JP4270600B2 - ヨウ素レーザにおけるヨウ素混合ノズル - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、化学励起酸素ヨウ素レーザ発生装置におけるヨウ素混合ノズルに関し、特に超音速ヨウ素レーザにおける超音速ノズルにヨウ素を供給する部分の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
化学励起酸素ヨウ素レーザ(COIL)は、励起状態のヨウ素I(2P1/2)が基底状態I(2P3/2)に落ちるときに発する放射光を利用するヨウ素レーザに、電子励起状態の酸素分子O2(1Δ)とヨウ素原子の共鳴的なエネルギー移乗反応を利用することにより連続的なレーザ発振を可能としたものである。化学励起酸素ヨウ素レーザ(COIL)発生装置は、図9に示すように、励起酸素発生器、ヨウ素気化器、レーザ発振器、真空ポンプを主要構成要素とする。なお、化学励起酸素ヨウ素レーザ(COIL)発生装置は、ヨウ素トラップを備える場合もある。
【0003】
励起酸素発生器では、過酸化水素水とアルカリ溶液の混合液であるBHPに塩素ガスを通すことにより電子励起状態の酸素分子O2(1Δ)を得る。この方法は湿式であり、随伴する水蒸気が励起ヨウ素分子および励起ヨウ素原子を失活させるため、発生した気流に含まれる水分を氷結させて除去する水蒸気トラップを備える。
電子励起状態の励起酸素は窒素やアルゴンなどの不活性ガスと混合され励起酸素主流流れとなり真空吸引されて、供給されるヨウ素を巻き込んでレーザ共振部分に送られる。ヨウ素は、主流流れに搬送されている間に励起酸素からエネルギー移乗を受けて励起状態になり、レーザ共振部で2つの反射鏡の間を共振しているレーザ光に刺激されて光エネルギーを放出しレーザ光を増幅する。
【0004】
励起酸素とヨウ素分子の混合流れを超音速状態にしてレーザ共振器部に送り込むようにした超音速励起酸素ヨウ素レーザは、超音速領域において両者の接触的反応が促進される利点に加えて、断熱膨張により冷却するため励起酸素からヨウ素原子にエネルギー移乗する効率が向上する。
超音速励起酸素ヨウ素レーザの性能は、励起酸素発生器で得られた励起酸素ガスとヨウ素ガスの混合状態を良好にして光学エネルギを取り出す上で適当な増幅領域を作り出す機構に影響される。
【0005】
従来のスリット形超音速ノズルでは、図10に示すように、ヨウ素がたとえばマッハ0.4程度の亜音速状態にある励起酸素ガス主流中に注入されて混合される。ヨウ素を混合した励起酸素ガス主流は絞りを通って音速に達し、さらに拡幅する案内板に沿って断熱膨張しながらマッハ2程度の超音速に加速される。
この間にヨウ素分子は励起酸素からエネルギーを受けて十分高い振動状態に持ち上げられて原子状態に解離し、さらにエネルギー移乗を受けて励起状態に遷移し、レーザ共振部で基底状態に戻る過程で光放出する。
ガス流は断熱膨張して温度低下するため、エネルギー移乗反応が促進され、高いレーザ利得を得ることができる。
【0006】
図11は超音速ノズルの上流にヨウ素混合ノズルを設けた従来例を示す平面配置図である。断面が逆くさび形をした柱体を多数並設して連格子を形成し超音速ノズルとする。この超音速ノズルの上流に供給される励起酸素主ガス流流れを共振器より下流に設けた真空排気口から真空装置で吸引する。励起酸素ガス主流流れは超音速ノズルの最挟部を通過するときに音速になり、その後拡幅しながら加速されマッハ2程度に達して共振部に到達する。
ヨウ素は超音速ノズルの上流マッハ0.4程度の亜音速領域に供給され、超音速ノズルの最挟部に達する頃にはある程度励起酸素ガス主流流れに混合し、その後さらに混合されてエネルギー移乗作用を受けて励起され、共振器でレーザ光に刺激されて基底状態に戻るときに光放射してレーザ光を増幅する。
この従来例では両者が独立に設置されるので条件に従ってヨウ素を注入する位置を調整するときに便利である。
