JP4273678B2 - 空調装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、微生物、特に黴の繁殖防止、ウィルス不活化を図ることができる機能を有する空調装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、空調装置内の微生物の繁殖防止としては、エアコンの室内ユニットに配設されているフィルタや熱交換器、送風ファンなどに銀や銅の化合物などの抗菌抗黴処理をするのが一般的であった。しかしながら、このような抗菌抗黴処理をした空調装置であっても、長期間使用して熱交換器やファンほこりが堆積した場合にはほこりの上に黴などが繁殖してしまい下地の抗菌抗黴処理の効果がみられないこともあった。
【0003】
そのため、気相中の細菌や黴に直接作用するような抗菌抗黴機構が開発されている。例えば、エアコン室内機内に放電機構を設けたり紫外線ランプを設置することで、オゾンや負イオンを発生させて細菌や黴を殺菌することが試みられている。たとえば特開平9−119657号公報では、人体に有害なオゾン濃度を下げながら負イオンを発生させる微生物繁殖防止機構を冷凍・空調装置に組み込んでいる。この場合、空気中の気体をイオン化する電離室とイオン化された気体に含まれるオゾンを除去するオゾン分解室ともつような微生物繁殖防止機構冷却ユニットの送風機の吹き出し口に配置している。
【0004】
また近年、細菌や黴だけでなく空気中に存在するウィルスを室内機内の風回路内に設置したフィルターで捕獲し、カテキンで不活化する手法やオゾンを充満させることでウィルスを不活化させることが試みられている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記ような微生物繁殖防止機構では、一般に装置が複雑であり、組み込むためには空調装置の室内ユニット等に相当のの組み込み容積を確保する必要があり、近年のユーザに-ズであるコンパクト性やユニットの構成材料削減の方向に反することになるという課題を有していた。
【0006】
またフィルターなどに製剤を練りこむことによるウィルス不活化手法では、付着したウィルスを不活化することは可能であるが、長期間使用してほこり等がその表面に堆積した場合にはその効果は著しく低下してしまう。
【0007】
またオゾン散布によるウィルス不活化では、ppmオーダーの高濃度のオゾンが必要であり、人体への影響を考えれば危険性が高く現実的ではない。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、ウィルス等の発生の可能性の高い空調装置の室内ユニットなどにおいて、熱交換器や送風機で構成される送風回路に常温で揮散する黴/ウィルス不活化剤を散布できる構成とし、その黴/ウィルス不活化剤として主たる有効成分に夫々アリルイソチオシアネート、ティーツリー油を含む材料を用い、このティーツリー油の組成が50wt%以下であるようにすることで、特に冷房や除湿運転時のように、運転停止後に結露が発生し、高湿状態になり、細菌等が発生しやすい時に、未然にその発生の抑制・防止を図ることができる。
【0009】
【発明の実施の形態】
本願発明の請求項1に記載の発明の空調装置は、少なくとも熱交換器と、送風機と、送風の吹出口を開閉することができる風向制御手段とを有し、送風回路において黴/ウィルス不活化剤を保持した保持部材を配設して放散するように構成した空調装置であって、黴/ウィルス不活化剤の有効成分は夫々アリルイソチオシアネート及びティーツリー油であり、前記ティーツリー油の組成が50wt%以下であることを特徴とする。空調装置内を通過する空気の風路内に室温で揮散するウィルス不活化剤を備えたことによりウィルス剤が風路内の気相中に存在するのでほこりの上のウィルスに不活化作用が生じるため効果的である。またオゾン発生器のような装置を使わないため既存の空調装置に組み込むこともでき、安価にして余分な電力も必要とせず、かつウィルス不活化効果の高い空調装置を得ることができる。
【0011】
なお、アリルイソチオシアネート及びティーツリー油は混合状態であっても、夫々別包として保持部材に保持させてるようにしてもよい。
【0012】
