JP4286164B2 - レーザ加工モニタリングシステム - Google Patents

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Description

本発明は、レーザ加工モニタリングシステムに関し、さらに詳しくは、被加工品をレーザにより加工する際に、加工時に発生する信号変化を利用してリアルタイムに加工条件を設定するレーザ加工モニタリングシステムに関するものである。
近年、ショートパルスレーザを使った固体ターゲットの精密マイクロエリア手法に対する注目度が高まっている。この精密マイクロエリア手法によって高品質加工を実現するには、レーザの波長、パルスエネルギー、パルス持続時間、出力密度、繰り返し率などのレーザの条件と、ガスの種類や圧力などのガスの条件を最適化しなければならない。従来では、実際のレーザ加工の中で試行錯誤しながら最適条件を判断するしかなかった。つまり、レーザ照射を終えた後に、くぼみや溝の形状とその容積を顕微鏡で調べ、パラメータを変化させながら最適条件を探ることを行っていた。このような方法は時間がかかり、全体的な作業効率を低くしていた。
これを改善する従来技術として特開平11−218489号公報には、レーザ溶接部の品質をプラズマの光強度測定により監視する方法及び装置について開示されている。それによると、レーザビームにより照射された加工物表面の上方の溶接プラズマから放出される光を監視し、このプラズマから放出される光の強度を、品質が合格レベルの溶接部を生じさせる加工及び加工物条件下で決定された放出光の所定値と比較することにより、所定値よりも大きな偏差の監視光強度を不合格溶接部とするとしている。即ち、本発明の方法によれば、発光スペクトルの主要発光ピークに対応する波長の選択された範囲について放出光を監視することにより、レーザ加工の工程内制御を可能とするとしている。
特開平11−218489号公報
しかしながら、レーザ加工の品質とレーザアブレーション現象が基本的には相関しており、レーザアブレーションからの信号を利用すれば、たとえレーザの照射中でもレーザ加工の特性を把握することができると考えられる。このレーザアブレーションからの情報を通じてレーザ加工の特性をリアルタイムで知ることができれば、レーザシステムと光学システムの制御にその情報を反映させ、レーザ加工のための最適条件を作ることができると判断できる。そしてレーザアブレーションからリアルタイムで情報を引き出す新しい方法を、光学的現象、音響的現象、及び電磁的現象の観点から開発しなければならない。そこで従来から、レーザ加工の最適集束条件を判断する音響的手法が提案されているが、音の変化により加工状態を判断するためその音を聞く観測者の主観により判断が異なったり、リアルタイムに判断結果をフィードバックすることが困難であった。
また、特許文献1に開示されている従来技術は、レーザビーム溶接時の不良溶接を減少させるために、溶接時の被加工品から発生されるプラズマのスペクトル強度、紫外線、又は放射線を観測して、予め設定された最適値と比較してその最適値になるようにレーザビームの強度を決定するものである。しかし、観測する手段が光学的な手段のみで観測するため、観測の位置を厳密に設定しなければならず、必ずしも一義的に正確に最適値を判断することができないといった問題がある。
本発明は、かかる課題に鑑み、レーザ加工において被加工品(ターゲット)から発生するターゲットプラズマにより誘導される誘導電流とターゲットスペクトラムのピーク値の変化から、ターゲット表面でのレーザビームの精密集束条件とターゲットのくぼみの深さをリアルタイムにフィードバックすることにより、加工効率の向上と加工精度の向上を実現するレーザ加工モニタリングシステムを提供することを目的とする。
また他の目的は、レーザ加工の性能に影響を与えるレーザ強度、集光度、レーザの波長、パルス幅、及びパルス繰り返し周波数の最適条件を決定することである。
本発明はかかる課題を解決するために、請求項1は、レーザ照射により被加工品をモニタしながら加工するレーザ加工モニタリングシステムであって、前記レーザ照射のために所定の波長のレーザを発射するレーザ発射手段と、前記レーザビームの焦点を前記被加工品の所定の位置に合焦する光学手段と、前記被加工品の加工状態を光学的にモニタする光学モニタ手段と、前記レーザビームを導入するビーム導入窓と、ガスを充填するためのガス入出口とを備え、前記被加工品に前記ビーム導入窓から導入したレーザビームを照射中は、前記ガスを前記ガス入出口から所定の量還流させるチャンバと、該チャンバ内で発生したターゲットプラズマ中の電子・イオンによる誘導電流を検出する誘導電流検出手段と、プラズマ発光の時間特性を取得するプラズマ発光時間取得手段と、前記ターゲットプラズマから発せられる連続スペクトル及び線スペクトルを検出するスペクトル検出手段と、前記被加工品を3次元方向に移動する3次元移動手段と、前記誘導電流検出手段、プラズマ発光時間取得手段、及びスペクトル検出手段の信号に基づいて前記光学手段、3次元移動手段及びレーザ発射手段を制御する制御手段と、を備えたことを特徴とする。
本発明のレーザ加工モニタリングシステムは、所定のガスを充填したチャンバ内に、3次元移動手段上に正負の電極を載置し、この電極間に被加工品(ターゲット)を配置して、その被加工品にレーザビームをレンズ等の光学手段により合焦するように照射することにより、そのとき発光される被加工品からのプラズマの誘導電流とスペクトル強度を誘導電流検出手段とスペクトル検出手段により検出し、制御手段がそれらの検出信号に基づいて光学手段、3次元移動手段及びレーザ発射手段を制御して被加工品を加工するシステムである。更に、光学的に被加工品の加工状態を静的にあるいは動的にモニタすることができる。尚、ターゲットプラズマとは、ガスブレークダウンプラズマ(以下、ガスプラズマと記す)と区別する意味で、レーザビームをターゲットに照射したときに、ターゲットを構成する原子が高温となり発光されるプラズマを言う。
かかる発明によれば、制御手段が誘導電流検出手段、プラズマ発光時間取得手段、及びスペクトル検出手段の信号に基づいて光学手段、3次元移動手段及びレーザ発射手段を制御する構成なので、被加工品を正確に且つ効率良く加工することができる。
請求項2は、前記制御手段は、前記誘導電流検出手段により誘導された電流変化の立ち上がり時間及び強度変化、又は前記スペクトル検出手段により検出されたスペクトルの発光強度を検出しながら、前記3次元移動手段をリアルタイムに調整して前記被加工品の加工を行うことを特徴とする。
誘導電流検出手段により誘導された電流変化は、ターゲットに照射されたレーザビームの時間経過とともに立ち上がり時間及び強度が変化する。また、スペクトル検出手段により検出されたスペクトルの発光強度もそれに伴って変化する。即ち、これらの特性を予め確認しておくことにより、ターゲットの加工状態をリアルタイムに検出することができる。
かかる発明によれば、制御手段は、誘導電流変化の立ち上がり時間及び強度変化、又はスペクトルの発光強度を検出しながら、3次元移動手段をリアルタイムに調整して被加工品の加工を行うので、被加工品の加工を正確に且つ迅速に行うことができる。
請求項3は、前記制御手段は、所定のレーザエネルギーの基では前記正極と負極の電極間に印加する電圧に比例して増加し、前記正極と負極の電極間に印加する所定の電圧の基では前記レーザエネルギーの増加とともに非直線的に増加する性質を有する誘導電流と、前記スペクトル検出手段により検出された前記被加工品の所定のスペクトルの発光強度とを監視することにより、当該被加工品の穿孔の深さを推定することを特徴とする。
