JP4249802B2 - 神経筋疾患および症状を処置するためのボツリヌス毒素組み合わせ - Google Patents
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Description
本発明は、神経系疾患、例えば神経筋疾患および症状をボツリヌス毒素で処置するための新規方法および組成物を提供する。更に、本発明は、神経伝達物質(とりわけ、アセチルコリン)の放出を伴う組織および器官系のいずれにも有用な方法を提供する。そのようなコリン作動性伝達系は、神経筋接合部(筋肉)、平滑筋(消化管、括約筋など)、および分泌(唾液分泌および粘液)を包含する。
発明の背景
細菌毒素であるボツリヌス毒素(とりわけ、A型ボツリヌス毒素)は、筋肉の痙縮を伴う多くの神経筋疾患および症状、例えば斜視、眼瞼痙攣、痙性斜頸(頸部ジストニー)、口下顎骨ジストニーおよび痙性音声障害(喉頭ジストニー)の処置に用いられてきた。この毒素は、シナプス前コリン作動性神経末端に短時間で強力に結合し、アセチルコリン放出頻度の低下によってアセチルコリンのエキソサイトーシスを阻害する。その結果、痙縮した筋肉の局所的麻痺、すなわち弛緩が起こる。
神経筋疾患処置の一例は、ボロディック(Borodic)の米国特許第5053005号に記載されている。該特許には、若年の脊椎彎曲(すなわち、側彎)を、アセチルコリン放出阻害剤、好ましくはボツリヌス毒素Aで処置することが提案されている。
A型ボツリヌス毒素による斜視の処置は、エルストン,ジェイ・エス(Elston,J.S.)らのブリティッシュ・ジャーナル・オブ・オフサルモロジー(British Journal of Ophthalmology)、1985、69、718−724および891−896に記載されている。A型ボツリヌス毒素による眼瞼痙攣の処置は、アデニス,ジェイ・ピー(Adenis,J.P.)らのジュルナール・フランセ・ド・オフタルモロジー(J.Fr.Ophthalmol.)、1990、13(5)、259−264に記載されている。エルストン,ジェイ・エスのアイ(Eye)、1990、4(4):VIIには、斜視の処置が記載されている。痙性斜頸および口下顎骨ジストニーの処置は、ジャンコビック(Jankovic)らのニューロロジー(Neurology)、1987、37、616−623に記載されている。
痙性音声障害のA型ボツリヌス毒素による処置は、ブリッツァー(Blitzer)らのアナルス・オブ・オトロジー,ライノロジー・アンド・ラリンゴロジー(Ann.Otol.Rhino.Laryngol)、1985、94、591−594に記載されている。舌ジストニーのA型ボツリヌス毒素による処置は、ブリン(Brin)らのアドブ・ニューロル(Adv.Neurol.)(1987)、50、599−608に記載されている。コーヘン(Cohen)らのニューロロジー(1987)、37(補遺1)、123−4には、A型ボツリヌス毒素による書痙の処置が記載されている。
ボツリヌス毒素という用語は、嫌気性細菌のボツリヌス菌が産生する毒素群を包括する総称的な名称である。今日までに、免疫学的に異なる7種類の毒素が見出されている。それらには、A、B、C、D、E、FおよびGの名称が与えられている。種々のボツリヌス毒素の性質に関する更なる情報は、下記文献から得ることができる:ジャンコビックおよびブリンのザ・ニュー・イングランド・ジャーナル・オブ・メディシン(The New England Journal of Medicine)、第17号、1990、1186−1194、並びにチャールズ・エル・ハザウェイ(Charles L.Hatheway)のボツリヌム・ニューロトキシン・アンド・テタナス・トキシン(Botulinum Neurotoxin and Tetanus Toxin)[エル・エル・シンプソン(L.L.Simpson)編、カルフォルニア州サンディエゴのアカデミック・プレス社(Academic Press Inc.)、1989]の第1章。それらの開示を引用により本明細書の一部とする。
