JP4256889B2 - 無線通信装置 - Google Patents

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Description

本発明は、アンテナの交信領域内に存在する複数の応答装置と無線通信を行い、各応答装置がそれぞれ有する固有の識別情報を非接触で読取る無線通信装置に関する。
近年、電磁波あるいは電波を利用して無線通信装置との間で無線通信を行うことにより、メモリ内に保持したデータを送信したり、受信したデータをメモリ内に書き込んだりできる小型の応答装置が開発され、流通,物流,交通,セキュリティなどの様々な分野で使用されている。この種の応答装置は、一般にはRFID(Radio Frequency Identification),無線タグ,ICタグ,電子タグなどと称されている。また、無線通信装置は、タグリーダ,タグリーダ・ライタ,質問器,基地局等と称されている。
このような無線通信装置と応答装置とを用いた無線通信システムの特徴的な機能の1つに、無線通信装置が複数の応答装置から略同時にデータを受信できる機能がある。この機能により、例えば多数の物品にそれぞれ応答装置を取り付けた場合には各物品の応答装置からその物品特有の情報を略同時に非接触で読取ることができるので、在庫管理や物品認証等の作業の効率化を図れるようになる。
この機能を実現するための一つとしてアンチコリジョン(衝突防止)と称している応答装置の応答手順を制御する機能がある。国際標準規格に採用されている代表的なアルゴリズムとしてバイナリツリー方式とタイムスロット方式とがある。タイムスロット方式は、無線LAN(Local Area Network)等のパケット通信において広く使われているアクセス制御方式で、アロハ(ALOHA)方式とも呼ばれている。因みに、RFIDの標準化団体であるEPC(Electronic Product Code)グローバルにより提案されたRFIDの通信規格の1つであるGen.2(Generation2)規格でも、タイムスロット方式を採用している。
一般的なタイムスロット方式のアンチコリジョン機能の動作について説明する。
先ず、無線通信装置は、そのアンテナの交信領域内に存在する複数の応答装置に対し、特定のスロット数(2〜2:Qは1以上の固定値)を指定して所定数のタイムスロットを割り当てる。一方、各応答装置は、指定を受けたスロット数の範囲内で乱数を生成する。例えば2ビット(Q=1)のスロット数が指定された場合には、各応答装置は2ビットの乱数[00],[01],[10],[11]のいずれかを生成する。そして、生成された乱数に一致したタイミングのタイムスロットを利用して無線通信装置に識別情報の応答を返す。
この際、1つのタイムスロットに対して1つの応答装置しか応答を返さなかった場合には、その応答装置の識別情報を無線通信装置が読取ることができる。しかし、1つのタイムスロットに対して複数の応答装置が同時に応答を返した場合には衝突が発生するので、それらの応答装置の識別情報を無線通信装置は読取ることができない。
無線通信装置は、応答装置の識別情報を読み残している場合は、新たに所定数のタイムスロットを割り当てる。これに応じて、衝突の発生等により識別情報の応答を完了していない応答装置では、再度乱数を生成する。そして、生成された乱数に一致したタイミングのタイムスロットを利用して無線通信装置に応答を返す。このような一連の処理を短時間で繰り返すことにより、無線通信装置は複数の応答装置から略同時に識別情報を読取れるようになる。
ところで、無線通信装置が全ての応答装置の識別情報を読取るのに要する時間は、無線通信装置が割り当てるタイムスロット(以下、割当スロットと称する)の数と応答装置の数との相互関係によって変化する。そこで無線通信装置は、各応答装置にタイムスロットを割り当てる際に最適な割当スロット数を計算し直して決定している。この割当スロット数の計算には、所定の確率計算が利用される。