被加工品の材質により発光するスペクトルの波長分布が異なる。例えば、真鍮の場合は銅(Cu)と亜鉛(Zn)の合金であるので、夫々の波長のスペクトルが発光される。その中で発光強度が一番強い亜鉛(Zn)のスペクトルに注目して監視すると、穿孔の深さに応じてスペクトルの強さが減少することが確認されている。また、誘導電流は電極に一定の電圧を印加し、被加工品に所定のレーザエネルギーを与えた場合、被加工品に変化が無ければそのときの誘導電流は一定であるが、被加工品の穿孔の深さに伴って誘導電流も変化する。従ってスペクトルの発光強度と誘導電流の変化を監視することにより、当該被加工品の穿孔の深さを推定することができる。
かかる発明によれば、制御手段は、誘導電流と、スペクトル検出手段により検出された被加工品の所定のスペクトルの発光強度を監視することにより、当該被加工品の穿孔の深さを推定するので、簡単な構成により誘導電流と、スペクトルの波長からターゲットの材質に応じた穿孔の深さを推定することができる。
請求項4は、前記制御手段は、前記誘導電流検出手段により検出された前記被加工品のターゲットプラズマ中の電子・イオンによる誘導電流の変化が急峻に立ち上がり、且つ早期に減衰する信号が強く発生するときをもって、前記被加工品に前記レーザビームの焦点がタイトフォーカスの状態になったものと推定することを特徴とする。
誘導電流の第1の信号は、レーザを絞り込んで照射するタイトフォーカスの場合に発生し、その信号は急峻に立ち上がりまた早く減衰する。このような信号が強く発生するときをもって、タイトフォーカスの状態でレーザ光が被加工品に照射していることを確認できる。
かかる発明によれば、制御手段は、誘導電流検出手段により検出された被加工品のターゲットプラズマ中の電子・イオンによる誘導電流の変化が急峻に立ち上がり、且つ早期に減衰する信号が強く発生するときをもって、被加工品にレーザビームの焦点がタイトフォーカスの状態になったと推定するので、被加工品表面がたとえフラットでなくても、誘導電流を監視することによりレンズと被加工品間隔を調整して常にタイトフォーカス状態でレーザを照射することができ、微細加工を効率的に行うことができる。
請求項5は、前記制御手段は、前記誘導電流検出手段により検出された前記被加工品のターゲットプラズマ中の電子・イオンによる誘導電流の変化を監視することにより、当該被加工品の穿孔が貫通したことを推定することを特徴とする。
ターゲットの穿孔が進みターゲットが貫通した瞬間に誘導電流が大幅に増加することが確認されている。従って、この誘導電流の変化を監視することにより、ターゲットが貫通した瞬間を検知することができる。
かかる発明によれば、制御手段は、誘導電流検出手段により検出された被加工品の誘導電流の変化を監視することにより、当該被加工品の穿孔が貫通したことを推定するので、目視による冗長性がなくなり正確にターゲットが貫通したことを確認することができ、孔径の精度を高めることができる。
請求項6は、前記制御手段は、前記プラズマ発光時間取得手段により検出されたプラズマ発光の時間変化を測定することにより、前記被加工品の加工特性の良、不良を推定することを特徴とする。
アブレーションが熱的仮定を経ることなく急速に起こる時、加工特性は良好となる。その場合は観測される原子の発光の時間変化も急峻となる。即ち、プラズマ発光の時間変化をレーザ加工のモニタリングに利用することができる。
かかる発明によれば、制御手段は、プラズマ発光時間取得手段により検出されたプラズマ発光の時間変化を測定することにより、被加工品の加工特性の良、不良を推定するので、プラズマ発光の立ち上がり時間から被加工品の加工特性の良、不良を判定することができる。
請求項7は、前記誘導電流検出手段は、少なくとも正極と負極の2つの電極と、該電極間に所定の電位を供給する電源と、前記電極間に流れる電流変化を取得する電流変化取得手段とを備え、前記正極と負極の2つの電極の少なくとも一方の電極に開口部を備え、前記開口部を備えた電極から前記レーザビームを導入し、前記被加工品を前記2つの電極の何れか一方の電極寄りに配置すると共に、前記電極間に配置された前記被加工品に前記レーザビームを照射し、それにより発生するターゲットプラズマ中の電子・イオンによる誘導電流の変化を前記電流変化取得手段により取得することを特徴とする。
正負の電極の少なくとも一方の電極に開口部を備え、開口部を備えた電極からレーザビームを導入し、ターゲットを2つの電極の何れか一方の電極寄りに配置して両電極に電圧を印加する。そしてその間に置かれたターゲットにレーザビームを照射するとターゲットプラズマが発生する。このプラズマはイオン化されているので、イオン化電流が電極間に流れる。その電流を例えば抵抗を電流のループ内に挿入することにより抵抗の両端から電圧として検出することができる。
かかる発明によれば、電極間に配置された被加工品にレーザビームを照射し、それにより発生するターゲットプラズマ中の電子・イオンによる誘導電流の変化を電流変化取得手段により取得するので、被加工品の加工状況をリアルタイムに電流変化として取得することができ、コンピュータによりデータ処理を行うことができる。
請求項8は、前記ターゲットプラズマは、前記レーザビームの出力密度が十分高いときでレーザアブレーションが開始される際に排出される超高速電子と、前記レーザビームの照射の際に前記被加工品の真上で発生する高密度一次プラズマの中に存在する電子と、強い衝撃波が気体の中で拡大するときに二次プラズマの中で発生する電子とから成ることを特徴とする。
一般に、プラズマを小さな管の中に封じ込めると管の中で平らな衝撃波が生じ、高速で前進するジェットのような形をした強い衝撃波が誘発する。この強い衝撃波の背後で電子が生じることは公知である。従って、長く持続する誘導電流の信号はジェット状の強い衝撃波の背後で生じる電子によるものと考えられる。さらに第一成分は、レーザ照射の初期段階で表面から排出される高速電子によるものと考えられる。即ち、ターゲットプラズマに伴う誘導電流信号が3つの起源を持つ電子からなると結論づけることができる。
かかる発明によれば、ターゲットプラズマは、レーザビームの出力密度が十分高いときでレーザアブレーションが開始される際に排出される超高速電子と、レーザビームの照射の際に被加工品の真上で発生する高密度一次プラズマの中に存在する電子と、強い衝撃波が気体の中で拡大するときに二次プラズマの中で発生する電子とから成るので、ターゲットの精密焦点条件を判断するための最適パラメータとして誘導電流信号をレーザ加工に実用化することが実証できる。
請求項1の発明によれば、制御手段が誘導電流検出手段、プラズマ発光時間取得手段、及びスペクトル検出手段の信号に基づいて光学手段、3次元移動手段及びレーザ発射手段を制御する構成なので、被加工品を正確に且つ効率良く加工することができる。
また請求項2では、制御手段は、誘導電流変化の立ち上がり時間及び強度変化、又はスペクトルの発光強度を検出しながら、3次元移動手段をリアルタイムに調整して被加工品の加工を行うので、被加工品の加工を正確に且つ迅速に行うことができる。
