JP4251261B2 - Method for producing matrix layer for phosphoric acid fuel cell - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、リン酸形燃料電池用マトリックス層の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
周知のとおり、リン酸型燃料電池は、電解質マトリックス層にリン酸を保持し、反応ガスとしての燃料ガス(例えば、水素)および酸化剤ガス(例えば、空気)を燃料極および酸化剤極に連続的に供給して、燃料のもつエネルギーを電気化学的に電気エネルギーに変換するものである。図6は、従来のリン酸形燃料電池の電池積層体の一例の概略構成を示す。
【0003】
図6において単電池1は、リン酸を保持した電解質層11と、電極触媒層をマトリックス層側に備えたガス拡散性の電極としての燃料電極12と酸化剤電極13と、さらに各電極に反応ガスを供給するためのガス流路(溝)を設けた多孔質のリブ付き基材14および15とからなる。この単電池1にガス遮蔽板であるセパレータ2を重ねて積層し、さらに、所定数の単電池毎に反応熱を除去するための冷却板3を介挿して燃料電池積層体を構成する。
【0004】
上記電解質層11は、シリコンカーバイド微粒子(SiC微粒子)をPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)からなるバインダー中に分散させたマトリックス層に電解質であるリン酸を保持したものとして構成される。また、上記燃料電極12と酸化剤電極13は、通常、カーボンペーパーからなる電極基材表面に電極触媒層を備え、燃料ガスである水素および酸化剤ガスである酸素が拡散し得るように形成されて、いわゆるガス拡散電極(以下、電極基板という。)となっている。前記電極触媒層は、触媒担体の表面に貴金属微粒子を担持した触媒粒子をPTFE粒子により結着して形成したものである。
【0005】
上記リン酸形燃料電池用マトリックス層の形成方法としては、従来、図6に示すように、マトリックス層を予めシート状(厚さ100〜150μm)に形成して、電極基板間に挟み込む方法がよく知られている。
【0006】
ところで、リン酸形燃料電池においては、マトリックス層の厚さが薄いほど(例えば80μm以下)、電解質層における電気抵抗(イオン移動抵抗)が低減し、発電電圧が向上する。前述のように、マトリックス層のシートを予め形成する方法(以下、シート形成法またはS法という。)の場合には、所望厚さ(例えば50μm)を有する薄膜を製造することが難しく、製造できたとしてもシートの強度が弱いためその取り扱いが困難なものとなる。またシート化のために多くの製造工数を必要とし、製造コストの面でも問題があった。
【0007】
上記のようなシート形成法(S法)の問題点に対処するために、(1)スクリーン印刷による方法、(2)フローコーターによる方法、(3)スプレー塗布による方法、(4)リバースロールコーターを用いた方法など他の製造方法が提案されている。
【0008】
前記(1)のスクリーン印刷による方法は、製造条件によっては望ましい薄膜が得られるが、ペーストがバインダーとしてのPTFEを含有しているために、スクリーンの目詰まりが起こり易く、連続して同じ品質のマトリックス層を製造することが難しい問題がある。さらに、塗布直後にスクリーンを印刷面から引き離す作業において、印刷面に気泡が生じたり、スクリーンの凹凸パターンが転写されてしまう不具合もあつた。
【0009】
次の(2)フローコーターによる方法は、粘度の低いペーストを用いる場合には塗布面の平滑な薄いマトリックス層を得ることが可能であるが、ペーストが流下するときに泡立ちが発生し易い問題がある。また膜厚が薄くなりすぎる傾向があり(例えば20μm以下)、燃料極(アノード)と酸化剤極(カソード)との間の反応ガスの遮蔽性が低下し、かえって発電特性を低下させる場合があった。ペーストの粘度を上げると、厚さの均一性や塗布面の平滑性を得ることが難しくなる問題があつた。
【0010】
次の(3)スプレー塗布による方法によっても、薄いマトリックス層を得ることは可能であるが、バインダーとしてPTFEを含有するマトリックスペーストの性質上、スプレーノズルが詰まりやすく、連続して多量のマトリックス層を製造するには間題があった。
【0011】
最後の(4)リバースロールコーターを用いた方法は、例えば、特開昭60−151968号公報に燃料電池用電極の製造方法として記載されており、この方法を説明するための概念図を図7に示す。
【0012】
図7に示す方法は、ペーストを塗布すべき電極基材10を挟んで、電極基材10の進行方向と回転方向が逆のコーティングロール20、および回転方向が同一のバックアップロール21を対向して設け、さらに、コーティングロール20と逆回転するドクターロール22を設けて、コーティングロール20の回転に伴って、ペーストを電極基材上に転写する方法である。
【0013】
前記リバースロールコーターを用いた方法によれば、ペーストの塗布を高速で行なうことができ、また製造装置の設備コストやメンテナンスコストが低減するメリットがある。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記リバースロールコーターを用いた方法を、マトリックス層の製造方法に適用した場合、下記のような解決すべき問題点がある。
【0015】
この製造方法によれば、電極基板がバックアップロールとコーティングロールとの間で、コーティングロールにより強い摩擦を受ける。そのために、巻物状のシートの場合は送り出し側と巻き取り側で確実なシート送りが可能であるが、燃料電池用電極基板の場合には、搬送台に電極基板を1枚づつ完全に固定しない限り、コーティングロールから受ける進行方向とは逆の力によって、電極基板がスリップしたり、場合によっては電極基板面を損傷してしまうケースがあった。
【0016】
また別の問題として、コーティングロールとドクターロールとの間でペーストが強い剪断力を受ける。その結果、バインダーとしてのPTFEが繊維化して次第にペースト性状が変化してしまい、連続して均質なマトリックス層を製造することが困難となる問題があった。
【0017】
さらに、コーティングロールとドクターロールとの間での摩擦熱の発生により、ペーストの状態が経時的に変化してしまう問題もあった。
【0018】
