JP4287449B2 - セルロース系ファイバー成形体およびその製造法 - Google Patents

セルロース系ファイバー成形体およびその製造法 Download PDF

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本発明は、セルロース系ファイバー成形体およびその製造法に関する。より詳しくは、パルプなどのセルロース系ファイバーにグルコマンナンや酢酸ビニル樹脂接着剤などの接着剤が添加された成形材料から成形される成形体に、バインダーとしてリグノフェノール誘導体またはリグノフェノール誘導体と部分加水分解された炭水化物との複合体が含有されているセルロース系ファイバー成形体、並びに、該成形材料を成形するに際して、液体状のリグノフェノール誘導体またはリグノフェノール誘導体と部分加水分解された炭水化物との液体状の複合体を、成形前の成形材料または成形後の成形体に添加し、次いで液体状のリグノフェノール誘導体または複合体を固体状にする処理を行うセルロース系ファイバー成形体の製造法に関する。
近年、石油などの資源に代わり、永続的使用が可能な森林資源に対する関心が高まっており、森林資源の再利用技術の研究・開発が盛んに行われている。森林資源である、木材などのリグノセルロース系材料は、セルロースやヘミセルロース等の親水性炭水化物と疎水性のリグニンとから構成され、これらは細胞壁中で相互侵入高分子網目(IPN)構造をとり、複雑に絡みあって複合体をなした状態となっている。
最近、このようなリグノセルロース系材料から親水性炭水化物と疎水性リグニンとを効率的に分離する技術として、相分離変換システムが開発されている(特許文献1、特許文献2など)。この相分離変換システムは、リグノセルロース系材料にクレゾールなどのフェノール誘導体を添加した後、濃硫酸やリン酸などの濃酸を添加して混合攪拌することにより、フェノール誘導体相と濃酸相の2相を生成させ、フェノール誘導体相から、リグニンがフェノール誘導体で誘導体化されたリグノフェノール誘導体を回収し、濃酸相からは、セルロースやヘミセルロース等の部分加水分解された炭水化物を回収する技術である。
このような相分離変換システムによりリグノセルロース系材料から得られるリグノフェノール誘導体や部分加水分解された炭水化物を再利用する技術の開発が精力的に行われている。例えば、リグノフェノール誘導体に更にメチロール基を導入した変性リグニンを接着剤として利用する試みがなされている(特許文献3)。また、セルロースなどのパルプを成形材料としてボートなどの成形体を成形し、その成形体にリグノフェノール誘導体を添着させて強力な成形体を製造して、リグノフェノール誘導体を利用する試みもなされている(特許文献4)。
特開平2−23701号公報 特許平9−278904号公報 特開2005−60590号公報 特開平9−278904号公報
本発明の課題は、リグノセルロース材料から得られるリグノフェノール誘導体またはリグノフェノール誘導体と部分加水分解された炭水化物との複合体を有効利用した新たなセルロース系ファイバー成形体およびその製造法を提供することにある。更には、高い強度と耐水性を有する新たなセルロース系ファイバー成形体およびその製造法を提供することにある。
本発明者等は前記課題を解決すべく鋭意研究した結果、パルプなどのセルロース系ファイバーを成形体に成形する場合に、セルロース系ファイバーにグルコマンナンや酢酸ビニル樹脂接着剤などの接着剤を添加したものを成形材料とし、リグノセルロース材料から得られるリグノフェノール誘導体またはリグノフェノール誘導体と部分加水分解された炭水化物との複合体を、成形材料を接着するバインダーとして使用して、成形体を製造することにより、上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
即ち本発明は、セルロース系ファイバーからなる成形材料から成形された成形体であって、成形材料には、水溶性接着剤もしくは水エマルジョン系接着剤が添加されており、成形体中には成形材料を接着するバインダーとしてリグノフェノール誘導体またはリグノフェノール誘導体と部分加水分解された炭水化物との複合体が含有されていることを特徴とする、セルロース系ファイバー成形体に関する。