また請求項3では、制御手段は、スペクトル検出手段により検出された被加工品の所定のスペクトルの発光強度と誘導電流とを監視することにより、当該被加工品の穿孔の深さを推定するので、簡単な構成によりスペクトルの波長からターゲットの材質に応じた穿孔の深さを推定することができる。
また請求項4では、制御手段は、誘導電流検出手段により検出された被加工品のターゲットプラズマ中の電子・イオンによる誘導電流の変化が急峻に立ち上がり、且つ早期に減衰する信号が強く発生するときをもって、被加工品にレーザビームの焦点がタイトフォーカスの状態になったと推定するので、被加工品表面がたとえフラットでなくても、誘導電流を監視することによりレンズと被加工品間隔を調整して常にタイトフォーカス状態でレーザを照射することができ、微細加工を効率的に行うことができる。
また請求項5では、制御手段は、誘導電流検出手段により検出された被加工品の誘導電流の変化を監視することにより、当該被加工品の穿孔が貫通したことを推定するので、目視による冗長性がなくなり正確にターゲットが貫通したことを確認することができ、孔径の精度を高めることができる。
また請求項6では、制御手段は、プラズマ発光時間取得手段により検出されたプラズマ発光の時間変化を測定することにより、被加工品の加工特性の良、不良を推定するので、プラズマ発光の立ち上がり時間から被加工品の加工特性の良、不良を判定することができる。
また請求項7では、電極間に配置された被加工品にレーザビームを照射し、それにより発生するターゲットプラズマ中の電子・イオンによる誘導電流の変化を電流変化取得手段により取得するので、被加工品の加工状況をリアルタイムに電流変化として取得することができ、コンピュータによりデータ処理を行うことができる。
また請求項8では、ターゲットプラズマは、レーザビームの出力密度が十分高いときでレーザアブレーションが開始される際に排出される超高速電子と、レーザビームの照射の際に被加工品の真上で発生する高密度一次プラズマの中に存在する電子と、強い衝撃波が気体の中で拡大するときに二次プラズマの中で発生する電子とから成るので、ターゲットの精密焦点条件を判断するための最適パラメータとして誘導電流信号をレーザ加工に実用化することが実証できる。

以下、本発明を図に示した実施形態を用いて詳細に説明する。但し、この実施形態に記載される構成要素、種類、組み合わせ、形状、その相対配置などは特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する主旨ではなく単なる説明例に過ぎない。
まず、本発明の実施例を説明する前に、実験装置により本発明の有効性を説明する。これにより本発明のレーザ加工モニタリングシステムが従来にない新規な特徴を有するシステムであることが理解できるはずである。
図1は、本発明の電磁的手法と光学的手法によるガスプラズマ特性研究に用いた実験装置の上面図である。この実験装置100は、レーザ照射のために所定の波長のレーザを発射するNd−YAGレーザ1と、レーザビーム24を分離するピームスプリッタ2と、ピームスプリッタ2により反射されたレーザビーム24を検出するバイプレナー光電管3と、レーザビーム24に含まれる紫外波長(355nm)のレーザ光を吸収してエネルギーを減衰させるガラス減衰器4と、レーザビーム24の焦点を所定の位置に合焦するレンズ5と、所定の成分からなるガスを密封するチャンバ20と、このチャンバ20内で発生したガスプラズマ17中の電子・イオンによる誘導電流を検出する誘導電流検出回路13と、プラズマ発光の時間特性を取得するモノクロメータ12と、ガスプラズマ17から発せられる連続スペクトルを検出する光学多重チャネルアナライザ(以下、OMAと記す)システム11と、誘導電流検出回路13とモノクロメータ12の信号をモニタするデジタルオシロスコープ(以下、オシロスコープと記す)15と、OMAシステム11の信号をモニタする表示モニタ16とを備えて構成される。尚、チャンバ20はレーザビームを導入する石英窓6と2つの石英窓7、9を備え、更にガスを入出するガス入口18とガス出口19を備えている。そして内部に2枚の電極21、22を配置している。また、モノクロメータ12は光ファイバ8により光を導入し、OMAシステム11は光ファイバ10により光を導入する構成となっている。また、オシロスコープ15はバイプレナー光電管3からの信号を外部同期信号として入力している。また、誘導電流検出回路13は例えば挿入図23のように、電源23aとコンデンサC23cを並列に接続し、マイナス側をグランドとして抵抗R23bを介してオシロスコープ15に接続される。そして電源23aのプラス側を電極21に接続し、抵抗R23bを介してマイナス側を電極22に接続する。
次に本発明の実験装置の概略動作について説明する。パルス持続時間7nsのQスイッチNd−YAGレーザ(Surelite lasers continuum、811U-06モデル)1を355nm(第3高調波振動)にて、繰り返し率10Hzで作動させた。また最大パルスエネルギーは50mJで、パルスエネルギーは実験の内容に応じてガラス減衰器4を使って変化させた(2〜50mJ)。レーザビームを石英窓6越しにレンズ(f=70mm)5を使ってチャンバ20の中で集束させ、ガスプラズマ17を形成した。このチャンバ20はアクリル板(100mm×50mm×70mm)でできており、ガスを流すための入口18と出口19を備え、さらにプラズマ発光を観察するための石英窓8、9を備える。この実験では主に清浄空気(N:79%、O:21%、不純物0.1%未満)とHeガスを使用し、チャンバ20には1大気圧までガスを充填した。
プラズマスペクトルを得るため、1200溝/mmの高解能用格子と、150溝/mmの低解能用格子を備える焦点距離0.32mの分光器写真器と、イメージインテンシファイアを備える1024チャンネル光ダイオード検出器とからなるOMAシステム11(Atago Macs-320)を使ってプラズマ発光を検出した。ガスプラズマ17から発せられる光は光ファイバ10で回収し、OMAシステム11の中に送り込んだ。また発光の時間特性を得るため、もうひとつの光ファイバ8を使用し、同光ファイバ8の一端はモノクロメータ12(Nikon P-250)の差し込み口(スリット)前面に固定した。その光信号を高速の光電子倍増管(PMT)14(Hamamatsu R7400U-04、立ち上がり時間0.78ns)で検出し、オシロスコープ15(HP 5461B)に入力した。
また光学的検出手法に加え電磁的手法も用いた。図1に示すように、従来どおりの実験のため、それぞれ中央に穴21a、22a(プラス電極21の穴21aはφ=3mm、マイナス電極22の穴22aはφ=4mm)がある平らな板(25mm×25mm)でできた電極21、22を、1.5cm隔ててチャンバ20内に配置した。これらの電極を図1の23に描かれた回路に接続し、50〜700V範囲のDC電圧を供給した。2電極の中間でガスプラズマ17を発生させるため、レーザビーム24はプラス電極21の穴21aを通じて集束させた。その誘導電流信号を50オームの抵抗R23bを介して入力し、オシロスコープ15(Ch.1)に送った。オシロスコープ15は、バイプレナー光電管3(Hamamatsu R1193U-51)を利用しNd−YAGレーザ24の起動信号により外部同期をかけて使用した。