さらにまた、ペーストを塗布することによりマトリックス層を形成する方法全般に共通する問題として、塗布後の熱処理工程において、マトリックス層に微細なクラックが生じることがあり、クラックが生じると、マトリックス層の反応ガスシール性を低下させるため、セル電圧の低下や泡圧力の低下を招く基本的な問題が生ずる。
【0019】
この発明は、上記問題点を解消するためになされたもので、この発明の課題は、発電特性に好適な厚さと高い品質を有するマトリックス薄膜層が、安定して高速に連続生産可能なリン酸形燃料電池用マトリックス層の製造方法を提供することにある。
【0020】
【課題を解決するための手段】
前述の課題を解決するために、この発明は、シリコンカーバイド微粒子(SiC微粒子)とバインダーとしてのPTFEとを液体溶媒中に分散させたペーストを、電極基板面に塗布してマトリックス層を形成する方法であって、前記電極基板搬送用の搬送ロールと、電極基板を挟んで対向して設けられたコーティングロールおよびバックアップロールと、前記コーティングロールに付勢された押し当て部材(スキージ)とを用い、前記コーティングロールおよびバックアップロールを、電極基板搬送方向と同一方向に回転させた状態で、前記電極基板を前記搬送ロールにより搬送し、前記コーティングロールとスキージの少なくともいずれか一方に形成されたペースト通流溝から前記ペーストを電極基板面上に供給することにより、前記電極基板面にペーストを塗布し、これを熱処理して1層目のマトリックス層を形成し、前記1層目のマトリックス層の表面上に、再度、前記手順と同一手順により、ペーストを塗布しかつ熱処理を行って2層目のマトリックス層を形成し、前記2層目のマトリツクスペースト中の前記SiC微粒子の粒子径を、前記1層目のペースト中のSiC微粒子の粒子径よりも小とする(請求項1の発明)。
また、この発明は、シリコンカーバイド微粒子(SiC微粒子)とバインダーとしてのPTFEとを液体溶媒中に分散させたペーストを、電極基板面に塗布してマトリックス層を形成する方法であって、前記電極基板搬送用の搬送ロールと、電極基板を挟んで対向して設けられたコーティングロールおよびバックアップロールと、前記コーティングロールに付勢された押し当て部材(スキージ)とを用い、前記コーティングロールおよびバックアップロールを、電極基板搬送方向と同一方向に回転させた状態で、前記電極基板を前記搬送ロールにより搬送し、前記コーティングロールとスキージの少なくともいずれか一方に形成されたペースト通流溝から前記ペーストを電極基板面上に供給することにより、前記電極基板面にペーストを塗布し、これを熱処理して1層目のマトリックス層を形成し、前記1層目のマトリックス層の表面上に、再度、前記手順と同一手順により、ペーストを塗布しかつ熱処理を行って2層目のマトリックス層を形成し、前記2層目のマトリックス層の厚さを、前記1層目のマトリックス層の厚さよりも薄くする(請求項2の発明)。
なお、前記請求項1および2の発明において、前記電極基板面にペーストを塗布した後、温度30〜90℃で所定時間乾燥し、その後不活性ガス雰囲気中において温度250〜300℃で所定時間熱処理してマトリックス層を形成することが好ましい。また、前記温度30〜90℃で所定時間乾燥する前に、室温で30分以上自然乾燥することが好ましい。
【0021】
前記請求項1または2の発明の方法により、前記電極基板のスリップや損傷がなくなる。ここで、押し当て部材としては、例えば、板状,棒状などのものが挙げられる。このような押し当て部材(スキージ)を使用し、これをスプリングや空気圧力などにより、所定の圧力でコーティングロールに押し当てる(付勢する)ことにより、ペーストが受ける剪断力は、コーティングロールとドクターロールを使用した従来方法に比べて大幅に減少する。
【0022】
この結果、マトリックスペースト中のPTFEの繊維化を防ぐことが可能となる。さらに、従来、コーティングロールとドクターロール間で発生していた摩擦熱の問題も、押し当て板に替えることにより大幅に滅少し、その結果ペースト性状の安定化が図れる。
【0023】
また、マトリックス層におけるクラックの発生を抑制することができる。ところで、マトリックス層におけるクラックの発生は、目視では検出されない場合であっても、電子顕微鏡の観察によりその存在が分かる場合があり、この場合にも、後述するように、セル電圧や開回路電圧の低下が発生する。
前記請求項1または2記載の製造方法に係るロールコーターを用いる塗布法では、コーティングロールが電極に対し比較的高い圧力で接触するので、2層目のマトリックスペーストを塗布することにより、熱処理により生じた1層目のマトリックス塗布面の微細なクラック(亀裂)の中にマトリックスペーストが押し込まれる。これにより少なくとも1層目のマトリックス層の亀裂は無視できる程小さくなり、その結果マトリックス層のガスシール性は格段に向上し、発電特性や寿命が向上する。
なお2層目として塗布したマトリックス層の表面には、熱処理後に1層目の塗布表面と同様の微細な亀裂が生じるが、少なくとも1層目と2層目の境界には、1層目の亀裂が2層目のペーストで埋められて十分なガスシール性を有する層が存在するため、この2層目塗布表面の微細な亀裂は、もはやガスシール性の良否には影響しない。
ここで、2層目のマトリックスペースト中のSiC微粒子の粒子径を、1層目のペースト中のSiC微粒子の粒子径よりも小とすること(請求項1の発明)によって、上記の効果をより高めることができる。
また、前述のように、1層目の亀裂が2層目のペーストで埋められるので、請求項2の発明のように、2層目のマトリックス層の厚さを、1層目のマトリックス層の厚さよりも薄くすることができる。薄い方が電池特性上好ましい。
【0024】
また、上記請求項1または2に記載の製造方法において、前記ペースト通流溝は、前記コーティングロールの外周面の軸方向に複数個一様に設けた溝とする(請求項3の発明)。これにより、発電特性に好適な厚さのマトリックス層が、全幅にわたって略均一に形成できる。なお、マトリックス層の膜厚の微調整は、後述するように、ロール間接触圧力やスキージとコーティングロールとの接触圧力、その他ペースト粘度,固形分濃度,電極基板搬送速度等によって可能である。
【0025】
前記コーティングロールやその溝の実施態様としては、下記請求項4ないし6の発明が好ましい。即ち、前記請求項3記載の製造方法において、前記複数個一様に設けた溝は、断面V字状の切り込み溝であって、その切り込みピッチは200〜1000μmとする(請求項4の発明)。また、請求項4記載の製造方法において、前記V字状切り込み溝の切り込み角度は、50〜90度とする(請求項5の発明)。
【0026】
