JP4279194B2 - 飛行体及び飛行体のモード切替方法 - Google Patents
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Description
これら回転翼機及び固定翼機の利点を兼ね備えた飛行体が求められている。
このような飛行体としては、例えば後記の特許文献1に記載の航空機がある。
この航空機は、垂直飛行時に揚力を発生させる手段と、水平飛行時に揚力を発生させる翼とを有している。
また、垂直飛行時から水平飛行に移行する際には、垂直飛行時に十分な速度を得なくてはならないので、燃料消費量が多かった。
このため、活動可能時間が短く、運用できる範囲が限られていた。
すなわち、本発明にかかる飛行体は、機軸方向に延びる柱状の本体と、該本体に対して前記機軸に平行な回転軸線回りに回転可能にして設けられる回転翼と、該回転翼を前記回転軸線回りに回転駆動する回転翼駆動装置と、該回転翼駆動装置と前記回転翼とを接続して前記回転翼駆動装置の駆動力を前記回転翼に伝達する回転翼駆動軸と、機首側に向かう推力を発生させる推進装置と、動作形態をホバリングモードと飛行モードとのうちのいずれか一方に切り替えるモード切替装置とを有しており、前記回転翼は、それぞれピッチ角を可変にして前記回転軸線回りに放射状に配置された複数のブレードを有しており、前記モード切替装置は、前記飛行モード時に前記本体に対する前記回転翼の前記回転軸線回りの位置を固定する固定装置と、前記ホバリングモード時には前記各ブレードの前縁を前記回転翼の回転方向に向け、前記飛行モード時には前記各ブレードの前縁を機首側に向けるとともに、いずれのモードにおいても前記各ブレードに所望の揚力を生じさせるための迎角を与えるピッチ角調整装置とを有していることを特徴とする。
ホバリングモード時には、回転翼は回転翼駆動装置によって回転軸線回りに回転駆動される。回転翼を構成する各ブレードは、ピッチ角調整装置によってそれぞれ前縁を回転翼の回転方向に向けられ、かつ回転翼の回転面に対して所望の迎角が与えられるので、回転翼が機軸方向に向かう推力を発生させる。
ここで、この飛行体においても、ホバリングモード時には、通常のヘリコプターと同様に、各ブレードのピッチ角を制御することで、垂直方向、水平方向、及び斜め方向のいずれの方向にも移動することが可能である。
ここで、各ブレードが水平面に対して傾斜しかつ左右対称配置となるようにして(例えば機首側から見てX字状となるようにして)回転翼を固定することで、各ブレードが水平翼と垂直翼との両方の役割を果たす。
また、この飛行体では、ホバリングモード時と飛行モード時のいずれの場合においても、前縁が回転方向もしくは飛行方向に向けられるので、各ブレードの断面形状を、より揚力発生に適した形状(前縁から後縁に向かうにつれて厚みが薄くなる流線型)にして、高い揚力を発生させることができ、燃料消費量が少なくて済む。
また、この飛行体は、ホバリングモード時に推力を発生させる回転翼と、飛行モード時に推力を発生させる推進装置とが、いずれも機軸方向に推力を発生する構成とされているので、一方のモードから他方のモードに移行する際に、推力の向きを制御する必要がない。
このため、この飛行体では、モード切替時の制御が容易であり、モードの移行をスムーズに行うことができる。
そして、この飛行体は、飛行モードからホバリングモードへ移行する際には、上昇過程で減速されるので、高速水平飛行からただちにホバリング飛行に移行することができ、機動性に優れている。
このため、スワッシュプレートの対向部位を、この対向部位に接続されるブレードのピッチ方向の回転軸線に対向する位置まで回転させることができ、ブレードを回転翼の軸線に略平行となる向きとすることができる。
また、この飛行体は、ピッチ角調整装置の主要部が、従来のピッチ角調整装置と同様の構成とされているので、製造やメンテナンスが容易である。
