JP4289760B2 - ジャンピング電流低減方法及び管材の連接用部材及びそれを備えた配管設備 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、内部に導電性の流体が流れ、互いに電位の異なる複数の管材を絶縁連接して設けた配管設備において、前記管材から前記流体へ放出されるジャンピング電流を低減するジャンピング電流低減の技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、図2に示すように、地中に埋設され、導電性の流体Aを流す配管設備200において、例えば、導電性の配管用炭素鋼鋼管(以下SGPと呼ぶ。)製である管材102の近傍の防食対象物151を、同じくSGP製である管材101の近傍に設けられた対極152とによって電気防食が成されている場合のように、何らかの原因で電位差が生じている管材101,102が絶縁連接(流体の流れ方向に沿って絶縁状態で連接すること。以下、絶縁連接という。)される場合、電位が高い管材101から流体Aを介して電位が低い管材102へ流れるジャンピング電流IJ が発生し、電位が高い管材101のジャンピング電流IJ が流体中に放出される部位105においてアノード反応を促進して著しい腐食をもたらすことがある。
このような腐食を低減する方法として、電源150及び対極152によって電気防食を実施している防食対象物151近傍に埋設された管材101と、対極152近傍の管材102との間に、樹脂等の絶縁材料製である絶縁短管部材103を管材の連接用構造物として設けることにより、管材101と管材102とを流体Aの流れ方向に絶縁距離を有して連接し、両管材間の溶液抵抗を増加させ、当該ジャンピング電流IJ を低減させ、管材101の部位105の腐食を抑制することがある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、例えば、コジェネレーションシステムや地域冷暖房等における配管設備のように、内部を流れる流体Aが高温高圧の温水等である場合、上記のような耐熱耐圧性が劣る樹脂製の絶縁短管部材103を利用することができないため、上記の従来のジャンピング電流低減方法を実施することは困難であった。
また、上記の絶縁短管部材の代わりに、SGP製等の短管部材の内面及びフランジ面に耐熱性に優れたテフロン等の絶縁コーティングや絶縁チューブ等を施工して製作した絶縁短管部材を利用することが考えられるが、例えば流体が180℃と高温である場合、コーティング層に膨れやクリープ等が発生し、長期(例えば10年以上)にわたる連続使用が困難となるので、短期間(1〜2年程度)での定期点検・交換が必要となる。また、このような内面を絶縁処理した絶縁短管部材は高価であるためコスト的にも不利であった。
よって、本発明は、上記の事情に鑑みて、流体が高温高圧の場合であっても、電位の高い方の管材から導電性の流体へ流れるジャンピング電流を低減させて、管材の腐食を抑制することができるジャンピング電流低減の技術を提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
〔構成1〕
本発明に係る内部に導電性の流体が流れ、互いに電位の異なる複数の管材を絶縁連接して設けた配管設備において、前記管材から前記流体へ放出されるジャンピング電流を低減するジャンピング電流低減は、請求項1に記載したごとく、内部に導電性の流体が流れ、互いに電位の異なる複数の管材を絶縁連接して設けた配管設備において、前記管材から前記流体へ放出されるジャンピング電流を低減するジャンピング電流低減方法であって、
前記電位の異なる複数の管材間に、少なくとも前記流体に接する壁面に不動態被膜を有する短管部材を、一方の端部を電位が高い前記管材側に短絡連接し、他方の端部を電位が低い前記管材側に絶縁連接して設けることを特徴とする。
【0005】
〔作用効果〕
本構成のごとく、少なくとも流体に接する壁面に不動態被膜を有する短管部材を、一方の端部を電位が高い管材側に短絡連接(流体の流れ方向に沿って短絡状態で連接すること。以下、短絡連接という。)し、他方の端部を電位が低い管材側に絶縁連接して設けることで、電位の高い管材から短絡された短管部材へ電流が流れ、短管部材から流体を介して絶縁連接された電位の低い管材へジャンピング電流が流れようとするが、短管部材の不動態被膜によって、短管部材から流体中へのジャンピング電流の流出を抑制することができる。
