JP4284394B2 - 植穴形成装置 - Google Patents

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Description

この発明は、植穴形成装置に関し、さらに詳しくは、野菜苗等の植穴形成装置に関する。
従来、圃場に形成された畝に植穴をあけ、その植穴に野菜苗を自動式、或いは半自動式に植え付ける移植装置が知られている(例えば、特許文献1、2、3、4参照)。
これら従来の移植装置のなかで扱える野菜苗が最大なものは、関東におけるキャベツ大苗移植用に開発されたアタッチメントを装着した裸苗用半自動式移植機であり、この移植機によると露地にてポット径80mm、高さ150〜280mmまでのキャベツ苗の移植が可能であった(例えば、非特許文献1参照)。
しかしながら、上記した従来の移植装置にあっては、作業機速度と移植速度(穴あけ速度、植え付け速度)とが最大80mmまでのポット径に対応するように構成されている。そのため、従来の移植装置をポット径が100mmを超える大苗用ポットを移植するマルチ栽培に用いる場合、ただ単にポット径を拡大しただけでは、作業機速度と移植速度との同期を十分にとることはできず、苗の引きずりや転倒が発生してしまうという問題があった。
このため、ポット径105mmのポリポットを用いたマルチ栽培が主流であるカボチャやトマトなどの大苗は、移植装置の代わりに作業者が、先端部が鋭利なくちばし状の穴あけ具(例えば、商品名ホーラー)をマルチで覆われた畝に差し込んで植穴を1つずつあけていき、その植穴に大苗を植え付けていかなければならず、作業者の労力負担は大きくて、広大な農場を有する生産農家にとって移植作業は重労働となり、作業の省力化が強く望まれていた。
特開昭59− 31602号公報 特開昭62−239909号公報 特開平 1−160412号公報 特開平10−164947号公報 「キャベツ地床大苗の定植ができる歩行型半自動移植機」 関東東海北陸農業・関東東海・作業技術 2003
そこで、この発明は、上記した従来技術が有している問題点を解決するためになされたものであって、これまで人力で行われてきた大苗の移植作業の機械化を促進し、大苗を利用した大規模野菜栽培の省力化を図ることができる植穴形成装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため第1の発明は、圃場を走行する走行車輪を備えた機体と、機体前後方向に向かって回転可能となるように前記機体に取り付けられた梯子状部材と、前記梯子状部材の両端部に回動可能に支持され、前記梯子状部材の回転動作により圃場に植穴をあける円筒部と、前記梯子状部材を回転動作させるための駆動源と、前記駆動源と前記梯子状部材との間に配設され、前記駆動源の駆動力によって前記走行車輪の回転方向と同一方向に向かって前記梯子状部材を回転動作させると共に、前記円筒部が圃場に植穴をあける際の対地速度を一定にする楕円2葉歯車機構部と、前記梯子状部材と前記円筒部との間に配設され、前記梯子状部材の回転動作によって前記円筒部を前記梯子状部材の回転方向とは異なる方向に回転動作させて前記円筒部が常時下向き姿勢となるように回転動作させる傘歯車機構部と、を備えて構成されていることを特徴とする。
上記目的を達成するため第2の発明は、第1の発明において、前記楕円2葉歯車機構部は、前記駆動源の駆動力によって前記走行車輪の回転方向とは異なる方向に回転動作される第1の回転軸と、前記第1の回転軸に連なって設けられた第1の楕円2葉歯車と、前記第1の楕円2葉歯車に噛み合わされると共に前記梯子状部材の回転中心軸に連なって設けられ、前記走行車輪の回転方向と同一方向に前記梯子状部材を回転動作させる第2の楕円2葉歯車と、を備えて構成され、前記円筒部が下降限度或いは上昇限度近くに位置している状態にあっては、前記梯子状部材の回転速度を遅くし、前記円筒部が下降限度或いは上昇限度近くとは異なる位置に位置している状態にあっては、前記梯子状部材の回転速度を速くすることを特徴とする。
