JP4248629B2 - プロテーゼ組立体 - Google Patents

Description

【０００１】
【発明の属する技術分野】
この発明は、プロテーゼ組立体、特に、患者の股臼に挿入するシェルと股関節に対するベアリング面を形成する挿入体に関する。
【０００２】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
セメントを用いてシェル部を患者の股臼に取り付ける股関節プロテーゼ又は、ネジ止具によって又はネジ止具なしで直接骨にシェル部を患者の股臼に接着する股関節プロテーゼが知られている。一般にカップ状の挿入体をシェル内に配置する。カップの内面が大腿部頭に対してベアリング面となる。
【０００３】
ヨーロッパ特許第０４３６３１７号公報には、カップ形状から上方向に挿入体の縁が延びて形成される延びたベアリング面を有する挿入体が開示されている。この文献に示される挿入体は金属又はポリエチレン物質からなる。
破裂強度が低いので非常に脆いが耐久性と生物学的適合性が他の物質より良好であるのでカップ状挿入体をセラミックスで形成することが好ましい。セラミックス物質が脆いということは、セラミックス物質からなるカップ状挿入体では、シェルにより支持されないカップの部分が破裂しやすいので、延びたベアリング面を有することはできないことを意味する。
【０００４】
【課題を解決するための手段】
本発明の目的は、延びたベアリング面を有するセラミックス物質からなるカップ状挿入体を含むプロテーゼ組立体を提供することである。
本発明は、患者の骨に取り付けるための固定要素と、縁のあるベアリングカップ部とからなり、縁の一部は拡大していて、拡大部はカップ部からほぼ放射方向に延びる肩の形であり、縁の一部の幅が増しているプロテーゼ組立体を提供する。
【０００５】
好ましくは、カップ部はセラミック物質から作られている。セラミック物質はアルミナまたはジルコニアでよい。
好ましくは、固定要素は合成プラスチック物質又は金属で作られている。
好ましくは、固定要素とベアリングカップ部の間にテーパ接触がある。ベアリングカップ部は、雄部を形成するようにテーパされている外面を有し、固定要素は、ベアリングカップ部の雄部と対応する雌部を形成するようにテーパされている内面を有してもよい。
【０００６】
好ましくは、ベアリングカップ部の縁は実質的に楕円である。
好ましくは、カップ部のベアリング内面はカップ部の楕円内で中心からずれている。
好ましくは、プロテーゼ組立体は股臼カップ組立体である。
【０００７】
【発明の実施の形態】
本発明によるプロテーゼ組立体の実施例について図面を参照して説明する。
図に示すように、プロテーゼ組立体１は、シェル２の形状をなす固定要素と、挿入体４の形状をなすベアリングカップ部からなる。
シェル２は、患者の骨に取り付ける階段状の外面６を有する。この実施例では、プロテーゼ組立体１は股関節部取替用股臼カップ組立体であり、シェル２は患者の股臼に取り付けられる。
【０００８】
シェル２は圧入により股臼に取り付けられる。そのとき、ネジ止具を用いてもよい。ネジ止具はシェル２の孔２４を通して挿入される。ネジ止具の頭はシェル２に埋まり、挿入体４との相互作用を避ける。別の方法では、シェル２は患者の股臼にセメント付けすることもできる。
【０００９】
シェル２の形状はほぼ半球であり、平らな縁２６がある。シェル２には、シェル２の縁２６の隣りにテーパ部１４がある。
挿入体４はカップ状であり、その内面１２は関節部、この実施例では大腿部頭に対するベアリング面となる。挿入体４の外面２８にはテーパ部１６があり、シェル２の雌テーパ部１４内にフィットする雄テーパとなる。挿入体４の外面２８の残りの部分は、シェル６の内面を圧迫しない大きさとする。挿入体４の外面２８とシェル２の内面２２の間の空間は、シェル２と挿入体４の間のテーパ６を操作するために必要である。
【００１０】
挿入体４には縁８があり、縁８には挿入体４のカップ形状から放射方向に延びる拡大部１０がある。縁の拡大部１０は、シェル２の平らな縁２６の上に外方向に延びる肩を形作る。シェル２の平らな縁２６と縁の拡大部１０の間に、ギャップ１８が形成される。
図３に示すように、挿入体４の縁８は楕円形であり、楕円形の中心からはずれて半球ベアリング面１２がある。図１及び図２に示すように、挿入体４の縁８を急に縁の拡大部１０に延ばすことができる。
【００１１】
現在２つのセラミック物質、即ちジルコニアとアルミナが整形外科器具に使用できる。ジルコニアは軟らかい物質、例えば超高分子密度ポリエチレンと使用できる。ジルコニアを股関節部取替プロテーゼに使用するとき、大腿部頭をジルコニアで作り、挿入体を超高分子密度ポリエチレンで作る。
【００１２】