例えば、識別情報を読み残した応答装置、すなわち未読応答装置の数が未知の場合には、無線通信装置が割り当てたタイムスロットのうち、応答装置から識別情報が1つも送られなかったタイムスロット、いわゆる空スロットの数と、識別情報を伝送した応答装置が1つだったタイムスロット、いわゆる読取成功スロットの数と、複数の応答装置が同じタイムスロットで識別情報を伝送したタイムスロット、いわゆる衝突スロットの数との各計数値に基づき、未読応答装置の数を確率変数とした確率密度関数を求める。そして、この確率密度関数から未読応答装置の推定数を算出し、この推定数に基づき新たに割当スロット数を決定する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
特開平11−282975号公報
しかしながら、従来のこの種の無線通信装置においては、各応答装置にタイムスロットを割り当てる都度、所定の確率計算を行って新たな割当スロット数を決定していたので、複雑な確率計算を何度も高速で繰り返すことに対応できる高い演算処理能力が要求されていた。
本発明はこのような事情に基づいてなされたもので、その目的とするところは、割当スロット数の決定に要する演算負荷を軽減することができる無線通信装置を提供しようとするものである。
本発明は、アンテナから1以上の応答装置に所定数のスロットを割り当てる信号を送信すると、この信号を受信した応答装置のうち未だ識別情報が読取られていない未読応答装置が個別に1つのスロットを選択しそのスロットに当該応答装置固有の識別情報を含ませて伝送する無線通信方式を用いて各応答装置の識別情報を読取る無線通信装置において、割当可能なスロット数の種類毎に、当該スロット数とこのスロット数の次に大きいスロット数とで、1つのスロットに識別情報を含ませて伝送する未読応答装置が1つである確率が等しくなるときの未読応答装置数を記憶する対応データ記憶部と、信号を送信する前時点の未読応答装置の実数対応データ記憶部に記憶されている未読応答装置数とを比較し、実数より大きい最小の未読応答装置数を選択して当該未読応答装置数に対応したスロット数を読み出す検索手段と、この検索手段により記憶部から読み出した数のスロットを割り当てる信号をアンテナから送信させる制御手段とを備えたものである。
かかる手段を講じた本発明によれば、割当スロット数の決定に要する演算負荷を軽減することができる効果を奏し得る。
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を用いて説明する。
なお、この実施の形態は、無線通信方式の1種であるタイムスロット方式を利用して、RFID,無線タグ等と称される複数の応答装置から固有の識別情報を非接触で読取るようにした無線通信装置に本発明を適用した場合である。
図1は本実施の形態における無線通信装置1の要部構成を示すブロック図と、無線通信装置1のアンテナ2と、アンテナ2の交信領域3を示す図である。図示するように無線通信装置1は、データ入出力部11、送受信処理部12、記憶部13及びこれらを制御する制御部14等で構成されている。
データ入出力部11は、通信ケーブル等を介してデータ通信可能に接続された外部装置(不図示)からデータを受信し前記制御部14に与える機能と、制御部14の制御により所定のデータを前記外部装置に送信する機能とを有する。送受信処理部12は、制御部14から与えられる送信信号を変調しアンテナ2から無線発信させる機能と、アンテナ2で受信した信号を復調し制御部14に与える機能とを有する。記憶部13は、不揮発性の書換可能なメモリ領域である。
かかる構成の無線通信装置1は、そのアンテナ2の交信領域3内に存在する複数(図では6個)の応答装置4A〜4Fとタイムスロット方式の無線通信を行い、各応答装置4A〜4Fがそれぞれ有する固有の識別情報を非接触で読取る。
すなわち、無線通信装置1は、アンテナ2から1以上の応答装置4(以下、各応答装置4A〜4Fを総称する場合は符号を“4”とする)に所定数のタイムスロットを割り当てる信号を送信する。すると、この信号を受信した応答装置4のうち未だ識別情報が読取られていない応答装置4が個別に1つのタイムスロットを選択する。そして、その選択したタイムスロットに当該応答装置固有の識別情報を含ませて伝送する。
ここで、1つのタイムスロットに対して1つの応答装置4だけが識別情報を伝送した場合、無線通信装置1は、このタイムスロットから当該応答装置4の識別情報を取得できる。このようなタイムスロットを以後、読取成功スロットと称する。
