JP4259497B2 - サイトダイバーシティ運用方法及びプログラム - Google Patents

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Description

本発明は、サイトダイバーシティ運用方法に関し、例えば航空管制業務に導入されるVDLモード3システムにおけるサイトダイバーシティ運用方法に関する。
例えば航空管制業務は、現在アナログ音声通信、いわゆる無線通信を用いた遠隔通信に基づいて行われている。国際的にVHF(Very High Frequency)帯域で航空管制に割当てられた周波数は、118〜137MHzであり、この周波数を複数のチャネルに分割している。しかしながら、近年の航空通信の需要の増加に伴ってチャネル数が枯渇して、航空管制に支障が生じる虞がある。
そこで、アナログ音声通信に代えて、VHFディジタルリンク(VDL;VHF Digital Link)方式が提案されている。このVHFディジタルリンクは、国際民間航空機関(ICAO; International Civil Aviation Organization)において標準化作業が行われてきた次世代の通信システムである。
VHFディジタルリンクの1つとして、VDLモード3が規格化されている。このVDLモード3は、現用の無線通信に代る方式であり、アナログの音声通信に加えて、ディジタルで音声及びデータを双方向に遣り取りする方式である。
VDLモード3におけるサイトダイバーシティ運用では、現在導入されているアナログ対空無線システムと同様の運用形態が望まれるなかで、VDLモード3の特徴を最大限に活用することが必要となる。例えば、アナログ対空無線システムの運用に合わせるために、管制官側からの音声送信は、管制官が選択した任意の地上サイトからのみ送信する。受信音声は、受信された全ての地上サイトからの音声を重畳し出来る限り受信可能な音声を管制官まで伝送させるような仕組みが必要である。VDLモード3の特徴を生かすためには、従来の音声サービス以外に可能となる、データリンク通信,音声送信元識別,アンチブロッキング機能,管制官優先音声などのサービスを無駄なく確実に提供することが必要とされる。
VHFデジタルリンクモード3システムの基礎実験(電子航法研究所報告 ISSN 1341-9102 第108号 平成16年1月16日発行)
これらのサービス提供に深くかかわっているのが、地上サイトから出力される管理バーストと呼ばれるビーコン信号制御である。しかし、サイトダイバーシティ運用の場合、複数の送受信用の地上サイトを設置して同一周波数をシェアーしながらサービス提供を維持するため、管理バースト自身も時分割で送信せざるを得ない。このため、航空機と地上サイトの位置関係により時間的な遅延が生じる。
元々、VDLモード3のシステムでは、サイトダイバーシティ運用のような複数の地上サイトを制御する場合に生じる管理バーストの遅延問題などを考慮した設計とはなっていない。最近になって、一部サイトダイバーシティによる管理バーストのアルゴリズムや、管理バーストの遅延問題を考慮したマニュアルの改定案などが作成されつつある。
しかし、実運用に向けては、管理バースト制御の課題や送受信装置が複数に分離される場合の間題点を検討し、それに向けた対策が必要となる。
本発明の目的は、VDLモード3を現用のアナログ通信と同様の運用形態で運用することができるサイトダイバーシティ運用方法及びプログラムを提供することにある。
前記目的を達成するため、本発明に係るサイトダイバーシティ運用方法は、時分割多重アクセスによりチャンネルを複数のスロットに分割し、これらのスロットにより音声及びデータを複数のサイトに通して制御局と被制御局との間に伝送することにより、制御局からの指令に基づいて被制御局をコントロールするサイトダイバーシティ運用方法において、
前記被制御局がサイトを変更した旨のサイトチェンジメッセージを前記被制御局から前記制御局に送信し、その送信情報に基づいて前記制御局で前記カレントサイトを検索するサイト検索を実行することを特徴とするものである。
本発明において、被制御局がサイトを変更した場合に、被制御局が制御局に向けて、サイトを変更した旨のサイトチェンジメッセージを送信する。制御局は、被制御局からのサイトチェンジメッセージに基づいて、被制御局が新たにリンク接続したカレントサイトを検索する。
サイト識別用のコードを前記サイトに付与し、前記サイト識別用コードに基づいて、前記被制御局をサイト単位に制御するようにしてもよい。
さらに、前記被制御局の音声受信スケルチウィンドウを拡張し、前記サイト識別用コードの異なるサイトに通した前記制御局から送信される信号を前記被制御局で受入れ、前記被制御局が前記制御局とリンク接続するタイミングの変更を行うようにしてもよい。この場合、前記被制御局がサイト識別用コードの異なる前記サイトから信号を受入れたときに、前記被制御局から前記制御局に向けてサイトを変更した旨のサイトチェンジメッセージを送信することが望ましい。
サイトダイバーシティ運用の識別を、前記制御局と前記被制御局とのリンク接続に用いるサポートオプションメッセージによって行うようにしてもよい。
また、前記複数のサイトによる電波覆域が重合する領域でのサイトダイバーシティ運用を実施する際に、前記被制御局から前記制御局への音声送信に優先度を付け、その優先度に対応させて音声送信を抑圧する送信抑圧ステップを行うようにしてもよい。この場合、前記送信抑圧ステップにおいて、前記被制御局から前記制御局への音声通信の開始前後に応じて優先度を付け、高い優先度の音声送信のみを許可し、低い優先度の音声送信を抑圧することが望ましい。
本発明のサイトダイバーシティ運用方法をコンピュータに実行させるサイトダイバーシティ運用プログラムは、時分割多重アクセスによりチャンネルを複数のスロットに分割し、これらのスロットにより音声及びデータを複数のサイトに通して制御局と被制御局の間に伝送することにより、制御局からの指令に基づいて被制御局をコントロールするサイトダイバーシティ運用を行うためのプログラムにおいて、
前記被制御局がサイトを変更した旨のサイトチェンジメッセージを前記被制御局から前記制御局に送信し、その送信情報に基づいて前記制御局側で、前記カレントサイトを検索する機能をコンピュータに電気信号により実行させる構成として構築する。