トルク反力発生装置は、例えば、回転翼に対して逆向きに回転する第二の回転翼によって構成される。すなわち、飛行体は、二重反転ロータを備えた構成とされる。
この構成において、両回転翼をほぼ同一形状とし、かつほぼ同一速度で逆向きに回転させる構成とすることで、回転翼が回転することによって生じる回転軸線回りのトルク反力をほぼ完全に打ち消すことができ、回転翼の動作時にも本体を安定して静止させることができる。
このように構成される飛行体では、カナード翼が設けられているので、飛行モード時における安定性が向上する。
ここで、カナード翼が機軸に対する迎角を調整可能な構成とすることで、各ブレードとカナード翼とで操舵を行うことができるので、飛行モード時の飛行体の運動性能が向上する。
このため、飛行体においてホバリングに用いられる回転翼を推進用のプロペラとして利用する場合には、ホバリングモード時と飛行モード時との両方のモードで高い性能を持たせることができなかった。
ここで、この飛行体には、これら折り畳まれる部材を自動的に展開する展開装置を設けて、飛行体は折り畳み状態から展開状態に自動的に移行可能としてもよい。この場合には、例えば折り畳み状態のまま航空機から投下した際に自動的に展開状態に移行させて、ただちにホバリングモードや飛行モードに移行させることが可能である。
これにより、この飛行体は、有人飛行では近寄ることが困難な危険な領域での飛行を行うことができ、さらに、センサによって入手したこの領域の情報を、無線通信装置を通じて遠隔地に送信することができる。
また、無線通信装置を無線通信の中継器として利用することで、この飛行体を移動式中継局として利用することができる。
また、このモード切替方法では、飛行体は、ホバリングモードから飛行モードへ移行する際には、自由落下または下降によって得られた運動エネルギーを推進力として利用することができるので、燃料消費量が少なくて済む。
そして、この飛行体は、飛行モードからホバリングモードへ移行する際には、上昇過程で減速されるので、高速水平飛行からただちにホバリング飛行に移行することができ、機動性に優れている。
また、この飛行体のモード切替方法では、モード切替の際に、飛行体は、下降過程で得られた運動エネルギーを推進力として利用することができるので、燃料消費量が少なくて済む。
また、この飛行体のモード切替方法では、飛行体は、モード切替の際に一旦上昇する。これにより、飛行体の減速が行われるとともに水平方向への移動量が抑えられるので、高速水平飛行の状態からただちにモード切替を行って、ホバリング飛行に迅速に移行することができる。
本実施形態にかかる飛行体1は、図1の斜視図及び図2の側面図に示すように、機軸方向に延びる柱状の本体2と、本体2に対して機軸に平行な回転軸線回りに回転可能にして設けられる回転翼3とを有している。本実施形態では、飛行体1の全長は約3mとされており、回転翼3の径も約3mとされている。
また、第一回転翼3aと第二回転翼3bとはほぼ同一形状とされており、かつ後述するようにほぼ同一速度で逆向きに回転させられるようになっているので、これら回転翼3が回転することによって生じる回転軸線回りのトルク反力がほぼ完全に打ち消されて、これら回転翼3の動作時にも本体2を安定して静止させることができるようになっている。
各ブレード3cは、後述するように固定翼としても利用されるものであって、本実施形態では、第一、第二回転翼3a,3bには、それぞれ一対のブレード3cが回転軸線を挟んで対称に配置されている。
また、各ブレード3cは、固定翼として利用した際にも効果的に揚力を発生させることができるよう、略平板形状(ほぼねじりのない形状)とされている。
さらに、各ブレード3cは、回転翼を回転させた際に各ブレード3cの長手方向の各部が効果的に揚力を発生させることができるよう、回転中心側から先端側に向かうにつれて前縁Fから後縁Bまでの間隔が狭められたテーパー状とされている。