更に本発明は、セルロース系ファイバー成形体の製造法であって、水溶性接着剤もしくは水エマルジョン系接着剤が添加された、セルロース系ファイバーからなる成形材料を成形するに際して、液体状のリグノフェノール誘導体またはリグノフェノール誘導体と部分加水分解された炭水化物との液体状の複合体を、成形前の成形材料または成形後の成形体に添加し、次いで液体状のリグノフェノール誘導体またはリグノフェノール誘導体と部分加水分解された炭水化物との液体状の複合体を固体状にする処理を行うことを特徴とする、セルロース系ファイバー成形体の製造法に関する。
本発明では、パルプなどのセルロース系ファイバーを成形体に成形する際に、セルロース系ファイバーにグルコマンナンや酢酸ビニル樹脂接着剤などの接着剤を添加したものを成形材料とし、リグノセルロース材料から得られるリグノフェノール誘導体またはリグノフェノール誘導体と部分加水分解された炭水化物との複合体を、成形材料を接着するバインダーとして使用して、成形体を製造することにより、高い強度と耐水性を有する新たなセルロース系ファイバー成形体を製造することができる。また、本発明により、リグノセルロース材料から得られるリグノフェノール誘導体またはリグノフェノール誘導体と部分加水分解された炭水化物との複合体を、セルロース系ファイバー成形体の製造に際して有効に利用できる。更には、本発明により製造されたセルロース系ファイバー成形体から、製造の際に用いた成形材料であるセルロース系ファイバーやリグノフェノール誘導体またはリグノフェノール誘導体と部分加水分解された炭水化物との複合体を、容易に回収することができ、回収されたそれらを再利用することができるため、本発明はセルロース系材料の有効利用に極めて有利である。
本発明では、成形材料として、セルロース系ファイバーからなる成形材料に水溶性接着剤もしくは水エマルジョン系接着剤が添加されたものを用いる。セルロース系ファイバーとしては、機械パルプ、化学パルプ、セミケミカルパルプ、これらのリサイクルパルプ、さらには、これらのパルプを原料として合成される人造の各種セルロース系ファイバー等を用いることができる。また、セルロース系ファイバーは、パプル加工品であるボール紙、新聞紙等の各種製品を解繊して得たものを用いることもできる。このようなセルロース系ファイバーの原料としては、針葉樹や広葉樹を原料とする木材繊維、コウゾ、ケナフ、マニラ麻、ワラ、バガスなどの非木材繊維のいずれをも利用可能である。
水溶性接着剤としては、例えば、グルコマンナン、デンプン、カゼイン、ゼラチン、ニカワ、キトサン、セルロース誘導体などが挙げられる。なかでも、グルコマンナン、デンプン、カゼインが好ましく、特にグルコマンナンが好ましい。水エマルジョン系接着剤としては、例えば、酢酸ビニル樹脂接着剤、アクリル樹脂接着剤、ウレタン樹脂接着剤などが挙げられ、酢酸ビニル樹脂接着剤が好ましい。これらの水溶性接着剤もしくは水エマルジョン系接着剤は2種以上を混合して用いてもよい。
セルロース系ファイバーに対する水溶性接着剤もしくは水エマルジョン系接着剤の添加量は、セルロース系ファイバーに対して0.1重量%から10重量%が好ましく、特に、0.5重量%から5重量%が好ましい。
本発明で用いるリグノフェノール誘導体またはリグノフェノール誘導体と部分加水分解された炭水化物との複合体としては、リグニンを含有するリグノセルロース系材料から、公知の通常の方法により得られるリグノフェノール誘導体またはリグノフェノール誘導体と部分加水分解された炭水化物との複合体であればいずれのものでもよい。好ましいものとしては、リグノセルロース系材料から相分離変換システム技術により得られるリグノフェノール誘導体またはリグノフェノール誘導体と部分加水分解された炭水化物との複合体が挙げられる。相分離変換システム技術による方法としては、特開平2−233701号公報に詳細に記載されている方法が挙げられる。