次に図1と同じ設備を使用し、ターゲットプラズマに対し同様の実験を行った。図2は棒状ターゲット25(ロッド)と電極の構成部分を示す実験装置100の側面図である。同じ構成要素には同じ参照番号を付して説明する。具体的には、プラス電極21とマイナス電極22の間に小さな棒状サンプル25(φ=2mm)を置き、このサンプル25はマイナス電極22側に若干ずらし、レーザビーム24はプラス電極21の穴21aを通じて棒状サンプル25の表面で集束させ、デジタルカメラ(Olympus C-2500L)を使ってターゲットプラズマ26の写真を撮影した。
図3は、ガスプラズマによる連続スペクトル発光と誘導電流のタイムプロファイルを示す図である。縦軸に信号の強度を表し、横軸に時間を表す。1atm(1.013×10Pa)の清浄空気ガスの中で、700Vの電位差で10mJのレーザパルスを電極間の空間で集束させてガスプラズマを発生させた。この図は、時間の経過に沿ったレーザパルスの推移も示している。誘導電流信号31は、レーザパルス30の開始から1ns未満の遅れを経て上昇した。そして誘導電流信号31は5nsでピークに達し、すぐさま減衰し、その後数回の上昇を経た後に約60ns以内に消滅した。図3では、時間の経過に沿った誘導電流信号31の推移と556nmでの連続スペクトル発光32のそれが、上昇と減衰の点でほぼ同じであることがわかる。
次に図示を省略するが、空気の代わりにHeガスを使ってガスプラズマの実験を行った。そのプラズマは薄く小さく(長さ約2mm)、He原子輝線(587.6nm)のため非常に弱いオレンジ色を発することが肉眼で観察される。つまり、Heの場合、連続スペクトル発光は看過しうるほど弱いが、空気の場合は、強い連続スペクトル発光を発する青白いマイクロプラズマが観察された。
図3に示すように、誘導電流信号31のタイムプロファイルと連続スペクトル発光32のそれは、上昇と減衰の点でほぼ同じである。この一致は、それぞれの信号の原因を考えることで十分に理解することができる。即ち、気体の中でレーザ光線が集束するときには、レーザ光線と、ガスプラズマを形成する多光子イオン化過程を通じて生じる最初の電子との相互作用によってイオン化が進み、そのプラズマ中の電子が電場の下で誘導電流に寄与するということである。他方、ガスプラズマは、電子−イオン再結合過程もしくは制動発光過程(Bremsstrahlung Process)を通じて連続スペクトルを発する。気体励起領域において電子が完全に消失する場合には連続発光は起こらないし、レーザ集束領域に存在する励起された原子によって線スペクトル発光が残っていたとしても、誘導電流は流れない。したがって、誘導電流の減衰と連続発光は一致するのである。
また誘導電流の原因を理解するには、電離発光によって電子が発生する電離箱の原理を想起すると良い。電離箱の中では、与えられる電場によって電子が陽極に向けて押しやられることで回路の中で電流を誘発する。誘導電流は普通、この電子の動きの結果として、電子が陽極に到達する前に、回路の中に出現するということを了解しなければならない。また、電極と電極との間のレーザプラズマで自由電子が発生するときにも同様のプロセスが起こると仮定する。この場合、電子の数と電子の平均自由行程の両方が誘導電流の大きさを左右する。
今回の実験で、電場の方向を逆にしても、つまりプラス電極21を負極に接続し、マイナス電極22を正極に接続しても、誘導電流信号に変化が見られなかった。この結果を踏まえ、プラズマ膨張は強いデトネーション波によるものでないと仮定された。もしもプラズマ膨張の原因が強いデトネーション波なら、電極の極性を変えたときに誘導電流信号が変化したはずである。なぜなら、デトネーション波はレーザビームの伝播に対立しながら一方向に伝播し、そのデトネーション波によってイオン化が進み自由電子が形成されるからである。
図4は、1atmのHeガスの中で、700Vの電圧差で50mJのレーザパルスを電極間の空間で集束したときの誘導電流信号と発光のタイムプロファイルである。この誘導電流信号35のグラフは、空気中で観察したものと異なることが見てとれる。つまりHeの場合、誘導電流信号35はピークに達した後に非常に遅い減衰成分を見せながら減少している。この誘導電流信号35は6μsあたりまで持続することを確認した。また、He輝線(587.6nm)のグラフ36が、空気中での発光グラフから大きく異なることもわかる。つまり、上昇時間約6nsの上昇スロープはとても緩やかで、誘導電流信号35と同様にゆっくりと減衰している。発光も6μs近辺まで続いた。
図4に示すように、Heガスの場合の誘導電流信号35の減衰時間は空気の場合に比べてかなり長い。誘導電流の長い寿命は、プラズマの中に存在する自由電子の長い寿命を示唆する。なぜなら、誘導電流の起源は自由電子にあるからである。電子の寿命が長いのはおそらく、Heの場合、電子の平均自由行程が長いからであり(1atm、0℃でλ=17.7×10−6cm)、空気中だと電子の平均自由行程は短い(λ=6.06×10−6cm)。他方、空気の場合は上述のとおり、電子が移動するときの電子−イオン再結合によって誘導電流信号は急速に減衰する。今回の実験で、ガスブレークダウンから得られた誘導電流信号の符合は常に正である。これは、電子が常に外部電場に従って一方に向かって動くことを意味する。電子雲と正イオン雲とのミスマッチに起因する内部電場はやや弱く、外部電場に比べれば取るに足らないと仮定する。そしてプラズマの密度がより高ければ、変動する信号、すなわち正および負の符合が現れるであろう。
またHeガスで自由電子の寿命が長いことについて考えられる更なる理由は、HeガスプラズマにおけるHeの準安定状態であり、その励起エネルギーは19.8eVである。Heの準安定状態とイオン化状態との間のエネルギー格差が4eVと低いことを考慮に入れるべきである。したがってイオン化は、プラズマの熱エネルギーを受けながらHeの準安定状態から継続すると仮定することができる。Heの準安定原子からの自由電子形成のメカニズムについてもうひとつ考えられることは、2つの準安定原子が衝突しHeイオンと電子の形成を招くことである。
図4に示すように、He発光36(587.6nm)の上昇はゆっくりと起こる。これはおそらく、He発光を起す励起状態がレーザ照射そのものによって生じるのではなく、レーザ照射時の多光子過程によって生じる自由電子とHeイオンとの再結合過程を通じて生じるからである。
またHe発光36(587.6nm)を担う励起状態が再結合過程を通じて生じるときには時間のずれがあり、そのずれゆえにHe発光36の上昇が緩やかになると考えるのが自然である。一方、発光の減衰を示すタイムプロファイルと長い減衰時間を持つ誘導電流のそれはほぼ一致するのだが、このことも、前述と同様にHeの準安定状態が果たす役割を考慮することによって説明できる。つまり、587.6nm発光を引き起こすHeの励起状態は、長い寿命を持つ準安定Heから供給されるHeイオンと電子との再結合過程を通じて発生するのである。
図5は、清浄空気ガスの中でプラズマを発生させた場合に、52mJ(符号42)、27mJ(符号41)、7mJ(符号40)の3通りのパルスエネルギーで、誘導電流信号が供給電圧にいかに左右されるかを示している図である。縦軸に誘導電流の強度を表し、横軸は電極の供給電圧を表す。この図から誘導電流と供給電圧との間でほぼ直線の関係が成立していることがわかる。また、パルスエネルギーが大きくなるほどその勾配が大きくなるのが分る。
図5に示すように、誘導電流信号は供給電圧とともに直線的に増加する。電子はプラズマの中を移動するための力を電場から十分に受け取るため、これは必然的な結果である。この直線的関係を踏まえ、たとえプラズマが非常に小さくても電極間に高電圧を供給すれば十分な誘導電流信号が得られるということが分る。
