JP4290782B2 - 磁気共鳴イメージング装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、磁気共鳴イメージング、特に共有エコーイメージングシーケンスに関する。
【0002】
【従来の技術】
磁気共鳴イメージング(MRI)法はこれまでに公知であり、かつ文献上にも多く記録されている現象である。被検体内の各々の原子核は、周知のように、互いにランダムな方向を向いている。MRI技術においては、これら原子核のうちの特定の原子核を操作することで、撮影する被検体内から測定可能な磁気共鳴信号を得ている。
【0003】
一般に、MRIにおいて被検体は図5に示すように外側の静磁場磁石によって作られた均一な磁場、すなわち静磁場H0(図1)内に置かれる。静磁場H0は被検体内の全ての原子核(あるいはそのうちの何パーセントか)をH0の方向に整列させる。原子核はその磁気モーメントによりラーモア周波数と呼ばれる特定の周波数で回転する。図1において、各々の原子核は、Z方向に整列して回転する矢印(これは磁気モーメントを示す)としてモデル化されている。
【0004】
系に他の摂動(パーチャベーション)が導入されない場合、静磁場H0の存在によって各々の原子核は互いに整列して回転し続けるが、MRIでは、RF送信コイル(図5)が生成するRFパルスにより、原子核に摂動を起こさせる。このRF送信により原子核は均一な静磁場の方向に対しある特定の角度(通常は90度)だけ傾く(又は章動(ニューテート)する)。RFパルスを印加する以前において原子核は静磁場の方向に回転しているので、このRFパルスにより、図2に示すように原子核が首振り運動する磁場の方向に直交する面(x−y面)に対して原子核は章動することになる。
【0005】
RFパルスが除去されると、歳差運動している原子核は図3に示すように静磁場H0の方向にそろうように徐々に緩和する。原子核は各々、小さな磁石として概念化されるので、原子核が完全に90度ほど章動している場合(図2)、静磁場方向の原子核の磁気ベクトル成分は零である。ここで、原子核は静磁場方向にそろうよう緩和(図3)する。原子核が一列に並んだ位置に完全に戻るまでの時定数はT1であり、静磁場方向の磁化ベクトル成分は緩やかに最大値にまで増加する。また、x−y平面の磁化ベクトル成分は時定数T2で減少する。原子核が90°の位置から整列位置に緩和する際には、これらの磁化ベクトル成分が変化する結果として、原子核はラーモア周波数のRF信号を発生する。緩和中の原子核から発生したRF信号は、RF受信コイルにより受信され、この信号は制御回路及び画像処理回路によって処理される。その処理結果は、図5に示す画像表示装置(VDT: Video Display Tube )によって表示される。
【0006】
撮像される被検体には多くの原子核が含まれていることは勿論であるが、通常は、選択的な分析を行うために、被検体の所定のボリューム(領域)のMR画像信号を分離する。MRIの二次元フーリエ変換法において、被検体内の原子核は、画像ボリューム内の直交三方向の勾配磁場を用いて空間エンコードされる。ここでは、勾配磁場方向を規定するx,y,z軸は、各々、リード(読み出し)方向、位相方向、スライス方向と称する。スライス方向勾配磁場(Gz)は被検体の体軸方向に沿って勾配磁場を与えるものであり、データ取得を行う被検体のスライスを選択するためのものである。一のスライスに対するデータ取得が終了すると他のスライスが選択される。スライス選択は、画像化に必要な全ボリュームが選択され、そして画像化されるまで繰り返される。
【0007】
スライス選択が行われると、当該スライスの領域は、図4に示すように、いわゆる位相方向(y)とリード方向(x)とによって規定される二次元領域として見ることができる。位相方向においては、そのスピン位相によりy軸に沿って原子核を空間エンコードするため、他の勾配磁場コイル(このコイルは可変振幅特性(Gy)を有する)が用いられる。図4に示すように、y軸に沿って各々の原子核スピンは互いに同一周波数を持つが、位相すなわち回転角が異なる。これは90°RFパルス送信後に、y軸方向においてスピンの周波数を一時的に変化させることにより実現される。すなわち、可変振幅勾配磁場によりスピンの周波数を一空間方向に沿って変化させ、そして当該勾配磁場を取り除いた場合、原子核は再び同一のラーモア周波数に戻るが、このとき、異なる空間位相によるエンコードがなされる。次に、特定位相における原子核の信号強度を調べることにより、その特定位相に対応する空間位置の原子核密度を測定できる。
【0008】
同様に、NMR画像信号をRF受信コイルによって読み出すx軸方向の空間的なエンコードが行われるが、これは、いわゆる読み出し方向勾配磁場(Gx)により行われる。この勾配磁場は、x軸方向に沿って原子核の回転周波数を変化させる。このため図4に示すように、x軸の左側の位置の原子核よりも右側の原子核の方が速く回転することになる。したがって、NMR信号を読み出すx軸方向において、スピンの空間差に周波数(速度)を対応付けることができる。以上のような周波数エンコードを行って得たRF信号をフーリエ変換することにより、振幅対周波数の曲線を得ることができる。そして、振幅は原子核密度に対応し、周波数はx軸方向の位置に対応するので、この曲線は原子核密度対x軸方向位置、すなわち、x軸方向空間の原子核の画像を表わす。
【0009】
当業者にとっては明らかであるが、y軸方向の空間位相エンコードは最終画像の解像度ライン数に対応する。すなわち、y軸方向に沿う位相エンコードの数が多くなればなるほど、最終画像が多くの解像度本数を持つことになる。一般に、MRIシステムは64、128、もしくは256本の解像度を有しており、y軸に沿う位相エンコード数はこれに対応している。解像度ライン数を規定するそれぞれのエンコードのために、複数のNMR信号データを取得する必要がある。従来から知られているNMRデータの取得方法の1つに、原子核スピンを180°反転させてNMR信号のエコーを生じさせる方法がある。ある方法では、単一の90°パルスの後に、連続して複数の180°パルスを印加することにより、連続して複数のスピンエコーを生じさせ、これにより複数のNMR信号を取得する。各々の連続180°パルスの間に位相エンコードを変化させることで、単一の90°パルスによって複数本の解像度ラインのデータを得ることができる。多数のスピンエコーを得るため元の90°RFパルスに続いて多重フリップを使用するこの方法は、高速スピンエコーシーケンスと呼ばれている。