これに対し、1つのタイムスロットに対して複数の応答装置4が識別情報を伝送した場合には、伝送信号が乱されるため、無線通信装置1はこれら応答装置4の識別情報を取得することができない。このようなタイムスロットを以後、衝突スロットと称する。また、1つのタイムスロットに対して識別情報を伝送した応答装置4が1つも無かった場合も識別情報を取得できない。このようなタイムスロットを以後、空スロットと称する。
なお、衝突スロットと空スロットとの識別は、読取成功スロット以外のタイムスロットにおいて、無線通信装置1が受信した電波強度が所定のしきい値を超えたか否かによって判断可能である。すなわち、電波強度がしきい値より高いタイムスロットは衝突スロットとし、低いスロットは空スロットとすればよい。
さて、無線通信装置1は、アンテナ2の交信領域3内に存在する応答装置4の識別情報を取得できた場合、当該識別情報を含む信号を送信することにより、当該識別情報を有する応答装置4に識別情報の読み取りが成功した旨を通知する。すると、この通知を受けた応答装置4は、それ以後は識別情報を伝送しなくなる。その後、無線通信装置1は、必要に応じて、取得した識別情報を含む信号を伝送することで該当識別情報を有する応答装置4と交信を行い、該当応答装置4が有する他の情報を取得したり、該当応答装置4に任意の情報を書き込んだりする。
なお、RFIDの通信規格の1つであるGen.2規格では、アンチコリジョンを行う際の応答装置4の識別情報に16ビットの乱数を使用している。この16ビットの乱数は、応答装置4が識別情報を送信するたびに変化する、言わば一度きりの使い捨ての識別情報である。そしてGen.2規格では、無線通信装置1が該当応答装置4に使い捨ての識別情報の読み取りが成功したことを通知した直後、応答装置4は、無線通信装置1に応答装置固有の識別情報を送信する。一般に、応答装置固有の識別情報は、16ビットの十倍前後の大きさを持つため、Gen.2規格では、無線通信装置1が多数の応答装置4から1つの応答装置4を選びリンクを確保する際、すなわちアンチコリジョンを行う際に、応答装置固有の識別情報とは別の短い識別情報を利用することでアンチコリジョンに要する時間を短縮している。
本実施の形態において、識別情報とは、上述したアンチコリジョンを行う際の識別情報を指している。ただし、説明を簡単にするために、応答装置固有の識別情報とアンチコリジョンを行う際の識別情報が同じものとする。
図2は無線通信装置1と、そのアンテナ2の交信領域3内に存在する6個の応答装置4A〜4Fとの間で送受される信号の一例を1サイクル分のみ示したタイミング図であり、図中左から右に時間が経過している。
無線通信装置1は、先ず、サイクル開始信号start1により各応答装置4A〜4Fに対して割当スロット数を指定する。図2の場合は、割当スロット数“8”を指定する。すると、各応答装置4A〜4Fは、割当スロット番号s1〜s8の8つのタイムスロットのうちのいずれか1つのタイムスロットを選択して、自身の識別情報を無線通信装置1に伝送しようとする。
図2の場合、応答装置4Aが割当スロット番号s1のタイムスロットを選択して識別情報aを伝送している。また、応答装置4Cが割当スロット番号s4のタイムスロットを選択して識別情報cを伝送している。一方、2つの応答装置4B及び4Dは、いずれも割当スロット番号s2のタイムスロットを選択して各々の識別情報b及びdを伝送している。同様に、2つの応答装置4E及び4Fは、いずれも割当スロット番号s5のタイムスロットを選択して各々の識別情報e及びfを伝送している。残りの割当スロット番号s3,s6,s7及びs8の4つのタイムスロットを選択して識別情報を伝送する応答装置4は存在しない。すなわち、割当スロット番号s1及びs4のタイムスロットが読取成功スロットとなり、割当スロット番号s2及びs5のタイムスロットが衝突スロットとなり、割当スロット番号s3及びs6〜s8のタイムスロットが空スロットとなる。
したがって、割当スロット番号s8のタイムスロットを受信した時点では、応答装置4Aと応答装置4Cの識別情報を無線通信装置1が取得している。無線通信装置1は、応答装置4の識別情報を取得したならば、次に送信するタイムスロット開始信号nSに、取得した識別情報を含ませる。その結果、これらの応答装置4A,4Cは、以後のサイクルで識別情報を伝送しなくなる。このように、無線通信装置1によって識別情報が読取られ、識別情報を伝送しなくなる応答装置4を既読応答装置5と称する。