図6は、清浄空気ガスの中でプラズマを発生させる場合に誘導電流信号がレーザパルスエネルギーにいかに左右されるかを示している図である。縦軸に誘導電流の強度を表し、横軸はパルスエネルギーを表す。57V(符号45)、352V(符号46)、708V(符号47)の3通りの電圧でデータを収集した。誘導電流信号がパルスエネルギーとともに上昇し、2mJのしきいエネルギーの後に非直線の曲線の傾向を示していることがわかる。同じ実験をHeガスを使って行ったときにも同様の特性が観察された。ただしHeガスの場合、レーザプラズマ発生のためのしきいエネルギーは約9mJで、空気のそれよりも大きい。さらに音響信号がレーザエネルギーにいかに左右されるかを調べるため、マイクロフォンを使ったプラズマの音響的測定も試みた。その結果、しきい値から25mJにかけて信号がエネルギーとともに直線的に増加し、その後飽和傾向が顕著になることが確認された。
図6に示すように、誘導電流信号はやや非直線的な特性を見せながらレーザパルスエネルギーとともに増加する。イオン化は多光子過程を通じて起こるため、パルスエネルギーの範囲を広げれば、この非直線的特性はよりいっそう顕著になるであろう。
次にガスプラズマによる誘導電流の手法を通常のターゲットプラズマにまで拡張することを試みた。そこで、直径2mmの棒状(ロッド)のターゲットを、電極間の空間の電場の妨げとならないよう、図2に示すように電極間に配置したのは前述したとおりである。図7(a)は、1atmの雰囲気ガスが空気の中で真鍮製ロッドの表面で10mJのレーザパルスを集束させたときに撮影したプラズマのイメージである。図7(b)は、レーザビームの貫通が起こった後に撮影したプラズマのイメージである。図7(c)は、レーザビームを鉄製ロッド上で集束させたときのプラズマのイメージである。図7(b)および図7(c)については後述する。
図8(a)は、図7(a)と同様の条件で得た540nmでの連続スペクトル発光と誘導電流のタイムプロファイルである。縦軸は相対強度を表し、横軸は時間を表す。ガスプラズマの場合と同様に、電極には700Vの電圧を供給した。同じ実験を空気の変わりにHeガスを使って行った。図8(b)はその結果を示す。雰囲気ガスがHeの中でターゲットプラズマから得られる誘導電流信号53のピーク強度が、雰囲気ガスが空気の誘導電流信号51よりも4倍から5倍大きいことがわかる。雰囲気ガスが空気の中にわずか10%のHeを加えただけでもピーク信号が2倍程度強くなることもわかった。これらの結果に加え、ガスプラズマの場合と同様、ターゲットプラズマにおいても誘導電流の強度が供給電圧とともにほぼ直線的に増加することが確認された。
図3および図4と図8(a)および図8(b)をそれぞれ比較すると、ターゲットプラズマの場合の誘導電流のピーク強度がガスプラズマの場合のそれよりも遥かに高いことがわかる。ガスプラズマの場合、多光子イオン化の見込みは極めて低く、レーザパルスエネルギーのほとんどは吸収されずに集束点を通過するため当然である。したがって、気体内の集束レーザによって生じる電子の数はやや少なく、その結果、誘導電流信号は低くなる。ところがターゲットプラズマの場合、レーザエネルギーのほとんどは吸収され、ターゲットプラズマに移され、ターゲットから周囲の気体に向けて多数の高速電子が推し出される。
また雰囲気ガスがHe(図8(b))で得られる誘導電流信号53のピーク強度が雰囲気ガスが空気(図8(a))の誘導電流信号51を大きく上回る理由は、おそらく、Heガスにおける電子の平均自由行程が空気中でのそれよりも長いからである。
図9は、雰囲気ガスがHeの中でプラスチック製のロッドターゲット上で10mJのレーザパルスを集束させて得られた誘導電流信号を示している図である。ターゲットの素材に応じ、ピーク強度と上昇信号(第2ピークと第3ピーク)の点で、誘導電流信号54のグラフにある程度の違いが生じていることがわかる。つまり、プラスチック製ロッドターゲットの誘導電流ピーク強度Pは金属製ターゲットに比べてやや低いが、第2ピークQは比較的高い。木製ロッドターゲットでも誘導電流が検出されることが証明された。
図10(a)は、精密焦点で13.8GW/cmの出力密度、図10(b)は2mmの脱焦で2.2GW/cmの出力密度を与える集束条件で、雰囲気ガスがHeの中でアルミニウム製ターゲットを照射したときの誘導電流と発光のタイムプロファイルを示している図である。誘導電流信号60のグラフが、精密焦点(a)と脱焦(b)とで異なることがわかる。精密焦点(a)の誘導電流信号60は2つの成分、すなわち高速減衰成分61と低速減衰成分62からなる。しかし、脱焦(b)の場合には高速減衰成分が観察されなかった。脱焦(b)の場合の誘導電流信号63のグラフは、精密焦点条件で観察される低速減衰成分62のそれとほぼ同じである。精密焦点の誘導電流ピーク強度は脱焦のそれをはるかに上回っている。これとは対照的に、Al中性線(394.4nm)で観察される発光強度64、65は集束条件に関わらずほぼ同じであり、その発光は2つの成分からなる。つまり、最初の成分は10nsでピークに達し、50ns以内に減衰する。2番目の成分は時間とともにゆっくりと大きくなるのである。
図10の実験で証明されたように、誘導電流信号は、ターゲットプラズマの精密焦点条件を判断する際の最適パラメータとして利用できる。なぜなら、精密焦点(a)の場合の誘導電流信号60は脱焦(b)の場合の誘導電流信号63よりも遥かに強いからである。この誘導電流を使った方法は、信号の感度が光学的方法のそれを遥かに上回るため、レーザ加工に実用化できる。
また精密焦点条件(a)の場合、ターゲット表面でのレーザ光線には、ターゲットプラズマの中でイオンと電子を発生させるための出力密度が十分にある。この場合は、ターゲット表面に陽イオンをとどめながら、ターゲットから前方向に高速電子が排出される。これらの電子が、レーザ照射の直後に発せられる強い信号に寄与しているのである。ターゲットから高速電子が取り除かれるため、取り除かれた電子と残されたイオンとの間で強い電場が生じるということを考慮に入れなければならない。その結果、電子はターゲットに引き戻されるのである。おそらくこのことが、精密焦点の場合にピークに達した後の誘導電流信号60が高速減衰成分61を示しながら直ちに減衰する理由であると考えられる。
図10(b)では、脱焦条件での誘導電流信号63のタイムプロファイルが第一成分の発光のそれと類似していることがわかる。これはレーザビームが1atm程度の低い圧力で集束する場合、レーザプラズマは一次プラズマと二次プラズマという2つの別個の領域で構成される。一次プラズマは高温の小さな領域の中にあり、ターゲット表面の上で短時間(数nsのレーザパルスを使用した場合に約50ns)に強い連続発光スペクトルを放つ。二次プラズマは、くっきりとした原子輝線を発しながら一次プラズマの周囲で時間にともない膨張する。この二次プラズマが衝撃波によって励起することも明らかである。図10(b)における発光の第一成分は一次プラズマによるものと考えられる。脱焦条件での誘導電流信号63を示す図10(b)のタイムプロファイルはこの第一成分の発光のそれと類似しているため、誘導電流信号のための電子の起源が一次プラズマの中の電子であると仮定することができる。
