本発明は、内部に測定のための電極を備え口腔内から採取されたサンプルを含む試料液を保持することができるセルと、電極に誘電泳動を行うための電圧を印加する電源部と、試料液中の微生物数を算出する測定部と、電源部と測定部を制御するための制御部とを備え、制御部が電極に電圧を印加して試料液中の微生物を誘電泳動力によって該電極上に捕集し、測定部が捕集後または捕集中の電極間のインピーダンスを測定することで試料液中の微生物数を定量的に算出し、口腔内の衛生状態の評価を行うことを特徴とする口腔内衛生状態検査装置であるから、試薬であるとか特別な装置や訓練を必要とすることなく、簡易かつ客観的に自らの口腔内の衛生状態を調べることができる。
また、誘電泳動によって試料中の微生物を電極上に捕集するときに、試料液と電極の相対位置を変化させる流動促進手段を備えるので、試料液中の微生物を効率よく電極上に集めることができ、迅速な測定を行うことができる。
また、誘電泳動によって試料中の微生物を電極上に捕集する前に、測定部が試料液の導電率を測定するので、イオン濃度の高い試料液等の測定ミスを未然に防ぐことができ、信頼性の高い判定結果を導き出すことができる。
また、試料液の導電率を調整する導電率調整部を備えるので、最適な条件で誘電泳動と測定を行うことができ、迅速で精度の高い測定を行うことができる。
また、測定部が試料液の導電率を測定し、測定した導電率を基に測定結果を補正するので、試料の性質に寄らず常に正確な判定結果を導き出すことができる。
本発明は、口腔内から採取され液体に懸濁された試料を保持するセルと、試料中の微生物数を測定する測定部と、該測定部を制御する制御部を備え、測定部には、セル内に光束を入射する光源と、該セル内で散乱した光を検出する光検出器と、光源を発光するための電源回路と、光検出器で検出した散乱光の光強度を検出する検出回路が設けられ、試料に対して光束を入射させたときの散乱光量を検出回路が検出することによって試料中の微生物数を定量検出し、口腔内の衛生状態の判定根拠にすることを特徴とする口腔内衛生状態検査装置であるから、簡易な構造でありながら口腔内の衛生状態の高精度な判定をすることができる。
本発明は、口腔内から採取され液体に懸濁された試料を保持するセルと、試料中の微生物数を測定する測定部と、該測定部を制御する制御部を備え、測定部には、セル内に光束を入射する光源と、該セル内を透過した光を検出する光検出器と、光源を発光するための電源回路と、光検出器で検出した透過光の光強度を検出する検出回路が設けられ、試料に対して光束を入射させたときの透過光量を検出回路が検出することによって試料中の微生物数を定量検出し、口腔内の衛生状態の判定根拠にすることを特徴とする口腔内衛生状態検査装置であるから、簡易な構造でありながら口腔内の衛生状態の高精度な判定をすることができる。
本発明は、口腔内から採取された試料を保持するセルと、試料中のプラーク量を測定する測定部と、該測定部を制御する制御部を備え、測定部には、試料から発生する揮発性物質を検出する少なくとも1つ以上のガスセンサと、該ガスセンサで検出した揮発性物質信号から該揮発物質量を検出する検出回路が設けられ、試料から発生する揮発性物質量を検出回路が検出することによってプラーク付着状況を推定し、口腔内の衛生状態の判定根拠にすることを特徴とする口腔内衛生状態検査装置であるから、臨床的に問題となる口臭を直接調べることができ、実質的に十分な精度で口腔内の衛生状態の判定をすることができる。
本発明は、測定のための電極を備えたセル内に口腔内から採取されたサンプルを含む試料液を導入し、電極に電圧を印加して誘電泳動を行い、試料液中の微生物を誘電泳動力によって電極上に捕集するとともに、電極間のインピーダンスを測定することで試料液中の微生物数を定量的に算出することを特徴とする口腔内微生物数測定方法であるから、試薬であるとか特別な装置や訓練を必要とすることなく、簡易かつ客観的に自らの口腔内の衛生状態を調べることができる。
本発明は、測定のための電極を備えたセル内に口腔内から採取されたサンプルを含む試料液を導入し、該セル内に光源から光束を入射し、セル内の試料液で散乱した散乱光の光強度を検出して試料中の微生物数を検出することを特徴とする口腔内微生物数測定方法であるから、試薬であるとか特別な装置や訓練を必要とすることなく、簡易かつ客観的に自らの口腔内の衛生状態を調べることができる。
本発明は、セル内に口腔内から採取された試料を保持し、ガスセンサで該試料から発生する揮発性物質量を検出回路で検出することによってプラーク付着状況を推定することを特徴とする口腔内プラーク量測定方法であるから、臨床的に問題となる口臭を直接調べることができ、実質的に十分な精度で口腔内の衛生状態の判定をすることができる。
以下、本発明の実施の形態1〜4について、図1〜図11と数式である(数1)〜(数8)を用いて説明する。
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1における口腔内衛生状態検査装置と口腔内衛生状態検査方法について図面を参照しながら詳細に説明する。図1は本発明の実施の形態1における口腔内衛生状態検査装置の全体横成図、図2は本発明の実施の形態1における電極の説明図、図3(a)は電極間の電気的状態を等価回路で示した説明図、図3(b)は電流と電圧の位相の差を表した説明図、図4はインピーダンスのベクトル分解を説明する説明図、図5はコンダクタンスの時間変化図、図6は培養による微生物数測定とコンダクタンス変化の傾きの相関図である。
図1において、1は測定セル、2は薄膜電極、3は回転子、4はスターラー、5は泳動電源部、6は測定部、7は制御部、8は表示部である。また、図2において、10は電極基板、11は導電性薄膜、12は対向する二つの電極の間に構成されるギャップである。
実施の形態1における測定セル1は円筒状のガラス製容器であり、試料液を導入/排出するための開口部が設けられている。また、測定セル1は試料液を攪拌するための回転子3を備えており、回転子は測定セル1に隣接して配置されるスターラー4と磁気力を介して結合され回転するため、磁力を遮ることがないガラスを使用している。測定セル1の材料は、ガラス以外にもプラスチックなどを用いることもできる。
測定セル1内には誘電泳動によって試料液中の微生物を所定位置に移動させるために、電極基板10上に微小なギャップ12を介して、2つの極からなる薄膜電極2が対向して入れ子状に設けられている。本実施の形態1においては、薄膜電極2は図2に示すように櫛歯状の電極が対向して配置されており、ギャップ12間の間隔は5μmである。この薄膜電極2が本発明における測定のための電極を構成する。薄膜電極2は、導電体をスパッタリングや蒸着やメッキ等の方法によって電極基板2上に被覆して形成されたものである。
そして、微生物を所定位置に移動させるために、この薄膜電極2に電圧を印加すると、薄膜電極2の間に横成されるギャップ12付近の電界が最も強くなる。詳細については後述するが、微生物はこの最も電界が集中するこのギャップ12付近に向かって泳動される。
スターラー4と回転子3は、攪拌して試料液と電極の相対位置を変化させるために設けたが、試料液を電極上で流動させて相対位置を変化させる流動促進手段であれば、必ずしもこのスターラー4と回転子5である必要はない。例えば、ポンプを用いて測定セル1内に水流を生成したり、また電極が可動機構上に取り付けられ電極自身が回転したり振動したり平行移動したりしてもよい。回転子3は様々な形態のものが選択可能であるが、実施の形態1では円筒形のものを使用している。