アルミナはジルコニアよりかなり堅い物質であり、最も良い結果を得るためには、大腿部頭とベアリング挿入体に同じ物質を使用することが勧められる。しかしながら、セラミックヘッドをコバルトークロミウムヘッドで置き換えることもできる。アルミナ／アルミナ結合が最も良好な特性を有するが非常に脆い。コバルトークロミウム／ポリエチレン結合の摩耗速度は年当たり０．２ｍｍと０．５ｍｍの間であることが知られている。アルミナ／アルミナ結合の摩耗速度は年当たり０．０００１ｍｍと０．００５ｍｍの間である。
【００１３】
シェルを股臼の正確な位置に取り付けるのがしばしば困難であるため、拡大挿入体４が必要となる。これは患者の解剖学的構造等に起因すると考えられる。従って、シェル２の不正確な位置付けの問題を克服するために、ずれたベアリング面１２を有する挿入体４を使用することが必要である。関節の動きの範囲が増し、ずれの危険が減少する。
【００１４】
セラミック挿入体が知られており、もし挿入体がシェルの面でおおわれていれば、挿入体が壊れる危険はほとんどない。もし挿入体のベアリング面が拡大されていれば、縁の一部は支持されず、従ってセラミック挿入体が壊れる危険は非常に高い。
外科医が手術するとき、初めにシェルを股臼に固定し、次に、生物学的適合性プラスチックで作られたトライアル挿入体４を用いて拡大挿入体４に最適な位置を見い出だすよう努力する。外科医が挿入体４に必要な正確な位置を決めたら、セラミック挿入体４をシェル２の中に押し込む。挿入体４とシェル２におけるテーパ部１４と１６の相互作用により、挿入体４はシェル２内でロックされる。テーパロック機構は挿入体がシェル２の内側で３６０度回転できるようにし、完全な位置自由性を付与する。その後、外科医は動く範囲をためし、シェル２内の拡大挿入体４の位置を少し変えることができる。満足したら、外科医は挿入体４をシェル２に密着させ、２つのテーパ部１４と１６を互いにしっかりとロックさせる。
【００１５】
本発明では、縁８の支持されない最も高い部分における縁の厚み１０を増すことにより、拡大挿入体４の強度を変えた。拡大挿入体４の強度が増したことにより、拡大挿入体をアルミナ、ジルコニウム等のセラミック物質で作ることが可能となった。
縁の拡大部１０とシェル２の平らな縁２６の間には、小さなギャップ２０がなければならない。これにより、テーパロックの操作が可能となる。
【００１６】
従来の技術によるセラミック物質で作られた拡大挿入体と、本発明の拡大挿入体４について、限定要素分析がなされた。本発明の拡大挿入体４では応力が減り、従って挿入体４が破壊される全体的な危険も減るという結果が示された。
本発明の範囲を離れることなく、前述したものに対し変更や改良を加えることはできる。
【００１７】
好適な実施態様を以下に示す。
（Ａ）患者の骨に取り付けるための固定要素と、縁のあるベアリングカップ部とからなり、前記縁の一部は拡大していて、前記拡大部は前記カップ部からほぼ放射方向に延びる肩の形であり、前記縁の一部の幅が増しているプロテーゼ組立体。
（１）前記カップ部がセラミック物質から作られている実施態様（Ａ）記載のプロテーゼ組立体。
（２）前記セラミック物質がアルミナまたはジルコニアである実施態様（１）記載のプロテーゼ組立体。
（３）前記固定要素が合成プラスチック物質又は金属で作られている実施態様（Ａ）及び実施態様（１）ないし（２）のいずれかに記載のプロテーゼ組立体。
（４）前記固定要素と前記ベアリングカップ部の間にテーパ接触がある実施態様（Ａ）及び実施態様（１）ないし（３）のいずれかに記載のプロテーゼ組立体。
（５）前記ベアリングカップ部が、雄部を形成するようにテーパされている外面を有する実施態様（４）記載のプロテーゼ組立体。
【００１８】
（６）前記固定要素が、前記ベアリングカップ部の雄部と対応する雌部を形成するようにテーパされている内面を有する実施態様（５）記載のプロテーゼ組立体。
（７）前記ベアリングカップ部の縁が実質的に楕円である実施態様（Ａ）及び実施態様（１）ないし（６）のいずれかに記載のプロテーゼ組立体。
（８）前記カップ部のベアリング内面が前記カップ部の楕円内で中心からずれている実施態様（７）記載のプロテーゼ組立体。
（９）前記プロテーゼ組立体が股臼カップ組立体である実施態様（Ａ）及び実施態様（１）ないし（８）のいずれかに記載のプロテーゼ組立体。
（１０）図面に記載されているようなプロテーゼ組立体。
【００１９】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明によれば、延びたベアリング面を有するセラミックス物質からなるカップ状挿入体を含むプロテーゼ組立体を提供できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図１】プロテーゼ組立体の断面図である。
【図２】プロテーゼ組立体の斜視図である。
【図３】プロテーゼ組立体のベアリングカップ部の平面図である。
【図４】プロテーゼ組立体のベアリングカップ部の斜視図である。
【符号の説明】
１ プロテーゼ組立体
２ シェル（固定要素）
４ 挿入体（ベアリングカップ部）
８ 縁
１０ 拡大部