このカナード翼4は、図示しない迎角調整装置によってそれぞれ迎角を調整することができるようになっていて、飛行体1の操舵に利用される。
さらに、本体2において機尾側の端部には、後述する推進装置13を構成するプロペラ5が設けられている。
本実施形態では、センサ6としてモニタカメラを設けており、保護カバー7は、センサ6が外部を撮影することができるように、透明な材質によって構成されている。
ここで、センサ6としては、可視光域での撮影を行う通常のモニタカメラのほか、暗視カメラその他の特殊なモニタカメラを用いることができる。
また、保護カバー7は、機首方向に飛行する際の空気抵抗が小さい形状、例えば砲弾型に形成されている。
また、これら回転翼3、カナード翼4、及びプロペラ5には、それぞれを展開する展開装置(図示せず)が設けられている。
本実施形態では、この展開装置は、これら折り畳まれた部材を展開する向きに付勢するばね装置によって構成されており、折り畳み方向の外力が加わっていない状態では、これら回転翼3、カナード翼4、及びプロペラ5がそれぞれ展開されるようになっている。
さらに、本体2内には、図5の縦断面図に示すように、この飛行体1の動作形態をホバリングモードと飛行モードとのうちのいずれか一方に切り替えるモード切替装置14が設けられている。
第二回転翼駆動軸12bにおいて機尾側の端部には、第二回転翼3bが略同軸にして取り付けられている。
これら第一ギア16aと第二ギア16bとは、第三ギア16cを介して接続されている。この第三ギア16cは、これら第一ギア16a及び第二ギア16bと軸線を略直交させた状態にしてこれら第一、第二ギア16a,16bに噛み合わされるかさ歯車によって構成されている。
この飛行体1では、上記のように中空の第二回転翼駆動軸12bに中空の第一回転翼駆動軸12aが挿通され、さらに第一回転翼駆動軸12aにプロペラ駆動軸17が挿通される構成を採用することにより、これら駆動軸を別々に配置した場合に比べてこれら駆動軸の占有スペースを小さくして、飛行体1のさらなる小型化を図っている。
ここで、第一回転翼3a及び第二回転翼3bでは、それぞれ各ブレード3cが、回転翼本体に対してフェザリングヒンジ3dを介して接続されていて、フェザリング方向の回転(ピッチ方向の回転)を可能とされている。
第一スワッシュプレート23と第二スワッシュプレート24とは、図示せぬベアリングを介して接続されており、これによって互いの軸線回りの相対的な回転が許容されているとともに、第一スワッシュプレート23と第二スワッシュプレート24とが機軸方向に一体的に移動され、また機軸に対して一体的に傾斜されるようになっている。
ここで、第一回転翼駆動軸12aは、これら第一、第二スワッシュプレート23,24に挿通された状態にして設けられているが、第一、第二スワッシュプレート23,24は、機軸方向への移動と機軸に対する傾斜、及び回転軸線回りの回転が許容されている。
ピッチリンク25は、第一スワッシュプレート23の軸線方向の変位を各ブレード3cのピッチ角の変位に変換するものである。また、ピッチリンク25は、第一スワッシュプレート23の機軸に対する傾斜を各ブレード3cに伝達して、第一回転翼3aの回転面を第一スワッシュプレート23に略平行となるように機軸に対して傾斜させるものである。
具体的には、第一回転翼駆動軸12aと第一スワッシュプレート23との間には、第一スワッシュプレート23を軸線方向に変位させた際にこの第一スワッシュプレート23を案内して軸線回りに回転させるスワッシュプレートガイド27が設けられており、このスワッシュプレートガイド27が、第一向き調整装置26を構成している。
ガイド溝29は、機尾側の部分が第一回転翼駆動軸12aの軸線と略平行な直線部29aとされ、機首側の部分が、対応するブレード3cのピッチ方向の回転軸線方向から見て、この回転軸線を中心とする略円弧状をなす円弧部29bに形成されている。