さらに、請求項1ないし5のいずれかに記載の製造方法において、前記コーティングロールの材質はゴムとし、その硬度(JIS−A)は、40〜80とする(請求項6の発明)。
【0027】
また、前記請求項1または2に記載の製造方法において、前記ペーストにおける液体溶媒は、エチレングリコール,ジエチレングリコール,ジプロピレングリコールの内のいずれか、若しくは、前記いずれかと水との混合物とする(請求項7の発明)。従来、この種の液体溶媒としては、アルコールが使用されているが、アルコールに比べて前記液体溶媒は蒸発しにくいので、ペースト性状(粘度や固形分濃度等)の作業中における変化を抑止することができ、好適である。
【0028】
さらに、前記ペースト中の液体溶媒以外の固形分濃度は、請求項8記載の発明のように、40〜80重量%とすることが好ましい。
【0029】
また、2層目のマトリックスペースト中の固形分濃度(主にペースト中のSiC含有率を示す)を、1層目のペーストの固形分濃度よりも低くすること(請求項9の発明)により、ペーストの粘度を下げ、亀裂への浸透性を高めることにより、前述のガスシール性向上の効果をより高めることができる。
【0030】
さらに、請求項10の発明のように、2層目のマトリックスペーストのバインダー含有量を、1層目のペーストのバインダー含有量よりも多くすることにより、やはり1層目の亀裂の影響をより無視できる程に抑え込むことができ、マトリックス層のガスシール性を向上することが可能となる。
【0031】
【発明の実施の形態】
図面に基づき、本発明の実施例について以下に述べる。
【0032】
図1に、本発明の実施例の製造方法に関わる塗布装置の概略構成を示す。図1において、30はコーティングロール(以下、Cロールともいう。)、31はバックアップロール(以下、Bロールともいう。)、32は押し当て部材としての押し当て板(以下、スキージともいう。)、34は電極基板、35は搬送ロール、33はマトリックスペーストである。
【0033】
Cロールの概略斜視図を図2に、またCロールのV字型溝の部分拡大断面図(図2のA−Aに沿う断面図)を図3に示す。本実施例で、溝ピッチPは400μmで、切り込み角度Θは60度のものを用いた。Bロールには溝の彫つていない平坦な面を有するロールを用いた。本実施例ではCロール、Bロールともに硬度約60(JIS−A:厳密には、JISK6253タイプA)のEPDM製ゴムロールを用いた。
【0034】
マトリックス層の厚さは、主に、CロールのV字型溝のサイズと、スキージをCロールに押し当てる圧力、およびCロールとBロールと間の接触圧力で調整する。この実施例ではスキージを、約0.1MPaの圧力でCロールに押し当てた。またCロールとBロールと間の接触圧力の目安として、CロールとBロールの接触時の撓み量の合計が約1mmとなるように調整した。さらに、ペーストの粘度、固形分濃度、基板搬送速度などによっても、マトリックス層の塗布厚さの微調整が可能である。
【0035】
マトリックスペーストとしては、例えば粒子径1μm前後のシリコンカーバイドを濃度100%のジエチレングリコール中に分散させ、これにシリコンカーバイド重量の1/20以下のPTFEディスパージヨンを混合したものを使用した。この実施例ではペースト中の固形分濃度は60%とした。
【0036】
Cロール30とスキージ32との間に、適量のマトリックスペースト33を投入しCロール30を回転させた状態で、C,Bロール間に電極基板34を送ると、ペーストはCロール30とスキージ32との隙間を通り電極基板34上に送られて、適度な厚さのペースト層を形成してマトリックス層が形成される。この実施例では基板送り速度を2m/minとした。
【0037】
以上のような条件の下でペーストを塗布することにより、後述する熱処理後の厚さが約50μmのマトリックス層が得られた。塗布条件により更に薄いマトリックス層を得ることも可能であるが、確実なガス遮蔽性と低い電気抵抗を両立させるには、この程度の厚さが好ましい。
【0038】
マトリックス層塗布後の熱処理は、この実施例では50℃の電気炉で15時間乾燥した。これにより、PTFEディスパージョン中に含まれる水分や有機溶媒成分の一部を除去した。
【0039】
続いて窒素雰囲気において,270℃、20分間の熱処理工程を加えた。これにより有機溶媒成分やPTFEディスパージョン中の界面活性剤成分を完全に除去すると共に、PTFEを部分的に溶解させ、バインダーとしての性質を発現させた。請求項7の発明に記載した有機溶媒はいずれも沸点が凡そ250℃以下であり、前記熱処理工程により完全に除去できることを確認した。さらに本発明に記した一連の工程を経た後も、これらの有機溶媒は電極の発電特性になんら悪影響を及ぼさないことを確認した。
【0040】
なお、図1において、スキージ32のCロール30に対する接触面として、平坦な面を有する平板状のものの例を示したが、円弧状の面を有するもの(例えば、断面形状が円もしくは半円である棒状のスキージなど)でもよく、全体の形状は、様々な変形があり得る。
【0041】
次に、2層のマトリックスを形成する場合の実施例ならびに燃料電池の実験結果などについて、以下に述べる。まず、2層マトリックス製造方法の実施例について述べる。
【0042】
前述の熱処理工程まで完了した1層目のマトリックス層の上に、1層目を塗布した場合と同じ方法でペーストを塗布し、1層目と同様に熱処理を施す。2層目のマトリックスのペーストとしては、1層目と全く同じ組成・性状ものでも、一定の効果を得ることが出来る。2層目の塗布厚さは1層目の1/2〜1/3程度でよい。例えば、1層目のマトリックス層の厚さが50μmであれば、2層目は20μm程度でよい。
【0043】
より効果を高めるためには、2層目に用いるペースト中のSiCの粒子径を1層目のそれよりも小さくするとよい。これにより、前述のように、1層目の熱処理により生じた亀裂の中に2層目のペーストが侵入し易くなる。例えば、1層目に、粒子径1μm前後のSiCを用いた場合、2層目のペースト中のSiC粒子は0.1μm前後のものを用いるとよい。
【0044】
2層目のマトリックスペースト中の固形分濃度(主にペースト中のSiC含有率を示す)を1層目に比べ下げることも有効である。これによりペーストの粘度が下がるため、1層目の熱処理により生じた亀裂内に、2層目のペーストが侵入し易くなる。例えば、1層目のペーストの固形分濃度を60%とした場合、2層目のそれは45〜50%程度とすると効果的である。
【0045】