Claims (8)

1. 股臼カップ組立体において、
   患者の骨に取り付けるための固定要素であって、
   半球状のシェルおよび平らな縁を有する、
   前記固定要素と、
   前記固定要素内に配置されるカップ形状のベアリングカップ部であって、
   連続する端面を備える縁を有し、
   セラミック物質から形成されている、
   前記ベアリングカップ部と、
   を含み、
   前記ベアリングカップ部の縁の一部は、拡張された幅を有する拡大部を形成し、
   前記固定要素内に前記ベアリングカップ部が配置されたとき、前記拡大部は、前記固定要素の前記平らな縁の上を外方向に延びるように前記ベアリングカップ部からほぼ放射方向に延びる肩の形をしており、前記ベアリングカップ部の前記拡大部は、外方向に延びるにつれて厚みが増しており、前記ベアリングカップ部の前記拡大部以外の前記ベアリングカップ部の部分は、前記固定要素に覆われて、前記固定要素の前記シェル内に保持されている、
   股臼カップ組立体。
2. 請求項１に記載された股臼カップ組立体において、
   前記セラミック物質は、アルミナまたはジルコニウムである、股臼カップ組立体。
3. 請求項１または２に記載された股臼カップ組立体において、
   前記固定要素は、合成プラスチック物質または金属で形成されている、股臼カップ組立体。
4. 請求項１ないし３のいずれか１項に記載された股臼カップ組立体において、
   前記固定要素と前記ベアリングカップ部との間にテーパ接触がある、股臼カップ組立体。
5. 請求項４に記載された股臼カップ組立体において、
   前記ベアリングカップ部は、雄部を形成するようにテーパされている外面を有する、股臼カップ組立体。
6. 請求項５に記載された股臼カップ組立体において、
   前記固定要素は、前記ベアリングカップ部の前記雄部と対応する雌部を形成するようにテーパされている内面を有する、股臼カップ組立体。
7. 請求項１ないし６のいずれか１項に記載された股臼カップ組立体において、
   前記ベアリングカップ部の前記縁は、実質的に楕円である、股臼カップ組立体。
8. 請求項７に記載された股臼カップ組立体において、
   前記ベアリングカップ部の内側ベアリング面は、前記ベアリングカップ部の楕円内で中心からずれている、股臼カップ組立体。

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