第一スワッシュプレート23は、第一回転翼3aに近い領域では突起28がガイド溝29の直線部29aによってガイドされて、軸線回りの向きが固定されている。
ここで、スリーブ31は、第二回転翼駆動軸12bに対して、その軸線方向に移動可能かつ軸線回りの回転を規制して設けられている。
また、このアーム32aの先端は、対向するブレード3cの前縁Fに対して第一ピッチリンク32bによって接続されている。
ここで、第二回転翼駆動軸12b及びスリーブ31は、これら第一、第二スワッシュプレート33,34に挿通された状態にして設けられているが、第一、第二スワッシュプレート33,34は、機軸方向への移動と機軸に対する傾斜、及び回転軸線回りの回転が許容されている。
第一ピッチリンク32b、アーム32a、及び第二ピッチリンク35は、第一スワッシュプレート33の軸線方向の変位を各ブレード3cのピッチ角の変位に変換するものである。また、これら第一ピッチリンク32b、アーム32a、及び第二ピッチリンク35は、第一スワッシュプレート33の機軸に対する傾斜を各ブレード3cに伝達して、第二回転翼3bの回転面を第一スワッシュプレート33に略平行となるように機軸に対して傾斜させるものである。
具体的には、スリーブ31と第一スワッシュプレート33との間には、第一スワッシュプレート23を軸線方向に変位させた際にこの第一スワッシュプレート23を案内して軸線回りに回転させるスワッシュプレートガイド(図示せず)が設けられており、このスワッシュプレートガイドが、第二向き調整装置を構成している。
これにより、第一スワッシュプレート33は、第二回転翼3bに近接するにつれて各ブレード3cの前縁Fを機尾側に向けて押圧し、第二回転翼3bから離間するにつれて各ブレード3cの前縁Fを機首側に引きつける。そして、第一スワッシュプレート33が第二回転翼3bから離間させられる過程で、第一スワッシュプレート33がスワッシュプレートガイド27によって案内されて、対向部位33aがこの対向部位33aに接続されるブレード3cのピッチ方向の回転軸線に対向する位置まで回転させられるので、ブレード3cが第二回転翼3bの軸線に略平行となる向きまで向けられる。
これによって、第二スワッシュプレート24と第一スワッシュプレート33とは、機軸方向に一体的に移動されるとともに機軸に対して一体的に傾斜されるようになっている。
ここで、この操作では、第一回転翼3aの各ブレードのピッチ角と第二回転翼3bの各ブレード3cのピッチ角が同一とされた状態でピッチ角が調整される。
なお、図4に、第一、第二回転翼3a,3bの各ブレード3cの前縁Fが回転方向に向けられた状態を示し、図7に、第一、第二回転翼3a,3bの各ブレード3cの前縁Fが機首側に向けられた状態を示す。
ディファレンシャルコレクティブピッチアクチュエータ43は、スリーブ31を軸線方向に移動させることで、スリーブ31に接続されるアーム32aを、第二ピッチリンク35との接続部を支点として揺動させて第一ピッチリンク32bを介してブレード3cの向きを操作するものである。
このように第二回転翼3bのブレード3cのピッチ角を第一回転翼3aのブレード3cのピッチ角と独立して調整することで、第一回転翼3aの回転面と第二回転翼3bの回転面を非平行にして、回転翼3の揚力の向きを機軸に対して傾斜させることができる。
また、この飛行体1では、第一、第二向き調整装置が簡単な構成とされているので、製造やメンテナンスが容易である。
本実施形態では、動力発生装置として出力50馬力のロータリーエンジンが用いられている。
駆動力伝達装置51は、プロペラ駆動軸17の機首側に、プロペラ駆動軸17の端部に対向しかつプロペラ駆動軸17と略同軸にして設けられて駆動装置11の駆動軸から回転動力を入力される伝達軸52と、この伝達軸52を軸線方向に移動させる伝達軸移動装置53とを有している。伝達軸移動装置53は、図示せぬアクチュエータと、このアクチュエータの動きを伝達軸52に伝達して伝達軸52を軸線方向に移動させるリンク機構53aとを有している。
