JP4267762B2 - 相互接触部材装置およびころ軸受 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、互いに実質的に線接触する2つの相互接触部材を有する相互接触部材装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
上記相互接触部材装置の一例として、転がり軸受がある。高荷重下で用いられる転がり軸受の転動体形状には、一般に負荷容量を向上させるために、ころが用いられている。円筒ころ、円すいころ軸受、自動調心ころ軸受などがこれに該当する。この転動体として用いられているころや内輪、外輪の軌道の母線形状には、接触圧力の集中を避けるためにクラウニングと呼ばれるわずかな膨らみが加工されている。
従来、ころと軌道輪の接触において接触圧力の集中を生じさせず、さらに接触領域の長手方向(ころの回転軸の方向)に接触圧力を均一に分布させるクラウニング形状が最適だと考えられて来た。このクラウニング形状は、開発者の名前をとって、ルンドベルグ(Lundberg)曲線と呼ばれている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、ルンドベルグ曲線はころ端部にて無限の値を与えるので、実用上加工の不可能な形状であることが指摘されており、ジョンソン・ゴーア(Johnson-Gohar)は、ルンドベルグ曲線のころ端部の形状を修正することにより、ころ端部のクラウニング量が有限になるように修正している。
また、最近の研究でも、接触領域の長手方向に接触圧力分布を均一にすると言う概念は引き継がれており、ヘンリク・ボグダン(Henryk-Bogdan)は、自動調心ころ軸受のような形式の転がり軸受にも、ルンドベルグ曲線が適用できることを指摘している。
一方、転がり軸受では、静的および動的な強度が求められている。論点をころと軌道とに絞れば、静的な強度とはころや軌道輪における圧痕形成に対する強度のことであり、動的な強度とは転がり疲れと呼ばれる金属疲労損傷に対する強度である。
ところが、本発明者らによる解析の結果、たとえ、ルンドベルグが提唱するように、接触領域の長手方向(ころの回転軸方向)に接触圧力を均一に分布させたとしても、ころや軌道輪の端部における接触表面の近傍に、材料の受けるダメージが集中することが判明した。
【0004】
そこで、本発明の目的は、接触領域の長手方向における接触表面近傍で、材料の受けるダメージを均一に分布させ、ころ軸受に実質的に最大の静的または動的負荷容量を与えるクラウニング形状を備えた相互接触部材装置を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1の発明の相互接触部材装置は、互いに線接触して力を伝達する2つの相互接触部材を有する相互接触部材装置であって、
静的負荷容量を最大にすべく、上記2つの相互接触部材の接触面の長手方向の端かつ表面の領域へ相当応力の最大値が分布しないように、上記接触面の長手方向の変化を設定し、動的負荷容量を最大にすべく、上記長手方向への相当応力分布を均一化し、
上記2つの相互接触部材の接触面の間隔における上記長手方向への変化が、実質的に下記の式(I)で表されることを特徴としている。
【0006】
本発明者らは、相互接触部材装置の一例として、ころ軸受の転動体と軌道輪との接触圧力および内部応力分布に着目した数値解析を行い、クラウニング形状の検討を行った。
本発明者らが、転がり軸受におけるころと軌道輪間の接触圧力と内部応力を評価した結果、たとえ、接触圧力を接触領域の長手方向に均一に分布させたとしても、接触領域近傍の材料の受けるダメージは、接触領域の長手方向における端部に集中する現象が見られた。これは高荷重の作用下において、ころ端部に塑性変形が発生することを意味しており、また、ころの端部から疲労が発生し易いことを暗示している。つまり、作用外力から、最適なクラウニング形状を求めようとするルンドベルグの示した設計概念は、ころ軸受に最大の静的および動的負荷容量を与えないのである。
【0007】
そこで、本発明者らは、ルンドベルグ曲線が導かれたような接触圧力、すなわち、作用外力を基準とするのではなく、内部応力を加味し、材料の受けるダメージを基準として、転がり軸受における耐塑性変形や耐疲労寿命を検討した。本発明者らは、最大の負荷容量を持つクラウニング形状の検討を行った結果、以下の数式(I),(II),(III)で表されるクラウニング形状であれば、接触領域の長手方向における接触表面近傍で、材料の受けるダメージを均一に分布させ、ころ軸受に実質的に最大の静的または動的負荷容量を与えることを確かめた。