ボツリヌス毒素の神経毒成分は、分子量が約150キロダルトンであり、約50kDの短いポリペプチド鎖(毒素の毒性、すなわち、アセチルコリン放出頻度の低下による、アセチルコリンのエキソサイトーシスの阻害に関与すると考えられている)と、約100kDのより長いポリペプチド鎖(毒素がシナプス前膜に結合するのに必要と考えられている)とから成ると考えられている。この「短」鎖および「長」鎖は、単純なジスルフィド架橋によって結合している。(注:ある血清型のボツリヌス毒素、例えばE型は、二重鎖に対して、一重鎖のニックの無いタンパク質の形態で存在し得る。一重鎖形態のものは、活性はより小さいが、プロテアーゼ(例えばトリプシン)でニックを形成することにより、対応する二重鎖に変換し得る。本発明の方法においては、一重鎖および二重鎖のいずれも有用である。)
欧州特許明細書第0129434号には、リシンおよび抗体の免疫毒素複合体(細胞表面親和性の改善により、細胞毒性が高められていることによって特徴付けられる)が開示されている。該特許の発明者らは、リシンの代わりにボツリヌス毒素を使用し得ると記載している。
ボツリヌス毒素は、既知の方法で、ボツリヌス菌を発酵槽内で増殖させ、次いで発酵混合物を採り、精製することによって、工業的に得ることができる。
神経筋症状の処置に通例用いられるA型のボツリヌス毒素は、現在複数の会社から市販されている。例えば、英国のポート・プロダクツ社(Port Products Ltd.)から商品名「ディスポート(DYSPORT)」として、およびカルフォルニア州アーヴィン(Irvine)のアラーガン社(Allergan,Inc.)から商品名「ボトックス(BOTOX、商標)」として市販されている。
本発明の目的は、A型ボツリヌス毒素と、B、C、D、E、FおよびG型ボツリヌス毒素とを組み合わせた、神経筋疾患および症状の新規処置方法を提供することである。
発明の概要
本発明は、以下例示するような神経筋疾患または症状の患者を処置する組成物および方法を提供する:斜視および他の眼運動の疾患、例えば、共同斜視、上下斜視、外直筋麻痺、眼振、内分泌性ミオパシーなど;ジストニー、例えば限局性ジストニー(例えば痙性斜頸、書痙、眼瞼痙攣、口下顎骨ジストニーおよびその症状(例えば歯ぎしり)、ウィルソン病、晩発性ジストニー、喉頭ジストニーなど);他のジストニー、例えば振せん、チック、節状ミオクロヌス;痙縮、例えば慢性多発硬化による痙性、異常膀胱調節をもたらす痙性(例えば、脊髄損傷患者におけるもの)、アニムス、背部痙攣、筋肉硬直など;緊張性頭痛;骨盤挙筋症候群;二分脊椎、晩発性ジスキニジー;パーキンソンおよび四肢(限局性)ジストニー、および吃。本発明の方法は、前記疾患または症状の患者に、処置有効量のA型ボツリヌス毒素を、B、C、D、E、FおよびG型ボツリヌス毒素から成る群から選択する神経毒と組み合わせて投与することを含んで成る。前記神経筋疾患および症状の臨床的特徴は、ジャンコビックおよびブリンの前掲書、並びにクイン(Quinn)のディスオーダーズ・オブ・ムーブメント(Disorders of Movement)、アカデミック・プレス、1989に記載されている。これらの文献を引用により本明細書の一部とする。
本発明は更に、前記ボツリヌス毒素の組成物であって、処置する患者の適当な部位にボツリヌス毒素を注射するのに適した賦形剤中の組成物をも提供する。賦形剤は、注射した毒素を局部に保持するための剤をも包含し得る。
