JP4275398B2 - 金属製触媒担体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、内燃機関等の排気系に装着する金属製触媒担体に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の金属製触媒担体として、耐熱性金属箔からなる大波箔と小波箔(平箔を含む)を交互に巻回して最外周を小波箔で巻回したハニカム(コア)を形成し、これに外筒と接合するためのロー箔材を所定位置に設置した後、外筒に装填して担体を成形する工程において、熱処理時に液状化したロー材が毛細管現象により所定外の位置まで広範囲に浸透流出しないように外筒の内周に凹み空間ビードを設定したものがある(例えば、特許文献1参照。)。
また、ロー材が不要な部位に浸透流出することを防ぐ他の方法として、例えば、酸化チタンを主成分とするロー接合防止剤を塗布する方法がある(例えば、特許文献2参照。)。
【0003】
以上のように、熱処理時に液状化したロー材が毛細管現象により所定外の位置まで広範囲に浸透流出することを阻止するようにしているのは、以下のような理由による。
即ち、外筒とコアの接合部位は、担体の耐久性と関係が深くその内容を一般的な担体破壊メカニズムから説明すると、車両に適用された触媒担体には、エンジンスタートと共に、入口から高温のガスが流入してくる。その際、触媒担体の中心により多くのガスが流れ、最初に中心部の温度が高くなる。また、入口に近い程早く温度が高くなる。やがてこの温度の高い領域はガス出口方向に広がり、触媒全体が高温になる。しかし、初めのうち触媒全体が均一な温度になっているわけではなく、外筒周辺は冷却、放熱等により内部に比較し温度が低くなっている。このような現象はエンジンスタート時のみならず運転中の加速時においてもより高温のガスが流入し、同様な触媒温度が不均一な状態となっている。
【0004】
一方、減速時においては、空気に近い排気組成の低温ガスが流入してくる。そのガス流れ分布は、エンジンスタート時および加速時と同様に中心部により多く流れる。即ち、中心部、入口部が早く冷却されることになる。このような温度変化を受けている触媒担体は、内部に繰り返し熱応力を受けている。その応力は、特に外筒と接合されている部位に集中する。その理由は、外筒温度に比べ、内部温度が高く触媒担体中心部から外筒に向かって膨張しようとするコアが外筒に拘束され外周部が圧縮されると共に、冷却時にはコア中心部分から縮小し、外筒と接合している即ち拘束されている外周部が引き伸ばされることになる。このように外筒とコアの接合部位は圧縮、引っ張りの繰り返し応力を受けるため、熱疲労破損が発生し易い部位となる。
【0005】
このような外筒とコアを接合する構造の触媒担体においては、接合部位の位置に係らず熱応力を受けることになる。このような触媒担体においては、耐久性の観点からその発生応力が小さくなるように設計することが必要であり、特に、コアの両端部、特に、熱変化の大きい排気ガスの流入側が外筒に接合されてしまうと、熱収縮に追従できずに破断されるおそれがあるため、熱処理時に液状化したロー材が毛細管現象により所定外の位置まで広範囲に浸透流出することを阻止する必要がある。
【0006】
【特許文献1】
特開2001−207837号公報 (第2頁、図1−3)
【特許文献2】
特開2001−207838号公報 (第2頁、図1−4)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、外筒の内周に凹み空間ビードを設定する従来例にあっては、外筒の外周面側に多少の突起部が形成されるため、外筒の外周を囲繞する遮熱板の取り付けや、ディフューザーとの接合の際の障害になることがあるという問題がある。
また、ロー接合防止剤を塗布する従来例にあっては、ロー接合防止剤、塗布工程の追加、および量の管理が必要になる等、コストアップを招くという問題がある。
【0008】
本発明の解決しようとする課題は、外筒の外周を囲繞する遮熱板の取り付けや、ディフューザーとの接合の際の障害になることやコストアップを招くことなしに、熱処理時に液状化したロー箔材が毛細管現象により少なくとも排ガス流入側の所定外の位置まで広範囲に浸透流出することを阻止することができる金属製触媒担体を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため請求項1記載の発明は、金属製薄板の大波板と小波板または平板を交互に重ねて多重に巻回して形成したコアの一部外周にロー材を着け、これらを金属製の外筒内に装填して熱処理することにより前記大波板と小波板または平板とを拡散接合させると共に、前記外筒をロー材で接合した金属製触媒担体において、交互に重ねた前記大波板と小波板または平板が大波板が外側になるように巻回され、前記ロー材が着けられていないコア部分のうち、少なくともロー材が着けられた部分より排ガス流入側のコアの中途部に該コアの外周面を構成する大波板の突条頂部を内方へ窪ませた窪み部がコアの全周に亘って形成されることにより該窪み部外と筒との間に環状の中空部が形成されていることを特徴とする手段とした。