すなわち、請求項1の発明の相互接触部材装置では、上記2つの相互接触部材の接触面の間隔における上記長手方向への変化が、実質的に下記の式(I)で表される。
hcr(y)=4K・R・k2(σE/(0.557E'))2
・ln((1−(2k1・y/Lwe)2)-1) …(I)
尚、hcr(y):上記長手方向への位置yにおける2つの相互接触部材の接触面の間隔
K:安全係数(0.8〜5)
R:相対移動方向への等価半径
k2:係数(1.25−2.2/(Lwe/b)1/2)
k1:係数(1−exp[〔1/{(0.2717+0.4783/(Lwe/b)1/2}〕
・{0.2501ln(Lwe/2b)+0.4725}])1/2
b:線接触におけるヘルツ(Hertz)の接触幅の半分
σE:材料の引張降伏応力(圧縮降伏応力)
E':等価ヤング率
1/E'=1/2{(1−ν1 2)/E1+(1−ν2 2)/E2}
E1,E2:物体1,2のヤング率
ν1,ν2:物体1,2のポアソン比
Lwe:上記相互接触部材の有効長
【0008】
また、請求項2の発明の相互接触部材装置は、互いに線接触して力を伝達する2つの相互接触部材を有する相互接触部材装置であって、
静的負荷容量を最大にすべく、上記2つの相互接触部材の接触面の長手方向の端かつ表面の領域へ相当応力の最大値が分布しないように、上記接触面の長手方向の変化を設定し、動的負荷容量を最大にすべく、上記長手方向への相当応力分布を均一化し、
上記2つの相互接触部材の接触面の間隔における上記長手方向への変化が、実質的に下記の式(II)で表されることを特徴としている。
hcr(y)=4K・R・k2(τmax/(0.3E'))2
・ln((1−(2k1・y/Lwe)2)-1) …(II)
尚、hcr(y):上記長手方向への位置yにおける2つの相互接触部材の接触面の間隔
K:安全係数(0.8〜5)
R:相対移動方向への等価半径
k2:係数(1.25−2.2/(Lwe/b)1/2)
k1:係数(1−exp[〔1/{(0.2717+0.4783/(Lwe/b)1/2}〕
・{0.2501ln(Lwe/2b)+0.4725}])1/2
b:線接触におけるヘルツ(Hertz)の接触幅の半分
τmax:材料の最大剪断応力に関する強度
E':等価ヤング率
Lwe:上記相互接触部材の有効長
【0009】
また、請求項3の発明のころ軸受は、互いに線接触して力を伝達するころと軌道を有するころ軸受であって、
静的負荷容量を最大にすべく、上記ころと軌道の接触面の長手方向の端かつ表面の領域へ相当応力の最大値が分布しないように、上記接触面の長手方向の変化を設定し、動的負荷容量を最大にすべく、上記長手方向への相当応力分布を均一化し、
上記ころと軌道の接触面の間隔における上記長手方向への変化が、実質的に下記の式(III)で表されることを特徴としている。
hcr(y)=(2K・k2・F)/(πE'Lwe)
・ln((1−(2k1・y/Lwe)2)-1) …(III)
尚、hcr(y):上記長手方向への位置yにおけるころと軌道の接触面の間隔
K:安全係数(0.8〜5)
F:ころ軸受の静定格荷重に対応するころの荷重
k2:係数(1.25−2.2/(Lwe/b)1/2)
k1:係数(1−exp[〔1/{(0.2717+0.4783/(Lwe/b)1/2}〕
・{0.2501ln(Lwe/2b)+0.4725}])1/2
b:線接触におけるヘルツ(Hertz)の接触幅の半分
E':等価ヤング率
Lwe:上記ころと軌道の有効長
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、この発明を図示の実施の形態により詳細に説明する。尚、以下の説明には、図7に示す力学モデルを用いる。この力学モデルでは、転がり軸受のころと軌道輪との接触を、有限幅円筒1と半無限体2との接触モデルに置き換えた。
図7において、座標軸は、ころの転がり方向をX軸、ころの回転軸の方向をY軸とし、半無限体に垂直な方向をZ軸とする。X,Y,Zは無次元座標(X=x/b,Y=y/b,Z=z/b,bは上記ヘルツの接触幅の半分)である。解析の詳細において、乾燥接触問題と内部応力の解析は、ともに図7の座標系を用いる。