【0010】
ここで、有用なデータをもたらす180°パルスの数は、T2により制限されてしまうという問題がある。図3を参照して述べたように、90°パルスに続いて原子核は静磁場H0の方向に揃うように緩和し始める。幾つかのスピンエコー信を得るため、原子核は緩和(T2)において数回(位相エンコード毎に変化して)に亘って反転させられる。しかしながら、複数のT2緩和によってNMR信号のS/Nが低下し、信号を区別できなくなる。このため、新たに90°パルスを印加して再度取得プロセスを開始しなければならない。本発明は単一の90°パルスから得られるスピンエコーの数を限定しないが、後述する実施形態においては、図示の都合により7つのエコーを得る場合を例に挙げて説明している。
【0011】
図6は代表的なNMR二次元フーリエ変換法(NMR2DTF)のシーケンスを示す図である。図6は、図5に示したRF送信コイルからのRF送信パルス(RF)のタイミングを示す。図6はさらに、読み出し、位相及びスライス方向それぞれの勾配磁場パルス(Gx,Gy,Gz)のタイミングを示している。最後に、図6は、図5に示したRF受信コイルによって受信されたNMR信号を示している。
【0012】
RF送信信号は、スライス方向勾配磁場(Gz)によるスライス選択と同時に、90°パルスから始まる。結果として、スライス内の原子核は図2に示したように90°ほど章動(ニューテート)されるが、隣接スライスの原子核は静磁場H0方向に揃ったままである。選択された原子核は即座に、図3を参照して説明したように静磁場H0の方向に揃うように緩和し始める。そして、最初の180°RFパルスが印加され、続いて解像度の1本目(k=+1)の位相エンコードパルスが位相エンコード勾配磁場Gyにより印加される。ここまでのシーケンス動作の結果として、所定のスライスが選択されるとともに当該スライス内における1本の解像度ラインが選択される。特定時間が経過した後に、第1のスピンエコー(NMR)が生じ、この間に、リード方向勾配磁場Gxが周波数エンコードのために印加される。
【0013】
選択励起された原子核は、信号読み出しの後に、大きさが等しく向きが相反する位相勾配磁場(この場合k=−1)によってリフェーズされる。この位相勾配磁場は、読み出しパルスに続き、次の180°RFパルス以前に印加される。
【0014】
NMR信号は、あるスライスにつき、全てのNMRデータの取得が終了するまで画像処理回路(図5)にストアされる。一のスライスのためのデータが得られると、そのスライスに関する各々のNMR信号は二次元アレイ内の所定のデータ位置にプロットされる。これを二次元フーリエ変換すると、スライス平面の各画素位置における原子核密度を表す画像を得ることが可能となる。
【0015】
あるスライスに関する残りのNMR信号は、図6に示すようにして得る。すなわち、第1のNMR信号を受信し、原子核をリフェーズし、そして次の新たな位相エンコード用勾配磁場パルスを印加する。図6の例では、各90°パルスにおいて、7つのNMR信号を得ている。256本の解像度をカバーするには、約36回のスキャン(90°パルス)を行う必要がある(36スキャン×7NMR信号/スキャン=252本の解像度)。全スキャンを行ってもk空間が満たされない場合は、追加のスキャン(すなわち37番目のスキャン)を行うか、欠損しているスキャン線に零充填信号を満たすようにしても良い。
【0016】
図6の例では、第1の90°パルスに続く第2の180°パルスの印加直後に、kを+19として位相方向勾配磁場Gyによる位相エンコードが行われる。次に、読み出し勾配磁場Gxが印加され、第2スピンエコー(NMR)が得られる。そして、kが−19であって、大きさが等しく向きが相反するGyによりリフェーズが行われる。
【0017】
そして第3の180°パルスの後に、kを+37とする位相エンコード勾配磁場が印加され、第3のNMRスピンエコーが得られ、その後、kを−37とするGyによりリフェーズが行われる。
【0018】
以上のような動作を、各々位相エンコードがなされた7つのスピンエコーが得られるまで繰り返す。
【0019】
図6において、7つのエコーは、各々、k=+1、+19、+37、+55、+73、+91、+109の位相エンコード後の信号として得られる。7つ目のスピンエコーの取得が完了した状態において、静磁場H0方向に整列するという原子核の緩和によりNMR信号の信号強度は減衰しているので、7つ目のNMRスピンエコーが得られた後の所定時間の後に、次の90°パルスを印加して再度、同一スライスを選択励起する。
【0020】
第2の90°パルスの後に、当該選択スライスに係るNMRデータの取得が継続して行われる。例えば図6では、k=+2、k=+20、k=+38、k=+56、k=+74、k=+92、k=+110とする位相エンコードデータが取得される。また、各エコー信号が得られた後に、大きさが等しく向きが相反する位相補正信号(それぞれ、k=−2、−20、−38、−56、−74、−92、−11)を印加することで位相角の合計を零にする。この例における第2のスキャンでは、k空間において、第1スキャンの各々の位相エンコードデータに対し1ほどシフトした位置のエンコードデータを取得している。36回に亘るスキャン時以降のシフト量を(k=+18、+36、+54、+72、+90、+108、+126の位相エンコードに続く)18番目のスキャン以降において変化させることで、k空間内における重複を避けるようにする。そして、19番目のスキャンは、負のk空間をカバーするように、k空間において第1スキャンから減少方向へのスキャンとする。言い換えれば、19番目のスキャンによるNMR信号はk=−0、−18、−36、−54、−72、−90及び−108の位相エンコードによって得る。なお、各々のNMR信号受信に続いてk=+0、+18、+36、+54、+72、+90及び+108の大きさが等しく方向が反対の位相補正信号の印加が行われる。勿論、各スライスについてk空間全体(図6のk=−128からk=128)に及ぶ反復スキャンであれば、+1あるいは−1の増分は不要であり、これを実現する他のk空間スキャンシーケンスを同等に用いても良い。