前記被制御局の音声受信スケルチウィンドウを拡張し、前記サイト識別用コードの異なるサイトに通した前記制御局から送信される信号を前記被制御局で受入れ、前記被制御局が前記制御局とリンク接続するタイミングの変更を行う機能をコンピュータに電気信号により実行させるようにしてもよい。この場合、前記被制御局がサイト識別用コードの異なる前記サイトから信号を受入れたときに、前記被制御局から前記制御局に向けてサイトを変更した旨のサイトチェンジメッセージを送信する機能をコンピュータに電気信号により実行させることが望ましい。
以上のように本発明によれば、サイトダイバーシティに有効な運用を行うことができるとともに、制御局と被制御局の間における通信の遅延問題を解決することができる。
さらに、サイトダイバーシティ運用では、サイト識別コードをサイト毎に区別することにより、被制御局をサイト単位に制御することができる。また、被制御局は、音声受信スケルチウィンドウを拡張して、常に異なるサイトからの信号を受け入れ、サイト変更を行うことにより、常に被制御局に近いサイトに同期することができる。被制御局の音声受信スケルチウィンドウ値を拡張することにより、カレントサイト以外の音声を受信できる。
異なるサイトからの音声信号を受け入れた場合は、カレントサイトを変更した旨のサイトチェンジメッセージを送信することにより、制御局側で被制御局のカレントサイトを正確に知ることができる。
サイトダイバーシティ運用識別をサポートオプションメッセージによって行うことにより、単独サイト時に誤った同期ビーコン信号を受信することを防止することができる。
さらに、サイトダイバーシティ運用方法をプログラム化することにより、そのプログラムを、既設の装置を管理するコンピュータに組込むことにより、サイトダイバーシティの運用を既設の設備により実行することができる。
以下、本発明の実施形態を図に基づいて説明する。
本発明の実施形態は基本的構成として、時分割多重アクセスによりチャンネルを複数のスロットに分割し、これらのスロットにより音声及びデータを複数のサイトに通して制御局と被制御局との間に伝送することにより、制御局からの指令に基づいて被制御局をコントロールするサイトダイバーシティ運用方法において、前記被制御局がサイトを変更した旨のサイトチェンジメッセージを前記被制御局から前記制御局に送信し、その送信情報に基づいて前記制御局側で、前記カレントサイトを検索するサイト検索を実行することを特徴とするものである。
また、前記被制御局の音声受信スケルチウィンドウを拡張し、前記サイト識別用コードの異なるサイトに通した前記制御局から送信される信号を前記被制御局で受入れ、前記被制御局が前記制御局とリンク接続するタイミングの変更を行うようにしてもよいものである。この場合、前記被制御局がサイト識別用コードの異なる前記サイトから信号を受入れたときに、前記被制御局から前記制御局に向けてサイトを変更した旨のサイトチェンジメッセージを送信することが望ましい。
次に、本発明の実施形態に係るサイトダイバーシティ運用方法を、航空機の管制業務に適用するにあたって、現在導入されているアナログ対空無線システムと同様の運用形態で行う場合の問題を提起し、それに対する対応策を明記することにより、本発明の実施形態を詳細に説明する。
先ず、VDLモード3のシステムについて図1に基づいて説明する。図1に示すように、VDLモード3は、時分割多重アクセス(TDMA; Time Division Multiple Access)により、1チャンネルを4スロット(A,B,C,D)に分割し、各スロットをその空域の運用形態に合わせ、音声用及びデータ用に割り当てて運用する。
具体的に説明すると、図1に示すように、空域を飛行する航空機1(1a,1b,1c,1d)を例えば2つのグループG1,G2に分けて認識し、グループG1の航空機1a,1bに搭載された機上局4a,4b(機上無線機)と地上局2aの間、及びグループG2の航空機1c,1dに搭載された機上局(機上無線機)と地上局2bの間に、1つの地上サイト3に設置した1台の無線機により個別のディジタル音声とデータ通信の回線を設定し、各地上局2a,2bの航空管制の下に航空機1を運行させる。図1に示す例では、1チャンネルを4つのスロットに分割して、2つのスロットをディジタル音声の情報、残りのスロットをディジタルデータの情報を伝送するチャンネルとして使用しているため、この方式を2V2D方式という。なお、TDMAによるスロット分割は、2V2D方式に限られるものではない。ここに、地上局2は制御局、機上局4a,4bは被制御局として機能する。
さらに、航空機1a,1bの機上局4a,4bと地上局2aの間では、サポートオプションメッセージを含む網加入のシーケンスが実行される。具体的に説明すると、図3に示すように、地上局2と機上局4a,4bとの間に初期同期処理が行われ(ステップS1)、機上局4a,4bのタイミングステータスがTS1の場合(ステップS2)、機上局4a,4bから地上サイト3を通して地上局2に網加入要求が出される(ステップS3)。地上局2は、機上局4a,4bがサイトダイバーシティ対応であるかを判断し(ステップS4)、サイトバイバーシティ対応でない場合に、サイトダイバーシティ以外の運用による通常処理を実行させる(ステップS4;NO、ステップS5)。
サイトダイバーシティ対応である場合(ステップS4;YES)、地上局2は、飛来した航空機1がサイトダイバーシティ運用による網(回線)に加入することを許可する。網加入が終了すると、航空機1は地上局2の制御支配下に置かれ、地上局2のコントロールに従って空域を飛行する。
前記サポートオプションメッセージのフォーマットを図2に示す。図2に示すように、サポートオプションメッセージのフォーマットはICAOのマニュアルにより規定されており、情報量の単位として、8ビットからなるオクテットを用い、メッセージを6つのオクテットによる階層構造で作製するフォーマット構成になっている。図2に示す図表の縦方向は、6つのオクテットからなる階層構造を示し、横方向は、ビット番号を示している。
