向電磁石63の上側磁極63aとを連結する上側鉄ヨーク(ヨーク)、64bは第1の偏向電磁石61の下側磁極61bと第2の偏向電磁石62の下側磁極62bと第3の偏向電磁石63の下側磁極63bとを連結する下側鉄ヨーク(ヨーク)、64cは第2の偏向電磁石62の上側磁極62aに巻かれた上側コイル、64dは第2の偏向電磁石62の下側磁極62bに巻かれた下側コイルである。
【0053】
このように第1から第3の偏向電磁石61〜63を構成した場合、第2の偏向電磁石62に下側方向の磁場が発生するように上側コイル64c及び下側コイル64dに電流を流すと、第2の偏向電磁石62の上側磁極62a、上側鉄ヨーク64a、第1の偏向電磁石61の上側磁極61a、第1の偏向電磁石61の下側磁極61b、下側鉄ヨーク64b、第2の偏向電磁石62の下側磁極62b、第2の偏向電磁石62の上側磁極62aに至る磁束の流れと、第2の偏向電磁石62の上側磁極62a、上側鉄ヨーク64a、第3の偏向電磁石63の上側磁極63a、第3の偏向電磁石63の下側磁極63b、下側鉄ヨーク64b、第2の偏向電磁石62の下側磁極62b、第2の偏向電磁石62の上側磁極62aに至る磁束の流れとができ、第1及び第3の偏向電磁石61,63に下側方向の磁場が発生する。そして、第1の偏向電磁石61に発生する磁場の強度は、第1の偏向電磁石61の上側磁極61aと下側磁極61bとの間の距離により変わり、第2の偏向電磁石62に発生する磁場の強度は、第2の偏向電磁石62の上側磁極62aと下側磁極62bとの間の距離により変わり、第3の偏向電磁石63に発生する磁場の強度は、第3の偏向電磁石63の上側磁極63aと下側磁極63bとの間の距離により変わる。
【0054】
また、このように第1から第3の偏向電磁石61〜63を構成した場合、実施の形態1の場合と同様の方法で、第1及び第2の荷電粒子偏向手段に入射する荷電粒子の軌道を調整することができる。
【0055】
以上のように、この実施の形態3によれば、第1及び第2の荷電粒子偏向手段中の隣接する複数の偏向電磁石は、共通の鉄ヨークを備えた構成であるので、第1及び第2の荷電粒子偏向手段が簡単な構成となる効果が得られる。
【0056】
上述した実施の形態3では、第1及び第2の荷電粒子偏向手段中の第1及び第2の偏向電磁石が共通の鉄ヨークを備えている場合及び第1から第3の偏向電磁石が共通の鉄ヨークを備えている場合について説明したが、その他の隣接する複数の偏向電磁石が共通の鉄ヨークを備えている場合であっても同様の効果が得られる。
【0057】
実施の形態4.
この実施の形態4では偏向電磁石中の上側磁極及び下側磁極の間隔が偏向電磁石への荷電粒子の入射側からその反対側に向かって徐々に広がっている場合について説明する。
【0058】
図10はこの発明の実施の形態4による荷電粒子加速装置に用いる第1及び第2の荷電粒子偏向手段中の偏向電磁石の上側磁極及び下側磁極の構成を示す断面図である。図10は荷電粒子の入射方向並びに偏向電磁石の電場発生方向を含む平面による断面を示している。図において、71aは荷電粒子が通過する荷電粒子通過領域、71b及び71cは荷電粒子通過領域71aを挟んで対向して配置された上側磁極(磁極)及び下側磁極(磁極)である。
【0059】
上側電極71b及び下側電極71cは、偏向電磁石への荷電粒子の入射側からその反対側に向かって徐々に間隔が広がるように構成されている。
【0060】
このように上側電極71b及び下側電極71cを構成した場合、偏向電磁石への荷電粒子の入射側からその反対側に向かって徐々に磁場の強度が弱くなる。
【0061】
以上のように、この実施の形態4によれば、偏向電磁石への荷電粒子の入射側からその反対側に向かって徐々に上側電極71bと下側電極71cとの間隔が広がる構成であるので、偏向電磁石が発生する上側方向あるいは下側方向の磁場の作用により偏向されて荷電粒子が反時計方向あるいは時計方向の軌道を描くとき、その軌道の外側、すなわちその軌道に対して軌道中心と反対側の磁場が弱くなる。従って、荷電粒子ビームの水平方向及び垂直方向の収束性が高くなる効果が得られる。
【0062】
実施の形態5.