【0010】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記ロー材は、前記コアにおける排ガスの流れ方向の中途部で排ガス流出側寄りの位置に着けられ、前記窪み部は、前記ロー材が着けられた部分より排ガス流入側および流出側のロー材が着けられていない両コア部分にそれぞれ形成されていることを特徴とする手段とした。
【0012】
【作用および効果】
請求項1記載の発明では、上述のように、交互に重ねた前記大波板と小波板または平板が大波板が外側になるように巻回されることで、熱処理の際に液状化したロー材が毛細管現象により所定外の位置まで広範囲に浸透流出することが抑制されると共に、コアの外周面を構成する大波板の突条頂部をコアの全周に亘って内方へ窪ませて形成された窪み部と外筒との間に形成された環状の中空部に液状化したロー材が溜まることで、それ以上所定外の位置まで浸透流出することを阻止することができる。
従って、外筒の外周を囲繞する遮熱板の取り付けや、ディフューザーとの接合の際の障害になることやコストアップを招くことなしに、熱処理時に液状化したロー材が毛細管現象により少なくとも排ガス流入側の所定外の位置まで広範囲に浸透流出することを阻止することができるようになるという効果が得られる。
また、窪み部をコアの全周に亘って形成することにより、熱処理時に液状化したロー材が毛細管現象により所定外の位置まで広範囲に浸透流出することを阻止する効果を高めることができるようになる。
【0013】
請求項2記載の発明では、上述のように、ロー材が着けられた部分より排ガス流入側および流出側のロー材が着けられていない両コア部分にそれぞれ窪み部が形成されることで、コアの両端部が外筒に接合されることを阻止することができるようになると共に、ロー材をコアにおける排ガスの流れ方向の中途部で排ガス流出側寄りの中途部に着けることにより、コアにおける排ガス流出側端部よりも、使用時における熱変化の大きい流入側端部への液状化したロー材の浸透流出をより確実に抑制し、排気ガス流入側コアの外筒への接合を確実に阻止することができるようになる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下にこの発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
(発明の実施の形態1)
この発明の実施の形態1の金属製触媒担体は、請求項1、2に記載の発明に対応する。
まず、この発明の実施の形態1の金属製触媒担体を図面に基づいて説明する。
【0016】
図1はこの発明の実施の形態1の金属製触媒担体を示す一部切欠斜視図であり、この図において、1はコア、2は外筒、3はロー箔材(ロー材)を示す。
前記コア1は、数十ミクロンの金属製薄板の波板(大波板)11と平板12を交互に重ね、波板11を外側にして多重に巻回したハニカム状に形成されたもので、このハニカム通路表面には、アルミナ等からなる触媒担持体層が形成され、この触媒担体層に触媒金属が担持されることにより、排ガス浄化触媒とされ、内燃機関の排気経路に配置されることにより、排気ガス中のHC、CO、NOx等を浄化させる働きをする。
【0017】
前記外筒2は、1〜2mmの板厚のSUS430のフェライト系ステンレス板材等で円筒形状に形成され、この円筒の内径として、これに装填される前記コア1の外形より小径に形成されている。
【0018】
前記ロー箔材3は、前記コア1を前記外筒に装填する前に、波板11で構成されるコア1の外周面に巻回しておくもので、この発明の実施の形態1では、このロー箔材3が、コア1における排ガス流出側(図面右側)端部寄りの中途部に部分的に巻回されることにより、コア1の両端部分にはロー箔材3が巻回されていない非巻回部分1a、1bが形成され、この非巻回部分1a、1bは、特に排ガス流入側の非巻回部分1aが十分に長く形成されている。
【0019】
また、前記コア1の非巻回部分1a、1bでロー箔材3の両端部に近い位置の波板11の各突条頂部を内方へ窪ませた凹部(窪み部)11a、11bをコア1の全周に亘って環状に形成することにより、外筒2の内周面とコア1の外周面との間に環状の中空部aが形成されるようになっている。
【0020】
次に、この発明の実施の形態1の作用・効果を説明する。
この発明の実施の形態1では、上述のように、交互に重ねた波板11と平板12が波板11が外側になるように巻回されることで、熱処理の際に液状化したロー材が毛細管現象により所定外の位置まで広範囲に浸透流出することを抑制することができる。
【0021】
また、波板11は平板12に比べて伸縮の自由度が高いため、この波板11をコア1の外周側に配置することにより、外筒2内に装填する際の圧縮作用によってハニカム構造のコア1が座屈することを外周の波板11の伸縮作用により抑制することができるようになる。