発明者らは、「ころと軌道輪間の乾燥接触圧力の解析」と「軸受材料の受けるダメージの解析、すなわち内部応力の解析」の2段階からなる数値解析を行って、軸受材料の受けるダメージを接触領域の長手方向に均一に分布させて、ころ軸受に最大の負荷容量を与えるクラウニング形状を導出するという最終目的を達成した。以下、この解析について説明する。
【0011】
〔3次元の接触圧力の解析〕
任意のクラウニング形状を持つころと軌道輪間の接触圧力の解析は、古典的なヘルツ(Hertz)の接触理論から求めることができないので、3次元の乾燥接触問題を数値的に解く。
乾燥接触問題における基礎式は2つの式(1)と(3)で表すことができる。式(1)は、接触2物体間の相対距離の式であり、相対距離Hは次式(1)で求められる。
【数1】
H=hRx/b2=h0Rx/b2=H0+V …(1)
なお、H0は未変形状態で接触させた場合のころと軌道輪間の幾何学的すきまであり、Vは次式(2)に示す3次元の弾性変位量である。また、Rxは、x方向の等価半径(ころ最大径)である。
【数2】
この式(2)において、X',Y'は無次元座標(圧力の作用地点)であり、
X'=x'/b,Y'=y'/bであり、x',y'は圧力の作用点である。
また、第2の基礎式(3)は、力の釣合式である。
【数3】
座標ころ及び軌道に形成されたクラウニング量の和 hcr を仮定すると、座標yにおけるクラウニング半径rxは、
【数4】
rx=Rx−hcr …(4)
として求められる。したがって、クラウニング量を考慮した接触2物体間距離h0は、次式(5)で求められる。
【数5】
これらの基礎式を離散化し、NR法で接触圧力を求めた。なお、本来接触しない領域は、負圧となるが逐次負圧の要素を削除し、負圧がなくなるまで解析を続けた。
【0012】
〔3次元の内部応力の解析〕
接触圧力分布が得られたらそれらの圧力分布を数値的に積分することにより、3次元の内部応力分布が求められる。なお、内部応力の成分は解析の変数を減少させるために無次元化している。
デカルト座標系の3次元の内部応力の各成分Σx,Σy,Σzは、次式(6),(7),(8)および(9),(10),(11)で求められる。このΣx,Σy,Σzは、材料内部の任意の一点のyz面,xz面,xy面に垂直に作用する無次元圧縮応力である。
【数6】
【数7】
【数8】
【数9】
【数10】
【数11】
ここで、
【数12】
【数13】
である。
上記(6)〜(13)式において、i,jは離散化された要素の番号であり、nx,nyは離散化された接触圧力の要素数(x方向,y方向)である。また、Phは、線接触理論のヘルツの最大接触応力であり、Pi,jは離散化座標(Xi,Yj)における無次元接触圧力である。さらに、σx,σy,σzは、材料内部の任意の一点のyz面,xz面,xy面に垂直に作用する圧縮の応力成分(Pa)であり、τxy,τyz,τzxは、材料内部の任意の一点のxy面,yz面,zx面に垂直に作用するせん断応力成分である。
ところで、以上の応力成分からは、材料の受けるダメージを評価することはできないので、この実施形態では、デカルト座標系の応力成分から次式(14)により、フォン・ミーゼス(von Mises)の降伏条件の判定に用いられている相当応力を求めて、材料の受けるダメージを次式(14)で評価した。
【数14】
【0013】
〔ルンドベルグ曲線を採用した場合のダメージ評価〕
ルンドベルグは、ヘルツの接触理論が、線接触における接触2物体間の相対接近量を与えない問題点を克服するために、図8のような有限幅のだ円分布荷重が半無限体に作用したときの弾性変位量を求め、この変位を、線接触における接触2物体間の相対接近量の近似値にしようとした。さらに、この研究の過程で得られた曲線をころと軌道の接触領域の長手方向における相対すきまとして与えると、接触領域の長手方向に均一な接触圧力の分布が得られると考えたのである。
もしも、ころ軸受にクラウニングを形成しなければころ端部に接触圧力が集中することにより、たとえ、軽荷重であってもころ端部から損傷することになる。このため、早期疲労損傷の原因となる可能性のあるエッジロードを取り除いたクラウニングを開発しようと考えられたのは当然のことであった。このように接触圧力を均一に分布させるのがルンドベルグの考えたころ軸受の設計概念であり、次式(15)によって、クラウニング量hCR(y)を与えている。なお、E'は等価ヤング率である。
【数15】