オクテット1には、4ビットからなる、サポートオプションメッセージを示すメッセージID5の情報5と、2ビットならなる、音声占有通知を示す音声信号の情報6と、6ビットからなるポーリングの送信情報7、8とが組込まれる。オクテット2には、先のポーリング情報8と、4ビットからなる、システム構成の情報9とが組込まれる。オクテット3には、2ビットからなる、TDMA分割のスロットを認識するためのスロットID情報10と、3ビットからなる、地上サイト3毎に割振られた地上局コード(GSC)の情報11と、2ビットからなる、機上無線機のスケルチウィンドウ値を示す情報12とが組込まれる。オクテット4には、12ビットからなる、地上局サイト3からの予約割り当てを応答する予約応答情報13が組込まれる。オクテット5には、4ビットからなる前記予約応答情報13の一部と、12ビットからなるオプション情報14とが組込まれる。オクテット6には、8ビットからなるオプション情報の一部の14が組込まれる。
ここに、地上局コード(GSC)は、網加入後に電波的覆域内に存在する同一周波数の異なる空域の別の地上局に誤って同期させないように地上局網を識別するために用いられる。このため、本来サイトダイバーシティ運用であっても一つの地上局網と見なし、地上局コードは同一であることが望まれる。しかしながら、サイトダイバーシティ運用では、同一網内において同時に2つ以上の地上サイト3からバースト送信を行うことはなく、地上局コード(GSC)の目的から言えば、地上局3a、3b、3cはそれぞれ相違していても問題がない。サイトダイバーシティ運用では、同一網(サイトダイバーシティグループ)内の地上サイト3に個別の地上局コード(GSC)を割り当てることによって、複数の地上サイト3を識別させる。なお、現在地上サイト3は最大6つの地上サイトで運用することが予定されている。したがって、地上サイト3を識別するために、有効地上サイトコード(GSC)の0〜7を識別することにより対応可能である。
次に、カレントサイト問題について考察する。無線システムの電源立上げ時、若しくは周波数変更直後における航空機搭載の機上無線機のシステムタイミングは、TS0の状態である。VDLモード3では、同期状態のことをタイミングステータス(TS; Timing Status)と呼んでいる。このタイミングステータスによって、提供可能なサービスが異なる。タイミングステータスは、TS0〜3までの4つの状態を持ち、全てのサービスが可能となるのは、タイミングステータスTS1に限られる。したがって、機上無線機は、タイミングステータスTS1になるために、地上サイト3からのビーコン信号の検出を試みる。
地上サイトからのビーコン信号に同期してタイミングステータスTS1となった機上無線機は、基準タイミングの±1シンボル以内に受信される地上サイトからのビーコン信号のみを有効なビーコン信号として受入れる。有効な前記ビーコン信号のことをカレントビーコンと定義し、その有効なビーコン信号を出力した地上サイトをカレントサイトと定義する。
機上無線機は、±1シンボル以内に到着しないカレントビーコン以外の如何なる地上サイトからのビーコン信号を受け付けないが、24MAC(Media Access Control)サイクル以上の期間に渡って地上サイトからのビーコン信号を受信することができない場合(CTC1>24)は、いつでも、前記±1シンボルの有効性ウィンドウ値を−K(n+l)〜+1の範囲に拡張することができる。2V2Dの標準レンジで最大覆域200NMでは、それぞれK=4、n=6が与えられ、−28〜+1シンボルまでが有効性ウィンドウ値となる。
上述した前記機上無線機側にて前記±1シンボルの有効性ウィンドウ値を拡張させる動作を行わせる目的は、機上無線機にタイミングステータスTS1を維持させつつ(CTC1≦50までに)、なるべく近い地上サイトのビーコン信号に機上無線機を同期させるためである。
地上サイト3から出力されるカレントビーコンを受信して、航空機1の機上無線機は、タイミングステータスTS1となって初期同期状態となり、全てのサービスを受けるために、初期同期の後に機上局ID(航空機ID又はローカルユーザID)を取得する必要がある。 機上局IDは、網加入シーケンスにより、航空機1と地上局2との間に地上サイト3を通して情報伝送のための網(回線)が形成されると、機上局IDが地上局2から管制対象の航空機1に対して付与される。尚、網加入シーケンスには、図2に示したサポートオプションメッセージをも含まれる。
管制対象の航空機1が地上局2から機上局IDを取得すると、その機上局IDは航空機1の機上無線機に保有される。前記機上無線機が前記機上局IDを保有することによって、ピア・ツー・ピア(Peer to Peer)のデータ通信サービスの提供及び音声通信元の識別が可能となる。ここで、航空機1の機上無線機が機上局IDを取得して、地上局2と接続している状態をリンク接続状態と定義する。
航空機1の機上局4a,4bと地上局2の間がリンク接続状態となった場合には、定期的にリンク状態を相互に確認し続ける。このことをポーリングシーケンスといい、6秒(25MAC)を最小間隔として、地上局2から機上局4a,4bに対して定期的にポーリングが行われ、機上局4a,4bは地上局2からのポーリングに対して応答を返す。
しかし、ポーリング信号を送信する地上サイト3が、機上局4a,4bにとってカレントサイトであれば、機上局4a,4bからカレントサイトである地上サイト3にポーリング応答信号を出力する。逆に、地上サイト3から出力されるビーコン信号が±1シンボル値の有効性ウィンドウを越えて受信した場合には、前記地上サイト3が機上局4a,4bにとってカレントサイトでないため、機上局4a,4bが地上局2からのポーリングに応答をしない。
機上局4a,4bが地上局2からのポーリングに応答しない事態が実際に起こるのは、サイトダイバーシティ運用によって、機上局4が同一網内で地上サイトを変更した場合である。つまり、図4を例にとって説明すれば、航空機1が地上サイト3aの空域から次の地上サイト3bに移動して、地上サイト3aのビーコン信号を受信することができず、かつCTC1>24(CTC1とは、有効なビーコン信号のカウント値であり、有効ビーコンが無かった場合に1MACで+1だけ増加し、逆に有効ビーコンであれば”0”にリセットされる)の条件を満して、カレントビーコン元が地上サイト3aから地上サイト3bに変更した場合である。
図4において、地上サイト3a内での機上局4の位置と、航空機1の移動先である地上サイト3b内での機上局4の位置との距離の差が15NMを越える場合、タイミング変更が±1シンボルを越えるため、機上局4の有効性ウィンドウが1MAC前と相対的に変わってしまう。