一方、他の応答装置4A,4D,4E,4Fの識別情報は、無線通信装置1において取得されていない。したがって、これらの応答装置4A,4D,4E及び4Fの識別情報がタイムスロット開始信号nSに含まれることはない。その結果、これらの応答装置4A,4D,4E及び4Fは、次のサイクルでも指定されたタイムスロットを利用して識別情報を伝送しようとする。このように、無線通信装置1によって識別情報が読取られておらず、次のサイクルでも識別情報を伝送する応答装置4を未読応答装置6と称する。
無線通信装置1は、1サイクル分の全てのタイムスロットの受信信号から、識別情報を読み残している未読応答装置6があるか否かを判断する。例えば、1サイクルの中に衝突スロットがある場合には、未読応答装置6があると判断する。逆に、1サイクルの全てのタイムスロットが空スロットである場合には、未読応答装置6がないと判断する。
未読応答装置6がないと判断した場合には、無線通信装置1は、識別情報の読取を終了する。これに対し、未読応答装置6があると判断した場合には、無線通信装置1は、新たな割当スロット数を決定する。そして、次のサイクル開始信号startn(nはサイクル開始信号の送信回数)により各応答装置4に対して新たな割当スロット数を指定する。
ここで、新たな割当スロット数を決定するには、従来から確率計算が利用されている。そこで次に、割当スロット数を決定するための確率計算について説明する。
先ず、1つのタイムスロットに対して識別情報を伝送する応答装置4が1つとなる確率を考える。このように、1つのタイムスロットに対して識別情報を伝送する応答装置4が1つであった場合、無線通信装置1は、この応答装置4の識別情報を取得することができる。すなわち、この確率は、1つのタイムスロットで無線通信装置1が応答装置4の識別情報を取得することができる確率と等価である。
無線通信装置1が応答装置4に指定する割当スロット数をSとし、アンテナ2の交信領域内に存在する応答装置4のうち未読応答装置6の数をtとした場合、確率P1(S,t)は、次の数式[数1]で示される。
Figure 0004256889
数式[数1]は、あるタイムスロットに対して、1つの未読応答装置6が識別情報を伝送する確率を1/Sとし、その他の(t−1)個の未読応答装置6が識別情報を伝送しない確率を(1−1/S)^(t-1)とし、これらの確率と未読応答装置6の数tとを積算した式である。なお、前記確率(1−1/S)^(t-1)の記号“^”は、累乗を示している。
数式[数1]においてS=8の場合、すなわち確率P1(8,t)をグラフにすると、図3のようになる。同グラフにおいて、横軸は未読応答装置6の数tであり、縦軸はその数tに対する識別情報取得確率P1(8,t)である。
ここで、未読応答装置6の数tは非負整数である。この場合、確率P1(S,t)は、割当スロット数Sが未読応答装置6の数tと等しいとき最大となることが知られている。したがって、無線通信装置1が応答装置4に対して割り当てるタイムスロットの数、すなわち割当スロット数Sを常に未読応答装置6の数tと同数にすることによって、無線通信装置1が全ての応答装置4の識別情報を取得するのに要する時間を短縮することができる。
しかし、無線通信装置1が選択できる割当スロット数Sは、実装上の制約により離散的な値をとることが多い。例えば前述したGen.2規格においては、無線通信装置1が選択できる割当スロット数Sは2の累乗あるいはベキ乗となっており、2の0乗から2の15乗の16種類となっている。すなわち、割当スロット数Sは、1,2,4,8,16,32,64,…というように離散的な値をとる。このため、割当スロット数Sを常に未読応答装置6の数tと同数にすることは困難である。
そこで、無線通信装置1が選択可能な割当スロット数Sがn種類ある場合の割当スロット数SをS(i){i=1,2,・・・,n}と表記し、S(i)とS(i+1)とはS(i)<S(i+1)なる関係を有するものとする。この場合において、未読応答装置6の数tが、無線通信装置1で選択可能な割当スロット数S(i)とS(i+1)の間の値であるとき、割当スロット数S(i)を指定した場合に1つのタイムスロットに対して識別情報を伝送する応答装置4が1つとなる確率P1(S(i),t)と、割当スロット数S(i+1) を指定した場合に1つのタイムスロットに対して識別情報を伝送する応答装置4が1つとなる確率P1(S(i+1),t)とをそれぞれ計算する。そして、確率P1(S(i),t)と確率P1(S(i+1),t)とを比較し、高い方の割当スロット数(S(i)またはS(i+1))を選択する。こうすることにより、無線通信装置1が応答装置に対して割り当てるタイムスロットの数(割当スロット数S)を決定することができる。