この式(15)の曲線ではころ中央でクラウニング量が0であり、ころ端部では無限大となる。物理的には、クラウニング量がころ半径よりも大きくなるのは不合理である。また、無限大のクラウニング量が加工できるわけでもないので、ジョンソン-ゴーア(Johnson-Gohar)は、次の修正式(16)を導き、特異点を消去した。なお、bは、線接触におけるヘルツの接触幅の半分である。
【数16】
上記式(15),(16)は、接触圧力分布を均一にするという目的で導出されており、これらを、ころ軸受のクラウニング形状に通用すれば接触領域の長手方向に均一な接触圧力の分布が得られるものと考えられている。
ところが、実際に本発明者等が、式(15),(16)を、ころと軌道間のクラウニング形状に適用して、接触圧力の解析を行った結果、図9に示すように、ころ端部に圧力のピークを見出した。このピークの発生原因については、今日に至るまで議論されおらず、ここで初めて検討するものである。
すなわち、ルンドベルグ(Lundberg)曲線を母線としたにもかかわらず発生する圧力のピークは、接触幅を一定とした仮定に起因している。つまり、ころ及び軌道輪にクラウニングを加工することにより、ころ端部の接触幅は当然減少するはずであるが、弾性変位を導いた際の仮定では接触幅を一定としたため、ころ端部で接触幅が減少するに従い接触圧力が上昇したのである。
さらに、図8に示すように、接触領域の長手方向(y軸方向)に均一な圧力P(p/Ph)の作用を仮定した場合でも、図10に示すように相当応力はころ端部に集中する。なお、pは接触応力、Phは、線接触理論のヘルツの最大接触圧力(Pa)である。
すなわち、たとえ接触圧力を接触領域の長手方向に均一に分布させたとしても、塑性変形はころ端部から発生し、したがって、ころ軸受に最大の負荷容量を与えないのである。
【0014】
〔ころ軸受に最大負荷容量を与えるクラウニング形状〕
ころ軸受に、理論上、最大の負荷容量を与えるためには、材料の受けるダメージを接触領域の長手方向に均一にする必要がある。これが、本発明で提供する新たな設計概念であって、この実施形態では、接触圧力および内部応力の数値解析を行って、このような設計条件を満たすクラウニング形状を求めることができた。
すなわち、このクラウニング形状がころ軸受に、最大の静的負荷容量を与えるのである。このクラウニング形状は簡単な関数で表すことができるが、金属材料の代表的な降伏条件として、フォン・ミーゼス(von Mises)の降伏条件と (Tresca)の降伏条件が存在するため、双方の条件に基づいた一般式を以下に示す。
フォン・ミーゼスの降伏条件に基づく場合には、ころ軸受に最大の負荷容量を与えるクラウニング形状は、次の(17)式で求められる。なお、Kは安全係数(0.8〜5)であり、k2,k1は、式(21),(20)で表される係数であり、σEは、母材の引張降伏応力(圧縮降伏応力)である。なお、この式(17)は、前述した式(I)と同じである。
【数17】
また、トレスカ(Tresca)の降伏条件に基づく場合には、ころ軸受に最大の負荷容量を与えるクラウニング形状は、次の(18)式で求められる。なお、τmaxはせん断降伏応力である。なお、この式(18)は、前述した式(II)と同じである。
【数18】
また、ころ軸受に理論上、最大の動的負荷容量を与えるクラウニング形状は、次式(19)で求められる。なお、この式(19)は、前述した式(III)と同じである。
【数19】
この式(19)は、転動体荷重から最適設計をするための式であるが、転動体荷重Fは、静定格荷重のものを超えてはならない。なお、k1,k2は、次の式(20),(21)で与えられる。
【数20】
【数21】
次に、図1に、上述の式(17)によって、ころにクラウニング形状を与えたころ軸受の接触応力分布を示す。この図1は、無次元有効長(Lwe/b)が10の場合でのころと軌道輪との接触圧力分布を示し、図1では、縦軸がヘルツの最大接触応力で無次元化された無次元接触応力Pを表し、横軸がヘルツの接触半幅bで無次元化したX,Y座標を示している。なお、接触圧力分布は、X,Y軸に関して線対称なので1/4の要素だけ表示する。図1に示すように、接触圧力Pは、ころ端部で徐々に減少している。なお、図2(Lwe/b=100)および図3(Lwe/b=1000)に示すように、ころ有効長さ(Lwe)とヘルツの接触半幅bの比(Lwe/b)に応じて、ころ端部における接触圧力の減少度合いが異なる。