2層目のマトリックスペースト中のバインダーとして用いるPTFE含有量を高める方法も有効である。これは、ペースト中のバインダー量が多いほど熱処理による亀裂が生じにくくなるためである。但しバインダー含有量を高くし過ぎると、PTFEによる撥水性が高くなり、マトリックス層の電解液保持性が低下してしまうので、注意を要する。例えば、1層目のPTFE含有量をSiC重量の1/10とした場合、2層目のPTFE含有量はSiC重量の1/5とし、かつその厚さを1層目の1/3〜1/4程度にした場合、マトリックス層全体でのリン酸保持性とガスシール性を両立できることを確認している。
【0046】
なお、一般的な従来の塗布法においては、ピンホールや偶発的な塗りムラによるガスシール性の不完全さを避けるために両極にマトリックス層を塗布する方法も採用されるが、本実施例においては、マトリックス層を燃料極または空気極のいずれか一方にのみ塗布すれば良い。
【0047】
次に、前記1層および2層のマトリックス層を含む本発明の実施例について、セル寿命試験や開回路電圧等について、前記シート形成法(S法)と比較実験した結果を、以下に述べる。
【0048】
図4は、開回路電圧の比較実験結果を示す。図4において、AおよびBは、本発明によるマトリックスを使用した電池(本発明の方法)を示し、Sは、シート形成法(S法)の結果を示す。前記Bは、マトリックス層におけるクラックの発生が、目視では検出されないものの、電子顕微鏡の観察によりその存在が分かる場合に相当し、AおよびSに比較して、開回路電圧が、30〜60mV低い結果を示した。請求項9の発明に係る2層のマトリックス層の場合には、Bのような開回路電圧を示すことはなく、請求項2の発明に係る1層の場合に、Bのような開回路電圧を示すものの発生が稀に存在する。
【0049】
図5は、セルの寿命試験結果を示し、縦軸は、セル電圧(V)を示し、横軸は運転時間を示す。図5において、AおよびBは前述の本発明の方法、Sはシート形成法(S法)の結果を示す。Bは、請求項2の発明に係る1層の場合に稀に発生する劣化ケースの結果を示す。本発明の方法の場合には、シート形成法に比較してマトリックス層の厚さが薄いので、内部抵抗が小となり、セル電圧がシート形成法に比較して高い。
【0050】
図5に示すBのようにセル電圧低下現象が発生する原因について、以下に説明する。運転初期にセル電圧に影響が見られない場合でも、リン酸型燃料電池のように、液体電解液を使用する燃料電池においては、マトリックス層のガスシール性がセル内の電解液量の影響を受けることが知られている。本発明に関わる塗布法マトリックスの場合、本来のガスシール性がシート形成法に比べて低いため、シート形成法によるマトリックスに比べ十分なガスシール性を得るためには、より多くの電解液量が必要であった。特に長期運転後には、セル内の電解質残量がシート形成法マトリックスであれば十分な量存在している時点においても、塗布法マトリックスを使用したセルでは発電特性が低下してしまう現象が、一般的に見られた。即ち、マトリックス層のガスシール性が低いために、塗布法の場合、電解質量が同一でも寿命を短くしてしまうのが一般的である。
【0051】
図5は、意図的に組立時にセル内に充填する電解質量を少なくし、シート形成法によるマトリックスと本発明の塗布法のマトリックスを使用した場合の寿命を比較した試験結果である。稀に発生する前記Bの場合には、図5において破線で示すように、シート形成法によるマトリックスSに比べ、一定の電解質量で運転可能な時間が約20%以上も短くなっていることが分かる。
【0052】
しかしながら、Aの場合には、Sと同等の寿命を示し、セル電圧が全体的に高く電池特性が優れている。
【0053】
【発明の効果】
上記のとおり、この発明によれば、シリコンカーバイド微粒子(SiC微粒子)とバインダーとしてのPTFEとを液体溶媒中に分散させたペーストを、電極基板面に塗布してマトリックス層を形成する方法であって、前記電極基板搬送用の搬送ロールと、電極基板を挟んで対向して設けられたコーティングロールおよびバックアップロールと、前記コーティングロールに付勢された押し当て部材(スキージ)とを用い、前記コーティングロールおよびバックアップロールを、電極基板搬送方向と同一方向に回転させた状態で、前記電極基板を前記搬送ロールにより搬送し、前記コーティングロールとスキージの少なくともいずれか一方に形成されたペースト通流溝から前記ペーストを電極基板面上に供給することにより、前記電極基板面にペーストを塗布し、これを熱処理して1層目のマトリックス層を形成し、前記1層目のマトリックス層の表面上に、再度、前記手順と同一手順により、ペーストを塗布しかつ熱処理を行って2層目のマトリックス層を形成し、前記2層目のマトリツクスペースト中の前記SiC微粒子の粒子径を、前記1層目のペースト中のSiC微粒子の粒子径よりも小とする(請求項1の発明)、
あるいは、前記請求項1の発明と同様の手順で、1層目のマトリックス層および2層目 のマトリックス層を形成し、前記2層目のマトリックス層の厚さを、前記1層目のマトリックス層の厚さよりも薄くする(請求項2の発明)ことにより、
発電特性に好適な厚さと高い品質を有するマトリックス薄膜層が、安定して高速に連続生産可能となる。
【0054】
また、マトリックス層に微細なクラックが生じる問題を抑制することができる。
【0055】
さらに、マトリックス層に顕微鏡観察によって検出されるレベルの微細なクラックが生じる問題を解消することができ、発電特性に優れかつ長寿命の燃料電池が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の実施例の製造方法に関わる塗布装置の概略構成を示す図
【図2】 図1におけるコーティングロールの斜視図
【図3】 図2におけるコーティングロールに設けた溝の部分拡大断面図
【図4】 開回路電圧に関する本発明とシート形成法の比較実験結果
【図5】 セル寿命に関する本発明とシート形成法の比較実験結果
【図6】 リン酸形燃料電池の概略構成の分解斜視図
【図7】 従来の製造方法に関わるリバースロールコーターを用いる方法の概念図
【符号の説明】
30:コーティングロール、30a:溝、31:バックアップロール、32:押し当て部材(スキージ)、33:マトリックスペースト、34:電極基板、35:搬送ロール。[0001]
BACKGROUND OF THE INVENTION
The present invention relates to a method for manufacturing a matrix layer for a phosphoric acid fuel cell.