この方法では、木粉、廃材、端材などのリグノセルロース系材料に液体状のクレゾールなどのフェノール誘導体を浸透させ、リグニンをフェノール誘導体により溶媒和させ、次に、リグノセルロース系材料を濃硫酸などの濃酸を添加して、セルロース成分を溶解し、リグニンを溶媒和したフェノール誘導体と、セルロース成分を溶解した濃酸とが2相分離系を形成する。フェノール誘導体により溶媒和されたリグニンは、フェノール誘導体相が濃酸相と接触する界面においてのみ、酸と接触し、この際生じたリグニンの高反応サイト(α位)のカチオンが、さらにフェノール誘導体により攻撃されて形成されるリグノフェノール誘導体がフェノール誘導体相に生成される。
このフェノール誘導体相から、リグノフェノール誘導体を抽出することにより、リグノフェノール誘導体を得ることができる。また、リグノフェノール誘導体と部分加水分解された炭水化物との複合体は、フェノール誘導体で処理したリグノセルロース材料に濃酸を添加して生成するフェノール誘導体相と濃酸相とを含む反応液全体を、過剰の水に投入し、不溶区分を回収することにより、リグノフェノール誘導体と部分加水分解された炭水化物との複合体を得ることができる。また、更に、この複合体からアセトンなどにより抽出することによって、リグノフェノール誘導体を得ることもできる。
あるいは、相分離変換システムによる他の方法としては、次のような方法が挙げられる。リグノセルロース系材料に、固体状あるいは液体状のフェノール誘導体を溶解した溶媒、例えば、エタノールあるいはアセトンなどを浸透させた後、溶媒を留去して、フェノール誘導体をリグノセルロース系材料に収着させ、次に、このリグノセルロース系材料に濃酸を添加してセルロース成分を溶解し、上記した方法と同様に、フェノール誘導体により溶媒和されたリグニンは、フェノール誘導体と濃酸とが接触する界面において、酸と接触し、フェノール誘導体により攻撃されて、リグノフェノール誘導体が生成される。そして、上記の方法と同様にして、フェノール誘導体化されたリグノフェノール誘導体をフェノール誘導体相から抽出することにより、リグノフェノール誘導体を得ることができる。また、上記と同様にして、リグノフェノール誘導体と部分加水分解された炭水化物との複合体も得ることができる。
これらの方法に用いるフェノール誘導体としては、例えば、フェノール、クレゾール等のアルキルフェノール、メトキシフェノール、ナフトールなどの1価フェノール;カテコール、アルキルカテコール、レゾルシノール、アルキルレゾルシノール、ハイドロキノン、アルキルハイドロキノンなどの2価フェノール;ピロガロールなどの3価フェノールを挙げることができる。上記した相分離変換システムによる方法において、例えば、フェノール誘導体としてクレゾールを用いた場合には、リグノフェノール誘導体としてリグノクレゾールが、レゾルシノールを用いた場合には、リグノレゾルシノールが得られる。
本発明のセルロース系ファイバー成形体中においては、リグノフェノール誘導体またはリグノフェノール誘導体と部分加水分解された炭水化物との複合体が、成形材料を接着するバインダーとして含有されている。リグノフェノール誘導体またはリグノフェノール誘導体と部分加水分解された炭水化物との複合体を、成形材料を接着するバインダーとして含有させるには、以後に説明する製造法により製造することにより行うことができる。セルロース系ファイバー成形体中におけるリグノフェノール誘導体またはリグノフェノール誘導体と部分加水分解された炭水化物との複合体の含有量としては、通常、セルロース系ファイバー成形体中に、0.1重量%から10重量%、好ましくは、0.5重量%から5重量%である。
成形体の形態としては、パルプなどのセルロース系ファイバーからの成形体が通常有する形態のいずれでもよく、例えば、マット状、ボード状などの形態を挙げることができる。
本発明のセルロース系ファイバー成形体は、水溶性接着剤もしくは水エマルジョン系接着剤が添加されたセルロース系ファイバーからなる成形材料を成形するに際して、液体状のリグノフェノール誘導体またはリグノフェノール誘導体と部分加水分解された炭水化物との液体状の複合体を、成形前の成形材料または成形後の成形体に添加し、次いで液体状のリグノフェノール誘導体または複合体を固体状にする処理を行うことにより製造することができる。