この実施の形態5では荷電粒子偏向手段中の偏向磁場発生手段として、偏向電磁石の代えて永久磁石対を備えたものを用いる場合について説明する。
【0063】
図11はこの発明の実施の形態5による荷電粒子加速装置に用いる第1及び第2の荷電粒子偏向手段中の第1から第3の偏向磁場発生手段の構成を示す断面図である。図11は荷電粒子の入射方向並びに第1から第3の偏向磁場発生手段の電場発生方向を含む平面による断面を示している。図において、82は第1の偏向磁場発生手段(偏向磁場発生手段)、83は第2の偏向磁場発生手段(偏向磁場発生手段)、84は第3の偏向磁場発生手段(偏向磁場発生手段)、82aは第1の永久磁石対(永久磁石対)、83aは第2の永久磁石対(永久磁石対)、84aは第3の永久磁石対(永久磁石対)、85は荷電粒子が通過する荷電粒子通過領域、82b及び82cは荷電粒子通過領域85を挟んで対向して配置された第1の永久磁石対82aのS極の上側磁石及びN極の下側磁石、83b及び83cは荷電粒子通過領域85を挟んで対向して配置された第2の永久磁石対83aのN極の上側磁石及びS極の下側磁石、84b及び84cは荷電粒子通過領域85を挟んで対向して配置された第3の永久磁石対84aのS極の上側磁石及びN極の下側磁石、82dは第1の永久磁石対82aの上側磁石82bの位置を調整する調整軸、82eは第1の永久磁石対82aの下側磁石82cの位置を調整する調整軸、83dは第2の永久磁石対83aの上側磁石83bの位置を調整する調整軸、83eは第2の永久磁石対83aの下側磁石83cの位置を調整する調整軸、84dは第3の永久磁石対84aの上側磁石84bの位置を調整する調整軸、84eは第3の永久磁石対84aの下側磁石84cの位置を調整する調整軸、86aは第1の永久磁石対82aの上側磁極82b、第2の永久磁石対83aの上側磁石83b及び第3の永久磁石対84aの上側磁石84bをそれぞれが接続する調整軸を介して支持する上側支持台、86bは第1の永久磁石対82aの下側磁極82c、第2の永久磁石対83aの下側磁石83c及び第3の永久磁石対84aの下側磁石84cをそれぞれが接続する調整軸を介して支持する下側支持台である。
【0064】
このように第1から第3の偏向磁場発生手段82〜84を構成した場合、第1及び第3の偏向磁場発生手段82,84は上側方向に磁場を発生し、第2の偏向磁場発生手段83は下側方向に磁場を発生する。第1の偏向磁場発生手段82が発生する磁場の強度は、第1の永久磁石対82aの上側磁石82bと下側磁石82cとの間の距離により変わり、第2の偏向磁場発生手段83が発生する磁場の強度は、第2の永久磁石対83aの上側磁石83bと下側磁石83cとの間の距離により変わり、第3の偏向磁場発生手段84が発生する磁場の強度は、第3の永久磁石対84aの上側磁石84bと下側磁石84cとの間の距離により変わる。
【0065】
また、このように第1から第3の偏向磁場発生手段82〜84を構成した場合、実施の形態1の場合と同様の方法で、第1及び第2の荷電粒子偏向手段に入射する荷電粒子の軌道を調整することができる。
【0066】
以上のように、この実施の形態5によれば、第1及び第2の荷電粒子偏向手段中の第1から第3の偏向磁場発生手段82〜84は、永久磁石対を用いた構成であるので、第1及び第2の荷電粒子偏向手段が簡単な構成となるとともに、第1から第3の偏向磁場発生手段82〜84を駆動するための大きな電源が不要となる効果が得られる。
【0067】
上述した実施の形態5では、第1及び第2の荷電粒子偏向手段中の第1から第3の偏向電磁場発生手段を永久磁石対を用いて構成する場合について説明したが、1個または2個、あるいは4個以上の偏向電磁場発生手段を永久磁石対を用いて構成する場合であっても同様の効果が得られる。