【0022】
また、コア1の外周面を構成する波板11の突条頂部を内方へ窪ませて形成した凹部11a、11bにより、外筒2の内周面とコア1の外周面との間に環状の中空部aが形成されるため、液状化したロー材がこの中空部a内に溜まることで、それ以上所定外の位置まで浸透流出することを阻止することができる。
【0023】
また、ロー箔材3をコア1の排ガス流出側端部寄りの中途部に部分的に巻回することにより、コア1における排ガス流出側端部よりも、使用時における熱変化の大きい流入側端部への液状化したロー材の浸透流出をより確実に抑制し、その外筒2への接合を確実に阻止することができるようになる。
【0024】
また、1〜2mmの板厚の外筒2側を加工する従来例に比べ、数ミクロンの板厚の波板11を加工する方が加工エネルギー的にも、加工装置的にも簡便で低コストにて加工することができる。
【0025】
従って、この発明の実施の形態1によれば、外筒2の外周を囲繞する遮熱板の取り付けや、ディフューザーとの接合の際の障害になることやコストアップを招くことなしに、熱処理時に液状化したロー材が毛細管現象により所定外の位置まで広範囲に浸透流出することを阻止することができるようになり、これにより、触媒担体の耐久性を高めることができるようになるという効果が得られる。
【0026】
次に、他の発明の実施の形態について説明する。この他の発明の実施の形態の説明にあたっては、前記発明の実施の形態1と同様の構成部分については同一の符号を付けてその説明を省略し、相違点についてのみ説明する。
【0027】
この発明の実施の形態2の金属製触媒担体は、請求項1、2に記載の発明に対応する。
この発明の実施の形態2の金属製触媒担体は、図2の一部切欠斜視図に示すように、前記コア1の非巻回部分1aにおける波板11の各突条頂部を内方へ窪ませた凹部(窪み部)11aをコア1の全周に亘り、同一円周線に対し波状になるようにランダムに形成した点で前記発明の実施の形態1とは相違するものである。
従って、この発明の実施の形態2では、前記発明の実施の形態1とほぼ同様の効果が得られる他に、凹部11aが同一円周線上に並ぶ場合に比べて、使用中において応力が集中することで破損し易くなることを防止することができるため、耐久性をさらに高めることができるようになるという追加の効果が得られる。
【0028】
以上本発明の実施の形態を説明してきたが、本発明は上述の発明の実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等があっても、本発明に含まれる。
例えば、発明の実施の形態では、ロー箔材3を、コア1における排ガス流出側端部寄りの位置に巻回したが、中途部に形成するようにしてもよい。
【0029】
また、発明の実施の形態では、凹部11a、11bをコア1の両非巻回部分1a、1bに形成したが、少なくとも、排ガス流入側の非巻回部分1aにのみ形成するようにしてもよい。
【0030】
また、発明の実施の形態では、凹部11a、11bを排ガスの流れ方向1個所のみに形成したが、複数個所に形成するようにしてもよい。
また、発明の実施の形態では、波板11と平板12を用いたが、大波板と小波板を用いるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】発明の実施の形態1の金属製触媒担体を示す一部切欠斜視図である。
【図2】発明の実施の形態2の金属製触媒担体を示す一部切欠斜視図である。
【符号の説明】
1 コア
1a 非巻回部分
1b 非巻回部分
11 波板(大波板)
11a 凹部(窪み部)
11b 凹部(窪み部)
12 平板
2 外筒
3 ロー箔材(ロー材)
a 中空部
Claims (2)
- 金属製薄板の大波板と小波板または平板を交互に重ねて多重に巻回して形成したコアの一部外周にロー材を着け、これらを金属製の外筒内に装填して熱処理することにより前記大波板と小波板または平板とを拡散接合させると共に、前記外筒をロー材で接合した金属製触媒担体において、
交互に重ねた前記大波板と小波板または平板が大波板が外側になるように巻回され、
前記ロー材が着けられていないコア部分のうち、少なくともロー材が着けられた部分より排ガス流入側のコアの中途部に該コアの外周面を構成する大波板の突条頂部を内方へ窪ませた窪み部がコアの全周に亘って形成されることにより該窪み部と外筒との間に環状の中空部が形成されていることを特徴とする金属製触媒担体。 - 前記ロー材は、前記コアにおける排ガスの流れ方向の中途部で排ガス流出側寄りの位置に着けられ、
前記窪み部は、前記ロー材が着けられた部分より排ガス流入側および流出側のロー材が着けられていない両コア部分にそれぞれ形成されていることを特徴とする請求項1に記載の金属製触媒担体。
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