図11(a)は、精密焦点条件のもと雰囲気ガスがHeの中で鉄製ロッドの表面で10mJのレーザパルスを集束させたときの10回目の照射後の誘導電流信号を示している図である。図11(b)は290回目の照射後の誘導電流信号を示している図である。即ち、図11(b)では約80から200nsという広い持続範囲を持つ別の誘導電流信号72が出現している。これは、アルミニウムや真鍮のサンプルなど、ほかのサンプルでは決して見られない現象である。最初のレーザ照射のときに肉眼で観察されるプラズマの特徴は、図7(a)に示す真鍮製ターゲットのそれと同じである。しかし、照射250回目あたりからプラズマの形状は大きく異なり、図7(c)に示すような円錐形のプラズマが発生した。このプラズマを、便宜上ジェットプラズマと称する。
図11の実験結果で述べたように、図11(a)の誘導電流信号70は数百回の照射の後、約100〜200nsという長時間にわたって持続する別の信号形状(72)に変化し、このときプラズマの形状はジェットプラズマに変化した。したがって、この長時間持続する信号はジェットプラズマによるものと言える。一般に、プラズマを小さな管の中に封じ込めると管の中で平らな衝撃波が生じ、高速で前進するジェットのような形をした強い衝撃波が誘発する。この強い衝撃波の背後で電子が生じることは知られている。したがって、長く持続する誘導電流の信号はジェット状の強い衝撃波の背後で生じる電子によるものと考えられる。さらに第一成分は、レーザ照射の初期段階で表面から排出される高速電子によるものと考えられる。そこで、ターゲットプラズマに伴う誘導電流信号が3つの起源を持つ電子からなると結論づけることができる。即ち、第1の電子はレーザアブレーションの開始時に排出される超高速電子であり、第2は高密度の一次プラズマの中に存在する電子であり、第3は強い衝撃波の背後で生じる電子である。
図12〜図14は、1atmの雰囲気ガスがHeの中で真鍮製ロッドターゲットの固定位置で10mJのレーザパルスを集束したときの誘導電流信号(a)と発光スペクトル(b)を時間経過に沿って並べた図である。これらのデータは、10回の照射の平均を求めることで得た。つまり図12の信号データは50回から60回目の照射から取得したデータであり、図13の信号データは250回から260回目の照射から取得したデータであり、図14の信号データは980回から990回目の照射から取得したデータである。
図12〜図14では、誘導電流の強度と波形がレーザ照射の回数にともない変化することがわかる。具体的には、図12の照射開始時には誘導電流信号73の高速減衰成分をはっきりと見てとれるが、数十回の照射を経た後には消えている。また、低速成分の誘導電流信号強度も照射回数にともない減少している。一方、ZnおよびCuの原子輝線と弱い連続スペクトルからなる発光スペクトル74、75の特徴は、レーザ照射の段階に関わらずほぼ同じであり、スペクトルの強度は、誘導電流のそれに比べてゆっくりと減少している。レーザの照射回数にともない誘導電流が変化する具合を理解するには、照射回数が増すにつれくぼみが深くなり、その断面が円錐状になることを想起すると良い。その結果、くぼみの表面での出力密度は減少し、誘導電流のグラフは、図10(b)に示す脱焦の場合のそれに変化する。くぼみの深さが増すごとに誘導電流信号が減少する理由はおそらく、くぼみの穴の中で電磁遮蔽効果が起きているためと予想される。
図15(a)は、図12〜図14の実験で得られたレーザ照射の回数にともないZnI(481.0nm)の時間積分発光強度が減少する様子を示している。即ち、図12(b)の50回目ではZnのピーク強度は50000、図13(b)の250回目ではZnのピーク強度は25000、図14(b)の980回目ではZnのピーク強度は12000をプロットしたものである。図15(b)は、くぼみの深さがレーザの照射回数が増すごとにどう変化するかを示している。この曲線は、次に述べる仮定に基づき、図15(a)のデータから導き出したものである。
即ち、レーザパルスによるアブレーションの量は時間積分原子発光強度に比例する。したがって、1照射あたりのアブレーション量が照射回数にともない減少することが図15(a)の曲線から見てとれる。500回の照射によって深さ1mmのくぼみができることを別の実験で確認した。図15(a)で斜線で描かれたエリア80は500照射での総アブレーション量に相当するから、x回目の照射で得られる面積を500回の照射で得られる面積と比較すればx回目の深さを見積もることができる。この方法でくぼみの深さを見積り、それを図示したのが図15(b)である。図15(b)からわかるように、レーザ照射を始めたときのくぼみは比較的速くその深さを増し、その後50照射で深さ0.2mm、250照射で0.65mm、980照射で1.4mmと、照射回数が増すにつれ深さを増すペースが遅くなっている。この結果から、一連のスペクトル発光強度を監視することで穿孔の深さを推定できると結論づけることができる。この手法も今後、実際のレーザマイクロ加工に応用される。
この研究(実験)を通じて、誘導電流信号について非常に重要な現象を観察した。即ち、照射を繰り返しながらサンプルでレーザビームの貫通が起こるときには誘導電流信号が急増することである。この実験では、厚みが1mmになるまで磨いた真鍮製ロッドターゲットを使用した。このサンプルで10mJのレーザパルスを使うと、500回目の照射の後に貫通が起こった。図7(b)は、520回目の照射で完全に貫通したときに撮影したプラズマのイメージである。図16(a)に示すように、貫通前の誘導電流信号81はどちらかというと低く、図16(b)に示すように、その後貫通が起こる瞬間には誘導電流信号82は急増する。一方、ZnI(481.0nm)の発光強度83、84には、貫通の前と後とで大きな違いはないことが分る。
図16に示すように、照射を繰り返しながらレーザビームの貫通が起きる瞬間には誘導電流信号が急増する。これはおそらく、ひとたび貫通が起こると自由空間の中での誘導電流の流れが容易になるからであり、このとき誘導電流は遮蔽効果に妨げられることなく図17に図示された1本のループ90を描く。この手法は、通常の光学的方法に比べてレーザビーム貫通の判定手段として遥かに感度に優れ、レーザマイクロ加工の制御手段として非常に実用的だと結論づけられる。
以上、雰囲気ガスが空気と雰囲気ガスがHeの中で生じるガスプラズマを用いて誘導電流の特性を調べた。この目的のため、レーザビームは電極と電極の間のガスの中で集束させ、供給電圧とレーザパルスエネルギーを変化させながら誘導電流の大きさを測定した。その結果、信号は一定のエネルギーで電圧とともに直線的に増加し、さらに信号は、一定の電圧でしきい値の後にやや非直線的な特性を示しながらレーザエネルギーとともに増加することが判明した。またHeの場合の誘導電流信号は、空気の場合のそれと大きく異なることが分った。