【0068】
また、上述した実施の形態5では、1つの偏向磁場発生手段が1つの永久磁石対を備えている場合について説明したが、例えば放射光装置のアンジュレータのように1つの偏向磁場発生手段が複数の永久磁石対を備えている場合であっても同様の効果が得られる。
【0069】
なお、上述した実施の形態1,2では、荷電粒子偏向手段が3つの偏向電磁石を備える場合と4つの偏向電磁石を備える場合について説明したが、さらに多くの偏向電磁石を備えることにより、より高エネルギーまで加速することが可能となる。
【0070】
【発明の効果】
以上のように、この発明によれば、荷電粒子を発生させる荷電粒子発生手段と、内部を通過する荷電粒子にエネルギーを供給する高周波空洞と、高周波空洞を順方向に通過した荷電粒子が入射しその荷電粒子を偏向して入射時の経路を入射時と反対方向に進行するように出射する第1の荷電粒子偏向手段と、高周波空洞を逆方向に通過した荷電粒子が入射しその荷電粒子を偏向して入射時の経路を入射時と反対方向に進行するように出射する第2の荷電粒子偏向手段とを備え、第1及び第2の荷電粒子偏向手段のいずれか一方または双方は、荷電粒子の入射時の経路の延長上に配置された複数の偏向磁場発生手段を備えて成り、隣接する偏向磁場発生手段の極性が異なるように荷電粒子加速装置を構成したので、荷電粒子を高エネルギーに加速することができ、消費電力の少ない、小型の荷電粒子加速装置を得ることができる効果がある。また、簡単な構成の荷電粒子偏向手段で収束性の高い荷電粒子ビームを得ることができる荷電粒子加速装置が得られる効果がある。
【0072】
この発明によれば、連続して配置された複数の偏向磁場発生手段が、共通のヨークを備えて成るように荷電粒子加速装置を構成したので、第1及び第2の荷電粒子偏向手段が簡単な構成となり、低コストの荷電粒子加速装置を得ることができる効果がある。
【0074】
この発明によれば、第1及び第2の荷電粒子偏向手段のいずれか一方または双方の内部に荷電粒子ビームを収束させる収束磁場発生手段を備えるように荷電粒子加速装置を構成したので、荷電粒子ビームの収束性の高い荷電粒子加速装置を得ることができる効果がある。
【0075】
この発明によれば、偏向磁場発生手段が荷電粒子通過領域を挟んで対向して配置された2つの磁極を備えて成り、収束磁場発生手段が偏向磁場発生手段への荷電粒子の入射側からその反対側に向かって徐々に間隔が広がるように構成された上記2つの磁極を備えて成るように荷電粒子加速装置を構成したので、簡単な構成の収束磁場発生手段で収束性の高い荷電粒子ビームを得ることができる荷電粒子加速装置が得られる効果がある。
【0076】
この発明によれば、1または複数の偏向磁場発生手段が、永久磁石対を備えて成るように荷電粒子加速装置を構成したので、第1及び第2の荷電粒子偏向手段が簡単な構成となるとともに、偏向磁場発生手段を駆動するための大きな電源が不要となり、低コストの荷電粒子加速装置を得ることができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の実施の形態1による荷電粒子加速装置の機器構成を概略的に示す上面図である。
【図2】 図1中の第1の荷電粒子偏向手段の構成を示す斜視図である。
【図3】 高周波空洞を3回通過する前までの電子の軌道を示す図である。
【図4】 高周波空洞を3回通過した後、5回通過する前までの電子の軌道を示す図である。
【図5】 第1の荷電粒子偏向手段側における電子の軌道を示す図である。