液体状のリグノフェノール誘導体または複合体を、成形前の成形材料または成形後の成形体に添加し、次いで液体状のリグノフェノール誘導体または複合体を固体状にする処理を行うことにより、リグノフェノール誘導体または複合体は、液体状態から固体状態へ変化し粘結性を発揮して、成形材料を接着するバインダーとして機能することができる。
液体状のリグノフェノール誘導体またはリグノフェノール誘導体と部分加水分解された炭水化物との液体状の複合体としては、アセトン、エタノール、メタノール、ジオキサンまたはそれらのそれぞれと水との混合液にリグノフェノール誘導体または複合体を溶解したリグノフェノール誘導体溶液または複合体溶液を用いることができる。また、上記した相分離変換システム技術により、リグノセルロース系材料から得られるリグノフェノール誘導体溶液または複合体溶液をそのまま用いることもできる。
成形材料からの成形方法としては、以下に示す方法を挙げることができる。
例えば、水溶性接着剤もしくは水エマルジョン系接着剤が添加されたセルロース系ファイバーを成形し、この成形体に、リグノフェノール誘導体溶液または複合体溶液を含浸した後、溶媒を留去する方法が挙げられる。リグノフェノール誘導体溶液または複合体溶液を含浸させるには、セルロース系ファイバー成形体をリグノフェノール誘導体溶液または複合体溶液に浸漬すればよい。ここで用いるリグノフェノール誘導体溶液または複合体溶液としては、リグノフェノール誘導体または複合体を5重量%から20重量%含有する溶液が好ましい。溶媒の留去は、セルロース系ファイバー成形体をリグノフェノール誘導体溶液または複合体溶液に浸漬後にセルロース系ファイバー成形体を乾燥すればよい。
また、成形されていない状態の、水溶性接着剤もしくは水エマルジョン系接着剤が添加されたセルロース系ファイバーにリグノフェノール誘導体溶液または複合体溶液を含浸した後、溶媒を留去し、その後、このセルロース系ファイバーを加熱・加圧などの通常の成型手段により成形する方法が挙げられる。この方法においても、上記と同様に、リグノフェノール誘導体溶液または複合体溶液を含浸させるには、セルロース系ファイバーをリグノフェノール誘導体溶液または複合体溶液に浸漬すればよく、また、リグノフェノール誘導体溶液または複合体溶液としては、リグノフェノール誘導体または複合体を5重量%から30重量%含有する溶液が好ましく、また、溶媒の留去も乾燥によって行うことができる。
成形材料から成形体を製造する際には、通常使用される熱安定剤、抗酸化剤、可塑剤、紫外線吸収剤、着色剤などを必要に応じて使用してもよい。また、成形材料から成形体を製造する方法としては、通常使用される圧縮成形、射出成形、押出成形、ブロー成形、発泡成形、キャスティング成形、紡糸などの任意の方法を必要に応じて採用することができる。
このような製造法によって成形された成形体は、セルロース系ファイバーと共に水溶性接着剤もしくは水エマルジョン系接着剤と、リグノフェノール誘導体またはリグノフェノール誘導体と部分加水分解された炭水化物との複合体とを用いているため、成形体の強度が向上し、また、耐水性が向上し、さらに、成形体の吸水性および吸水による膨張性が低下され、寸法安定性が向上する。
また、本発明のセルロース系ファイバー成形体は、成形材料であるセルロース系ファイバーやリグノフェノール誘導体またはリグノフェノール誘導体と部分加水分解された炭水化物との複合体に分離して、それぞれを回収することができる。例えば、成形体の原型を維持した状態、あるいは小片に加工した状態で、アセトン、エタノール、メタノール、ジオキサン、これらそれぞれと水との混合液、アルカリ水溶液等の溶媒に浸漬し、あるいは、浸漬に加えて攪拌することにより、リグノフェノール誘導体またはリグノフェノール誘導体と部分加水分解された炭水化物との複合体は、溶媒中に溶出され、セルロース系ファイバーとリグノフェノール誘導体またはリグノフェノール誘導体と部分加水分解された炭水化物とを分離・回収することができる。