この結果を踏まえ、この誘導電流現象が、電場の下での電離放射線の動きによって電子が生じる電離箱のそれとほぼ同じであると結論づけることができる。また誘導電流信号の大きさは、電子の数と平均自由行程と外部電場によって決まる。そして集束点の近くに小さな棒状ターゲットを配置し、ターゲットプラズマに対し同様の実験を行った。その結果、固体ターゲットの精密焦点条件を判断するための最適パラメータとして誘導電流信号をレーザ加工に実用化できることが実証された。更にターゲットプラズマに伴う誘導電流信号が3つの起源を持つ電子からなることが証明された。即ち第1の電子は、精密焦点条件の場合のように出力密度が十分に高いときに、レーザアブレーションが始まるときに排出される超高速電子である。これは高速電子に起因する誘導電流信号は急峻な上昇と急速な減衰を見せるので、この信号が強く発生するときをもって、精密焦点時の状態でレーザ光をターゲットに照射していることが確認できる。第2の電子は、レーザパルス照射のときにターゲットの真上で発生する高密度一次プラズマの中に存在する電子である。この場合、誘導電流信号のタイムプロファイルは、一次プラズマ発光のそれとほぼ同じである。第3の原子は、強い衝撃波が気体の中で拡大するときに二次プラズマの中で発生する電子である。またレーザビームがターゲットを貫通するときに誘導電流信号が急増することが判明した。誘導電流の信号の感度は光学的手法のそれよりも遥かに優れているため、この現象はレーザ加工に実用化できることが分った。
尚、本実験に使用した測定器及び設備は一例であり、同じ特性と機能を有するものであれば、他の物でも構わない。
次に、以上の実験の結果に基づいて、本発明のレーザ加工モニタリングシステムの実施例について説明する。尚、本実施例で説明する構成要素の中で前述した図1と同じ構成要素を使用する場合でも新たな符号を付して説明する。
図18は本発明の一実施形態のレーザ加工モニタリングシステムの構成図である。このレーザ加工モニタリングシステム200は、レーザ照射のために所定の波長のレーザを発射するNd−YAGレーザ(レーザ発射手段)30と、レーザビーム31の焦点を所定の位置に合焦するレンズ(光学手段)32と、レーザビーム31を反射すると共に裏面から画像を透過するハーフミラー(光学モニタ手段)33と、ハーフミラー33により透過された画像からレーザビームの波長成分のみ透過させる干渉フィルタ(光学モニタ手段)34と、干渉フィルタ34を透過した画像をアナログカメラ36とデジタルカメラ37に合焦する光学系(光学モニタ手段)35と、所定の成分からなるガスを充填するチャンバ44と、このチャンバ44内で発生したガスプラズマ48中の電子・イオンによる誘導電流を検出する誘導電流検出回路(誘導電流検出手段)58と、プラズマ発光の時間特性を取得するモノクロメータ(プラズマ発光時間取得手段)57と、ガスプラズマから発せられる連続スペクトル及び線スペクトルを検出するOMAシステム(スペクトル検出手段)41と、ターゲット46をx、y、zの3次元方向に移動する3次元ステージ(3次元移動手段)51と、レーザ照射中のダイナミックな表面変化をリアルタイムで観察するために、ターゲット46の表面を照らすダイオードレーザ45と、誘導電流検出回路58とモノクロメータ57とOMAシステム41の信号に基づいてレンズ32、3次元ステージ51及びNd−YAGレーザ30を制御するシステム制御装置(制御手段)60とを備えて構成される。
尚、Nd−YAGレーザ30は、レーザ発射と同期した外部同期信号61をシステム制御装置60に入力すると共に、システム制御装置60は信号線62によりレーザパワーの制御とパワーON/OFF等の制御を行う。チャンバ44はレーザビームを導入する石英窓44aとガスを入出するガス入口53とガス出口52を備え、ベース56に固定されている。そして内部に2枚の電極50、55が3次元ステージ51に載置され、3次元ステージ51はステージ駆動部59により駆動される。また、モノクロメータ57は光ファイバ54により3次元チャンバ44内の光を導入し、OMAシステム41は光ファイバ43により3次元チャンバ44内の光を導入する構成となっている。またダイオードレーザ45は、光ファイバ47によりターゲット46の表面を照らす構成となっている。また、アナログカメラ36とデジタルカメラ37には、それぞれ画像をモニタするためのモニタ39、40に接続され、ベース56に固定された支柱38に固定されている。またOMAシステム41にもモニタ42が接続され、発光スペクトルを監視できるようになっており、信号線63がシステム制御装置60に入力される。また、誘導電流検出回路58は前述の図1の挿入図23と同様の回路を使用している。そしてプラス側を電極50に接続し、マイナス側を電極55に接続する。またレンズ32は、レンズ駆動部64によりシステム制御装置60の信号線65を通じて焦点距離が制御される。
次に図18を参照してレーザ加工モニタリングシステムの概略動作について説明する。まずチャンバ44を開放して電極55上の所定の位置にターゲット46を設定する。次にチャンバ44を密封してガス入口53からHeガスをチャンバ44内に充填する。このとき外部の圧力を高くして、ガスがガス出口52からわずかに流れるようにし、チャンバ44内のガスが汚れないようにしている。次に所定の波長とパルスエネルギーに設定したNd−YAGレーザ30を駆動する。このとき予めレーザビームの焦点をターゲット46の面上に合焦するようにレンズ駆動部64によりレンズ32を調整しておく。それと同時に誘導電流検出回路58から電極50と55に所定の電圧を印加する。そしてターゲット46の加工が進行すると、モノクロメータ57とOMAシステム41はターゲットプラズマ48から光ファイバ54、43を介してプラズマ発光時間とスペクトルを信号として取得し、システム制御装置60に入力する。これと同時にターゲットプラズマ48から誘導された誘導電流を誘導電流検出回路58が検出してシステム制御装置60に入力する。システム制御装置60は、これらの信号に基づいてターゲット46の加工状態を把握し、ステージ駆動部59に対して3次元信号を出力して必要であれば3次元ステージ51を所定の方向に移動する。また、レーザの停止やパルスエネルギーの制御も信号線62によりシステム制御装置60によりリアルタイムに制御される。尚、レーザ加工中はレーザプラズマの発光に妨害されてターゲット46の表面が観察できないので、ダイオードレーザ45によりターゲット46の表面を照らして、デジタルカメラ37によりターゲット46の静的表面観察を行い、くぼみの大きさ、溝幅の計測、及びレーザ加工精度の評価を行う。またアナログカメラ36はターゲット46の動的表面観察を行い、レーザ照射中のターゲット46の表面状態を観察する。これによりレーザ照射中に加工溝幅等の測定が可能となる。
このように本発明のレーザ加工モニタリングシステム200は、所定のガスを充填したチャンバ44内に、3次元ステージ51上に正負の電極50、55を載置し、この電極間にターゲット46を配置して、そのターゲット46にレーザビーム31をレンズ32の光学手段により合焦するように照射することにより、そのとき発光されるターゲット46からのプラズマの誘導電流、プラズマ発光時間、及びスペクトル強度を誘導電流検出回路58、モノクロメータ57、及びOMAシステム41により検出し、システム制御装置60がそれらの検出信号に基づいて3次元ステージ51及びNd−YAGレーザ30を制御して被加工品をリアルタイムに加工するものである。
尚、本実施例ではシステム制御装置60が各信号をフィードバックして自動的に加工する構成になっているが、モニタを観察しながら人為的に3次元ステージ51を駆動して加工する構成でも構わない。また、レーザにNd−YAGレーザを使用しているが、例えば、各種ナノ秒レーザ、ピコ秒レーザ、フェムト秒レーザ等の他のレーザでも構わない。