また、ティーツリー油はアリルイソチオシアネートが揮発するのを阻害する作用を有するので、ティーツリー油の組成が50wt%以下にすることで、アリルイソチオシアネートの揮発阻害の影響を抑制し、効果的に両製剤の効果を享受することができるようになる。
【0013】
また、本願発明の請求項2に記載の発明の空調装置は、請求項1に記載の空調装置において、空調装置の運転停止時には、風向制御手段により送風吹出口を閉塞するとともに、所定時間送風機を動作させように制御することを特徴とする。このようにすることで、室内機の送風回路内の空気が多少なり共攪拌され、より効果的にウィルス不活化剤を各部に行きわたらせることができる。
【0014】
まず、図1、図2を用いて、本願発明の実施の形態について説明する。
【0015】
図1は本発明による空調装置の一例を示す構成図であり、より詳しくは圧縮機、凝縮器、膨張装置、蒸発器、微生物繁殖防止機構等を備えた冷凍サイクルの全体構成を示している。
【0016】
冷凍サイクルは、同図に示すように圧縮機1、四方弁6、室外熱交換器2、キャピラリチューブ(膨張装置)3、室内熱交換器4等を配管5で環状に連結して構成される。また、冷凍サイクルは四方弁6により、その回転によって作動媒体の流路を切り替えることができ、室内熱交換器4と室外熱交換器2の機能を凝縮器と蒸発器に切り替えることができるものである。
【0017】
この室外熱交換器2または室内熱交換器4には夫々送風機7、8を配置し、空気と効率的に熱交換できるようにしている。本発明の空調装置は、送風機8により室内熱交換器4の熱交換をおこなう。また空調装置内の空気の通路に室温で揮散するウィルス不活化剤9が保持された保持部材11が配置されている。
【0018】
一方、図2は本発明の一実施例の室内機断面図である。送風機8により、空調装置室内機の前方または上方から空気が吸気され、熱交換器4を通過して上下風向羽根10により方向を決めて吹き出される。図2において室温で揮散するウィルス不活化剤9は送風回路の室内熱交換器4の風上に保持部材11で固定されて設置されている。なお、設置位置は同図のとおり室内熱交換器4の風上が好ましい。
【0019】
また、運転停止時には、上下風向羽根10を閉じることによって室内機の開放部分を減らし、運転停止時におけるウィルス不活化剤の室内機内滞留濃度を増加することができる。そのためウィルス不活化作用がウィルスなどの発生の確率が高い送風回路、特に室内熱交換器4や送風機8を含めて室内機内に十分いきわたらせることができ効果的である。更には、上記のように上下風向羽根10を閉じた状態で所定時間送風機を運転すれば、室内機の送風回路内の空気が多少なり共攪拌され、より効果的にウィルス不活化剤を各部に行きわたらせることができる。
【0020】
また、本発明ではウィルス不活化剤として、気相でウィルス不活化効果を有するティーツリー油を用いている。ウィルス不活化剤はゼオライトなどの多孔質の媒体に吸着させておくものや樹脂と混合し、保持させるもの、また荒い網目構造をもつセルロースのように気体の透過性を制御した膜でウィルス不活化剤を包んだものなど、またはこれらの手法の複合したものを用いることができる。抗菌抗黴剤を多孔質媒体に吸着させたものを気体透過性制御膜で包むようにするのが好適である。多孔質媒体に吸着させることで抗菌抗黴剤を比較的大量に保持することが可能になり長期にわたって効果を持続させることができ好ましい。またこの制御膜の膜厚や開口径、メッシュ径などの仕様を変更することによりウィルス不活化剤の揮散量を制御できる。
【0021】
また、抗菌抗黴剤の有効成分としてのアリルイソチオシアネートとウィルス不活化剤の有効成分としてのティーツリー油を混合し、図1に示すウィルス不活化剤9の代わりに設置することも有効である。アリルイソチオシアネートとティーツリー油の揮発成分を混在させることによる相乗効果により抗黴性を高めることができる。この場合、アリルイソチオシアネートとティーツリー油は混合させとも良いし、別包としても良い。
【0022】
さらにアリルイソチオシアネートとティーツリー油を混合する場合には、ティーツリー油はアリルイソチオシアネートが揮発するのを阻害する作用を有するので、ティーツリー油が50wt%以下であることが好ましい。
【0023】
【実施例】
以下に具体的な実施例を示す。
【0024】
(実施例1)