【0006】
従って、導電性の流体が高温高圧である場合においても、不動態被膜を有する上記の短管部材によって、電位の異なる管材間を流れるジャンピング電流を低減させて、管材の腐食を抑制することができる。
【0007】
〔構成2〕
本発明に係る管材の連接用部材は、請求項2に記載したごとく、内部に導電性の流体が流れ、互いに電位の異なる複数の管材を絶縁連接して設けた配管設備において、前記電位の異なる複数の管材間に設けられて、前記管材から前記流体へ放出されるジャンピング電流を低減する管材の連接用部材であって、
少なくとも前記流体に接する壁面に不動態被膜を有する短管部材を備え、電位が高い前記管材に前記短管部材を短絡連接する短絡連接端部と、電位が低い前記管材に前記短管部材を絶縁連接する絶縁連接端部とを備えたことを特徴とする。
【0008】
〔作用効果〕
上記の構成1のジャンピング電流低減方法を実施することができる管材の連接用部材は、本構成のごとく、流体に接する壁面に不動態被膜を有する短管部材によって構成されると共に、電位の高い管材側に短絡連接される短絡連接端部と、電位の低い管材に絶縁連接される絶縁連接端部とを有しているので、電位の高い管材から短絡された短管部材へ電流が流れ、短管部材から流体を介して絶縁連接された電位の低い管材へジャンピング電流が流れようとするが、短管部材の不動態被膜によって、短管部材から流体中へのジャンピング電流の流出を抑制することができる。
【0009】
従って、高温高圧である導電性の流体が流れる配管設備において、互いに電位差が異なる管材間に設けて、簡単にジャンピング電流を低減することができる管材の連接用部材を構成することができる。
【0010】
〔構成3〕
本発明に係る管材の連接用部材は、請求項3に記載したごとく、上記構成2の管材の連接用部材の構成に加えて、前記短管部材が、ステンレス鋼、チタン、Ni−Cr−Fe系ニッケル基合金、若しくはNi−Mo−Cr系ニッケル基合金製の短管部材であることを特徴とする。
【0011】
〔作用効果〕
本構成のごとく、上記のような材料で形成した短管部材は、表面に不動態被膜を有して、耐食性に優れたものであり、この不動態被膜を介して腐食電流が流出し難い性質を有しているので、短管部材から流体へのジャンピング電流の流出を抑制して、ジャンピング電流の低減させることができ、比較的簡単な構成で、本発明の管材の連接用部材を構成することができる。
【0012】
〔構成4〕
本発明に係る配管設備は、請求項4に記載したごとく、内部に導電性の流体が流れ、互いに電位の異なる複数の管材を絶縁連接して設けた配管設備であって、前記電位の異なる複数の管材間に、前記請求項2又は3に記載の連接用部材を、前記短絡連接端部を前記電位の高い管材に連接し、前記絶縁連接端部を前記電位の低い管材に連接して備えたことを特徴とする。
【0013】
〔作用効果〕
また、本構成のごとく、本発明の管材の連接用部材を備え、例えば高温高圧の流体を流す配管設備においても、流体を介して流れるジャンピング電流を低減させることができ、さらに、短管部材の耐久性が優れているため、少ないメンテナンスで好ましい状態を維持することができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明の構成を図面に基づいて説明する。
図1に示すように、本発明の配管設備100は、SGP製の管材1及び管材2を配設し、導電性且つ高温高圧の流体Aを内部に流通させるものである。
更に、この配管設備100においては、電源150及び対極152によって電気防食を実施している防食対象物151の近傍に埋設されており、この為に、対極152近傍の管材1の電位が、管材2よりも高い状態となっている。このように、電位差が生じている管材1,2とを絶縁させて連接した配管設備100においては、電位が高い管材1から流体Aを介して電位が低い管材2及び管材3へ流れるジャンピング電流IJ が発生することがあり、電位が高い管材1のジャンピング電流IJ が流体A中に放出される部位が腐食することがある。このような腐食を防止するためには、管材1と管材2とを絶縁距離を有して連接し、両管材間の流体Aの溶液抵抗を増加させ、ジャンピング電流IJ を低減させる必要が有り、以下にその構成について説明する。