本発明は更に、短期間(時間または日のオーダー)または中期間(週のオーダー)の処置作用を要する神経筋疾患または症状を処置するための組成物および方法をも提供する。例えば、短期間または中期間の神経毒は、一時的に関節を不動にするため、または筋肉の収縮を防止するために、手術または施術の前後に使用し得る。そのような状況の例は、人工関節全置換術、複雑骨折、関節感染、関節脱臼の処置を包含する。短期作用剤の他の用途は、関節脱臼処置の補助、物理療法のための弛緩、筋肉痙縮の軽減(疼痛および痙縮のサイクルを断つ)である。更に、短期作用は、脊柱に彎曲のある側彎症において、筋肉を測定するためにも有用であり得る。括約筋(眼、胃腸、膣などの括約筋)の異常収縮も、短期作用によって処理し得る。
一方、中期作用剤は、腱の処置または靭帯配列の修復において有用であり得る。筋肉が外傷によって損傷した場合、中期作用剤による不動化は、疼痛の緩和および治癒の促進に有用であり得る。更に、中期作用は、脊柱に彎曲のある側彎症において、筋肉を測定するためにも有用であり得る。括約筋(眼、胃腸、膣などの括約筋)の異常収縮も、中期作用によって処置し得る。
発明の詳細な説明
本発明に従って使用するボツリヌス毒素は、A、B、C、D、E、FおよびG型のボツリヌス毒素である。
ボツリヌス毒素の各血清型は、特異的な抗体を用い、免疫学的に異なるタンパク質として分類されている。例えば、ある抗体(抗毒素)が、A型を認識(すなわち、A型の生物学的活性を中和)するならば、その抗体はB、C、D、E、FまたはG型を認識しないであろう。
ボツリヌス毒素はいずれも、亜鉛エンドペプチダーゼであると考えられるが、ニューロン内での各血清型(例えばAおよびE型と、B型と)の作用機序は異なると考えられる。更に、毒素に対する神経表面「レセプター」は、血清型によって異なると考えられる。
ボツリヌス菌の生理学的分類を、第I表に示す。
前記毒素型は、ボツリヌス菌の適当な生理学的分類群からの選択によって調製し得る。第I群の菌は通例、タンパク質分解性とされ、A、BおよびF型のボツリヌス毒素を産生する。第II群の菌は糖分解性で、B、EおよびF型のボツリヌス毒素を産生する。第III群の菌は、CおよびD型のボツリヌス毒素しか産生せず、多量のプロピオン酸を産生する点で、第I群および第II群の菌と区別される。第IV群の菌は、G型神経毒しか産生しない。A、B、C、D、E、FおよびG型のいずれのボツリヌス毒素の調製も、前掲のボツリヌム・ニューロトキシン・アンド・テタナス・トキシンの第1章、および/または該文献中に引用された文献に記載されている。また、B、C、D、E、FおよびG型のボツリヌス毒素は、クロストリジウム属の種々の菌からも得られる。現在、14種のクロストリジウム属の菌が、病原性とみなされている。病原性株の多くが、種々の病理学的徴候および症状に関与する毒素を産生する。ボツリヌス毒素を産生する菌は、ヒト(A、B、EおよびF型)および動物(CおよびD型)のボツリヌス中毒から分離されている。それらは、より古い毒素に対して生じた特異的な抗毒素(抗体)を用いて特徴付けられた。G型毒素は、土壌中に見出され、毒素産生性は低い。G型毒素は剖検片からも検出されているが、G型ボツリヌス中毒がヒトに起こったという充分な証拠は無い。
概ね、ボツリヌス菌は、4つの生理学的分類群(I、II、III、IV)が認識されている。血清学的に特定の毒素を産生し得る菌が、複類の生理学的分類群に属し得る。例えば、BおよびF型の毒素は、第I群または第II群の株が産生し得る。更に、ボツリヌス神経毒を産生し得る他のクロストリジウム属の株[クロストリジウム・バラティ(C.baratii)、F型;クロストリジウム・ブチリカム(C.butyricum)、E型;クロストリジウム・ノビイ、C1またはD型]が特定されている。