[0002]
[Prior art]
As is well known, a phosphoric acid type fuel cell retains phosphoric acid in an electrolyte matrix layer, and continuously supplies a fuel gas (for example, hydrogen) and an oxidant gas (for example, air) as a reaction gas to the fuel electrode and the oxidant electrode. The energy of the fuel is electrochemically converted into electrical energy. FIG. 6 shows a schematic configuration of an example of a cell stack of a conventional phosphoric acid fuel cell.
[0003]
In FIG. 6, the
[0004]
The electrolyte layer 11 is configured by holding phosphoric acid as an electrolyte in a matrix layer in which silicon carbide fine particles (SiC fine particles) are dispersed in a binder made of PTFE (polytetrafluoroethylene). The fuel electrode 12 and the
[0005]
As a method for forming the matrix layer for a phosphoric acid fuel cell, conventionally, as shown in FIG. 6, a method of forming the matrix layer in a sheet shape (thickness of 100 to 150 μm) in advance and sandwiching it between the electrode substrates is good. Are known.
[0006]
By the way, in a phosphoric acid fuel cell, the thinner the matrix layer (for example, 80 μm or less), the lower the electric resistance (ion transfer resistance) in the electrolyte layer, and the power generation voltage is improved. As described above, in the case of a method of forming a matrix layer sheet in advance (hereinafter referred to as a sheet forming method or S method), it is difficult to manufacture a thin film having a desired thickness (for example, 50 μm). Even so, the sheet is weak and difficult to handle. In addition, many man-hours are required for forming the sheet, and there is a problem in terms of manufacturing cost.
[0007]
In order to deal with the problems of the sheet forming method (S method) as described above,(1)By screen printing,(2)By flow coater,(3)Spray coating,(Four)Other manufacturing methods such as a method using a reverse roll coater have been proposed.
[0008]
Said(1)According to the screen printing method, a desired thin film can be obtained depending on the production conditions, but since the paste contains PTFE as a binder, screen clogging easily occurs, and a matrix layer of the same quality is continuously produced. There is a difficult problem to do. Furthermore, in the work of pulling the screen away from the printing surface immediately after application, there are problems that bubbles are generated on the printing surface and the uneven pattern of the screen is transferred.
[0009]
next(2)The flow coater method can obtain a thin matrix layer having a smooth coated surface when a paste having a low viscosity is used, but there is a problem that foaming tends to occur when the paste flows down. In addition, the film thickness tends to be too thin (for example, 20 μm or less), and the shielding property of the reaction gas between the fuel electrode (anode) and the oxidant electrode (cathode) is lowered, which may reduce the power generation characteristics. It was. When the viscosity of the paste is increased, there is a problem that it becomes difficult to obtain the uniformity of thickness and the smoothness of the coated surface.
[0010]
next(3)Although it is possible to obtain a thin matrix layer by the spray coating method, due to the nature of the matrix paste containing PTFE as a binder, the spray nozzle tends to be clogged, and it is difficult to produce a large amount of the matrix layer continuously. There was a title.
[0011]
Last(Four)A method using a reverse roll coater is described, for example, in JP-A-60-151968 as a method for producing an electrode for a fuel cell, and a conceptual diagram for explaining this method is shown in FIG.
[0012]
In the method shown in FIG. 7, the
[0013]
According to the method using the reverse roll coater, the paste can be applied at a high speed, and there is an advantage that the equipment cost and maintenance cost of the manufacturing apparatus are reduced.
[0014]
[Problems to be solved by the invention]
However, when the method using the reverse roll coater is applied to a method for producing a matrix layer, there are the following problems to be solved.
[0015]
According to this manufacturing method, the electrode substrate receives strong friction between the backup roll and the coating roll by the coating roll. Therefore, in the case of a roll-like sheet, reliable sheet feeding is possible on the delivery side and the take-up side. However, in the case of an electrode substrate for a fuel cell, the electrode substrates are not completely fixed to the conveyance table one by one. As long as the electrode substrate slips due to the force opposite to the traveling direction received from the coating roll, the electrode substrate surface may be damaged in some cases.
[0016]
As another problem, the paste is subjected to a strong shearing force between the coating roll and the doctor roll. As a result, PTFE as a binder is made into fibers and the paste properties gradually change, which makes it difficult to produce a continuous and homogeneous matrix layer.
[0017]
Furthermore, there is a problem that the state of the paste changes with time due to generation of frictional heat between the coating roll and the doctor roll.
[0018]
Furthermore, as a problem common to all methods of forming a matrix layer by applying a paste, in the heat treatment step after application, a fine crack may occur in the matrix layer. Since the gas sealability is lowered, a basic problem that causes a drop in cell voltage and a drop in bubble pressure occurs.
[0019]
The present invention has been made to solve the above-mentioned problems, and an object of the present invention is to provide a phosphoric acid capable of stably and continuously producing a matrix thin film layer having a thickness suitable for power generation characteristics and high quality at a high speed. An object of the present invention is to provide a method for producing a matrix layer for a fuel cell.