上記目的を達成するため第3の発明は、第1又は第2の発明において、前記傘歯車機構部は、前記梯子状部材の回転中心軸に連なって設けられ、前記梯子状部材の回転方向と同一方向に回転動作する第1の傘歯車と、前記第1の傘歯車に噛み合わされると共に前記梯子状部材の長手方向に沿って延設された第1の駆動軸部の一端部に設けられた第2の傘歯車と、前記第1の駆動軸部の他端部に設けられた第3の傘歯車と、前記第3の傘歯車に噛み合わされると共に前記梯子状部材の短手方向に向かって延設され、且つ前記円筒部に連なった第2の駆動軸部の一端部に設けられた第4の傘歯車と、を備えて構成されていることを特徴とする。
上記目的を達成するため第4の発明は、第1乃至第3の発明の何れか1つにおいて、前記駆動源は、前記走行車輪であることを特徴とする。
第1〜4の発明によれば、走行車輪が回転動作すると、走行車輪の回転方向と同一方向に梯子状部材が回転動作すると共に、この梯子状部材が1回転する間に2回速度変化が現れる。この速度変化は、円筒部が下降限度或いは上昇限度近くに位置している状態にあっては、梯子状部材の回転速度が遅くなり、また、円筒部が下降限度或いは上昇限度近くとは異なる位置に位置している状態にあっては、梯子状部材の回転速度が速くなる。さらに、この梯子状部材の回転動作に伴って円筒部は常時下向き姿勢となるように回転動作される。これにより、円筒部が圃場に植穴をあける際の対地速度を一定に保つことができるようになるので、梯子状部材が回転動作しながら円筒部を圃場に挿抜しても、引きずりの殆どない植穴が容易に形成される。その結果、これまで人力で行われてきた大苗の移植作業の機械化を促進し、大苗を利用した大規模野菜栽培の省力化を図ることができる植穴形成装置を提供することが可能となる。また、梯子状部材を回転動作させて植穴をあける際の駆動源に走行車輪の回転動作を用いることによって、機体を簡素化、低コストに構成することができるうえに、機体のメンテナンスを容易化することができる。
上記目的を達成するため第5の発明は、第1乃至第4の発明の何れか1つにおいて、前記円筒部は、機体幅方向に開閉可能となるように2つに分割形成されていると共に、前記梯子状部材の回転動作に伴って前記円筒部が下降限度から上昇限度に至る過程で前記円筒部を開閉動作させる円筒部開閉機構部を備えていることを特徴とする。
上記目的を達成するため第6の発明は、第5の発明において、前記円筒部開閉機構部は、分割形成された前記円筒部の上端部に連なると共に、前記円筒部を機体幅方向に向かって開閉可能とするように前記梯子状部材に揺動可能に支持された左右一対の可動枠部材と、前記可動枠部材の上部間に介設され、前記可動枠部材の上部を機体幅方向に常時付勢することによって分割形成された前記円筒部を1つに係合させる付勢手段と、前記可動枠部材に取り付けられた第1の摺接部材と、植穴をあけた前記円筒部が下降限度から上昇限度に向けて移動し、次の植穴をあけるために畝に差し込まれたもう一方の円筒部の斜め上方位置に到達すると、前記第1の摺接部材を機体外側から内側に向かって押圧しながら摺接移動することによって、前記円筒部を開閉動作させて、前記円筒部内に保持した土壌を次の植穴の後方に落下させるように前記梯子状部材に取り付けられた第2の摺接部材と、を備えて構成されていることを特徴とする。
第5又は第6の発明によれば、円筒部が圃場に植穴をあけた際、圃場から採取した土壌は、梯子状部材の回転動作に伴って円筒部が下降限度から上昇限度に至る過程で円筒部開閉機構部により開動作されて、円筒部内から下方側に向けて排出され、他方の円筒部があけた植穴の後方に落下する。これにより、第1〜4の何れか1つの発明の作用効果に加えて、円筒部から排出された土壌を土寄せとして用いることができ、移植作業を行う作業者の負荷を軽減することができるようになる。
上記目的を達成するため第7の発明は、第1乃至第6の発明の何れか1つにおいて、前記円筒部は、上部よりも下部の径が大きい逆テーパ型をなしていることを特徴とする。
第7の発明によれば、円筒部内にあっては、その内部に保持した土壌に内向きの圧縮力が発生する。これにより、第1乃至第6の発明の何れか1つの作用効果に加えて、円筒部内における土壌の保持率を高めることができ、円筒部内の土壌が不用意に排出されるのを未然に防止することができる。
本発明の植穴形成装置によれば、梯子状部材が1回転する間、円筒部を常時下向き姿勢とすると共に、円筒部が下降限度或いは上昇限度近くに位置している状態にあっては、梯子状部材の回転速度を遅くし、また、円筒部が下降限度或いは上昇限度近くとは異なる位置に位置している状態にあっては、梯子状部材の回転速度を速くする。これにより、円筒部が圃場に植穴をあける際の対地速度を一定に保つことができるようになるので、梯子状部材が回転動作しながら円筒部を圃場に挿抜しても、引きずりの殆どない植穴が容易に形成される。その結果、これまで人力で行われてきた大苗の移植作業の機械化を促進し、大苗を利用した大規模野菜栽培の省力化を図ることが可能となる。