【0021】
第2スキャンの位相エンコードに続いて7つのNMR信号を読み出した後、NMR信号は再び許容レベル以下に減衰し、新たな90°パルスが印加される。図6には示されていないが、この処理は、各スキャンラインのための位相エンコードk空間を増やして256本のスキャンラインデータを得るために、少なくとも36回以上のスキャンを継続して行うという処理になる。この例では、256本の解像度ラインを完成させるために必要となるデータの少数の追加のスキャンラインとして、37番目のスキャンラインを使用できる。すなわち、追加のスキャンラインが上述のように、零k空間データから得られる。
【0022】
図7は、図6に示すスキャンニングシーケンスを簡略化したものである。90°パルス1つ当たり7つの180°パルスは、7つのスピンエコーをもたらす。これらのエコー(図6と同様のもの)は、図7において丸数字によって示されている。k空間位相エンコード内の256本の解像度ラインは左のk=−128から右のk=+127の水平軸上にある。TEは、90°章動に続く180°章動の周期(エコー間隔)のことである。すなわち、7つの180°パルスが、図7の1TEから7TEに対応する特定周期によって図6に示すように発生する。
【0023】
図7(及び上述した図6)に示すように、位相エンコードのシーケンスは、次のようなものである。すなわち、36回のスキャンによる第1の180°パルス(36個の90°パルスの直後)の組に続くNMR信号は、およそk=−17からk=+18までの位相エンコード位置に対応する。36回の90°パルスに続く第2の180°パルスの組からのNMR信号はおよそk=−35からk=−18と、k=+19からk=+36に至る位置を満たすことになる。同様に、36個の90°パルスに続く第3の180°パルスの組からのNMR信号は、およそk=−53からk=−36と、k=+37からk=+54に至る位置を満たし、36回の全スキャンに対する180°パルスの7つの組全てについても同様である。
【0024】
図7は36回のスキャンに続く7つのエコーが如何にk空間を完全に満たしていないかをも示す。36個の90°パルスに続く180°パルスの7番目の組からのNMR信号は位置k=−125とk=+126の外側を満たす。勿論、図6の実施例では、k空間全体はk=−128とk=+127に伸びる。それゆえ、k空間の負と正の端はそれぞれ、3つと1つの未充填解像度ラインを残している。これらは別のスキャンを行って補充されるか、または零の充填信号を用いて欠けたスキャンラインを補充する。
【0025】
図7では、第1のエコー(90°パルスの直後の組)はT2減衰周期において最も初期に与えられる。図7では、これらの第1のエコーがk=−17からk=+18位置、すなわちk空間の中心を占め、低空間周波数データに対応する。従って、見かけ上のコントラストを左右する。同じく、図5、図6、図7では、最後のエコー(7番目のエコー)はT2減衰周期により信号強度が最も弱く、高空間周波数データに寄与する。結果として、図7の信号は、ローパス(空間周波数)フィルタを適用したかのように振る舞う。
【0026】
これらの信号は必ずしも図6、図7の方法で得る必要はない。図8は、最後のエコーがk空間の中心に寄与し、最初のエコーがk空間の両端に寄与するデータ取得シーケンスを示す。その結果は、ハイパス(空間周波数)フィルタを適用したかのように信号が振る舞うことになる。
【0027】
図9と図10は、最初と最後のエコー(すなわち高及び低信号強度の信号)をバランス良く高エンコードに分配するという変形例を示す。図9では、高信号エンコードはk空間の負の半分のところにあり、図10では、高信号エンコードはk空間の正の半分のところにある。
【0028】
k空間全体のデータを得るのに要する取得時間は、ハーフフーリエ画像診断(Half Fourier imaging)を用いると、半分近くを減らすことは以前に発見されていた。ハーフフーリエの概念はAvramらの「Conjugation and Hybrid MR Imaging,Radiology189:891(1993)」、Feinbergによる米国特許第4,728,893号の「Increased Signal-to-Noise in MRI Using Synthesized Conjugate Symmetric Data(1988) 」に記述されている。両文献とも本発明の詳細な説明中において参考文献として引用される。
【0029】
図11及び図12は、ハーフフーリエ画像診断の動作を示す図である。図11において、例えば、k空間全体のデータは各90°パルスから4つのエコーのみを用いて取得される。この4つのエコーは丸数字によって示されており、k空間の負の半分の位相エンコードに寄与する。零k空間位置と、正のk空間位置にあるエコー番号4の半分もまたスキャン中に得られる。
【0030】
図11では、高エンコード高信号が(負の)k空間位置を提供し、最後のエコー番号4が中心k空間位置を提供する。負及び正のk空間にあるフーリエ変換対には複素対称性があるので、正のk空間の欠落データは、負のk空間に十分にある3つの信号の共役対称性により得るようにする。つまり、NMR画像を構成するのに用いられるデータの約半分のみを集める必要があることになる。このことは、図11に示すようにデータ取得時間を約半分に減らすことになり、4つのTE周期のみが図8の7つの周期に比較されたNMR画像を完成させるのに必要となる。一方、より多くのスライスを得るためにデータ収集可能時間を利用しても良く、あるいは、画像の解像度を改良すべくより多くのエコーを得ても良い。
【0031】
図11では、共役対称性により得られる欠落データは正のk空間の一点鎖線として示され、実際の取得データは丸数字付きの実線で示される。図11は、ハイパスフィルタとして機能するので図8に対応するが、データ取得時間を削減できるという観点から見て図8を改善したものである。
【0032】
図12は、図7で述べたシーケンスのように、ローパスフィルタとして振る舞う点を除くと図11と同じである。なお、図12のシーケンスについても、図7との比較によると、複素共役により取得時間を削減できる。
【0033】