今、アンテナ2の交信領域3内に存在する応答装置4の数の情報を無線通信装置1が予め持っているものとする。また、無線通信装置1が選択できる割当スロット数がS(1)=2、S(2)=4、S(3)=8の3種類とする。
この場合において、各スロット数S(1)=2、S(2)=4、S(3)=8をそれぞれ数式[数1]に代入して、各々の割当スロット数S(1)=2、S(2)=4、S(3)=8を指定した場合に1つのタイムスロットに対して識別情報を伝送する応答装置4が1つとなる確率P1(2,t)、P1(4,t)、P1(8,t)を算出すると、各々の確率P1(2,t)、P1(4,t)、P1(8,t)と、未読応答装置6の数tとの関係は、図4のグラフで示されるようになる。
同図において、確率P1(2,t)と確率P1(4,t)とが等しくなる未読応答装置6の数tを値t1(1)とする。また、確率P1(4,t)と確率P1(8,t)とが等しくなる未読応答装置6の数tを値t1(2)とする。同図から明らかなように、1つのタイムスロットに対して識別情報を伝送する応答装置4が1つとなる確率、つまりは未読応答装置6の識別情報を取得できる確率P1(S,t)を高くするには、未読応答装置6の数tが値t1(1)より小さいときには割当スロット数Sを“2”とすればよい。同様に、未読応答装置6の数tが値t1(1)以上で値t1(2)未満のときには割当スロット数Sを“4”とし、値t1(2)以上のときには割当スロット数Sを“8”とすればよい。
ここで、あるタイムスロット数S(i)のタイムスロットを指定した場合に1つのタイムスロットに対して識別情報を伝送する応答装置4が1つとなる確率P1(S(i),t)と、当該タイムスロット数S(i)の次に大きいタイムスロット数S(i+1)のタイムスロットを指定した場合に1つのタイムスロットに対して識別情報を伝送する応答装置4が1つとなる確率P1(S(i+1),t)とが等しくなる未読応答装置6の値をt1(i){i=1,2,・・・,n}と表記すると、この値t1(i)は、次の数式[数2]によって算出される。なお、数式[数2]において、記号“ln”は自然対数を示している。
Figure 0004256889
したがって、未読応答装置6の数tと値t1(i) {i=1,2,・・・,n}とを比較し、数t以上の値で最小の値min[t1(i)]を求める。そして、この最小の値min[t1(i)]をとるタイムスロット数S(i),S(i+1)のうち小さい方のタイムスロット数S(i)を新たな割当スロット数Sとして決定する。こうすることにより、未読応答装置6の識別情報を取得できる確率P1(S,t)を最も高くすることができる。
そこで本実施の形態では、割当可能なタイムスロット数S(i) {i=1,2,・・・,n}の種類毎に、当該タイムスロット数S(i)とこのタイムスロット数S(i)の次に大きいタイムスロット数S(i+1)とで、前記確率P1(S,t)が等しくなるときの未読応答装置数t1(i) {i=1,2,・・・,n}を予め算出する。そして、図5に示すように、これらタイムスロット数S(i)とそれに対応する未読応答装置数t1(i)とを関連付けて設定した対応データメモリ15を作成し、記憶部13で記憶しておく。なお、値t1(n)は無限大である。また、値t1(i)は、小数点以下について切り捨て,切り上げ,四捨五入等の丸め処理を行ってもよい。
因みに、図5の例は、割当可能なタイムスロット数S(i)がS(1)=2、S(2)=4、S(3)=8、S(4)=16、S(5)=32の5種類の場合であり、この場合、S(1)とS(2)とで確率P1(S,t)が等しくなる未読応答装置数t1(1) の整数部分が“2”、S(2)とS(3)とで確率P1(S,t)が等しくなる未読応答装置数t1(2) の整数部分が“5”、S(3)とS(4)とで確率P1(S,t)が等しくなる未読応答装置数t1(3) の整数部分が“11”、S(4)とS(5)とで確率P1(S,t)が等しくなる未読応答装置数t1(4) の整数部分が“22”とそれぞれ算出されて、対応データメモリ15に設定される。