また、図4に、無次元有効長(Lwe/b)=10での材料が受ける相当応力ΣEの分布を示し、図5,図6に、(Lwe/b)=100,(Lwe/b)=1000での材料が受ける相当応力ΣEの分布を示す。この相当応力ΣEの分布は、ダメージを数値的に評価するものであり、内部応力成分の分布を表している。図4および図5,図6において、縦軸が深さZを表し、Z=0が表面の位置を示している。図4は、図1のX=0の位置での内部応力を表し、図5,図6は、図2,図3のX=0の位置での内部応力を表している。また、これら内部応力分布は、座標軸Y=0に対して線対称であるのでY軸対称の2分の1の領域だけを示す。図4および5,6に示すように、相当応力ΣEが最大となる位置が、0.7b〜0.8bの深さになっている。また、接触領域の長手方向において相当応力ΣEの分布が略均一になっており、軸受材料の受けるダメージを長手方向に均一化できたことが解る。さらに、長手方向の端(Y=−5,−50,−500)、かつ、表面(Z=0)付近で、相当応力ΣEの最大値が分布していない。
すなわち、この実施形態の上記式(17)によって設定したクラウニング形状を施したころは、外力の作用に対して材料固有の限界に至るまで塑性変形を生じず、理論的かつ実質的に最大の耐圧痕強度を持つことが分かった。また、材料の受けるダメージが均一なため、動的な疲労強度も向上する。
なお、上記式(17)に替えて、式(18)を採用しても、クラウニング形状に実質的な差異がなく、式(17)を採用した場合と同じく、長手方向へのダメージ分布を均一化でき、かつ、表面(Z=0)付近に相当応力ΣEの最大値が分布していないことを確認できた。
【0015】
【発明の効果】
以上より明らかなように、請求項1の発明の相互接触部材装置は、互いに線接触して力を伝達する2つの相互接触部材を有する相互接触部材装置であって、上記2つの相互接触部材の接触面の長手方向の端かつ表面の領域へ相当応力の最大値が分布しないように、上記接触面の長手方向の変化を設定し、上記長手方向への相当応力分布を均一化した。これにより、接触領域の長手方向における接触表面近傍で、材料の受けるダメージを均一に分布させ、ころ軸受に実質的に最大の静的または動的負荷容量を与えるクラウニング形状を備えた相互接触部材装置を提供できた。
また、本発明者らは、ルンドベルグ曲線が導かれたような接触圧力を基準とするのではなく、内部応力を加味し材料の受けるダメージを基準として、転がり軸受における耐塑性変形や耐疲労寿命を検討した結果、以下の数式(I)〜(III)で表されるクラウニング形状であれば、接触領域の長手方向における接触表面近傍で、材料の受けるダメージを均一に分布させ、ころ軸受に実質的に最大の静的または動的負荷容量を与えることを確かめることができた。
hcr(y)=4K・R・k2(σE/(0.557E'))2
・ln((1−(2k1・y/Lwe)2)-1) …(I)
hcr(y)=4K・R・k2(τmax/(0.3E'))2
・ln((1−(2k1・y/Lwe)2)-1) …(II)
hcr(y)=(2K・k2・F)/(πE'Lwe)
・ln((1−(2k1・y/Lwe)2)-1) …(III)
hcr(y):上記方向への位置yにおける2つの相互接触部材の接触面の
間隔
K:安全係数(0.8〜5)
R:相対移動方向への等価半径
F:ころ軸受の静定格荷重に対応するころの荷重
k2:係数(1.25−2.2/(Lwe/b)1/2)
k1:係数(1−exp[〔1/{(0.2717+0.4783/(Lwe/b)1/2}〕
・{0.2501ln(Lwe/2b)+0.4725}])1/2
b:線接触におけるヘルツ(Hertz)の接触幅の半分
σE:材料の引張降伏応力(圧縮降伏応力)
E':等価ヤング率
Lwe:上記相互接触部材の有効長
τmax:材料の最大剪断応力に関する強度
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の相互接触部材装置の実施形態としてのころ軸受(無次元有効長(Lwe/b)=10)での接触圧力Pの分布を示す図である。
【図2】 この発明の相互接触部材装置の実施形態としてのころ軸受(無次元有効長(Lwe/b)=100)での接触圧力Pの分布を示す図である。
【図3】 この発明の相互接触部材装置の実施形態としてのころ軸受(無次元有効長(Lwe/b)=1000)での接触圧力Pの分布を示す図である。
【図4】 上記ころ軸受(無次元有効長(Lwe/b)=10)のX=0での相当応力ΣEの分布を示す図である。