ここで、プロペラ駆動軸17の機首側の端部には、拡径部52aと略同径のフランジ17aが設けられており、これによってプロペラ駆動軸17と伝達軸52との接触面積を十分に確保して、これらの間での駆動力の伝達が確実に行われるようになっている。
伝達軸52の拡径部52aは、伝達軸移動装置53によって機首側に移動されることで図8の縦断面図に示すようにリングギア54に当接させられて、リングギア54に回転軸回りの回転駆動力を伝達するようになっている。
伝達軸57の機尾側の端部には、駆動ギア58が設けられている。駆動ギア58は、第一回転翼駆動軸12aの機首側の端部に設けられた従動ギア12cに噛み合わされている。
ここで、これらリングギア54、従動ギア56、伝達軸57、駆動ギア58、及び従動ギア12cは減速機を構成しており、伝達軸52の回転が所望の比率で減速されて第一回転翼駆動軸12aに伝達されるようになっている。本実施形態では、減速比は1:8としている。
すなわち、この飛行体1は、無線通信装置62を介して制御装置61に指令信号を送ることによって遠隔操縦される無人機とされている。
まず、飛行体1を飛行中のヘリコプターHから投下して運用する運用例について説明する。
この運用形態では、飛行体1は、図3に示すように折り畳み状態のまま円筒状のケースCに収納され、この状態で、図9に示すようにケースCごとヘリコプターHに搭載される。ここで、ケースCは、飛行体1を折り畳み状態のまま拘束するものである。また、ケースCの下部には開口部と、開口部を閉塞する扉とが設けられており、この扉を開くことで、開口部から飛行体1が折り畳み状態のまま投下されるようになっている。
飛行体1は、このように投下が行われた直後から、ヘリコプターHの搭乗員や、監視対象Tから離間した所望の位置に設けられた拠点にいる人員等の操縦者によって遠隔操縦される。
ここで、操縦者には、飛行体1の機首に設けられたセンサ6によって得られた周辺状況の情報が無線通信装置62を介して送られるようになっており、操縦者は、この周辺状況の情報に基づいて、飛行体1の操縦を行うようになっている。
まず、前述のように飛行体1がケースCから投下されることで、展開装置によって回転翼3の各ブレード3c、推進装置13のプロペラ5の各ブレード5a、及びカナード翼4が自動的に展開される。
飛行体1は、投下時は飛行モードに設定されていて、操縦者は、後述するように飛行体1を自由落下の状態から水平飛行に移行させて、監視対象の直上まで飛行モードで移動させる。
第一、第二回転翼3a,3bに設けられる各ブレード3cは、ピッチ角調整装置22によってそれぞれその前縁Fを機首側に向けられて、固定翼として機能する。
また、操縦者は、迎角調整装置によるカナード翼4の迎角の調整やピッチ角調整装置22による各ブレード3cの迎角の調整を行ってカナード翼4や各ブレード3cの揚力を適宜調整することで、飛行体1の飛行方向の制御及び飛行姿勢の制御を行う。
このため、飛行モードでは、後述するホバリングモード時よりもはるかに高速で移動することが可能であり(約200ノット)、燃料消費量も少ない。
また、本体2に設けられているカナード翼4によって飛行体1の飛行の安定化が図られている。
また、回転翼3を構成する各ブレード3cは、ピッチ角調整装置22によってそれぞれ前縁Fを回転翼3の回転方向に向けられ、かつ回転翼3の回転面に対して所望の迎角が与えられるので、回転翼3が機尾方向に向かう推力を発生させる。
ここで、この飛行体1においても、ホバリングモード時には、通常のヘリコプターと同様に、各ブレード3cのピッチ角を制御することで、垂直方向、水平方向、及び斜め方向のいずれの方向にも移動することが可能である。