次に、泳動電源部5は誘電泳動を起こすための交流電圧を電極基板2間に供給するものである。ここでいう交流というのは、正弦波のほか、ほぼ一定の周期で流れの向きを変える電圧のことであり、この双方向の電流の平均値が等しいものである。本実施の形態1においては、誘電泳動のための交流電圧として周波数100kHz、ピーク間電圧(以下、ppと表す)5Vを印加している。もちろん誘電泳動のための交流電圧の周波数と電圧値は前述した値に限られるものではなく、広い範囲から選択することができる。例えば、その値の範囲は周波数で100Hzから50MHzである。しかし、最も効率よく微生物を電極上に誘電泳動できる周波数は、試料液の条件や微生物の種類によって変化する。
実施の形態1においては、詳細は後述するが、口腔内の微生物を精製水に懸濁させた条件の試料液に対して誘電泳動を行うのに適した周波数の一つとしてとして100kHzという値を選択している。また、印加電圧は高いほど誘電泳動力が強くなるが、あまり電圧を高くすると、トラブルの原因となる電気分解や、ギャップ12間に移動した微生物を電気的に破壊してしまう等の現象が生じる。従って、印加電圧は、測定対象となる試料溶液の特徴にあわせて適宜調整するのがよい。ギャップ12間の距離を基準にして20Vpp/μm程度以下にしておくのが好適である。本実施の形態1では、ギャップ12間の間隙を5μmとし、印加電圧を電極間5Vppすなわち1Vpp/μmとしている。
制御部7は、図示しないマイクロプロセッサと、予め設定されたプログラムを保存するためのメモリ、タイマー、そして被験者が測定を指示するための測定開始ボタン等の操作ボタンから構成され、予め設定されたプログラムにしたがって泳動電源部5を制御して薄膜電極2に誘電泳動のための電圧を印加する。また制御部7は測定部6と信号の送受信を行い、適宜制御を行うことで測定動作全般の流れを管理する。さらに制御部7は測定結果や動作状況等を表示部8に表示する。
測定部6は、図示しないマイクロプロセッサ、測定データや演算結果を一時的に保存するためのメモリ、そして電極に印加された電圧、電極間に流れている電流、そして電圧と電流の位相の差(以後位相角とする)を測定するための回路などから構成され、電極のインピーダンス解析を行うための演算ができる。そして電極のインピーダンス解析結果から試料液中の細菌数を算出することができる。この算出方法については後述する。なお、測定部6のマイクロプロセッサやメモリは制御部7のマイクロプロセッサやメモリと共用することができる。
表示部8はLCD等のディスプレィやプリンター、スピーカー等で、評価結果としての口腔内の衛生状態を試料液中の微生物数の形で表示する。表示部8の表示が実施の形態1における口腔内衛生状態検査装置の最終出力となる。本実施の形態1では使用者は評価結果としての口腔内の衛生状態を試料液中の微生物数という定量的な表示で知ることになるが、表示方法としてはたとえばバーグラフ等を用いて半定量的な表現で表示したり、さらに抽象的に○×表示を行ったり、視覚的な表示に加えて(または代えて)音声やそのほかの伝達手段を用いることも自由であり、これら多くの表示方法の中から目的に応じて最適なものを選択すればよい。
さらに、口腔内の衛生状態を調べて自動的に電動歯ブラシの動作モードを切り替えたり、入れ歯の洗浄用薬剤の投入量を制御したり温度設定を変更するなどのように、使用者が直接評価結果を知る必要がなく、口腔内衛生状態検査装置に関連する制御を行う場合は、表示部8に表示を行うことなくそのまま制御を行えばよい。
さて、ここで検査対象である口腔内の微生物とプラークについて説明する。口腔内の主要な疾病、例えばう触と歯周病はいずれも微生物が主な原因の疾病である。この口腔内の微生物の多くはプラーク内に局在している。プラークは口腔内の細菌が増殖によって局所的に固まった状態のものであり、後述する多糖類などの代謝物を除いてそのほとんどが微生物の固まりである。プラーク1g中の微生物の数は、実に10の10乗個から11乗個にも達する。このプラークを口腔内から除去すること(以下、プラークコントロール)が、口腔内衛生を進める上で最も重要なことであり、具体的にはブラッシング法、いわゆる歯磨きがプラークコントロールの主要な手段となる。
さて、う触の原因菌はストレプトコッカス・ミュータンス(以下、SM菌とする)を中心とした菌群、また歯槽膿漏などの歯周病はポルフィロモナス・ジンジバリス(以下、PG菌とする)を中心としたいくつかの菌種によって引き起こされる。そして、これらの菌はプラーク中に存在し、プラークを介して日和見的に疾病を引き起こす。例えば、う触の原因菌であるSM菌は口腔内の食物残査を栄養源としてガム状の多糖類膜を生成しその中で活動する。SM菌は代謝によって酸を生成し、これによって歯牙は溶解し、う触となる。
一方、PG菌は歯周ポケットといわれる歯茎と歯牙間の隙間に生息し日和見的に炎症を引き起こす。炎症が慢性化すると歯槽膿漏などにつながる。歯周ポケットは口腔内が健康な状態でも存在するが、プラークが堆積したり、堆積したプラークが古くなって歯石といわれる状態に移行し、多数の微生物がその中に常在するようになってだんだん深くなっていく。深くなった歯周ポケットの奥は嫌気的な雰囲気となりPG菌等の格好の住処となる。ここでPG菌の繁殖によってますます炎症が進行するという悪循環が生じ、最終的に歯槽骨が破壊され歯が抜けてしまう。
このように、あらゆる口腔内疾病はプラークの存在により発生することが明らかになっているが、プラークコントロールを行うブラッシングは個人個人の我流で行われているというのが実態である。上述した染色による従来の技術では、プラークが確実に除去できているか否かを定性的に、むしろ色彩の印象で判断をしているにすぎず、測定データに基づく判断ではない。従って、口腔内疾病の効果的な予防を行うために、口腔内の衛生状態を高精度に検査する装置が期待される所以である。
続いて、本実施の形態1で利用する誘電泳動についてその説明する。詳細な説明はさらに文献J.theor.Biol(1972)vo1.37,1−13等を参照されたい。高周波の交流電圧を印加すると、これによって発生する交流電界の作用により測定セル1内の微生物は最も電場が強くかつ不均一な部分に泳動される。上述したように、本実施の形態1においては薄膜電極2のギャップ12が最も電場が強くかつ不均一な部分に該当する。このときに微生物の誘電体微粒子としての双極子モーメントをμとすると、誘電泳動力Fは電場Eとの間に(数1)の式1の関係が存在する。
さらに、微生物の細胞質の比誘電率をε2、微生物を含んでいる液体の比誘電率をε1、微生物を球体と見なしたときの半径をa、円周率をπとすると、誘電泳動力Fは(数2)の式2のように書き換えることができる。
式2は誘電泳動による力が電位勾配、媒質と誘電体微粒子としての微生物の比誘電率の差などの影響を受けることを示している。
さて、図2に示すギャップ12は櫛歯状の薄膜電極2が対向している部分である。ギャップ12付近に浮遊する微生物は、ギャップ12間に生じるこのような電界作用によってギャップ12に引き寄せられ、電気力線に沿って整列する。このとき、ギャップ12付近の微生物の整列状態は、試料液体中に存在する微生物数とギャップ12の間隔に依存するが、十分に微生物数が多いときにはギャップ12が微生物が鎖状に繋がって架橋されるほどになる。そして、当初からギャップ12付近に浮遊していた微生物は直ちにギャップ12部分へ移動し、ギャップ12から離れたところに浮遊していた微生物は距離に応じて所定時間経過後にギャップ12部に到達するため、所定の時間後にギャップ12付近の所定領域に集まっている微生物の数は測定セル1内の微生物数に比例する。この比例関係を基に試料中の微生物数を算出することができる。