地上局2側からすると、地上局2は、管制対象である航空機の位置するカレントサイトが地上サイト3aから地上サイト3bに移ったことを知る手段がない。機上局4が地上サイトを変更した状態において、地上局2が、変更以前に機上局4に対してカレントサイトであった地上サイト3aからポーリング送信を行っても機上局4からのポーリング応答はなく、次回のポーリング送信を行うべき地上サイト3を、どの地上サイトとすることが最適であるかを知ることはできない。
地上局2が最適な地上サイトを認識可能な手がかりとなるのは、管制対象の機上局4が地上局2に対して何らかのメッセージをダウンリンクし、それを地上局2側で受信できたときである。
この機上局4からのメッセージの受信により、カレントサイトと思われる地上サイト3がいくつか候補に挙がり、そこから推測することができる。例えば、機上局4からのダウンリング信号の受信レベルが最適な地上サイトによる受信レベルであると思われるとか、或いはダウンリングのタイミングが最も早い時間に受信した地上サイトであるという情報に基づいて、最適であると思われる地上サイトを決定する。
しかし、この方法は飽くまでも推測でしかなく、最適であると思われる地上サイト3の候補が複数あれば、最適な地上サイトを特定することはできないものである。
地上局2から機上局4へ向けたポーリング送信が満了するためのカウント値NL2は、通常3回に設定されている。ここで、サイトダイバーシティ運用で想定される地上サイトは最大6つの地上サイトであることを意図されているから、地上局2が闇雲に6つの地上サイト3からポーリング信号を順次送信したとしても、全ての地上サイト3からのポーリング送信を、ポーリング送信満了のために設定されたカウント値以内で完了することはできなくなり、地上局2と機上局4のリンクが切断されてしまうことが予想される。
ここで、前記地上局2によるポーリング送信の満了カウント値NL2を、サイトダイバーシティ運用の地上サイト3の数に応じて増やすということも考えられる。
しかしながら、この方法は、地上局2による管制対象の航空機1を60機までとした場合には、最大60×6(地上サイト)=360MACサイクル(86.4秒)までポーリングが遅れることを許容するということに等しい。これは、管制業務上効率的でないばかりでなく、地上局2と機上局4の間のリンクを維持する以外に、地上局2と機上局4のデータ送信要求を平等に予約割り当てることを可能とするポーリングの目的にも有効ではない。
したがって、地上局2側では、管制対象の機上局4を搭載した航空機1が何処の地上サイトをカレントサイトとしているのかを常時把握し、無駄のないポーリングを可能とすることが必要である。これをカレントサイト問題と定義する。
次に、カレントサイト問題の対応策について説明する。本発明の実施形態は、以上のような技術的分析を行って、前記カレントサイト問題に対する対応案として2つの方法を考え出したのである。その対応案の1つは、カレントサイトを知る方法であり、もう1つは、機上局4、すなわち機上無線機の有効性ウィンドウ値を見直す方法である。なお、機上局4としての機上無線機の有効性ウィンドウ値を見直す方法については後述する。
(カレントサイトを知る方法)
本発明の実施形態は、地上サイト3を変更したことを最初に知るのが機上局4側であることに直目している。すなわち、機上局4は、カレントサイトが次の地上サイト3に変更された場合、以前のカレントサイトからのビーコン信号がカレントサイトを基準に生成した機上局4のタイミングが±1シンボル以内に受信できなくなると、この場合、機上局4は、地上局2に対してポーリング応答を返信しない。
そこで、本発明の実施形態において、機上局4は、以前のカレントサイトからのビーコン信号が±1シンボル以内に受信できず、かつ地上局2との応答処理が終了していることを条件として、カレントサイトを他の地上サイト3に変更した旨のメッセージを地上局2に送信する。ビーコン信号が±1シンボル以内に受信出来ないことを理由にしたのは、航空機1と2つ以上の地上サイト3との距離差が15NM以内の場合に本処理が頻発することを防ぐためである。 また、地上局との応答処理待ち状態では、その応答処理が以前のカレントサイトから送信される可能性があるためである。
具体的に説明すると、機上局4は図3に示すように、サイトダイバーシティ運用処理ではより近い地上サイト3からのビーコン信号を有効なものとして扱うために、有効ビーコンのパラメータ変更を行い(ステップS6)、地上サイト3からの有効なビーコンのタイミングとメッセージ状態を監視し、有効なビーコンを受信した場合に、地上サイト3に付与されている地上局コード(GSC)を以前保存されていたGSCと比較する。(ステップS7)。地上局コード(GSC)が変更されていない場合には(ステップS7;NO)、再度有効ビーコンのパラメータ変更を行う。図3において、有効ビーコン信号のパラメータ変更(ステップS6)は、常に機上局4に近い地上サイトに機上局4を同期させるために行うものである。
先のカレントサイト変更条件に合致し、地上局コード(GSC)が変更されている場合には(ステップS7;YES)、機上局4は、ダウリングメッセージに、変更された地上局コード(GSC)情報を含めて、地上サイト3を通して地上局2にサイトチャンジメッセージMSGの送信を行う(ステップS8)。
地上局2は、機上局4側からダウリングメッセージMSGを受信すると、そのメッセージから地上局コードの情報を抽出する。図6に示すように、地上サイト3a,3b,3c・・・には地上局コードGSC1,GSC2,GSC3・・・が付与されている。したがって、機上局4が地上サイト3bに移動してサイトチェンジメッセージMSGをダウリングすると、機上局4からのサイトチェンジメッセージMSGは地上サイト3bを通して地上局2に至るので、地上局2は、機上局4が地上サイト3bに変更したことを認識する。
次に、機上局4が前記サイト変更メッセージを送信する際のダウリングメッセージを送信するためのフォーマットを図5に示す。
機上局4がダウリングメッセージを送信する際に、既に網加入要求を経て地上局2と網(回線)加入が行われているため、ダウリングメッセージのフォーマットは図5に示すように、網加入要求のデータを除き、全て地上局コード(GSC)5の情報が用いられている。