図6乃至図12を参照して説明した高速スピンエコー技術全体に共通して言えることは、k空間の異なる構成成分は、異なるT2量により変調されたデータによってエンコードされるということである。言い換えると、T2応答は画像の高及び低空間周波数特性で異なるということである。T2効果は高速スピンエコー技術に固有のものであり、従って、k空間の空間エンコードは、たとえ、補正が可能であっても、同様に固有のものと見なす必要がある(例、Chenによる米国特許第5,517,122号、「T2 Restoration and Noise Suppression of Hybrid MR Images using Wiener and Linear Prediction Techniques,(1996) 」)。
【0034】
ところで、Lenzによる「低磁場強度に最適なデュアルコントラストターボSEシーケンス」(1994年)など、共有エコー技術を用いて多重画像を得る方法が知られている。しかしながら、複素共役を完全にする共有エコー技術の使用はこれまでに実現されなかった。例えば、Lenzはこのような手法から離れて考え、陽子密度強調画像とT2強調画像がどのように共有エコー技術によって得られるかを述べている。Lenzは、共有エコー技術を用いてさえも、陽子密度加重画像のk空間区分全体が得られるのは、T2加重画像の中央k空間区分を適当な範囲で有効なTE周期を保つように試した後であると述べている。このような理由から、Lenzのものは2つの分離RF送信コイルループを必要とすることは明らかである。しかし、この2つのループの動作と正確な理由はLenzの説明からは明らかでない。
【0035】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、データ取得が最小で済み、しかも、各々のコントラストが異なることで読影者に種々の情報を与える2つの有用な画像を単位スキャン当たりで得る高速スピンエコー法を行う磁気共鳴イメージング装置を提供することを目的とする。
【0036】
より具体的には、本発明は、2つの異なるNMR高速スピンエコーシーケンス法、すなわち、データ取得時間を低減するハーフフーリエ変換法と、多重画像を得るための共有エコー法とを組合わせた磁気共鳴イメージング装置を提供することを目的とする。
【0037】
【課題を解決するための手段】
本発明の磁気共鳴イメージング装置は、共有エコー法とハーフフーリエ変換法とが組合わされた高速スピンエコーMRIシーケンスを実行する手段を具備することを特徴とする。
【0038】
このような本発明の磁気共鳴イメージング装置によれば、全画像データを取得するための単一のRF送信コイルループに、中間時間節約の利点を与えることができる。
【0039】
また、高解像度画像への変換を行うこの組み合わせは、より多くの対称点拡大機能の協同効果を持つ。
【0040】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。
共有エコーを持つハーフフーリエ変換複素共役を含むように図6のシーケンスを修正することによって、本発明の一実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置は、一回のスキャンから多重種のコントラスト画像を得るように構成されている。さらに、本実施形態の装置は、短時間で唯一の単一伝送ループを用いてスキャン行う。本実施形態においては、図6に示した位相勾配信号(Gy)は図13に示すような位相勾配磁場信号に置き換わる。ハーフフーリエ変換が使用されるので、図13のシーケンスに対応するk空間に画像を完成させるためには最初の4つのスピンエコーのみが必要になる。しかし、共有エコーが使用されるので、5番目のエコーが図13のシーケンスに加えられる。これを図6のシーケンスにおいて必要とされる7つのエコーと比較すると、本実施形態の装置は、エコー列におけるエコー読み出しの削減により、中間時間節約の効果を実現する。
【0041】
上記の置き換えを図13のシーケンスから図6にシーケンスに適用しても、図6のシーケンスはそのままである。簡単のために、Gy及びNMR信号のみが図13に示されているが、MRI技術の当業者にとって、図6に示すRF、Gx、Gz信号が図13の2DTF高速スピンエコーシーケンスにとって必要であることは明らかである。図13では、位相勾配は1及び5番目のエコーレベルの信号に対して同じk空間位置にある。また、大きさが等しく方向が正反対の位相エンコード信号が、前の位相エンコードとの合計を零にするために、各NMR信号の後であって、且つ次の位相エンコードシーケンス前に印加される。本実施形態では、第1の90°パルスに続く最初の5つのエコーの位相勾配は、k=+17、−19、−55、−91及び+17にそれぞれ対応し、その後で、次の180°パルスの前に原子核をリフェーズするように大きさが等しく方向が正反対の位相勾配が印加される。次のエコーの組(第2の90°パルスに続く)はそれぞれk=+16、−20、−56、−92及び+16に対応するように−1だけシフトする。同じく、第3のエコーの組(第3の90°パルスに続く)は、k=+15、−21、−57、−93及び+15それぞれに対応するように再び−1だけシフトする。これは、k空間のk=−126からk=+17に対応するデータが取得されるまで、複数の90°パルス及びそれに続くシーケンスにおいて繰り返される。
【0042】
本発明は、多重位相勾配パルスの2つが同一のk空間位置に対応し、異なるTE周期で得られるように、各90°パルスに続く各スピンエコーに対し位相勾配が調整される点において特徴づけられた高速スピンエコーシーケンスを備える。この関係は図14に示されており、これは図13のシーケンスを概念的に表す物である。
【0043】
説明の簡単のために、第1の180°パルスシーケンスの直後の全エコー(1TE)の組を“第1レベル”エコーと呼ぶ。第1レベルエコーを位相エンコードする位相勾配パルスの組は第1レベル位相勾配パルスと呼ぶ。同じく、第2の180°パルスに続くエコーの組は第2レベルエコーと呼ぶ。この用語は第3レベル、第4レベル、第5レベルという具合に、90°パルス1つ当たりのエコー数に対応して使用される。
【0044】