[0020]
[Means for Solving the Problems]
In order to solve the above-mentioned problems, the present invention is a method for forming a matrix layer by applying a paste in which silicon carbide fine particles (SiC fine particles) and PTFE as a binder are dispersed in a liquid solvent to the electrode substrate surface. Then, using a transport roll for transporting the electrode substrate, a coating roll and a backup roll provided facing each other across the electrode substrate, and a pressing member (squeegee) biased by the coating roll, In the state where the coating roll and the backup roll are rotated in the same direction as the electrode substrate conveying direction, the electrode substrate is conveyed by the conveying roll, and the paste flow formed on at least one of the coating roll and the squeegee By supplying the paste from the groove onto the electrode substrate surface,A paste is applied to the electrode substrate surface, heat-treated to form a first matrix layer, and the paste is again applied on the surface of the first matrix layer by the same procedure as described above. In addition, heat treatment is performed to form a second matrix layer, and the particle size of the SiC fine particles in the second layer matrix paste is smaller than the particle size of the SiC fine particles in the first layer paste.(Invention of Claim 1)
The present invention is also a method for forming a matrix layer by applying a paste in which silicon carbide fine particles (SiC fine particles) and PTFE as a binder are dispersed in a liquid solvent to the electrode substrate surface, Using a conveyance roll for conveyance, a coating roll and a backup roll provided opposite to each other with an electrode substrate interposed therebetween, and a pressing member (squeegee) biased by the coating roll, the coating roll and the backup roll are The electrode substrate is conveyed by the conveying roll in a state rotated in the same direction as the electrode substrate conveying direction, and the paste is removed from the paste flow groove formed in at least one of the coating roll and the squeegee. Applying paste on the electrode substrate surface by supplying on the surface Then, this is heat-treated to form a first matrix layer, and the paste is applied on the surface of the first matrix layer again by the same procedure as described above, and heat-treated to form a second layer. A matrix layer is formed, and the thickness of the second matrix layer is made smaller than the thickness of the first matrix layer (Invention of Claim 2).
In the first and second aspects of the invention, after applying the paste to the electrode substrate surface, the paste is dried at a temperature of 30 to 90 ° C. for a predetermined time, and then heat-treated at a temperature of 250 to 300 ° C. for a predetermined time in an inert gas atmosphere. Thus, it is preferable to form a matrix layer. Moreover, it is preferable to dry naturally at room temperature for 30 minutes or more before drying at the temperature of 30 to 90 ° C. for a predetermined time.
[0021]
Claim 1Or 2According to the method of the present invention, the electrode substrate is not slipped or damaged. Here, examples of the pressing member include a plate shape and a rod shape. By using such a pressing member (squeegee) and pressing it against the coating roll with a predetermined pressure, such as a spring or air pressure, the shearing force received by the paste is reduced between the coating roll and the doctor. Compared to the conventional method using rolls, it is greatly reduced.
[0022]
As a result, fiber formation of PTFE in the matrix paste can be prevented. Furthermore, the problem of frictional heat that has conventionally occurred between the coating roll and the doctor roll is greatly reduced by switching to the pressing plate, and as a result, the paste properties can be stabilized.
[0023]
Moreover, the occurrence of cracks in the matrix layer is suppressed.be able to. By the way, even if the occurrence of cracks in the matrix layer is not detected visually, the presence of the crack may be found by observation with an electron microscope. A decrease occurs.
In the coating method using the roll coater according to the manufacturing method according to
The surface of the matrix layer applied as the second layer has fine cracks similar to the surface of the first layer after heat treatment, but at least at the boundary between the first layer and the second layer, the first layer cracks. Is filled with the second layer paste, and there is a layer having a sufficient gas sealing property. Therefore, fine cracks on the coating surface of the second layer no longer affect the quality of the gas sealing property.
Here, by making the particle size of the SiC fine particles in the second layer matrix paste smaller than the particle size of the SiC fine particles in the first layer paste (the invention of claim 1), the above effect can be further improved. Can be increased.
Further, as described above, since the crack of the first layer is filled with the paste of the second layer, the thickness of the matrix layer of the second layer is set to the thickness of the matrix layer of the first layer as in the invention of
[0024]
Moreover, in the manufacturing method according to
[0025]
As embodiments of the coating roll and its groove, the inventions of the following
[0026]
Furthermore, in the manufacturing method in any one of
[0027]
Further, in the manufacturing method according to
[0028]
Furthermore, it is preferable that solid content concentration other than the liquid solvent in the said paste shall be 40 to 80 weight% like the invention of Claim 8.
[0029]
Further, the solid content concentration in the second layer matrix paste (mainly indicating the SiC content in the paste) is made lower than the solid content concentration of the first layer paste (claims).9The above-mentioned effect of improving the gas sealing property can be further increased by lowering the viscosity of the paste and increasing the permeability to cracks.
[0030]
And claims10As in the present invention, by making the binder content of the second layer matrix paste larger than the binder content of the first layer paste, the effect of cracks in the first layer can be further suppressed to a negligible level. It is possible to improve the gas sealing property of the matrix layer.
[0031]
DETAILED DESCRIPTION OF THE INVENTION
Embodiments of the present invention will be described below with reference to the drawings.
[0032]
In FIG. 1, the schematic structure of the coating device in connection with the manufacturing method of the Example of this invention is shown. In FIG. 1, 30 is a coating roll (hereinafter also referred to as C roll), 31 is a backup roll (hereinafter also referred to as B roll), and 32 is a pressing plate as a pressing member (hereinafter also referred to as squeegee). , 34 is an electrode substrate, 35 is a transport roll, and 33 is a matrix paste.
[0033]
FIG. 2 shows a schematic perspective view of the C roll, and FIG. 3 shows a partially enlarged sectional view of the C-shaped V-shaped groove of the C roll (a sectional view taken along the line AA in FIG. 2). In this embodiment, the groove pitch P is 400 μm and the cutting angle Θ is 60 degrees. A roll having a flat surface not engraved with grooves was used as the B roll. In this example, EPDM rubber rolls having a hardness of about 60 (JIS-A: strictly speaking, JISK6253 type A) were used for both the C roll and the B roll.
[0034]
The thickness of the matrix layer is mainly adjusted by the size of the V-shaped groove of the C roll, the pressure for pressing the squeegee against the C roll, and the contact pressure between the C roll and the B roll. In this example, the squeegee was pressed against the C roll at a pressure of about 0.1 MPa. Moreover, as a standard of the contact pressure between C roll and B roll, it adjusted so that the sum total of the deflection amount at the time of contact of C roll and B roll might be set to about 1 mm. Furthermore, the coating thickness of the matrix layer can be finely adjusted by the viscosity of the paste, the solid content concentration, the substrate conveyance speed, and the like.
[0035]
As the matrix paste, for example, silicon carbide having a particle diameter of about 1 μm was dispersed in diethylene glycol having a concentration of 100%, and PTFE dispersion having a weight of silicon carbide of 1/20 or less was mixed with this. In this example, the solid concentration in the paste was 60%.