前記ダウリングメッセージのフォーマットは図5に示すように3層の階層構造になっており、第1層に、サイト変更メッセージを示すメッセージID15と、サイト変更メッセージをダウリングする機上局4に付与されたローカルユーザID(機上局ID)16との情報を組込み、第2層に、前記ローカルユーザID7の一部と、変更後のカレントサイトに割当てられた地上局コード17と、機上局4からの音声要求18との情報を組込み、第3層に、前記音声要求18の一部と、データ送信を実行するためのスロット(TDMAにより分割されたスロット)数を要求するスロット要求数19と、データ送信予約のための優先度20との情報を組込むフォーマットに設定されている。
したがって、機上局4は図5に示すダウリングメッセージフォーマットに基づいてダウンリングメッセージを地上サイト3bに向けてダウンリングして、地上サイトの変更メッセージ(サイトチェンジメッセージ)を地上局2に送信する。
前記ダウリングメッセージを受信したとき、ビーコン送信の優先先処理の更新を行う。このビーコン送信の優先先処理には、次に送信すべき地上サイト先を決定するために処理であり、前記初期同期のためのビーコン送信,データ予約の割当て応答,前記ポーリング送信,後述する音声占有通知などのメッセージ処理が含まれる。このため、先のサイトチェンジメッセージによって、次に送信または応答する機上局4宛へのビーコン送信は、地上局2からカレントサイトと識別した地上サイトから送信される。このサイトチェンジメッセージは、ビーコン送信に限らず機上局4宛の音声または、データも同様に処理される。
地上局2は図7に示すように、ビーコン送信優先テーブル21と、リンクテーブル22とを有している。ビーコン送信優先テーブル21には、優先送信先データとローカルユーザIDとが連携して備えられている。リンクテーブル22には、リンク接続している機上局4のローカルユーザIDと、その機上局4に対するカレントサイト先の地上サイト3の情報とが連携して備えられている。
地上局2は図7に示すように、ビーコン送信先テーブル21とリンクテーブル22を参照して、ポーリング処理等のビーコン信号を地上サイト3に通して機上局4に向けて送信する(ステップS20)。そして、地上局2は、機上局4からのサイトチェンジメッセージの受信を監視する(ステップS21)。サイトチェンジメッセージを受信しない場合(ステップS21のNO)、再び地上局2は、ビーコン送信先テーブル20とリンクテーブル21を参照して、ポーリング処理等のためのビーコン信号を地上サイト3に通して機上局4に向けて送信する(ステップS20)。
地上局2が、機上局4からのサイトチェンジメッセージMSGを受信した場合(ステップS21)、地上局2はリンクテーブル21の内容を変更する(ステップS22)。この場合、地上サイト3は、サイトチェンジメッセージMSGを送信した機上局4と、そのサイトチェンジメッセージを地上局2に転送しカレントサイト情報とを連携させて、これらの情報をリンクテーブル22に書込む(ステップS22)。
図5に示す前記ダウリングメッセージは、データ予約要求と同様のフオーマット(図5)とアルゴリズムにて行われることが望ましい。なぜならば、前記タウンリンクメッセージはランダムアクセス送信であるため、データの衝突によって地上局2が受信できない可能性があるからである。
図5に示す前記ダウリングメッセージフオーマットに関する具体的な例では、カレントサイト変更時に、機上局4においてデータ予約要求があれば、従来どおりのスロット要求数を必要数入れて、予約要求メッセージ送信を行う。一方、機上局4においてデータ予約要求はなく、単なるカレントサイト変更だけのメッセージであるならば、スロット数として“0”を埋め、予約要求送信を行う。
さらに、機上局4からのサイト変更メッセージの送信は、予約要求と同じアルゴリズムを使用することによって、確実に地上局2に伝送される。つまり、前記サイト変更メッセージの送信を停止するには、カレント先である地上サイト3bからの“RACK”、若しくは“ポーリング受信”が必要となる。
なお、上述した運用を可能とするためには、更に工夫が必要となる。機上局4の機上無線機で異なった値の地上局コード(GSC)の情報を受信したとしても、これを有効なビーコン信号として取扱うようにしなければならない。これについては後述する。
更に、カレントサイトメッセージによる地上サイト3の変更は、ビーコン処理のみに限らず、地上側からの送信データ(音声、データ)全てについて適用させることが可能である。(23)
(測位位置計測)
本発明の実施形態においては、カレントサイトを知る情報に基づいて航空機1と地上サイト3の間の距離計算を可能にする。すなわち、スケルチウィンドウ処理によって伝播遅延がそれぞれ求めることが可能であるが、カレントサイトを知ることによって、航空機とサイト間との距離を正確に求めることが可能となる。図8に基づいて測位位置計測について説明する。
図8に示す3つの地上サイト3a,3b,3cは、航空機1の機上局4からの受信が可能な位置にあり、且つ機上局4にとってカレントサイトがサイト3aであり、且つそれぞれの地上サイト3a,3b,3cで求められた機上局4との間の遅延時間は、サイト3aの場合にT1、サイト3bの場合にT2、サイト3cの場合にT3であったとする。
図8において、t0は、機上局4のシステムタイミングと基準タイミング(±1シンボル)とのずれを示しており、機上局4とカレントサイト間との伝播遅延に一致する。tlは、機上局4とサイト3aとの伝播遅延、同じくt2,t3は、機上局4とサイト3b,3cとの伝播遅延である。これらは、Tl=t0+tl,T2=t0+t2,T3=t0+t3の関係にある。
地上局2a,2bが、機上局4に対するカレントサイトを判断することができない場合、各々の地上局2a,2bは、自局に含まれる地上サイトのうちからカレントサイトを判断しなければならない。
そこで、本発明の実施形態においては、地上局2は、上述した情報に基づいて測位位置計測を実行する。すなわち、航空機1と地上サイト3a,3b,3cの間の距離d1,d21,d3は、それぞれd1=T1/2×C,d2=T2/2×C,d3=T3/2×Cの式から求める。ここに、Cは光速度である。