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。図1は、本発明の植穴形成装置の平面図、図2は、図1の側面図、図3は、同例における植穴形成装置の背面図、図4は、同例における植穴形成装置の斜視図、図5は、同例における円筒部の対地速度シミュレーション図である。
本植穴形成装置の構成について説明する。図1〜4に示されるように、本植穴形成装置10は、例えば、トラクタ、耕耘機等の牽引車に牽引される形態を有した植穴形成装置であって、圃場に形成された畝(全面マルチ、或いは無マルチ)100を跨いで走行する左右一対の走行車輪11,11を備えた腰高の機体12と、機体前後方向に向かって回転可能となるように機体12に取り付けられた梯子状部材としての円筒部支持フレーム13と、円筒部支持フレーム13の両端部に回動可能に支持され、円筒部支持フレーム13の回転動作により畝に大苗用の植穴101を交互にあけると共に、機体幅方向に向かって開閉可能となるように2分割形成された一対の円筒部14,14と、走行車輪11,11と円筒部支持フレーム13との間に配設され、駆動源としての走行車輪11,11の回転動作によって走行車輪11,11の回転方向と同一方向に向かって円筒部支持フレーム13を回転動作させると共に、円筒部14,14が圃場に植穴101をあける際の対地速度を一定にする楕円2葉歯車機構部15と、円筒部支持フレーム13と円筒部14,14との間に配設され、円筒部支持フレーム13の回転動作によって円筒部14,14を円筒部支持フレーム13とは異なる方向に回転動作させて円筒部14,14が常時下向き姿勢となるように回転動作させる傘歯車機構部16と、を備えて構成されている。
機体12は、図1に示されるように、平面視矩形状のフレーム体とされ、機体前後方向に離間して配置された前側及び後側フレーム17,18と、機体幅方向に離間して配置された左側及び右側サイドフレーム19,20とを備えている。前側フレーム17の前面側には、牽引車と機体12とを連結する連結ボルト挿通用の挿通孔21(図2に図示)が穿設された左右一対の連結フランジ22,22が、機体前方(牽引車側)に向かって張り出された状態で取り付け固定されている。
後側フレーム18には、平面視コ字状のシート支持部材23が、図2に示されるように、機体後方に向かって左側及び右側サイドフレーム19,20の高さよりも低く、且つ畝100に干渉しないように張り出された状態で着脱可能に取り付け固定されている。このシート支持部材23の後部の横架部材24のほぼ中央部には、作業員が着座する単座のシート25が前向き姿勢の状態で取り付け固定されている。さらに、機体12後部とシート25との間には、野菜苗(例えば、有機質成型大苗用ポット)を複数収容したカゴトレー(図示せず)を載置可能とする空間Sが十分に確保されている。
後側フレーム18の下面側には、図3に示されるように、畝100に干渉しないように下方側に向かって垂下された左右一対のコ字状の連結フレーム26,26の上端部が機体幅方向に離間した状態で結合固定されている。これらの連結フレーム26,26の背面側下部には、片側の走行車輪11と一体となって回転する車軸27,27を軸支する軸受部28がそれぞれ複数設けられている。ところで、これら左右の車軸27,27は連なっておらず、少なくとも一方(この実施形態にあっては右側)の車軸27は、畝幅に応じて張り出し量を調整することが可能とされている。
ここで、楕円2葉歯車機構部15の構成について説明する。図1に示されるように、左側の車軸27には、この車軸27の回転と共に一体的に回転する第1の歯車29が左側サイドフレーム19よりも機体外側となる位置に結合固定されている。さらに、この第1の歯車27の斜め前方には、図2に示されるように、左側サイドフレーム19から斜め上方に向かって延びた状態で固定されたアーム部材30の先端に回転可能に軸支された第2の歯車31と、この第2の歯車31のほぼ下方側に位置するように左側サイドフレーム19の上面側に回転可能に軸支された第3の歯車32と、この第3の歯車32よりも前方側、且つ下方側に位置する左側サイドフレーム19の下面側に回転可能に軸支された第4の歯車33とが配設されている。