実施の形態1においては、誘電泳動を生じさせるために交流の電界を用いているが、この交流印加の条件下では、誘電率εは複素誘電率ε'で表され、導電率σの影響を受ける。例えば、微生物を含んでいる液体の複素誘電率は液体の導電率σ1との関係において(数3)の式3のようになる。
今、微生物を含んでいる液体の導電率σ1が高くなる方向に変化した場合について考えてみると、複素誘電率で考えた式2に中の項(ε1−ε2)/(ε1+2ε2)(claucius−Mossoti式と呼ばれている)の値が非常に小さくなり、誘電泳動力Fの値は小さくなる。そして、その結果微生物を電極付近に集めることができなくなり、測定感度は低下することになる。液体の導電率σ1を決定するのはほとんどが液体中に溶解している導電性物質イオンであるので、液体中からイオンを除去してやれば液体の導電率σ1は低下し、その結果誘電泳動力Fが増大して感度が向上することになる。
ところで、本実施の形態1におけるギャップ12の間隔は5μmに設定されているが、この値に限定されるものではない。ギャップ12の間隔は測定対象となる試料溶液中の微生物の種類や濃度に応じて調節されるのが望ましく、実施の形態1では、口腔内の微生物種を対象とした最適測定条件を本発明者らが鋭意検討した結果5μmという値を設定している。この値は試料溶液の特徴に合わせて0.2〜300μmの範囲で適宜調節されることが望ましい。
以下、試料の採取から試料液中の微生物の測定、口腔内の衛生状態評価にいたるまでの一連の流れ、手順を説明する。まず、口腔内から試料を得ることが必要である。被験者の口腔内から得られる試料はいくつかの種類が考えられる。それは、第1に唾液や唾液を染みこませた布状のもの、第2に歯牙や舌や口腔内壁を拭った布や綿棒、そして第3に歯間からピック状のもので掻き取られた試料などである。
試料はその由来によって様々な情報をもたらす。例えば、第1の試料である唾液は、口腔内の総合的な衛生状態を評価するに適した試料であるといえる。唾液は口腔内に数カ所ある分泌線を出て口腔内を洗いながら広がっていく課程で口腔内の微生物を溶かし込む。この唾液中の特定の細菌の数と、う触の間には相関関係が存在することが従来から解明されており、サリバテストと呼ばれる一連のカリエスリスクテスト(う触危険度テスト)中で、培養法による菌数計測が行われていることからも分かるように、唾液内の微生物を調べることで口腔内全体の衛生状態を評価することができる。
また、第2の試料の歯牙表面などを拭った試料や歯間から得られた試料は、採取した局所部位の衛生状態を反映している。上述したように歯牙表面や歯間には微生物はプラークを形成して存在しているため、試料採取部位にプラークが付着していた場合には試料中微生物数は大変多いものになる。このため測定は比較的容易である。
このように口腔内の衛生状態を評価するには、例えば唾液を用いても、歯牙表面などを拭った試料を用いても、どちらでもよいが、実施の形態1においては歯牙表面を綿棒で拭ったものを試料としている。具体的に本実施の形態1での試料採取は、被験者自らが綿棒を手に持ち測定部位の歯牙表面をこすることで行う。歯牙表面をこする回数や力はあらかじめ決めておけばよい。特定の歯牙表面から試料採取を行えばその部位のみの衛生状態が、また全体的に採取を行うと口腔内の状態が総合的に判定されることになる。もちろんサンプリング部位が多くなるとそれだけ試料中の微生物の絶対数も多くなっていくので、測定を行う前にどのパターンや条件で評価を行うのかをあらかじめ決めておき、それに従った試料採取を行う。実施の形態1における口腔内衛生状態検査装置はいくつかのパターンでの測定評価に対応したプログラムがあらかじめ内蔵されており、適宜被験者が測定パターンを選択できるようになっている。以下、歯牙表面を綿棒でふき取った一つの試料を測定する場合を説明するが、前述したように試料の形態および試料数は評価の目的にあわせて都度選択されるべきものである。
さて、試料採取を行う一方で、口腔内衛生状態測定装置は測定評価のための準備を行う。まず測定セル1内には試料を懸濁させるための液体が満たされる。懸濁媒としては様々な液体を用いることが可能である。例えば、水、油類、エタノール等のアルコール類、アセトン、DIMSO、フラン、その他有機溶剤等およびこれらの混合物を懸濁媒として使用することができる。実施の形態1では、試料が水溶性のものであること、また入手が容易であることから懸濁媒に精製水を使用している。水道水等も測定に供することは可能であるが、地域によって溶解物のばらつきが大きいこと、また井戸を水源とするものの一部には導電率が非常に大きなものがあることから本実施の形態1では採用していない。
測定セル1内に懸濁媒としての精製水を満たした後、図示しない電源部スイッチを投入する。電源部が投入されると、制御部7は測定前の準備動作を行う。まず、精製水が正常な状態であることを確認するために、制御部7は泳動電源部5を制御して薄膜電極2に周波数100kHz、電圧0.1Vppの交流を印加し、これと同時に測定部6を制御して印加している電圧、回路に流れている電流、そして位相角を測定する。測定部6は、この結果を演算して精製水の導電率を算出する。導電率算出の過程の詳細は省略するが、まず後述するインピーダンス解析から薄膜電極2間の導電率を算出し、ついでその値を精製水の導電率に換算する。薄膜電極2間の導電率は精製水の導電率と比例するので、算出された電極間導電率に電極形状で定まる係数をかけるだけで精製水の導電率を算出することができる。
ところで、上述したように試料液の導電率があまりに高いと測定の精度が低下するので本実施の形態1においては測定を行う試料液の導電率に一定の制限として10mS/mという値を設けている。制限を設ける理由は、一つにはイオンによる上述した誘電泳動の特性を鑑み測定に一定の精度を確保するためであり、今ひとつは電極を電気分解によるダメージから保護するためである。仮に測定試料が非常に大きな導電率を持っていても、薄膜電極2が電気分解から守られるように最初に印加される電圧は0.1Vppと低めに設定しておけば、電極が電気分解でダメージを受けることはない。ただ、10mS/mという値は限定的なものではなく、条件に応じて適宜設定されるべきものである。
さて、精製水の導電率が10mS/m以下であることが確認されると、制御部7は表示部8を制御して測定準備が完了したことを被験者に知らせる。これにより、測定動作のすべてが終了したことになる。
測定準備が完了すると、被験者は測定試料としての歯牙表面を拭った綿棒を測定セル1内の精製水に浸漬して、綿棒に付着した微生物を精製水に懸濁させる。このとき、綿棒をゆらしたり、壁面にこすりつけたり、あるいは回転子3を回転させて測定セル1内に水流を起こすなど懸濁を促進する処理をすることが望ましい。これらによって測定用の試料液が作製される。
試料液ができると、被験者は図示しない測定ボタンを押して装置に測定開始を指示する。測定開始の指示を受け、制御部7は薄膜電極2に周波数100kHz、電圧0.1Vppの交流電圧を印加する。同時に測定部6を制御して印加中の電圧、回路に流れている電流、位相角を測定し、試料液の導電率を測定する。口腔内の状態によっては試料液の導電率が10mS/mを超過することがあるが、この場合、制御部7が試料液の導電率が高すぎる旨のエラーメッセージを表示して、被験者に対して、試料液を希釈して導電率を下げるか、または試料液を再度作製するか等の作業を促す。試料液の導電率が10mS/m以下であることが確認されると、本測定がスタートする。