なお、飛行体1の垂直方向への移動は、コレクティブサイクリックアクチュエータ42によって各ブレード3cのピッチ角を制御して揚力を制御することで行われ、水平方向及び斜め方向の移動は、コレクティブサイクリックアクチュエータ42によって第一回転翼3aの回転面と第二回転翼3bの回転面を傾けることで行われる。
また、ディファレンシャルコレクティブピッチアクチュエータ43によって第一回転翼3aの回転面と第二回転翼3bの迎角をずらしトルク反力を変えることで、飛行体1の機軸周りの回転が行われる。
ホバリングモードから飛行モードに移行する際には、ホバリングモードのまま十分な高度まで上昇したのち、自由落下または回転翼3の推力によって下降しつつ、飛行モードへの移行が行われる。
この落下または下降によって飛行体1が得た運動エネルギーも、飛行体1の推進力として利用される。
操縦者は、飛行体1を、飛行モードのまま捕縛ネットNめがけて飛行させ、捕縛ネットNの直前位置で推進装置13を停止させて、慣性力によってそのまま捕縛ネットN内に突入させる。これにより、飛行体1が捕縛ネットNに捕縛されて回収される。
なお、この例では、飛行体1をヘリコプターHから投下して再びヘリコプターHによって回収することとしたが、これに限られることなく、以下の例で示すように、飛行体1を所望の位置に着陸させることによって回収してもよい。
この運用形態では、飛行体1は、艦船によって監視対象から離間した所望の発進位置まで運搬される。
ここで、艦上では、飛行体1は、図12に示すように、ホバリングモードに設定された状態で、機首を下方に向けかつ回転翼3、プロペラ5、カナード翼4を展開した状態で保持される。
操縦者は、この状態で回転翼3を駆動して垂直上昇させることで、飛行体1を艦上から発進させる。
そして、ホバリングモードのまま十分な高度まで上昇させた後、前述のようにして飛行モードに移行させて監視対象Tの直上まで飛行させたのち、再度ホバリングモードに移行させて、監視対象Tの監視を行う。
飛行体1の回収位置には、回収用の艦船が待機させておき、その艦上には、飛行体1を、その機首が下向きとなった状態で保持する脚部Bが設置されている。
操縦者は、飛行体1が回収用の艦船の近傍まで到達したのちは、一旦上昇させてホバリングモードに移行させ、ホバリングモードのまま、脚部B上に着地させて回収する。
この運用形態では、飛行体1は、監視対象から離間した位置にある拠点から発進させられる。
拠点では、飛行体1は、図14に示すように、脚部Bによって機首が下向きとなった状態で保持される。
操縦者は、この状態で回転翼3を駆動して垂直上昇させることで、飛行体1を拠点から発進させる。
そして、ホバリングモードのまま十分な高度まで上昇させた後、前述のようにして飛行モードに移行させて監視対象Tの直上まで飛行させたのち、再度ホバリングモードに移行させて、監視対象Tの監視を行う。
飛行体1の回収位置には脚部Bを設置しておき、操縦者は、飛行体1が回収位置の近傍まで到達したのちは、前述のように一旦上昇してホバリングモードに移行させ、ホバリングモードのまま、脚部B上に着地させて回収する。
特に、ホバリング飛行時の死荷重が少なく、ホバリング飛行時の燃料消費量が少ないので、長時間のホバリング飛行が可能である。
また、この飛行体1では、ホバリングモード時と飛行モード時のいずれの場合においても、各ブレード3cの前縁Fが回転方向もしくは飛行方向に向けられるので、各ブレード3cの断面形状を、より揚力発生に適した形状(前縁から後縁に向かうにつれて厚みが薄くなる流線型)にして、高い揚力を発生させることができ、燃料消費量が少なくて済む。
また、この飛行体1は、ホバリングモード時に推力を発生させる回転翼3と、飛行モード時に推力を発生させる推進装置13とが、いずれも機軸方向に推力を発生する構成とされているので、一方のモードから他方のモードに移行する際に、推力の向きを制御する必要がない。