従って、フレーム当たり36個の90°パルスがで使用され、90°パルス1つ当たりで5つのエコーが取得されるとすると、第1レベル位相勾配パルスは、位相方向k空間の36個の異なる位置に対応する36個の異なる信号(1TEで生じる)を持つことになる。第2レベル位相勾配パルスの組は、位相方向k空間の36個の別の異なる位置に対応する36個の異なる(2TEで生じる)信号を持つことになり、以下同様である。
【0045】
図14では、例えば、位相エンコードk空間は第1から第5レベルの位相勾配パルスによりk=+17からk=−126まで満たされる。図14は図13に用いる位相エンコード勾配パルス(Gy)のk空間分布を示す。例えば、第1の180°パルス(第1の90°パルスに続く)の後に、第1のGyパルスは振幅がk=+17に対応し、第1のTE周期で発生する。これは、第1レベル位相勾配パルスの組に対応して、丸で囲んだ“1”の印しを付けた水平線の最右側の第1データ点として図14に取り込まれる。リフェーズ後に、さらに第2の180°パルス(第1の90°パルスに続く)後に、第2のGyパルスは振幅がk=−19に対応し、第2のTE周期で発生する。これは、第2レベル位相勾配パルスの組に対応して、丸で囲んだ“2”の印しを付けた水平線の最右側の第1データ点として図14に取り込まれる。5つのエコー(と5つの位相勾配エンコード信号)は図13の例の90°パルス1つ当たりに対して用いられるので、図14はk空間の位相勾配エンコード信号の5つのレベルを示す。
【0046】
5つのエコー信号が第1の90°パルスに対して得られた後に、原子核は所定時間の間、緩和することができる。そして、第2の90°パルスが与えられ(図13参照)、さらに5つのエコー(さらなる5つの位相勾配エンコード信号による)が得られる。第2の90°パルスに続く5つのエコーは、第1から第5レベルの位相勾配パルスを識別する図14の水平線上の最右側から2番目の位置に入る。
【0047】
第1レベル位相勾配パルス(時刻TEで得られる)はk=+17からk=−18までのk空間を満たす。第2パルス(時刻2TEで得られる)はk=−19からk=−54までを満たす。第3パルス(時刻3TEで得られる)はk=−55からk=−90を満たす。第4パルス(時刻4TEで得られる)はk=−91からk=−126までを満たす。最後に、第5パルス(時刻5TEで得られる)は第1レベル位相勾配パルスと同一のk空間を満たす。その後、k=+18からk=+125のk空間は複素共役によって満たされる。初めに述べたように、k=−127からk=−128までとk=−126からk=+127までのk空間は別のスキャンにより、または零充填データ(zero fill data)により満たされる。
【0048】
勿論、k空間位置は必ずしも特定の順序(90°パルス間で例えば1だけ増減する)で充填される必要はないが、十分なスキャンの組や十分な位相勾配パルスの組がk空間を満たすならば、好適な順序に従って、あるいはランダムに充填されても良い。
【0049】
図14に示される本発明の特徴は、少なくとも2つのレベルによる位相勾配の重複である。図14では、位相勾配パルスレベル1番目と5番目とがk=−18からk=+17までのk空間において重複する。これは、最高の信号強度を有するNMR信号をエンコードする位相勾配パルスは、最も弱い信号強度(つまり5番目のレベルパルス)を有するNMR信号をエンコードする位相勾配パルスと同じk空間を占めることを意味する。これは、5番目のレベル位相勾配パルスが、90°パルスからの時間(5TE対1TE)だけ遅れて発生し、第1のレベル位相勾配パルスによりエンコードされた信号よりも相対信号にわずかにしか寄与しない信号をエンコードするからである。言い換えれば、5番目のエコーは1番目のエコーよりもよりT2コントラストを生じさせる。
【0050】
本発明では、非重複位相勾配レベルは“共有エコー”と呼ばれる。エコー共有による主な利点は、エコー列の長さを有効に削減できることにある。つまり、共有エコーにより、全k空間は、例えば7つのエコーと言うよりもむしろ5つのエコーからのデータによって充填される。これらの共有エコーを用いることで大きな利点が得られる。なぜなら、これらの共有エコー(種々の重複位相勾配レベルと一緒に)は同じデータセットから得られた2つのコントラストの異なる画像の基礎を形成できるからである。
【0051】
さらに、ハーフフーリエ変換の複素共役を用いて、2つのコントラストの異なる画像は全データ取得シーケンスよりも少ない時間で、さらに唯一の伝送コイルを使って得ることができる。この時間短縮により、同一時間で取得されるスライス数を増やすことも可能である。
【0052】
図15は、図14のデータセットから得られた2つの画像を示す。図15では、第1画像は、レベル一のエコー応答を零k空間位置上に集中させ、その後で、第2、第3、第3レベル位相エンコードから得られたNMRデータの複素共役を使って正のk空間(k=+18から+127までの)内を充填することによって得られる。図15では、複素共役が一点鎖線で示され、レベル二からレベル四までの取得データ(実線で示される)の複素共役に対応する。この第1の画像シーケンスは、第1レベル位相勾配パルス(すなわち、最高強度のNMR信号に寄与するもの)がk空間の中央近くに置かれるから、ローパスフィルタのように振る舞う。その後、これによりシーケンスのローパスフィルタの挙動に対応する特定のコントラスト画像ができる。
【0053】
図15に示される第2画像では、レベル五のエコー応答は零k空間位置に集中され、画像はレベル二からレベル四までのエコーを共有する。レベル二からレベル四までの取得データに基づいて再び複素共役がk=+18からk=+127のデータに充填される。合成された第2画像は図15の第1画像と同じ撮影面であるが、コントラストが異なる。つまり、図15の第2画像は本来のローパスフィルタ挙動を示していない。その理由は、強度が最低の信号に寄与する位相エンコードがk空間の中心を占めるからである。
【0054】
図15の2つの画像は多様な用途を持つ。これらの画像は訓練された技術者により用いられ、異なるコントラストによって画像の複数の態様を明瞭化できる。前記2つの画像はコンピュータ処理により結合されてコントラストの改善された1つの画像にもなる。
【0055】