まず、制御部7は測定電極に周波数100kHz、5Vppの交流電圧を印加する。これとともに電流と位相角の測定を始める。実施の形態1においては、測定データは3秒おきに採取され、その度に演算されて結果が測定部6内の図示しないメモリに蓄積されていく。以下、データが採取され演算されてからメモリに蓄積されるまでの過程を説明する。
測定部6が収集するデータは印加された電圧、電流、位相角の3つである。測定部6はこれら得られた測定結果から、薄膜電極2間に想定される等価回路を後述する抵抗と静電容量からなるCRの並列回路であるとみなしたときの抵抗成分の値を計算し、最終的に薄膜電極2間の電導度を算出する(以下、薄膜電極2間の電導度をコンダクタンスと表現する)。
コンダクタンスを求めるためには、まず薄膜電極2間のインピーダンスを求め、このインピーダンスに対して後述する位相角を加味した演算を行う。インピーダンスは印加電圧と電流の除算で求めることができる。コンダクタンスの算出はやや複雑であるが、インピーダンスを測定のための電圧と電流の位相の差を角周波数の角度差で表現した値(以下、位相角という)を使って複素平面上に極座標表現し、これを解析することで算出することができる。以下、インピーダンスをZ、静電容量をC、リアクタンスをx、レジスタンスをrとして、図3、図4と(数4)〜(数8)の式4〜8を用いて詳細に説明する。
(数4)はCR並列等価回路の合成インピーダンスを表す式4、(数5)はCR並列等価回路のレジスタンス表す式5、(数6)はCR並列等価回路のリアクタンスを表す式6、(数7)はCR並列等価回路の抵抗値を表す式7、(数8)はCR並列等価回路の静電容量値を表す式8である。
図3(a)は電極間の電気的状態を等価回路で示したものである。図3(a)において、50は薄膜電極2の一方の極、51は薄膜電極の他方の極、52は等価回路における等価的な静電容量成分を表すコンデンサ、53は等価回路における抵抗成分を表す電気抵抗である。また、図3(b)において、54は時間軸、55は波形の振幅を表す軸、56は印加される電圧波形、57は回路を流れる電流の波形である。
測定開始直後のギャップ12の間には微生物を含んだ試料液が存在しており、誘電泳動によって微生物が電極間のギャップ12に移動する前には、試料液を電極間誘電体として構成されるコンデンサ52と試料液による電気抵抗R53が並列に電極50と51間を結んでいると考えられる。そして、誘電泳動によって微生物が移動した後は、後述するように微生物体が誘電体微粒子としてふるまうために、コンデンサ52と抵抗R53の絶対値は変化するが、等価回路の接続形態は変わらない。以下、この等価回路をCR並列回路と呼ぶ。
このようなCR並列回路に交流電圧を印加すると、回路に流れる電流57と印加した電圧56の間に図3(b)に示すような位相の差が現れることが一般に知られている。位相差を印加した電圧の周波数を角周波数ωであらわしたときの角度差θを用いて複素平面上に極座標表示すると、電圧、電流、位相角の間には図4に示す関係がある。
インピーダンスZは測定される印加電圧と電流の除算で得られ、図4に示されたベクトルの絶対値に相当する。この時、インピーダンスZはZ=r+jx(jは虚数単位)の形で表現することができ、レジスタンスrはr=Zsinθとして図3(a)に示されたCR並列回路の合成インピーダンスの電気抵抗成分、リアクタンスxはx=Zcosθとして同回路の静電容量成分の逆数に関連付けられる。
一方、図3(a)のCR等価回路の合成インピーダンスは(数4)の式4で表現され、式4をZ=r+jxの関係からレジスタンスrとリアクタンスxに分解して(数5)の式5と(数6)の式6を得る。式5と式6を連立させて変形すると(数7)の式7と(数8)の式8を得る。
式7及び式8に測定のための電圧値、その時の電流値、電圧と電流の位相角の測定値から演算したr、x、ωを代入することにより等価回路における電気抵抗R53とコンデンサ52を知ることができる。得られた電気抵抗成分の逆数をとることで電極間のコンダクタンスを得ることができる。
このような演算で行って得られたコンダクタンスの値は、測定を行った時間または測定を行った順番を表す値と共にメモリに記録されて、一点のデータ採取に関する作業が終了する。その後、予めプログラミングされた所定の回数のデータ数を採取し、測定部6は蓄積されたコンダクタンスのデータ解析を行う。コンダクタンスのデータ解析は、時間経過に伴うコンダクタンスの変化の傾きの値を求めることである。
コンダクタンスの時間変化の傾きを求める方法は、得られたデータに対して最小二乗法で求められる直線近似を行うのが最も簡単である。微生物の濃度が高く、時間経過に伴ってコンダクタンスの変化の傾きが次第に小さくなっていくような曲線の場合でも、採取したデータ全体ではなく、初期の一部のデータを取り出して接線で直線近似すればよい。データ全体では曲線であっても、必要なのは初期のコンダクタンス変化の傾きである。このような微生物濃度が高い試料では、測定毎のコンダクタンス変化が大きく、はっきりとしたノイズの少ない測定結果を与えるので、初期の一部のデータだけでも十分な精度で傾きを算出することができる。
さて、なぜコンダクタンスの時間変化の傾きを測定すれば微生物数を算出することができるかというと、上述したように微生物は電気的には抵抗と静電容量の並列接続された素子として等価的に表現することができるからである。これは微生物がイオンリッチで比較的電気伝導率が大きな細胞壁と、リン脂質からなり電気伝導率の小さな細胞膜に囲まれていることに起因する。誘電泳動によりギャップ12に移動する微生物によってギャップ12が架橋されると、微生物を介して薄膜電極2間に電流が流れるようになる。ギャップ12へ泳動される微生物の数が増え、微生物による架橋の数が増えると薄膜電極2に流れる電流が増加するから、薄膜電極2間のコンダクタンス変化を測定すればその値はギャップ12付近に移動してきた微生物数、ひいては試料液中に存在する微生物数に相関した測定結果を得ることができるのである。このようなコンダクタンスの時間変化の一例を示したのが図5である。図5から、測定初期のコンダクタンスの時間変化の傾き(勾配)もコンダクタンスの時間変化と同様に、微生物数に対応して増加しているのが分かる。
コンダクタンスの時間変化で微生物数を算出する場合、過渡状態が経過して平衡状態になってからコンダクタンスを測定することも考えられるが、この場合どうしても時間が長くかかる。しかし、測定初期のコンダクタンスの時間変化の傾き(勾配)で微生物数を算出する場合は、比較的短時間で微生物数を算出できるという優れた特徴を有している。
さて、最終的に試料液中の微生物数を表示するためには、コンダクタンスの時間変化の傾きと試料中の微生物数の変換式が必要である。この変換式は、実際に口腔内から得られた試料で作製した試料液を、本実施の形態1で説明した口腔内衛生状態検査装置の測定系と、培養法などの従来から微生物数の測定法として確立している方法を用いて、双方の測定方法で同時に測定し、従来の確定した方法で測定した微生物数とコンダクタンスの時間変化の傾きの間の相関関係を回帰分析し、その結果得られる関数をもちいる。発明者らは測定を繰り返し、鋭意検討した結果、口腔内に存在する微生物の種類には個人差があるが、上述した二つの測定方法の間にはきわめて良好な相関関係が存在する、との知見を得ている。その一例を図6に示す。図6のグラフによれば、例えば、測定によってコンダクタ