本発明の電磁的手法と光学的手法によるガスプラズマ特性研究に用いた実験装置の上面図。 棒状ターゲット25(ロッド)と電極の構成部分を示す実験装置100の側面図。 ガスプラズマによる連続スペクトル発光と誘導電流のタイムプロファイルを示す図。 1atmのHeガスの中で、700Vの電圧差で50mJのレーザパルスを電極間の空間で集束したときの誘導電流信号と発光のタイムプロファイルを示す図。 清浄空気ガスの中でプラズマを発生させた場合に、52mJ(符号42)、27mJ(符号41)、7mJ(符号40)の3通りのパルスエネルギーで、誘導電流信号が供給電圧にいかに左右されるかを示す図。 清浄空気ガスの中でプラズマを発生させる場合に誘導電流信号がレーザパルスエネルギーにいかに左右されるかを示す図。 各条件で撮影したプラズマのイメージ図。 図7(a)と同様の条件で得た540nmでの連続スペクトル発光と誘導電流のタイムプロファイルを示す図であり、(a)は雰囲気ガスが空気の場合を示す図、(b)は雰囲気ガスがHeの場合を示す図。 雰囲気ガスがHeの中でプラスチック製のロッドターゲット上で10mJのレーザパルスを集束させて得られた誘導電流信号を示す図。 精密焦点と脱焦で2.2GW/cmの出力密度を与える集束条件で、雰囲気ガスがHeの中でアルミニウム製ターゲットを照射したときの誘導電流と発光のタイムプロファイルを示す図であり、(a)は精密焦点の場合を示す図、(b)は脱焦の場合を示す図。 精密焦点条件のもと雰囲気ガスがHeの中で鉄製ロッドの表面で10mJのレーザパルスを集束させたときの誘導電流信号を示す図であり、(a)は10ショットの場合を示す図、(b)は290ショットの場合を示す図。 1atmの雰囲気ガスがHeの中で真鍮製ロッドターゲットの固定位置で10mJのレーザパルスを集束したときの誘導電流信号(a)と発光スペクトル(b)を時間経過に沿って並べた図(50回目)。 1atmの雰囲気ガスがHeの中で真鍮製ロッドターゲットの固定位置で10mJのレーザパルスを集束したときの誘導電流信号(a)と発光スペクトル(b)を時間経過に沿って並べた図(250回目)。 1atmの雰囲気ガスがHeの中で真鍮製ロッドターゲットの固定位置で10mJのレーザパルスを集束したときの誘導電流信号(a)と発光スペクトル(b)を時間経過に沿って並べた図(980回目)。 (a)は図12〜図14の実験で得られたレーザ照射の回数にともないZnI(481.0nm)の時間積分発光強度が減少する様子を示す図、(b)はくぼみの深さがレーザの照射回数が増すごとにどう変化するかを示す図。 貫通前の誘導電流信号(a)と貫通が起こる瞬間の誘導電流信号の変化(b)を示す図。 貫通後のループ電流を説明する図。 本発明の一実施形態のレーザ加工モニタリングシステムの構成図。
符号の説明
30 Nd−YAGレーザ、31 レーザビーム、32 レンズ、33 ハーフミラー、34 干渉フィルタ、35 光学系、36 アナログカメラ、37 デジタルカメラ、38 支柱、39、40、42 モニタ、43、47、54 光ファイバ、44 チャンバ、45 ダイオードレーザ、46 ターゲット、 48 ガスプラズマ、50 プラス電極、51 3次元ステージ、52 ガス出口、53 ガス入口、55 マイナス電極、56 ベース、57 モノクロメータ、58 誘導電流回路、59 ステージ駆動部、60 システム制御装置、64 レンズ駆動部

Claims (8)

  1. レーザ照射により被加工品をモニタしながら加工するレーザ加工モニタリングシステムであって、
    前記レーザ照射のために所定の波長のレーザを発射するレーザ発射手段と、前記レーザビームの焦点を前記被加工品の所定の位置に合焦する光学手段と、前記被加工品の加工状態を光学的にモニタする光学モニタ手段と、前記レーザビームを導入するビーム導入窓と、ガスを充填するためのガス入出口とを備え、前記被加工品に前記ビーム導入窓から導入したレーザビームを照射中は、前記ガスを前記ガス入出口から所定の量還流させるチャンバと、該チャンバ内で発生したターゲットプラズマ中の電子・イオンによる誘導電流を検出する誘導電流検出手段と、プラズマ発光の時間特性を取得するプラズマ発光時間取得手段と、前記ターゲットプラズマから発せられる連続スペクトル及び線スペクトルを検出するスペクトル検出手段と、前記被加工品を3次元方向に移動する3次元移動手段と、前記誘導電流検出手段、プラズマ発光時間取得手段、及びスペクトル検出手段の信号に基づいて前記光学手段、3次元移動手段及びレーザ発射手段を制御する制御手段と、を備えたことを特徴とするレーザ加工モニタリングシステム。
  2. 前記制御手段は、前記誘導電流検出手段により誘導された電流変化の立ち上がり時間及び強度変化、又は前記スペクトル検出手段により検出されたスペクトルの発光強度を検出しながら、前記3次元移動手段をリアルタイムに調整して前記被加工品の加工を行うことを特徴とする請求項1に記載のレーザ加工モニタリングシステム。
  3. 前記制御手段は、所定のレーザエネルギーの基では前記正極と負極の電極間に印加する電圧に比例して増加し、前記正極と負極の電極間に印加する所定の電圧の基では前記レーザエネルギーの増加とともに非直線的に増加する性質を有する誘導電流と、前記スペクトル検出手段により検出された前記被加工品の所定のスペクトルの発光強度とを監視することにより、当該被加工品の穿孔の深さを推定することを特徴とする請求項1又は2に記載のレーザ加工モニタリングシステム。
  4. 前記制御手段は、前記誘導電流検出手段により検出された前記被加工品のターゲットプラズマ中の電子・イオンによる誘導電流の変化が急峻に立ち上がり、且つ早期に減衰する信号が強く発生するときをもって、前記被加工品に前記レーザビームの焦点がタイトフォーカスの状態になったものと推定することを特徴とする請求項1又は2に記載のレーザ加工モニタリングシステム。
  5. 前記制御手段は、前記誘導電流検出手段により検出された前記被加工品のターゲットプラズマ中の電子・イオンによる誘導電流の変化を監視することにより、当該被加工品の穿孔が貫通したことを推定することを特徴とする請求項1又は2に記載のレーザ加工モニタリングシステム。
  6. 前記制御手段は、前記プラズマ発光時間取得手段により検出されたプラズマ発光の時間変化を測定することにより、前記被加工品の加工特性の良、不良を推定することを特徴とする請求項1又は2に記載のレーザ加工モニタリングシステム。
  7. 前記誘導電流検出手段は、少なくとも正極と負極の2つの電極と、該電極間に所定の電位を供給する電源と、前記電極間に流れる電流変化を取得する電流変化取得手段とを備え、
    前記正極と負極の2つの電極の少なくとも一方の電極に開口部を備え、前記開口部を備えた電極から前記レーザビームを導入し、前記被加工品を前記2つの電極の何れか一方の電極寄りに配置すると共に、前記電極間に配置された前記被加工品に前記レーザビームを照射し、それにより発生するターゲットプラズマ中の電子・イオンによる誘導電流の変化を前記電流変化取得手段により取得することを特徴とする請求項1又は2に記載のレーザ加工モニタリングシステム。
  8. 前記ターゲットプラズマは、前記レーザビームの出力密度が十分高いときでレーザアブレーションが開始される際に排出される超高速電子と、前記レーザビームの照射の際に前記被加工品の真上で発生する高密度一次プラズマの中に存在する電子と、強い衝撃波が気体の中で拡大するときに二次プラズマの中で発生する電子とから成ることを特徴とする請求項1乃至5、又は7に記載のレーザ加工モニタリングシステム。
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