したがって、地上サイト3aでは(tl−t0)/2、地上サイト3bでは(t2−t0)/2、サイト3cでは、(t3−t0)/2の誤差が生じる。
一方、地上局コード(GSC)によってカレントサイトが認識できれば、正確な距離がどのサイトで観測されたかを知ることができ、また三点測量による正確な位置測定が可能となる。
例えば、T1=t0+tlであるため、(Tl/2)/Cの式から機上局4との距離が求まる。T2の遅延時間はt0+t2であり、t2=T2−t0からサイト3bと航空機1との距離が求まる。
同様にt3=T3−t0であり、サイト3cと航空機1との距離が求まり、t0からt3までの全ての距離とサイト3a,3b,3c相互間の距離も既知であるから、航空機1の位置測定を行う。
(機上局音声送信抑圧)
サイトダイバーシティ運用では、複数の地上サイトから同時に“音声占有中“のビーコン信号の送信ができないため、アンチブロッキング機能が有効に働かない場合が発生する。
ここに、アンチブロッキング機能について説明する。VDLモード3の場合、2つのスロット(V/Dバースト)の音声領域と、各スロットの先頭部分に付加した管理バーストの領域を使って、音声チャンネルが空いているかどうかを地上局2から機上局4に電波を出している。この電波を受けて、機上局4が、チャンネルが空いているから話せると認識する。但し、これは可聴音声として機上局4のパイロットに聞えない情報であるから、パイロットとしては、プレストークを押したときに、話せるか、話せないかを判断する。話せなかったら、チャンネルが空くまで待っている。VDLモード3の場合、先に音声が届いた方を優先し、また地上局2からの音声を優先的に送信し、機上局4からの音声通信を強制的に排除される機能を備えており、この機能をアンチブロッキング機能、管制官優先音声機能とそれぞれいう。このアンチブロッキング機能は、地上局2による制御の下に複数の地上サイト3から送信されるビーコン信号に基づいて行われる。
本発明の実施形態において、前記アンチブロッキング機能が有効に働かない場合の対応策として、後から送信した機上局音声を地上サイト3aに向けて送信した機上局4a(1a)に対し、地上サイト3aが音声占有ビーコン信号による強制的な“音声停止指示”を行う。
すなわち、本発明の実施形態における地上局2は、リアルタイムに航空機(機上局4)1と接続関係にある地上サイトを識別し、地上サイトのエリア内毎に音声制御を行う。
具体的に説明すると、図9に示すように、第1の機上局4aが地上サイト3aに、第2の機上局4bが地上サイト3bに位置し、これらの機上局4a,4bと地上局2の間に音声連絡を行う場合、一方の機上局4bによる音声送信を許可し、他方の機上局4aによる音声送信を抑圧する例に基づいて説明する。この機上局による音声送信の抑圧処理を図10に示す。
上述したビーコン処理に基づいて、地上局2は、ビーコン送信の優先先処理を行うが、更にサイトダイバーシティ運用のアンチブロッキング処理のために工夫を行なう。図10は、先の図7のビーコン処理S20の更に内部の処理の一部である。地上サイト3からのダウンリンクデータが何も無い場合は、3つの地上サイト3a,3b,3cを通して順次ビーコン送信処理を行う。地上局2は同時に、機上局4から地上サイト3を通した音声受信を監視する(図10のステップS30)。音声送信がない場合(図10のステップS30;NO)、通常のビーコン処理S20を再度行う。
先に機上局4bが地上局2に向けて音声送信を行った場合(図10のステップS30;YES)、地上局2は、機上局4bとリンク接続の対象である地上サイト3bで受信したことを音声バーストの地上局コードGSCによって認識するとともに、音声送信を行った機上局が第2の機上局4bであることを検出する。
そこで、地上局2は、機上局4bの音声を同じ地上サイト3bに存在しえる機上局4に干渉されないためと、機上局4bの音声送信を継続させるために優先的に次のビーコン送信を地上サイト3bに変更し(図10のステップS32,実際には、図7のビーコン送信優先テーブル21が書き換えられる)、地上サイト3bから機上局4bに対して、「音声占有」のビーコン送信を行う。
地上局2からの「音声占有」のビーコン送信に応答して、機上局4bから地上サイト3bに通して音声送信がされた場合、機上局4bと地上局2の間に音声回線が形成される。地上局2は、機上局4bとの音声回線を更に維持するために、他の機上局4aから音声受信がないか否かを監視する(図10のステップS33)。もし、他の機上局4aからの音声受信を地上サイト3aに通して受信した場合(ビーコン送信が一巡する前)、地上局2は、地上サイト3aを通して他の機上局4aに対して「地上占有」の情報を含むビーコン送信を行うことによって、他の機上局4aに対して音声送信を抑圧する(図10のステップS34同様にして図7の21が書き換えられる)。これは、先の地上局音声を優先する仕組みによって行なわれるため、「地上占有」でなくとも同様の手法であれば良い。
ステップS33において、他の機上局4aから音声送信を受信しなかった場合(ステップS33;NO)、地上局2は、音声送信の抑圧信号(「音声占有」)を全ての地上サイト3a,3b,3cから送信したか否かを判断し(ステップS35)、1つの地上サイト3に接続している機上局4の数が多い順に地上サイト3から「音声占有」を含む、ビーコン送信を行なうように変更の処理を行う(ステップS36)。同時に図7に示すリンクテーブル22の書換えを行う(ステップS37)。この理由は、航空機1が多いサイトほど、音声送信の確率が多くなるため、早期に抑圧する必要があるためである。
音声送信とタイミングメンテナンスに関し、ICAOアニュアルに、送信期間中に音声送信のタイミング変更を行ってはならないと規定されている。サイトダイバーシティ運用についても同様であり、音声送信中の航空機に対して、音声送信期間中カレントサイトの変更を行なうべきではない。なぜなら、受信側では、音声受信開始後、±1シンボルに音声スケルチウィンドウ値を短縮している。したがって、機上局のタイミング変更は適正音声データとは判断されず、音声受信できない状況を生じさせる恐れがあるためである。このほか、データ送信中や、ダウンリンクデータに対する地上局2からの応答データを待っている場合にも同様である。
(音声スケルトチウィンドウと有効性ウィンドウの見直し)