【0015】
即ち、本発明において、配管設備100の管材1,2を、間に絶縁距離を設けて連接するために、耐圧及び耐熱性に優れたチタン製の短管部材3を、電位の高い管材1に対して短絡連接線7及びパッキン8により短絡連接される短絡連接端部9と、電位の低い管材に対して絶縁パッキン4により絶縁連接される絶縁連接端部10とを備えた連接用部材50を備えている。
【0016】
このように構成することで、電位の高い管材1から流れる電流は、短絡連接線7を介して短管部材3に流入するので、短管部材3から流体Aを介して電位の低い管材2側へジャンピング電流IJ3が流れようとするが、一般的に、チタン等は表面に不動態被膜5を有しており、この不動態被膜5においては、そのチタンの電位が不動態域において腐食電流をほとんど流さない状態となる。
よって、その短管部材3と管材2の間に発生する電位差を、不動態被膜5における電位が不動態域となるように、適確な材質選択を行うことにより、不動態被膜5を通過する電流を最小限に低減させることができ、短管部材3から流体Aを介して電位の低い管材2側へ流れようとするジャンピング電流IJ3を低減させることができる。
【0017】
また、電位の高い側の管材1と、電位の低い側の管材2とは、この連接用部材50を設けることによって、間に絶縁距離を設けて連接されていることになるので、両管材1,2間の流体Aの溶液抵抗の増加により、電位が高い側の管材1から電位が低い側の管材2へ流れるジャンピング電流IJ1も低減させることができる。
また、このような短管部材3の長さは、流体の比抵抗値と、ジャンピング電流IJ1が発生する管材間の電位差と、短管部材3を形成する材料の不動態被膜における分極曲線の状態によって決定され、これらは実験等によって求めることができる。
【0018】
次に、本発明においてジャンピング電流IJ が低減されていることを実証する為に、図1に示す配管設備100の連接用部材50の短管部材3を、長さ500mmのチタン製のものとして構成し、管材1と管材2との間に電位差Vを生じさせ、管材1から流体Aに流れるジャンピング電流IJ1の電流値と、短管部材3から流体Aに流れるジャンピング電流IJ3の電流値を測定した。
また、比較例として、管材1と管材2を絶縁パッキン4のみで絶縁連接して、管材1から流体Aに流れるジャンピング電流の電流値を測定した。
尚、流体Aは清缶剤及び防錆剤とを含む温水であり、比抵抗値は1300Ωcm、温度は120〜130℃、圧力は0.59〜0.78MPaである。
【0019】
結果、本発明の連接用部材50を使用した場合のチタン製の短管部材3から流体Aに流れるジャンピング電流IJ3の電流値は、管材1と管材2との間の電位差Vが250mV程度から1500mV程度までほぼ比例的に上昇することが確認されたが、電位差Vが1500mVのときでも、高々3.5mA以下であり、この状態で1ヶ月放置しても管材1の腐食は確認されなかった。これに対して、比較例の管材1と管材2とを絶縁パッキン4のみで絶縁連接した場合、管材1から流体Aに流れるジャンピング電流の電流値は電位差が1200mV程度において25mA程度あり、この状態で1ヶ月放置したところ、管材1のジャンピング電流が放出されている部位の管材薄肉部において350μm程度の腐食による薄肉化が確認された。よって、本発明の連接用部材50において、短管部材3の不動態被膜5によって、ジャンピング電流を低減できることがわかる。
また、短管部材3から流体Aに流れるジャンピング電流IJ3の電流値は管材1へ流入する全電流量とほぼ同じ値であり、管材1から流体Aに流れるジャンピング電流IJ1の電流値がほぼゼロであることが確認され、短管部材3から流体Aへ流れるジャンピング電流も低減し、短管部材3の腐食が抑制されていることが確認できた。
【0020】
〔別実施の形態〕
(イ) 上記の実施の形態において、ジャンピング電流が発生する要因として、電気防食を行った防食対象物及び対極が近傍に設けられている場合を説明したが、これは、本発明を限定するものではなく、本発明は、何らかの要因で管材同士に電位差が発生する管材に対して実施することで、ジャンピング電流を低減させて管材の腐食を防止するという効果を発揮するものである。
