JP4274670B2 - オイルストレーナ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はオイルストレーナに関し、濾材の劣化収縮を原因とするボルトの緩みを未然に防止するものである。
【0002】
【従来の技術】
車両にはトルクコンバータを利用した自動変速装置が用いられている。図5は自動変速装置を示すものである。変速ギャを収納したケーシング1の下方には各種の制御バルブを収納したバルブ室2が設けられている。そして、所定量の作動油を満たしたオイルパン3が設けられ、この作動油に前記バルブ室2が浸されている。このバルブ室2の下にオイルストレーナ4が取り付けられている。
【0003】
ケーシング1内のポンプ5により、オイルパン3内の作動油がバルブ室2内の通路6を介して吸い上げられ、トルクコンバータ7のブレードの間隙調整やバルブ操作が行なわれる。作動油はオイルパン3からバルブ室2内へ吸い上げられる際にオイルストレーナ4を通過し、オイルストレーナ4により金属片等の異物が濾過される。
【0004】
ここで、従来のオイルストレーナ4の構造を図6に示す。オイルストレーナ4は、本体8と、カバー9と、これらの間に挾持された図示しない濾材(図7では符号5を付して示す)とで構成される。図7にも示すように、本体8には、濾材との間に隙間を形成するための皿部8aと、作動油が通る第一挿通孔としての流入口8bと、濾材5を挾持するためのフランジ部8cとが形成され、フランジ部8cには挿入孔8dが形成されている。カバー9には作動油を排出するための第二挿通孔としての流出口9aが多数形成されており、カバー9の全周をかしめてかしめ部9bを形成することによりカバー9と前記フランジ部8cとの間に濾材5が潰れた状態で挾持されている。挿入孔8dと対応する位置には、挿入孔9cが形成されている。濾材は例えば100メッシュ〜200メッシュ(用途により50メッシュ〜300メッシュのものが用いられる)であって波形に成形した金網が用いられ、挿入孔8dと対応する位置には挿入孔5aが形成されている。濾材としては、このほか弾性を有する不織布,紙等が用いられる。オイルストレーナ4は挿入孔8d,5a,9cに挿入した図示しないボルトを介してバルブ室2に取り付けられている。
【0005】
図6(b)に示すように、作動油は流入口8bから皿部8aの内部へはいり、濾材5通って濾過され、流出口9aより排出される。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、本体とカバーとの間に濾材を挾んだ状態でボルト結合によりオイルストレーナをバルブ室に取り付けているため、潰された濾材が長期間の使用により劣化して収縮し、ボルトが緩んだのと同じ状態になる。このため、オイルストレーナとバルブ室との間から作動油が漏れたり、オイルストレーナが振動して異音を発生したり、本体・濾材・カバー間で挿入孔の位置が相対的にずれてダストリークが生じたりする。
【0007】
そこで本発明は、斯かる課題を解決したオイルストレーナを提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
斯かる目的を達成するための請求項1に係るオイルストレーナの構成は、第一挿通孔を有する本体と第二挿通孔を有するカバーとの間に濾材を挾持し、前記本体と前記カバーとがボルトにより相互に締め付けられる構成のオイルストレーナにおいて、前記ボルトを締め付けたときに前記濾材を介することなく前記カバーと前記本体とが圧接される圧接部をボルトの周囲に形成し、当該圧接部の外側には前記濾材がはいり込む隙間を形成する一方、前記濾材には前記圧接部と対応する位置に孔を形成したことを特徴とし、
請求項2に係るオイルストレーナの構成は、請求項1において、前記本体における前記ボルトの挿入孔の周囲を前記カバーへ向かって突出させて前記隙間を形成したことを特徴とする。
【0009】
請求項1に係る発明では、オイルストレーナの本体とカバーとをボルトで締め付けると、ボルトの周囲には本体とカバーとが圧接される圧接部が形成されると共に、圧接部の外側には濾材を収容する隙間が形成され、ボルトの締め付け力は圧接部にのみ作用し、濾材には作用しない。このため、濾材が潰されることはない。
【0010】