ンス変化の傾きが0.1と出た場合には、試料液中の微生物数は1ml当たり10の7乗近傍と算出することができる。このような相関関係を変換式としてプログラミングし、測定部6のメモリに記憶させることによって、微生物数が未知の口腔内試料を測定する場合にも、コンダクタンスの時間変化の傾きの値を代入することにより試料液中の微生物数を算出できる。
さて、口腔内に関する個人の臨床的な性質には差があり、微生物数が比較的多くても口腔内疾患に全く縁がない人から、その反対に口腔内は比較的清潔であると思われるにも関わらず、う触等から逃れられないという人まで様々である。しかし、どのような体質の人であれ、歯牙表面のプラーク付着はない方が衛生的という点では違いはない。そこで、実施の形態1で測定される微生物数は、歯科医師など専門家の指導によって1度でよいから、正確に個々の被験者に応じた口腔内衛生状態の評価をしてもらい、その後はその評価に従って微生物数をカウントし健康増進を図るのが望ましい。
以上説明したように、試料液中の微生物数を測定し表示部8に表示を行ってすべての測定動作が終了する。被験者は試料液を捨て、再測定する場合は同様の手順で次の測定を行えばよい。このように本実施の形態1では、きわめて簡易な方法で、試薬であるとか特別な装置や訓練を必要とすることなく、客観的に被験者自らの口腔内の衛生状態を調べることが可能な機器を提供することができる。
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2における口腔内衛生状態検査装置と口腔内衛生状態検査方法について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、実施の形態1と重複する部分の説明については実施の形態1に譲り説明を割愛する。図7は本発明の実施の形態2における口腔内衛生状態検査装置の全体横成図である。
図7において、40は測定セル、41は薄膜電極、42は回転子、43はスターラー、44は泳動電源部、45は測定部、46は制御部、47は表示部、48は隔膜、49はイオン交換樹脂である。
実施の形態2の口腔内衛生状態検査装置が、実施の形態1の口腔内衛生状態検査装置と最も異なるところは測定セル40の構成であり、以下、実施の形態2が実施の形態1と異なる部分について説明を行う。実施の形態2における測定セル40内部は、隔膜48によって機能的に2室に分割されている。実施の形態2における隔膜48はニトロセルロース製のメンブレンフィルタであり、その細孔径は0.45μmである。隔膜48はイオンなどの微細なものは通すが、微生物が通過できない程度の細孔径を持つものであれば利用することが可能である。また、実施の形態2においては隔膜48という形で表現しているが、透過/非通過を選択的に可能にするものであれば形状はとくに制限されるものではない。
本実施の形態2におけるイオン交換樹脂49は、陰イオン交換樹脂と陽イオン交換樹脂の混合物である。陰イオン交換樹脂はOH型、陽イオン交換樹脂はH型が用いられる。陰陽それぞれのイオン交換樹脂49は、試料液中の陰陽イオンをOH-イオンとH+イオンに交換することで試料液の導電率を低下させるものである。実施の形態2におけるイオン交換樹脂49が、本発明における試料液の導電率を調整する導電率調整部に相当する。
以下、本実施の形態2における口腔内衛生状態測定装置の一連の動作と手順を実施の形態1と異なる点につき重点的に説明する。口腔内からの試料採取後試料を精製水に懸濁させ試料液を作り、測定開始ボタンを押すことによって制御部46まず試料液の導電率を測定する過程までは実施の形態1と同様である。
実施の形態1においては、測定開始前の試料液の導電率が10mS/mを越えていると判断した場合には、エラーを表示して試料液を測定可能な導電率になるまで希釈するか、または試料を作製し直すことを行わない限り測定を進めないような処理を行った。しかし、本実施の形態2では10mS/mを越えていた場合でも測定を継続する。なお、10mS/mという値は試料と測定系の組み合わせによって適宜決定されるべきものである。
さて、制御部46は測定開始前の導電率が10mS/mを越えていると判断した場合には、直ちに測定を開始するのではなく、予めプログラムで設定されている所定時間測定開始時間を遅延する処理を行う。そして、所定時間経過後に再度試料液の導電率測定を行い測定の可否の判断を行う。制御部46が測定開始を遅らせている間に、測定セル40内ではイオン交換樹脂49によって試料液の導電率が低減される。以下、遅延処理について説明する。
口腔内からの試料には多数の含有イオンが含まれるが、その多くはナトリウムイオンと塩化物イオンであり、この2つのイオンを例にあげて、導電率低減に至る挙動を説明する。他にも陰陽イオンが試料液中には存在しているが、その挙動はこの2つのイオンと同様である。
測定セル40内に満たされた精製水中に試料が懸濁されると同時に、精製水中にナトリウムイオンと塩化物イオンが溶解・拡散していく。濃度勾配によって拡散したナトリウムイオンと塩化物イオンは、容易に隔膜48を抜けてイオン交換樹脂49と相互作用し、イオン交換が生じる。ナトリウムイオンは陽イオン交換樹脂のH+イオンと交換され、塩化物イオンは陰イオン交換樹脂のOH-イオンと交換される。イオン交換によって試料液中に放出されたH+イオンとOH-イオンは直ちに結合して水分子となる。イオン交換樹脂49近傍のナトリウムイオンと塩化物イオンは、イオン交換によってイオン交換樹脂49に捕捉されてしまい、イオン交換樹脂付近のナトリウムイオンと塩化物イオンの濃度が低下する。その結果測定セル40内でナトリウムイオンと塩化物イオンの濃度の不均衡が生じるため、濃度勾配に従って新たなナトリウムイオンと塩化物イオンがイオン交換樹脂付近に移動してくる。その後同様のことが繰り返され、測定セル40内のナトリウムイオンと塩化物イオンの濃度は次第に低下していく。
イオン交換によって放出されるH+イオンとOH-イオンは結合した後もほとん
ど解離することなく、水分子として結合を保つため結果として測定セル40内の試料液の導電率は低下していく。イオン交換樹脂近傍のイオンと樹脂とのイオン交換反応は瞬間的に終了するため、ナトリウムイオンと塩化物イオンの初期濃度が高いほど大きな濃度勾配が生じる。大きな濃度勾配はそれに比例した物質移動(移動するナトリウムイオンと塩化物イオンの絶対量)を招くので、結局測定セル40中のナトリウムイオンと塩化物イオンの初期濃度が大きいほど急激に濃度低下、すなわち導電率の低下が生じる。このとき懸濁液中の微生物は、隔膜48を通過することができないため測定セル40内の隔膜48で隔てられた電極側にとどまり測定の効率を低下させることがない。
さて、制御部46が測定開始を遅らせている間に、この濃度調整が終わり、所定時間経過後に試料液の導電率を再び測定したとき、測定開始条件を満たしていればそのまま測定を実行する。上述したように試料液中のイオン濃度が高く、試料液の導電率が高いときにはイオン濃度の変化が急激に起きるが、試料液の導電率が10mS/m程度まで低下してくるとイオン濃度の変化も緩慢になり、10mS/m以下では測定中の導電率の変化は事実上無視できる程度になる。
実施の形態2では、試料液の導電率を変化させる導電率調整部としてイオン交換樹脂49を使用したが、同様の目的を達成するための導電率調整部は他のものでもよい。例えば、透析を用いる調整である。試料を懸濁した試料液を、半透膜を介して蒸留水などの低イオン濃度の液体と接触させる。すると、半透膜の内外でのイオン濃度の勾配によって試料液中のイオンは半透膜を介して蒸留水側に拡散していく。蒸留水の量が試料液の量に対して十分に多いときには試料液中のイオンはほとんど蒸留水側に移行し、結果として試料液中のイオン濃度が低下する。このとき、蒸留水を流すなどして、常に試料液との間に大きなイオン濃度の勾配を保つような工夫を行うことで、迅速に試料液中のイオンを除去することができる。このように試料液中のイオン濃度を低下させ、試料液の導電率を低減する口腔内衛生状態検査装置は実施の形態2で説明したものに限られない。