図11に示す例では、サイトダイバーシティ運用を3つの地上サイト3a,3b,3cで行っている状態を示しており、地上サイト3a,3b,3cの全ての覆域に相互に斜線で示す重なる部分が存在している。このような地上サイトの状況は、航空機1a,1bの航路が互いに反対向きの場合に生じる。
航空機1aは地上サイト3aから地上サイト3bの方向に誘導されており、地上サイト3aによる電波覆域端の200NM付近に位置している。さらに、航空機1aは、地上サイト3b,3cの電波覆域範囲内にあり、地上サイト3b、3cによる電波覆域の200NM以内に位置している。
航空機1bは、地上サイト3bから地上サイト3aの方向に誘導されており、ほぼ地上サイト3bの直上に位置している。さらに、航空機1bは、地上サイト3a,3bの電波覆域範囲内にあり、地上サイト3a,3bによる電波覆域の200NM以内に位置している。
図11に示す航空機1a,1bの位置関係におけるカレントサイトについて考察する。
重合する部分を有する3つの地上サイト3a,3b,3cによるサイトダイバーシティ運用によってビーコン信号の送信するローテーションの間隔(BC)は、通常6MAC(2MAC×3)となる。
図11における航空機1aからの音声送信状態における音声送受信について考察する。航空機1aは図12に示すように、カレントサイト3aに対して200NMの位置にあるため、±13シンボル遅延して、カレントサイト3aに同期している。したがって、航空機1aからの音声をカレントサイト3aで受信するタイミングは図12に示すように、更に13シンボル遅延した26シンボル後となっている。
200NMレンジのスケルチウィンドウ値(n)は、“6”であるので、地上サイト3のスケルチウィンドウ(SQW)は図12に示すように、−l〜27シンボル区間となる。このため、地上サイト3a内の200NMに位置する航空機1aからの音声は、3つの地上サイト3a〜3cで受信可能となる。
200NM離れた航空機は、13シンボル(200NM時の伝播遅延)遅れてカレントサイトに同期しているため、地上側では、前記13シンボルの倍の26シンボル遅れて受信が開始される。これに、±1シンボルのタイミング誤差を加えると、スケルチウィンドウ値と一致する。
航空機1bのシステムタイミングは、地上サイトのシステムタイミングと同じである時の受信状況を考察する。
航空機1bとカレントサイトの関係にある地上サイト3bでは、ほぼ遅延なしに音声受信可能である。一方、地上サイト3aでは、ほぼ200NMの距離にある航空機1bが電波覆域内であるため、200NMの伝送遅延分の13シンボル送れて音声受信される。いずれも地上サイトのスケルチウィンドウ(SQW)の−1〜+27シンボル区間に適合している。
航空機1aのスケルチウィンドウ(SQW)は、絶対時間に対して、11〜41シンボル区間となる。このため、絶対時間0に送信された航空機1bからの音声信号は、有効ではなく、航空機1aが受信しない。
以上のことから、航空機1aからの音声送信は、航空機1b、地上サイトともに受信可能となるが、航空機1bからの音声信号は、航空機1aでは受信することができない状態となる。
システムタイミングTS1にある機上局4(航空機1a)のアップリンク音声のスケルチウィンドウ(SQW)は、±1シンボルに縮小されている。このため、前記航空機1aの機上局4は、カレントサイト以外の音声がほとんど受信できない。前記機上局4が受信可能な信号は、機上局4から見てカンレントサイトと±15NM以内の距離差にある地上サイト3aのみからの信号である。
このため、地上サイト3aからの音声送信は、航空機1aのみが受信可能であり、航空機1aは地上サイト3bからの音声を受信できない。同様にして、地上サイト3bからの音声送信は、航空機1bは受信できるが、航空機1aは受信できない状態となる。
これは、同一セクタにおける音声情報の共有を妨げることになり、また現状のアナログ無線システムと異なる運用形態になってしまう。また、管制官がレーダ画面を元に経験的に地上サイトを選び出し、音声サービスを提供している現状において、受信されるべき地上サイトと異なる事象が発生する。
電波覆域外の音声通信であれば、許容される。しかしながら、電波覆域内にあり、それもほぼ同一箇所で、このような事象は避けなければならない。
機上局間が音声通信できない原因は、現在のスケルチウィンドウ値が機上局のシステムタイミングよりも早いタイミングで受信されることを予想していないためである。
これを解消するには、機上局は、常に近くの地上サイトに同期するように考慮すればよい。このためには、冒頭にも述べているが、ビーコンチエック時に地上局コードGSCを無視させるか、もしくは同一の地上局コードGSCを使用することが必要となる。しかし、後者の方では、正確なカレントサイトを識別できないという問題がある。
もう一つ、地上サイトからの音声送信が電波覆域内であっても、受信できない原因は、カレントサイト以外からのアップリンク音声送信を予期されておらず(サイトダイバーシティ運用を考慮していない)スケルチウィンドウ値が±1シンボルに固定されているためである。
この問題を解決するためには、本発明の実施形態は、サイトダイバーシティ運用時に限り、アップリンク音声受信のスケルチウィンドウ値を拡張させている。一つの例として、代替サイトの覆域を200NMまで許容するのであれば、13シンボル遅延するので、−2〜2(n+l)(n:スケルチウィンドウ値)に拡張させている。
前記機上局4の音声受信スケルチウィンドウを拡張して音声受信処理を行う場合を図3に基づいて説明する。図3に示すように、先ず機上局4側で音声受信のスケルチウィンドウのパラメータを変更する(ステップS9)。この処理は、機上局4がリンク接続しているカレントサイト以外の地上サイト3を通して地上局2から送信される音声を機上局4に受信させるためである。
機上局4が地上局2からの音声を受信できない場合(ステップS10;NO)、機上局4側で再度スケルチウィンドウのパラメータを変更させる。
機上局4が、地上局2からの音声を受信できた場合(ステップS10;YES)、次に地上音声受信処理を行う(ステップS11)。この地上音声受信処理を行うと、機上局4は、カレントサイト以外の地上サイト3とリンク接続される。これは、機上局4がリンク接続すべき地上サイト3を変更したのであるから、機上局4から地上局2に向けてサイトを変更した旨のサイトチェンジメッセージが送信される。地上局2は、このメッセージに基づいて機上局とリンク接続する新たな地上サイト3を把握する。