請求項2に係る発明では、本体におけるボルトの挿入孔の周囲をカバーへ向かって突出させるだけで、濾材が入り込む隙間を容易に形成出来るだけでなく、オイルストレーナを取り付けるための被取付部と対向する面の平面度を損なうことがなく、油漏れに対する特別な対応をする必要がない。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明によるオイルストレーナの実施の形態を説明する。なお、従来と同一機能を有する部分には同一符号を付して説明する。
【0012】
(a)実施の形態1
まず、実施の形態1を図1,図2に基づいて説明する。図1に示すように、オイルストレーナ4は本体8と濾材5とカバー9とを結合して構成される。従来と同様に、本体8は第一挿通孔としての流入口8bを有する皿部8aと挿入孔8dを有するフランジ部8cとで構成される。本実施の形態では挿入孔8dの周囲がカバー9へ向かってリング状に突出して突出部8eが形成されている。濾材5は本体8におけるフランジ部8c及びその内側を含めた部分と略同じ形状に形成され、突出部8eと対応する部分には円形の打抜孔5bが形成されている。濾材5としては、弾性を有する金網,不織布,紙等が用いられる。カバー9も従来と同様に第二挿通孔としての複数の流出口9aと挿入孔9cとかしめ部9bとが形成されている。
【0013】
これらの3つの部材は、本体8のフランジ部8cの上に濾材5を載せたのちにカバー9を載せ、突出部8eを打抜孔5bに挿入し、挿入孔8dと挿入孔9cとの位置合わせを行なった状態でかしめ部9bを加圧し、カバー9と濾材5と本体8のフランジ部8cとを結合する。
【0014】
このようにして組み立てられたオイルストレーナの正面図を図2(a)に示し、図2(a)のA部の拡大断面図を図2(b)に示す。図2(b)に示すように、カバー9と突出部8eとが直接に接触した状態でフランジ部8cにおける突出部8eを除いた部分とカバー9との間に隙間が形成され、この隙間に濾材5が収容された状態になっている。
【0015】
このため、ボルト11,座金12を介してオイルストレーナ4をバルブ室2に取り付けると、ボルト11の近傍は突出部8eとカバー9とがボルト11の頭部と図示しないバルブ室とにより直接に圧縮される圧接部となり、濾材5は圧接部には存在しないため圧縮されない。突出部8eはカバー9との間で圧接部の平面度を確保するのにも役立つ。また、突出部8eはカバー9へ向かって突出しており、突出方向がボルト11の締め付け力の作用する方向と同一になるため、ボルト11の締め付け力が有効に作用する。従って、オイルストレーナ4の長期間の使用により濾材5が劣化しても、ボルト11とバルブ室との間に挾まれて圧縮される部分が存在しないことから、濾材5の劣化圧縮によるボルト11の緩みが生じることはない。
【0016】
本体8とカバー9との間に介在する濾材5が移動しないように確実に保持するには、カバー9とフランジ部8cとの隙間をgとしたときに濾材5の厚さtはgよりも大きくして濾材5が予め圧縮された状態にするのが望ましい。具体的な一例として、弾性を有する濾材5として不織布を用いた場合は、t=8/3gとすることにより、適切な圧縮状態を確保することができる。
【0017】
(b)実施の形態2,3,4
次に実施の形態2,3,4を説明する。
【0018】
まず、実施の形態2を図3(a)に基づいて説明する。実施の形態1では本体をカバーへ向かって突出させることによって本体のフランジ部とカバーとの間に隙間を形成したが、実施の形態2は逆にカバー9を本体8へ向かって突出させることによりカバー9にリング状の突出部9dを形成したものである。この場合はオイルストレーナ4とオイルストレーナ4を取り付けるバルブ室2との間に隙間が生じるので、両者間に油漏れに対する対策を施すことが必要になる。
【0019】
その他の構成,作用は実施の形態1と同じなので説明を省略する。
【0020】
次に、実施の形態3を図3(b)に基づいて説明する。この実施の形態3は実施の形態1,2を組み合わせたものであり、フランジ部8cからカバー9へ向かって突出する突出部8eの突出量とカバー9からフランジ部8cへ向かって突出する突出部9dの突出量とが略同じ値になって隙間gを形成している。
【0021】
その他の構成,作用は実施の形態2と同じなので説明を省略する。
【0022】