このため、この飛行体1では、モード切替時の制御が容易であり、モードの移行をスムーズに行うことができる。
また、上記実施形態では、飛行体1は遠隔操縦される構成としたが、制御装置61に予め組み込まれたプログラムに従って自律航行する構成とされていてもよく、また、パイロットが搭乗する有人機とされていてもよい。
2 本体
3a,3b 第一、第二回転翼(トルク反力発生装置)
3c ブレード
4 カナード翼
5 プロペラ
6 センサ
11 駆動装置(回転翼駆動装置、プロペラ駆動装置)
12 回転翼駆動軸
13 推進装置
14 モード切替装置
21 固定装置
22 ピッチ角調整装置
23,33 第一スワッシュプレート
23a,33a 対向部位
25,32b,35 ピッチリンク
26 向き調整装置
27 スワッシュプレートガイド
42 コレクティブサイクリックアクチュエータ
61 制御装置
62 無線通信装置
F 前縁
Claims (13)
- 機軸方向に延びる柱状の本体と、
該本体に対して前記機軸に平行な回転軸線回りに回転可能にして設けられる回転翼と、
回転翼に対して逆向きに回転する第二の回転翼によって構成され、前記回転翼によって発生する前記回転軸線回りのトルク反力のうちの少なくとも一部を相殺する向きのトルク反力を発生させるトルク反力発生装置と、
該各回転翼を前記回転軸線回りに回転駆動する回転翼駆動装置と、
該回転翼駆動装置と前記各回転翼とを接続して前記回転翼駆動装置の駆動力を前記各回転翼に伝達する回転翼駆動軸と、
前記回転軸線と同軸にして設けられる前記各回転翼よりも小径のプロペラおよび該プロペラを軸線回りに回転駆動するプロペラ駆動装置を有し、機首側に向かう推力を発生させる推進装置と、
動作形態をホバリングモードと飛行モードとのうちのいずれか一方に切り替えるモード切替装置とを有しており、
前記各回転翼は、それぞれピッチ角を可変にして前記回転軸線回りに放射状に配置された複数のブレードを有しており、
前記モード切替装置は、前記飛行モード時に前記本体に対する前記各回転翼の前記回転軸線回りの位置を固定する固定装置と、
前記ホバリングモード時には前記各ブレードの前縁を前記回転翼の回転方向に向け、前記飛行モード時には前記各ブレードの前縁を機首側に向けるとともに、いずれのモードにおいても前記各ブレードに所望の揚力を生じさせるための迎角を与えるピッチ角調整装置とを有していることを特徴とする飛行体。 - 前記回転翼は機尾側に向かう推力を発生させる構成とされていることを特徴とする請求項1記載の飛行体。
- 前記ピッチ角調整装置は、前記回転翼と同軸にして設けられる円環状のスワッシュプレートと、
該スワッシュプレートを軸線方向に変位させるアクチュエータと、
前記各ブレードの前記前縁と後縁とのうちのいずれか一方の縁部と前記スワッシュプレートの前記一方の縁部に対向する対向部位とを接続して前記スワッシュプレートの前記軸線方向の変位を前記各ブレードのピッチ角の変位に変換するピッチリンクと、
前記スワッシュプレートの前記軸線回りの向きを調整する向き調整装置とを有していることを特徴とする請求項1または2に記載の飛行体。 - 機軸方向に延びる柱状の本体と、
該本体に対して前記機軸に平行な回転軸線回りに回転可能にして設けられる回転翼と、
該回転翼を前記回転軸線回りに回転駆動する回転翼駆動装置と、
該回転翼駆動装置と前記回転翼とを接続して前記回転翼駆動装置の駆動力を前記回転翼に伝達する回転翼駆動軸と、
機首側に向かう推力を発生させる推進装置と、
動作形態をホバリングモードと飛行モードとのうちのいずれか一方に切り替えるモード切替装置とを有しており、
前記回転翼は、それぞれピッチ角を可変にして前記回転軸線回りに放射状に配置された複数のブレードを有しており、
前記モード切替装置は、前記飛行モード時に前記本体に対する前記回転翼の前記回転軸線回りの位置を固定する固定装置と、