ウィルス不活化剤としてティーツリー油1gを多孔質セルロースビーズに含有させたものをセルロース膜に包んでウィルス不活化剤の分包を作成した。ここでアリルイソチオシアネートの揮散量は1日あたり12mgであった。このウィルス不活化剤の分包を図3に示すようにセパレートタイプエアコンに用いている空気清浄フィルタ枠に挟み込んで取り付け、上下風向羽根を閉じた状態とした。そしてインフルエンザウィルスを用いたReed−Muench法によるウィルス感染価評価でウィルス不活化効果を調べた。
【0025】
その試験方法は次のとおりである。
【0026】
まず第1に「ウィルス浮遊液の調整」を行う。即ち、細胞増殖培地を用い、MDCK細胞(ATCC CCL−34株/大日本製薬製)を組織培養用フラスコ内に培養、その後フラスコ内から細胞増殖培地を除き、試験ウィルスを接種した。次に細胞維持培地を加えて37℃の炭酸ガスインキュベータ内で3日間培養した。細胞の形態変化を確認後、凍結融解し、培養液を遠心分離し、得られた上澄み液をウィルス浮遊液とした。
【0027】
第2に、試験片の調整を行う。即ち、標準白布を約3cm角の大きさに切断、ウィルス浮遊液を滴下し、試験片とした。
【0028】
第3に、試験操作を行う。操作としては、試験片を試験条件環境に設置、24時間保持した。そして試験片上のウィルス浮遊液を細胞維持培地2mlで洗い出した。
【0029】
そして、第4にウィルス感染価の測定を行う。即ち、細胞増殖培地を用い、MDCK細胞を組織培養用マイクロプレート内(96穴)で培養した後、細胞増殖培地を除き細胞維持培地を0.1mlづつ加えた。次いで、洗い出し液およびその希釈液0.1mlを4穴づつに接種し、インキュベータ内で5日間培養した。倍用後、細胞の形態変化(細胞変性効果)の有無を顕微鏡観察し、Reed−Muench法により50%組織培養感染量を算出して洗い出し液1mlのウィルス感染化に換算した。
【0030】
以上のようにして、試験片1を前記空気清浄フィルタ枠に挟み込みウィルス不活化効果を調べた。また比較として、ウィルス不活化剤のないエアコン室内機でも同様の試験を行った(試験片2)。
【0031】
試験結果を表1に示す。明らかに試験片1のインフルエンザウィルスはブランクとなる試験片2と比べて不活化されていることがわかる。
【0032】
【表1】
(実施例2)
アリルイソチオシアネート2gティーツリー油0.5gを多孔質セルロースビーズに含有させたものをセルロース膜に包んで分包1を作製した。分包1と同様の構成でアリルイソチオシアネートのみを2g含有させたものを分包2、分包1と同様の構成でティーツリー油のみを0.5g含有させたものを分包3とした。前記分包を図3に示すように冷房能力2.5kWのセパレートタイプエアコンに用いている空気清浄フィルタの枠に挟み込み、各々エアコン室内機に取り付け、試験機1、2、3とした。
【0033】
そして、実施例1のエアコン室内機の上部に、エアコン内部から採取したアオ黴をPDA培地で培養した直径100mmのシャーレ2個をエアコン内部側に向けて設置した。この状態で10日間昼間だけ冷房で用いた。ここで同時に抗菌抗黴剤を用いないエアコンを同じ条件で運転した。
【0034】
10日間後にアオ黴を取り除き、エアコンからの黴の放出量を測定した。黴の放出量はエアコン運転時にバイオテスト社製RCSエアーサンプラを用いてエアコンの吹き出し口に向けて1回2分間80Lの空気を採取した。採取はエアコン運転直後にエアコンの吹き出し口のところで行った。使用培地は真菌用の専用培地である。培養は25℃で3日間おこない、結果をコロニー数であらわした。その結果を表2に示す。
【0035】
同表に示す通り、試験機1、試験機2ともに抗黴効果は確認されたが、試験機1の方が抗黴性能は高くなった。また試験機3はまったく抗黴効果は確認されなかった。本試験結果から明らかなように、アリルイソチオシアネートとティーツリーの揮発成分を混在させることによる相乗効果により抗黴性が大きくなった。なお、無単位数字は放出菌数(cfu/40L)である。
【0036】
【表2】
(実施例3)
実施例1で作製したものと同様の構成の分包をアリルイソチオシアネートとティ−ツリー油の配合比を変えて作製、アリルイソチオシアネートの一日あたりの放出重量を測定した。その結果を表3に示す。
【0037】
【表3】
表3からわかるように、ティーツリーオイルが50%を超えるとアリルイソチオシアネートの放出量が大きく低下する。