ところで、実施の形態2においては、測定部45は最終的に測定を行った試料液の導電率、すなわち試料液の導電率が10mS/mを下回ったという判断を行った後に測定した導電率をメモリに保持し、後述する微生物数算出時の補正のための準備を行う。誘電泳動による微生物の電極への捕集と、インピーダンス変化を用いたコンダクタンスの傾き算出までの過程は、実施の形態1と同様であるので実施の形態1に説明を譲って割愛する。
測定部45はコンダクタンスの傾きが得られた後に、以下の考え方に従って試料液の初期導電率によるコンダクタンス変化の傾きに補正を加える。以下に図8を用いて試料液の初期導電率によるコンダクタンス変化の傾き補正(以下、傾き補正という)の説明を行う。図8(a)は低イオン濃度における誘電泳動力と泳動のための電圧の周波数の関係を説明するためのグラフ、図8(b)は高イオン濃度における誘電泳動力と泳動のための電圧の周波数の関係を説明するためのグラフ、図9は印加周波数100kHzにおける資料導電率と規格化された誘電泳動力との関係を表すグラフである。
さて、すでに実施の形態1において(数2)の式2を引用し試料液の導電率σ1と誘電泳動力Fの関係の説明を行った。この中の項(ε1−ε2)/(ε1+2ε2)(claucius−Mossoti式と呼ばれている)を周波数に対してプロットしたのが図8(a)と図8(b)である。ここで、εは復素誘電率であり、例えば(数3)の式3で表現されることは既に説明したとおりである。上述した(ε1−ε2)/(ε1+2ε2)の値は、誘電泳動力Fの大きさを表す(数2)の式2の中の項であり、その値が正で大きいほど誘電泳動力も強くなることが分かる。また、値が正の時は誘電泳動力は引力として作用するが、値が負になると誘電泳動力は斥力として作用することもわかる。
図8(a)と図8(b)では試料液の導電率が異なっており。導電率は図8(b)の方が図8(a)より大である。図8(a),(b)の2つのグラフから分かるように、試料液の導電率が大きくなると誘電泳動が引力として作用する周波数の範囲は狭くなり、値も小さくなっていくことが分かる。本実施の形態2では、微生物数を電極上に移動させ測定するために引力を使用していることから、試料液の導電率が大きくなると感度が低下する。このときの試料液の導電率と、誘電泳動力の強度の関係を印加周波数100kHzにおいてグラフ化したものが図9である。図9のグラフの縦軸はイオン濃度が非常に小さな純度の高い水で生じると期待される誘電泳動力を1として導電率が変化した場合の誘電泳動力を規格化したものである。以下、図9に点線で示した値を例にして試料液の初期導電率によるコンダクタンス変化の傾きの補正を説明する。
図9において、点線で示した導電率の値は5.2mS/mである。このとき誘電泳動力は、イオン濃度が非常に小さな純度の高い水で生じると期待される値の、ちょうど半分の0.5になる。誘電泳動力が半分になることで一定時間内に電極上に移動してくる微生物数が減少し、コンダクタンス変化の傾きも半分になる。従って、試料液の導電率の補正を行わないと、導電率の影響で算出される微生物数が半分になり、最終的な口腔内の衛生状態の判定結果が不正確になる。そこで、採取されたデータから計算されるコンダクタンスをそのままプロットして得られる傾きに1/0.5を乗算して補正を行う。これにより、試料液の導電率が高い条件下で測定したにも関わらず、イオン濃度が非常に小さな純度の高い水で測定したときと同じ傾きに換算することができる。このような方法により、10mS/m程度以下までの試料液で測定されたコンダクタンス変化の傾きであれば、補正が可能である。試料液の導電率が10mS/mを越えると、補正値がマイナスになってしまい計算結果が不正になるが、この領域は現象的には誘電泳動力Fが0であるかまたは斥力を及ぼす領域であり、予め試料液の導電率を測定することによって、導電率が10mS/mを越えている場合は測定を行わないようにすれば、計算結果が不正になることはない。
実施の形態2で説明したように、試料液の導電率を調整する機構とコンダクタンスの傾きの値を試料液の初期導電率の値で補正することで、そのままでは測定が不可能であるか、または評価結果が不正確になるような場合であっても正しい評価を行うことができる口腔内衛生状態検査装置を提供することができる。
(実施の形態3)
本発明の実施形態3の口腔内衛生状態検査装置と口腔内衛生状態検査方法について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、実施の形態1と重複する部分の説明については実施の形態1に譲り説明を割愛する。図10は本発明の実施の形態3における口腔内衛生状態検査装置の全体横成図である。
図10において、21は口腔内試料を懸濁させた試料液を保持するためのセル、22は光源、23は光源側光学系、24は受光器、25受光側光学系、26は測定部、27は表示部、28は制御部、29は光源からセル21内に入射した光束、30はセル21内の微生物によって散乱された散乱光である。
実施の形態3のセル21は、試料液を導入/排出するための開口部を有するとともに、測定のための光束29をセル21内に導入し散乱光を検出する透明な開口部を有している。ここで透明な開口部というのは、測定波長において光学的に透明と評価される開口部という意味である。実施の形態3においては、セル21は一般的なガラス製の容器を用いている。光源22は、半導体レーザや発光ダイオード(LED)が小型で消費電力も少ないため望ましい。しかし、受光器の検出波長範囲と組み合わせることで、白熱電球、蛍光管、キセノンやナトリウム等のガスを封入した発光管等でも使用可能である。ただ、実施の形態3においては構成が簡単になるため、発振波長660nmの半導体レーザ(以下、LDという)を使用している。またLDからの照射光はセル21の中央部で、試料液深さのほぼ中央の部分を横切るように設定されている。
実施の形態3における光源側光学系23は、光源22としてLDを使用しているため光束29が特定方向に強力に放出されるから、これをそのままセル21に入射して測定すればよい。従って、とくに光学系を設ける必要がないのであるが、実施の形態3ではビームの断面形状を整えるためのシリンドリカルレンズや、光束29の広がりを制御するコリメーターレンズを使用している。光源22が白熱電球などの場合には、光源側光学系23は上記の構成に加えて反射鏡やスリット、波長の選択透過フィルタなどを設ける必要があり、やや複雑なものになる。
受光器24は一般的なフォトダイオード(以下PDとする)が使用される。受光器24に関しては様々なタイプのものが広く知られており、使用可能な受光器24は多い。上述したように受光器24は光源22側の特性に合わせて選択されればよい。また、このことは受光側光学系25についても同様のことが言え、光源22および受光器24の組み合わせによって様々な光学系を使用可能である。実施の形態3においては、受光側光学系25には詳細に図示しないがセル21内の光束29からの散乱光30をPDに集光するためのレンズが設けられている。
以上説明したセル21および光学系は、外部からの迷光による測定誤差を避けるために、全体が外部からの光を遮断することができる容器内に収納されている。測定部26には図示しないマイクロプロセッサ、メモリ、光源22用のLDドライバ回路、PDからの信号を増幅して検出する検出回路等が備えられており、散乱光30の強度を検出して微生物数を定量検出し、さらにその結果を口腔内の衛生状態の評価へと換算することができる。