【0007】
ところが、ヘリウムなどで希釈された励起酸素ガス主流流れのガス速度は例えば常温で700m/s程度になるなど極めて速い。したがって、超音速ノズルにおいて励起酸素ガス主流流れの音速領域や超音速領域にヨウ素を注入すると、ヨウ素分子が原子に解離するために要する時間と比較して励起酸素ガス主流流れがレーザ共振部に達するまでの時間が短いため、レーザ共振部に到達したときのガス流における励起ヨウ素原子の濃度が十分な水準に達しない問題があった。
このため、従来の超音速ノズルでは、ヨウ素の注入口の下流に超音速絞りを設け亜音速状態における混合領域を持たせて、ヨウ素分子が解離する時間を与えていた。
【0008】
しかし、超音速絞りの上流の亜音速域にヨウ素ガスを注入する従来の超音速ノズルは、窒素あるいはアルゴンなど分子量の大きい不活性ガスと混合した平均分子量が比較的大きい励起酸素の主流流れについて使用する場合、ガス流の分子量が大きい分たとえば350m/s程度とガス速度が遅くなるため、亜音速領域における滞留時間が大きくなり過ぎてヨウ素分子の過剰な解離とヨウ素原子の過剰な励起が起こり、結局レーザ出力効率を低下させる現象が生じた。
また、15torrを超える程度に励起酸素分圧が高い主流流れを用いる場合も同様にヨウ素分子解離とヨウ素原子励起が過剰になり、レーザの出力効率を低下させていた。
【0009】
さらに、化学励起酸素発生器から励起酸素を供給するときなど水蒸気を多く含む励起酸素ガス主流流れを用いる場合は、滞留時間が長くなるため残留水蒸気による励起ヨウ素分子や励起ヨウ素原子の失活が起こりやすく、レーザ出力を低下させていた。
運転コストを考慮すると、特に産業用励起酸素ヨウ素レーザでは低アルカリのBHPを用いることが好ましく、必然的にBHPの温度を高くするため、励起酸素ガス中の水蒸気分圧が高くなる傾向にあるから、水蒸気による励起ヨウ素の失活は重大な問題となる。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、平均分子量の大きい励起酸素ガス主流流れにヨウ素を注入して超音速流を形成する場合に、過剰なヨウ素分子解離や過剰なヨウ素励起を起こさず、また水蒸気による失活を減少させるようなヨウ素混合ノズルを提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、超音速ヨウ素レーザ発生装置に用いる本発明のヨウ素混合ノズルは、励起酸素を含む主流流れを加速する超音速ノズルにおける音速域にヨウ素流を混入するように配設されることを特徴とする。
さらに、超音速ノズルにおける超音速域にヨウ素流を混入する第2の注入口を設けてもよい。
【0012】
本発明のヨウ素混合ノズルによれば、超音速ノズルで音速以上に加速される付近にヨウ素分子流を供給するため、従来のように亜音速域を通過する間にヨウ素分子と過剰に反応して励起酸素を浪費することがない一方、供給されたヨウ素分子は音速以上に加速された励起酸素ガス主流流れが共振部まで達する間に主流流れ中に十分混合されてエネルギー移乗するとともに主流流れの断熱膨張により冷やされるので、レーザ共振部で効率よくレーザ光増幅を行うようになる。
【0013】
また、励起酸素ガス主流流れに残留した水蒸気は超音速ノズルを通過することにより冷却し凝縮もしくは凝固して反応性を失うので、水蒸気により失活する励起ヨウ素分子や励起ヨウ素原子も大幅に減少する。
なお、特に、たとえばアルゴンなど比較的高分子量の不活性ガスで励起酸素を搬送するようにして主流流れの平均分子量を大きくしたときには、音速が数100m/s程度と遅くなるので、共振部に到達するまでにヨウ素分子の解離も相応に進み励起ヨウ素原子の存在率も大きくなり問題がない。
【0014】