[0036]
When an appropriate amount of matrix paste 33 is put between the
[0037]
By applying the paste under the conditions as described above, a matrix layer having a thickness of about 50 μm after heat treatment described later was obtained. Although it is possible to obtain a thinner matrix layer depending on the coating conditions, this thickness is preferable in order to achieve both reliable gas shielding and low electrical resistance.
[0038]
The heat treatment after coating the matrix layer was dried in an electric furnace at 50 ° C. for 15 hours in this example. Thereby, a part of the water | moisture content and organic-solvent component contained in PTFE dispersion were removed.
[0039]
Subsequently, a heat treatment step was performed at 270 ° C. for 20 minutes in a nitrogen atmosphere. As a result, the organic solvent component and the surfactant component in the PTFE dispersion were completely removed, and PTFE was partially dissolved to develop the properties as a binder. It was confirmed that any of the organic solvents described in the invention of claim 7 had a boiling point of about 250 ° C. or less and could be completely removed by the heat treatment step. Furthermore, even after going through a series of steps described in the present invention, it was confirmed that these organic solvents had no adverse effect on the power generation characteristics of the electrode.
[0040]
In FIG. 1, an example of a flat plate having a flat surface as a contact surface of the squeegee 32 with respect to the
[0041]
next2Examples in the case of forming a matrix of layers and experimental results of the fuel cell will be described below. First, an example of a two-layer matrix manufacturing method will be described.
[0042]
The paste is applied by the same method as that applied to the first layer on the first matrix layer that has been completed up to the heat treatment step described above, and heat treatment is performed in the same manner as the first layer. Even if the second layer of the matrix paste has exactly the same composition and properties as the first layer, a certain effect can be obtained. The coating thickness of the second layer may be about 1/2 to 1/3 of the first layer. For example, if the thickness of the first matrix layer is 50 μm, the second layer may be about 20 μm.
[0043]
In order to enhance the effect, it is preferable that the SiC particle diameter in the paste used for the second layer be smaller than that of the first layer. As a result, as described above, the second-layer paste easily enters the cracks generated by the first-layer heat treatment. For example, when SiC having a particle diameter of about 1 μm is used for the first layer, the SiC particles in the second layer paste may be about 0.1 μm.
[0044]
It is also effective to lower the solid content concentration in the second layer matrix paste (mainly indicating the SiC content in the paste) compared to the first layer. As a result, the viscosity of the paste is lowered, so that the second layer paste is likely to enter the crack generated by the heat treatment of the first layer. For example, when the solid content concentration of the first layer paste is 60%, it is effective to set the second layer content to about 45 to 50%.
[0045]
A method of increasing the PTFE content used as a binder in the second layer matrix paste is also effective. This is because cracks due to heat treatment are less likely to occur as the amount of binder in the paste increases. However, if the binder content is too high, the water repellency due to PTFE increases and the electrolyte solution retention of the matrix layer decreases, so care must be taken. For example, when the PTFE content of the first layer is 1/10 of the SiC weight, the PTFE content of the second layer is 1/5 of the SiC weight, and the thickness is 1/3 to 1 of the first layer. When it is set to about / 4, it has been confirmed that both the phosphoric acid retention and the gas sealability in the entire matrix layer can be achieved.
[0046]
In addition, in a general conventional coating method, a method of applying a matrix layer to both electrodes to avoid imperfect gas sealing due to pinholes or accidental coating unevenness is also employed. The matrix layer may be applied only to either the fuel electrode or the air electrode.
[0047]
Next, the results of comparison experiments with the sheet forming method (S method) regarding the cell life test, open circuit voltage, and the like for the examples of the present invention including the one and two matrix layers will be described below.
[0048]
FIG. 4 shows a comparison experiment result of the open circuit voltage. In FIG. 4, A and B show a battery using the matrix according to the present invention (the method of the present invention), and S shows the result of the sheet forming method (S method). Said B corresponds to the case where the occurrence of cracks in the matrix layer is not detected by visual observation, but its existence can be seen by observation with an electron microscope, and the open circuit voltage is lower by 30 to 60 mV compared to A and S. showed that. In the case of the two matrix layers according to the invention of claim 9, an open circuit voltage such as B is not shown, and in the case of the single layer according to the invention of
[0049]
FIG. 5 shows the cell life test results, the vertical axis shows the cell voltage (V), and the horizontal axis shows the operation time. In FIG. 5, A and B show the results of the method of the present invention, and S shows the results of the sheet forming method (S method). B shows the result of a deterioration case that rarely occurs in the case of one layer according to the invention of
[0050]
The reason why the cell voltage drop phenomenon occurs as shown in FIG. 5B will be described below. Even in the case where the cell voltage is not affected in the initial stage of operation, in the fuel cell using the liquid electrolyte, such as the phosphoric acid fuel cell, the gas sealing property of the matrix layer does not influence the amount of the electrolyte in the cell. It is known to receive. In the case of the coating method matrix according to the present invention, since the original gas sealability is lower than that of the sheet forming method, in order to obtain sufficient gas sealability compared to the matrix by the sheet forming method, a larger amount of electrolyte solution is required. It was necessary. In particular, after long-term operation, even if there is a sufficient amount of electrolyte remaining in the cell if the sheet formation method matrix is present, the phenomenon that power generation characteristics deteriorate in cells using the coating method matrix is generally Was seen. That is, since the gas sealing property of the matrix layer is low, in the case of the coating method, the life is generally shortened even if the electrolytic mass is the same.
[0051]
FIG. 5 is a test result comparing the lifetimes when the electrolytic mass charged into the cell during assembly is intentionally reduced and the matrix formed by the sheet formation method and the matrix of the coating method of the present invention are used. In the case of B, which occurs rarely, as shown by a broken line in FIG. 5, the time that can be operated with a constant electrolytic mass is shortened by about 20% or more compared to the matrix S by the sheet forming method. I understand.
[0052]
However, in the case of A, the lifetime is equivalent to that of S, the cell voltage is generally high, and the battery characteristics are excellent.