好ましくは、毒素を筋肉内注射によって、痙縮筋の神経筋接合部の部分に直接投与する。しかし、毒素を筋肉患部に直接投与し得る他の投与方法(例えば、皮下注射)を、適宜採用し得る。毒素は、発熱物質不含有の滅菌水溶液または分散液として、および滅菌溶液または分散液に再構成するための滅菌粉末として供し得る。
要すれば、浸透圧調整剤、例えば塩化ナトリウム、グリセロールおよび種々の糖を加え得る。安定剤、例えばヒト血清アルブミンも加え得る。適当な薬学的に許容し得る防腐剤、例えばパラベンで、製剤を防腐し得るが、製剤は防腐剤不含有であることが好ましい。
毒素を、単位用量形態に調剤することが好ましい。例えば、毒素を、バイアル内の滅菌溶液として、または適当な賦形剤(例えば注射用水)で再構成するための凍結乾燥粉末の入ったバイアルもしくはサシェとして供し得る。
一態様においては、ボツリヌス毒素を、食塩および殺菌ヒト血清アルブミン(毒素を安定化し、非特異的吸着による損失を最小限にする)を含有する溶液に調剤する。この溶液を滅菌濾過(0.2μフィルター)し、個々のバイアルに充填し、減圧乾燥により滅菌凍結乾燥粉末とする。この粉末は、用時に防腐剤不含有滅菌生理食塩液(塩化ナトリウム0.9%、注射用)を加えることによって再構成し得る。
患者に投与する毒素の用量は、症状の重さ(例えば処置を要する筋肉群の数)、患者の年齢および体格、並びに毒素の効力によって異なる。毒素の効力は、マウスに対するLD50値の倍数として表される。1単位(U)の毒素は、体重約20gの雌のスイス−ウェブスター(Swiss−Webster)マウス18〜20匹から成るマウス群の50%を殺す毒素と当価であると定義される。
ヒトの処置に使用する用量は、注射する筋肉の量にほぼ比例する。通例、患者に投与する用量は、患者1人当り1回の処置につき約1000単位まで、例えば約500単位まで、好ましくは約80〜460単位であるが、場合によってはより少ない用量またはより多い用量で投与してもよい。
本発明の製剤の使用に関して当業者には明らかなように、用量は変化し得る。ポートン(Porton)から市販のA型ボツリヌス毒素であるディスポートは、1ngが40Uを含有する。アラーガン社から市販のA型ボツリヌス毒素であるボトックスは、1ngが4Uを含有する。ボツリヌス毒素の効力、および作用の持続性の故に、投与は頻繁には行われないであろう。しかしながら結局は、毒素の投与量も投与頻度も、処置に携わる医師の判断で決められ、毒素による効果と安全性との問題に帰することになるであろう。
本発明の好ましい態様を次に示す。
1.神経筋疾患または症状の患者を処置する方法であって、A、B、C、D、E、FおよびG型のボツリヌス毒素から成る群から選択する少なくとも2種の神経毒の組み合わせを、処置有効量で患者に投与することを含んで成り、選択した各神経毒の量は、投与する組み合わせの処置活性の持続時間を調節するよう選択する方法。
2.選択した神経毒は、A型およびB型のボツリヌス毒素である上記第1項記載の方法。
3.選択した神経毒は、A型およびC型のボツリヌス毒素である上記第1項記載の方法。
4.選択した神経毒は、A型およびD型のボツリヌス毒素である上記第1項記載の方法。
5.選択した神経毒は、A型およびE型のボツリヌス毒素である上記第1項記載の方法。
6.選択した神経毒は、A型およびF型のボツリヌス毒素である上記第1項記載の方法。
7.選択した神経毒は、A型およびG型のボツリヌス毒素である上記第1項記載の方法。
8.処置活性の持続時間は、関節脱臼の処置、物理療法のための弛緩、筋肉痙縮の軽減、手術を受ける関節の不動化、および術前または術後の筋肉収縮の防止に適当である上記第1項記載の方法。