これら第1〜第4の歯車29,31〜33には、走行車輪11,11が前方に向かって回転動作するのに伴って第1の歯車29が走行車輪11,11と同一方向(図2中反時計回り方向)に回転すると、第2、第4の歯車も同一方向(図2中半時計回り方向)に回転するのに対し、第3の歯車32は走行車輪11,11の回転方向とは異なる方向(図2中時計回り方向)に回転するようにチェーン34が巻装されている。
第3の歯車32が取り付け固定された第1の回転軸(入力軸)35は、図1に示されるように、機体幅方向に向かって延びるように設けられていると共に、この第1の回転軸35の両端部は、左側サイドフレーム19と、この左側サイドフレーム19のほぼ中央部内面側に結合固定された平面視コ字状の支持フレーム36との上面側にそれぞれ設けられた軸受(図示せず)によって回転可能に軸支されている。この第1の回転軸35の機体前方側には、第1の回転軸35と予め設定された所定間隔をあけた円筒部支持フレーム13の回転中心軸としての第2の回転軸(出力軸)37が並列配置されている。第2の回転軸37の両端部は、左側及び右側サイドフレーム19,20の上面側にそれぞれ設けられた軸受(図示せず)によって回転可能に軸支されている。
左側サイドフレーム19の内側面に近接した第1の回転軸35の右端部には、第1の楕円2葉歯車38が結合固定されていると共に、この第1の楕円2葉歯車38に噛み合わされる第2の楕円2葉歯車が、第2の回転軸37の左端部に結合固定されている。そして、これら2つの第1及び第2の楕円2葉歯車38,39によって、走行車輪11,11の回転方向と同一方向に第2の回転軸37が回転すると、第1の回転軸35が1回転するのに伴って第2の回転軸37が1回転する間に2回速度変化が現れるようになっている。さらには、円筒部14,14が植穴101をあける際の対地速度が一定に保たれるようになっている。
なお、第2の回転軸37の速度変化及び植穴101をあける際の円筒部14,14の対地速度については後述する。また、第2〜第4の歯車31〜33、第1及び第2の楕円2葉歯車38,39の上方を防護カバーで覆うことによって、後述するように円筒部14から排出される土壌がかからないようにするのが望ましい。
この第2の回転軸37のほぼ中央部には、前側及び後側フレーム17,18等に干渉することなく機体前後方向に向かって回転可能とされた円筒部支持フレーム13の回転中心が一体的に結合固定されている。この円筒部支持フレーム13は、左右一対の長尺部材40,40と、これら長尺部材40,40を連結し、且つ長尺部材40,40に回動可能に軸支された中空軸状の連結部材41,41とによって梯子状に形成されている。
次に、傘歯車機構部16の構成について説明する。円筒部支持フレーム13の右側方に近接した第2の回転軸37には、第1の傘歯車42が円筒部支持フレーム13側に歯面を向けた状態で一体的に結合固定されている。さらに、円筒部支持フレーム13の右側面には、第2の回転軸37に直交するように延設された2つの駆動力伝達軸43,43が、第2の回転軸37を挟んだ状態で軸受部材44,44によって回転可能に軸支されている。これら駆動力伝達軸43,43の第2の回転軸側の軸端部には、第1の傘歯車42に噛み合う第2の傘歯車45,45がそれぞれ結合固定されていると共に、第2の回転軸側とは異なる軸端部には、第3の傘歯車46,46がそれぞれ結合固定されている。
また、円筒部支持フレーム13の連結部材41,41の内部には、駆動力伝達軸43,43に直交するように延設された駆動軸部(図示せず)が挿入配置された状態で、連結部材41,41の外周面から内部の駆動軸部に向かってねじ込まれる固定用ボルト(図示せず)によって抜け止め固定されている。さらに、これらの軸部の右端部には、第3の傘歯車46,46に噛み合う第4の傘歯車47,47がそれぞれ結合固定されている。そして、これら第1〜第3の歯車42,45〜46は、走行車輪11,11の回転動作に伴って円筒部支持フレーム13が走行車輪11,11の回転方向と同一方向に回転動作する状態にあっては、連結部材41,41の下方側に組み付けられる円筒部14,14が常に下向きの姿勢を維持するように第4歯車47,47を第2の回転軸37の回転方向と同一方向に回転駆動する。