【図5】 上記ころ軸受(無次元有効長(Lwe/b)=100)のX=0での相当応力ΣEの分布を示す図である。
【図6】 上記ころ軸受(無次元有効長(Lwe/b)=1000)のX=0での相当応力ΣEの分布を示す図である。
【図7】 この発明の実施の形態で用いた転がり軸受のころと軌道輪との接触の力学モデルである有限幅円筒1と半無限体2との接触モデルを示す模式図である。
【図8】 ルンドベルグが理想と考えたころと軌道輪間の接触圧力分布を示す図である。
【図9】 ルンドベルグ曲線を加工したころと軌道輪との接触圧力分布を示す図である。
【図10】 接触領域の長手方向に均一に分布した接触圧力の作用下の相当応力分布を示す図である。
【符号の説明】
1…有限幅円筒、2…半無限体。
Claims (3)
- 互いに線接触して力を伝達する2つの相互接触部材を有する相互接触部材装置であって、
静的負荷容量を最大にすべく、上記2つの相互接触部材の接触面の長手方向の端かつ表面の領域へ相当応力の最大値が分布しないように、上記接触面の長手方向の変化を設定し、動的負荷容量を最大にすべく、上記長手方向への相当応力分布を均一化し、
上記2つの相互接触部材の接触面の間隔における上記長手方向への変化が、実質的に下記の式(I)で表されることを特徴とする相互接触部材装置。
hcr(y)=4K・R・k2(σE/(0.557E'))2
・ln((1−(2k1・y/Lwe)2)-1) …(I)
尚、hcr(y):上記長手方向への位置yにおける2つの相互接触部材の接触面の間隔
K:安全係数(0.8〜5)
R:相対移動方向への等価半径
k2:係数(1.25−2.2/(Lwe/b)1/2)
k1:係数(1−exp[〔1/{(0.2717+0.4783/(Lwe/b)1/2}〕
・{0.2501ln(Lwe/2b)+0.4725}])1/2
b:線接触におけるヘルツ(Hertz)の接触幅の半分
σE:材料の引張降伏応力(圧縮降伏応力)
E':等価ヤング率
Lwe:上記相互接触部材の有効長 - 互いに線接触して力を伝達する2つの相互接触部材を有する相互接触部材装置であって、
静的負荷容量を最大にすべく、上記2つの相互接触部材の接触面の長手方向の端かつ表面の領域へ相当応力の最大値が分布しないように、上記接触面の長手方向の変化を設定し、動的負荷容量を最大にすべく、上記長手方向への相当応力分布を均一化し、
上記2つの相互接触部材の接触面の間隔における上記長手方向への変化が、実質的に下記の式(II)で表されることを特徴とする相互接触部材装置。
hcr(y)=4K・R・k2(τmax/(0.3E'))2
・ln((1−(2k1・y/Lwe)2)-1) …(II)
尚、hcr(y):上記長手方向への位置yにおける2つの相互接触部材の接触面の間隔
K:安全係数(0.8〜5)
R:相対移動方向への等価半径
k2:係数(1.25−2.2/(Lwe/b)1/2)
k1:係数(1−exp[〔1/{(0.2717+0.4783/(Lwe/b)1/2}〕
・{0.2501ln(Lwe/2b)+0.4725}])1/2
b:線接触におけるヘルツ(Hertz)の接触幅の半分
τmax:材料の最大剪断応力に関する強度
E':等価ヤング率
Lwe:上記相互接触部材の有効長 - 互いに線接触して力を伝達するころと軌道を有するころ軸受であって、
静的負荷容量を最大にすべく、上記ころと軌道の接触面の長手方向の端かつ表面の領域へ相当応力の最大値が分布しないように、上記接触面の長手方向の変化を設定し、動的負荷容量を最大にすべく、上記長手方向への相当応力分布を均一化し、
上記ころと軌道の接触面の間隔における上記長手方向への変化が、実質的に下記の式(III)で表されることを特徴とするころ軸受。
hcr(y)=(2K・k2・F)/(πE'Lwe)
・ln((1−(2k1・y/Lwe)2)-1) …(III)
尚、hcr(y):上記長手方向への位置yにおけるころと軌道の接触面の間隔
K:安全係数(0.8〜5)
F:ころ軸受の静定格荷重に対応するころの荷重
k2:係数(1.25−2.2/(Lwe/b)1/2)
k1:係数(1−exp[〔1/{(0.2717+0.4783/(Lwe/b)1/2}〕
・{0.2501ln(Lwe/2b)+0.4725}])1/2
b:線接触におけるヘルツ(Hertz)の接触幅の半分
E':等価ヤング率
Lwe:上記ころと軌道の有効長
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