本発明は、共有エコーと複素共役データ取得を必要とするが、いかなる特定数のエコー、いかなる特定のk空間解像度、k空間内の信号のいかなる順序付け、取得データから得るいかなる画像数にも限定されるものではなく、また、取得データを得るいかなる特定のシーケンスにも限定されるものでもない。2つの重複エコーも零k空間位置を占める(それは好ましい配置ではあるが)必要はないが、いかなるk空間位置においても重ねることができる。少なくとも2つの非共有エコーが異なるTE周期で同じk空間位置を占め、残りのエコー内の1つが画像間で共有されるならば、共有エコーの数は制限されない。従って、多重画像は唯1つの共有エコー、2つの共有エコー、3つの共有エコーを持ち得る。5つの取得エコーセットから形成される場合、6つのエコーセットが取得されると、1乃至4つのエコーが共有エコーとして多重画像の形成に用いられる。自明のように、各90°パルスに続いて記録されたスピンエコーの任意数“n”を用いると、本発明を用いて多重画像を発展させる際に1つの共有エコーからn−2共有エコーまでを用いることができる。
【0056】
図16乃至図18はデータ取得シーケンスの変形例を示す図である。かかる変形例において、図16はタイミングシーケンスを示し、図17は位相エンコード勾配k空間分布を示し、図18は複素共役及び共有エコー画像診断によって得られる2つの画像を示す。
【0057】
図16には、完全高速スピンエコーシーケンスの一部が示されている。当業者にとっては明らかであるが、図16に示すシーケンスはRF、読み出し勾配、図6に示すものに類似したスライス勾配信号を伴う。位相勾配信号は、第1レベル及び第5レベル位相勾配パルスがk空間の同じ部分にあるという点で図13乃至図15に示したシーケンスに類似する。図16乃至図18のシーケンスは、第3及び第4レベルに対する位相勾配がk空間で置き換えられるという点で図13乃至図15のものと異なる。すなわち、図16乃至図18のシーケンスでは、第3レベル位相勾配がk=−91からk=−126位置(これに対し図13乃至図15はk=−55からk=−90位置)を占め、第4レベル位相勾配がk=−55からk=−90位置(これに対し図13乃至図15はk=−91からk=−126位置)を占める。
【0058】
k空間における第3及び第4レベル位相勾配のこの種の置き換えは図17に示されており、一旦、ハーフフーリエ変換複素共役がk空間に満たされると、図18の画像によって示すように、隣接エンコード領域間にある信号強度の不連続点が少なくなる。信号強度のこの不連続点は2つの原因を持つ。すなわち、1)T2減衰と、2)渦電流応答である。図18では、第1画像は、第1レベル位相エンコード勾配をk空間中心に集め、取得レベル二から四のデータを負のk空間に配置し、最後にその複素共役を正のk空間に満たすことによって得られる。図18の第2画像では、共有レベル二から四のエコーが再び、負と正のk空間を満たすが、この時、5番目のエコーセットを中心として配置される。
【0059】
上記の開示内容により、共有エコー技術と複素共役技術との組み合わせた他の多くのシーケンスの変形例が、MRI技術の当業者にとって明らかとなる。
【0060】
ある実施形態では、ハーフフーリエ変換複素共役を必要としないものもある。図19では、例えば、2つの画像はk空間位相エンコード全体に亘って取得されたデータに関する共有エコー技術により得られる。このデータは各90°パルスに続く7つのエコーを用いる完全高速スピンエコーによって取得される。第1レベルエコーセットは、図19に示すように、k空間の中央に位相エンコードされる。次の5つの(レベル6までの)エコーセットは正と負のk空間の対応する位置で位相エンコードされて図19に示すようにローパスフィルタの様に振る舞う。そして、7番目のエコーセット(最も低い信号強度を有する)はk空間の中央に位相エンコードされる。従って、この7番目のエコーセットはk空間の第1エコーセットと重複するが、時間的には第1エコーセットよりも遅く発生する。
【0061】
そして、第1画像は、エコーレベル一から六を用い、全k空間位相エンコードによって生成される。また、第2画像は、エコーレベル2から7を用い、全k空間エンコードによって生成される。第2画像においては、7番目のエコーセットはk空間の中央に変換され、第1のエコーセットが画像処理から除外される。
【0062】
図19に示すシーケンスは、複素共役により実現される時間節約の利点がなく、結果として、必要なスライスの数を増やすことになるので、好ましくない。しかしながら、このシーケンスは同じ撮像面で異なるコントラストを有する多重画像を得ることができるという利点がある。
【0063】
図20のシーケンスは、長時間の位相エンコードのシーケンスを変えて隣接エンコード領域間の信号不連続点をより均一に平衡にするという点を除いて、図19のシーケンスと類似する。
【0064】
他の観点から見ると、上述した本発明の実施形態に係る幾つかのシーケンスは、2つのエコーが同じk空間を共有する場合に生じるある特定の位相エラーの補正を含んでいる。この点に関して図21と図22を参照して以下に述べる。
【0065】
図21では、エコー列が90°パルス当たり4つのNMR信号を含んでいる。これにより90°パルス1つ当たり4つのNMR信号は、k空間内において、大きさが等しく反対方向の位相エンコード信号の、各々、対応する4つの対によって挟み込まれる。図21には、図22に示する2つの異なる画像データセット20と21を得るための、共有されるエコー2と3、及びk空間の中央で重複するエコー1と4とともにk空間が示されている。つまり、第1画像データセット20は、エコーレベル1、負のk空間を満たすために現れるエコーレベル2と3及びエコーレベル2と3の複素共役によって得られる。第2画像複素データセット21は同じデータシーケンスから得られる。このシーケンスでは、エコーレベル4が現在、k空間の中央を占め、エコーレベル2と3が複素共役により正と負のk空間に共有される。
【0066】
ここで、エコーレベル1と4とが同じk空間を占める場合に、(レベル2、3、4からの)第2画像に、エコーレベル1からの信号とエコーレベル4からの信号との間の位相差に起因するアーチファクトを生じるという問題がある。すなわち、k空間の同じ領域を占める2つの信号は異なる位相を持ち、最終画像にアーチファクトをもたらす。
【0067】