以下に本発明を実施例により更に詳細に説明するが本発明はこれら実施例によって何ら限定されるものではない。
実施例1
パルプにコンニャクグルコマンナンを添加した成形材料とリグノクレゾールを用いた成形体の製造
(1)リグノクレゾールの製造
アセトン抽出処理したスギ脱脂木粉1kgを、リグニン含有量3mol倍のパラクレゾールのアセトン溶液に浸漬し、数時間後にアセトンを留去した。これに、72重量%硫酸5Lを加えて撹拌した。1時間後に、反応液全体を50Lの水に加え撹拌した。ろ過により、不溶区分を回収し、水で不溶区分を中性になるまで洗浄した。これを乾燥してリグノクレゾールと部分加水分解された炭水化物(ヘミセルロース)との複合体を得た。それをアセトンにて抽出して、リグノクレゾールを得た。この抽出液を所定濃度に調整して、以後使用した。
(2)パルプの製造
コピー用紙をシュレッダーで粉砕し、これを水につけた後に、ホモジナイザーで解繊してパルプを得た。
(3)成形体の製造
パルプの乾燥重量に対して0−5重量%コンニャクグルコマンナン(KGM)水溶液にパルプを加え、ホモジナイザーを用い解繊後、減圧脱水抄紙機にかけKGM配合パルプボードを作成した。これを脱水プレス機にかけ、厚さ8mmに調整後、ステンレス板に挟み80℃で乾燥した。このパルプボードを木質ボード試験サイズにカットし、10重量%リグノクレゾール/アセトン溶液に12時間浸漬した。12時間後ドラフト内に取り出し、十分に乾燥した。
(4)成形体の物性評価
リグノクレゾール含有量測定後、特性評価は、3点曲げ試験による強度測定と耐水性試験を行った。曲げ試験は、JIS A 5905に従い、50mm×200mm試験片を三点曲げでの中央集中荷重にて、破壊まで荷重(2mm/min)した。吸水試験はJIS A 5905(繊維板)にて、50mm×50mm試験片を20℃、24時間吸水させ、吸水増加率、中央部の厚さ膨潤率、試験片の長さ膨潤率、比重を測定した。吸湿試験は、上記と同じサイズで、吸湿3日後、続いて脱湿3日の変化状況を測定した。デンプン、カゼインについてもKGM同様に成型体を作成した。
(5)成形体の物性評価結果
コンニャクグルコマンナン(KGM)配合パルプボードを作成し、5重量%リグノクレゾールアセトン溶液に浸漬した結果、約5重量%のリグノクレゾールが収着された。3点曲げ試験による強度測定を行った結果、KGM3重量%添加することにより1.6倍の強度が増加した(図1)。
また、吸水試験と吸湿試験を行った結果、10重量%リグノフェノール収着ボードは、MDF以上の高い寸法安定性を示した(図2)。
これらのことから、KGMを添加することによりバインダー効果が働き、高い強度を付与することが可能であった。また、KGMは耐水性が低いため実用性が低かったが、リグノクレゾールを組み合わせることにより、耐水性を付与することができた。
実施例2
パルプにデンプンまたはカゼインを添加した成形材料とリグノクレゾールを用いた成形体の製造
水溶性接着剤として、KGMに代えてたデンプンまたはカゼインを用いて、実施例1と同様にして成形体を作成し、その物性を評価した。
図3および図5に示したように、デンプンまたはカゼインを用いることにより若干の強度の増加が見られた。しかし、KGMと比べ強度の増加は低くなった。一方、図4および6に示したように、耐水性においてはKGMと同様、高い寸法安定性が見られ、リグノフェノールと混合することにより、これまで耐水性が低く、使用範囲が限定されていた天然系接着剤も利用できることが示された。
パルプにコンニャクグルコマンナン(KGM)を添加した成形材料とリグノクレゾールを5重量%用いた成形体の曲げ強度を示す。 パルプにコンニャクグルコマンナンを添加した成形材料とリグノクレゾールを5重量%および10重量%用いた成形体の耐水性を示す。 パルプにデンプンを添加した成形材料とリグノクレゾールを5重量%用いた成形体の曲げ強度を示す。 パルプにデンプンを添加した成形材料とリグノクレゾールを5重量%用いた成形体の耐水性を示す。 パルプにカゼインを添加した成形材料とリグノクレゾールを5重量%用いた成形体の曲げ強度を示す。 パルプにカゼインを添加した成形材料とリグノクレゾールを5重量%用いた成形体の耐水性を示す。