9.処置活性の持続時間は、腱の処置および靭帯配列の修復、側彎および括約筋痙縮の処置に適当である上記第1項記載の方法。
10.神経筋疾患または症状の患者を処置する方法であって、ボツリヌス毒素の処置活性を短期間増強するために、A型ボツリヌス毒素を処置有効量で患者に投与し、ある時間の経過後、B、C、D、E、FおよびG型のボツリヌス毒素から成る群から選択する少なくとも1種の神経毒を、処置有効量で患者に投与することを含んで成る方法。
11.選択した神経毒はB型ボツリヌス毒素から成る上記第10項記載の方法。
12.選択した神経毒はC型ボツリヌス毒素から成る上記第10項記載の方法。
13.選択した神経毒はD型ボツリヌス毒素から成る上記第10項記載の方法。
14.選択した神経毒はE型ボツリヌス毒素から成る上記第10項記載の方法。
15.選択した神経毒はF型ボツリヌス毒素から成る上記第10項記載の方法。
16.選択した神経毒はG型ボツリヌス毒素から成る上記第10項記載の方法。
17.神経筋疾患または症状の患者を処置するのに適当な組成物であって、A、B、C、D、E、FおよびG型のボツリヌス毒素から成る群から選択する少なくとも2種の神経毒の組み合わせを処置有効量で含有し、選択した各神経毒の量は、投与する組み合わせの処置活性の持続時間を調節するよう選択した組成物。
18.選択した神経毒は、A型およびB型のボツリヌス毒素である上記第17項記載の組成物。
19.選択した神経毒は、A型およびC型のボツリヌス毒素である上記第17項記載の組成物。
20.選択した神経毒は、A型およびD型のボツリヌス毒素である上記第17項記載の組成物。
21.選択した神経毒は、A型およびE型のボツリヌス毒素である上記第17項記載の組成物。
22.選択した神経毒は、A型およびF型のボツリヌス毒素である上記第17項記載の組成物。
23.選択した神経毒は、A型およびG型のボツリヌス毒素である上記第17項記載の組成物。
24.処置活性の持続時間は、関節脱臼の処置、物理療法のための弛緩、筋肉痙縮の軽減、手術を受ける関節の不動化、および術前または術後の筋肉収縮の防止に適当である上記第17項記載の組成物。
25.処置活性の持続時間は、腱の処置および靭帯配列の修復、側彎および括約筋痙彎の処置に適当である上記第17項記載の組成物。
本発明を以下の実施例によって更に説明するが、実施例は本発明を制限するものではない。
各実施例において、ボツリヌス毒素の組み合わせを含有する滅菌溶液を、患者の適当な筋肉に注射する。患者に対する総用量は、80〜460Uの範囲である。筋肉群への注射の前に、該筋肉群の解剖学的考慮を充分に行う。その目的は、神経筋接合部が最も集合している部分がわかれば、そこに注射を行うということである。筋肉をその動く範囲で動かしてみた時の針先の動きを観察することによって、筋肉注射前に筋肉内での針の位置を確認する。患者の年齢、注射部位の数、および患者により必要に応じて、全身麻酔、局所麻酔および鎮静を行う。所望の結果を達成するために、1回以上および/または1箇所以上の注射が必要であり得る。また、注射する筋肉によっては、筋電図法により導いた、微細な中空テフロンコーティング針を使用する必要があり得る。
注射後、全身的または局所的副作用は無く、どの患者にも大きな局所的緊張低下は見られないことがわかる。大部分の患者において、主観的にも、客観的に測定しても、機能の改善が見られる。
実施例1
晩発性ジスキニジーの処置におけるボツリヌス毒素の使用
関節脱臼患者を、500単位までのA型ボツリヌス毒素と、より少ない量のB型ボツリヌス毒素とを含有する組成物を関節に直接注射することにより処置する。数時間後、関節は不動化され、筋肉収縮は軽減する。A型およびB型のボツリヌス毒素組み合わせによってもたらされる短期間の筋肉エンハンスメント軽減作用は、即時の処置を可能にし、筋肉エンハンスメントの長期の軽減は、処置した関節の治癒を可能にする。