【図6】 荷電粒子の収束性が低い場合における荷電粒子の軌道を示す図である。
【図7】 この発明の実施の形態2による荷電粒子加速装置の機器構成を概略的に示す上面図である。
【図8】 この発明の実施の形態3による荷電粒子加速装置に用いる第1及び第2の荷電粒子偏向手段中の第1及び第2の偏向電磁石の構成を示す断面図である。
【図9】 この発明の実施の形態3による荷電粒子加速装置に用いる第1及び第2の荷電粒子偏向手段中の第1から第3の偏向電磁石の構成を示す断面図である。
【図10】 この発明の実施の形態4による荷電粒子加速装置に用いる第1及び第2の荷電粒子偏向手段中の偏向電磁石の上側磁極及び下側磁極の構成を示す断面図である。
【図11】 この発明の実施の形態5による荷電粒子加速装置に用いる第1及び第2の荷電粒子偏向手段中の第1から第3の偏向磁場発生手段の構成を示す断面図である。
【図12】 従来例1の荷電粒子加速装置を示す構成図である。
【図13】 従来例2の荷電粒子加速装置を示す構成図である。
【符号の説明】
10,30 荷電粒子加速装置、11 荷電粒子発生手段、12 高周波空洞、13,31 第1の荷電粒子偏向手段、14,32 第2の荷電粒子偏向手段、21,24,41,45,51 第1の偏向電磁石(偏向磁場発生手段)、22,25,42,46,52 第2の偏向電磁石(偏向磁場発生手段)、23,26,43,47 第3の偏向電磁石(偏向磁場発生手段)、44,48 第4の偏向電磁石(偏向磁場発生手段)、53a,64a 上側鉄ヨーク(ヨーク)、53b,64b 下側鉄ヨーク(ヨーク)、71b 上側磁極(磁極)、71c 下側磁極(磁極)、82 第1の偏向磁場発生手段(偏向磁場発生手段)、83 第2の偏向磁場発生手段(偏向磁場発生手段)、84 第3の偏向磁場発生手段(偏向磁場発生手段)、82a 第1の永久磁石対(永久磁石対)、83a 第2の永久磁石対(永久磁石対)、84a 第3の永久磁石対(永久磁石対)。
Claims (5)
- 荷電粒子を発生させる荷電粒子発生手段と、内部を通過する荷電粒子にエネルギーを供給する高周波空洞と、該高周波空洞を順方向に通過した荷電粒子が入射しその荷電粒子を偏向して入射時の経路を入射時と反対方向に進行するように出射する第1の荷電粒子偏向手段と、上記高周波空洞を逆方向に通過した荷電粒子が入射しその荷電粒子を偏向して入射時の経路を入射時と反対方向に進行するように出射する第2の荷電粒子偏向手段とを備え、前記第1及び第2の荷電粒子偏向手段のいずれか一方または双方は、荷電粒子の入射時の経路の延長上に配置された複数の偏向磁場発生手段を備えて成り、隣接する偏向磁場発生手段の極性が異なることを特徴とする荷電粒子加速装置。
- 連続して配置された複数の偏向磁場発生手段は、共通のヨークを備えて成ることを特徴とする請求項1記載の荷電粒子加速装置。
- 第1及び第2の荷電粒子偏向手段のいずれか一方または双方の内部に荷電粒子ビームを収束させる収束磁場発生手段を備えたことを特徴とする請求項1記載の荷電粒子加速装置。
- 偏向磁場発生手段は荷電粒子通過領域を挟んで対向して配置された2つの磁極を備えて成り、収束磁場発生手段は上記偏向磁場発生手段への荷電粒子の入射側からその反対側に向かって徐々に間隔が広がるように構成された上記2つの磁極を備えて成ることを特徴とする請求項3記載の荷電粒子加速装置。
- 1または複数の偏向磁場発生手段は、永久磁石対を備えて成ることを特徴とする請求項1記載の荷電粒子加速装置。
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