これらの位相エラーアーチファクトは図22に示すステップによって改善される。先ず、信号レベル1のデータ(A(Kx,Ky))はステップ22でa(x,y)にフーリエ変換される。ステップ23では、タイムドメイン信号B(Kx,Ky)をフーリエ変換することによってフーリエ変換プロセスドメイン信号b(x,y)を得る。同様の演算が信号レベル4についても行われる。信号レベル1と4とはそれぞれ、a振幅・a位相とb振幅・b位相の振幅と位相を持つ。次にステップ26に示すように、信号レベル4の位相を信号レベル1の位相で置き換える。これによりエコーレベル4の振幅を保持したまま共有エコー画像診断法を用いて所望の信号コントラストを得ることができる。その結果として、ステップ27においてb振幅・a位相を持つレベル4の信号が得られる。従って、画像データ20と画像データ21の両方に対するk空間の中央の信号レベルの位相は信号レベル1と同じ(a位相)になる。レベル4に対するプロセスドメイン信号、b振幅・a位相は逆フーリエ変換によってタイムドメイン(k空間)に戻される。このステップは、共有信号レベル2と3とが依然としてタイムドメイン内にあり、それゆえ、号レベル4をタイムドメインに戻す必要があるために実行される。これにより、全k空間のデータ(B(Kx、Ky))を得るべく信号レベル4が信号レベル2と3に統合される。
【0068】
その結果として、2つの画像データセット、28(データセット20に同じ)及び29(但し、レベル4信号における位相補正を除くデータセット21に同じ)が得られる。信号レベル2、3、4(含位相補正)で構成された第2画像(参照数字29)は、信号レベル4の位相が信号レベル1の位相に置き換えられるため、信号レベル4の位相非整合に起因するアーチファクトを生じない。一方、信号レベル4の振幅と信号レベル1の振幅との差によるコントラストを保つことができ、2つのコントラストの異なる画像のデータを得ることができる。
【0069】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されず種々変形して実施可能である。
【0070】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、データ取得が最小で済み、しかも、各々のコントラストが異なることで読影者に種々の情報を与える2つの有用な画像を単位スキャン当たりで得る高速スピンエコー法を行う磁気共鳴イメージング装置を提供できる。また、2つの異なるNMR高速スピンエコーシーケンス法、すなわち、データ取得時間を低減するハーフフーリエ変換法と、多重画像を得るための共有エコー法とを組合わせた磁気共鳴イメージング装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】静磁場の方向に整列した原子核の直交描写を示す図。
【図2】90°ほど章動した図1の原子核の直交描写を示す図。
【図3】z軸の回りを首振り運動する図2の原子核の直交描写を示す図。
【図4】画像スライス内部の周波数及び位相エンコードをグラフィカルに示す図。
【図5】MRIシステムの概略構成を示すブロック図。
【図6】従来例に係る高速スピンエコーMRIのシーケンスを示す図。
【図7】図6のMRIシーケンスを示す他の図。
【図8】従来例に係る他の高速スピンエコーMRIシーケンスを示す図。
【図9】従来例に係るさらに他の高速スピンエコーMRIシーケンスを示す図。
【図10】従来例に係るさらに他の高速スピンエコーMRIシーケンスを示す図。
【図11】従来例に係り、ハーフフーリエ変換による他の高速スピンエコーMRIシーケンスを示す図。
【図12】従来例に係り、ハーフフーリエ変換によるさらに他の高速スピンエコーMRIシーケンスを示す図。
【図13】本発明による高速スピンエコーMRIのシーケンスを示す図。
【図14】図13のシーケンスを示す他の図。
【図15】図13のシーケンスから得られた2つの画像シーケンスを示す他の図。
【図16】本発明による他の高速スピンエコーMRIシーケンスを示す図。
【図17】図16のシーケンスを示す他の図。
【図18】図16のシーケンスから得られた2つの画像シーケンスを示す他の図。
【図19】本発明の2つの追加変形例に係る高速スピンエコーMRIシーケンスを示す図。
【図20】本発明の2つの追加変形例に係る高速スピンエコーMRIシーケンスを示す図。
【図21】本発明の変形例において用いられる、位相エラー補正法を示す図。
【図22】本発明の変形例において用いられる、位相エラー補正法を示す図。
Claims (11)
- ハーフフーリエイメージング複素共役法と共有エコー画像診断法とが組み合わされて利用されるNMRデータを提供する高速スピンエコー(FSE)MRIデータ取得シーケンスを実行するようにプログラムされたシーケンスコントローラおよび画像処理装置を含む磁気共鳴イメージング装置であって、前記プログラムされたシステムは、
共有の先行RF励起パルスの後に続く複数の180°RFフリップパルスそれぞれの後にT2減衰で連続的に発生する複数のスピンエコーからFSE NMRデータを取得する手段と、
共有のT2減衰間隔内で同一位相エンコードを有するNMRスピンエコーデータを取得する前記180°RFフリップパルスの一定の単一角度の後に発生する前記スピンエコーのうちの少なくとも2つを同一に位相エンコードする手段と、
(a)T2減衰の第1レベルで前記同一の位相エンコードを有するNMRスピンエコーデータを用いて第1のハーフフーリエイメージング(HFI)完成データセット及び(b)T2減衰の前記第1レベルと異なる、T2減衰の第2レベルで前記同一の位相エンコードを有する第2のハーフフーリエイメージング(HFI)完成データセットを形成することによってそれぞれ異なるT2コントラストを有する少なくとも2つの画像データセットを生成するための手段と、
異なるT2減衰間隔でNMRデータの同一位相エンコードを生成するために追加のRF励起パルスを必要とせずに複数のT2コントラスト画像を達成する前記データセット毎に画像を生成するための手段と、を備え、