表示部27は、本実施の形態3における最終出力としての口腔内の衛生状態の評価結果を被験者に知らしめるための表示を行う。表示の形態については既に実施の形態1において説明を行ったので割愛する。また、本実施の形態3における口腔内衛生状態検査装置の評価結果を他の機器の制御のために用いる場合はとくに表示を行う必要がない。一連の動作は制御部28によって制御される。
さて、実施の形態3における一連の測定動作と手順を以下に説明する。試料の採取については実施の形態1と同様であるので割愛する。実施の形態3における試料の懸濁媒は、散乱光を測定するという原理上微粒子やこまかな泡など光を散乱してバックグラウンドを高めるノイズ成分が混入していないようにすることに注意を払う必要がある。その組成については実施の形態1で説明したような液体が使用可能である。また、実施の形態1と異なり懸濁媒がイオンを含むものであっても測定に支障がない。
実施の形態3においても、試料の性質上懸濁が容易であるという理由で、懸濁媒に精製水を使用している。イオンを含んでいても問題ないので、精製水でなくとも一般の水道水も使用可能であるが、微粒子の混入についてばらつきがあることが懸念されるため精製水としている。さらには測定前に精製水を0.22〜0.45μm径のフィルタで濾過することができれば測定の精度を向上させる意味で望ましい。
試料の精製水への懸濁も実施の形態1に同様である。図10にはセル21内を攪拌する機構を設けてはいないが、攪拌や超音波振動など、試料の懸濁を助けるような流動促進手段をセルに設けることが望ましいのはいうまでもない。セル21内に試料液が準備されると、被験者は図示しない装置の電源部スイッチを投入し、やはり図示しない測定開始ボタンを押して装置に測定開始を指示する。測定開始の指示を受け制御部28は測定部26を制御して光源22を点灯させる。以下、制御部は各部と連携しながらメモリ上にあらかじめ保存されたプログラムに従ってスムーズに測定を進めていく。
光源22の点灯後、測定部26は受光器24からの信号を検出する。実施の形態3における光源22のLDの波長は660nmであり、測定対象の比較的小さな細菌でも1μm程度の大きさであるから、光束29の通過する光路上にこれら微生物が存在すると光束29の一部が散乱される。散乱された光の一部は受光側光学系25に備えられた図示しないレンズによって集光され受光器24に導かれる。受光器24としてのPDに入射した散乱光はPDによって電気信号に変換され測定部26によって検出される。
受光器24としてのPDからの出力電圧は入射した散乱光量に応じて変化し、散乱光量は光束29上に存在する微生物の数によって変化するため、PDの出力電圧を検出することで測定部26は光路上に存在する微生物の数を測定することができる。
光路上の微生物数はセル21内に満たされた試料液中を浮遊している微生物の平均的な数を反映しており、光路上の微生物数から最終的に試料中の微生物数を算出することが可能になる。ここで、光を散乱するのは微生物ばかりではなく、口腔内に存在する食べカスや懸濁時に混入した泡なども同様であり、これらは微生物に対して非常に大きいので大きなノイズとして検出されてしまう恐れがある。これを防ぐために実施の形態3では、測定開始後から予め設定された所定時間連続して測定を行い、散乱光の時間変化を監視する。時間経過とともに、食べかすなどの大きな浮遊物は迅速に沈降してセル21の底部に堆積し、また気泡は浮力によって浮上しセル上部の液面近傍へ移動するが、微生物は、ブラウン運動の影響を受けて容易に沈降せず、また浮上することもないため一定時間経過後した後には散乱光はほぼ微生物に依存したものだけになる。測定部26は散乱光が一定時間大きな変動が無くなったことを確認した後、その時点での値を測定結果として微生物数の算出を行う。
散乱光強度からの試料液中の微生物数の計算は、実施の形態1で説明した方法と同様、本実施の形態3で測定した試料液をそのまま培養法等の既に確立した微生物数の測定法で追試験し、それらの結果の相関性を関数化またはテーブル化して演算/参照することによって算出する。微生物数を最終出力である衛生状態の評価へ換算する部分も実施の形態1に同じであるので割愛する。評価結果を表示部27に表示し、被験者にその結果を知らしめることで一連の測定動作を終了する。
ここで、本実施の形態3では光束29が貫くセル21内の光路上に存在する微生物に起因した散乱光を測定することによって微生物数を算出し、最終的に口腔内の衛生状態の評価結果に結びつける実施の形態を説明したが、測定は散乱光だけでなく透過光によっても行うことができる。上述したように、光束29が貫く光路上に微生物が存在すると、光束29の一部は散乱される。光束29の一部が散乱されるということは散乱点以降の光束29の強度は散乱光の分弱くなるということであり、つまりは散乱光が多ければ多いほど、すなわち試料液中の微生物数が多ければ多いほど透過光の強度は低下していく。
従って、散乱光と透過光の測定を行うことは同じ現象を表裏に評価することであり、測定系の構成を変更すれば透過光を測定しても実施の形態3と全く同様の考え方で試料液中の微生物が測定できる。光源22と受光器24を直線上に対向して配置することで容易に実現できる。散乱光の場合は微生物数が増加すればするほど受光部で検出される光量が増加し、透過光の場合は減少する。透過光の減少分を散乱光の強度測定結果と同様の取り扱いで処理すれば試料中の微生物数、ひいては口腔内の衛生状態の評価を行うことができる。
このように口腔内から得られた試料を液体に懸濁した試料に対し光を用いた測定を行うことでも口腔内の衛生状態を評価する装置を実現することができる。
(実施の形態4)
本発明の実施形態4の口腔内衛生状態検査装置と口腔内衛生状態検査方法について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、前述した他の実施の形態と重複する部分については説明を割愛する。図11は本発明の実施の形態4における口腔内衛生状態検査装置の全体構成図である。
図11において、60は試料を収容することができる密閉可能なセル、61はセル60内に配置されたガスセンサ、62は測定部、63は表示部、64は制御部、65は口腔内から採取された試料を含む冶具である。
セル60は内部にガスセンサ61を備え、試料の出し入れをするための開閉部を備えている。セル60は開閉部によって密閉され、測定時は外部との間に空気の出入りができないようになっている。セル60はそれ自体が揮発性物質を含まないようにガラスの容器を採用している。プラスチック等の材料でもよい。また、本実施の形態4では採用していないが、より高感度な測定を行うためには、セル60全体をヒーター等の手段で加熱すると良い。加熱によって試料からの物質の揮発がより活発になり、加熱していない時に比較してセル60内の揮発性物質の濃度が高まることで結果的に高感度な測定を実施することができる。
実施の形態4においては、ガスセンサ61は、酸化スズなどを焼結した酸化物セラミックスからなるセンサ本体と、図示しないがセンサ本体を加熱し測定を安定して行うためのヒーターを備えている。セル60内の揮発性物質にセンサ本体が感応すると、セラミックスに接続された電極間の特性が変化し、電流の形でその変化を外部に取り出すことができる。ガスセンサ61はセル60内の揮発性物質に感応すればよく、他の構成のこのでも構わない。既に多数の方式、材料組成からなるガスセンサ61が提案されており、それらの中から本発明の目的に適うものを適宜選択して使用することができる。さらに、ガスセンサ61に搭載されるセンサ本体は1種類に限定されるものではなく、複数の種類のガスセンサを同時に搭載し、同時に稼働させることもできる。