次に、サイトダイバーシティ運用の識別について考察する。単独の地上サイトによる運用の場合では、異なった地上局コードGSCを何時でも受け入れる場合、誤ったビーコン信号に同期する可能性がある。このため、機上無線機に対して、単独地上サイト運用であるか、サイトダイバーシティ運用であるかの識別を知らせる必要がある。
本発明の実施形態では、サイトダイバーシティの識別方法として、図2に示す網加入シーケンスに取交わすサポートオプションメッセージを用いて識別させている。具体的には図13に示すように、サポートオプションメッセージのオクテット5の6ビット目を割り当て、この6ビット目に、サイトダイバーシティサービスの情報を組込むフィールドを設定し、この情報に基づいてサイトダイバーシティの識別を行っている。
以上の説明では、時分割多重アクセスによりチャンネルを複数のスロットに分割し、これらのスロットにより音声及びデータを複数のサイトに通して制御局と被制御局の間に伝送することにより、制御局からの指令に基づいて被制御局をコントロールするサイトダイバーシティ運用を実行する方法として説明したが、この運用方法をプログラム化して、地上局(制御局)2及び機上局(被制御局)4に組込まれたコンピュータを駆動させるようにしてもよいものである。
この場合、図2及び図5に示すメッセージのフォーマット、図3及び図7に示すフローチャートに基づく機能をプログラム化する。具体的には、時分割多重アクセスによりチャンネルを複数のスロットに分割し、これらのスロットにより音声及びデータを複数のサイトに通して制御局と被制御局の間に伝送することにより、制御局からの指令に基づいて被制御局をコントロールするサイトダイバーシティ運用を行うためのプログラムとして構築し、前記被制御局4がサイト3を変更した旨のサイトチェンジメッセージを前記被制御局4から前記制御局2に送信し、その送信情報に基づいて前記制御局2側で、前記カレントサイトを検索する機能をコンピュータに電気信号により実行させる構成として構築する。
また前記被制御局4の音声受信スケルチウィンドウを拡張し、前記サイト識別用コードの異なるサイトに通した前記制御局2から送信される信号を前記被制御局4で受入れ、前記被制御局4が前記制御局2とリンク接続するタイミングの変更を行う機能をコンピュータに電気信号により実行させるプログラムとして構築してもよいものである。この場合、前記被制御局4がサイト識別用コードの異なる前記サイト3から信号を受入れたときに、前記被制御局4から前記制御局2に向けてサイトを変更した旨のサイトチェンジメッセージを送信する機能をコンピュータに電気信号により実行させる構成として構築することが望ましいものである。
なお、以上の実施形態では、本発明の実施形態に係るサイトダイバーシティ運用方法を航空管制に適用した場合を説明したが、これに限られるものではない。要は、制御局と被制御局とが存在し、しかも、被制御局が制御局の支配下にあって、制御局の制御に基づいて被制御局がコントロールされるシステムであれば、いずれのものにも適用できるのである。
以上のように本発明によれば、サイトダイバーシティに有効な運用を行うことができるとともに、制御局と被制御局の間における通信の遅延問題を解決することができる。
図1は、本発明の実施形態に係るVDLモード3によるシステムを示す構成図である。 図2は、サポートオプションメッセージのフォーマットを示す図である。 図3は、本発明の実施形態における処理を示すフローチャートである。 図4は、サイトダイバーシティにおけるサイトチェンジを説明する図である。 図5は、ダウリングメッセージのフォーマットを示す図である。 図6は、地上局コードの割当てを説明する図である。 図7は、地上局と機上局とのリンク接続を管理するためのビーコン処理を説明するフローチャートである。 図8は、機上局距離の測位を説明するための図である。 図9は、音声送信の停止を説明するための図である。 図10は、音声抑圧処理を説明するための図である。 図11は、カレントサイトを考察するための図である。 図12は、スケルチウィンドウを見直す説明をするための図である。 図13は、サイトダイバーシティ運用の識別を説明するための図でる。
符号の説明
1,1a,1b 航空機
2,2a,2b 地上局(制御局)
3,3a,3b,3c 地上サイト
4 機上局(被制御局)

Claims (2)

  1. 時分割多重アクセスによりチャンネルを複数のスロットに分割し、これらのスロットにより音声及びデータを複数のサイトに通して制御局と被制御局の間に伝送することにより、制御局からの指令に基づいて被制御局をコントロールするサイトダイバーシティ運用方法において、
    前記被制御局の音声受信スケルチウィンドウを拡張し、サイト識別用コードの異なるサイトに通した前記制御局から送信される信号を前記被制御局で受入れ、前記被制御局が前記制御局とリンク接続するタイミングの変更を行い、
    前記被制御局がサイト識別用コードの異なる前記サイトから信号を受入れたときに、前記被制御局から前記制御局に向けてサイトを変更した旨のサイトチェンジメッセージを送信することを特徴とするサイトダイバーシティ運用方法。
  2. 時分割多重アクセスによりチャンネルを複数のスロットに分割し、これらのスロットにより音声及びデータを複数のサイトに通して制御局と被制御局の間に伝送することにより、制御局からの指令に基づいて被制御局をコントロールするサイトダイバーシティ運用を制御するためのプログラムにおいて、
    コンピュータに、
    前記被制御局の音声受信スケルチウィンドウを拡張し、サイト識別用コードの異なるサイトに通した前記制御局から送信される信号を前記被制御局で受入れ、前記被制御局が前記制御局とリンク接続するタイミングの変更を行う機能と、
    前記被制御局がサイト識別用コードの異なる前記サイトから信号を受入れたときに、前記被制御局から前記制御局に向けてサイトを変更した旨のサイトチェンジメッセージを送信する機能とを実行させることを特徴とするサイトダイバーシティ運用プログラム。
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