[0053]
【The invention's effect】
As described above, according to the present invention, a paste in which silicon carbide fine particles (SiC fine particles) and PTFE as a binder are dispersed in a liquid solvent is applied to the electrode substrate surface to form a matrix layer. The coating roll using a transport roll for transporting the electrode substrate, a coating roll and a backup roll provided opposite to each other with the electrode substrate interposed therebetween, and a pressing member (squeegee) biased by the coating roll In the state where the backup roll is rotated in the same direction as the electrode substrate conveyance direction, the electrode substrate is conveyed by the conveyance roll, and the paste roll is formed in at least one of the coating roll and the squeegee. Supply paste on electrode substrate surfaceBy applying a paste to the electrode substrate surface, heat-treating it to form a first matrix layer, on the surface of the first matrix layer again, by the same procedure as the procedure, A paste is applied and heat treatment is performed to form a second matrix layer. The particle size of the SiC fine particles in the second matrix paste is determined by the particle size of the SiC fine particles in the first layer paste. (Invention of claim 1),
Alternatively, the first matrix layer and the second layer are processed in the same procedure as in the first aspect of the invention. And the thickness of the second matrix layer is made thinner than the thickness of the first matrix layer (Invention of
A matrix thin film layer having a thickness suitable for power generation characteristics and high quality can be continuously produced stably at high speed.
[0054]
Also, MaIt is possible to suppress the problem that fine cracks are generated in the trick layer.
[0055]
further, MaIt is possible to solve the problem that a fine crack of a level detected by microscopic observation in the trick layer can be solved, and a fuel cell having excellent power generation characteristics and a long life can be provided.
[Brief description of the drawings]
FIG. 1 is a diagram showing a schematic configuration of a coating apparatus related to a manufacturing method according to an embodiment of the present invention.
FIG. 2 is a perspective view of a coating roll in FIG.
3 is a partially enlarged sectional view of a groove provided in the coating roll in FIG.
FIG. 4 is a comparison experiment result of the present invention and the sheet forming method regarding open circuit voltage.
FIG. 5 shows the results of a comparative experiment between the present invention and the sheet forming method regarding the cell life.
FIG. 6 is an exploded perspective view of a schematic configuration of a phosphoric acid fuel cell.
FIG. 7 is a conceptual diagram of a method using a reverse roll coater related to a conventional manufacturing method.
[Explanation of symbols]
30: coating roll, 30a: groove, 31: backup roll, 32: pressing member (squeegee), 33: matrix paste, 34: electrode substrate, 35: transport roll.
Claims (10)
前記電極基板搬送用の搬送ロールと、電極基板を挟んで対向して設けられたコーティングロールおよびバックアップロールと、前記コーティングロールに付勢された押し当て部材(スキージ)とを用い、
前記コーティングロールおよびバックアップロールを、電極基板搬送方向と同一方向に回転させた状態で、前記電極基板を前記搬送ロールにより搬送し、前記コーティングロールとスキージの少なくともいずれか一方に形成されたペースト通流溝から前記ペーストを電極基板面上に供給することにより、前記電極基板面にペーストを塗布し、これを熱処理して1層目のマトリックス層を形成し、前記1層目のマトリックス層の表面上に、再度、前記手順と同一手順により、ペーストを塗布しかつ熱処理を行って2層目のマトリックス層を形成し、前記2層目のマトリツクスペースト中の前記SiC微粒子の粒子径を、前記1層目のペースト中のSiC微粒子の粒子径よりも小とすることを特徴とするリン酸形燃料電池用マトリックス層の製造方法。A method of forming a matrix layer by applying a paste in which silicon carbide fine particles (SiC fine particles) and PTFE as a binder are dispersed in a liquid solvent to an electrode substrate surface,
Using a transport roll for transporting the electrode substrate, a coating roll and a backup roll provided facing each other across the electrode substrate, and a pressing member (squeegee) biased by the coating roll,
In the state where the coating roll and the backup roll are rotated in the same direction as the electrode substrate conveying direction, the electrode substrate is conveyed by the conveying roll, and the paste flow formed on at least one of the coating roll and the squeegee By supplying the paste from the groove onto the electrode substrate surface, the paste is applied to the electrode substrate surface, and this is heat-treated to form a first matrix layer, on the surface of the first matrix layer In the same procedure as above, the paste is applied and heat-treated to form a second matrix layer, and the particle size of the SiC fine particles in the second matrix paste is set to 1 production of phosphoric acid fuel cell matrix layer, characterized in that a smaller than the particle diameter of the SiC particles in the layers th paste Law.
前記電極基板搬送用の搬送ロールと、電極基板を挟んで対向して設けられたコーティングロールおよびバックアップロールと、前記コーティングロールに付勢された押し当て部材(スキージ)とを用い、
前記コーティングロールおよびバックアップロールを、電極基板搬送方向と同一方向に回転させた状態で、前記電極基板を前記搬送ロールにより搬送し、前記コーティングロールとスキージの少なくともいずれか一方に形成されたペースト通流溝から前記ペーストを電極基板面上に供給することにより、前記電極基板面にペーストを塗布し、これを熱処理して1層目のマトリックス層を形成し、前記1層目のマトリックス層の表面上に、再度、前記手順と同一手順により、ペーストを塗布しかつ熱処理を行って2層目のマトリックス層を形成し、前記2層目のマトリックス層の厚さを、前記1層目のマトリックス層の厚さよりも薄くすることを特徴とするリン酸形燃料電池用マトリックス層の製造方法。A method of forming a matrix layer by applying a paste in which silicon carbide fine particles (SiC fine particles) and PTFE as a binder are dispersed in a liquid solvent to an electrode substrate surface,
Using a transport roll for transporting the electrode substrate, a coating roll and a backup roll provided facing each other across the electrode substrate, and a pressing member (squeegee) biased by the coating roll,
In the state where the coating roll and the backup roll are rotated in the same direction as the electrode substrate conveying direction, the electrode substrate is conveyed by the conveying roll, and the paste flow formed on at least one of the coating roll and the squeegee By supplying the paste from the groove onto the electrode substrate surface, the paste is applied to the electrode substrate surface, and this is heat-treated to form a first matrix layer, on the surface of the first matrix layer In the same procedure as above, the paste is applied and heat-treated to form a second matrix layer, and the thickness of the second matrix layer is set to the thickness of the first matrix layer. A method for producing a matrix layer for a phosphoric acid fuel cell, characterized in that the matrix layer is made thinner than the thickness .
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