さらに、音速領域に注入したヨウ素流は励起酸素ガス主流流れの中央部分で混合し易く流れの周辺部における存在率が低下するので、ヨウ素混合ノズルに第2の注入口を設けて超音速域にヨウ素流を混入するようにすると、中央部から離れた側流部分における励起酸素をエネルギー移乗に活用して賦活率を向上させることができる。
【0015】
なお、本発明のヨウ素混合ノズルは超音速ノズルと一体に形成してもよい。超音速ノズルはその輪郭形状により決められるものであるから、内部にヨウ素流を供給するダクトと励起酸素流に注入するための開孔を設けてもその機能を妨げないばかりか、音速領域におけるヨウ素注入位置を正確に設定することができる。
【0016】
また、本発明のヨウ素混合ノズルは、側面にヨウ素流噴出口を設けた円筒形パイプを噴出口を備える側面が対向するように並設することにより超音速ノズルを形成するようにしてもよい。
円筒形パイプの直径とほぼ等しい間隙を設けるように複数のパイプを並設して超音速ノズルを形成してもよい。
なお、上記の円筒形パイプには下流側に向けたヨウ素流噴出口をさらに設けてもよい。
【0017】
円柱を適当な間隔で並べて連格子状にすると容易に超音速絞りを形成することができる。
たとえば直径5mmの円柱を10mm間隔で並べてほぼ5mmの間隙を持つようにした連格子を設け、30〜40Torr程度の低圧励起酸素ガス主流流れを真空ポンプで吸引してこの連格子を通過させると、励起酸素ガス主流流れはその粘性のため連格子の最挟部より僅かに下流で音速になり、さらに下流側で流れが拡幅してマッハ2程度の超音速領域が形成される。
【0018】
この連格子の円柱中を空洞にして最挟部に適当な間隔で注入口を設け、ヨウ素流を供給するようにしたノズルは、励起酸素ガス主流流れの音速領域もしくはその近傍にヨウ素を注入するヨウ素混合ノズルと超音速ノズルが一体化したノズルを形成する。
上記の円筒形パイプに下流側に向けたヨウ素流噴出口をさらに設ければ、円筒形パイプの裏側に当たる部分にヨウ素を供給して未反応の励起酸素を有効に利用することができるので、レーザ出力が増大する。この付加噴出口の噴出方向は格子面からたとえば45度の方向に選択することができる。
【0019】
なお、励起酸素の主流流れはアルゴンまたは窒素などの重い分子量を有する不活性ガスと励起酸素を混合したもの、またヨウ素流は不活性ガスによりヨウ素分子を搬送するものであることが好ましい。
ヘリウムなど低分子量ガスで搬送するのと比較して励起酸素ガス主流流れの平均分子量が大きくなるので、ガス速度が低下し超音速ノズルから共振部までの搬送時間が長くなるためこの間でヨウ素解離が十分進み、共振部におけるレーザ発光が効率よく行われるようになる。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について実施例に基づき図面を参照して詳細に説明する。
図1は本発明のヨウ素混合ノズルの1実施例を示す断面図、図2はその別の態様を示す断面図、図3は本発明のヨウ素混合ノズルの別の実施例を示す断面図、図4はその別の態様を示す断面図、図5は本発明のヨウ素混合ノズルのさらに別の実施例を示す断面図、図6はその一部切り欠き斜視図、図7はその別の態様を示す断面図、図8は本発明のヨウ素混合ノズルの効果を示すグラフである。
【0021】
【実施例1】
図1と図2を参照して本発明の第1実施例について説明する。
本実施例のヨウ素混合ノズルは超音速ノズル1の内部にヨウ素流を搬送するダクト2を設け、超音速絞り3の部分にヨウ素流噴出口4を設けて、励起酸素ガス主流流れの音速領域にヨウ素を供給するようにしたものである。
【0022】
本実施例のヨウ素混合ノズルと一体に形成されたスリット形超音速ノズル1の上流に、例えば分圧10〜30Torrの励起酸素と分圧20〜30Torrの窒素ガスを混合した励起酸素ガス主流流れを供給して、下流から真空ポンプで真空吸引する。すると、主流流れは流路が最も狭くなる超音速絞り3の位置で音速に達し、その後拡幅して加速しマッハ2程度の速度になり、図外のレーザ共振部に供給される。