前記取得する手段および位相エンコードする手段は、ハーフフーリエイメージング(HFI)を利用するその後の画像再構成処理の完了で位相エンコードされたNMRデータの完全セット未満を取得し、NMRデータの完全セットの残りを供給する磁気共鳴イメージング装置。 - 同一位相エンコードを有するが、第2のT2減衰間隔で取得された同一位相エンコードデータの第2セットのRF位相を第1のT2減衰間隔で取得された同一位相エンコードデータの第1セットのRF位相と置換することによって、所定の単一180°RFフリップパルス後に異なるT2減衰間隔で取得されるNMRデータのRF位相を補正するための手段をさらに備える請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置。
- 前記シーケンスコントローラは、勾配磁場コイルを以下(a)乃至(g)の動作、すなわち、
(a)選択原子核を第1の角度に章動させ、
(b)前記選択原子核を第2の角度に章動させ、
(c)前記第2の角度に章動した原子核を第1の値により空間位相エンコードし、
(d)スピンエコーNMR信号を得、
(e)前記(c)における前記位相エンコードをキャンセルし、
(f)予め定められたエコー数の回数だけ位相エンコード量を変えながら前記(b)から(e)の動作(ただし、前記エコー数の内の少なくとも2つは実質的に同一の位相エンコード量を持つ)を繰り返し、
(g)前記ハーフフーリエ変換複素共役性に基づいて第1のMRI画像を完成させるのに必要なスキャン回数だけ、前記(a)から(f)までの動作を繰り返す、という動作に切り替える請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置。 - 前記画像処理装置は、前記共有エコー画像診断シーケンスに組み合わされたハーフフーリエ変換複素共役性に基づき前記MRIデータから第2のMRI画像を生成する請求項3に記載の磁気共鳴イメージング装置。
- 前記画像処理装置が生成した第1、第2のMRI画像は、両者の相対T2コントラストを除いては実質的に同じ画像であることを特徴とする請求項4に記載の磁気共鳴イメージング装置。
- 前記共有エコー画像診断シーケンスは、少なくとも1組の共有エコー信号と、少なくとも2組の重複エコー信号とを収集し、
前記画像処理装置は、
(1)少なくとも1組の前記重複エコー信号と少なくとも1組の共有エコー信号から、2つのMRI画像の一方を生成し、
(2)前記重複エコー信号の他の組と少なくとも1組の前記共有エコー信号から、前記2つのMRI画像の他方を生成することを特徴とする請求項4に記載の磁気共鳴イメージング装置。 - 前記RF位相を補正するための手段は、
(a)前記重複エコー信号の一方の組のフーリエ変換を得て、その第1の振幅及び位相成分を得る手段と、
(b)前記重複エコー信号の他の組のフーリエ変換を得て、その第2の振幅及び位相成分を得る手段と、
(c)前記第2の位相成分を第1の位相成分で置換する手段と、
(d)前記第2の振幅成分及び第1の位相成分を逆フーリエ変換し、位相の補正がなされた重複エコー信号の他の組とする手段によって構成され、
前記画像処理装置は、前記位相補正がなされた重複エコー信号の他方と共有エコー信号の少なくとも1組から、前記第2のMRI画像を生成することを特徴とする請求項2に記載の磁気共鳴イメージング装置。 - (1)静磁場を発生する手段と、
(2)撮像被検体から所定のスライスを空間的に選択するためのスライス選択勾配磁場を発生する手段と、
(3)第1フリップ角度のRF章動パルスを送信する手段と、
(4)特定振幅によって原子核を空間的にエンコードするための位相エンコード勾配磁場を発生する手段と、
(5)スピンエコー応答を得るために第2フリップ角度の第2のRF章動パルスを送信する手段と、
(6)スライスの他の方向に原子核を空間的にエンコードするための周波数エンコード勾配磁場を発生する手段と、
(7)前記周波数エンコード勾配磁場が印加される間に、空間的に位相エンコードがなされた原子核の少なくともいくつかのスピンエコー応答からのNMR信号を受信する手段と、
(8)複数の位相エンコード勾配磁場の印加回数に応じ、所定の時間間隔で前記手段(4)から(7)までを動作させることにより、
(a)特定の同一振幅を有する位相エンコード勾配磁場により手段(4)において異なるT2減衰時刻に空間的にエンコードがなされた原子核からの少なくとも2組のスピンエコー応答を得、
(b)前記(8)(a)のどのT2減衰時刻とも異なる時刻に前記(8)(a)の特定振幅とは異なる振幅によって空間的にエンコードがなされた少なくとも1つのスピンエコー応答を得る手段と、
(9)前記(8)(b)のスピンエコー応答のハーフフーリエ複素共役を推定する手段と、
(10)前記(8)(a)の2組のスピンエコー応答のうちの一方を選択する手段と、
(11)前記(8)(b)、(9)、(10)において得られたスピンエコー応答を組合わせる手段と、
(12)前記(11)において組み合わされたスピンエコー応答に基づく画像を作成する手段と、
(13)前記(10)における2組のスピンエコー応答のうちの他方を選択することにより前記手段(10)から(12)までを動作させる手段と、
を具備する請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置。 - 前記(11)から(13)までにおいて得られる2つの画像は、その相対的T2コントラストを除いては同じである請求項8に記載の磁気共鳴イメージング装置。
- 前記スピンエコー応答の少なくとも1組は、k空間の略中央において空間的にエンコードされた原子核に対応する請求項8に記載の磁気共鳴イメージング装置。
- 前記(8)(a)の少なくとも2つのスピンエコー応答の組は、スピンエコー応答の第1の組A(Kx,Ky)及びスピンエコー応答の第2の組B(Kx,Ky)から成り、
(12a)振幅及び位相成分a振幅・a位相を得るべく前記スピンエコー応答の第1の組A(Kx,Ky)のフーリエ変換を得る手段と、
(12b)振幅及び位相成分b振幅・b位相を得るように前記スピンエコー応答の第2の組B(Kx,Ky)のフーリエ変換を得る手段と、
(12c)b振幅・a位相を得るべく前記(12b)からの信号のb位相成分をa位相成分で置き換える手段と、
(12d)前記b振幅・a位相を逆フーリエ変換し、前記(13)の2組のスピンエコー応答のうちの他方であって、位相補正がなされたB’(Kx,Ky)を得る手段をさらに具備することを特徴とする請求項8に記載の磁気共鳴イメージング装置。
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