さらに、これら連結部材41,41には、円筒部開閉機構部48,48が組み付けられている。すなわち、図4に示されるように、円筒部開閉機構部48は、半割状の円筒部14A,14Bの上端部に連なると共に、1つとなるように係合された円筒部14を機体幅方向に向かって開閉可能とするように連結部材41に揺動可能に支持された左右一対の可動枠部材49,49と、これら可動枠部材49,49の上部間に介設され、可動枠部材49,49の上部を機体幅方向に常時付勢することによって半割状の円筒部14A,14Bを1つに係合させる付勢手段としての圧縮コイルバネ50と、可動枠部材49,49の上部から斜めに張り出された取付フランジ51,51の上面側に取り付け固定された第1の摺接部材としての扁平玉型のカム52,52とを備えて構成されている。
さらにまた、植穴101をあけた円筒部14が円筒部支持フレーム13の回転動作に伴って上昇限度に向けて移動し、予め設定された所定箇所、つまり次の植穴101をあけるために畝に差し込まれたもう一方の円筒部14の斜め上方位置に到達すると、これらのカム52,52を機体外側から内側に向かって押圧することによって円筒部14を開動作させて、円筒部14内に保持した土壌を第2の回転軸37に殆どかけることなく、次の植穴101の後方に落下させるための第2の摺接部材としてのベアリング53,53が、円筒部支持フレーム13の両端部に設けられたクランク型の取付ステー54,54を介して取り付け固定されている。なお、これら取付ステー54,54は、長尺部材40,40の長手方向に向かって移動させることによって円筒部開閉タイミングを調整することが可能とされている。
ここで、円筒部14の形状について説明すると、1つに係合された円筒部14は、例えば、上部の直径が約100mm、下部の直径が約120mm、高さが約200mmの逆テーパー型とされていると共に、円筒部14の下端縁には三角歯14Cが一体的に形成されている。これにより、マルチで覆われた畝100であっても円筒部14を畝100に容易に差し込んで内部に土壌を保持させることができるので、従来は鋭利なくちばし状の穴あけ具を用いていたため、作業者にとって非常に負荷が大きく困難であった大苗用の植穴101をあける際の負荷が大幅に低減される。さらに、畝100に差し込んだ円筒部14をほぼ真上に持ち上げても、ベアリング53,53がカム52,52を押圧しない限りは、円筒部14内の土壌は筒内部において内向きに発生する圧縮力によって下部開孔から下方に向かって落ちないようになっている。そして、この円筒部14内に保持した土壌は、他方の円筒部14が形成する植穴101の後方に落下させることにより、野菜苗の土寄せに利用可能とされている。なお、各円筒部14内には、マルチカス回収針55が連結部材41から垂下された状態で配設されている。
上述した構成により、走行車輪11,11の回転動作に伴って第2の回転軸32が走行車輪11,11の回転方向と同一方向に回転動作すると、円筒部支持フレーム13も走行車輪と同一方向に回転動作する。回転動作中の円筒部支持フレーム13にあっては、第1及び第2の楕円2葉歯車38,39によって、ほぼ機体前後方向に向かって延びるような回転領域内に位置している状態にあっては回転速度が速くなり、また、ほぼ機体上下方向に延びるような回転領域内に位置している状態にあっては回転速度が遅くなるように予め速度調節がなされるようになっている。
さらに、円筒部支持フレーム13の両端部に配設された2つの円筒部14,14は、円筒部支持フレーム13が回転動作しても、第1〜第4の傘歯車42,45〜47によって第2の回転軸37と異なる方向に回転動作されて常に下向きの姿勢を保持するようになっている。そして、円筒部支持フレーム13が回転しながら機体12と共に機体前方側に向かって移動する際に2つの円筒部14,14が描く軌跡は、位相が約180度ずれた2つのトロコイド曲線であり、一方の円筒部14がトロコイド曲線の上昇限度近くに位置し、他方の円筒部14が下降限度近くに位置している状態であれば円筒部14の移動速度が遅くなるのに対し、いずれの円筒部14,14も上昇限度近く、或いは下降限度近くとは異なる位置に位置している状態であれば円筒部14,14の移動速度は速くなる。これにより、図5に示されるように、植穴101をあける際の速度比が、慣行歯車駆動にあっては1であるのに対し、本植穴形成装置10においては1.3〜1.5となるので、開孔所要時間を十分に確保することができる。その結果、植穴101をあける際の円筒部14,14の対地速度を一定にすることが可能となり、引きずりの少ない開孔が可能となる。