ダクト2に供給されるヨウ素流は、図外のヨウ素気化器で蒸気化したヨウ素を窒素ガスで搬送するもので、ヨウ素流噴出口4から励起酸素ガス主流流れの音速領域に放出される。
【0023】
励起酸素ガス主流流れに混合したヨウ素分子は、励起酸素と衝突して励起ヨウ素分子になりヨウ素原子に解離し、さらに励起酸素からエネルギー移乗を受けて励起ヨウ素原子になると考えられている。励起状態に遷移したヨウ素原子はレーザ共振部で基底状態に戻って光放出する。
ガス流は断熱膨張して温度低下するため、エネルギー移乗反応が促進され、高いレーザ利得を得ることができる。
【0024】
レーザ発光に寄与するのは上記過程の最終段階にある励起ヨウ素原子であるので、レーザ発振部に到達するまでにこれらの過程を踏むだけの十分な時間を必要とするが、平均分子量が大きな流れは音速が遅くなるので、ヘリウムなどと比較して重い不活性ガスである窒素を混入した励起酸素流を使用する場合は超音速領域を伝搬して共振部に到達するまでの時間が長くなり十分実用できる。窒素の代わりにアルゴンガスを用いてもよいことは勿論である。
また、上記の過程は励起酸素の濃度が高ければ短時間で進行するので、従来と比較して高い10〜30Torr程度の分圧を有する励起酸素を用いる場合はレーザ共振部に到達するまでに、十分な励起ヨウ素原子が生成される。
【0025】
なお、励起ヨウ素分子は水蒸気と作用することにより失活して基底状態に戻るので、効率よく励起ヨウ素原子を得るためには水蒸気をできるだけ除去しておく必要がある。
本実施例におけるヨウ素混合過程では、ヨウ素の混合が音速の断熱冷却状態で行われる。したがって、主流流れ中に含まれる水蒸気が減圧冷却により除去されてさらに少なくなっているので、水蒸気により失活される励起ヨウ素分子が極く少なくなる特長がある。
【0026】
産業用のヨウ素レーザは、反応性を向上させるため濃度の高い励起酸素ガスを使用し、搬送ガスをより入手の容易な窒素ガスやアルゴンガスとし、かつ運転の容易性と経済性から低アルカリBHPを用いて高温運転する傾向にある。
本発明のヨウ素混合ノズルを用いることにより、こうした産業用ヨウ素レーザ発生装置に期待される特性によく適合することができる。
【0027】
図2は、本実施例の別の態様を説明する図面である。
図2におけるヨウ素混合ノズルは、超音速ノズル1の超音速絞り部分3に設けたヨウ素流噴出口4に加えて、その下流の超音速領域における案内壁部分にヨウ素流噴出口5を付加したものである。
音速領域に供給されたヨウ素は、励起酸素ガス流の中心部分においてよりよく混合され、超音速領域における励起酸素ガス主流流れの周縁部分に拡散して来る割合が少ない。
この付加噴出口5により、案内壁に沿って拡幅する励起酸素ガス主流流れの周縁部分にヨウ素を補給すると、主流流れ中の励起酸素ガスを無駄なくエネルギー移乗反応に利用することができる。
【0028】
【実施例2】
図3と図4を参照して本発明の第2の実施例について説明する。
本実施例のヨウ素混合ノズルは従来の連格子形超音速ノズルと一体化したものである。従来の連格子形超音速ノズルは、各格子の断面がくさび形をしていて、上流側で空隙が最も狭くなり下流に向かって徐々に拡幅するように、格子が連設されていた。
【0029】
本実施例のヨウ素混合ノズルはこの超音速ノズル11の格子内部にヨウ素流が流通するダクト12を設け、超音速ノズルの最も間隙が狭くなる位置13にヨウ素流噴出口14を設けたものである。
ダクト12の断面形状は任意に選択できるが本実施例では工作の便宜から円形断面を用いている。また、超音速ノズル11の上流側形状15を半円形に形成しダクト12の壁厚を小さくして、ダクト12から繋がるヨウ素流噴出口14の距離を短くして流体抵抗を小さくしてある。
【0030】
超音速ノズル11の上流に、励起酸素と窒素ガスを混合した励起酸素ガス主流流れを供給して、下流から真空吸引すると、主流流れは流路が最も狭くなる位置13で音速に達し、その後拡幅して超音速に加速し、共振部に供給される。