測定部62は、ガスセンサ61を使ってセル60内の揮発性物質を測定するために必要な回路を備えている。例えば、センサ本体を加熱するために用いるヒーター用の電源回路、センサを流れる電流を検出するための検出回路、電流値を基に演算を行うための演算回路等である。こうした回路はプログラム的にマイクロプロセッサで構成するのがよい。このほか、演算結果を一時的に保存するためのメモリ等も設けられる。
制御部64と表示部63の構成とその動作は、実施の形態1で既に説明した制御部7および表示部8と基本的に同一であるので説明を省略する。口腔内から採取された試料を含む冶具65は、本実施の形態4においては実施の形態1同様の綿棒を用いている。
ここで、口腔内の衛生状態を評価するために口腔内から得られる試料中の揮発性物質を測定する意味について説明する。口腔内から得られる試料中の揮発性物質の種類や量は、口臭と密接に関係しており、口臭は口腔内の微生物の代謝活動によって生じるものが多く、口腔内の微生物の数や種類と関連している。口腔内の衛生状態が微生物の存在によって評価できることは既に説明した通りであり、このことから、口腔内から得られる試料中の揮発性物質の種類や量は、プラーク、そして口腔内の衛生状態には密接な関係を有すことになる。
例えば、先に説明した歯周ポケットの深部に生育するPG菌等の微生物は嫌気的な雰囲気を好む。一般に嫌気性の微生物、特に嫌気性の細菌は、その代謝に際して硫化水素やメルカプタン化合物などの臭気の強烈な物質を生成することが多い。口腔内の衛生状態が損なわれ、歯周病に罹患するとこれら歯周ポケット内に生息する微生物によって口臭が著しく強まる。そこで、口腔内から得られる試料中の揮発性物質の種類や量を調べることで、プラークの付着状況が分かり、口腔内の衛生状態を判定することが可能となる。歯槽膿漏や虫歯により歯牙が損傷を受けるという口腔内の疾病的な弊害のほかに、試料中の揮発性物質の種類や量を調べることで、口臭によって口腔内の衛生状態が分かり、疾病のほかに口臭対策も可能になる。
さて、実施の形態4における試料の採取から口腔内の衛生状態評価にいたるまでの一連の流れを説明する。実施の形態4における試料の採取は実施の形態1同様に綿棒を用いているので、手順は実施の形態1と同じである。ただ、実施の形態4における試料は、唾液よりも歯牙表面や歯牙と歯茎の境目をこすって採取したプラークなどの方がより好ましい。それは本実施の形態4における衛生状態の判定方法は、上述したように主に歯牙と歯茎の境目の歯周ポケットに生息する微生物の分析により適しているからである。試料を採取した後、被験者は冶具をセル60内に投入して密閉する。そして図示しない測定開始ボタンを押して制御部64に測定開始を伝える。
制御部64は、測定開始の指示を受けて直ちに測定部62を制御し、セル60内の揮発性物質量の測定を開始する。実施の形態4において使用しているセラミックス系のガスセンサ61は対象ガスの選択性がそれほど高くないため、いわばあらゆる揮発性物質について検出が可能なものである。
測定部62は、ガスセンサ61からの信号の強度を測定して口腔内のプラーク付着状況と衛生状態を評価する。ガスセンサ61と口腔内の衛生状態評価の間の換算は、予め専門家が指導した衛生状態の評価と、本測定法によるガスセンサ61の信号強度の間の相関性を表す関数を定め、その関数を予めプログラミングしておくことで行う。算出された評価結果は表示部63に表示されて被験者に報知される。本実施の形態4ではガスセンサを1種類使用した場合のみを説明したが、複数のガスセンサを併用してより詳細な解析を行って評価を行うことも可能であるし、またセンサが1種類であっても、特定のガス、例えば硫化水素やメルカプタン系の化合物を選択的に測定して評価するのも望ましい。
このように、口腔内から得られた試料を密閉容器に入れガスセンサを用いて試料からの揮発性物質の測定を行うことで、実施の形態4の口腔内衛生状態検査装置は疾病のほかに口臭も対策することが可能になる。
以上説明した口腔内衛生状態検査装置は、制御部が電極に電圧を印加して試料液中の微生物を誘電泳動力によって該電極上に捕集し、測定部が捕集後または捕集中の電極間のインピーダンスを測定することで試料液中の微生物数を定量的に算出し、口腔内の衛生状態の評価を行うから、試薬であるとか特別な装置や訓練を必要とすることなく、簡易かつ客観的に自らの口腔内の衛生状態を調べることができる。
また、試料液と電極の相対位置を変化させる流動促進手段を備えたから、試料液中の微生物を効率よく電極上に集めることができ、迅速な測定を行うことができる。
また、誘電泳動によって試料中の微生物を電極上に捕集する前に、測定部が試料液の導電率を測定するから、イオン濃度の高い試料液等の測定ミスを未然に防ぐことができ、信頼性の高い判定結果を導き出すことができる。
また、試料液の導電率を調整する導電率調整部を備えたから、最適な条件で誘電泳動と測定を行うことができ、迅速で精度の高い測定を行うことができる。
また、測定部が試料液の導電率を測定し、測定した導電率を基に測定結果を補正するから、試料の性質に寄らず常に正確な判定結果を導き出すことができる。
また、試料に対して光束を入射させたときの散乱光量を検出回路が検出することによって試料中の微生物数を定量検出し、口腔内の衛生状態の判定根拠にするから、簡易な構造でありながら口腔内の衛生状態の高精度な判定をすることができる。
また、試料に対して光束を入射させたときの透過光量を検出回路が検出することによって試料中の微生物数を定量検出し、口腔内の衛生状態の判定根拠にするから、簡易な構造でありながら口腔内の衛生状態の高精度な判定をすることができる。
また、測定部に試料から発生する揮発性物質を検出する少なくとも1つ以上のガスセンサと、該ガスセンサで検出した揮発性物質信号から該揮発物質量を検出する検出回路が設けられ、試料から発生する揮発性物質量を検出回路が検出することによってプラーク付着状況を推定し、口腔内の衛生状態の判定根拠にするから、臨床的に問題となる口臭を直接調べることができ、臨床的に問題となる口臭を直接調べることができ、実質的に十分な精度で口腔内の衛生状態の判定をすることができる。
以上説明した口腔内微生物数測定方法は、セル内に口腔内から採取されたサンプルを含む試料液を導入し、試料液中の微生物を誘電泳動力によって電極上に捕集するとともに、電極間のインピーダンスを測定することで試料液中の微生物数を定量的に算出するから、試薬であるとか特別な装置や訓練を必要とすることなく、簡易かつ客観的に自らの口腔内の衛生状態を調べることが可能となる。
また、セル内に口腔内から採取されたサンプルを含む試料液を導入し、該セル内に光源から光束を入射し、セル内の試料液で散乱した散乱光の光強度を検出して試料中の微生物数を検出するから、試薬であるとか特別な装置や訓練を必要とすることなく、簡易かつ客観的に自らの口腔内の衛生状態を調べることが可能となる。
また、以上説明した口腔内プラーク量測定方法は、セル内に口腔内から採取された試料を保持し、ガスセンサで該試料から発生する揮発性物質量を検出回路で検出することによってプラーク付着状況を推定するから、臨床的に問題となる口臭を直接調べることができ、臨床的に問題となる口臭を直接調べることができ、実質的に十分な精度で口腔内の衛生状態の判定をすることができる。