なお、図5は、円筒部対地速度のシミュレーションを示している。このシミュレーションの結果、直径約15cmの植穴101をあける場合、慣行の歯車を用いると孔径を約5cm広げてしまう引きずりが発生するのに対し、本植穴形成装置10によると約5mm程度の引きずりに抑えることが可能となる。
さらには、下降限度と上昇限度とのほぼ中間に位置する円筒部14が上昇限度に近づく際に、円筒部支持フレーム13の回転動作に伴ってベアリング53,53がカム52,52を機体外側から内側に向かって押圧したのちカム52,52から離脱することによって、円筒部14が機体幅方向に開動作したのち閉動作する。これにより、植穴101をあける際に円筒部14内に保持された土壌が円筒部14の開動作に伴ってマルチ上に排出されるので、野菜苗の土寄せに利用することができる。
次に、本植穴形成装置10を用いて行われる野菜苗の移植作業について説明する。
なお、この移植作業にあっては、牽引車を操縦する作業者と植穴形成装置10のシート25に着座して野菜苗を手作業で植え付ける作業者との2名が必要である。
まず、作業者は、牽引車及び植穴形成装置10が畝を跨ぐように配置させた状態で、牽引車の後部に植穴形成装置10の前部を連結すると共に、例えば、有機質成型大苗用ポット等の野菜苗を複数収容したカゴトレーを植穴形成装置10の所定位置に搭載する。交換用カゴトレーは、植穴形成装置10に搭載したカゴトレーの上方に複数段積み重ねるように載置したり、円筒部支持フレーム13に干渉しないように機体12から側方に向けて張り出すように載置したり、或いは、畝100に沿って予め設定された所定間隔をあけて配置しておくようにするのが好ましいが、これらに限定されるものではない。
そして、準備が終了すると、一方の作業者が牽引車に乗り込み、他方の作業者が植穴形成装置10のシート25に着座した状態で、畝100を跨ぎながら牽引車を走行させる。走行速度の一例を挙げると、株間平均約69cm、開孔径約140mm、深さ約9〜10cmの開孔・移植にて、土寄せ無しの場合が、約0.16m/s、土寄せ有りの場合が、約0.09m/sである。
牽引車に牽引されることにより植穴形成装置10の走行車輪11,11が回転動作すると、円筒部支持フレーム13が走行車輪11,11の回転方向と同一方向に回転し、下降限度に近づいた一方の円筒部14が畝100に差し込まれて植穴101をあけたのち、ほぼ直上にむけて引き抜かれる。植穴101をあけたばかりの円筒部14は、下降限度から上昇限度に向かって上昇移動しながらその内部に保持した土壌を他方の円筒部14があける次の植穴101と植穴形成装置10のシート25に着座した作業者との間に土壌を放出する。そして、植穴形成装置10のシート25に着座した作業者は、畝にあけられたばかりの植穴101にカゴトレーから取り出した野菜苗(大苗)を移し換えると共に、マルチ上に放出された土壌を寄せて押さえつける。なお、土寄せは、図示しない倍土板を用いて行うようにしてもよい。また、円筒部14,14が植穴101をあける際にマルチから切り取ったマルチカスは、マルチカス回収針55によって回収される。このような移植作業を繰り返し行うことによって、野菜苗の移植作業が迅速、且つ適切に行われる。
上述のようにして行われた本植穴形成装置10による移植作業にかかった時間と、従来の穴あけ具を用いた慣行の移植作業にかかった時間との比較結果を土寄せ作業のある・なしに分けて以下に示す。なお、試験圃場は湿性火山灰土、試験時の土壌水分は、25.6〜27.3%であった。
堆肥ポット育苗トマト苗33個を供試した実験の結果、慣行の作業において土寄せを行わない場合、1ポット当たり7.4秒、また、土寄せを行った場合、1ポット当たり13.2秒であった。これに対し、本植穴形成装置10による移植作業において土寄せを行わない場合、1ポット当たり平均4.3秒、また、土寄せを行った場合、1ポット7秒で植え付けが可能であった。
すなわち、本植穴形成装置10によれば、土寄せを行わない場合は、慣行人力作業の54%、土寄せを行った場合は慣行人力作業の53%の作業時間で作業を終了することができ、慣行人力作業に比較して移植作業時間を大幅に短縮することが確認された。