Claims (8)

  1. セルロース系ファイバーからなる成形材料から成形された成形体であって、成形材料には、水溶性接着剤が添加されており、成形体中には成形材料を接着するバインダーとしてリグノフェノール誘導体またはリグノフェノール誘導体と部分加水分解された炭水化物との複合体が含有されていることを特徴とし、
    前記水溶性接着剤は、グルコマンナン、デンプン、デキストリンおよびカゼインから選ばれる少なくとも1種であり、
    前記リグノフェノール誘導体は、リグノセルロース系材料にフェノール誘導体を添加した後、濃酸を添加して生成するフェノール誘導体相と濃酸相のうち、フェノール誘導体相から得られるリグノフェノール誘導体であり、
    前記リグノフェノール誘導体と部分加水分解された炭水化物との複合体は、リグノセルロース系材料にフェノール誘導体を添加した後、濃酸を添加して生成するフェノール誘導体相から得られるリグノフェノール誘導体と、濃酸を添加して生成する濃酸相から得られる部分加水分解された炭水化物との複合体である、セルロース系ファイバー成形体。
  2. セルロース系ファイバーがパルプである、請求項1のセルロース系ファイバー成形体。
  3. セルロース系ファイバーに対して、水溶性接着剤が0.1重量%から10重量%添加されている、請求項1または2のセルロース系ファイバー成形体。
  4. セルロース系ファイバー成形体の製造法であって、水溶性接着剤が添加された、セルロース系ファイバーからなる成形材料を成形するに際して、液体状のリグノフェノール誘導体またはリグノフェノール誘導体と部分加水分解された炭水化物との液体状の複合体を、成形前の成形材料または成形後の成形体に添加し、次いで液体状のリグノフェノール誘導体またはリグノフェノール誘導体と部分加水分解された炭水化物との液体状の複合体を乾燥して固体状にする処理を行うことを特徴と
    前記水溶性接着剤は、グルコマンナン、デンプン、デキストリンおよびカゼインから選ばれる少なくとも1種であり、
    前記リグノフェノール誘導体は、リグノセルロース系材料にフェノール誘導体を添加した後、濃酸を添加して生成するフェノール誘導体相と濃酸相のうち、フェノール誘導体相から得られるリグノフェノール誘導体であり、
    前記リグノフェノール誘導体と部分加水分解された炭水化物との複合体は、リグノセルロース系材料にフェノール誘導体を添加した後、濃酸を添加して生成するフェノール誘導体相から得られるリグノフェノール誘導体と、濃酸を添加して生成する濃酸相から得られる部分加水分解された炭水化物との複合体である、セルロース系ファイバー成形体の製造法。
  5. 液体状のリグノフェノール誘導体またはリグノフェノール誘導体と部分加水分解された炭水化物との液体状の複合体が、アセトン、エタノール、メタノール、ジオキサンまたはそれらのそれぞれと水との混合液にリグノフェノール誘導体または複合体が溶解したリグノフェノール誘導体溶液または複合体溶液である、請求項のセルロース系ファイバー成形体の製造法。
  6. 水溶性接着剤が添加されたセルロース系ファイバーからなる成形材料を成形体に成形した後に、成形体に液体状のリグノフェノール誘導体またはリグノフェノール誘導体と部分加水分解された炭水化物との液体状の複合体を含浸させ、次いで、乾燥する処理を行う、請求項4または5のセルロース系ファイバー成形体の製造法。
  7. セルロース系ファイバーがパルプである、請求項4から6のいずれかのセルロース系ファイバー成形体の製造法。
  8. セルロース系ファイバーに対して、水溶性接着剤が0.1重量%から10重量%添加されている、請求項4から7のいずれかのセルロース系ファイバー成形体の製造法。
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