次に、実施の形態4を図3(c)に基づいて説明する。実施の形態4は実施の形態1〜3のようにフランジ部8c,カバー9に突出部を形成するのに代えて、図2(b)の座金12と略同じ形状で厚さ寸法がgのリング状のスペーサ14をフランジ部8cとカバー9との間に介在させることによって両者の間に隙間を形成したものである。スペーサ14には挿入孔9c,8dと対応する位置に挿入孔14aが形成されている。実施の形態4ではカバー9の上面が平面なので、実施の形態2,3のような油漏れを考慮する必要はない。
【0023】
(c)実施の形態5
最後に、実施の形態5を図4に示す。図4(a)はオイルストレーナ4の底面図である。図4(a)のc−c矢視図を図4(b)に示すように本体8のフランジ部8cをカバー9へ向かって突出させて両者間に隙間を形成したものであるが、図2(b)に示すようにリング状の突出部8eを形成したのではなく、挿入孔8dを囲繞する円に沿って8つの小さな突出部8fを等間隔に形成することにより濾材5を収容する隙間を形成したものである。上記の突出部8fの数は8つに限定されることはなく、少なくとも3つ以上形成されておればよい。
【0024】
斯かるオイルストレーナでは、図示しないボルトを挿入孔8d,9cに挿通してバルブ室2に取り付けると、突出部8fと突出部8fの当接する部分とが濾材5を介することなく圧接される圧接部となり、突出部8fによって囲まれた部分が変形してバネ座金と同様に軸方向の弾性力がボルトに加わる。このため、濾材5の劣化によるボルトの緩みが防止されるだけでなく、積極的にボルトに軸力が加わりボルトの緩みが防止される。
【0025】
図4の実施の形態5は挿入孔8dを囲繞する円に沿って小さな突出部を複数形成したが、円に沿って小さな突出部を連続して形成した畝状の突出部でもよい。
【0026】
なお、実施の形態1〜5は第一挿通孔を流入口とし第二挿通孔を流出口としたが逆であってもよい。また、これらの挿通孔は単数であっても複数であってもよい。更に、実施の形態1〜5ではボルトはオイルストレーナをバルブ室に取り付けるために用いるが、本体とカバーとの結合にボルトを用い、バルブ室へのオイルストレーナの取り付けは他の手段を用いる構成であってもよい。
【0027】
【発明の効果】
以上の説明からわかるように、請求項1,2に係るオイルストレーナによればボルトを締め付けたときに濾材を収容するための隙間が形成されるので、ボルトの締め付けによって濾材が潰されることはない。従って、長期間の使用によって濾材が劣化してもボルトが緩むということはない。また、隙間に濾材が収容されるため、濾材が位置決めされて濾材の位置ズレが防止される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明によるオイルストレーナの実施の形態1に係り、(a)はカバーの斜視図、(b)は濾材の斜視図、(c)は本体の斜視図。
【図2】本発明によるオイルストレーナの実施の形態1に係り、(a)は正面断面図、(b)は(a)におけるA部の拡大図。
【図3】(a)はオイルストレーナの実施の形態2の要部拡大断面図、(b)はオイルストレーナの実施の形態3の要部拡大断面図、(c)はオイルストレーナの実施の形態4の要部拡大断面図。
【図4】本発明によるオイルストレーナの実施の形態5に係り、(a)は本体の底面図、(b)は(a)のc−c矢視図。
【図5】自動変速装置の構成図。
【図6】従来のオイルストレーナに係り、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は底面図。
【図7】従来のオイルストレーナに係り、図6(b)のB部の拡大断面図。
【符号の説明】
5…濾材
5b…打抜孔
8…本体
8d…挿入孔
8e…突出部
9…カバー
11…ボルト
Claims (2)
- 第一挿通孔を有する本体と第二挿通孔を有するカバーとの間に濾材を挾持し、前記本体と前記カバーとがボルトにより相互に締め付けられる構成のオイルストレーナにおいて、
前記ボルトを締め付けたときに前記濾材を介することなく前記カバーと前記本体とが圧接される圧接部をボルトの周囲に形成し、当該圧接部の外側には前記濾材がはいり込む隙間を形成する一方、前記濾材には前記圧接部と対応する位置に孔を形成したことを特徴とするオイルストレーナ。 - 前記本体における前記ボルトの挿入孔の周囲を前記カバーへ向かって突出させて前記隙間を形成した請求項1に記載のオイルストレーナ。
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