また、本植穴形成装置10による株間は、平均約691mm(最大で約710mm、最小で約650mm)、開孔径は、平均約138mm(最大で約155mm、最小で約130mm)であり、シミュレーションの結果と同様に、引きずりの少ない開孔を実現することができた。なお、円筒部14,14による土壌保持率は90%以上であった。
これらの結果、機能性有機質成型ポットを利用した環境保全型栽培技術による高度化事業において、外径120mm、内径100mm、深さ100mmの有機質(堆肥)ポットの機械移植技術の開発を促進することが可能となる。
なお、本植穴形成装置10は牽引車に牽引される形態としたが、これに限定されるものではなく、自走型の植穴形成装置として構成することも可能である。
また、第1の回転軸35の回転駆動力は、走行車輪11,11から供給される形態に限られたものではなく、例えば、油圧モータ、電気モータ、牽引車のPTO等から供給される駆動力によって、走行車輪11,11から供給される回転駆動力と同様に、第1の回転軸35を回転動作させるように構成することも可能である。
以上述べたように本発明によれば、走行車輪11,11が回転動作すると、走行車輪11,11の回転方向と同一方向に円筒部支持フレーム13が回転動作すると共に、この円筒部支持フレーム13が1回転する間に2回速度変化が現れる。この速度変化は、円筒部14,14が下降限度或いは上昇限度近くに位置している状態にあっては、円筒部支持フレーム13の回転速度が遅くなり、また、円筒部14,14が下降限度或いは上昇限度近くとは異なる位置に位置している状態にあっては、円筒部支持フレーム13の回転速度が速くなる。さらに、この円筒部支持フレーム13の回転動作に伴って円筒部14,14は常時下向き姿勢となるように回転動作される。これにより、円筒部14,14が畝100に植穴101をあける際の対地速度を一定に保つことができるようになるので、円筒部支持フレーム13が回転動作しながら円筒部14,14を畝100に差し込んだのち引き抜いても、引きずりの殆どない植穴101が容易に形成される。その結果、これまで人力で行われてきた大苗の移植作業の機械化を促進し、大苗を利用した大規模野菜栽培の省力化を図ることができる植穴形成装置を提供することができる。また、円筒部支持フレーム13を回転動作させて植穴をあける際の駆動源に走行車輪11,11の回転動作を用いることによって、機体12を簡素化、低コストに構成することができるうえに、機体12のメンテナンスを容易化することができる。
また、本発明によれば、一方の円筒部14が畝100に植穴101をあけた際、畝100から採取した土壌は、円筒部支持フレーム13の回転動作に伴って一方の円筒部14が下降限度から上昇限度に至る過程で円筒部開閉機構部48により開動作されて、一方の円筒部14内から下方側に向けて排出され、他方の円筒部14があけた植穴101の後方に落下する。これにより、円筒部14から排出された土壌を土寄せとして用いることができるようになり、移植作業を行う作業者の負荷を軽減することができる。
さらに、本発明によれば、1つに係合された円筒部14内にあっては、その内部に保持した土壌に内向きの圧縮力が発生する。これにより、円筒部14内における土壌の保持率を高めることができ、円筒部14内の土壌が不用意に排出されるのを未然に防止することができる。
本発明の植穴形成装置の平面図である。 図1の側面図である。 同例における植穴形成装置の背面図である。 同例における植穴形成装置の斜視図である。 同例における円筒部の対地速度シミュレーション図である。
符号の説明
10 植穴形成装置
11 走行車輪(駆動源)
12 機体
13 円筒部支持フレーム(梯子状部材)
14 円筒部
15 楕円2葉歯車機構部
16 傘歯車機構部
35 第1の回転軸
37 第2の回転軸(梯子状部材の回転中心軸)
38 第1の楕円2葉歯車
39 第2の楕円2葉歯車
42 第1の傘歯車
45 第2の傘歯車
46 第3の傘歯車
47 第4の傘歯車
48 円筒部開閉機構部
49 可動枠部材
50 圧縮コイルバネ(付勢手段)
52 カム(第1の摺接部材)
53 ベアリング(第2の摺接部材)
100 畝
101 植穴

Claims (7)