ダクト12に供給されるヨウ素流は、ヨウ素を窒素ガスで搬送するもので、噴出口14から励起酸素ガス主流流れの音速領域に放出される。
【0031】
窒素などの比較的重い不活性ガスを混入した励起酸素ガス流は共振部に到達するまでの時間が長くなるので、亜音速領域で混合しなくてもヨウ素分子の解離が十分進行する。励起酸素分圧が10〜30Torr程度と高い場合はエネルギー移乗反応も短時間で進行するので、レーザ共振部に到達するまでに十分な励起ヨウ素原子が生成される。
また、ヨウ素の混合が断熱冷却状態で行われるので、主流流れ中に含まれる水蒸気はさらに減少し励起ヨウ素分子の失活は極く少なくなる。
【0032】
図4のヨウ素混合ノズルは、ヨウ素の噴出口位置を丁度音速領域に置く代わりに音速領域の近傍に置いたもので、図3とほぼ同じ作用効果を有する。
ヨウ素分子が亜音速領域に長い間滞留すると、この間に過剰な解離や過剰な励起が生じ、肝心の共振部における励起ヨウ素原子の量が減少するが、音速領域近傍における滞留時間が多少のびても影響は少ない。そこで、超音速ノズルあるいはヨウ素混合ノズルを形成する上で設計あるいは製作の便宜から、流路が最も狭くなる位置と多少ずれた音速領域の近傍にヨウ素流噴出口16を形成することもできる。
【0033】
【実施例3】
図5と図6を参照して本発明の第3の実施例について説明する。
本実施例のヨウ素混合ノズルは側面にヨウ素流噴出口24を設けた円筒形パイプ21を噴出口を備える側面が対向するように並設することにより超音速ノズルを形成したものである。
従来の連格子形超音速ノズルは、各格子の断面がくさび形をしていて、上流側で空隙が最も狭くなり下流に向かって徐々に拡幅するように、格子が連設されていた。
しかし、円筒21を適当な間隔で並べて連格子状にすることによっても超音速絞りを形成することができる。本願発明者らはこの事実をレーザ出力を観察することにより確認して、本実施例のヨウ素混合ノズルの発明に至ったものである。
【0034】
本実施例では、外径5mmの円筒形パイプ21を10mm間隔で並べてダクト27で上下を押さえてほぼ5mmの間隙を持つ連格子とし、円筒21内部の中空部はダクト27の中空部と連結して、ここからヨウ素流を供給するようにした。30〜40Torr程度の低圧励起酸素ガス主流流れを真空ポンプで吸引してこの連格子を通過させるようにすると、励起酸素ガス主流流れはその粘性のため連格子の最挟部より僅かに下流で音速になり、さらに下流側で流れが拡幅してマッハ2程度の超音速領域が形成される。
【0035】
したがって、この連格子の最挟部に円筒21の軸方向に適当な間隔でヨウ素流噴出口24を設け、ここからヨウ素流を励起酸素ガス主流流れ中に供給するようにすると、音速領域もしくはその近傍にヨウ素を注入するヨウ素混合ノズルと超音速ノズルが一体化したノズルが形成されることになる。
このようにして形成される一体化型超音速式ヨウ素混合ノズルは、その構造が極めて簡単であり材料が容易に入手でき製造が簡単である。
本実施例におけるヨウ素混合ノズルによっても、前記の各実施例と同じ作用効果を得ることができる。
【0036】
図7は、本実施例の別の態様を説明する図面である。
図7におけるヨウ素混合ノズルは、円筒形パイプ21の側面に設けたヨウ素流噴出口24に加えて、下流側に向けたヨウ素流噴出口28をさらに設けたものである。この付加噴出口28は、円筒形パイプ21の格子部を通り過ぎて超音速になった領域にヨウ素流を補給することが目的であるので、側面のヨウ素流噴出口24に対してたとえば45度の方向に選択すればよい。
音速領域に供給されたヨウ素は、励起酸素ガス流の中心部分においてよりよく混合され、流れの周縁部分に拡散して来る割合が少ない。付加噴出口28により主流流れの周縁部分にヨウ素を補給することにより、主流流れ中の励起酸素ガスを無駄なくエネルギー移乗反応に利用することができる。