【0038】
(実施例4)
実施例2において用いた分包2を図4に示すように冷房能力2.5kWのセパレートタイプエアコンに用いている空気清浄フィルタの枠に挟み込み、エアコン室内機に取り付け、試験機4とした。実施例2と同様にのエアコン室内機の上部に、エアコン内部から採取したアオ黴をPDA培地で培養した直径100mmのシャーレ2個をエアコン内部側に向けて設置した。この状態で10日間昼間だけ冷房で用いた。また試験機4と同様の構成の試験機5も運転させ、運転停止時には二時間おきに、10の上下風向羽根を閉鎖したまま、送風機8を回転させた。
【0039】
10日間後にアオ黴を取り除き、エアコンからの黴の放出量を測定した。黴の放出量はエアコン運転時にバイオテスト社製RCSエアーサンプラを用いてエアコンの吹き出し口に向けて1回2分間80Lの空気を採取した。採取はエアコン運転直後にエアコンの吹き出し口のところで行った。使用培地は真菌用の専用培地である。培養は25℃で3日間おこない、結果をコロニー数であらわした。その結果が表4に示すとおりである。
【0040】
【表4】
同表からわかるように、試験機4、試験機5ともに抗黴効果は確認されたが、試験機5の方が抗黴性能は高くなった。なお、無単位数字は放出菌数(cfu/40L)である。
【0041】
【発明の効果】
以上に示すように、本願発明による空調装置によると以下のような効果を奏するものである。
【0042】
即ち空調装置において、空調装置内を通過する空気の風路内に室温で揮散するウィルス不活化剤を備えたことによりウィルス剤が風路内の気相中に存在するのでほこりの上のウィルスに不活化作用が生じるため効果的である。またオゾン発生器のような装置を使わないため既存の空調装置に組み込むこともでき、安価にして余分な電力も必要とせず、かつウィルス不活化効果の高い空調装置を得ることができる。
【0043】
また、本願発明によれば、アリルイソチオシアネートとティーツリー油を同時に揮発させることにより、高い抗菌抗黴性を得ることができ、黴の繁殖を防ぐことができる。
【0044】
更には、アリルイソチオシアネートおよびティーツリー油が含まれる抗菌ウィルス不活化剤においてティーツリー油が50wt%以下とすることによって、アリルイソチオシアネートの放出抑制を防ぐことができる。
【0045】
また、本願発明によれば、運転停止時に少なくとも空調装置の風路の出口が閉じていることにより空調装置内の抗菌抗黴剤およびウィルス不活化剤の滞留時間を簡易的な機構で長くすることができるため長期にわたり微生物繁殖防止能力およびウィルス不活化能力が高い空調装置を得ることができる。運転停止時に空調装置の風路の出口を閉じたまま、室内機内の送風機を動作させることで、気化成分が攪拌され、空調装置内の抗菌抗黴剤およびウィルス不活化剤の滞留範囲を広くすることができるため微生物繁殖防止能力およびウィルス不活化能力が高い空調装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本願発明の空調装置の一例を示す冷凍サイクルの全体図
【図2】本願発明の一例を示す空調装置室内機の断面図
【図3】本願発明の黴/ウィルス不活化剤を保持させた保持部材の一例を示す構成図
【図4】本願発明の一例を示す上下風向羽根を閉止した状態の空調装置室内機断面図
【符号の説明】
1 圧縮機
2 室外熱交換器
3 膨張装置
4 室内熱交換器
5 配管
6 四方弁
7 室外機送風機
8 室内機送風機
9 ウィルス不活化剤
10 上下風向羽根
11 保持部材
Claims (2)
- 少なくとも熱交換器と、送風機と、送風の吹出口を開閉することができる風向制御手段とを有し、送風回路において黴/ウィルス不活化剤を保持した保持部材を配設して放散するように構成した空調装置であって、前記黴/ウィルス不活化剤の有効成分は夫々アリルイソチオシアネート及びティーツリー油であり、前記ティーツリー油の組成が50wt%以下であることを特徴とする空調装置。
- 運転停止時において、風向制御手段により送風吹出口を閉塞するとともに、所定時間送風機を動作させように制御することを特徴とする請求項1に記載の空調装置。
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