  1. 圃場を走行する走行車輪を備えた機体と、
    機体前後方向に向かって回転可能となるように前記機体に取り付けられた梯子状部材と、
    前記梯子状部材の両端部に回動可能に支持され、前記梯子状部材の回転動作により圃場に植穴をあける円筒部と、
    前記梯子状部材を回転動作させるための駆動源と、
    前記駆動源と前記梯子状部材との間に配設され、前記駆動源の駆動力によって前記走行車輪の回転方向と同一方向に向かって前記梯子状部材を回転動作させると共に、前記円筒部が圃場に植穴をあける際の対地速度を一定にする楕円2葉歯車機構部と、
    前記梯子状部材と前記円筒部との間に配設され、前記梯子状部材の回転動作によって前記円筒部を前記梯子状部材の回転方向とは異なる方向に回転動作させて前記円筒部が常時下向き姿勢となるように回転動作させる傘歯車機構部と、を備えて構成されていることを特徴とする植穴形成装置。
  2. 前記楕円2葉歯車機構部は、
    前記駆動源の駆動力によって前記走行車輪の回転方向とは異なる方向に回転動作される第1の回転軸と、
    前記第1の回転軸に連なって設けられた第1の楕円2葉歯車と、
    前記第1の楕円2葉歯車に噛み合わされると共に前記梯子状部材の回転中心軸に連なって設けられ、前記走行車輪の回転方向と同一方向に前記梯子状部材を回転動作させる第2の楕円2葉歯車と、を備えて構成され、
    前記円筒部が下降限度或いは上昇限度近くに位置している状態にあっては、前記梯子状部材の回転速度を遅くし、前記円筒部が下降限度或いは上昇限度近くとは異なる位置に位置している状態にあっては、前記梯子状部材の回転速度を速くすることを特徴とする請求項1に記載の植穴形成装置。
  3. 前記傘歯車機構部は、
    前記梯子状部材の回転中心軸に連なって設けられ、前記梯子状部材の回転方向と同一方向に回転動作する第1の傘歯車と、
    前記第1の傘歯車に噛み合わされると共に前記梯子状部材の長手方向に沿って延設された第1の駆動軸部の一端部に設けられた第2の傘歯車と、
    前記第1の駆動軸部の他端部に設けられた第3の傘歯車と、
    前記第3の傘歯車に噛み合わされると共に前記梯子状部材の短手方向に向かって延設され、且つ前記円筒部に連なった第2の駆動軸部の一端部に設けられた第4の傘歯車と、を備えて構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の植穴形成装置。
  4. 前記駆動源は、前記走行車輪であることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1つに記載の植穴形成装置。
  5. 前記円筒部は、機体幅方向に開閉可能となるように2つに分割形成されていると共に、前記梯子状部材の回転動作に伴って前記円筒部が下降限度から上昇限度に至る過程で前記円筒部を開閉動作させる円筒部開閉機構部を備えていることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1つに記載の植穴形成装置。
  6. 前記円筒部開閉機構部は、
    分割形成された前記円筒部の上端部に連なると共に、前記円筒部を機体幅方向に向かって開閉可能とするように前記梯子状部材に揺動可能に支持された左右一対の可動枠部材と、
    前記可動枠部材の上部間に介設され、前記可動枠部材の上部を機体幅方向に常時付勢することによって分割形成された前記円筒部を1つに係合させる付勢手段と、
    前記可動枠部材に取り付けられた第1の摺接部材と、
    植穴をあけた前記円筒部が下降限度から上昇限度に向けて移動し、次の植穴をあけるために畝に差し込まれたもう一方の円筒部の斜め上方位置に到達すると、前記第1の摺接部材を機体外側から内側に向かって押圧しながら摺接移動することによって、前記円筒部を開閉動作させて、前記円筒部内に保持した土壌を次の植穴の後方に落下させるように前記梯子状部材に取り付けられた第2の摺接部材と、を備えて構成されていることを特徴とする請求項5に記載の植穴形成装置。
  7. 前記円筒部は、上部よりも下部の径が大きい逆テーパ型をなしていることを特徴とする請求項1乃至6の何れか1つに記載の植穴形成装置。
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