なお、数式[数2]の計算については、無線通信装置1の外部装置で行い、その結果を、データ入出力部11を介して記憶部13の対応データメモリ15に記憶する。こうすることにより、無線通信装置1の計算負荷とはならない。
しかして無線通信装置1の制御部14は、図7の流れ図に示す手順に従い、アンテナ2の交信領域3内に存在する各応答装置4の識別情報を読取る動作を行う。なお、この動作を実行する上で利用するメモリエリアとして、図6に示すように、未読応答装置実数tのカウンタ16と、読取成功スロット数Aのカウンタ17と、サイクル回数nのカウンタ18とを記憶部13に形成している。
制御部14は、先ず、ST(ステップ)1として未読応答装置実数tの初期値Tsをカウンタ16にセットする。この初期値Tsは、アンテナ2の交信領域3内に存在する応答装置4の総数であり、例えばデータ入出力部11を介して接続された外部装置から入力される。
次に、制御部14は、ST2としてサイクル回数カウンタ18のカウント値nを一旦“0”にリセットし、続いて、ST3として上記サイクル回数カウンタ18を“1”だけカウントアップする。すなわち、タイムスロット方式の1回目のサイクルを開始する。
先ず、制御部14は、ST4として未読応答装置実数カウンタ16のカウント値tで前記対応データメモリ15を参照して、当該カウント値t以上で最小の値t1(i)を選択する。次に、制御部14は、ST5として対応データメモリ15を検索して、選択した値t1(i)に対応して設定されているタイムスロット数S(i)を取得する(検索手段)。そして、ST6としてこのタイムスロット数S(i)を割当スロット数とするサイクル開始信号start.n(nはサイクル回数カウンタ18のカウント値n)を送受信処理部12に送信する(制御手段)。また、ST7として読取成功スロット数カウンタ17のカウント値Aを“0”にリセットする。
その後、制御部14は、ST8として受信したタイムスロットが読取成功スロットであるか否かを判断する。そして、読取成功スロットであった場合には、ST9として読取成功スロット数カウンタ17のカウント値Aを“1”だけカウントアップする。また、ST10としてタイムスロット方式の1サイクルを終了したか否かを判断する。終了していない場合には、ST8の処理に戻る。こうして、制御部14は、1サイクルを終了するまでの間に受信した読取成功スロットの数を読取成功スロット数カウンタ17で計数する。
1サイクルを終了した場合には、制御部14は、ST11として未読応答装置実数カウンタ16のカウント値tから読取成功スロット数カウンタ17のカウント値Aを減算して、カウント値tを最新の未読応答装置実数に更新する(実数更新手段)。
次に、制御部14は、ST12として識別情報の読取終了か否かを判断する。例えば全てのタイムスロットが空スロットであるサイクルがN(N≧1)回連続した場合には読取終了と判断する。読取終了と判断できなかった場合には、ST3の処理に戻り、サイクル回数カウンタ18のカウント値をカウントアップして、次の1サイクルを実行する。読取終了と判断した場合には、制御部14は、今回の読取処理を終了する。
このように、本実施の形態によれば、無線通信装置1が各応答装置4の識別情報を読取る際の最適な割当スロット数を演算で求めるのでなく、対応データメモリ15の検索によって求めるので、無線通信装置1の演算負荷を大幅に軽減することができる。したがって、演算処理能力が低い低級機種でも無線通信装置1として適用できるので、低コスト化を図ることができる。
なお、この発明は前記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。
例えば、前記数式[数1]は、変量を“1”とした二項分布となっている。一方、変量Xの二項分布は、確率変数Xのポアソン分布で近似できることが知られている。そこで、数式[数1]をポアソン分布として近似した場合の値t1(i)を数式で表すと数式[数3]のようになる。
Figure 0004256889
さらにS(i)が初項a、等比rの等比数列である場合、数式[数3]は数式[数4]のようになる。
Figure 0004256889