【0037】
図8は本発明のヨウ素混合ノズルの効果を示すグラフである。
超音速ノズルとヨウ素混合ノズルの距離によりレーザ発振効率がどのように変化するかを実験により確認した結果を表したものである。励起酸素ガス主流流れとヨウ素分子流はいずれも窒素ガスを搬送ガスとした。
横軸は超音速ノズルの超音速絞り位置から測定したヨウ素混合ノズルまでの距離を表し、縦軸は相対値で表したレーザ発振効率を表す。
ヨウ素混合ノズルまでの距離がゼロの所以外は図10に表したようなくさび形超音速ノズルの前面にヨウ素混合ノズルを配置した状態で、ヨウ素混合ノズルと超音速絞り位置の距離がゼロの所は図7に表した一体型ノズルを用いて、レーザ発振効率を測定した結果である。
このグラフを見ると、ヨウ素混合ノズルの位置が音速領域にあるものは、亜音速領域にある場合と比較して30〜50%も発振効率が改善することが分かる。
【0038】
【発明の効果】
以上説明した通り、本発明のヨウ素混合ノズルは、超音速励起酸素ヨウ素レーザにおいて、窒素やアルゴンなど分子量の大きい不活性ガスで搬送する平均分子量の大きい励起酸素ガス主流流れに窒素ガスなどで搬送するヨウ素を注入して超音速流を形成する場合に、過剰なヨウ素分子解離や過剰なヨウ素励起を抑え水蒸気による失活を減少させて、効率のよいレーザ発振を生じさせることができる。本発明のヨウ素混合ノズルは、特に、産業用のヨウ素レーザにおいて競争力を持たせるために高濃度の励起酸素と窒素ガス等入手の容易な不活性ガスを使用しより高温で運転する場合に、発振効率の高い好適な運転環境を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のヨウ素混合ノズルの第1の実施例を示す断面図である。
【図2】第1実施例の別の態様を示す断面である。
【図3】本発明のヨウ素混合ノズルの第2の実施例を示す断面図である。
【図4】第2実施例の別の態様を示す断面である。
【図5】本発明のヨウ素混合ノズルの第3の実施例を示す断面図である。
【図6】第3実施例の一部切り欠き斜視図である。
【図7】第3実施例の別の態様を示す断面である。
【図8】本発明のヨウ素混合ノズルの効果を示すグラフである。
【図9】化学励起酸素ヨウ素レーザ発生装置の構成図である。
【図10】従来のスリット型ヨウ素混合ノズルの例を示す図面である。
【図11】従来の連格子型ヨウ素混合ノズルの例を示す図面である。
【符号の説明】
1 超音速ノズル
2 ダクト
3 超音速絞り
4 ヨウ素流噴出口
5 付加ヨウ素流噴出口
11 超音速ノズル
12 ダクト
13 最も間隙が狭くなる位置
14 ヨウ素流噴出口
15 超音速ノズル上流側形状
16 ヨウ素流噴出口
21 円筒形パイプ
24 ヨウ素流噴出口
27 ダクト
28 付加ヨウ素流噴出口
Claims (4)
- 超音速ヨウ素レーザにおいてアルゴンまたは窒素などの重い分子量を有する不活性ガスと励起酸素を混合した主流流れを亜音速から超音速に加速する超音速ノズルの該主流流れが音速になる領域にヨウ素を含むヨウ素流を混入する第1の注入口を配設し、超音速域に前記ヨウ素流を混入する第2の注入口をさらに設けたヨウ素混合ノズル。
- 少なくとも前記第1の注入口を前記超音速ノズルに組み込んで一体に形成されたことを特徴とする請求項1記載のヨウ素混合ノズル。
- 前記ヨウ素流が前記重い分子量を有する不活性ガスによりヨウ素分子を搬送するものであることを特徴とする請求項1または2記載のヨウ素混合ノズル。
- 前記超音速ヨウ素レーザは分圧が10ないし30Torrの高圧酸素を用いたものであることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のヨウ素混合ノズル。
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