実施例1(a)
実施例1の方法に従い、A型およびB型のボツリヌス毒素組み合わせを用いて、同様の結果を得る。
実施例1(b)
実施例1の方法に従い、A型およびC型のボツリヌス毒素組み合わせを用いて、同様の結果を得る。
実施例1(c)
実施例1の方法に従い、A型およびD型のボツリヌス毒素組み合わせを用いて、同様の結果を得る。
実施例1(d)
実施例1の方法に従い、A型およびE型のボツリヌス毒素組み合わせを用いて、同様の結果を得る。
実施例1(e)
実施例1の方法に従い、A型およびF型のボツリヌス毒素組み合わせを用いて、同様の結果を得る。
実施例1(f)
実施例1の方法に従い、A型およびG型のボツリヌス毒素組み合わせを用いて、同様の結果を得る。
実施例2
痙性斜頸の処置におけるボツリヌス毒素の使用
痙性斜頸の患者(頸部筋組織に痙性または強直性の収縮が見られ、頭部の常同異常彎曲があり、顎は一方向に回り、肩は頭の回る方に向かって上がっている)を、300単位まで、またはそれ以上のA型ボツリヌス毒素、および300単位まで、またはそれ以上のE型ボツリヌス毒素を含有する組成物を、ジストニーの頸部筋肉に注射することによって処置する。数時間後、症状は実質的に軽減する;すなわち、患者は頭および肩を正常な位置に保つことが可能となる。
実施例3
本態性振せんの処置におけるボツリヌス毒素の使用
姿勢または動きの維持によって起こる本態性振せんの患者を、処置有効量のA型およびB型ボツリヌス毒素の注射によって処置する。2週間後、症状は実質的に軽減する。
実施例3(a)
実施例3の方法に従い、A型およびC型のボツリヌス毒素を、本態性振せんの患者に注射する。同様の結果を得る。
実施例3(b)
実施例3の方法に従い、A型およびD型のボツリヌス毒素を、本態性振せんの患者に注射する。同様の結果を得る。
実施例3(c)
実施例3の方法に従い、A型およびE型のボツリヌス毒素を、本態性振せんの患者に注射する。同様の結果を得る。
実施例3(d)
実施例3の方法に従い、A型およびF型のボツリヌス毒素を、本態性振せんの患者に注射する。同様の結果を得る。
実施例3(e)
実施例3の方法に従い、A型およびG型のボツリヌス毒素を、本態性振せんの患者に注射する。同様の結果を得る。
実施例4
痙性音声障害の処置におけるボツリヌス毒素の使用
声帯の痙縮の故に明瞭に話せない患者を、処置有効量のA型ボツリヌス毒素および処置有効量のB型ボツリヌス毒素の注射により処置する。数時間後、患者は明瞭に話せるようになる。
実施例4(a)
実施例4の方法に従い、A型およびC型のボツリヌス毒素を、痙性音声障害の患者に注射する。同様の結果を得る。
実施例4(b)
実施例4の方法に従い、A型およびD型のボツリヌス毒素を、痙性音声障害の患者に注射する。同様の結果を得る。
実施例4(c)
実施例4の方法に従い、A型およびE型のボツリヌス毒素を、痙性音声障害の患者に注射する。同様の結果を得る。
実施例4(d)
実施例4の方法に従い、A型およびF型のボツリヌス毒素を、痙性音声障害の患者に注射する。同様の結果を得る。
実施例4(e)
実施例4の方法に従い、A型およびG型のボツリヌス毒素を、痙性音声障害の患者に注射する。同様の結果を得る。
実施例5
片側顔面痙攣の処置におけるボツリヌス毒素の使用
ある患者は、片側顔面痙攣に罹っており、片側の顔面神経が支配する筋肉に不随意の急速な同時性収縮を起こす。この症状はかなり進行しており、眼の周辺の筋肉が収縮するだけでなく、攣縮は他の同側顔面筋肉にまで及んでいる。この患者に、300単位までのA型ボツリヌス毒素および300単位までのB型ボツリヌス毒素を注射すると、数時間後に症状が実質的に軽減する。