数式[数3]や数式[数4]は、数式[数2]と比べて計算に要する負荷が小さい。そこで、あるタイムスロット数S(i)のタイムスロットを指定した場合に1つのタイムスロットに1つの応答装置4のみが識別情報を伝送する確率P1(S(i),t)と、当該タイムスロット数S(i)の次に大きいタイムスロット数S(i+1)のタイムスロットを指定した場合に1つのタイムスロットに1つの応答装置4のみが識別情報を伝送する確率P1(S(i+1),t)とが等しくなる未読応答装置6の値t1(i){i=1,2,・・・,n}を、数式[数2]の代わりに、数式[数3]や数式[数4]を用いて算出してもよい。
なお、無線通信装置1が選択可能な割当スロット数S(i)は、i=1,2,・・・,nの場合のみである。このため、i=nの場合は数式[数2]のS(i+1)が定義されないので、値t1(n)を算出できない。そこで、値t1(n)は無限大とする。数式[数2]の近似式である数式[数3]及び数式[数4]においても、値t1(n)は無限大とする。
また、前記実施の形態では、アンテナ2の交信領域3内に存在する応答装置4の総数をデータ入出力部を介して外部から入力すると、応答装置4の識別情報読取処理を開始するようにしたが、予め無線通信装置1がアンテナ2の交信領域3内に存在する応答装置4の総数を記憶しており、データ入出力部を介して外部から読取開始が指令されると、応答装置4の識別情報読取処理を開始するようにしてもよい。
また、値t1(i)は小数点以下の値となる場合があるが、その場合には、小数点以下を切り捨てた値とすればよい。こうすることにより、対応データ記憶部15の記憶容量を節約できる効果を奏する。
この他、前記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態に亘る構成要素を組合わせてもよい。
本発明の一実施の形態である無線通信装置の要部構成を示すブロック図。 同実施の形態において、無線通信装置とそのアンテナの交信領域内に存在する複数の応答装置との間で送受される信号の一例を1サイクル分のみ示したタイミング図。 未読応答装置の数に対する確率P1(8,t)の対応関係を示すグラフ。 未読応答装置の数に対する確率P1(2,t),確率P1(4,t),確率P1(8,t)の対応関係を示すグラフ。 本実施の形態の対応データメモリに記憶されるデータの一例を示す模式図。 本実施の形態の記憶部に形成される主要なメモリエリアを示す模式図。 本実施の形態において制御部がアンテナの交信領域内に存在する各応答装置の識別情報を読取る際の制御手順の要部を示す流れ図。
符号の説明
1…無線通信装置、2…アンテナ、3…交信領域、4(4A〜4F)…応答装置、11…データ入出力部、12…送受信処理部、13…記憶部、14…制御部、15…対応データメモリ。

Claims (2)

  1. アンテナから1以上の応答装置に所定数のスロットを割り当てる信号を送信すると、この信号を受信した応答装置のうち未だ識別情報が読取られていない未読応答装置が個別に1つのスロットを選択しそのスロットに当該応答装置固有の識別情報を含ませて伝送する無線通信方式を用いて各応答装置の識別情報を読取る無線通信装置において、
    割当可能なスロット数の種類毎に、当該スロット数とこのスロット数の次に大きいスロット数とで、1つのスロットに前記識別情報を含ませて伝送する未読応答装置が1つである確率が等しくなるときの未読応答装置数を記憶する対応データ記憶部と、
    前記信号を送信する前時点の前記未読応答装置の実数前記対応データ記憶部に記憶されている未読応答装置数とを比較し、前記実数より大きい最小の未読応答装置数を選択して当該未読応答装置数に対応したスロット数を読み出す検索手段と、
    この検索手段により前記記憶部から読み出した数のスロットを割り当てる信号を前記アンテナから送信させる制御手段と、
    を具備したことを特徴とする無線通信装置。
  2. 前記信号を送信する前の時点の前記未読応答装置の実数を記憶する実数記憶部と、
    前記信号の送信により前記識別情報を読取れた応答装置数を計数する計数手段と、
    前記実数記憶部に記憶された実数から前記計数手段により計数された応答装置数を減算して前記実数を更新する実数更新手段とを具備し、
    前記検索手段は、前記実数記憶部に記憶された未読応答装置の実数で前記対応データ記憶部を検索して当該実数に対応するスロット数を読み出すことを特徴とする請求項記載の無線通信装置。
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