前記ホバリングモード時には前記各ブレードの前縁を前記回転翼の回転方向に向け、前記飛行モード時には前記各ブレードの前縁を機首側に向けるとともに、いずれのモードにおいても前記各ブレードに所望の揚力を生じさせるための迎角を与えるピッチ角調整装置とを有し、
前記ピッチ角調整装置は、前記回転翼と同軸にして設けられる円環状のスワッシュプレートと、
該スワッシュプレートを軸線方向に変位させるアクチュエータと、
前記各ブレードの前記前縁と後縁とのうちのいずれか一方の縁部と前記スワッシュプレートの前記一方の縁部に対向する対向部位とを接続して前記スワッシュプレートの前記軸線方向の変位を前記各ブレードのピッチ角の変位に変換するピッチリンクと、
前記スワッシュプレートの前記軸線回りの向きを調整する向き調整装置とを有し、
前記回転翼駆動軸が前記スワッシュプレートに挿通されており、
前記回転翼駆動軸と前記スワッシュプレートとの間には、前記スワッシュプレートを軸線方向に変位させた際に該スワッシュプレートを案内して前記軸線回りに回転させるスワッシュプレートガイドが設けられており、
該スワッシュプレートガイドが、前記向き調整装置を構成していることを特徴とする飛行体。 - 前記回転翼は機尾側に向かう推力を発生させる構成とされていることを特徴とする請求項4に記載の飛行体。
- 前記回転翼駆動軸が前記スワッシュプレートに挿通されており、
前記回転翼駆動軸と前記スワッシュプレートとの間には、前記スワッシュプレートを軸線方向に変位させた際に該スワッシュプレートを案内して前記軸線回りに回転させるスワッシュプレートガイドが設けられており、
該スワッシュプレートガイドが、前記向き調整装置を構成していることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の飛行体。 - 前記本体にカナード翼が設けられていることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載に飛行体。
- 前記本体の側方に張り出す部材が前記本体に沿うようにして折り畳み可能な構成とされていることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の飛行体。
- 前記プロペラと前記プロペラ駆動装置とがプロペラ駆動軸を介して接続されており、
前記回転翼駆動軸と前記プロペラ駆動軸とのうちのいずれか一方は中空軸とされていて、該一方に他方が挿通された状態にして配置されていることを特徴とする請求項7記載の飛行体。 - 周辺状況を観察するためのセンサと、
前記回転翼駆動装置、前記推進装置、及び前記モード切替装置の動作を制御する制御装置と、
前記センサが得た前記周辺状況の情報の発信と前記制御装置への指令信号の受信とを行う無線通信装置とを有する無人機とされていることを特徴とする請求項1から9のいずれかに記載の飛行体。 - 請求項1記載の飛行体のモード切替方法であって、十分な高度まで上昇した状態から下降または自由落下し、落下する過程でホバリングモードまたは飛行モードへ移行させることを特徴とする飛行体のモード切替方法。
- 請求項2記載の飛行体のモード切替方法であって、前記ホバリングモードで前記機尾を上方に向けかつ前記機首を下方に向けた状態にしてホバリング飛行を行っている状態からそのままの姿勢で下降し、この下降過程で前記飛行モードへ移行して機首を上げて水平飛行を行うことを特徴とする飛行体のモード切替方法。
- 請求項2記載の飛行体のモード切替方法であって、前記飛行モードで水平飛行を行っている状態から上昇したのちに前記機首を下げて下降して、この下降過程で前記ホバリングモードへ移行してホバリング飛行を行うことを特徴とする飛行体のモード切替方法。
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