【0021】
(ロ) 上記の実施の形態において、電位の高い管材1と不動態被膜5を有する短管部材3とを短絡連接することによって、異種金属間でおこるマクロセル腐食が懸念される場合においては、たとえば、腐食側の管材の短絡連接端部を厚肉化して、腐食による薄肉化を抑制することができる。
また、管材2と短管部材3とがスケール等の何らかの問題で短絡し、管材1と管材2とが導通状態となること懸念されるが、日常の管理等において管材2及び短管部材3若しくは管材1の間の電位差をチェックすることで、導通が無いことを確認することができる。
【0022】
(ハ) 上記の実施の形態において、互いに電位の異なる管材1,2としてSGP製のものを利用したが、勿論、STPG(耐圧用炭素鋼配管)製の管材を利用して、管材の耐圧性を向上させることもできる。
【0023】
(ニ) 上記の実施の形態において、絶縁連接される互いに電位の異なる複数の管材として、2本の管材1,2を直列に接続する場合を示したが、互いに電位の異なる3本の管材を、T型継手等で絶縁連接する場合、そのT型継手を本発明の接続用部材として構成することができ、詳しくは、T型の流路を形成するSUS製等の本体部を設け、その本体部の3つの端部を、最も電位の高い管材に対して短絡接続される1つの短絡連接端部と、他の2つの管材に対して絶縁連接される絶縁連接端部として構成した接続用部材を、夫々の管材間に設けることで、最も電位の高い管材から他の管材へ流体を介して流れるジャンピング電流を抑制することができる。
勿論、3本以上の管材を絶縁接続する場合でも、上記と同様に、最も電位の高い管材と短絡連接し、他の管材と絶縁連接するように上記接続用部材を構成し、その接続用部材を管材間に設けてジャンピング電流を抑制することができる。
【0024】
【発明の効果】
配管設備において、例えば流体が高温高圧であっても問題なく、電位の高い管材から流体中に流れるジャンピング電流を低減することができ、管材の腐食を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態を示す配管設備の概略断面図
【図2】従来のジャンピング電流を低減させる構成を説明する概略断面図
【符号の説明】
1 管材
2 管材
3 短管部材
4 絶縁パッキン
5 不動態被膜
9 短絡連接端部
10 絶縁連接端部
50 連接用部材
100 配管設備
A 流体
IJ1 ジャンピング電流
IJ3 ジャンピング電流
Claims (4)
- 内部に導電性の流体が流れ、互いに電位の異なる複数の管材を絶縁連接して設けた配管設備において、前記管材から前記流体へ放出されるジャンピング電流を低減するジャンピング電流低減方法であって、
前記電位の異なる複数の管材間に、少なくとも前記流体に接する壁面に不動態被膜を有する短管部材を、一方の端部を電位が高い前記管材側に短絡連接し、他方の端部を電位が低い前記管材側に絶縁連接して設けるジャンピング電流低減方法。 - 内部に導電性の流体が流れ、互いに電位の異なる複数の管材を絶縁連接して設けた配管設備において、前記電位の異なる複数の管材間に設けられて、前記管材から前記流体へ放出されるジャンピング電流を低減する管材の連接用部材であって、
少なくとも前記流体に接する壁面に不動態被膜を有する短管部材を備え、電位が高い前記管材に前記短管部材を短絡連接する短絡連接端部と、電位が低い前記管材に前記短管部材を絶縁連接する絶縁連接端部とを備えた管材の連接用部材。 - 前記短管部材が、ステンレス鋼、チタン、Ni−Cr−Fe系ニッケル基合金、若しくはNi−Mo−Cr系ニッケル基合金製の短管部材である請求項2に記載の管材の連接用部材。
- 内部に導電性の流体が流れ、互いに電位の異なる複数の管材を絶縁連接して設けた配管設備であって、
前記電位の異なる複数の管材間に、前記請求項2又は3に記載の連接用部材を、前記短絡連接端部を前記電位の高い管材に連接し、前記絶縁連接端部を前記電位の低い管材に連接して備えた配管設備。
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