実施例5(a)
実施例5の方法に従い、A型およびC型のボツリヌス毒素を、片側顔面痙攣の患者に注射する。同様の結果を得る。
実施例5(b)
実施例5の方法に従い、A型およびD型のボツリヌス毒素を、片側顔面痙攣の患者に注射する。同様の結果を得る。
実施例5(c)
実施例5の方法に従い、A型およびE型のボツリヌス毒素を、片側顔面痙攣の患者に注射する。同様の結果を得る。
実施例5(d)
実施例5の方法に従い、A型およびF型のボツリヌス毒素を、片側顔面痙攣の患者に注射する。同様の結果を得る。
実施例5(e)
実施例5の方法に従い、A型およびG型のボツリヌス毒素を、片側顔面痙攣の患者に注射する。同様の結果を得る。
実施例6
眼瞼痙攣の処置におけるボツリヌス毒素の使用
特発性眼瞼痙攣(限局性の眼輪筋のジストニーで、不随意に眼を閉じる)の60歳の女性患者を、処置有効量のA型およびB型のボツリヌス毒素を眼輪筋に注射することによって処置する。眼窩および前隔膜の輪筋の接合部で、外側および内側の両方において、合計8回の注射を行う。内側の2倍量の溶液を外側に注射する。12〜24時間以内に、検出可能な筋肉の脱力が始まる。2〜3日後に、臨床的改善が見られる。不随意の瞬目が減少する。注射の効果は、75日間持続する。
実施例6(a)
実施例6の方法に従い、A型およびC型のボツリヌス毒素を、特発性眼瞼痙攣の患者に注射する。同様の結果を得る。
実施例6(b)
実施例6の方法に従い、A型およびD型のボツリヌス毒素を、特発性眼瞼痙攣の患者に注射する。同様の結果を得る。
実施例6(c)
実施例6の方法に従い、A型およびE型のボツリヌス毒素を、特発性眼瞼痙攣の患者に注射する。同様の結果を得る。
実施例6(d)
実施例6の方法に従い、A型およびF型のボツリヌス毒素を、特発性眼瞼痙攣の患者に注射する。同様の結果を得る。
実施例6(e)
実施例6の方法に従い、A型およびG型のボツリヌス毒素を、特発性眼瞼痙攣の患者に注射する。同様の結果を得る。
本発明を有効に適用する様式を説明する目的で、神経筋疾患および症状を処置するための本発明によるボツリヌス毒素組み合わせの使用を以上説明したが、多くの変更が明らかに可能であるので、本発明は上記態様に制限されるものではなく、本発明は請求の範囲に包含されるいずれの変更をも含むと理解すべきである。すなわち、当業者が行い得る変更はいずれも、請求の範囲に示される本発明の範囲に包含されると理解すべきである。
Claims (9)
- 神経筋疾患または症状の患者を処置するための組成物であって、A型ボツリヌス毒素と、B、C、D、E、FおよびG型のボツリヌス毒素から成る群から選択する少なくとも1種の神経毒の組み合わせを処置有効量で含有し、それら複数種の神経毒を同時に投与するための組成物。
- 選択した神経毒は、B型のボツリヌス毒素である請求項1記載の組成物。
- 選択した神経毒は、C型のボツリヌス毒素である請求項1記載の組成物。
- 選択した神経毒は、D型のボツリヌス毒素である請求項1記載の組成物。
- 選択した神経毒は、E型のボツリヌス毒素である請求項1記載の組成物。
- 選択した神経毒は、F型のボツリヌス毒素である請求項1記載の組成物。
- 選択した神経毒は、G型のボツリヌス毒素である請求項1記載の組成物。
- 関節脱臼の処置、物理療法のための弛緩、筋肉痙縮の軽減、手術を受ける関節の不動化、および術前または術後の筋肉収縮の防止用である請求項1記載の組成物。
- 腱の処置および靭帯配列の修復、側彎および括約筋痙攣の処置用である請求項1記載の組成物。
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